説明

表面検査方法及び検査治具

【課題】表面検査方法及び検査治具において、狭隘部における表面検査精度の向上を図ると共に、表面検査作業の作業性の向上を図る。
【解決手段】隣接するシュラウド114の突起部114aの端面Aと突起部114dの端面Bとの間に形成される狭隘部における被検査面Tに溶解材Lを噴射し、棒状の検査治具11の先端部に保持した転写材23を溶解材Lが付着した被検査面Tに密着させ、転写材23が被検査面Tに密着した状態で検査治具11を所定時間だけ保持し、検査治具11の保持を解除して転写材23を被検査面Tから剥離し、転写材23に形成された被検査面TのレプリカRを観察する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部材により形成される狭隘部の表面状態を検査する表面検査方法、並びに、この表面検査方法に使用される検査治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般的な蒸気タービンは、ケーシングに回転軸であるロータが回転自在に支持され、このロータの外周部に動翼が設けられると共に、ケーシングに静翼が設けられ、蒸気通路にこの動翼と静翼が交互に複数配設されて構成されている。従って、この動翼及び静翼を流れる蒸気により、動翼を介してロータが回転駆動することができる。
【0003】
そのため、蒸気タービンの稼働中は、複数の動翼の先端部にあるシュラウド同士が、互いに擦れ合う接触状態となっており、例えば、定期検査では、このシュラウド接触面の健全性を評価する必要がある。従来、タービン動翼のシュラウド接触面の健全性評価方法は、検査対象面に検査フイルムを溶解可能な溶剤(酢酸メチル)を塗布し、検査フイルムをピンセットで保持し、この溶剤が塗布された検査対象面に貼り付けた後、ヘラなどでこの検査フイルムを押さえ込み、この状態で溶解面が乾燥するまで所定時間保持し、検査対象面(溶解面)の乾燥後、検査フイルムをホルダにより保持し、光学顕微鏡により観察することで行っている。
【0004】
このようなタービン動翼のシュラウド接触面の健全性評価方法としては、例えば、下記特許文献1、2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−294716号公報
【特許文献2】特開平01−280236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のシュラウド接触面の健全性評価方法にあっては、隣接するシュラウド同士を離間させて隙間を確保し、この狭い隙間にある検査対象面に溶剤を塗布し、ピンセットで検査フイルムを隙間に挿入して検査対象面に貼り付けた後、溶解面が乾燥するまで所定時間検査フイルムを保持しなければならず、作業が困難なものとなっている。特に、隙間の入口部の検査対象面におけるレプリカは採取することはできても、隙間の奥までピンセットを差し込むことは難しく、隙間の奥の検査対象面におけるレプリカは採取するこが困難となっている。
【0007】
また、検査フイルムは、一般に、厚さが50ミクロン程度のアセチルセルロースが材料として使用されており、検査対象面からこの検査フイルムを剥離するとき、検査フイルムが破れてしまったり、カールしてしまったりして、この点でも作業が困難なものとなるだけでなく、作業時間も長くなり、作業効率が良くないという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、狭隘部における表面検査精度の向上を図ると共に、表面検査作業の作業性の向上を図る表面検査方法及び検査治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の表面検査方法は、隣接する部材により形成される狭隘部の表面状態を検査する表面検査方法において、前記狭隘部における被検査面に溶解材を噴射する溶解材噴射工程と、棒状の検査治具の先端部に保持した転写材を前記溶解材が付着した前記被検査面に密着させる転写材密着工程と、前記転写材が前記被検査面に密着した状態で前記検査治具を前記狭隘部に所定時間だけ保持する検査治具保持工程と、前記狭隘部における前記検査治具の保持を解除して前記転写材を前記被検査面から剥離する転写材剥離工程と、前記転写材に形成された前記被検査面のレプリカを観察する観察工程と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
従って、狭隘部における被検査面に溶解材を噴射し、検査治具の先端部に保持した転写材を溶解材が付着した被検査面に密着させ、この状態で検査治具を所定時間だけ保持し、溶解材が乾燥したら転写材を被検査面から剥離して被検査面のレプリカを観察する。そのため、被検査面のレプリカを適正に採取することで、狭隘部における表面検査精度を向上することができると共に、表面検査作業の作業性を向上することができる。
【0011】
本発明の表面検査方法では、前記狭隘部に前記検査治具の先端部を挿入した後、噴射ノズルから前記被検査面に前記溶解材を噴射し、前記転写材を前記溶解材が付着した前記被検査面に密着させることを特徴としている。
【0012】
従って、狭隘部に検査治具の先端部を挿入した状態で、被検査面への溶解材の噴射と、溶解材が付着した被検査面への転写材の密着を連続して行うことが可能となり、表面検査作業の作業性を向上することができる。
【0013】
また、本発明の検査治具は、狭隘部に挿入可能な棒状をなす検査治具本体と、前記検査治具本体の先端部に装着されて転写材を保持可能なホルダと、前記ホルダに保持された前記転写材を前記狭隘部における被検査面に押付保持可能な押付機構と、を備えることを特徴とするものである。
【0014】
従って、検査治具本体の先端部にあるホルダに転写材を保持させ、この状態で狭隘部に挿入し、転写材を溶解材が付着した被検査面に密着させ、押付機構により検査治具を所定時間だけ保持し、その後、溶解材が乾燥したら押付機構を解除して転写材を被検査面から剥離する。そのため、被検査面のレプリカを適正に採取することで、狭隘部における表面検査精度を向上することができると共に、表面検査作業の作業性を向上することができる。
【0015】
本発明の検査治具では、前記検査治具本体の先端部に前記転写材を溶解可能な溶解材を前記被検査面に噴射する噴射ノズルが設けられることを特徴としている。
【0016】
従って、狭隘部に検査治具の先端部を挿入した状態で、被検査面への溶解材の噴射と、溶解材が付着した被検査面への転写材の密着を連続して行うことが可能となり、表面検査作業の作業性を向上することができる。
【0017】
本発明の検査治具では、前記転写材は、厚さが1〜6mmのセルロース樹脂により形成されることを特徴としている。
【0018】
従って、転写材に十分な剛性を確保することとなり、被検査面のレプリカを適正に採取することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の表面検査方法及び検査治具によれば、検査治具として、狭隘部に挿入可能な棒状をなす検査治具本体と、検査治具本体の先端部に装着されて転写材を保持可能なホルダと、ホルダに保持された転写材を狭隘部における被検査面に押付保持可能な押付機構とを設け、検査治具により転写材を溶解材が付着した被検査面に密着させ、この状態で検査治具を所定時間だけ保持し、溶解材が乾燥したら転写材を被検査面から剥離して被検査面のレプリカを観察する。そのため、被検査面のレプリカを適正に採取することで、狭隘部における表面検査精度を向上することができると共に、表面検査作業の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る検査治具の正面図である。
【図2】図2は、本実施例の検査治具の平面図である。
【図3】図3は、本実施例の検査治具における検査ヘッドを表す図2のIII−III断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例に係る表面検査方法を表す説明図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例に係る表面検査方法を表す説明図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例に係る表面検査方法を表す説明図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例に係る表面検査方法を表す説明図である。
【図8】図8は、本発明の一実施例に係る表面検査方法を表す説明図である。
【図9】図9は、本発明の一実施例に係る表面検査方法を表す説明図である。
【図10】図10は、動翼の概略図である。
【図11】図11は、動翼におけるシュラウドの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る表面検査方法及び検査治具の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の一実施例に係る検査治具の正面図、図2は、本実施例の検査治具の平面図、図3は、本実施例の検査治具における検査ヘッドを表す図2のIII−III断面図、図4から図9は、本発明の一実施例に係る表面検査方法を表す説明図、図10は、動翼の概略図、図11は、動翼におけるシュラウドの概略図である。
【0023】
本実施例の表面検査方法は、図10及び図11に示すように、蒸気タービンの動翼105にて、隣接するシュラウド114同士の突起部114a,114dが接触する表面状態を検査するものであり、図示しない治具により、隣接するシュラウド114同士の突起部114aと突起部114dとを離間させ、この間に狭隘部を確保した状態で本実施例の検査治具を挿入し、接触する表面状態を検査する。
【0024】
本実施例において、図1乃至図3に示すように、検査治具11は、検査治具本体12とホルダ13と押付機構14とから構成されている。検査治具本体12は、狭隘部、本実施例では、シュラウド114同士の突起部114aと突起部114dとが離間した隙間に挿入可能な棒状をなしている。また、検査治具本体12は、操作ロッド21の先端部に検査ヘッド22が固定されて構成され、検査ヘッド22は、箱型形状をなし、下部にホルダ13が装着されている。このホルダ13は、箱型形状をなし、下部に転写材23を保持可能となっている。この場合、転写材23は、検査ヘッド22やホルダ13より下方に突出している必要がある。
【0025】
この転写材23は、セルロース樹脂により形成されており、酢酸セルロース樹脂とすることが望ましいが、これに限定されるものではなく、所定の形状(厚さ)を確保できれば、例えば、アセチルセルロース樹脂としてもよい。そして、この転写材23は、その厚さを1〜6mmに設定することが望ましい。この場合、転写材23は、ホルダ13に嵌合することで着脱自在に保持され、ホルダ13は、検査治具本体12の検査ヘッド22に嵌合することで着脱自在に保持されている。
【0026】
また、検査治具本体12は、検査ヘッド22の先端部に溶解材を噴射可能な噴射ノズル24が装着されている。溶解材の配送管25は、検査治具本体12(操作ロッド21及び検査ヘッド22)の内部を長手方向に貫通するように設けられており、基端部が図示しない溶解材の供給ポンプに連結される一方、先端部が検査ヘッド22の先端部から突出し、下向き(転写材23側)の噴射ノズル24が連結されている。この場合、溶解材は、転写材23の表面を溶解可能なものであって、例えば、酢酸メチルが望ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、アセトンなどとしてもよい。
【0027】
また、検査治具本体12は、ホルダ13に保持された転写材23を狭隘部における被検査面に押付保持可能な押付機構14が設けられている。この押付機構14は、押えレバー26と圧縮スプリング27とを有している。押えレバー26は、基端部が検査治具本体12における操作ロッド21の基端部に取付部28及び連結軸29により連結されており、先端部に押付部30が形成されている。そして、検査治具本体12における操作ロッド21と押えレバー26との間に圧縮スプリング27が介装されている。従って、検査治具本体12と押えレバー26は、圧縮スプリング27により互いに広がる方向に付勢支持されている。この場合、必要に応じて、検査治具本体12と押えレバー26の最大広がり位置を規制するストッパを設けることが望ましい。
【0028】
ここで、本実施例の検査治具11を用いた表面検査方法について説明するが、本実施例の表面検査方法は、下記の5つの工程から構成されている。
1.隣接するシュラウド114により形成される狭隘部における被検査面に溶解材を噴射する溶解材噴射工程
2.検査治具11の先端部に保持した転写材23を溶解材が付着した被検査面に密着させる転写材密着工程
3.転写材23が被検査面に密着した状態で検査治具を狭隘部に所定時間だけ保持する検査治具保持工程
4.狭隘部における検査治具11の保持を解除して転写材23を被検査面から剥離する転写材剥離工程
5.転写材23に形成された被検査面のレプリカを観察する観察工程
【0029】
以下、本実施例の検査治具11を用いた表面検査方法では、図4に示すように、作業者が検査治具11を、隣接するシュラウド114の突起部114aの端面Aと突起部114dの端面Bとの間に形成される狭隘部に挿入して作業を行う。この場合、シュラウド114の突起部114aと突起部114dとは、図示しない治具により所定距離の隙間、つまり、狭隘部が確保されるように保持される。
【0030】
作業者は、検査治具11を持ち、検査治具本体12の操作ロッド21と押付機構14の押えレバー26との角度を小さくし、転写材23が保持された検査ヘッド22を狭隘部に挿入する。そして、作業者は、予め設定された端面Aにおける被検査面Tに対して噴射ノズル24により溶解材Lを噴射する。図5に示すように、端面Aにおける被検査面Tの全領域に溶解材Lが噴射されると、作業者は、図6に示すように、端面Aにおける溶解材Lが付着した被検査面Tに対して、その上方に転写材23を対向して配置し、転写材23を被検査面Tに密着させる。そして、作業者は、図7に示すように、押付機構14により検査治具本体12の先端部に保持された転写材23を被検査面Tに密着した状態で保持する。即ち、検査治具本体12の先端部に保持された転写材23が被検査面Tに密着した状態で、押えレバー26の押圧部28を端面Bに接触させ、検査治具本体12と押えレバー26との位置を圧縮スプリング27の弾性力により保持する。
【0031】
このように検査治具11は、押付機構14により、作業者が手を離しても、転写材23が被検査面Tに押し付けられて密着した状態で保持される。そして、溶解材Lが転写材23の表面を溶解し、且つ、この溶解材Lが乾燥するまでの間、検査治具11をこの状態で所定時間だけ保持する。その後、所定時間が経過し、溶解材Lが乾燥したら、作業者は、図8に示すように、押付機構14を解除、つまり、検査治具11における検査治具本体12の操作ロッド21と押付機構14の押えレバー26との角度を小さくし、転写材23を被検査面Tから剥離する。
【0032】
そして、作業者は、図9に示すように、検査治具11から転写材23を取外し、この転写材23を光学顕微鏡41にセットし、転写材23における被検査面TのレプリカRを観察することで、シュラウド114の端面Aの健全性を評価する。この場合、転写材23は、所定の厚さを有していることから、被検査面Tから変形や破損することなく剥離することができ、また、光学顕微鏡41から入る光を反射して適正にレプリカRの状態を見ることができる。なお、検査治具11から転写材23を取外すとき、ホルダ13と一緒に転写材23だけを取外してもよい。
【0033】
このように本実施例の表面検査方法にあっては、隣接するシュラウド114の突起部114aの端面Aと突起部114dの端面Bとの間に形成される狭隘部における被検査面Tに溶解材Lを噴射する溶解材噴射工程と、棒状の検査治具11の先端部に保持した転写材23を溶解材Lが付着した被検査面Tに密着させる転写材密着工程と、転写材23が被検査面Tに密着した状態で検査治具11を所定時間だけ保持する検査治具保持工程と、検査治具11の保持を解除して転写材23を被検査面Tから剥離する転写材剥離工程と、転写材23に形成された被検査面TのレプリカRを観察する観察工程とを有している。
【0034】
従って、被検査面Tに溶解材Lを噴射し、検査治具11の先端部に保持した転写材23を溶解材Lが付着した被検査面Tに密着させ、この状態で検査治具11を所定時間だけ保持し、溶解材Lが乾燥したら転写材23を被検査面Tから剥離して被検査面TのレプリカRを観察する。そのため、被検査面TのレプリカRを適正に採取することで、表面検査精度を向上することができると共に、表面検査作業の作業性を向上することができる。
【0035】
また、本実施例の表面検査方法では、検査治具11の先端部を狭隘部に挿入した後、噴射ノズル24から被検査面Tに溶解材Lを噴射し、転写材23を溶解材Lが付着した被検査面Tに密着させている。従って、狭隘部に検査治具11の先端部を挿入した状態で、被検査面Tへの溶解材Lの噴射と、溶解材Lが付着した被検査面Tへの転写材23の密着を連続して行うことが可能となり、表面検査作業の作業性を向上することができる。
【0036】
また、本実施例の検査治具にあっては、狭隘部に挿入可能な棒状をなす検査治具本体12と、検査治具本体12の先端部に装着されて転写材23を保持可能なホルダ13と、ホルダ13に保持された転写材23を狭隘部における被検査面Tに押付保持可能な押付機構14とを設けている。
【0037】
従って、検査治具本体12の先端部にあるホルダ13に転写材23を保持させ、この状態で狭隘部に挿入し、転写材23を溶解材Lが付着した被検査面Tに密着させ、押付機構14により検査治具11を所定時間だけ保持し、その後、溶解材Lが乾燥したら押付機構14を解除して転写材23を被検査面Tから剥離する。そのため、被検査面TのレプリカRを適正に採取することで、狭隘部における表面検査精度を向上することができると共に、表面検査作業の作業性を向上することができる。
【0038】
本実施例の検査治具では、検査治具本体12の先端部に転写材23を溶解可能な溶解材Lを被検査面Tに噴射する噴射ノズル24を設けている。従って、狭隘部に検査治具11の先端部を挿入した状態で、被検査面Tへの溶解材Lの噴射と、溶解材Lが付着した被検査面Tへの転写材23の密着を連続して行うことが可能となり、表面検査作業の作業性を向上することができる。
【0039】
本実施例の検査治具では、転写材23を厚さが1〜6mmのセルロース樹脂により形成している。従って、転写材23に十分な剛性を確保することとなり、被検査面TのレプリカRを適正に採取することができる。
【0040】
即ち、転写材23として、所定の厚さを有したセルロース樹脂(酢酸セルロース樹脂)を採用することで、被検査面Tへ押し付けて転写したとき、また、被検査面Tから剥離したときの破損を防止することができる。また、転写材23が所定の厚さを有していることで、被検査面TのレプリカRを採取した後、カール現象が発生しないため、光学顕微鏡41による観察時に専用の固定ホルダーが不要となる。
【0041】
また、転写材(酢酸セルロース樹脂)23は、その表面に光を与えると数%程度の光は吸収されるが、大半の光を反射させる特性を有している。従来のように、転写材をフイルム方式とした場合、光学顕微鏡からの光を反射させるために、フイルムの下方に反射鏡をセッティングする必要があり、作業が面倒なものとなっている。本実施例では、この反射鏡が不要となることから、検査治具11から転写材23に取外した後、別途ホルダを取付けたり、反射鏡を取り付けたりする必要がなく、転写後における転写材23の転写面の観察が容易となる。
【0042】
更に、押付機構14として、転写材23を被検査面Tに押し付けて転写させる押えレバー26と圧縮スプリング27を設けたことで、容易に転写材23を被検査面Tに密着した状態で保持することができる。また、検査治具本体12の先端部に溶解材Lを噴射する噴射ノズル24を設けたことで、狭隘部の奥にある被検査面Tに対してもレプリカRを採取することができる。
【0043】
なお、上述した実施例では、蒸気タービンの動翼15にて、隣接するシュラウド114の突起部114aの端面Aと突起部114dの端面Bとの間に形成される狭隘部に検査治具11を挿入して表面検査作業を行う構成としたが、この構成に限らず、部材間に設けられたいずれの狭隘部に対しても本発明の表面検査方法及び検査治具は有効的である。
【符号の説明】
【0044】
101 ケーシング
102 ロータ
105 動翼
106 静翼
111 翼根部
112 プラットホーム
113 翼部
114 シュラウド
114a,114b,114c,114d 突起部
11 検査治具
12 検査治具本体
13 ホルダ
14 押付機構
21 操作ロッド
22 検査ヘッド
23 転写材
24 噴射ノズル
26 押えレバー
27 圧縮スプリング
30 押付部
41 光学顕微鏡
T 被検査面
L 溶解材
R レプリカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する部材により形成される狭隘部の表面状態を検査する表面検査方法において、
前記狭隘部における被検査面に溶解材を噴射する溶解材噴射工程と、
棒状の検査治具の先端部に保持した転写材を前記溶解材が付着した前記被検査面に密着させる転写材密着工程と、
前記転写材が前記被検査面に密着した状態で前記検査治具を前記狭隘部に所定時間だけ保持する検査治具保持工程と、
前記狭隘部における前記検査治具の保持を解除して前記転写材を前記被検査面から剥離する転写材剥離工程と、
前記転写材に形成された前記被検査面のレプリカを観察する観察工程と、
を有することを特徴とする表面検査方法。
【請求項2】
前記狭隘部に前記検査治具の先端部を挿入した後、噴射ノズルから前記被検査面に前記溶解材を噴射し、前記転写材を前記溶解材が付着した前記被検査面に密着させることを特徴とする請求項1に記載の表面検査方法。
【請求項3】
狭隘部に挿入可能な棒状をなす検査治具本体と、
前記検査治具本体の先端部に装着されて転写材を保持可能なホルダと、
前記ホルダに保持された前記転写材を前記狭隘部における被検査面に押付保持可能な押付機構と、
を備えることを特徴とする検査治具。
【請求項4】
前記検査治具本体の先端部に前記転写材を溶解可能な溶解材を前記被検査面に噴射する噴射ノズルが設けられることを特徴とする請求項3に記載の検査治具。
【請求項5】
前記転写材は、厚さが1〜6mmのセルロース樹脂により形成されることを特徴とする請求項3または4に記載の検査治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−72715(P2013−72715A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211246(P2011−211246)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】