表面検査装置
【課題】ロールが設置されていない位置に存在する材料に光を照射して材料の表面を検査する際に、検査対象から除外するマスク範囲を適切に設定する。
【解決手段】ロール7が設置されていない位置に存在する材料8−1,8−2に帯状光を照射して材料8−1,8−2の表面を検査する際に、しきい値設定手段51は、撮像領域における画素位置毎の反射光の強度から、全体の強度の平均値Aを算出し、平均値Aに基づいて、強度の高い画素位置における平均値Bを算出すると共に、強度の低い画素位置における平均値Cを算出し、これらの平均値B,Cの中点値Dに基づいてしきい値αを設定する。マスク範囲設定手段52は、撮像領域における画素位置毎の反射光の強度としきい値αとを比較し、x軸上で隣り合う画素位置において、反射光の強度がしきい値αを上回ってまたは下回って変化する画素位置を特定し、特定した画素位置からマスク範囲を設定する。
【解決手段】ロール7が設置されていない位置に存在する材料8−1,8−2に帯状光を照射して材料8−1,8−2の表面を検査する際に、しきい値設定手段51は、撮像領域における画素位置毎の反射光の強度から、全体の強度の平均値Aを算出し、平均値Aに基づいて、強度の高い画素位置における平均値Bを算出すると共に、強度の低い画素位置における平均値Cを算出し、これらの平均値B,Cの中点値Dに基づいてしきい値αを設定する。マスク範囲設定手段52は、撮像領域における画素位置毎の反射光の強度としきい値αとを比較し、x軸上で隣り合う画素位置において、反射光の強度がしきい値αを上回ってまたは下回って変化する画素位置を特定し、特定した画素位置からマスク範囲を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状体の材料の表面を光学的に検査する表面検査装置に関し、特に、その表面の欠陥を検査する際に、所定範囲を検査対象から除外するマスク処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、紙等の帯状体の材料の表面に表れた疵、凹凸、錆等の欠陥を検査する装置が知られている。これらの欠陥は、帯状体の材料を製造する工程において、材料に異物が付着すること等が原因で発生するものである。これらの欠陥を検出する表面検査装置は、帯状体の材料の表面に光を照射する照明装置、その光の反射を撮像するカメラ、及び、カメラにより撮像された材料の表面の反射光を処理する処理装置等を備えて構成される。
【0003】
例えば、所定の波長の光を材料に照射し、材料の表面の微小凹凸疵により反射した光の像をカメラにて撮影し、光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小凹凸疵を検出する表面検査装置が知られている(特許文献1を参照)。この表面検査装置によれば、表面が粗い材料であっても、微小凹凸疵を確実に検出することができる。
【0004】
また、可視域の波長の集束光を入射角約90度で鋼板の表面に照射し、その鋼板の表面で反射した光の像を半透明のスクリーンを介してカメラにて撮影し、反射光の明るさ(強度)に基づいて微小凹凸疵を検出する表面検査装置が知られている(特許文献2を参照)。具体的には、光の波長をλ、鋼板への照射光の入射角をθとすると、cosθ/λを所定値以下になるように、鋼板、光源、スクリーン及びカメラ等を配置すると、表面に存在する微小凹凸疵の部分がスクリーンに黒く写る。表面検査装置は、黒く写った箇所を微小凹凸疵として検出する。この表面検査装置によれば、表面が粗い材料であっても、微小凹凸疵を確実に検出することができる。
【0005】
また、材料を通過させるロールを用いた表面検査装置(第1の表面検査装置)が知られている(特許文献3の図13及び段落14〜16を参照)。この表面検査装置は、ロール上の位置に存在する材料に光を照射し、材料の反射光を撮像し、反射光の強度に基づいて材料の欠陥を検出するものである。この表面検査装置によれば、材料の反射光とロールの反射光との間の強度に差がつくようにロールを着色することで、材料の反射光のみが強調されるから、ロールの反射光から欠陥を検出することがなく、正確な欠陥検出を実現することができる。
【0006】
しかしながら、この第1の表面検査装置では、ロール上の位置に存在する材料に対して光を照射する必要があるから、光源、カメラ等を含む表面検査装置の設置場所が、ロールを基準にした場所に限定されてしまう。また、例えば、既設の製造工程に対して第1の表面検査装置を設置するには、検査する箇所にロールを新たに設ける必要があり、コストが発生してしまう。また、製造工程によってはロールの設置場所を確保することが困難な場合もあり得る。
【0007】
このような問題を解決するために、検査対象の材料を通過させる第1のロールと第2のロールとの間の所定箇所において、ロールが設置されていない位置に存在する材料に光を照射し、材料の反射光を撮像し、反射光の強度に基づいて材料の欠陥を検出する表面検査装置(第2の表面検査装置)が知られている(特許文献3の図12及び段落9〜13を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−133967号公報
【特許文献2】特許第3824059号公報
【特許文献3】特開2008−304306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、表面検査装置が使用される材料の製造工程では、スリット済み材料を検査する場合もある。スリット済み材料とは、1つの材料が走行方向に切断され、切断された複数の材料の間に所定の間隔(スリット)が設けられた材料である。表面検査装置は、複数の材料の間にスリットが存在した状態で、複数の材料をまとめて同時に検査する。しかしながら、前述の第1の表面検査装置及び第2の表面検査装置では、複数の材料の間に設けられたスリットを欠陥であると誤検出する可能性があり、検査精度が低下するという問題があった。
【0010】
このため、欠陥を検出する処理を行う前に、誤検出する可能性のある箇所を特定し、その箇所を検査対象から除外するためのマスク処理を行う必要がある。従来、スリット済み材料を検査する場合には、検査対象範囲が撮像範囲に対して狭いことから、検査対象から除外してマスクする範囲(マスク範囲)を、材料の幅等に基づいてオペレータにより手動にて設定していた。
【0011】
また、スリット済み材料を検査する例ではないが、材料のエッジ位置を特定し、エッジ位置から外側をマスク範囲とする手法が知られている(特許文献3の図1〜9、段落63,68,69,84等を参照)。この手法は、所定の照明装置からロール上の位置に存在する材料及びロールに、2つの帯状光を照射し、材料及びロールの反射光を撮像し、材料とロールとの間のエッジにて光が散乱され明るくなることを利用して、反射光の強度に基づいてエッジ位置を特定し、エッジ位置から外側を検査対象範囲から除外するものである。
【0012】
しかしながら、マスク範囲をオペレータにより手動にて設定する手法では、設定作業に負担がかかるという問題があった。特に、スリット済み材料の場合、スリットの幅が頻繁に変わることから、その都度設定作業が必要になり手間である。
【0013】
一方、前述の、材料のエッジ位置を特定してマスク範囲を自動的に設定する手法では、エッジ位置にて光を散乱させるために、2つの帯状光を材料に照射する必要があることから、照明装置が高価かつ複雑な構成になるという問題があった。また、この手法は、ロール上に存在する材料に光を照射し、材料とロールとの間のエッジにて光が散乱され明るくなることを利用して、材料のエッジ位置を特定するものである。したがって、前述の第1の表面検査装置(ロール上の材料に光を照射する表面検査装置)について適用されるが、第2の表面検査装置(ロールが設置されていない位置に存在する材料に光を照射する表面検査装置)について適用されるとは限らない。さらに、この手法は、反射光の強度と、予め設定されたしきい値とを比較することにより、エッジ位置を特定する。しかし、材料が変更された場合には、新たなしきい値が必要になる。前述の特許文献3には、このしきい値がどのようにして設定されるかについて不明であり、材料によってはしきい値が適切な値になっているとは限らず、マスク範囲が正しく設定されない場合が想定されるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ロールが設置されていない位置に存在する材料に光を照射して材料の表面を検査する際に、検査対象から除外するマスク範囲を適切に設定可能な表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明による表面検査装置は、ロール上を移動する複数の帯状体の材料に対し、前記複数の材料の間に存在するスリットを含む前記複数の材料の幅方向に、かつ前記ロールが存在しない箇所へ向けて光を照射し、前記照射により得られる反射光の強度に基づいて、所定の検査対象範囲で前記材料の表面を検査する表面検査装置において、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度に基づいて、前記各位置の強度が高い側に含まれるかまたは低い側に含まれるかを判定し、強度が高い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値、及び強度が低い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値をそれぞれ算出し、前記算出したそれぞれの平均値に基づいてしきい値を設定するしきい値設定手段と、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と、前記しきい値設定手段により設定されたしきい値とに基づいて、前記材料の位置及びスリットの位置を特定し、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定するマスク範囲設定手段と、前記マスク範囲設定手段により設定されたマスク範囲を検査対象範囲から除外して、前記材料の表面を検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による表面検査装置は、前記しきい値設定手段が、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度から全体の平均値を算出し、前記全体の平均値よりも高い反射光の強度を有する位置を抽出し、前記抽出した全ての位置における反射光の強度から第1の平均値を算出し、前記全体の平均値以下である反射光の強度を有する位置を抽出し、前記抽出した全ての位置における反射光の強度から第2の平均値を算出し、前記第1の平均値と前記第2の平均値とを平均した中点値を算出し、前記算出した中点値に基づいて前記しきい値を設定する、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明による表面検査装置は、前記マスク範囲設定手段が、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と、前記しきい値設定手段により設定されたしきい値とを比較し、前記隣り合う位置の反射光の強度がしきい値を上回ってまたは下回って変化する位置を特定し、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定する、ことを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明による表面検査方法は、ロール上を移動する複数の帯状体の材料に対し、前記複数の材料の間に存在するスリットを含む前記複数の材料の幅方向に、かつ前記ロールが存在しない箇所へ向けて光を照射し、前記照射により得られる反射光の強度に基づいて、所定の検査対象範囲で前記材料の表面を検査する表面検査方法において、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度に基づいて、前記各位置の強度が高い側に含まれるかまたは低い側に含まれるかを判定するステップと、強度が高い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値、及び強度が低い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値をそれぞれ算出するステップと、前記算出したそれぞれの平均値に基づいてしきい値を設定するステップと、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と前記しきい値とに基づいて、前記材料の位置及びスリットの位置を特定するステップと、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定するステップと、前記マスク範囲を検査対象範囲から除外して、前記材料の表面を検査するステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明による表面検査プログラムは、コンピュータを、前記表面検査装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、ロールが設置されていない位置に存在する材料に光を照射して材料の表面を検査する際に、検査対象から除外するマスク範囲を適切に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による表面検査装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】しきい値設定手段の処理を示すフローチャートである。
【図4】画素位置と反射光の強度との関係を示す図である。
【図5】マスク範囲設定手段の処理を示すフローチャートである。
【図6】画素位置と反射光の強度、2値データ及びマスク範囲との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
〔表面検査装置〕
まず、本発明の実施形態による表面検査装置の全体構成について説明する。図1は、表面検査装置の全体構成を示す概略図である。この表面検査装置1は、照明装置2、カメラ3、PG(パルスジェネレータ)4、処理装置5、記憶装置6及びロール7を備えて構成される。表面検査装置1は、ロール7上を走行する帯状体の材料8−1,8−2の表面を、ロール7が設置されていない位置にて光学的に検査する装置である。材料8−1と材料8−2との間には所定幅のスリットが存在し、材料8−1,8−2は、所定幅のスリットを有する状態で同速度にて走行する。また、ロール7は、材料8−1,8−2の走行に伴って回転する。材料8−1,8−2の走行する向きは、y軸のプラス方向であってもよいしマイナス方向であってもよい。
【0023】
照明装置2は、照明手段の一例であり、走行する材料8−1,8−2の幅方向に対して略平行になるように設置され、所定の波長を有する帯状光を、ロール7が設置されていない位置に存在する材料8−1,8−2へ照射する。帯状光は、材料8−1,8−2の幅方向に横切って、図1に示すx軸方向の所定領域に照射される。また、帯状光は、材料8−1,8−2の領域だけでなく、スリットの領域及び材料8−1,8−2の外側の領域(他方の材料8−1,8−2が存在しない側の領域)にも照射される。
【0024】
カメラ3は、撮像手段の一例であり、例えばラインセンサーカメラ、エリアセンサーカメラである。ラインセンサーカメラは、1列分の画像を撮影するカメラであり、エリアセンサーカメラは、平面の画像を撮影するカメラである。以下、カメラ3がラインセンサーカメラであるとして説明する。カメラ3は、照明装置2から照射された帯状光が材料8−1,8−2から反射した反射光を撮像し、反射光の明るさの指標となる強度を処理装置5に出力する。カメラ3は、材料8−1,8−2の領域だけでなく、スリットの領域及び材料8−1,8−2の外側の領域を含む撮像領域を撮影する。尚、カメラ3の設置位置は、材料(鋼板)及び照明装置の設置位置に対応しており、前述した特許文献3と同様であるから、ここでは説明を省略する。図1において、p1,p2は、x軸上における撮像領域の端を示す。これにより、処理装置5は、カメラ3(ラインセンサーカメラ)から、撮像領域のx軸上における画素位置毎の反射光の強度を入力する。
【0025】
PG4は、材料8−1,8−2の走行に伴って回転するロール7の回転量をパルス信号として処理装置5に出力する。処理装置5により、パルス信号から材料8−1,8−2の走行量が算出される。
【0026】
処理装置5は、マスク範囲設定(調整)時において、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力し、撮像領域の反射光の強度を用いてしきい値αを求め、撮像領域の反射光の強度及びしきい値αに基づいて、反射光の強度が変化する位置を特定し、特定した位置から撮像領域のマスク範囲(検査対象から除外する範囲)を設定する。そして、処理装置5は、検査時において、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力すると共に、PG4からパルス信号を入力し、撮像領域のマスク範囲を除く検査対象範囲について、反射光の強度に基づいて材料8−1,8−2の表面を検査することで疵を検出し、パルス信号から材料8−1,8−2の走行量を算出し、疵の位置(x軸上の位置及びy軸上(材料8−1,8−2の走行方向)の位置)、大きさ等の情報を生成して記憶装置6に格納する。このようにして、記憶装置6には、材料8−1,8−2の表面に存在する疵に関する情報が格納される。尚、検査対象の材料8−1,8−2が変更される毎に、処理装置5は、最初に撮像領域のマスク範囲を設定し、その後に材料8−1,8−2の検査を行う。
【0027】
〔処理装置〕
次に、図1に示した処理装置5について説明する。図2は、処理装置5の構成を示すブロック図である。この処理装置5は、しきい値設定手段51、マスク範囲設定手段52、記憶手段53及び疵検出手段54を備えている。前述のとおり、処理装置5は、マスク範囲設定時において、撮像領域の反射光の強度からしきい値αを求め、撮像領域のマスク範囲を設定する。また、処理装置5は、検査時において、マスク範囲を除く検査対象範囲について疵を検出し、パルス信号から材料8−1,8−2の走行量を算出し、疵の位置、大きさ等の情報を生成する。
【0028】
しきい値設定手段51は、マスク範囲設定時において、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力し、撮像領域におけるx軸上の画素位置毎の強度から全体の強度の平均値Aを算出し、全体の平均値Aに基づいて、強度の高い画素位置における平均値Bを算出すると共に、強度の低い画素位置における平均値Cを算出する。そして、しきい値設定手段51は、これらの平均値B,Cの平均値である中点値Dからしきい値αを設定し、しきい値αをマスク範囲設定手段52に出力する。しきい値設定手段51の詳細については後述する。
【0029】
マスク範囲設定手段52は、マスク範囲設定時において、撮像範囲のx軸上における反射光の強度の変化量に基づいてマスク範囲を設定し、設定したマスク範囲を記憶手段53に格納する。具体的には、マスク範囲設定手段52は、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力すると共に、しきい値設定手段51からしきい値αを入力し、撮像領域のx軸上における画素位置毎の反射光の強度としきい値αとを比較し、x軸上の隣り合う画素位置において、反射光の強度がしきい値αを上回って変化する画素位置、及び反射光の強度がしきい値αよりも下回って変化する画素位置を特定する。そして、マスク範囲設定手段52は、特定した画素位置からマスク範囲を設定し、マスク範囲を記憶手段53に格納する。特定した画素位置は、撮像領域内の材料8−1,8−2における端の位置、すなわち、スリットの両端を示す。これにより、材料8−1と材料8−2との間のスリットの領域及び材料8−1,8−2の外側の領域がマスク範囲に設定される。マスク範囲設定手段52の詳細については後述する。
【0030】
疵検出手段54は、検査時において、記憶手段53からマスク範囲を読み出すと共に、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力し、撮像領域のマスク範囲を除く検査対象範囲において、反射光の強度に基づいて材料8−1,8−2の表面を検査することで疵を検出し、パルス信号から材料8−1,8−2の走行量を算出し、疵の位置、大きさ等の情報を生成して記憶装置6に格納する。尚、反射光の強度に基づいて材料8−1,8−2の表面を検査し疵を検出する手法は既知であるから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
(しきい値設定手段)
次に、図2に示したしきい値設定手段51の詳細について説明する。図3は、しきい値設定手段51の処理を示すフローチャートであり、この処理はマスク範囲設定時に行われる。図4は、画素位置と反射光の強度との関係を示す図である。まず、しきい値設定手段51は、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力する(ステップS301)。
【0032】
カメラ3がラインセンサーカメラの場合、撮像領域は、図1に示した材料8−1,8−2の幅方向におけるx軸上にて、1列分の1画素毎の領域となる。この場合のしきい値設定手段51により入力される撮像領域の反射光の強度は、図4に示すように、x軸上における撮像領域p1からp2までの1画素毎の値となる。また、材料8−1,8−2が存在する撮像領域における反射光の強度は、スリット及び材料8−1,8−2の外側の撮像領域における反射光の強度よりも高くなる。これは、照明装置2からの帯状光が、材料8−1,8−2の存在する撮像領域にてカメラ3へ反射されその領域が明るくなり、スリット等の撮像領域ではカメラ3へ反射されずその領域が暗くなるからである。
【0033】
また、カメラ3が平面を撮影するエリアセンサーカメラの場合、撮像領域は、x軸及びy軸上の所定面の領域になる。この場合のしきい値設定手段51は、入力した撮像領域の反射光の強度から、x軸上の撮像範囲の画素位置毎に、y軸上の複数の画素位置における反射光の強度を平均する。これにより、図4に示すような特性が、撮像領域内の(x軸上の)各画素位置における反射光の強度として求められ、ラインセンサーカメラの場合と同様の処理を行うことができる。
【0034】
しきい値設定手段51は、撮像領域内の各画素位置における反射光の強度から、全体の強度の平均値A(全体の平均値A)を算出する(ステップS302)。そして、しきい値設定手段51は、撮像領域内の各画素位置における反射光の強度と全体の平均値Aとを比較し、全体の平均値Aよりも強度が高い画素位置を抽出し(ステップS303)、抽出した画素位置における反射光の強度から、強度の平均値B(強度の高い画素位置の平均値B)を算出する(ステップS304)。図4に示すように、強度の高い画素位置の平均値Bは、材料8−1,8−2が存在する撮像領域における反射光の強度の平均値となる。
【0035】
また、しきい値設定手段51は、撮像領域内の各画素位置における反射光の強度と全体の平均値Aとを比較し、全体の平均値A以下の強度を有する画素位置を抽出し(ステップS305)、抽出した画素位置における反射光の強度から、強度の平均値C(強度の低い画素位置の平均値C)を算出する(ステップS306)。図4に示すように、強度の低い画素位置の平均値Cは、スリット等の撮像領域における反射光の強度の平均値となる。
【0036】
しきい値設定手段51は、強度の高い画素位置の平均値Bと強度の低い画素位置の平均値Cとの間の中点の値(平均値)を中点値Dとして算出する(ステップS307)。そして、しきい値設定手段51は、ステップS301〜ステップS307の処理を所定撮像ライン数行ったか否かを判定し(ステップS308)、所定撮像ライン数行ったと判定した場合(ステップS308:Y)、ステップS309へ移行する。一方、しきい値設定手段51は、所定撮像ライン数行っていないと判定した場合(ステップS308:N)、ステップS301へ移行し、次の撮像ラインの撮像領域についてステップS301〜ステップS307の処理を行い、中点値Dを算出する。ここで、カメラ3が1列分の画像を撮影するラインセンサーカメラの場合、中点値Dは、1列分の反射光の強度から算出され、誤差を含む場合があり得る。そこで、複数個の中点値Dを算出するために、オペレータにより予め設定される所定撮像ライン数が用いられる。
【0037】
しきい値設定手段51は、ステップS301〜ステップS307の処理を所定撮像ライン数行ったと判定してステップS308から移行した場合、ステップS307にて算出した所定撮像ライン数分の中点値Dから、その平均値を算出し、算出結果の平均値をしきい値αとして設定する(ステップS309)。図4に示すように、中点値Dは、強度の高い画素位置の平均値Bと強度の低い画素位置の平均値Cとの間の中央の値となり、しきい値αは、強度の高い画素位置の平均値Bと強度の低い画素位置の平均値Cとの間の中央付近の値となる。
【0038】
しきい値設定手段51は、ステップS309において設定したしきい値αを、マスク範囲設定手段52に出力する(ステップS310)。
【0039】
このように、しきい値設定手段51によれば、スリットの幅に応じた全体の平均値Aを算出し、全体の平均値Aを基準にして、強度の高い画素位置及び強度の低い画素位置を区別し、これらの平均値B,Cを算出して中点値Dを算出し、しきい値αを設定するようにした。これにより、全体の平均値Aは、スリットの幅が広い場合は小さくなり、スリットの幅が狭い場合は大きくなるが、強度の高い画素位置の平均値B及び強度の低い画素位置の平均値Cは、スリットの幅に関係することなく反射光の強度に応じた値になる。したがって、スリットの幅に関係することなく、しきい値αを精度高く設定することができる。
【0040】
(マスク範囲設定手段)
次に、図2に示したマスク範囲設定手段52の詳細について説明する。図5は、マスク範囲設定手段52の処理を示すフローチャートであり、この処理はマスク範囲設定時に行われる。図6は、画素位置と反射光の強度、2値データ及びマスク範囲との関係を示す図である。以下に示す処理は、x軸上の隣り合う画素位置において、反射光の強度がしきい値αを上回って変化する画素位置、及び反射光の強度がしきい値αよりも下回って変化する画素位置を特定するために、反射光の強度を一旦2値データに変換し、2値データに基づいて、所定の画素位置を特定する。
【0041】
まず、マスク範囲設定手段52は、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力すると共に(ステップS501)、しきい値設定手段51からしきい値αを入力する(ステップS502)。図6の上図に示すように、マスク範囲設定手段52に入力される撮像領域の反射光の強度は、図4と同様に、x軸上における撮像領域p1からp2までの1画素毎の値となる。
【0042】
マスク範囲設定手段52は、撮像領域の画素位置毎に、その画素位置における反射光の強度がしきい値αよりも低いか否かを判定し(ステップS503)、反射光の強度がしきい値αよりも低いと判定した場合(ステップS503:Y)、当該画素位置に対して2値データ「0」を設定する(ステップS504)。一方、マスク範囲設定手段52は、反射光の強度がしきい値αよりも低くないと判定した場合(ステップS503:N)、当該画素位置に対して2値データ「1」を設定する(ステップS505)。ステップS503、ステップS504及びステップS505の処理は、撮像領域の画素位置毎に行われる。これにより、撮像領域の画素位置毎に2値データが設定される。図6の下図に示すように、マスク範囲設定手段52により設定される2値データは、画素位置a(p1)からbまでの範囲である材料8−1の外側の領域(撮像領域の端から材料8−1の外側における端までの領域)において「0」となり、画素位置bからcまでの範囲である材料8−1の領域において「1」となり、画素位置cからdまでの範囲であるスリットの領域において「0」となり、画素位置dからeまでの範囲である材料8−2の領域において「1」となり、画素位置eからf(p2)までの範囲である材料8−2の外側の領域(材料8−2の外側における端から撮像領域の端までの領域)において「0」となる。
【0043】
マスク範囲設定手段52は、撮像領域における各画素位置の2値データに基づいて、2値データが「0」から「1」に変化する画素位置、及び「1」から「0」に変化する画素位置を特定し(ステップS506)、特定した画素位置を画素位置b,c,d,eに設定する(ステップS507)。そして、マスク範囲設定手段52は、x軸上の範囲a(p1)〜b,c〜d,e〜f(p2)をマスク範囲に設定する(ステップS508)。図6の下図に示すように、マスク範囲は、x軸上のa(p1)〜b,c〜d,e〜f(p2)となる。
【0044】
マスク範囲設定手段52は、ステップS508において設定したマスク範囲を記憶手段53に格納する(ステップS509)。
【0045】
尚、図5は2値データを用いた処理の例であるが、前述のとおり、2値データを用いることなくマスク範囲を設定するようにしてもよい。例えば、マスク範囲設定手段52は、x軸上の隣り合う画素位置において、反射光の強度としきい値αとを比較し、反射光の強度がしきい値αを上回って変化する画素位置、及び反射光の強度がしきい値αよりも下回って変化する画素位置をそれぞれ特定し、特定した画素位置を画素位置b,c,d,eに設定し、x軸上の範囲a(p1)〜b,c〜d,e〜f(p2)をマスク範囲に設定する。
【0046】
以上のように、本発明の実施形態による表面検査装置1によれば、ロール7が設置されていない位置に存在する材料8−1,8−2に帯状光を照射して材料8−1,8−2の表面を検査する際に、処理装置5のしきい値設定手段51が、マスク範囲設定時において、撮像領域における画素位置毎の反射光の強度から、全体の強度の平均値Aを算出し、平均値Aに基づいて、強度の高い画素位置における平均値Bを算出すると共に、強度の低い画素位置における平均値Cを算出し、これらの平均値B,Cの中点値Dからしきい値αを設定するようにした。また、マスク範囲設定手段52が、マスク範囲設定時において、撮像領域における画素位置毎の反射光の強度としきい値αとを比較し、x軸上で隣り合う画素位置において、反射光の強度がしきい値αを上回ってまたは下回って変化する画素位置を特定し、特定した画素位置からマスク範囲を設定するようにした。これにより、疵検出手段54が、検査時において、撮像範囲のうちマスク範囲設定手段52により設定されたマスク範囲を除いた検査対象範囲について、材料8−1,8−2の表面を検査し疵を検出することができる。したがって、材料8−1,8−2の幅及びスリットの幅等からオペレータが手動にてマスク範囲を設定していた従来に比べ、手間をかけることなく適切にマスク範囲を設定することができ、オペレータの作業負荷を低減することが可能となる。また、材料が変更されたとしても、スリットの幅に関係することなく材料に応じたしきい値αが設定されるから、精度の高いマスク範囲を設定することができる。
【0047】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施形態では、2つの材料8−1,8−2を対象にしてマスク範囲を設定するようにしたが、3以上の材料を対象にしてマスク範囲を設定するようにしてもよい。また、前記実施形態では、材料8−1,8−2の表面に表れた疵を検出するようにしたが、本発明は、疵だけでなく、凹凸等の欠陥を検出する場合に適用がある。
【符号の説明】
【0048】
1 表面検査装置
2 照明装置
3 カメラ
4 PG
5 処理装置
6 記憶装置
7 ロール
8−1,8−2 材料
51 しきい値設定手段
52 マスク範囲設定手段
53 記憶手段
54 疵検出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状体の材料の表面を光学的に検査する表面検査装置に関し、特に、その表面の欠陥を検査する際に、所定範囲を検査対象から除外するマスク処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、紙等の帯状体の材料の表面に表れた疵、凹凸、錆等の欠陥を検査する装置が知られている。これらの欠陥は、帯状体の材料を製造する工程において、材料に異物が付着すること等が原因で発生するものである。これらの欠陥を検出する表面検査装置は、帯状体の材料の表面に光を照射する照明装置、その光の反射を撮像するカメラ、及び、カメラにより撮像された材料の表面の反射光を処理する処理装置等を備えて構成される。
【0003】
例えば、所定の波長の光を材料に照射し、材料の表面の微小凹凸疵により反射した光の像をカメラにて撮影し、光の集束及び発散によって得られる明暗パターンに基づいて微小凹凸疵を検出する表面検査装置が知られている(特許文献1を参照)。この表面検査装置によれば、表面が粗い材料であっても、微小凹凸疵を確実に検出することができる。
【0004】
また、可視域の波長の集束光を入射角約90度で鋼板の表面に照射し、その鋼板の表面で反射した光の像を半透明のスクリーンを介してカメラにて撮影し、反射光の明るさ(強度)に基づいて微小凹凸疵を検出する表面検査装置が知られている(特許文献2を参照)。具体的には、光の波長をλ、鋼板への照射光の入射角をθとすると、cosθ/λを所定値以下になるように、鋼板、光源、スクリーン及びカメラ等を配置すると、表面に存在する微小凹凸疵の部分がスクリーンに黒く写る。表面検査装置は、黒く写った箇所を微小凹凸疵として検出する。この表面検査装置によれば、表面が粗い材料であっても、微小凹凸疵を確実に検出することができる。
【0005】
また、材料を通過させるロールを用いた表面検査装置(第1の表面検査装置)が知られている(特許文献3の図13及び段落14〜16を参照)。この表面検査装置は、ロール上の位置に存在する材料に光を照射し、材料の反射光を撮像し、反射光の強度に基づいて材料の欠陥を検出するものである。この表面検査装置によれば、材料の反射光とロールの反射光との間の強度に差がつくようにロールを着色することで、材料の反射光のみが強調されるから、ロールの反射光から欠陥を検出することがなく、正確な欠陥検出を実現することができる。
【0006】
しかしながら、この第1の表面検査装置では、ロール上の位置に存在する材料に対して光を照射する必要があるから、光源、カメラ等を含む表面検査装置の設置場所が、ロールを基準にした場所に限定されてしまう。また、例えば、既設の製造工程に対して第1の表面検査装置を設置するには、検査する箇所にロールを新たに設ける必要があり、コストが発生してしまう。また、製造工程によってはロールの設置場所を確保することが困難な場合もあり得る。
【0007】
このような問題を解決するために、検査対象の材料を通過させる第1のロールと第2のロールとの間の所定箇所において、ロールが設置されていない位置に存在する材料に光を照射し、材料の反射光を撮像し、反射光の強度に基づいて材料の欠陥を検出する表面検査装置(第2の表面検査装置)が知られている(特許文献3の図12及び段落9〜13を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−133967号公報
【特許文献2】特許第3824059号公報
【特許文献3】特開2008−304306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、表面検査装置が使用される材料の製造工程では、スリット済み材料を検査する場合もある。スリット済み材料とは、1つの材料が走行方向に切断され、切断された複数の材料の間に所定の間隔(スリット)が設けられた材料である。表面検査装置は、複数の材料の間にスリットが存在した状態で、複数の材料をまとめて同時に検査する。しかしながら、前述の第1の表面検査装置及び第2の表面検査装置では、複数の材料の間に設けられたスリットを欠陥であると誤検出する可能性があり、検査精度が低下するという問題があった。
【0010】
このため、欠陥を検出する処理を行う前に、誤検出する可能性のある箇所を特定し、その箇所を検査対象から除外するためのマスク処理を行う必要がある。従来、スリット済み材料を検査する場合には、検査対象範囲が撮像範囲に対して狭いことから、検査対象から除外してマスクする範囲(マスク範囲)を、材料の幅等に基づいてオペレータにより手動にて設定していた。
【0011】
また、スリット済み材料を検査する例ではないが、材料のエッジ位置を特定し、エッジ位置から外側をマスク範囲とする手法が知られている(特許文献3の図1〜9、段落63,68,69,84等を参照)。この手法は、所定の照明装置からロール上の位置に存在する材料及びロールに、2つの帯状光を照射し、材料及びロールの反射光を撮像し、材料とロールとの間のエッジにて光が散乱され明るくなることを利用して、反射光の強度に基づいてエッジ位置を特定し、エッジ位置から外側を検査対象範囲から除外するものである。
【0012】
しかしながら、マスク範囲をオペレータにより手動にて設定する手法では、設定作業に負担がかかるという問題があった。特に、スリット済み材料の場合、スリットの幅が頻繁に変わることから、その都度設定作業が必要になり手間である。
【0013】
一方、前述の、材料のエッジ位置を特定してマスク範囲を自動的に設定する手法では、エッジ位置にて光を散乱させるために、2つの帯状光を材料に照射する必要があることから、照明装置が高価かつ複雑な構成になるという問題があった。また、この手法は、ロール上に存在する材料に光を照射し、材料とロールとの間のエッジにて光が散乱され明るくなることを利用して、材料のエッジ位置を特定するものである。したがって、前述の第1の表面検査装置(ロール上の材料に光を照射する表面検査装置)について適用されるが、第2の表面検査装置(ロールが設置されていない位置に存在する材料に光を照射する表面検査装置)について適用されるとは限らない。さらに、この手法は、反射光の強度と、予め設定されたしきい値とを比較することにより、エッジ位置を特定する。しかし、材料が変更された場合には、新たなしきい値が必要になる。前述の特許文献3には、このしきい値がどのようにして設定されるかについて不明であり、材料によってはしきい値が適切な値になっているとは限らず、マスク範囲が正しく設定されない場合が想定されるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ロールが設置されていない位置に存在する材料に光を照射して材料の表面を検査する際に、検査対象から除外するマスク範囲を適切に設定可能な表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明による表面検査装置は、ロール上を移動する複数の帯状体の材料に対し、前記複数の材料の間に存在するスリットを含む前記複数の材料の幅方向に、かつ前記ロールが存在しない箇所へ向けて光を照射し、前記照射により得られる反射光の強度に基づいて、所定の検査対象範囲で前記材料の表面を検査する表面検査装置において、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度に基づいて、前記各位置の強度が高い側に含まれるかまたは低い側に含まれるかを判定し、強度が高い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値、及び強度が低い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値をそれぞれ算出し、前記算出したそれぞれの平均値に基づいてしきい値を設定するしきい値設定手段と、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と、前記しきい値設定手段により設定されたしきい値とに基づいて、前記材料の位置及びスリットの位置を特定し、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定するマスク範囲設定手段と、前記マスク範囲設定手段により設定されたマスク範囲を検査対象範囲から除外して、前記材料の表面を検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による表面検査装置は、前記しきい値設定手段が、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度から全体の平均値を算出し、前記全体の平均値よりも高い反射光の強度を有する位置を抽出し、前記抽出した全ての位置における反射光の強度から第1の平均値を算出し、前記全体の平均値以下である反射光の強度を有する位置を抽出し、前記抽出した全ての位置における反射光の強度から第2の平均値を算出し、前記第1の平均値と前記第2の平均値とを平均した中点値を算出し、前記算出した中点値に基づいて前記しきい値を設定する、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明による表面検査装置は、前記マスク範囲設定手段が、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と、前記しきい値設定手段により設定されたしきい値とを比較し、前記隣り合う位置の反射光の強度がしきい値を上回ってまたは下回って変化する位置を特定し、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定する、ことを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明による表面検査方法は、ロール上を移動する複数の帯状体の材料に対し、前記複数の材料の間に存在するスリットを含む前記複数の材料の幅方向に、かつ前記ロールが存在しない箇所へ向けて光を照射し、前記照射により得られる反射光の強度に基づいて、所定の検査対象範囲で前記材料の表面を検査する表面検査方法において、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度に基づいて、前記各位置の強度が高い側に含まれるかまたは低い側に含まれるかを判定するステップと、強度が高い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値、及び強度が低い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値をそれぞれ算出するステップと、前記算出したそれぞれの平均値に基づいてしきい値を設定するステップと、前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と前記しきい値とに基づいて、前記材料の位置及びスリットの位置を特定するステップと、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定するステップと、前記マスク範囲を検査対象範囲から除外して、前記材料の表面を検査するステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明による表面検査プログラムは、コンピュータを、前記表面検査装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、ロールが設置されていない位置に存在する材料に光を照射して材料の表面を検査する際に、検査対象から除外するマスク範囲を適切に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による表面検査装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】しきい値設定手段の処理を示すフローチャートである。
【図4】画素位置と反射光の強度との関係を示す図である。
【図5】マスク範囲設定手段の処理を示すフローチャートである。
【図6】画素位置と反射光の強度、2値データ及びマスク範囲との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
〔表面検査装置〕
まず、本発明の実施形態による表面検査装置の全体構成について説明する。図1は、表面検査装置の全体構成を示す概略図である。この表面検査装置1は、照明装置2、カメラ3、PG(パルスジェネレータ)4、処理装置5、記憶装置6及びロール7を備えて構成される。表面検査装置1は、ロール7上を走行する帯状体の材料8−1,8−2の表面を、ロール7が設置されていない位置にて光学的に検査する装置である。材料8−1と材料8−2との間には所定幅のスリットが存在し、材料8−1,8−2は、所定幅のスリットを有する状態で同速度にて走行する。また、ロール7は、材料8−1,8−2の走行に伴って回転する。材料8−1,8−2の走行する向きは、y軸のプラス方向であってもよいしマイナス方向であってもよい。
【0023】
照明装置2は、照明手段の一例であり、走行する材料8−1,8−2の幅方向に対して略平行になるように設置され、所定の波長を有する帯状光を、ロール7が設置されていない位置に存在する材料8−1,8−2へ照射する。帯状光は、材料8−1,8−2の幅方向に横切って、図1に示すx軸方向の所定領域に照射される。また、帯状光は、材料8−1,8−2の領域だけでなく、スリットの領域及び材料8−1,8−2の外側の領域(他方の材料8−1,8−2が存在しない側の領域)にも照射される。
【0024】
カメラ3は、撮像手段の一例であり、例えばラインセンサーカメラ、エリアセンサーカメラである。ラインセンサーカメラは、1列分の画像を撮影するカメラであり、エリアセンサーカメラは、平面の画像を撮影するカメラである。以下、カメラ3がラインセンサーカメラであるとして説明する。カメラ3は、照明装置2から照射された帯状光が材料8−1,8−2から反射した反射光を撮像し、反射光の明るさの指標となる強度を処理装置5に出力する。カメラ3は、材料8−1,8−2の領域だけでなく、スリットの領域及び材料8−1,8−2の外側の領域を含む撮像領域を撮影する。尚、カメラ3の設置位置は、材料(鋼板)及び照明装置の設置位置に対応しており、前述した特許文献3と同様であるから、ここでは説明を省略する。図1において、p1,p2は、x軸上における撮像領域の端を示す。これにより、処理装置5は、カメラ3(ラインセンサーカメラ)から、撮像領域のx軸上における画素位置毎の反射光の強度を入力する。
【0025】
PG4は、材料8−1,8−2の走行に伴って回転するロール7の回転量をパルス信号として処理装置5に出力する。処理装置5により、パルス信号から材料8−1,8−2の走行量が算出される。
【0026】
処理装置5は、マスク範囲設定(調整)時において、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力し、撮像領域の反射光の強度を用いてしきい値αを求め、撮像領域の反射光の強度及びしきい値αに基づいて、反射光の強度が変化する位置を特定し、特定した位置から撮像領域のマスク範囲(検査対象から除外する範囲)を設定する。そして、処理装置5は、検査時において、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力すると共に、PG4からパルス信号を入力し、撮像領域のマスク範囲を除く検査対象範囲について、反射光の強度に基づいて材料8−1,8−2の表面を検査することで疵を検出し、パルス信号から材料8−1,8−2の走行量を算出し、疵の位置(x軸上の位置及びy軸上(材料8−1,8−2の走行方向)の位置)、大きさ等の情報を生成して記憶装置6に格納する。このようにして、記憶装置6には、材料8−1,8−2の表面に存在する疵に関する情報が格納される。尚、検査対象の材料8−1,8−2が変更される毎に、処理装置5は、最初に撮像領域のマスク範囲を設定し、その後に材料8−1,8−2の検査を行う。
【0027】
〔処理装置〕
次に、図1に示した処理装置5について説明する。図2は、処理装置5の構成を示すブロック図である。この処理装置5は、しきい値設定手段51、マスク範囲設定手段52、記憶手段53及び疵検出手段54を備えている。前述のとおり、処理装置5は、マスク範囲設定時において、撮像領域の反射光の強度からしきい値αを求め、撮像領域のマスク範囲を設定する。また、処理装置5は、検査時において、マスク範囲を除く検査対象範囲について疵を検出し、パルス信号から材料8−1,8−2の走行量を算出し、疵の位置、大きさ等の情報を生成する。
【0028】
しきい値設定手段51は、マスク範囲設定時において、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力し、撮像領域におけるx軸上の画素位置毎の強度から全体の強度の平均値Aを算出し、全体の平均値Aに基づいて、強度の高い画素位置における平均値Bを算出すると共に、強度の低い画素位置における平均値Cを算出する。そして、しきい値設定手段51は、これらの平均値B,Cの平均値である中点値Dからしきい値αを設定し、しきい値αをマスク範囲設定手段52に出力する。しきい値設定手段51の詳細については後述する。
【0029】
マスク範囲設定手段52は、マスク範囲設定時において、撮像範囲のx軸上における反射光の強度の変化量に基づいてマスク範囲を設定し、設定したマスク範囲を記憶手段53に格納する。具体的には、マスク範囲設定手段52は、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力すると共に、しきい値設定手段51からしきい値αを入力し、撮像領域のx軸上における画素位置毎の反射光の強度としきい値αとを比較し、x軸上の隣り合う画素位置において、反射光の強度がしきい値αを上回って変化する画素位置、及び反射光の強度がしきい値αよりも下回って変化する画素位置を特定する。そして、マスク範囲設定手段52は、特定した画素位置からマスク範囲を設定し、マスク範囲を記憶手段53に格納する。特定した画素位置は、撮像領域内の材料8−1,8−2における端の位置、すなわち、スリットの両端を示す。これにより、材料8−1と材料8−2との間のスリットの領域及び材料8−1,8−2の外側の領域がマスク範囲に設定される。マスク範囲設定手段52の詳細については後述する。
【0030】
疵検出手段54は、検査時において、記憶手段53からマスク範囲を読み出すと共に、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力し、撮像領域のマスク範囲を除く検査対象範囲において、反射光の強度に基づいて材料8−1,8−2の表面を検査することで疵を検出し、パルス信号から材料8−1,8−2の走行量を算出し、疵の位置、大きさ等の情報を生成して記憶装置6に格納する。尚、反射光の強度に基づいて材料8−1,8−2の表面を検査し疵を検出する手法は既知であるから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
(しきい値設定手段)
次に、図2に示したしきい値設定手段51の詳細について説明する。図3は、しきい値設定手段51の処理を示すフローチャートであり、この処理はマスク範囲設定時に行われる。図4は、画素位置と反射光の強度との関係を示す図である。まず、しきい値設定手段51は、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力する(ステップS301)。
【0032】
カメラ3がラインセンサーカメラの場合、撮像領域は、図1に示した材料8−1,8−2の幅方向におけるx軸上にて、1列分の1画素毎の領域となる。この場合のしきい値設定手段51により入力される撮像領域の反射光の強度は、図4に示すように、x軸上における撮像領域p1からp2までの1画素毎の値となる。また、材料8−1,8−2が存在する撮像領域における反射光の強度は、スリット及び材料8−1,8−2の外側の撮像領域における反射光の強度よりも高くなる。これは、照明装置2からの帯状光が、材料8−1,8−2の存在する撮像領域にてカメラ3へ反射されその領域が明るくなり、スリット等の撮像領域ではカメラ3へ反射されずその領域が暗くなるからである。
【0033】
また、カメラ3が平面を撮影するエリアセンサーカメラの場合、撮像領域は、x軸及びy軸上の所定面の領域になる。この場合のしきい値設定手段51は、入力した撮像領域の反射光の強度から、x軸上の撮像範囲の画素位置毎に、y軸上の複数の画素位置における反射光の強度を平均する。これにより、図4に示すような特性が、撮像領域内の(x軸上の)各画素位置における反射光の強度として求められ、ラインセンサーカメラの場合と同様の処理を行うことができる。
【0034】
しきい値設定手段51は、撮像領域内の各画素位置における反射光の強度から、全体の強度の平均値A(全体の平均値A)を算出する(ステップS302)。そして、しきい値設定手段51は、撮像領域内の各画素位置における反射光の強度と全体の平均値Aとを比較し、全体の平均値Aよりも強度が高い画素位置を抽出し(ステップS303)、抽出した画素位置における反射光の強度から、強度の平均値B(強度の高い画素位置の平均値B)を算出する(ステップS304)。図4に示すように、強度の高い画素位置の平均値Bは、材料8−1,8−2が存在する撮像領域における反射光の強度の平均値となる。
【0035】
また、しきい値設定手段51は、撮像領域内の各画素位置における反射光の強度と全体の平均値Aとを比較し、全体の平均値A以下の強度を有する画素位置を抽出し(ステップS305)、抽出した画素位置における反射光の強度から、強度の平均値C(強度の低い画素位置の平均値C)を算出する(ステップS306)。図4に示すように、強度の低い画素位置の平均値Cは、スリット等の撮像領域における反射光の強度の平均値となる。
【0036】
しきい値設定手段51は、強度の高い画素位置の平均値Bと強度の低い画素位置の平均値Cとの間の中点の値(平均値)を中点値Dとして算出する(ステップS307)。そして、しきい値設定手段51は、ステップS301〜ステップS307の処理を所定撮像ライン数行ったか否かを判定し(ステップS308)、所定撮像ライン数行ったと判定した場合(ステップS308:Y)、ステップS309へ移行する。一方、しきい値設定手段51は、所定撮像ライン数行っていないと判定した場合(ステップS308:N)、ステップS301へ移行し、次の撮像ラインの撮像領域についてステップS301〜ステップS307の処理を行い、中点値Dを算出する。ここで、カメラ3が1列分の画像を撮影するラインセンサーカメラの場合、中点値Dは、1列分の反射光の強度から算出され、誤差を含む場合があり得る。そこで、複数個の中点値Dを算出するために、オペレータにより予め設定される所定撮像ライン数が用いられる。
【0037】
しきい値設定手段51は、ステップS301〜ステップS307の処理を所定撮像ライン数行ったと判定してステップS308から移行した場合、ステップS307にて算出した所定撮像ライン数分の中点値Dから、その平均値を算出し、算出結果の平均値をしきい値αとして設定する(ステップS309)。図4に示すように、中点値Dは、強度の高い画素位置の平均値Bと強度の低い画素位置の平均値Cとの間の中央の値となり、しきい値αは、強度の高い画素位置の平均値Bと強度の低い画素位置の平均値Cとの間の中央付近の値となる。
【0038】
しきい値設定手段51は、ステップS309において設定したしきい値αを、マスク範囲設定手段52に出力する(ステップS310)。
【0039】
このように、しきい値設定手段51によれば、スリットの幅に応じた全体の平均値Aを算出し、全体の平均値Aを基準にして、強度の高い画素位置及び強度の低い画素位置を区別し、これらの平均値B,Cを算出して中点値Dを算出し、しきい値αを設定するようにした。これにより、全体の平均値Aは、スリットの幅が広い場合は小さくなり、スリットの幅が狭い場合は大きくなるが、強度の高い画素位置の平均値B及び強度の低い画素位置の平均値Cは、スリットの幅に関係することなく反射光の強度に応じた値になる。したがって、スリットの幅に関係することなく、しきい値αを精度高く設定することができる。
【0040】
(マスク範囲設定手段)
次に、図2に示したマスク範囲設定手段52の詳細について説明する。図5は、マスク範囲設定手段52の処理を示すフローチャートであり、この処理はマスク範囲設定時に行われる。図6は、画素位置と反射光の強度、2値データ及びマスク範囲との関係を示す図である。以下に示す処理は、x軸上の隣り合う画素位置において、反射光の強度がしきい値αを上回って変化する画素位置、及び反射光の強度がしきい値αよりも下回って変化する画素位置を特定するために、反射光の強度を一旦2値データに変換し、2値データに基づいて、所定の画素位置を特定する。
【0041】
まず、マスク範囲設定手段52は、カメラ3から撮像領域の反射光の強度を入力すると共に(ステップS501)、しきい値設定手段51からしきい値αを入力する(ステップS502)。図6の上図に示すように、マスク範囲設定手段52に入力される撮像領域の反射光の強度は、図4と同様に、x軸上における撮像領域p1からp2までの1画素毎の値となる。
【0042】
マスク範囲設定手段52は、撮像領域の画素位置毎に、その画素位置における反射光の強度がしきい値αよりも低いか否かを判定し(ステップS503)、反射光の強度がしきい値αよりも低いと判定した場合(ステップS503:Y)、当該画素位置に対して2値データ「0」を設定する(ステップS504)。一方、マスク範囲設定手段52は、反射光の強度がしきい値αよりも低くないと判定した場合(ステップS503:N)、当該画素位置に対して2値データ「1」を設定する(ステップS505)。ステップS503、ステップS504及びステップS505の処理は、撮像領域の画素位置毎に行われる。これにより、撮像領域の画素位置毎に2値データが設定される。図6の下図に示すように、マスク範囲設定手段52により設定される2値データは、画素位置a(p1)からbまでの範囲である材料8−1の外側の領域(撮像領域の端から材料8−1の外側における端までの領域)において「0」となり、画素位置bからcまでの範囲である材料8−1の領域において「1」となり、画素位置cからdまでの範囲であるスリットの領域において「0」となり、画素位置dからeまでの範囲である材料8−2の領域において「1」となり、画素位置eからf(p2)までの範囲である材料8−2の外側の領域(材料8−2の外側における端から撮像領域の端までの領域)において「0」となる。
【0043】
マスク範囲設定手段52は、撮像領域における各画素位置の2値データに基づいて、2値データが「0」から「1」に変化する画素位置、及び「1」から「0」に変化する画素位置を特定し(ステップS506)、特定した画素位置を画素位置b,c,d,eに設定する(ステップS507)。そして、マスク範囲設定手段52は、x軸上の範囲a(p1)〜b,c〜d,e〜f(p2)をマスク範囲に設定する(ステップS508)。図6の下図に示すように、マスク範囲は、x軸上のa(p1)〜b,c〜d,e〜f(p2)となる。
【0044】
マスク範囲設定手段52は、ステップS508において設定したマスク範囲を記憶手段53に格納する(ステップS509)。
【0045】
尚、図5は2値データを用いた処理の例であるが、前述のとおり、2値データを用いることなくマスク範囲を設定するようにしてもよい。例えば、マスク範囲設定手段52は、x軸上の隣り合う画素位置において、反射光の強度としきい値αとを比較し、反射光の強度がしきい値αを上回って変化する画素位置、及び反射光の強度がしきい値αよりも下回って変化する画素位置をそれぞれ特定し、特定した画素位置を画素位置b,c,d,eに設定し、x軸上の範囲a(p1)〜b,c〜d,e〜f(p2)をマスク範囲に設定する。
【0046】
以上のように、本発明の実施形態による表面検査装置1によれば、ロール7が設置されていない位置に存在する材料8−1,8−2に帯状光を照射して材料8−1,8−2の表面を検査する際に、処理装置5のしきい値設定手段51が、マスク範囲設定時において、撮像領域における画素位置毎の反射光の強度から、全体の強度の平均値Aを算出し、平均値Aに基づいて、強度の高い画素位置における平均値Bを算出すると共に、強度の低い画素位置における平均値Cを算出し、これらの平均値B,Cの中点値Dからしきい値αを設定するようにした。また、マスク範囲設定手段52が、マスク範囲設定時において、撮像領域における画素位置毎の反射光の強度としきい値αとを比較し、x軸上で隣り合う画素位置において、反射光の強度がしきい値αを上回ってまたは下回って変化する画素位置を特定し、特定した画素位置からマスク範囲を設定するようにした。これにより、疵検出手段54が、検査時において、撮像範囲のうちマスク範囲設定手段52により設定されたマスク範囲を除いた検査対象範囲について、材料8−1,8−2の表面を検査し疵を検出することができる。したがって、材料8−1,8−2の幅及びスリットの幅等からオペレータが手動にてマスク範囲を設定していた従来に比べ、手間をかけることなく適切にマスク範囲を設定することができ、オペレータの作業負荷を低減することが可能となる。また、材料が変更されたとしても、スリットの幅に関係することなく材料に応じたしきい値αが設定されるから、精度の高いマスク範囲を設定することができる。
【0047】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施形態では、2つの材料8−1,8−2を対象にしてマスク範囲を設定するようにしたが、3以上の材料を対象にしてマスク範囲を設定するようにしてもよい。また、前記実施形態では、材料8−1,8−2の表面に表れた疵を検出するようにしたが、本発明は、疵だけでなく、凹凸等の欠陥を検出する場合に適用がある。
【符号の説明】
【0048】
1 表面検査装置
2 照明装置
3 カメラ
4 PG
5 処理装置
6 記憶装置
7 ロール
8−1,8−2 材料
51 しきい値設定手段
52 マスク範囲設定手段
53 記憶手段
54 疵検出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール上を移動する複数の帯状体の材料に対し、前記複数の材料の間に存在するスリットを含む前記複数の材料の幅方向に、かつ前記ロールが存在しない箇所へ向けて光を照射し、前記照射により得られる反射光の強度に基づいて、所定の検査対象範囲で前記材料の表面を検査する表面検査装置において、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度に基づいて、前記各位置の強度が高い側に含まれるかまたは低い側に含まれるかを判定し、強度が高い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値、及び強度が低い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値をそれぞれ算出し、前記算出したそれぞれの平均値に基づいてしきい値を設定するしきい値設定手段と、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と、前記しきい値設定手段により設定されたしきい値とに基づいて、前記材料の位置及びスリットの位置を特定し、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定するマスク範囲設定手段と、
前記マスク範囲設定手段により設定されたマスク範囲を検査対象範囲から除外して、前記材料の表面を検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面検査装置において、
前記しきい値設定手段は、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度から全体の平均値を算出し、前記全体の平均値よりも高い反射光の強度を有する位置を抽出し、前記抽出した全ての位置における反射光の強度から第1の平均値を算出し、前記全体の平均値以下である反射光の強度を有する位置を抽出し、前記抽出した全ての位置における反射光の強度から第2の平均値を算出し、前記第1の平均値と前記第2の平均値とを平均した中点値を算出し、前記算出した中点値に基づいて前記しきい値を設定する、ことを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面検査装置において、
前記マスク範囲設定手段は、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と、前記しきい値設定手段により設定されたしきい値とを比較し、前記隣り合う位置の反射光の強度がしきい値を上回ってまたは下回って変化する位置を特定し、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定する、ことを特徴とする表面検査装置。
【請求項4】
ロール上を移動する複数の帯状体の材料に対し、前記複数の材料の間に存在するスリットを含む前記複数の材料の幅方向に、かつ前記ロールが存在しない箇所へ向けて光を照射し、前記照射により得られる反射光の強度に基づいて、所定の検査対象範囲で前記材料の表面を検査する表面検査方法において、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度に基づいて、前記各位置の強度が高い側に含まれるかまたは低い側に含まれるかを判定するステップと、
強度が高い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値、及び強度が低い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値をそれぞれ算出するステップと、
前記算出したそれぞれの平均値に基づいてしきい値を設定するステップと、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と前記しきい値とに基づいて、前記材料の位置及びスリットの位置を特定するステップと、
前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定するステップと、
前記マスク範囲を検査対象範囲から除外して、前記材料の表面を検査するステップと、
を有することを特徴とする表面検査方法。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の表面検査装置として機能させるための表面検査プログラム。
【請求項1】
ロール上を移動する複数の帯状体の材料に対し、前記複数の材料の間に存在するスリットを含む前記複数の材料の幅方向に、かつ前記ロールが存在しない箇所へ向けて光を照射し、前記照射により得られる反射光の強度に基づいて、所定の検査対象範囲で前記材料の表面を検査する表面検査装置において、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度に基づいて、前記各位置の強度が高い側に含まれるかまたは低い側に含まれるかを判定し、強度が高い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値、及び強度が低い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値をそれぞれ算出し、前記算出したそれぞれの平均値に基づいてしきい値を設定するしきい値設定手段と、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と、前記しきい値設定手段により設定されたしきい値とに基づいて、前記材料の位置及びスリットの位置を特定し、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定するマスク範囲設定手段と、
前記マスク範囲設定手段により設定されたマスク範囲を検査対象範囲から除外して、前記材料の表面を検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面検査装置において、
前記しきい値設定手段は、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度から全体の平均値を算出し、前記全体の平均値よりも高い反射光の強度を有する位置を抽出し、前記抽出した全ての位置における反射光の強度から第1の平均値を算出し、前記全体の平均値以下である反射光の強度を有する位置を抽出し、前記抽出した全ての位置における反射光の強度から第2の平均値を算出し、前記第1の平均値と前記第2の平均値とを平均した中点値を算出し、前記算出した中点値に基づいて前記しきい値を設定する、ことを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面検査装置において、
前記マスク範囲設定手段は、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と、前記しきい値設定手段により設定されたしきい値とを比較し、前記隣り合う位置の反射光の強度がしきい値を上回ってまたは下回って変化する位置を特定し、前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定する、ことを特徴とする表面検査装置。
【請求項4】
ロール上を移動する複数の帯状体の材料に対し、前記複数の材料の間に存在するスリットを含む前記複数の材料の幅方向に、かつ前記ロールが存在しない箇所へ向けて光を照射し、前記照射により得られる反射光の強度に基づいて、所定の検査対象範囲で前記材料の表面を検査する表面検査方法において、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度に基づいて、前記各位置の強度が高い側に含まれるかまたは低い側に含まれるかを判定するステップと、
強度が高い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値、及び強度が低い側に含まれると判定された全ての位置における強度の平均値をそれぞれ算出するステップと、
前記算出したそれぞれの平均値に基づいてしきい値を設定するステップと、
前記スリットを含む複数の材料の幅方向における各位置の反射光の強度と前記しきい値とに基づいて、前記材料の位置及びスリットの位置を特定するステップと、
前記特定した位置に基づいて、前記スリットを含むマスク範囲を設定するステップと、
前記マスク範囲を検査対象範囲から除外して、前記材料の表面を検査するステップと、
を有することを特徴とする表面検査方法。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の表面検査装置として機能させるための表面検査プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−72644(P2013−72644A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209503(P2011−209503)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【特許番号】特許第5100877号(P5100877)
【特許公報発行日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【出願人】(390014384)日本リライアンス株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【特許番号】特許第5100877号(P5100877)
【特許公報発行日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【出願人】(390014384)日本リライアンス株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
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