説明

表面検査装置の検査ヘッド

【課題】被検査物表面の微細な欠陥を検出可能な表面検査装置の検査ヘッドを提供する。
【解決手段】レーザーダイオード14から射出された検査光を導いて被検査物100の表面に投光し、その反射光を受光して反射光の強度を検出するフォトディテクタ15に反射光を導く投受光ファイバ11を有し、フォトディテクタ15の検出結果に基づいて被検査物100の表面を検査する表面検査装置の検査ヘッド1であって、投受光ファイバ11が、2本の光ファイバ11a、11bの一部を熔融延伸接合した熔融延伸部11cを有する光ファイバカプラであり、熔融延伸部11cから分岐した一方の光ファイバ11aはレーザーダイオード14からの検査光を導き、他方の光ファイバ11bはフォトディテクタ15に反射光を導き、熔融延伸部11cの端面11fから検査光が被検査物100の表面に投光され、その反射光を端面11fが受光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の表面に検査光を照射し、受光した反射光の光量に基づいて表面状態を検査する表面検査装置における検査光を投受光するための検査ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状の被検査物の内周面に対して検査ヘッドから検査光を照射してその表面を検査する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この検査装置は、検査光を投光する投光ファイバの周りに反射光を受光する複数の受光ファイバを隣接させてこれらの光ファイバをファイバ保持筒で保持するようにした検査ヘッドを有し、反射光の光量に基づいて表面の二次元画像を生成して表面の傷等の欠陥を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−147324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の検査ヘッドを使用して被検査物の表面を検査する場合、受光ファイバで反射光を受光させるために表面で結んでいる検査光の焦点をずらし、照射するスポット径を大きくすることで投光ファイバの周りに設けられた受光ファイバに反射光が入射できるようにしている。近年、より微細な欠陥を検査することへの要求が高まっているが、上述の検査装置のようにスポット径を大きくすると、取得する二次元画像が不鮮明になり微細な傷等の欠陥が検出できないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は被検査物表面の微細な欠陥を検出可能な表面検査装置の検査ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表面検査装置の検査ヘッドは、光源(14)から射出された検査光を導いて被検査物(100)の表面に投光し、その反射光を受光して反射光の強度を検出する検出手段(15)に反射光を導く投受光ファイバ(11)を有し、前記検出手段の検出結果に基づいて前記被検査物の表面を検査する表面検査装置の検査ヘッド(1)であって、前記投受光ファイバが、2本の光ファイバ(11a、11b)の一部を熔融延伸接合した熔融延伸部(11c)を有する光ファイバカプラであり、前記熔融延伸部から分岐した一方の光ファイバ(11a)は前記光源からの検査光を導き、他方の光ファイバ(11b)は前記検出手段に反射光を導き、前記熔融延伸部の端面(11f)から検査光が前記被検査物の表面に投光され、その反射光を前記端面が受光することにより上記課題を解決する。
【0007】
本発明の表面検査装置の検査ヘッドによれば、熔融延伸部が被検査物の表面に検査光を投光し、かつ検査光の反射光を受光するので、従来存在していた投光用ファイバ及び受光用ファイバが共通化される。従って、スポット径を大きくする必要性がなくなり、検査光の焦点を最小値で使用することができる。よって、取得する二次元画像が鮮明になり、より微細な欠陥を検出することができる。
【0008】
本発明の検査ヘッドの一形態において、前記熔融延伸部の端面が、前記端面に入射する検査光の光路の法線方向に対して傾いていてもよい。この形態によれば、熔融延伸部の端面に検査光が入射する際に、検査光の一部が反射して検出手段に入射することを防ぐことができる。
【0009】
熔融延伸部の端面が傾いている形態において、前記投受光ファイバを保持するファイバ保持筒(12)を備え、前記端面に入射する検査光の入射方向が前記ファイバ保持筒の軸線(AX)方向に対して傾いているとともに、前記端面から射出された検査光の光路が前記ファイバ保持筒の軸線方向に沿っていてもよい。この形態によれば、検査光の検出手段への進入防止のため端面を傾けた場合に、端面に入射する検査光の入射方向をファイバ保持筒の軸線方向に対して傾けることで、検査光の光路をセンサヘッドの軸線方向に沿うように調整することができる。
【0010】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように、本発明の表面検査装置の検査ヘッドにおいては、熔融延伸部が被検査物の表面に検査光を投光し、かつ検査光の反射光を受光するので、従来存在していた投光用ファイバ及び受光用ファイバが共通化される。従って、スポット径を大きくする必要性がなくなり、検査光の焦点を最小値で使用することができる。よって、取得する二次元画像が鮮明になり、より微細な欠陥を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一形態に係る表面検査装置の検査ヘッドの概略図。
【図2】投受光ファイバの拡大図。
【図3】熔融延伸部の端面を示した平面模式図。
【図4】センサヘッドの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本発明の一形態に係る表面検査装置の検査ヘッドの概略図を示す。表面検査装置は、被検査物100に設けられた円筒形の内周面100aの検査に適した装置である。表面検査装置は、内周面100aを検査する検査ヘッド1を有し、さらに、検査ヘッド1を駆動するための駆動機構や、駆動機構の動作制御や検査ヘッド1による検出結果の処理等を実行するための制御装置を備えている。表面検査装置は、検査ヘッド1を被検査物100の内周面100aに挿入し、被検査物100又は検査ヘッド1のいずれかを回転駆動させることにより内周面100aの表面と検査ヘッド1を相対的に移動させる。検査ヘッド1は検査光を内周面100aに照射して表面を検査し、その反射光の検出結果に基づいて制御装置が二次元画像を生成して欠陥の有無を判断する。なお、表面検査装置の駆動機構や制御装置については公知技術を適用してよい。
【0014】
検査ヘッド1は、検査光及び反射光を投受光するセンサヘッド2と、センサヘッド2の外側に同軸(軸線AX)に設けられる中空軸状のミラー保持筒3とを備えている。ミラー保持筒3はセンサヘッド2のさらに外側にて回転自在に支持されている。ミラー保持筒3の先端部にはミラー4が固定され、ミラー保持筒3の外周にはそのミラー4と対向するようにして投光窓3aが設けられている。ミラー4は、センサヘッド2から射出された検査光の光路を投光窓3aに向けて変更し、かつ、投光窓3aからセンサヘッド2内に入射した反射光の光路をセンサヘッド2へ向けて変更する。
【0015】
センサヘッド2は、投受光ファイバ11と、投受光ファイバ11を保持するファイバ保持筒12とを備えている。ファイバ保持筒12の先端には、投受光ファイバ11を介して導かれた検査光をミラー保持筒3の軸線AX方向に沿ってビーム状に射出させ、かつファイバ保持筒12の軸線AX方向に沿って検査光とは逆向きに進む反射光を投受光ファイバ11に集光するレンズ13が設けられている。
【0016】
図2に投受光ファイバ11の拡大図を示す。投受光ファイバ11として、2本の光ファイバ11a、11bの一部を熔融延伸接合した熔融延伸部11cを有する光ファイバカプラが適用される。投受光ファイバ11の熔融延伸部11cから分岐する2本の光ファイバ11a、11bの端部11d、11eには、それぞれ、検査光の光源としてのレーザーダイオード14と、被検査物100から反射した反射光の単位時間当たりの光量(反射光強度)に応じた電流又は電圧の電気信号を出力する検出手段としてのフォトディテクタ15とが接続される。レーザーダイオード14から射出された検査光は、端部11にて受光し光ファイバ11a及び熔融延伸部11cに導かれ、熔融延伸部11cの端面11fからセンサヘッド2の軸線AX方向へ向けて射出される。また被検査物100からの反射光は、センサヘッド2内を軸線AX方向に進み熔融延伸部11cの端面11fに入射して、熔融延伸部11c及び光ファイバ11bに導かれてフォトディテクタ15に入射する。熔融延伸部11cは、50:50の比率で端面11fから入射した反射光を分岐し、フォトディテクタ15に分配する。
【0017】
次に検査ヘッド1の作用を説明する。図3は、熔融延伸部11cの端面11fを示した平面模式図である。投受光ファイバ11は、熔融延伸部11cにて検査光の射出及び反射光の受光が行われる。従来の表面検査装置における検査ヘッドの光ファイバは、検査光を導く投光用ファイバと反射光を導く受光用ファイバとに分けられ、1本の投光用ファイバの周りに複数の受光用ファイバを配置して使用されている。この場合、被検査物100の内周面100aで反射した反射光を受光用ファイバで受光するには、内周面100aで結んでいる焦点をずらし、内周面100aに照射するスポット径を大きくすることで反射光が受光用ファイバに入射するように調整している。ところが、スポット径を大きくすると取得した二次元画像が不鮮明になりがちである。近年、表面検査装置の使用者の要求する欠陥検出の精度が高くなり、φ0.1[mm]以下の微細な欠陥を検出する必要が生じている。本発明の検査ヘッド1においては、投受光ファイバ11の熔融延伸部11cにより、検査光の射出及び反射光の受光が行えるため、スポット径を大きくする必要がなく、焦点を最小値で使用することができる。このため、取得する二次元画像が鮮明になり、微細な欠陥を検出することができる。
【0018】
図4にセンサヘッド2の断面図を示す。センサヘッド2の熔融延伸部11cの端面11fは、端面11fに入射する検査光Lの法線方向Nに対してθ2傾いている。これにより、端面11fで反射した検査光Lがフォトディテクタ15へ入射することを防止している。一方、端面11fをθ2傾けたことで端面11fから射出後の検査光の光路が軸線AXからずれてしまう。これを防止するため、端面11fに入射する検査光Lの入射方向をセンサヘッド2の軸線AX方向に対してθ1傾けることで、端面11fから射出された検査光の光路をセンサヘッド2の軸線AX方向に沿うように調整している。熔融延伸部11cの端部は、ファイバ保持筒12に対してθ1、θ2の角度を保つように固定される。これにより、センサヘッド2と、ミラー保持筒3との相対的な移動、回転による内周面100aの検査も可能となる。一例として、θ1、θ2、θ3は、それぞれ3°、8°、79°である。
【0019】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本形態では、円筒状の内周面100aの検査に適用したが、これに限られず例えば、ミラー保持筒3を回転させずに軸線AX方向へ移動させつつ、軸線AX方向と直交する方向へも移動させることにより平面状の表面を有する被検査物の検査装置として利用することもできる。
【符号の説明】
【0020】
1 検査ヘッド
2 センサヘッド
3 ミラー保持筒
11 投受光ファイバ
11c 熔融延伸部
11f 端面
12 ファイバ保持筒
14 レーザーダイオード(光源)
15 フォトディテクタ(検出手段)
100 被検査物
100a 内周面
AX 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出された検査光を導いて被検査物の表面に投光し、その反射光を受光して反射光の強度を検出する検出手段に反射光を導く投受光ファイバを有し、前記検出手段の検出結果に基づいて前記被検査物の表面を検査する表面検査装置の検査ヘッドであって、
前記投受光ファイバが、2本の光ファイバの一部を熔融延伸接合した熔融延伸部を有する光ファイバカプラであり、前記熔融延伸部から分岐した一方の光ファイバは前記光源からの検査光を導き、他方の光ファイバは前記検出手段に反射光を導き、前記熔融延伸部の端面から検査光が前記被検査物の表面に投光され、その反射光を前記端面が受光する表面検査装置の検査ヘッド。
【請求項2】
前記熔融延伸部の端面が、前記端面に入射する検査光の光路の法線方向に対して傾いている請求項1に記載の検査ヘッド。
【請求項3】
前記投受光ファイバを保持するファイバ保持筒を備え、
前記端面に入射する検査光の入射方向が前記ファイバ保持筒の軸線方向に対して傾いているとともに、前記端面から射出された検査光の光路が前記ファイバ保持筒の軸線方向に沿っている請求項2に記載の検査ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−78133(P2012−78133A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221637(P2010−221637)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】