説明

表面検査装置

【課題】円筒体の内面の溝幅を決定可能な表面検査装置を提供する。
【解決手段】投/受光部30を有し且つ被検査物たる円筒体2の内部に挿入される検査部3備え、検査部3を円筒体2の軸線Cを中心に回転させると共に軸線方向に相対的に進退させ、投/受光部30より円筒体2の内面に光Lを投光し、反射光を受光し、受光された光に基づいて内面に対応した二次元画像を生成する表面検査装置1において、その二次元画像を溝Gの長さ方向座標と溝Gの幅方向座標とで表し、長さ方向座標を固定し、幅方向座標に沿って移動しながら、受光量が特定の閾値を超えて変化する、溝Gの一側縁部に対応する一点g1と溝Gの他側縁部に対応する他点g2との幅方向座標を求め、一点の幅方向座標と他点の幅方向座標とから区間の溝幅を求めるアルゴリズムを有する溝幅決定手段46を有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物たる円筒体の内面に存在する溝を検査する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用エンジンのシリンダヘッドの内面には、バルブの気密性及び耐久性を確保するため、凹部が形成され、この凹部にリング状のバルブシートが取り付けられている。この凹部の側面とバルブシートの側面との間には全く隙間が存在しないことが好ましいが、製造上の誤差等によって、実際には多少の隙間が発生する。そして、この隙間が大きくなると所望のエンジン性能を得ることができないため、この隙間の幅を正確に測定することが必要である。
【0003】
このような、円筒体の内面の隙間等の溝を検査する装置として、従来、投/受光部を有し且つ円筒体の内部に挿入される検査部を備え、その検査部を円筒体の軸線を中心として回転させると共に軸線方向に進退させ、投/受光部より円筒体の内面に光を投光しつつその反射光を受光し、受講された光に基づいて内面に対応した二次元画像を生成する表面検査装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−281582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の表面検査装置は、手作業によらず検査できるため自動化が可能で、検査結果に客観性がある。しかし、測定される値は、単に円筒体の内面の二次元画像であるため、例えばインラインで使用して、溝が所定の幅以上のものを不良品として排除するシステムを構築するには、溝の幅を自動的に検出する手段が更に必要である。
【0005】
そこで本発明は、円筒体の内面の溝を検査し、その検査結果から、溝の大きさを決定することのできる手段を有する表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、投/受光部(30)を有し且つ被検査物たる円筒体(2)の内部に挿入される検査部(3)備え、該検査部(3)を前記円筒体(2)の軸線(C)を中心として相対的に回転させると共に前記軸線方向に相対的に進退させ、前記投/受光部(30)より前記円筒体(2)の内面に光(L)を投光しつつその反射光を受光し、受光量に基づいて前記内面に対応した二次元画像を生成する表面検査装置(1)において、前記円筒体(1)の内面に存在する溝(G)の幅を求めるために、前記二次元画像を、前記溝(G)の長さ方向座標と前記溝(G)の幅方向座標とで表し、長さ方向座標を固定し、幅方向座標に沿って移動しながら、前記受光量が特定の閾値を超えて変化する、前記溝(G)の一側縁部に対応する一点(g1)と前記溝(G)の他側縁部に対応する他点(g2)との幅方向座標を求め、前記一点の幅方向座標と前記他点の幅方向座標とから前記区間の溝幅を求めるアルゴリズムを有する溝幅決定手段(46)を有することにより上記課題を解決する。
【0007】
本発明によると、円筒体の内面の二次元画像から検査対象の区間内の代表的な溝幅を決定するアルゴリズムを有する溝幅決定手段を有するため、自動的且つ客観的にその区間内の溝幅を決定することができる。
【0008】
本発明の一形態において、前記溝の長さ方向の少なくとも一部の範囲を対象区間として、該区間内において、前記一点(g1)の幅方向座標及び前記他点(g2)の幅方向座標を、複数の長さ方向座標についてそれぞれ求め、それぞれの長さ方向座標について求められた前記一点の幅方向座標のうちの、最も多くの点が占めた幅方座標を一側縁部の代表座標とし、それぞれの長さ方向座標について求められた前記他点の幅方向座標のうちの、最も多くの点が占めた幅方向座標を他側縁部の代表座標とし、前記一側縁部の代表座標と前記他側縁部の代表座標との差を前記区間の溝幅としてもよい。
【0009】
これによると、長さ方向の少なくとも一部の範囲を対象区間内において求めた複数の点のうちの最も多くの点が占めた座標に基づいて溝幅を決定しているため、その区間内での平均的な溝幅を把握することができる。
【0010】
本発明の一形態において、前記区間を、複数の区間とすることができる。これによると、複数の区間について溝幅を決定するため、溝幅が溝の長手方向に対して一定でない場合にその溝幅のばらつきを把握することができる。また、前記複数の区間は、等間隔としてもよい。
【0011】
前記溝(G)が前記円筒体(2)の内面の周方向に沿って存在する場合、前記溝(G)の幅方向は前記円筒体(2)の軸方向であり、前記溝(G)の長さ方向が前記円筒体(2)の内面の周方向となる。これによると、円筒体の内面の周方向に存在する溝の幅を、自動的且つ客観的に決定することができる。
【0012】
更に、本発明の一形態において前記円筒体(2)は、車両の内燃機関のシリンダヘッドであり、前記溝が、前記シリンダヘッドの内面に設けられた凹部に挿入されたバルブシートと前記凹部との隙間(G)であってもよい。これによると、バルブシートと凹部との隙間の幅を、自動的且つ客観的に決定することができる。
【0013】
また、本発明の一形態において、前記溝(G)が前記円筒体(2)の軸方向に沿って存在する場合、前記溝(G)の幅方向が前記円筒体の内面の周方向であり、前記溝の長さ方向が前記円筒体の軸方向となる。これによると、円筒体の内面の軸方向に沿って存在する溝の幅を、自動的且つ客観的に決定することができる。
【0014】
前記二次元画像は、前記受光量に基づく信号を、フーリエ変換処理し、高周波数成分をカットし、更に逆フーリエ変換処理した信号により生成された画像とすることができる。また、前記二次元画像は、前記受光量に基づく信号を、ローパスフィルタで処理した信号により生成された画像とすることもできる。これによると、二次元画像において、表面の荒れや汚れによる光の散乱の影響や、他のノイズの影響を排除することができ、より正確な溝幅決定を行うことができる。
【0015】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の表面検査装置によれば、円筒体の内面に形成された溝の溝幅を求めるアルゴリズムを有する溝幅決定手段を備えているため、内面検査が必要な製造工程においてインラインで溝幅を決定して不良品を排除することができ、全品検査も可能となり、製品精度及びスループットの向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の表面検査装置1の一形態の概略図である。図示したように、本発明の表面検査装置1は、被検査物である円筒体2の内部に挿入され、円筒体2の内面に光Lを投光しつつその反射光を受光する検査部3と、受光した光を非線形に増幅する非線形増幅器手段である非線形増幅器4と、その非線形増幅部4から送られる信号を、クロック信号発生手段であるエンコーダ5からのサンプリングクロック信号によりA/D変換するA/D変換手段であるA/D変換器6と、検査部3及びA/D変換器6に対する各種制御を行う制御部7と、それらの各種制御及びその他の後述する処理を行う演算処理部8と、を備える。
【0018】
図2は検査部3の概略構成を示した図である。図示したように、検査部3は、光源であるレーザダイオード(以下、LDと表記する)24と、受光した光を光電変換して受光量に応じた電圧を発生するフォトディテクタ(以下、PDと表記する)25と、LD24から及びPD25へ光を伝達するセンサヘッド10と、センサヘッド10の外部を囲む外筒11と、外筒11を回転させる回転手段である回転機構12と、外筒11を進退移動させる直線移動手段である直線移動機構13と、回転に合わせてサンプリングクロック信号を発生するエンコーダ5と、センサヘッド10を移動させて光の焦点合わせを行うセンサヘッド調整機構14と、を備える。
【0019】
センサヘッド10は、投光ファイバ20及び受光ファイバ21と、それらの投光ファイバ20及び複数の受光ファイバ21を保持する保持筒22と、保持筒22の先端に取り付けられ、投光ファイバ20からの光を外部に対して集光し、外部からの光を内部に対して集光する凸レンズ23とを備える。そして投光ファイバ20の基端はLD24に接続され、受光ファイバ20の基端はPD25に接続されている。そしてLD24で発生された光は投光ファイバ20を介して凸レンズ23へ投光され、凸レンズ23から入射した光は受光ファイバ21を介してPD25に伝達される。
【0020】
図3(a)は投光ファイバ20と受光ファイバ21との保持筒22内での断面図を示したものである。図示したように、一本の投光ファイバ20の周りに4本の受光ファイバ21が配置され、また投光ファイバ20の径に比べて受光ファイバ21の径が大きいため、投光面積に比べて受光面積が大きい。なお、投光ファイバの周り配置する受光ファイバの数は4本に限定されず、複数であれば良く、例えば図3(b)に示したように、一本の投光ファイバの周りに3本の受光ファイバを配置することもできる。
【0021】
図2に戻り、センサヘッド10の外側を覆う外筒11は、センサヘッド10と同軸に配置され、その先端の側部には光を通すための投/受光部30が開口されている。また、外筒11内部の先端部には反射鏡31が当該外筒11の軸線Cに対して45度の角度で取り付けられている。この反射鏡31により、センサヘッド10の凸レンズ23を通った光は直角に曲げられ、投/受光部30を通って円筒体2の内面の検査領域Rに投光されるようになっている。また検査領域Rからの反射光も投/受光部30を通って反射鏡31によって直角に曲げられ凸レンズ23を通って受光ファイバ21へ伝達される。
【0022】
一方、外筒11の基端側に取り付けられた回転機構12は回転モータを含んでおり、この回転機構12によって外筒11が回転されると、その外筒11に固定された反射鏡31も共に回転し、検査領域Rの位置が円筒体2の内面の周方向に沿って回転する。そして、外筒11が一回転すると、検査領域Rは円筒体2の内面を一周し、その回転に合わせて、エンコーダ5からサンプリングクロック信号が発生される。
【0023】
また、検査部3には、リニアモータ等の直線移動機構13が取り付けられており、外筒11が円筒体2の軸方向Cに沿って進退移動することができるようになっている。これにより、投/受光部30からの光は円筒体2の内面を周方向に沿って走査すると共に軸方向にも相対的に移動し、円筒体2の内面の全体を広範囲で検査することができる。
【0024】
図1に戻り、受光ファイバ21から伝達された光は、PD25により光電変換され、受光量に応じた電圧に変換される。そしてPD25に接続されている非線形増幅器4は、PD25からの電圧を非線形に増幅するものであり、ログアンプ(図示せず)を有し、ここで、電圧の低い部分が大きく増幅され、電圧の高い部分は小さく増幅される。
【0025】
なお、この非線形増幅器4の次に、高速フーリエ変換装置、ローパスフィルタ及び逆フーリエ変換装置を配置することもできる。あるいは、非線形増幅器4の次にローパスフィルタのみ配置することもできる。これによると、高周波領域に多く表れる表面の荒れや汚れによる光の散乱の影響や、他のノイズの影響を排除することができる。例えば、高速フーリエ変換装置、ローパスフィルタ及び逆フーリエ変換装置を配置した場合、一周の検査時間20msとしたときに、その1/100である0.2ms、周波数にして5000Hz以上をローパスフィルタでカットすると効果的である。
【0026】
非線形増幅器4は直接、又は高速フーリエ変換装置、ローパスフィルタ及び逆フーリエ変換装置、若しくはローパスフィルタを介在させて、更にA/D変換器6に接続され、このA/D変換器で信号は、エンコーダ5から発生されるサンプリングクロックに従ってサンプリングされてA/D変換される。サンプリングされたデジタル信号は、制御部7を介して後述する演算処理部8の記憶装置に記録される。なお、制御部7は、LD24、回転機構12、直線移動機構13、センサヘッド調整機構14の制御も行う。
【0027】
図4は制御部7と接続されている演算処理部8の構成図を示したものである。図示したように、この演算処理部8は、演算装置40と、演算装置40に対する入力装置41としてのキーボード41a及びマウス41bと、必要に応じて出力装置42としてのモニタ42a及びプリンタ42bとを備えている。また、演算装置40は、例えばマイクロプロセッサ及びその動作に必要な記憶装置43(RAM及びROM)等の周辺装置を備えたコンピュータユニットで構成される、例えばパーソナルコンピュータを使用することができる。
【0028】
この演算装置40は、円筒体2の内面の周方向の位置をx座標とし、円筒体2の内面の長手方向位置をy座標とした二次元平面において、上述したように回転移動に合わせてサンプリングされて記憶装置43に記憶された受光量に相当するデジタル信号を画素の輝度の強弱として表す表示制御手段44を更に備える。また、その表示された二次元画像を2値化及びエッジ処理等する画像処理手段45も備えている。
【0029】
更に、この演算装置40は、円筒体2の内面に設けられた溝の幅を求めるための溝幅決定手段46も備える。この溝幅決定手段46は、受光量を画素の輝度の強度で表した二次元画像を2値化し、その画像を更にエッジ処理した画像を、y方向に延びる直線に沿って複数に分割し、分割区間毎に溝幅を決定するものである。なお、本形態においてはエッジ処理した画像を分割するが、これに限定されず、受光量をその強度で表した二次元画像又は、それを2値化した画像を分割してもよい。
【0030】
図5は、溝幅決定手段46が分割区間毎に溝幅を決定するアルゴリズムを示したフローチャートである。このフローチャートでは、まずステップ1において、作業者が入力装置41から入力する分割数等の指示に基づいて二次元画像平面をy方向に延びる直線に沿って複数に分割する。ステップ2では一の分割区間内において、x軸座標を一点に固定し、y軸に沿って溝の一方から溝に向って移動し、画素の輝度が隣接画素間で特定の閾値を超えて変化する一点を検索し、そのときのy座標を溝の一側縁部に対応するy座標として記憶する。ステップ3では、同じx軸座標上において、y軸に沿って溝の他方から溝に向って移動し、受光量に相当する画素の輝度が隣接画素間で特定の閾値を超えて変化する他点を検索し、そのときのy座標を溝の他側縁部に対応するy座標として記憶する。ステップ4において、予め作業者によって設定された、一の分割区間内で検索すべきx座標の数だけ両側縁部のy座標を求めたか検討する。そして、まだ所定の数、求めていない場合は、ステップ5に進み、同一の分割区間内でx座標を移動して、またステップ2に戻る。そしてステップ2からステップ4に至る動作を繰り返す。所定の数のx座標についてそれぞれ両側縁部のy座標を求めたら次のステップ6へと進む。ステップ6では、ステップ2で記憶した複数の一側縁部のy座標を集計し、そのうちの、集計数が最も多いy座標を一側縁部の代表座標とする。ステップ7では、同様にステップ3で記憶した複数の他側縁部のy座標を集計し、そのうちの集計数が最も多いy座標の他側縁部の代表座標とする。ステップ8において、その一側縁部の代表座標と他側縁部の代表座標の差を求め、その差をその分割区間における代表的な溝幅として記憶する。ステップ9において全分割区間について代表的な溝幅を決定したか検討し、全分割区間について決定されていない場合は、ステップ10により分割区間を移動して再度のステップ2に戻り、同様の作業を行う。全分割区間について代表的な溝幅を決定すると、フローチャートは終了する。そしてその計算結果は適宜モニタ等の出力装置から出力される。
【0031】
次に、本形態の表面検査装置で、自動車のエンジンのシリンダヘッドの、内面に形成された凹部の側面とその凹部に取り付けられたリング状のバルブシートの側面との隙間の幅を検査し、その幅を測定する場合について説明する。
【0032】
図6(a)は自動車のエンジンのシリンダヘッドの概略図である。エンジンのシリンダヘッド2は、通常アルミニウム合金等で製造されており、燃焼室内に吸入空気を供給するための吸気ポート101と、燃焼後の排気ガスを排出するための排気ポート102とが形成されている。各ポート101,102は、それぞれバルブ103によって開閉されるようになっており、また各ポート101,102の先端には、凹部104が設けられ、この凹部104には、バルブの気密性と耐久性を確保するために、鉄系の焼結材料等で作られたリング状のバルブシート105が嵌め込まれている。このバルブシート105と凹部104とは隙間なく嵌合されていることが望ましいが、製造上の誤差等によって、実際には多少の隙間Gが発生する。そして、この隙間Gが大きくなると所望のエンジン性能を得ることができないため、この隙間Gの幅を正確に測定し、一定の値以上の隙間を有する不良品は排除することが必要である。このような隙間Gは、図示したようにシリンダヘッド2の内面に存在し、直接目視することができない。このため、従来は、作業者が手作業により隙間Gに薄板材からなるシムを差し込み、シムが入ればその厚さの隙間Gが存在すると判断する方法が広く用いられている。しかし、この方法は、作業者の熟練度の影響が大きく、客観性に欠け、更に、手作業であるため、全品検査が困難であった。
【0033】
本形態の表面検査装置による、このようなシリンダヘッド2の内面に形成された凹部の側面とその凹部に取り付けられたリング状のバルブシート105の側面との間の幅の検査及びその幅の決定は、以下のように行う。まず、バルブ103が取り付けられていない状態で、吸気ポート101又は排気ポート102のいずれか検査を行うポート内に、シリンダヘッド2の軸線と外筒11の軸線Cとを一致させて、投/受光部30がバルブシートの位置105にくるようにして表面検査装置1の外筒11を配置する。なお、図6(b)は吸気ポート101に表面検査装置1を挿入する場合を示した。次に、図2に示したセンサヘッド調整機構14によってセンサヘッド10を移動させ、シリンダヘッド2の内面に光Lの焦点を合わせる。これにより、LD24からの光は、投光ファイバ20を通って、凸レンズ23により集光されて反射鏡31に到り、直角に光路が変更されて投/受光部30からバルブシート105の内面の検査領域Rに投光される。
【0034】
この状態で、回転機構12及び直線移動機構13を駆動させると、シリンダヘッド2の内面に投光ファイバ20からの光が順次投光されて、内面の全周から反射光が受光ファイバ21に受光される。そして外筒11は回転し且つ軸方向Cに進み、バルブシート105の内面からシリンダヘッド2の内面にわたる所定範囲内の検査が可能になる。
【0035】
反射された光Lは投/受光部30を通って反射鏡31で直角に曲げられて、凸レンズ23で集光され、受光ファイバ21に受光される。この場合、シリンダヘッド2の表面は比較的滑らかであるため、投光ファイバ20から投光された光の大部分が正反射して受光ファイバ21によって受光される。バルブシート105の表面は、シリンダヘッド2の内面と比較すると表面がざらついているため、投光ファイバ20を細くして照射スポット径を小さくすると光の散乱の影響が出てくる。溝Gの部分においては、光の散乱がバルブシート105の部分より更に大きく、光の正反射もほとんどない。
【0036】
ここで、投光ファイバ20の周囲に受光ファイバ21を4つ配置し且つ受光ファイバ21の径を投光ファイバ20より大きくすることにより受光面積が拡大されている。このため、バルブシート105の部分から受光ファイバ21によって受光される光の量は増加するが、一方、溝の部分から受光される光の量はあまり増加しない。従って、バルブシートの表面の部分と溝の部分との差が明確になる。
【0037】
次に、シリンダヘッド2の内面を螺旋状にスキャンしながら受光ファイバ21を介して得られた上述の信号をPD25によって光電変換して受光量に応じた電圧に変換し、非線形増幅器4によって増幅する。図7はPD25からの非線形増幅器4に入力される信号と、非線形増幅器4のログアンプによって非線形に増幅した後の出力電圧の関係を示したグラフである。図7のAで示した部分は、溝の部分のPD25からの信号の部分である。一方、図7のBで示した部分は、バルブシート部分のPD25からの信号を含む、溝部以外の信号の部分である。ここで、PD25からの入力信号における溝からの信号部分Aとそれ以外の信号部分Bとは、上述のように受光ファイバ21の受光面積を大きくすることで、ある程度の差を生じているが、更にこの差を拡大できれば、より明確に両者を区別することができる。一方、この差の部分は、入力信号全体のうちの信号の少ない位置に存在している。従って、PDからの入力信号を非直線アンプあるいはログアンプで対数的に増幅することにより、この差の部分が拡大され、両者の間の出力電圧の差が大きくなり、表面の溝や傷を表面の荒れや汚れから更に区別しやすくなる。また、ログアンプの後に高速フーリエ変換装置、ローパスフィルタ及び逆フーリエ変換装置、あるいは、ローパスフィルタが配置されている場合、高周波領域に多く表れる表面の荒れや汚れによる光の散乱の影響や、他のノイズの影響が排除される。
【0038】
この出力電圧を、A/D変換器6にて、エンコーダ5から発生されるサンプリングクロックに従ってサンプリングしてA/D変換する。そして演算処理部8の表示制御手段44によって、シリンダヘッド2の周方向をx軸とし、軸方向をy軸とした、格子状の画像データに変換することにより、シリンダヘッド2の内面を展開したような二次元画像を得ることができる。ここで、回転機構に取り付けられたエンコーダから直接サンプリングクロック信号を発生させるので、光の回転と受光データとを同期させることができ、二次元画像が回転むらの影響を受けにくい。
【0039】
図8は、エアシリンダの内面のバルブシートが取り付けられた部分を本発明の表面検査装置1で検査した二次元画像である。図中Aはシリンダヘッド2の内面であり、表面は比較的滑らかであるため反射光量が多く白くなっている。また、図中Bはバルブシート105の内面であり、この部分はシリンダヘッド2の内面と比較すると表面がざらついているため、反射光量が少なく、黒っぽくなっている。そして図中Gは、シリンダヘッド2とバルブシート105との間の隙間であり、この部分からの反射光はほとんどないため、黒くなっている。なお、図示しないが、受光ファイバの数が複数でなく且つ増幅器も線形である従来の表面検査装置の場合、同様の二次元画像において、シリンダヘッド2の内面は真っ白であり、バルブシート105と溝の部分は共に真っ黒となり、両者を区別することはできない。しかし、本形態の表面検査装置によると、図8で示したように、バルブシートの部分Bと、溝の部分Gとの間には、明暗に差が生じ、両者を区別することが可能となる。
【0040】
より明確に溝Gを特定するために、図8の画像の画素の明るさを算出し、溝Gの部分の輝度とバルブシートBの部分の輝度との間に閾値を設定し、画素の明るさが閾値以上なら白色を画素に設定し、閾値以下の場合は、画素に黒色を設定する2値化処理を行う。この処理によって得られた画像が図9であり、溝Gを明確に特定することができる。更にその画像をエッジ処理し、溝Gの一側縁部g1と他側縁部g2とを黒点で表示したものが図10である。なお、この2値化処理及びエッジ処理は任意であって、これらの処理を行わずに、上述のように図5のデータから直接、溝Gの縁部の座標を求めることもできる。
【0041】
次に、この画像を、図10で示したようにx軸に沿って均等に1〜10の区間に分割する(S1)。そして、第1区間Z内において、x座標を一点に固定し、y座標に沿って、図中y座標aの位置から溝に向って一側縁部g1に相当する黒点を検索し、その点のy座標を求めて記憶する(S2)。次に、図中y座標bの位置から溝に向って他側縁部g2に相当する黒点を検索し、その点のy座標を求めて記憶する(S2)。この場合、y座標上に、ノイズ等の影響から溝の縁部に対応しない点も存在するが、適宜排除する。
【0042】
そして第1区間Z内において、所定数の両側縁部のy座標を求め(S4,S5)検索された複数の一点のy座標のうちの、最も多くの点が占めた座標を一側縁部の代表座標とする(S6)。同様に検索された複数の他点のy座標のうちの、最も多くの点が占めた座標の他側縁部の代表座標とする(S7)。次いで一側縁部の代表座標と他側縁部の代表座標との差を求め、その値を第1区間の代表溝幅とする(S8)。更に、第2区間から第10区間第1区間までについても同様の計算を行い(S9,S10)、区間毎の代表幅を求める。
【0043】
なお、例えばバルブシートが斜めに入っている場合等、溝の幅が一定でない場合ある。この場合、周方向全体で溝幅を計算すると、平均的な値となってしまうが、バルブシートの場合等平均値よりも最大溝幅が問題となる場合もある。本形態によると等間隔の複数の領域で分割して計算しているため、溝幅が一定でない場合、分割区間毎に溝幅を求めることができ、最大溝幅及び最小溝幅も求めることができる。またバルブが傾いているか否かを判断することもできる。そしてこの場合、分割が等間隔での幅で行われているため、溝幅の変動がわかりやすい。
【0044】
以上、本形態の表面検査装置2によると、エンジンのシリンダヘッドの側面と、バルブシートの側面との間の、微細な隙間を、バルブシートの表面と区別可能な画像として取得することができる。そして、その画像を分割して分割区間内の代表的な溝幅を決定するアルゴリズムを有する溝幅決定手段を有するため、自動的且つ客観的に溝Gの区間毎の代表幅を決定することができる。従って、例えば、本形態の表面検査装置は、自動車の製造ラインにおいて、バルブシートの溝幅を、自動的に計測するために使用することができる。そして、このように自動的且つ客観的に溝幅が決定できるため、検査結果の信頼性が高く、全品検査も可能となり、製品精度、品質及びスループットの向上が可能となる。
【0045】
なお、本発明の好適な形態について説明したが、本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、上述の説明では本形態の表面検査装置を、自動車用エンジンのシリンダヘッドの内面に形成された凹部と、その凹部に圧入されたリング状のバルブシートとの間の隙間を観察し、その溝幅を決定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、円筒体2はシリンダヘッドでなくとも良く、また溝は円筒体の内面の軸方向Cに沿って存在する溝等であってもよく、内面のあらゆる方向に存在する傷、溝又は隙間を検査することができる。また、本形態では、溝幅を求める際に、溝を長さ方向に分割し、各分割区域内の代表的溝幅を求めた、これに限定されず、分割をせずに全体についての代表的溝幅を決定することもでき、また、溝の一点における溝幅のみ求めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の表面検査装置の一形態の概略図。
【図2】検査部の一形態の構成図を示した図。
【図3】投光ファイバと受光ファイバの断面図。
【図4】本発明の表面検査装置の演算装置の構成図。
【図5】分割区間毎に溝幅を決定するアルゴリズムを示したフローチャート。
【図6】自動車のシリンダヘッドの概略図。
【図7】非線形増幅器での非線形増幅を示したグラフ。
【図8】エンジンシリンダの内周の凹部とバルブシートとの間の隙間を本発明の表面検査装置で検査した二次元画像。
【図9】図8の画像を2値化処理した画像。
【図10】図9の画像をエッジ処理して分割した画像。
【符号の説明】
【0047】
1 表面検査装置
2 被検査物(円筒体,シリンダヘッド)
4 非線形増幅器(非線形増幅手段)
5 エンコーダ(クロック信号発生手段)
6 A/D変換部
12 回転機構(回転手段)
13 直線移動機構(直線移動手段)
20 投光ファイバ
21 受光ファイバ
30 投/受光部
46 溝幅決定手段
C 軸線
G 溝
L 光
g1 一点
g2 他点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投/受光部を有し且つ被検査物たる円筒体の内部に挿入される検査部を備え、該検査部を前記円筒体に対して軸線を中心として相対的に回転させると共に前記軸線方向に相対的に進退させ、前記投/受光部より前記円筒体の内面に光を投光しつつその反射光を受光し、受光量に基づいて前記内面に対応した二次元画像を生成する表面検査装置において、
前記円筒体の内面に存在する溝の幅を求めるために、前記二次元画像を、前記溝の長さ方向座標と前記溝の幅方向座標とで表し、
長さ方向座標を固定し、幅方向座標に沿って移動しながら、前記受光量が特定の閾値を超えて変化する、前記溝の一側縁部に対応する一点と前記溝の他側縁部に対応する他点との幅方向座標を求め、
前記一点の幅方向座標と前記他点の幅方向座標とから前記区間の溝幅を求めるアルゴリズムを有する溝幅決定手段を有することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記溝の長さ方向の少なくとも一部の範囲を対象区間として、該区間内において、
前記一点の幅方向座標及び前記他点の幅方向座標を、複数の前記長さ方向座標についてそれぞれ求め、
それぞれの長さ方向座標について求められた前記一点の幅方向座標のうちの、最も多くの点が占めた幅方座標を一側縁部の代表座標とし、
それぞれの長さ方向座標について求められた前記他点の幅方向座標のうちの、最も多くの点が占めた幅方向座標を他側縁部の代表座標とし、
前記一側縁部の代表座標と前記他側縁部の代表座標との差を前記区間の溝幅とすることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記区間が、複数の区間であることを特徴とする請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記複数の区間が、等間隔であることを特徴とする請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記溝が前記円筒体の内面の周方向に沿って存在し、前記溝の幅方向が前記円筒体の軸方向であり、前記溝の長さ方向が前記円筒体の内面の周方向であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記円筒体が、車両の内燃機関のシリンダヘッドであり、前記溝が前記シリンダヘッドの内面に設けられた凹部に挿入されたバルブシートの側面と前記凹部の側面との隙間であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の表面検査装置。
【請求項7】
前記溝が前記円筒体の内面の軸方向に沿って存在し、前記溝の幅方向が前記円筒体の内面の周方向であり、前記溝の長さ方向が前記円筒体の軸方向であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記二次元画像が、前記受光量に基づく信号を、フーリエ変換処理し、高周波数成分をカットし、更に逆フーリエ変換処理した信号により生成された画像であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記二次元画像が、前記受光量に基づく信号を、ローパスフィルタで処理した信号により生成された画像であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−147323(P2007−147323A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338858(P2005−338858)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(390014661)株式会社キリンテクノシステム (126)
【出願人】(505216449)株式会社 KTSオプティクス (17)
【Fターム(参考)】