説明

表面歪み欠陥検査装置、検査方法及びコンピュータプログラム

【課題】表面の状態と検査する照明環境などに左右されない表面歪み欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】表面歪み検査装置1は、被測定物9の表面に映り込んだ画像によって、被測定物9の表面の歪みを検査する表面歪み検査装置であって、被測定物9の表面の3次元形状データを測定する3次元形状測定装置3と、3次元形状測定装置3で測定した3次元形状データを用いて、被測定物9の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする制御処理装置2と、前記映り込み再現手段によってシミュレーションされた映り込み画像を表示する表示装置7と、を備える。制御処理装置2は、前記特定の画像と、被測定物9の表面と、映り込みをシミュレートする視点との相対位置を移動させて、映り込み画像を連続して変化させる。また、前記特定の画像は、単色、グレースケールもしくはカラースケールと、縞模様、市松模様もしくは格子模様との任意の組み合わせである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面歪み欠陥の検査装置、検査方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
外観意匠面などの検査は、全くの平面ではないがフラット仕上げが要求される製品などで、ある模様の映り込み具合の見え方で良否を判断している場合がある。例えば被検査面がきれいでスムーズな面であれば、被検査面に映り込んだ縞模様はそろって見えるが、不要な凹凸がある場合、縞模様が乱れるので凹凸を検知することができる。
【0003】
実際の製造現場において、被検査面に映り込んだ蛍光灯の虚像の見え方を目視で検査することによって、被検査面の歪みの程度の検査が行われていることがある。
【0004】
従来の表面歪み検査方法として、特許文献1のように直接、被検査面に縞模様を映り込ませて、その映り込んだ縞模様の形状を観察することによって、被検査面の凹凸状態を検査する技術がある。
【0005】
特許文献1には、金属等の加工上においてその表面に発生する微細傷等を識別して、光学的に金属等の表面を検査する技術が記載されている。特許文献1の技術は、圧延もしくは絞り加工された金属等の表面の凹凸状態を検査する光学的表面検査方法において、検査する金属等の表面に明るい部分と暗い部分とを交互に等間隔で配列した縞模様を有する光を照射する照明装置を使用し、前記縞模様の配列方向と圧延もしくは絞り加工する方向とが同じになるように設定する。
【特許文献1】特開2002−202113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の、ある模様の映り込み具合の見え方で表面歪みの有無を検査する方法には以下のような問題がある。
【0007】
被検査面の最終段階で塗装されて光沢のあるものであっても、製造過程では目粗し状態で光沢がなく、映り込みが確認しづらい。そのため、検査段階で表面に油を塗布するなどの処理を行っている。被検査面が光沢のない場合は、直接縞模様を映り込ませて検査することは困難である。
【0008】
手仕上げで仕上げられる被検査面は、全くの平面仕上げではなく1つ1つ形状が微妙に異なり、表面処理の状態、光の当て方などで映り込みの見え方が異なる。歪みの見え方がまちまちであるため、判断基準は官能量として判断されている。しかし、検査をするには熟練を要し、検査視野を共有することができないので、検査の判断基準の伝達と統一が困難である。
【0009】
映り込ませた縞模様などを固定させていては歪み具合が確認しづらいため、被検査面又は視点を動かして映り込む縞模様を移動させながら歪み具合を視認する。そのため、歪み具合の映り込みを撮影した印刷物では、縞模様を動かすことができないので、歪み具合が判別しにくい。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面の状態と検査する照明環境などに左右されない表面歪み欠陥検査装置を提供することを目的とする。また、表面歪み検査の判断基準を伝達および統一できる、表面歪み検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る表面歪み検査装置は、検査対象の表面に映り込んだ画像によって、前記検査対象の表面の歪みを検査する表面歪み検査装置であって、前記検査対象の表面の3次元形状データを測定する測定手段と、前記測定手段で測定した3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする映り込み再現手段と、前記映り込み再現手段によってシミュレーションされた映り込み画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
なお、前記映り込み再現手段は、前記測定手段で測定した3次元形状データの空間周波数成分のうち、検査の対象とする歪みの大きさよりも小さい波長の空間周波数成分を除去したのち、その3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする、ことを特徴とする。
【0013】
また、前記映り込み再現手段は、前記測定手段で測定した3次元形状データを、特定の座標成分を拡大又は縮小したのち、その3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする、ことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記映り込み再現手段は、前記特定の画像と、前記検査対象の表面の3次元形状データと、前記特定の画像の映り込みをシミュレートする視点と、の少なくともいずれか2つの組み合わせの相対位置を移動させて、前記映り込み画像を連続して変化させ、
前記表示手段は、前記連続して変化する映り込み画像を連続して表示する、
ことを特徴とする。
【0015】
特に、前記特定の画像は、単色、グレースケールもしくはカラースケールと、縞模様、市松模様もしくは格子模様との任意の組み合わせである、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の観点に係る表面歪み検査方法は、検査対象の表面に映り込んだ画像によって、前記検査対象の表面の歪みを検査する表面歪み検査方法であって、前記検査対象の表面の3次元形状データを測定する測定ステップと、前記測定手段で測定した3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする映り込み再現ステップと、前記映り込み再現手段によってシミュレーションされた映り込み画像を表示する表示ステップと、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の観点に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、検査対象の表面の3次元形状データを測定する測定手段と、前記測定手段で測定した3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする映り込み再現手段と、前記映り込み再現手段によってシミュレーションされた映り込み画像を表示する表示手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の表面歪み検査装置及び表面検査方法によれば、映り込みの確認しづらい被検査面でも、目視による歪み検査を行うことができる。また、視野(同じ映り込み画像)を同時に複数者が観察できるので、歪みの判断基準の伝達と統一を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る表面歪み検査装置の一実施の形態について、図を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態である表面歪み検査装置1の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す表面歪み検査装置の制御処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係る表面歪み検査装置1は、3次元形状測定装置3と、制御処理装置2と、表示装置7とから構成される。さらに、制御処理装置2にプリンタ装置8(図2参照)が接続される場合がある。
【0021】
3次元形状測定装置3は、測定ヘッド4と、ステージ5と、固定部6とから構成される。固定部6は、検査対象である被測定物9を固定する。測定ヘッド4は、例えば光切断法により被検査面の各点の座標を計測する。ステージ5は、測定ヘッド4を保持して移動させる。光切断法は、レーザ光源からのシート光(扇型レーザ光)を被検査面に照射し、その照射光が当たる線のプロファイルを2次元カメラで撮影して被検査面の断面形状を測定する方法である。
【0022】
制御処理装置2は、3次元形状測定データから被測定物9の表面に、ある模様の画像が映り込む状態をシミュレーションし、映り込み画像を表示装置に表示する。
【0023】
制御処理装置2は、図2に示すように、制御部11、主記憶部12、外部記憶部13、操作部14、画像表示部15、入出力部16及び印字出力部17から構成される。制御部11、主記憶部12、外部記憶部13、操作部14、画像表示部15、入出力部16及び印字出力部17はいずれも内部バス10を介して制御部11に接続されている。
【0024】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部13に記憶されているプログラムに従って、3次元計測データの入力、3次元計測データの処理、映り込みシミュレーション及び映り込み画像の表示などの処理を実行する。
【0025】
主記憶部12はRAM(Random-Access Memory)等から構成され、制御部11の作業領域として用いられる。3次元計測データ、被検査面に映り込ませる元になる画像データ、及び被検査面に映り込んだ画像のデータなどはは、主記憶部12の一部に記憶領域の構造体として記憶保持される。
【0026】
外部記憶部13は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成され、前記の処理を制御部11に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、制御部11の指示に従って、このプログラムのデータを制御部11に供給し、制御部11から供給されたデータを記憶する。
【0027】
操作部14は、オペレータが表面歪み検査装置に指令を与えるために、キースイッチ、ジョグダイヤル、キーボード及びマウスなどのポインティングデバイス等と、それらを内部バスに接続するインターフェース装置を備える。操作部14を介して、測定対象物の3次元形状データの計測、映り込み画像の選択、映り込みシミュレーション、映り込み画像の表示などの指令が入力され、制御部11に供給される。
【0028】
表示装置7は、CRT(Cathode Ray Tube)またはLCD(Liquid Crystal Display)などから構成され、操作部14から入力された指令に応じた制御部11の命令によって、被測定物の表面に特定の模様の画像が映り込んだシミュレーション画像などを表示する。画像表示部15は、表示装置7に表示する画面のデータを、表示装置7を駆動する信号に変換する。
【0029】
入出力部16は、3次元形状測定装置3と接続するシリアルインタフェース又はLAN(Local Area Network)インタフェースから構成されている。制御部11は、入出力部16を介して、3次元形状測定装置3と通信を行う。制御部11は、入出力部16を介して3次元形状測定装置3に測定の開始・終了などを指令し、3次元形状測定装置3から被測定物表面の3次元形状データを入力する。
【0030】
印字出力部17は、プリンタ装置8と接続するシリアルインタフェース、パラレルインターフェース又はLAN(Local Area Network)インターフェース等から構成されている。制御部11は印字出力部16を介して、プリンタ装置8へ印刷する画像データを出力する。
【0031】
次に、図1に示す表面歪み検査装置1の動作について、図3を参照して説明する。図3は、表面歪み検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0032】
検査対象である被測定物が3次元形状測定装置3の固定部6に固定されて、操作部14から表面歪み検査の開始が指令されると、制御部11は入出力部16を介して3次元形状測定装置3に測定の開始を指令し、3次元測定データを入力する(ステップS1)。
【0033】
次に、取得した3次元測定データを、縦横の間隔が一定の格子状の点にマッピングする(ステップS2)。図4は、3次元形状測定データの格子状の点へのマッピングを説明する図である。図4(a)は、3次元形状測定データをX−Y平面の格子状の点にマッピングした様子を表す。図4(a)のマトリックスは3次元測定データをマッピングする格子状の点を表し、黒丸は測定データがマッピングされた点を表す。3次元形状データは、図4(a)のX−Y平面の格子点にマッピングされたZ座標で表される。
【0034】
測定データの縦横の間隔が異なる場合、さらに測定データの密度が不足するときには、測定点の間を補間するデータを生成する(ステップS3)。図4(b)は、図4(a)の測定データを補間した様子を表す。図4(b)の黒丸は測定データがマッピングされた点、白丸は補間によってデータが追加された点を表す。
【0035】
図5は、3次元形状測定データを補間する方法を説明する図である。図5は図4(b)のX−Y平面で表されたデータをY−Z平面で切った断面を表す。図5の黒丸は測定データがマッピングされた点、白丸は補間されたデータを示す。図5(a)は、測定データの間を直線で補間した例を示す。図5(b)は、測定データを滑らかな曲線で接続するように補間した例を示す。測定データの間を接続する滑らかな曲線としては、例えば、Catmull-Rom曲線を用いることができる。
【0036】
図3に戻って、次に、補間された3次元形状測定データのスムージング処理を行う(ステップS4)。スムージング処理は、被検査面を滑らかにする処理である。3次元形状測定データは、被検査面の粗さや測定装置の計測誤差により表面に微細な変動成分が含まれている。そのまま表面の反射を求めると、シミュレーションの反射光が散乱して映り込み画像が得られないので、表面を鏡面状にする処理を施す。例えば、測定データの移動平均をとることによって、滑らかにする。スムージング処理によって、3次元形状測定データに含まれる空間周波数成分のうち、検査対象とする歪みの大きさに比べて充分小さい空間波長を有する変動成分を除去する。
【0037】
次に、歪みを検出しやすくするために、被検査面の凹凸を強調するように3次元形状測定データを加工する(ステップS5)。例えば、Z座標の倍率を変更して被検査面の凹凸を強調する。図6は、3次元形状測定データをZ方向に拡大した様子を表した図である。元のデータは黒丸で、拡大したデータを白丸で表示している。表面の光の反射は、反射する点の面の法線に対して入射角と反射角が等しい。測定データを1方向に拡大すると、図6に示すように面の法線の変化が大きくなるので、反射光の変化が大きくなる。その結果、映り込み画像のゆがみが強調されることになる。表面歪みが識別しやすい場合には、データの加工は省略してもよい。
【0038】
再び図3に戻って、3次元形状測定データの近接する点の組から表面要素を生成する(ステップS6〜S10)。近接する3点を1つの組にして、その3点でかこまれた微小な平面(3角形)を構成する。まず、近接する点を選択し(ステップS6)、近接点の数によって分岐する(ステップS7)。近接点が4点の場合は(ステップS7;=4)、その4点を対角線で区切って、2つの表面要素を生成する(ステップS8)。対角線で区切る方法は2通りあるが、対角線をX−Y平面に投影した交点におけるZ座標が大きいほうの対角線を選択する。
【0039】
図7及び図8は、近接点が4点の場合に表面要素を生成する方法を説明する図である。図7(a)はX−Y平面における4つの近接点の位置を示す。4点A、B、C、Dについて、表面要素を構成する方法は図7(b)と(c)の2通りある。図7(b)では、三角形ABDと三角形BCDの2つの表面要素とする場合を示す。図7(c)では、三角形ABCと三角形CDAの2つの表面要素とする場合を示す。図8は、図7の4つの近接点の空間配置を表す。対角線ACと対角線BDをX−Y平面に投影した交点において、Z座標は対角線BDの方が大きいので、図8の場合は対角線BDを採用して、三角形ABDと三角形BCDを2つの表面要素とする。すなわち、この場合は、図7(b)を選択する。
【0040】
近接点が3点の場合は(ステップS7;=3)、その3点で1つの表面要素を生成する(ステップS9)。図9は、近接点が3点の場合に表面要素を生成する方法を説明する図である。図9はX−Y平面における3つの近接点の位置を示す。3つの点L、M、Nで11つの表面要素を生成する。
【0041】
図3に戻って、近接点が2点以下の場合は(ステップS7;2以下)、表面要素を構成できないので、そのデータは削除する(ステップS10)。近接点が2以下になるのは、例えば被測定面の角である。
【0042】
被検査面に表面要素の生成処理を行っていない点があれば(ステップS11;No)、ステップS6〜S10を繰り返す。被検査面の全ての点について表面要素の生成処理が完了したら(ステップS11;Yes)、表面要素に対応するテクスチャを演算する(ステップS12)。
【0043】
表面要素に対応するテクスチャの演算は次のように行う。被検査面に対して、映り込み画像を観察する視点と、特定の模様を有する画像の面を定める。ある表面要素の点を観察する視点から見たときに、その表面要素の点における法線と視線とのなす角を反射角として、反射角に等しい入射角の入射線と特定の模様を有する画像の面との交点の画素データを、その表面要素の点におけるテクスチャとする。
【0044】
特定の模様を有する画像としては、例えば、縞模様、市松模様、格子模様などである。また、単色の(例えば白と黒の)模様以外に、中間調が連続して変化するグレースケールや、波長が連続して変化するように色彩を変化させるカラースケール、又は複数の色を組み合わせた帯と、模様を組み合わせた画像でもよい。
【0045】
図10は、3次元形状測定データのある点における法線方向を算出する方法を説明する図である。図10に示すように、3次元形状測定データの各点における法線は、その点のまわりに接する表面要素の法線ベクトルのベクトル和の方向とする。
【0046】
また、表面要素内の点については、連続して法線方向が変化するように、各頂点の法線から線形補間によって法線方向を決定し、その法線に対応してテクスチャを演算する(グローシェーディング(gouraud shading)という)。図11は、頂点の法線から線形補間によって決定された表面要素内の点の法線方向を示す。グローシェーディングによって演算されたテクスチャでは、近接する表面要素はスムーズにつながって見える。図12は、グローシェーディングによる効果を視覚的に示す。図12(a)は表面要素の内部で一様な法線方向とした場合のテクスチャを表し、図12(b)はグローシェーディングによるテクスチャの例を表す。
【0047】
図3に戻って、全ての表面要素についてテクスチャを演算する(ステップS13;No、ステップS12)。全ての表面要素についてテクスチャを演算したら(ステップS13;Yes)、映り込み画像を表示する(ステップS14)。ステップS12で演算されたテクスチャ画像のデータは、被検査面の映り込みのシミュレーション画像となっている。被検査面を3次元表示し、演算したテクスチャを用いて、その表面に特定の模様の映り込みをシミュレーションした画像を表示する。シミュレーションした画像は、表示装置7に表示するほか、印字出力部17を介してプリンタ装置8(図2参照)に出力して印刷することもできる。
【0048】
さらに、被検査面の姿勢を変化させて映り込み画像を動かす場合は(ステップS15;Yes)、被検査面の姿勢を変えてステップS12〜S14を繰り返す。映り込み画像を動かすには、被検査面と観察する視点と特定の模様の画像の相対的位置を変化させる。被検査面の姿勢を変える他に、例えば、被検査面と特定の模様の画像を固定して、観察する視点を移動させてもよい。又は、特定の模様の画像のみを移動させてもよい。
【0049】
図13は、シミュレーションの結果得られた映り込み画像の一例を示す。図13(a)は、被検査面を等高線で表した図である。同じ被検査面に対して、縞模様の画像が映り込んだ様子が図13(b)に示されている。図13の被検査面は等高線に示されるように、図の右下方向に向かって凹んでいる。平らな部分では、映り込みの縞模様はそろっているが、凹んでいる部分では、縞模様が乱れている。
【0050】
図14は、図13と同じ被検査面について、映り込む縞模様を動かした様子を示す。映り込む縞模様を動かしてみることによって、縞が表面を移動しながらゆがんでいくので、凹んでいる部分がよく分かる。
【0051】
図15は、図13と同じ被検査面について、異なる画像の映り込みをシミュレーションした場合を示す。図15(a)は単色の縞模様の映り込みシミュレーション画像である。単色の縞模様では縞の方向にしか感度がなく、黒の部分では歪みの様子が分からない。
【0052】
図15(b)はカラースケールと縞模様を組み合わせた画像の映り込みシミュレーション画像を表す(図ではグレースケールで表されている)。カラーの縞模様では、細かい縞パターンの階調があるので、歪み具合がわかりやすい。また、印刷した画像では、映り込みを動かしてみることができないが、グレースケールやカラースケールを用いることによって、歪み具合がわかりやすい。
【0053】
図15(c)は、市松模様の映り込みシミュレーション画像の例を示す。図15(a)、(b)の縞模様では横方向の歪み具合しかわからなかったが、市松模様又は格子模様の場合は、縦横に感度があるので、縦方向の歪み具合も把握できる。
【0054】
以上説明したとおり、本発明の表面歪み検査装置は、被検査面の3次元形状測定データを用いて、被検査面に縞模様や市松模様などの特定の模様の映り込み画像をシミュレーションして表示する。特定の模様を有する画像として、例えば、縞模様、市松模様もしくは格子模様と、単色、グレースケールもしくはカラースケールとを組み合わせた画像を用いる。
【0055】
本発明によれば、表面に光沢がないような映り込みの確認しづらい被検査面でも、目視による歪み検査を行うことができる。視野(同じ映り込み画像)を同時に複数者が観察できるので、歪みの判断基準の伝達と統一を図ることができる。また、同じ歪み判断基準データや限度見本を複数の検査現場に配布して共用することができる。
【0056】
本発明では、映り込む画像を被検査面の上で動かしてみることができるので、歪み具合がわかりやすい。また、グレースケールやカラースケールなどと組み合わせた模様を用いることによって、1つの画像でも(1枚の絵でも)歪み具合を把握しやすい。実際の検査現場では作成しづらい照明パターン(特定の模様)でも任意に作成することができるので、検査対象に合わせた検査が手軽に行える。
【0057】
さらに、被検査面の3次元測定データについて、例えば、被検査面の1方向の倍率を変えるなどの変形を行うことによって、被検査面の凹凸を強調し、歪みの判断が行いやすいという効果がある。
【0058】
その他、前記のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更及び修正が可能である。
【0059】
制御部11、主記憶部12、外部記憶部13、操作部14、画像表示部15、入出力部16、印字出力部17、内部バス10などから構成される映り込みシミュレーション処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読みとり可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する表面歪み検査装置の制御処理装置2を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで制御処理装置2を構成してもよい。
【0060】
また、制御処理装置2の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0061】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面歪み検査装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る制御処理装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る表面歪み検査装置の動作の例を示すフローチャートである。
【図4】3次元形状測定データの格子状の点へのマッピングを説明する図である。
【図5】3次元形状測定データを補間する方法を説明する図である。
【図6】3次元形状測定データをZ方向に拡大した様子を表した図である。
【図7】近接点が4点の場合に表面要素を生成する方法を説明する図である。
【図8】近接点が4点の場合に表面要素を生成する方法を説明する図である。
【図9】近接点が3点の場合に表面要素を生成する方法を説明する図である。
【図10】3次元形状測定データのある点における法線方向を算出する方法を説明する図である。
【図11】頂点の法線から線形補間によって決定された表面要素内の点の法線方向を示す図である。
【図12】グローシェーディングによる効果を視覚的に示す図である。
【図13】シミュレーションの結果得られた映り込み画像の一例を示す図である。
【図14】図13と同じ被検査面について、映り込む縞模様を動かした様子を示す図である。
【図15】図13と同じ被検査面について、異なる画像の映り込みをシミュレーションした場合を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 表面歪み検査装置
2 制御処理装置(映り込み再現手段)
3 3次元形状測定装置(測定手段)
4 測定ヘッド
5 ステージ
6 固定部
7 表示装置(表示手段)
8 プリンタ装置(表示手段)
9 被測定物
10 内部バス
11 制御部(映り込み再現手段、表示手段)
12 主記憶部
13 外部記憶部
14 操作部
15 画像表示部(表示手段)
16 入出力部
17 印字出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の表面に映り込んだ画像によって、前記検査対象の表面の歪みを検査する表面歪み検査装置であって、
前記検査対象の表面の3次元形状データを測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする映り込み再現手段と、
前記映り込み再現手段によってシミュレーションされた映り込み画像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする表面歪み検査装置。
【請求項2】
前記映り込み再現手段は、
前記測定手段で測定した3次元形状データの空間周波数成分のうち、検査の対象とする歪みの大きさよりも小さい波長の空間周波数成分を除去したのち、その3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする、
ことを特徴とする請求項1に記載の表面歪み検査装置。
【請求項3】
前記映り込み再現手段は、
前記測定手段で測定した3次元形状データを、特定の座標成分を拡大又は縮小したのち、その3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする、
ことを特徴とする請求項1に記載の表面歪み検査装置。
【請求項4】
前記映り込み再現手段は、前記特定の画像と、前記検査対象の表面の3次元形状データと、前記特定の画像の映り込みをシミュレートする視点と、の少なくともいずれか2つの組み合わせの相対位置を移動させて、前記映り込み画像を連続して変化させ、
前記表示手段は、前記連続して変化する映り込み画像を連続して表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の表面歪み検査装置。
【請求項5】
前記特定の画像は、単色、グレースケールもしくはカラースケールと、縞模様、市松模様もしくは格子模様との任意の組み合わせである、ことを特徴とする請求項1に記載の表面歪み検査装置。
【請求項6】
検査対象の表面に映り込んだ画像によって、前記検査対象の表面の歪みを検査する表面歪み検査方法であって、
前記検査対象の表面の3次元形状データを測定する測定ステップと、
前記測定手段で測定した3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする映り込み再現ステップと、
前記映り込み再現手段によってシミュレーションされた映り込み画像を表示する表示ステップと、
を備えることを特徴とする表面歪み検査方法。
【請求項7】
コンピュータを、
検査対象の表面の3次元形状データを測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した3次元形状データを用いて、前記検査対象の表面に特定の画像の映り込みをシミュレーションする映り込み再現手段と、
前記映り込み再現手段によってシミュレーションされた映り込み画像を表示する表示手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−256240(P2007−256240A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84698(P2006−84698)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】