説明

表面検査装置及び表面検査方法

【課題】物体の表面を撮像して生成される画像に基づいてその表面の荒れ具合を判定する表面検査装置を提供すること。
【解決手段】匣鉢20の内側底面20Bを検査する表面検査装置100は、内側底面20Bを撮像して処理対象画像を生成する処理対象画像生成部10と、処理対象画像の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成部11と、濃度ヒストグラム生成部11が生成する濃度ヒストグラムに基づいて内側底面20Bの荒れ具合を判定する荒れ具合判定部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の表面の荒れ具合を検査する装置及びその検査方法に関し、特に、その物体の表面を撮像して生成される画像に基づいて物体の表面の荒れ具合を検査する表面検査装置及び表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子工業用の粉体材料を匣鉢と呼ばれる升状の容器に入れ、ローラーコンベア等を用いてその匣鉢をトンネル炉等の連続焼成炉内に搬送し、その匣鉢内の粉体材料を焼成する方法が知られている。
【0003】
一般的に、匣鉢は、耐熱性に優れた緻密なセラミックスで形成され、その粉体材料の焼成工程を通じて、加熱され且つ冷却される。また、その加熱及び冷却の過程において、その匣鉢は、その本体内で局所的な温度差(温度勾配)を生じさせ、機械的な或いは熱的な応力差によるクラックをその表面に発生させる場合がある。さらに、連続焼成炉内において焼成される過程で、匣鉢内の粉体材料と匣鉢との反応によって匣鉢の内側が劣化し、その内側の表面が細かく剥離し、その匣鉢の内側の表面が荒れた状態になる場合がある。
【0004】
その結果、匣鉢の剥離した一部が、焼成される粉体材料に混入し、製品の品質に影響を及ぼすおそれがある。そのため、匣鉢は、定期的な目視観察によりその内側の表面の荒れ具合が検査される。しかしながら、目視観察は主観的な検査であるため、安定的な検査結果を得るのが困難である。
【0005】
従来、目視観察以外で物体の表面を観察する方法として、CCDカメラで受光する金属鋼帯表面からの反射光の状態の変化から金属鋼帯の表面にある疵を検出する表面検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1に記載の表面検査装置は、反射光を電気信号に変換し、判定閾値を超える電気信号に対応する光を反射させた部分を疵部と識別する。
【0007】
また、特許文献1に記載の表面検査装置は、検査対象となる金属鋼帯の代表である判定閾値決定用の特定の金属鋼帯の表面を撮像した画像の単位エリア毎の濃度ヒストグラムを求める。そして、その表面検査装置は、その濃度ヒストグラムのピーク位置における信号レベルを平均値とした場合の正規分布関数を想定し、そのピーク位置近傍の濃度ヒストグラム度数から、その想定した正規分布関数の標準偏差値を求め、その標準偏差値に対応する判定閾値を決定する。
【0008】
このように、特許文献1に記載の表面検査装置は、濃度ヒストグラムと正規分布関数とを利用して、判定閾値が地合信号レベル(疵無部の信号レベル)に基づいて決定されるように、すなわち、判定閾値の決定に疵部の信号レベルが影響しないようにする。
【0009】
その結果、特許文献1に記載の表面検査装置は、金属鋼帯の特性に応じて光の反射状態が金属鋼帯の長さ方向及び幅方向に規則的に変化する場合であっても、適切な判定閾値を単位エリア毎に設定することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−85096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の表面検査装置は、金属鋼帯の表面における疵の有無を判定することを目的とし、その判定閾値の設定のために濃度ヒストグラムと正規分布関数とを利用するのみである。そのため、1つ1つの剥離が小さくてもその剥離の数が多く表面全体としての荒れ具合が大きかったり、或いは、1つ1つの剥離が大きくてもその剥離の数が少なく表面全体としての荒れ具合が小さかったりというように程度の異なる様々な剥離が不規則に分布する表面の表面全体としての荒れ具合の検査に特許文献1に記載の表面検査装置を適用することはできない。
【0012】
上述の点に鑑み、本発明は、物体の表面を撮像して生成される画像に基づいて物体の表面の荒れ具合を検査する表面検査装置及び表面検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る表面検査装置は、物体の表面を検査する表面検査装置であって、前記物体の表面を撮像して処理対象画像を生成する処理対象画像生成部と、前記処理対象画像の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成部と、前記濃度ヒストグラム生成部が生成する濃度ヒストグラムに基づいて前記物体の表面の荒れ具合を判定する荒れ具合判定部とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の実施例に係る表面検査方法は、物体の表面を検査する表面検査方法であって、前記物体の表面を撮像して処理対象画像を生成する処理対象画像生成ステップと、前記処理対象画像の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成ステップと、前記濃度ヒストグラム生成ステップにおいて生成される濃度ヒストグラムに基づいて前記物体の表面の荒れ具合を判定する荒れ具合判定ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述の手段により、本発明は、物体の表面を撮像して生成される画像に基づいて物体の表面の荒れ具合を検査する表面検査装置及び表面検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係る表面検査装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】検査対象となる匣鉢の上面図である。
【図3】処理対象画像の例を示す図である。
【図4】輝度ヒストグラムの例を示す図である。
【図5】第一荒れ具合判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第二荒れ具合判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る表面検査装置100の構成例を示す機能ブロック図である。本実施例において、表面検査装置100は、例えば、匣鉢の内側の底面の荒れ具合を検査する。なお、表面検査装置100は、匣鉢の内側の壁面(側面)の荒れ具合を検査するために用いられてもよく、他の様々な物体の表面の荒れ具合を検査するために用いられてもよい。
【0018】
「荒れ具合」とは、表面を構成する材料の剥離の程度を意味し、基本的には、剥離量が大きいほど荒れ具合は大きい。すなわち、1つ1つの剥離が小さくても剥離の数が多ければ多いほど荒れ具合は大きくなり、また、剥離の数が少なくても1つ1つの剥離が大きければ大きいほど荒れ具合は大きくなる。
【0019】
本実施例において、表面検査装置100は、ローラーコンベアの搬送経路の側、特に、その搬送経路の一部がトンネル炉内を通るローラーコンベアのそのトンネル炉外にある搬送経路の側に設置され、主に、制御装置1、撮像装置2、及び出力装置3を有する。
【0020】
制御装置1は、表面検査装置100を制御するための装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-volatile RAM)等を備えたコンピュータである。制御装置1は、例えば、処理対象画像生成部10、濃度ヒストグラム生成部11、正規分布適合部12、及び荒れ具合判定部13のそれぞれの機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMに展開しながら、各機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
【0021】
撮像装置2は、制御装置1で処理される画像を取得する装置であり、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を備えたカメラである。
【0022】
本実施例において、撮像装置2は、その前を通過するようにローラーコンベアによって搬送される匣鉢を撮像し、撮像したその匣鉢の内側の底面の一部又は全部を底面画像として制御装置1に対して出力する。
【0023】
出力装置3は、各種情報を出力するための装置であり、例えば、制御装置1による匣鉢の内側の底面の荒れ具合の検査結果を表示するためのディスプレイ、又は、その検査結果を音声出力するためのスピーカ等である。
【0024】
次に、制御装置1が有する各機能要素について説明する。
【0025】
処理対象画像生成部10は、撮像装置2が取得した画像から処理対象画像を生成するための機能要素であり、例えば、撮像装置2が取得した底面画像に対してその輝度に基づくグレースケール化処理を施す。後述の濃度ヒストグラムの生成の用に供するためである。この場合、グレースケール化された底面画像の各画素の輝度は、例えば、256階調で表現され、値が大きい程明るい。
【0026】
また、処理対象画像生成部10は、撮像装置2が取得した底面画像が既に濃度ヒストグラムの生成に適した状態であれば、その底面画像をそのまま処理対象画像としてもよい。
【0027】
なお、処理対象画像のサイズは、底面画像の全部に対応するものであってもよく、底面画像の一部に対応するものであってもよい。
【0028】
また、処理対象画像における単位画素のサイズは、その底面画像における単位画素のサイズと同じであってもよく、その底面画像における複数の単位画素(例えば、縦3画素×横3画素の9画素である。)を一纏めにしたサイズであってもよい。例えば、処理対象画像における単位画素のサイズが底面画像における単位画素の9画素分のサイズに相当する場合、その底面画像における9画素のそれぞれの輝度の統計値(例えば、平均値、最大値、最小値、中間値等である。)又はその9画素の中心画素の輝度がその処理対象画像における単位画素の輝度として採用される。なお、処理対象画像における単位画素のサイズは、例えば、検査対象となる表面における個々の剥離の平均的な大きさに応じて決定され、剥離の大きさが大きいほど単位画素のサイズが大きくなるように決定される。
【0029】
図2は、検査対象となる匣鉢20の上面図を示す。また、図2は、匣鉢20が内側底面20B、及び、4つの内側側壁20L1〜20L4を有することを示す。内側底面20B、及び、4つの内側側壁20L1〜20L4は、粉体材料を受け容れる空間を規定する。
【0030】
撮像装置2は、例えば、匣鉢20の全体を含む領域D1を撮像し、撮像した領域D1内の所定領域を底面画像D2として取得して制御装置1に出力する。なお、撮像装置2は、領域D2を撮像し、撮像した領域D2をそのまま底面画像D2として制御装置1に出力してもよい。
【0031】
図2において、領域D2は、匣鉢20の内側底面20Bのほぼ全体を含むが、匣鉢20の内側底面20Bの特定の局所領域のみを含むものであってもよい。
【0032】
制御装置1の処理対象画像生成部10は、上述のようにして取得される底面画像D2に対してその輝度に基づくグレースケール化処理を施し、処理対象画像を生成する。
【0033】
図3は、処理対象画像生成部10が生成する処理対象画像の例を示し、図3(A)〜図3(C)の順に荒れ具合が大きくなる3つの処理対象画像を示す。
【0034】
図3(A)〜図3(C)のそれぞれにおいて、黒い部分は、剥離が生じていない部分を表し、白い部分は、剥離が生じている部分を表す。
【0035】
濃度ヒストグラム生成部11は、処理対象画像の濃度ヒストグラムを生成する機能要素であり、例えば、処理対象画像における単位画素の輝度に関する輝度ヒストグラムを生成する。なお、濃度ヒストグラム生成部11は、処理対象画像における単位画素の他の特性値(例えば、色度である。)に関するヒストグラムを生成してもよい。
【0036】
図4は、濃度ヒストグラム生成部11が生成する輝度ヒストグラムの例を示す図である。輝度ヒストグラムは、処理対象画像の単位画素群のそれぞれにおける輝度の度数分布を表すグラフであり、横軸が輝度を表し、縦軸が度数(単位画素数)を表す。図4において、輝度は、8ビット、すなわち0〜255の256段階の階調で表される。
【0037】
また、図4(A)の輝度ヒストグラムは、図3(A)の処理対象画像に対応し、荒れ具合が比較的小さい状態に対応する。一方、図4(B)の輝度ヒストグラムは、図3(C)の処理対象画像に対応し、荒れ具合が比較的大きい状態に対応する。
【0038】
正規分布適合部12は、濃度ヒストグラム生成部11が生成する濃度ヒストグラムに対して正規分布を適合させる機能要素であり、例えば、濃度ヒストグラム生成部11が生成する輝度ヒストグラムに適合する2つの正規分布を導き出す。
【0039】
図4(A)の実線40Aは、各輝度に対応する画素数の実際の推移を概略的に示し、破線41A及び一点鎖線42Aは、正規分布適合部12が導き出した、輝度ヒストグラム(実線40A)に適合する2つの正規分布の曲線を示す。同様に、図4(B)の実線40Bは、各輝度に対応する画素数の実際の推移を概略的に示し、破線41B及び一点鎖線42Bは、正規分布適合部12が導き出した、輝度ヒストグラム(実線40B)に適合する2つの正規分布の曲線を示す。
【0040】
具体的には、図4(A)で示すように、正規分布適合部12は、最尤法、最小二乗法等の既知の技術を用いて、濃度ヒストグラム生成部11が生成する輝度ヒストグラム40Aの積分値(実線40Aと横軸とで囲まれる面積)が、第一の正規分布41Aの積分値(破線41Aと横軸とで囲まれる面積)と第二の正規分布42Aの積分値(破線42Aと横軸とで囲まれる面積)との合計に近似するように、2つの正規分布のそれぞれのパラメータ(ピーク高さ、平均値、標準偏差等である。)を導き出す。なお、第一の正規分布41Aは、剥離が生じていない部分の輝度分布に対応し、第二の正規分布42Aは、剥離が生じている部分の輝度分布に対応する。また、正規分布適合部12は、第一の正規分布41Aの積分値と第二の正規分布42Aの積分値との比がおおよそ所定の比(例えば、7:3である。)となるように、2つの正規分布のそれぞれのパラメータを導き出す。なお、正規分布適合部12は、2つの正規分布のそれぞれのパラメータを導き出す場合と同様に、3つ以上の正規分布のそれぞれのパラメータを導き出すようにしてもよい。図4(B)についても同様である。
【0041】
荒れ具合判定部13は、物体の表面の荒れ具合を判定する機能要素であり、例えば、処理対象画像の濃度ヒストグラムに基づいて物体の表面の荒れ具合を判定する。
【0042】
本実施例では、図4(A)で示すように、荒れ具合判定部13は、濃度ヒストグラム生成部11が生成する輝度ヒストグラム40Aのピーク高さPAにより匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合を判定する。
【0043】
同様に、図4(B)で示すように、荒れ具合判定部13は、濃度ヒストグラム生成部11が生成する輝度ヒストグラム40Bのピーク高さPBにより匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合を判定する。
【0044】
なお、匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合は、輝度ヒストグラムのピーク高さが低いほど大きい。剥離が生じている部分が少なく表面状態が均一な場合には輝度のバラツキが小さくピーク高さも高いが、剥離が生じている部分が増えるにつれて表面状態が不均一となり、輝度のバラツキが大きくピーク高さも低くなるためである。したがって、図4(A)と図4(B)との比較では、図4(B)で示す輝度ヒストグラムが、より大きい荒れ具合を示す。
【0045】
その後、荒れ具合判定部13は、荒れ具合の判定結果を出力装置3に対して送信する。具体的には、荒れ具合判定部13は、ピーク高さPAの値(画素数)又はその値に基づく二次的な値(例えば、荒れ具合を複数段階のレベルで表す場合のそのレベル値)を出力装置3に対して送信する。出力装置3は、受信した値に基づいて、匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合を数値形式、テキスト形式、又は、グラフィック形式等の任意の形式でディスプレイ上に表示する。数値形式は、例えば、ピーク高さPAの値(画素数)、剥離が生じている部分の面積比率、剥離が生じていない部分の面積比率等を含む。テキスト形式は、例えば、匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合を複数の段階で表す言語表現(例えば、「大」、「中」、「小」である。)等を含む。グラフィック形式は、例えば、バーグラフ表示、メータ表示等を含む。
【0046】
また、荒れ具合判定部13は、物体の表面の荒れ具合が所定の条件を満たすと判断した場合に、警告の出力を指示する制御信号を出力装置3に対して送信する。具体的には、荒れ具合判定部13は、ピーク高さPAの値(画素数)が所定の閾値を下回った場合に、その制御信号を出力装置3に対して送信する。出力装置3は、受信した制御信号に応じて、匣鉢20が不良(継続的な使用に適さない状態)である旨を示す警告音又は音声メッセージをスピーカから音声出力する。所定の閾値は、匣鉢20を形成する材料の種類、焼成される粉体材料の種類等に応じて予め設定される値であり、制御装置1のNVRAM等に記憶されている。
【0047】
また、荒れ具合判定部13は、濃度ヒストグラムのピーク高さの値(画素数)による荒れ具合の判定に加えて、或いは、濃度ヒストグラムのピーク高さの値(画素数)による荒れ具合の判定に代えて、正規分布適合部12が導き出した複数の正規分布のそれぞれのパラメータ(例えば、平均値及び標準偏差である。)により、荒れ具合を判定してもよい。
【0048】
具体的には、図4(A)で示すように、荒れ具合判定部13は、正規分布適合部12が導き出した第一の正規分布41Aの平均値41Aaと第二の正規分布42Aの平均値42Aaとの間の差DAにより、荒れ具合を判定する。
【0049】
同様に、図4(B)で示すように、荒れ具合判定部13は、正規分布適合部12が導き出した第一の正規分布41Bの平均値41Baと第二の正規分布42Bの平均値42Baとの間の差DBにより、荒れ具合を判定する。
【0050】
なお、匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合は、2つの正規分布のそれぞれの平均値の差が大きいほど大きい。剥離が生じている部分が増えるにつれて、剥離が生じている部分の輝度分布と、剥離が生じていない部分の輝度分布との違いがより明確になるためである。したがって、図4(A)と図4(B)との比較では、図4(B)で示す輝度ヒストグラムが、より大きい荒れ具合を示す。
【0051】
その後、荒れ具合判定部13は、荒れ具合の判定結果を出力装置3に対して送信する。また、荒れ具合判定部13は、差DAが所定の閾値を上回った場合に、警告の出力を指示する制御信号を出力装置3に対して送信する。所定の閾値は、匣鉢20を形成する材料の種類、焼成される粉体材料の種類等に応じて予め設定される値であり、例えば、制御装置1のNVRAM等に記憶されている。
【0052】
なお、荒れ具合判定部13は、第一の正規分布41Aのピーク高さ、第二の正規分布42Aのピーク高さ、第一の正規分布41Aのピーク高さと第二の正規分布42Aのピーク高さとの間の差、第一の正規分布41Aの標準偏差の大きさ、第二の正規分布42Aの標準偏差の大きさ等により、匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合を判定してもよい。
【0053】
次に、図5を参照しながら、表面検査装置100が物体の表面の荒れ具合を判定する処理の例(以下、「第一荒れ具合判定処理」とする。)について説明する。なお、図5は、第一荒れ具合判定処理の流れを示すフローチャートであり、表面検査装置100は、ローラーコンベアにより匣鉢20のそれぞれが撮像装置2の前に運ばれる度にこの第一荒れ具合判定処理を実行する。
【0054】
最初に、表面検査装置100は、撮像装置2により匣鉢20の底面画像を取得する(ステップS1)。
【0055】
その後、表面検査装置100は、制御装置1の処理対象画像生成部10により、底面画像に基づいて処理対象画像を生成し(ステップS2)、制御装置1の濃度ヒストグラム生成部10により、処理対象画像における単位画素の輝度に関する輝度ヒストグラムを生成する(ステップS3)。
【0056】
その後、表面検査装置100は、制御装置1の荒れ具合判定部13により、輝度ヒストグラムに基づいて匣鉢20の内側の底面20Bの荒れ具合を判定し、その判定結果を出力装置3に表示する(ステップS4)。
【0057】
さらに、表面検査装置100は、制御装置1の荒れ具合判定部13により、輝度ヒストグラムのピーク高さと所定の閾値とを比較し(ステップS5)、そのピーク高さが所定の閾値を下回る場合に(ステップS5のYES)、出力装置3を用いて警告を出力する(ステップS6)。匣鉢20が不良(継続的な使用に適さない状態)である旨を検査者に知らせるためである。なお、表面検査装置100は、そのピーク高さが所定の閾値以上の場合には(ステップS5のNO)、出力装置3から警告を出力することなく、今回の第一荒れ具合判定処理を終了させる。匣鉢20の内側底面20Bの現在の荒れ具合から匣鉢20の継続的な使用が未だ可能であると判断できるためである。
【0058】
次に、図6を参照しながら、表面検査装置100が物体の表面の荒れ具合を判定する処理の別の例(以下、「第二荒れ具合判定処理」とする。)について説明する。なお、図6は、第二荒れ具合判定処理の流れを示すフローチャートであり、表面検査装置100は、ローラーコンベアにより匣鉢20のそれぞれが撮像装置2の前に運ばれる度にこの第二荒れ具合判定処理を実行する。
【0059】
第二荒れ具合判定処理は、主に、輝度ヒストグラムのピーク高さにより警告の要否を決定する処理(図5のステップS5〜S6)の代わりに、その輝度ヒストグラムに適合する2つの正規分布のパラメータにより警告の要否を決定する処理(ステップS15〜S18)を実行する点で第一荒れ具合判定処理と相違する。そのため、共通点の説明を省略しながら、相違点を詳細に説明する。
【0060】
表面検査装置100は、制御装置1の正規分布適合部12により、輝度ヒストグラムに適合する2つの正規分布を導き出す(ステップS15)。なお、2つの正規分布の一方は、匣鉢20の内側底面20Bにおける剥離が生じていない部分の輝度分布に対応し、その他方は、剥離が生じている部分の輝度分布に対応する。
【0061】
なお、図6では、表面検査装置100は、輝度ヒストグラムに基づいて匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合を判定した後で2つの正規分布を導き出すが、荒れ具合を判定する前に2つの正規分布を導き出すようにしてもよい。この場合、表面検査装置100は、2つの正規分布のそれぞれのパラメータに基づいて匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合を判定してもよい。
【0062】
その後、表面検査装置100は、それら2つの正規分布のそれぞれの平均値を取得し(ステップS16)、それら平均値の差と所定の閾値とを比較する(ステップS17)。
【0063】
そして、表面検査装置100は、それら平均値の差が所定の閾値を上回る場合に(ステップS17のYES)、出力装置3を用いて警告を出力する(ステップS18)。匣鉢20が不良(継続的な使用に適さない状態)である旨を検査者に知らせるためである。なお、表面検査装置100は、それら平均値の差が所定の閾値未満の場合には(ステップS17のNO)、出力装置3から警告を出力することなく、今回の第二荒れ具合判定処理を終了させる。匣鉢20の内側底面20Bの現在の荒れ具合から匣鉢20の継続的な使用が未だ可能であると判断できるためである。
【0064】
なお、表面検査装置100は、第一荒れ具合判定処理において、輝度ヒストグラムのピーク高さが所定の閾値を下回ると判断した場合に、第二荒れ具合判定処理を実行するようにしてもよい。匣鉢20の内側底面20Bの荒れ具合をより正確に判定するためである。この場合、表面検査装置100は、図6のステップS15〜S18を、図5のステップS6の代わりに実行する。
【0065】
以上の構成により、表面検査装置100は、匣鉢20の内側底面20Bを撮像して生成される画像の輝度ヒストグラムに基づいてその内側底面20Bの荒れ具合を検査するため、効率的にその内側底面20Bの荒れ具合を検査することができる。
【0066】
また、表面検査装置100は、輝度ヒストグラムのピーク高さにより内側底面20Bの荒れ具合を判定するため、内側底面20Bの荒れ具合を簡易に且つ迅速に判定することができる。
【0067】
また、表面検査装置100は、輝度ヒストグラムのピーク高さにより内側底面20Bの荒れ具合を判定する代わりに、輝度ヒストグラムに適合される2つの正規分布のそれぞれの平均値の差により内側底面20Bの荒れ具合を判定する。これにより、表面検査装置100は、内側底面20Bの荒れ具合をより詳細に判定することができる。
【0068】
また、表面検査装置100は、輝度ヒストグラムのピーク高さにより内側底面20Bの荒れ具合を判定し、その判定結果が所定条件を満たす場合に、追加的に、その輝度ヒストグラムに適合される2つの正規分布のそれぞれの平均値の差により内側底面20Bの荒れ具合を判定する。これにより、表面検査装置100は、内側底面20Bの荒れ具合を簡易に且つ迅速に判定できるようにし、その判定結果によっては、内側底面20Bの荒れ具合をより詳細に判定することができる。
【0069】
また、表面検査装置100は、内側底面20Bの荒れ具合が所定レベルを上回る場合には、匣鉢20が継続的な使用に適さない状態である旨を示す警告を出力する。これにより、表面検査装置100は、使用に適さない匣鉢20が継続的に使用されてしまうのを防止することができ、匣鉢20の一部が粉体材料に混入するのを防止し、製品の品質を向上させることができる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0071】
例えば、上述の実施例において、表面検査装置100は、匣鉢20の内側底面20Bにおける荒れ具合を判定するが、匣鉢の内側の壁面における荒れ具合を判定するようにしてもよい。
【0072】
また、表面検査装置100は、焼成される粉体材料を受け容れ或いは支持する皿状や板状の他の焼成セッターの内側表面における荒れ具合を判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 制御装置
2 撮像装置
3 出力装置
10 処理対象画像生成部
11 濃度ヒストグラム生成部
12 正規分布適合部
13 荒れ具合判定部
20 匣鉢
20B 内側底面
20L1〜20L4 内側側壁
100 表面検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面を検査する表面検査装置であって、
前記物体の表面を撮像して処理対象画像を生成する処理対象画像生成部と、
前記処理対象画像の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成部と、
前記濃度ヒストグラム生成部が生成する濃度ヒストグラムに基づいて前記物体の表面の荒れ具合を判定する荒れ具合判定部と、
を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記荒れ具合判定部は、前記濃度ヒストグラム生成部が生成する濃度ヒストグラムのピークの高さにより前記物体の表面の荒れ具合を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記濃度ヒストグラム生成部が生成する濃度ヒストグラムに対して複数の正規分布を適合させる正規分布適合部を更に備え、
前記荒れ具合判定部は、前記複数の正規分布のパラメータにより前記物体の表面の荒れ具合を判定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記物体の表面は、匣鉢の内側底面であり、
前記処理対象画像生成部は、前記匣鉢の上方に配置された撮像部により前記匣鉢の内側底面を撮像する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の表面検査装置。
【請求項5】
物体の表面を検査する表面検査方法であって、
前記物体の表面を撮像して処理対象画像を生成する処理対象画像生成ステップと、
前記処理対象画像の濃度ヒストグラムを生成する濃度ヒストグラム生成ステップと、
前記濃度ヒストグラム生成ステップにおいて生成される濃度ヒストグラムに基づいて前記物体の表面の荒れ具合を判定する荒れ具合判定ステップと、
を有することを特徴とする表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108849(P2013−108849A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254281(P2011−254281)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】