説明

表面改質粒子

本発明は、着色剤によって表面改質され、この着色剤がLCSTポリマーおよび/またはUCSTポリマーからなる1層または複数層で被包されることを特徴とする基材に関する。本発明はさらに、表面改質基材を調製する方法、ならびに表面塗料、水性塗料、粉体塗料、ペイント、印刷インク、セキュリティ印刷インク、プラスチック、コンクリートにおけるその使用、化粧用配合物におけるその使用、農業用シートおよび防水布におけるその使用、紙およびプラスチックのレーザマーキング用のその使用、レーザ溶着用のその使用、光保護としてのその使用、腐食保護用の顔料としてのその使用、ならびに顔料組成物および乾燥調製物を調製するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤によって表面改質され、この着色剤がLCSTポリマーおよび/またはUCSTポリマーからなる1層または複数層で被包されることを特徴とする粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の形に加えて、物体の外観に影響を及ぼすのは、本質的に物体の着色である。したがって、着色はまた、物体をより魅力的にし、それによってその価値をも増大させる方法である。ドイツ特許出願公開第10000592A1号に記載されるような着色剤の気相成長(沈着)は、高価で複雑な方法である。例えば、英国特許第1119748B1号に開示されるように、ポリマー薄片中に着色剤を単に埋め込んでも、特定の色効果(例えば、カラーフロップ、金属光沢など)は生じない。
【0003】
本発明の目的は、既存の着色剤、特に顔料の色を、単純な方法で大幅に改変することである。色特性を改変するこの方法は、基本的に干渉顔料および金属顔料中の効果顔料に特に適用可能である。というのは、これにより、本来は予め指定した範囲でしか変化することのできない色特性を幅広く変化させ、したがってこの範囲をかなり広げることが可能になるからである。こうした顔料は、好ましくは、光の吸収がしばしば小さな役割しか果たさない反射顔料または干渉顔料なので、吸収性顔料の固定化によってこうした顔料の色範囲をかなり広げることができる。ある程度の透明性が存在する干渉顔料の場合には、これによりさらに隠蔽力も増大する。
【0004】
したがって、本発明は、着色剤によって表面改質されており、1層または複数層の固定化したLCSTおよび/またはUCSTポリマーで被包された粒子に関する。
【0005】
着色剤を、コーティングプロセス中に形成されたものではなく以前から存在していたポリマーと混合し均質化することによって、ポリマーが、一般には沈着物がin−situ重合によって始めて形成され、沈澱プロセス中に染料が組み込まれ、こうして染料が表面上に固定化される場合よりも効率的かつ均質的に、着色剤が効果顔料の表面に付着される。この種の方法は、例えば、米国特許第4,323,554号、ロシア特許第2133218C1号、および米国特許第5,037,475号に開示されている。ドイツ特許出願公開第19933138A1号、米国特許第6,113,683号、欧州特許出願公開第0919598A2号、米国特許第6,022,911号、米国特許第5,814,686号に記載されるように、吸着性相互作用の改善(ドイツ特許出願公開第19933138A1号、米国特許第6,113,683号、欧州特許出願公開第0919598A2号、米国特許出願第6,022,911号)、または電荷制御相互作用の改善(米国特許第5,814,686号)によって染料を付着させようとする試みも、沈着前に染料を沈着剤と均質化する本発明のケースと同程度に効率的であると評価することはできない。
【0006】
さらに、例えば、米国特許第4,323,554号およびロシア特許第2133218号に開示されているように、着色剤とマトリクスの間の相互作用がより弱いため、無機マトリクス中に有機顔料が組み込まれる際に、コーティング層中の有機顔料の滲み出し(bleeding)/粉吹き(blooming)からしばしば明らかになる、固定化の弱化が生じることが予想できる。本発明では着色剤固定化マトリクスとして有機ポリマーを使用するので、滲み出し/粉吹きの影響が、かなり大幅に抑制され、ポリマーを顔料に特異的に適合させることによってそれを排除することもできる。さらに、本発明で使用するUCSTおよびLCSTポリマーは、無機物質と非常に良好な相互作用を示し、そのため、これらを同様に問題なく表面上に固定化することが可能になる。こうした物質はどのようにも移動する傾向はないからである。
【0007】
従来技術に比べて、本発明の方法は、実施がより簡単であり(温度変化のみによって付着、帯電制御なし、in−situ重合なし)、より普遍的であり(表面特性に対する依存性が低い)、より効率的である(着色剤が、沈着剤中で直接均質化され、またしばしばよりよく固定化され得るから)。
【0008】
さらに、本発明は、表面改質基材の調製、ならびにとりわけ表面塗料、水性塗料、粉体塗料、ペイント、印刷インク、セキュリティ印刷インク、プラスチック、コンクリートにおけるその使用、腐食保護用の顔料としての、紙およびプラスチックへのレーザマーキングならびにレーザ溶着用のドーパントとしてのその使用、ならびに化粧用配合物におけるその使用に関する。さらに、本発明による粒子は、顔料組成物の調製、および例えば、顆粒、ペレット、ブリケットなどの乾燥調製物の調製にも適している。
【0009】
適切な粒子は、効果顔料であるが、例えば、二酸化チタン顔料、酸化鉄顔料、Cuフタロシアニン顔料など、無機および有機の球状顔料も適している。
【0010】
新規な着色顔料を製造するために、本発明の方法によって、例えば、アルミニウムフレーク、Al23フレーク、SiO2フレーク、グラファイトフレーク、ガラスフレーク、および/またはマイカなどのフレーク形の基材を、有機または無機の着色剤で直接コーティングすることも可能である。
【0011】
使用される効果顔料は、好ましくは、例えば、FlexのChromaFlair顔料、コーティング付きまたはなしのアルミニウムフレーク、例えばEckartのゴールドブロンズ顔料、例えばBASFのPaliochrom(登録商標)顔料、BASFのSicopearl顔料、例えば欧州特許出願公開第0753545A2号に記載されているBASFの角度依存性(goniochromatic)顔料などの、コーティングされた酸化鉄フレーク、ならびに例えば商標Iriodin(登録商標)としてMerck(ダルムシュタット)から入手可能な真珠様顔料や干渉顔料、すなわち金属酸化物でコーティングされたマイカフレーク顔料など、市販されている金属−効果顔料である。後者は、例えば、ドイツ特許およびドイツ特許出願公開第1467468号、第1959998号、第2009566号、第2214545号、第2215191号、第2244298号、第2313331号、第2522572号、第3137808号、第3137809号、第3151343号、第3151354号、第3151355号、第3211602号、第3235017号、第3842330号、第4137764号、欧州特許出願公開第0608388号、ドイツ特許出願公開第19614637号、およびドイツ特許出願公開第19618569号に開示されている。フレーク形の基材をベースとする真珠様顔料の使用が好ましい。特に好ましい効果顔料は、ホログラフィー顔料、導電性顔料、磁性顔料、例えばアルミニウムフレークおよび/または鉄フレークをベースとする金属−効果顔料、ならびに例えば、真珠様顔料、干渉顔料、角度依存性顔料、多層顔料などの効果顔料である。
【0012】
このフレーク形の基材は、好ましくは、天然または合成のマイカ、BiOClフレーク、Al23フレーク、TiO2フレーク、SiO2フレーク、Fe23フレーク、ガラスフレーク、あるいはグラファイトフレークである。好ましい効果顔料は、例えば、TiO2でコーティングされた天然または合成のマイカ、TiO2でコーティングされた、SiO2、Al23、グラファイト、ガラス、Fe23、または金属フレーク、特にアルミニウムフレークなど、TiO2(ルチルまたはアナターゼ)でコーティングされた基材である。特に、天然または合成のマイカ、SiO2フレーク、Al23フレーク、ガラスフレーク、セラミックフレーク、または支持体のない合成フレークが、基材として使用される。1層または複数のTiO2層を含む、2層、3層、またはそれ以上の層を有する多層顔料が、さらに好ましい。
【0013】
特に好ましい効果顔料を、以下に挙げる。
【0014】
基材+TiO2
基材+Fe23
基材+Fe34
基材+Cr23
基材+亜酸化チタン
基材+TiO2+Fe23
基材+TiO2+SiO2+TiO2
基材+TiO2/Fe23+SiO2+TiO2
基材+TiO2/Fe23+SiO2+TiO2/Fe23
基材+TiO2+SiO2+TiO2/Fe23
基材+Fe23+TiO2+SiO2+TiO2
この基材は、好ましくは、マイカ、Al23フレーク、SiO2フレーク、ガラスフレーク、または金属フレーク、あるいは金属でコーティングされた無機フレークを含む。
【0015】
本発明の方法によって様々な効果顔料の混合物を安定化させることも可能である。
【0016】
適切な着色剤は、当業者に周知のあらゆる染料ならびに有機および無機の着色顔料である。カラーインデックスリストからの特に適切な顔料は、例えば、モノアゾ顔料C.I.PigmentBrown25、C.I.PigmentOrange5、13、36、67、C.I.PigmentRed1、2、3、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、251、112、146、170、184、210および245、C.I.PigmentYellow1、3、73、65、97、151および183;ジアゾ顔料C.I.PigmentOrange16、34、および44、C.I.PigmentRed144、166、214、および242、C.I.PigmentYellow12、13、14、16、17、81、106、113、126、127、155、174、176、および188;アンサンスロン顔料C.I.PigmentRed168、アントラキノン顔料C.I.PigmentYellow147および177、C.I.PigmentViolet31;アントラピリミジン顔料C.I.PigmentRed122、202、および206、C.I.PigmentViolet19;キノフタロン顔料C.I.PigmentYellow138;ジオキサジン顔料C.I.PigmentYellow138;ジオキサジン顔料C.I.PigmentViolet23および37;フラバントロン顔料C.I.PigmentBlue60および64;isoindoline顔料C.I.PigmentOrange69、C.I.PigmentRed260、C.I.PigmentYellow139および185;イソインドリノン顔料C.I.PigmentOrange61、C.I.PigmentRed257および260、C.I.PigmentYellow109、110、173、および185;イソビオラントロン顔料C.I.PigmentViolet31、金属錯体顔料C.I.PigmentYellow117および153、C.I.PigmentGreen8;ペリノン顔料C.I.PigmentOrange43、C.I.PigmentRed194;ペリレン顔料C.I.PigmentBlack31および32、C.I.PigmentRed123、149、178、179、190、および224、C.I.PigmentViolet29;フタロシアニン顔料C.I.PigmentBlue15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、および16、C.I.PigmentGreen7および36;ピラントロン顔料C.I.PigmentOrange51、C.I.PigmentRed216;チオインジゴ顔料C.I.PigmentRed88および181、C.I.PigmentViolet38;トリアリールカルボニウム顔料C.I.PigmentBlue1、61、および62、C.I.PigmentGreen1、C.I.PigmentRed81、81:1、および169、C.I.PigmentViolet1、2、3、および27;アニリンブラック(C.I.PigmentBlack1);アルダジンイエロー(C.I.PigmentYellow101)およびC.I.PigmentBrown22および液晶ポリマー(LCP顔料)である。
【0017】
特に好ましい有機顔料は、Cuフタロシアニンブルー、ヘリオゲン(Heliogen)ブルー、カーマインレッド、ベルリンブルー、アゾ顔料、アゾ染料、ペリレン顔料、液晶ポリマー、および蛍光顔料、またはそれらの混合物である。
【0018】
着色剤は、ポリマーの0.001〜150重量%、特に好ましくは5〜50重量%、とりわけ10〜30重量%の量で使用される。
【0019】
様々な着色剤の混合物を使用することも可能であるが、総量が150%を超えるべきではない。
【0020】
効果を弱めるべき場合は、追加の散乱(scattering)粒子を組み込むことも興味深いかもしれない。この効果を実現するには、効果顔料上に、散乱顔料、例えば二酸化チタン顔料を着色剤と共にLCSTまたはUCSTポリマー中に分散させた分散液を沈着させるのが有利である。
【0021】
この散乱粒子の割合は、ポリマーの0〜150重量%、特に好ましくは5〜50重量%、とりわけ10〜30重量%である。
【0022】
本発明はまた、透明物質、特にナノ粒子を組み込むことによって、表面の、特に屈折率に関する、物理的特性を著しく改変するのに役立つこともできる。さらに、LCST/UCSTポリマーを使用して発光染料、蛍光染料、または燐光染料を沈着させると、しばしば比較的高価な染料を最上層として表面に効率的に施すことを可能にする方法が利用できるようになる。こうした染料は、しばしば純物質として使用され、その場合は、表面だけが有効であり、あるいは、かなりの量の染料の共沈が生じる沈着プロセスが使用される。ゆっくりとした、制御された沈着により、LCSTまたはUCSTポリマーと着色剤の比の最適化により、ポリマーを着色剤と予備混合し均質化することにより、またポリマーの臨界的温度より低い温度で着色剤に対して良好な安定化作用を有するLCST/UCSTポリマーを選択することにより、この共沈効果を本発明の方法において実現することができる。
【0023】
着色剤を対応するLCST/UCSTポリマー(下限臨界溶解温度ポリマーは、温度を上昇させると媒体中に溶解しなくなる)またはUCSTポリマー(上限臨界溶解温度ポリマーは、冷却すると媒体中に溶解しなくなる)と混合することによって、着色剤および別のどんな添加剤の堆積も行うことができる。これは、染料をポリマーと穏やかに撹拌しながら混合するだけで染料中で行うことができ、着色顔料の場合には、ビーズミルまたは振盪機を使用してポリマー中または対応するポリマー溶液中に着色顔料を分散させることが必要になる。次いで、コーティングすべき効果顔料を含む液体媒体に、着色剤とLCSTまたはUCSTポリマーの混合物を加える。この場合、着色剤がポリマーによって安定化されるように、この添加が確実にLCSTより低い温度またはUCSTより高い温度で行われるようにしなければならない。次いで、ポリマーが沈着する温度の方向に温度変化が生じた場合、ポリマーによる着色剤の安定化が低減し、ポリマー/着色剤層が効果顔料の表面上に沈着し、この層は、その後さらに行われる反応によって始めて固定化される。
【0024】
LCSTポリマーおよびUCSTポリマーは、それぞれ低温および高温で溶媒に可溶なポリマーであり、温度を上昇および低下させ、それぞれいわゆるLCSTおよびUCST(下限および上限臨界溶解温度)に達すると、溶液から別の相として堆積するポリマーである。このタイプのポリマーは、例えば、文献では「Polymere」[Polymers]、H.−G.Elias,HuthigおよびWepf−Verlag,Zug、1996年、183頁以降に記載されている。
【0025】
本発明に適したLCSTポリマーおよびUCSTポリマーは、例えば、国際公開第01/60926A1号および国際公開第03/014229A1号に記載されているものである。
【0026】
特に適切なLCSTポリマーは、ポリアルキレンオキシド誘導体、好ましくは、ポリエチレンオキシド(PEO)誘導体、ポリプロピレンオキシド(PPO)誘導体、オレフィンで改質されたPPO−PEOブロックコポリマー、アクリレートで改質されたPEO−PPO−PEOの3ブロックコポリマー、ポリメチルビニルエーテル、ポリ−N−ビニルカプロラクタム、エチル(ヒドロキシエチル)セルロース、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、およびポリシロキサンである。特に好ましいLCSTポリマーは、オレフィン性の基で改質されたシロキサンポリマーまたはポリエーテルである。
【0027】
適切なUCSTポリマーは、特に、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、およびポリエチレンオキシドコポリマーである。
【0028】
強い相互作用を受け、かつ/または効果顔料、および例えばコーティングマトリクスなどの塗装媒体と化学結合を形成する官能基を含むLCSTまたはUCSTポリマーを使用することが好ましい。当業者に周知の全ての官能基、特に、シラノール、アミノ、ヒドロキシル、エポキシド、酸無水物、および酸基が、適している。
【0029】
LCSTおよびUCSTポリマーは、分子量が、好ましくは300〜500000g/mol、特に500〜20000g/molの範囲である。
【0030】
ポリマーの割合は、最終生成物に対して、一般に0.1〜80重量%、好ましくは1〜30重量%、特に1〜20重量%である。
【0031】
効果顔料は、好ましくは、1種または複数の着色剤を含む固定化可能なLCSTおよび/またはUCSTポリマーあるいはポリマー混合物と溶媒存在下で混合する。LCSTポリマーをLCSTより低い温度で溶解させ、UCSTポリマーをUCSTより高い温度で溶解させる。一般に、LCST温度は、0.5〜90℃、好ましくは35〜80℃であり、UCST温度は、5〜90℃、特に35〜60℃である。所望により、その後、添加剤を添加する。続いて、一般に、温度をLCSTより約5℃高く上昇させ、またはUCSTより約5℃低く低下させると、ポリマーが沈着し、粒子表面上に堆積する。最後に、粒子表面上のポリマーを架橋させる形で固定化を行い、ポリマーは粒子表面上に不可逆的に固定化される。この固定化は、例えば、遊離基により、またはカチオン的に、またはアニオン的に、または縮合反応によって行うことができる。LCSTまたはUCSTポリマーは、好ましくは、遊離基によって、または縮合反応によって架橋させる。
【0032】
堆積層を水中で遊離基によって架橋(固定化)するには、好ましくは、ペルオキソ二硫酸カリウムまたはペルオキソ二硫酸アンモニウムを、コーティングに使用されるオレフィン性LCSTまたはUCSTポリマーに対して1〜100重量%の濃度範囲で使用する。架橋は、ポリマーのLCSTまたはUCST温度に応じて、例えばFe(II)塩などの触媒を使用して0〜35℃で、あるいは遊離基開始剤の直接熱分解によって40〜100℃で行われる。
【0033】
本発明の方法において有機溶媒が必要とされる場合、溶媒の選択は、使用するポリマーの溶解性に依存する。溶媒は、好ましくは、水または水混和性の有機溶媒である。水混和性溶媒には、水との間に非混和領域(miscibility gap)を有する溶媒も含まれる。こうした場合、混合比は、混和性が生じるように選択する。適切な溶媒の例は、モノアルコールおよびポリアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、グリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール;メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールとポリアルキレングリコールとのモノエーテルおよびジエーテルなど;エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−プロパンジオールプロピルエーテル、1,2−ブタン−1−メチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなど;エステル、例えば、酢酸メチル、酢酸とエチレングリコールまたはプロピレングリコールとのモノエステル、ブチロラクトンなど;ケトン、例えば、アセトンやメチルエチルケトンなど;アミド、例えば、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミドなど;スルホキシドおよびスルホラン、例えばジメチルスルホキシドやスルホランなど;アルカンカルボン酸、例えばギ酸や酢酸などである。
【0034】
LCSTおよび/またはUCSTポリマーコーティングは、好ましくは粒子を完全に被包するように行われる。特にポリシロキサンからなるLCSTポリマー被包(encasing)、またはLCSTおよびUCSTポリマーが交互に重なっている被包を有する効果顔料が特に好ましい。効果顔料は、連続した2種以上の、それぞれ同一または異なるLCSTポリマーまたはUCSTポリマーの層で被包することもできる。効果顔料は、好ましくは5層以下のポリマー被包を含む。
【0035】
ポリマー層の厚さによって、とりわけ、効果顔料の堆積挙動(behaviour)、いわゆるシーディングが決まる。シーディングは、顔料の密度に影響が及ぶように、ポリマー被包を対応した厚みになるよう選択することによって抑制することができる。粒子は、よりゆっくり堆積し、通常は未処理の効果顔料と同程度にまで圧縮されず、したがって、粒子を容易に再度撹拌することができる。ポリマー被包は、塗装媒体中への顔料の滲み出しをもほぼ抑制する。
【0036】
2〜500nm、好ましくは10〜200nm、特に20〜80nmのポリマー層が、特に好ましいことが証明されている。
【0037】
着色剤のほかに、個々のLCSTおよび/またはUCSTポリマー層はまた、粒子の化学的および/または機械的安定性をさらに増大させまたは低下させる添加剤を含んでもよい。
【0038】
適切な添加剤は、例えば、例えば硫酸バリウムなどのナノ粒子、重合性モノマー、可塑剤、酸化防止剤、カーボンブラック粒子、マイクロチタン、およびそれらの混合物である。
【0039】
添加剤の割合は、使用されるポリマーの、好ましくは0.001〜150重量%、特に0.05〜100重量%である。
【0040】
好ましくは、添加剤は、好ましくはポリマー溶液の溶媒と同じ溶媒を使用して、分散液の形でLCSTまたはUCSTポリマー溶液と混合し、この分散液の温度は、LCSTより低く下げ、またはUCSTより高く上げる。しかし、ポリマーが液体の形である場合、LCSTまたはUCSTポリマー中に添加剤を直接分散させることも可能である。
【0041】
着色剤を含むLCSTおよび/またはUCSTポリマーによって粒子を表面改質すると、例えば屈折率など、顔料の物理的パラメータが改変される。さらに、様々な塗装媒体中での効果顔料の親水性または疎水性を、したがって表面張力および界面張力をも、適当なポリマーコーティングにより、目標を狙って設定することもできる。これは、それぞれの系と効果顔料との濡れが改善され、より速くなり、相溶性が改善される。LCSTおよび/またはUCSTポリマー層はさらに、機械的応力を吸収することもできるので、処理後の効果顔料は剪断応力に対してより安定にもなる。これは、例えばアルミニウム顔料やマイカベースの効果顔料など、剪断に敏感な(shear−sensitive)効果顔料の対応する適用例で特に有利である。金属顔料の場合には、表面改質は同時に腐食保護としても働く。
【0042】
高度に架橋されたLCSTおよびUCSTポリマーのコーティングでは、塗装系における効果顔料の滲み出しおよび粉吹きが、さらに大幅に抑制される。
【0043】
例えば、ナノ粒子、可塑剤、重合性モノマーなどの異物を含めることによって、層の硬度や架橋(可逆性)の程度など、ポリマー層の特性にさらに影響を及ぼすことができる。したがって、例えば、二酸化チタンナノ粒子を、沈着により、架橋可能なLCSTポリマー、さらには混合物としてのモノマーと共に堆積させることが可能であるが、ポリマー混合物に応じて、硬度、架橋密度、および親水性/疎水性を変えることが可能である。次いで、この混合物を、表面上に架橋させるが、架橋反応および架橋剤の量に応じて、堆積したポリマー層の特性にさらに影響を及ぼすことが可能である。
【0044】
アクリレート基で改質されたLCSTポリマーを、例えばペルオキソ二硫酸カリウムによって表面上で架橋させた場合、効果顔料の親水性は、ポリマー被包によってだけでなく、使用されるペルオキソ二硫酸塩の量によっても大幅に増大される。
【0045】
本発明による効果顔料は、好ましくは、等電点(顔料のゼータ電位がゼロになるpH)が、ESA(電気音響スペクトル解析)法を使用して5〜10、特に6〜8の範囲である。
【0046】
表面改質効果顔料はさらに、非常に良好な耐候性、非常に良好な分散挙動を示し、その安定性の故に、多種多様な塗装系に、特に水性塗料および有機表面塗料に、とりわけ特に好ましくは粉体塗料に非常によく適している。
【0047】
フレーク形基材をベースとする効果顔料は、一般に剪断に敏感である。LCSTおよび/またはUCSTポリマーで効果顔料を表面改質すると、高い剪断応力のときにまたは研磨処理方法において顔料が機械的にさらに安定になる。さらにナノ粒子をLCSTおよび/またはUCSTポリマーと混合した場合、安定化をさらに増大させることができる。このようにして安定化させた効果顔料は、フレーク構造を失うことなく非処理効果顔料より著しく高い剪断力にさらすことができる。
【0048】
本発明による効果顔料は、例えば、欧州特許出願公開第0634459A2号に記載されるような、リーフィング挙動を改善するためにシランで処理された真珠様顔料に比べて、表面コーティングの配向の改善および色値の大幅な改善を示す。
【0049】
本発明に従って改質された効果顔料は、好ましくは、表面塗料、水性塗料、粉体塗料、ペイント、印刷インク、セキュリティ印刷インク、プラスチック、および化粧用配合物の分野の多くの色系と適合する。本発明による粒子はさらに、ポリマーの後処理によって対応して官能化させた場合、機能性顔料として、とりわけ、紙およびプラスチックのレーザマーキング用に、光保護として、腐食保護用の顔料として、コンクリートの着色用に、また農業分野での適用例用に、例えば温室のシート用に、また例えば防水シートの着色用に適している。
【0050】
本発明による粒子はまた、有利なことに、有機染料、有機顔料、または例えば透明および乳白色、有色および黒色の顔料などその他の顔料とのブレンド、ならびにフレーク形の酸化鉄、有機顔料、ホログラフィー顔料、LCP(液晶ポリマー)、ならびに金属酸化物でコーティングされたマイカ、ガラス、Al23、グラファイト、SiO2フレークなどをベースとする従来の透明、有色、および黒色の光沢顔料とのブレンドの形で様々な適用例に使用することができることは言うまでもない。本発明に従って安定化された粒子は、市販の顔料およびフィラーと任意の比で混合することができる。
【0051】
表面改質効果顔料はさらに、例えば、顆粒、チップ、ブリケット、ソーセージ状、ペレットなどの流動性顔料組成物および乾燥調製物の製造にも適している。この顔料組成物および乾燥調製物は、本発明による少なくとも1種または複数の効果顔料、結合剤、および場合によっては1種または複数の添加剤を含むことを特徴とする。この場合、乾燥調製物は、完全に乾燥させる必要はなく、その代わり、水および/または溶媒または溶媒混合物を、最大で8重量%、好ましくは3〜6重量%含むことができる。
【0052】
したがって、本発明はまた、本発明による顔料組成物および乾燥調製物を含む配合物にも関する。
【0053】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものであるが、本発明はそれだけには限定されない。
【0054】
実施例
実施例1:
真珠様顔料上へのCuフタロシアニンブルー顔料の堆積
Iriodin(登録商標)7205(粒径10〜60μmの、TiO2でコーティングされたマイカ顔料、Merck KGaA)を水300gと一緒に撹拌し、Cuフタロシアニンブルー顔料/LCSTポリマー組成物(ビーズミル中でジルコニウムビーズを使用して、BASFのヘリオゲンブルー顔料1gを分子量5000g/molのシリコーンポリマー10gおよび水10ml中で1時間分散させる)13gを添加する。混合物を撹拌しながらシリコーンポリマーのLCST温度62℃に加熱し、この温度を45分間維持し、アミノアルキルトリエトキシシラン1gおよびエポキシアルキルトリメチルシラン1gを添加すると共に85℃で後加熱することによって、アミノ改質されたポリシロキサンLCSTポリマーを固定化する。この場合、含有される染料も、堆積する顔料層中に固定化される。この顔料をろ過し、水で洗浄して固定化していない染料を除去し、乾燥させる。
【0055】
特徴については、顔料0.9gをニトロセルロースラッカー(固形分、約50%)中に入れて撹拌し、生成したラッカーを黒/白のコントラストカードに塗布し、室温で乾燥させた後、X−Rite色彩計を使用して色調分析する。類似の方法で色調を特徴づけたオリジナルのIriodin(登録商標)7205顔料と比較する。以下の表は、オリジナル顔料に対する、反射角(測定幾何形状45/75および45/0)からの角度差15°および45°でのL、a、およびb値の変化を示す。コントラストカードの白色領域全体に塗布したラッカー層を測定する。表1に結果を示す。
【0056】
【表1】

結果は、反射角近くの顔料の色は、青色吸収顔料でコーティングすると緑色がかった方向に変化するが、ラッカー試料およびその緑色内容物に対して垂直方向から見たとき、顔料の青の上色(mass tone)は、著しく増大することを示す。
実施例2:
真珠様顔料上へのCuフタロシアニンブルー顔料の堆積
Iriodin(登録商標)504(粒径10〜60μmの、Fe23でコーティングされたマイカ顔料、Merck KGaA)50gを水300ml中で撹拌し、Cuフタロシアニンブルー顔料/LCSTポリマー組成物16gを使用する以外は、実施例1と同様にCuフタロシアニンブルー顔料の堆積を行う。色特性決定用のカラーカードも同様に製造する。ここでも、以下の表2に示すように、青色がかる方向に明瞭な色シフトが起こる。
【0057】
【表2】

表2の結果は、Iriodin(登録商標)504の赤色上色が、青/緑色の方向にシフトし、反射角近くの干渉色が、青色の方向にシフトしたことを示す。
実施例3:
真珠様顔料上へのCuフタロシアニンブルー顔料の堆積
ここではヘリオゲンブルーを2倍量含むCuフタロシアニンブルー顔料/LCSTポリマー組成物を7gだけ使用する以外は、実施例2と同様に、Iriodin(登録商標)307(粒径10〜60μmの、Fe23およびTiO2でコーティングされた顔料、Merck KGaA)50gを水300ml中で撹拌し、再度実施例1および2と同様に、Cuフタロシアニンブルー顔料の堆積を行う。色特性決定用のカラーカードも同様に製造する。ここでも、以下の表3に示すように、青/緑色がかった方向に明瞭な色シフトが起こる。
【0058】
【表3】

Stargold Iriodin(登録商標)307を青色吸収染料ヘリオゲンブルーと一緒に固定化した際の表3の結果は、干渉色が、反射角近くで緑色の方向に明らかにシフトすることを示している。着色されたラッカー表面を垂直方向から見たとき、上色は、赤色がかった青色の方向にシフトする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤が、固定化されたLCSTおよび/またはUCSTポリマーの1層または複数層で被包されることを特徴とする、着色剤によって表面改質された基材。
【請求項2】
ポリマー被包は、層厚が2〜500nmであることを特徴とする、請求項1に記載の着色剤によって表面改質された基材。
【請求項3】
前記LCSTポリマーが、ポリアルキレンオキシド誘導体、オレフィンで改質されたPEO−PPOブロックコポリマー、ポリメチルビニルエーテル、ポリ−N−ビニルカプロラクタム、エチル(ヒドロキシエチル)セルロース、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、およびポリシロキサン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の着色剤によって表面改質された基材。
【請求項4】
前記UCSTポリマーが、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、およびポリエチレンオキシドコポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の着色剤によって表面改質された基材。
【請求項5】
前記LCSTポリマーが、オレフィン性の基によって改質されたポリシロキサン、またはポリエーテルであることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の着色剤によって表面改質された基材。
【請求項6】
前記ポリマー被包が、ナノ粒子、重合性モノマー、可塑剤、酸化防止剤、カーボンブラック粒子、マイクロチタン、またはそれらの混合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の着色剤によって表面改質された基材。
【請求項7】
前記ポリマー被包が、添加剤を、使用するポリマーの0.001〜150重量%含むことを特徴とする、請求項6に記載の着色剤によって表面改質された基材。
【請求項8】
前記基材が、ホログラフィー顔料、真珠様顔料、干渉顔料、多層顔料、金属−効果顔料、角度依存性顔料、BiOCl顔料、マイカ、Al23フレーク、ガラスフレーク、および/またはSiO2フレークであることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の着色剤によって表面改質された基材。
【請求項9】
前記効果顔料が、天然または合成のマイカ、Al23フレーク、TiO2フレーク、SiO2フレーク、Fe23フレーク、ガラスフレーク、セラミックフレーク、またはグラファイトフレークをベースにしたものであることを特徴とする、請求項8に記載の着色剤によって表面改質された基材。
【請求項10】
前記着色剤が、Cuフタロシアニンブルー、ヘリオゲンブルー、カーマインレッド、ベルリンブルー、アゾ顔料、アゾ染料、ペリレン顔料、液晶ポリマー、蛍光顔料、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の着色剤によって表面改質された基材。
【請求項11】
前記LCSTおよび/またはUCSTポリマーが、前記基材表面に塗布され、水および/または有機溶媒中での沈着によって不可逆的に固定化されることを特徴とする、請求項1に記載の着色剤によって表面改質された基材を調製する方法。
【請求項12】
従来の添加剤を前記ポリマーに添加することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
表面塗料、水性塗料、粉体塗料、ペイント、印刷インク、セキュリティ印刷インク、プラスチック、コンクリートにおいての、化粧用配合物においての、農業用シートおよび防水布においての、紙およびプラスチックのレーザマーキング用の、レーザ溶着用の、光保護としての、腐食保護用の顔料としての、ならびに顔料組成物および乾燥調製物を調製するための、請求項1に記載の着色剤によって表面改質された基材の使用。
【請求項14】
請求項1に記載の表面改質された基材を含む配合物。

【公表番号】特表2007−518841(P2007−518841A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543401(P2006−543401)
【出願日】平成16年11月13日(2004.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012882
【国際公開番号】WO2005/056696
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】