説明

表面波プラズマ処理装置

【課題】プラズマ密度の均一性を高めることの可能な表面波プラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】表面波プラズマ処理装置は、導波管20の誘電窓16と互いに向い合う部位にスロットアンテナ21を備えるとともに、基台12と誘電窓16との間に、遮蔽部32と透過部33とを有する遮蔽部材30を備えている。そして、遮蔽部材30は、載置面の法線方向から見て、スロットアンテナ21のアンテナ部24の面積をS1、アンテナ部24と遮蔽部32との重なる部分の面積をS2、スロットアンテナ21の開口部23の面積をS3、開口部23と遮蔽部32との重なる部分の面積をS4とすると、S2/S1<S4/S3が満たされるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面波プラズマ処理装置、特にスロットアンテナを用いてマイクロ波励起を行う表面波プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロ波にて表面波プラズマを発生させ、この発生させた表面波プラズマに半導体基板を曝すことによって、半導体基板に対してドライエッチング、表面改質、アッシング等を行う表面波プラズマ処理装置が知られている。こうした表面波プラズマ処理装置として、例えば特許文献1に記載の装置では、半導体基板を収容する真空槽の上部に誘電窓を介してマイクロ波の導波管が配置され、誘電窓における真空槽内側の表面で表面波プラズマが生成される。この際、誘電窓と互いに向い合う導波管の下部が、複数の開口を有するスロットアンテナによって構成されているため、該スロットアンテナを介して放射されるマイクロ波が誘電窓の下面に表面波を伝播させることで、均一で高密度なプラズマが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−117373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした表面波プラズマ処理装置では、真空槽内におけるプラズマ密度が均一となるように、マイクロ波の波長等を含めた所定のプロセス条件に合わせて、スロットアンテナの形状、すなわちその開口の大きさや数、配置等が最適化されている。一方、こうした表面波プラズマ処理装置においては、処理対象に応じてプロセス条件が変更されることが少なくない。しかしながら、このような現状に対して、その都度のプロセス条件に合わせてスロットアンテナを設計しなおすことは煩雑であり、装置としての汎用性を欠くことにもなる。結局、プラズマ密度の均一性が得られがたいプロセス条件下で表面波プラズマ処理が行われる結果、プラズマ密度の不均一性に基づく処理結果のばらつきを、表面波プラズマ処理の前工程や後工程に対する各種の制約で解消する方策が取られている。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラズマ密度の均一性を高めることの可能な表面波プラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
本発明の一態様は、基板が載置される載置面を有した基台が収容される真空槽と、前記真空槽に設けられた誘電窓上に配設される導波管とを備え、前記導波管には、前記誘電窓と互いに向い合う部位にマイクロ波を放射するスロットアンテナが設けられ、該放射されたマイクロ波が前記誘電窓を介して前記真空槽内に伝播する表面波プラズマ処理装置であって、前記基台と前記誘電窓との間に、遮蔽部と透過部とを有する遮蔽部材を備え、前記載置面の法線方向から見て、前記スロットアンテナのアンテナ部の面積をS1、前記アンテナ部と前記遮蔽部との重なる部分の面積をS2、前記スロットアンテナにおける1以上の開口からなる開口部の面積をS3、前記開口部と前記遮蔽部との重なる部分の面積をS4とすると、「S2/S1<S4/S3」が満たされること要旨とする。
【0007】
本発明の一態様では、スロットアンテナのアンテナ部の直下よりも開口部の直下の方で、遮蔽部材の遮蔽部によるプラズマの遮蔽の割合が大きくなる。したがって、プラズマ密度が高くなる部位においてプラズマが相対的に多く遮蔽されるため、プラズマ処理にあたってのプラズマ密度の均一性を高めることが可能となる。
【0008】
本発明の一態様は、前記スロットアンテナの開口部は、前記載置面の法線方向から見て、面積が互いに異なる開口を含む複数の開口を有し、前記開口の面積が大きくなるほど、前記載置面の法線方向から見て、該開口における前記遮蔽部と重なる部分の面積が大きくなることを要旨とする。
【0009】
本発明の一態様では、遮蔽部材の遮蔽部により、プラズマ密度が高くなる部位であるほどプラズマが多く遮蔽されるため、プラズマ処理にあたってのプラズマ密度の均一性をより適切に向上させることが可能となる。
【0010】
本発明の一態様は、前記スロットアンテナの開口部は、前記載置面の法線方向から見て、面積が互いに異なる開口を含む複数の開口を有し、前記遮蔽部材の遮蔽部は、前記載置面の法線方向から見て、前記複数の開口のうち、最も面積が大きい開口の全体と重なることを要旨とする。
【0011】
本発明の一態様では、遮蔽部材の遮蔽部により、特にプラズマ密度が高くなる部位においてプラズマが遮蔽されるため、プラズマ処理にあたってのプラズマの密度の均一性をより適切に向上させることが可能となる。
【0012】
本発明の一態様は、前記遮蔽部材の遮蔽部は、前記載置面の法線方向から見て、前記スロットアンテナの開口部の全体と重なることを要旨とする。
本発明の一態様では、遮蔽部材の遮蔽部により、プラズマ密度が高くなるスロットアンテナの開口部の直下部分全域においてプラズマが遮蔽されるため、プラズマ処理にあたってのプラズマの密度の均一性をより適切に向上させることが可能となる。
【0013】
本発明の一態様は、前記遮蔽部材の遮蔽部は、前記載置面の法線方向から見て、前記導波管におけるマイクロ波の進行方向では、前記スロットアンテナの開口部の縁と互いに重なる縁を有することを要旨とする。
【0014】
本発明の一態様では、遮蔽部材の遮蔽部により、プラズマ密度が高くなるスロットアンテナの開口部の直下部分全域においてプラズマが遮蔽されるため、的確にプラズマを遮蔽することができるようになる。また同時に、スロットアンテナのアンテナ部の直下においてプラズマを遮蔽してしまうことによりプラズマの遮蔽が過剰となることを抑制することができるようになる。そのため、プラズマ処理にあたってのプラズマの密度の均一性をより適切に向上させることが可能となる。
【0015】
本発明の一態様は、前記スロットアンテナと前記遮蔽部材とを冷却する冷却機構を有することを要旨とする。
本発明の一態様では、遮蔽部材が冷却機構によって冷却されるため、プラズマからの熱によって遮蔽部材の温度が高まることを抑えることが可能である。そのため、遮蔽部材を構成する材料や遮蔽部材の構造に対してその選択範囲を広げることが可能となる。そして、遮蔽部材が冷却されることにより、遮蔽部材に接触したプラズマの活性種が失活することを抑制できるようになる。また、スロットアンテナと遮蔽部材とが同一の冷却機構によって冷却されるため、これらスロットアンテナと遮蔽部材とが互いに異なる冷却機構で冷却される場合と比べて、表面波プラズマ処理装置を構成する部材の点数を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における表面波プラズマ処理装置を具体化した第1実施形態について、その全体構成を示す断面図。
【図2】同実施形態の表面波プラズマ処理装置について、(a)は、ステージにおける載置面の法線方向から見たスロットアンテナの平面構造を示す平面図、(b)は、ステージにおける載置面の法線方向から見た遮蔽部材の平面構造を示す平面図。
【図3】同実施形態の表面波プラズマ処理装置について、遮蔽部材の平面構造を示す平面図であって、該遮蔽部材の表面に対してステージにおける載置面の法線方向にスロットアンテナを投影した図。
【図4】基板の表面におけるレジスト膜のアッシング量と基板上の位置との関係を示したグラフであって、互いに異なる三種類の遮蔽部材を用いて得られた各アッシング量を三種類の線種で示したグラフ。
【図5】本発明における表面波プラズマ処理装置を具体化した第2実施形態について、(a)は、ステージにおける載置面の法線方向から見たスロットアンテナの平面構造を示す平面図、(b)は、ステージにおける載置面の法線方向から見た遮蔽部材の平面構造を示す平面図。
【図6】第2実施形態の表面波プラズマ処理装置の変形例について、(a)は、ステージにおける載置面の法線方向から見たスロットアンテナの平面構造を示す平面図、(b)は、ステージにおける載置面の法線方向から見た遮蔽部材の平面構造を示す平面図。
【図7】第2実施形態の表面波プラズマ処理装置の変形例について、(a)は、ステージにおける載置面の法線方向から見たスロットアンテナの平面構造を示す平面図、(b)は、ステージにおける載置面の法線方向から見た遮蔽部材の平面構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について図1〜図4を参照して説明する。なお、第1実施形態では、表面波プラズマ処理装置が行う処理として基板に対するアッシング処理を例示する。まず、第1実施形態の表面波プラズマ処理装置の全体構成について説明する。
【0018】
図1に示されるように、表面波プラズマ処理装置を構成するチャンバ本体10の底部には、チャンバ本体10内を所定の圧力まで排気するための排気口11が形成されている。また、チャンバ本体10内の下部には、処理対象である基板Sが載置されるステージ12が収容されている。ステージ12の外周部には、基板Sが載置される載置部分をステージ12の上面にて区画するステージガイド13が取り付けられている。このステージ12の内部には、ステージ12の上面である載置面上で基板Sを上昇及び下降させるリフトピン14と、載置面に載置された基板Sを所定の温度に加熱する抵抗加熱ヒーターとが内蔵されている。
【0019】
チャンバ本体10の上部には、チャンバ本体10内に反応性ガスを導入するガス導入路15が形成され、さらに、基板Sと互いに向い合う部位には、開口10aが形成されている。また、チャンバ本体10が有する開口10aには、該開口10aを塞ぐ石英製の透過窓であるマイクロ波透過窓16が嵌め込まれ、該マイクロ波透過窓16の上面には、左右方向に延びる矩形管状の導波管20が連結されている。導波管20における下壁のうちマイクロ波透過窓16と向かい合う部位には、左右方向に延びる矩形状の開口20aが形成され、該開口20aには、該開口20aを塞ぐ金属製のスロットアンテナ21が嵌め込まれている。
【0020】
このような構成において、ガス導入路15から反応性ガスが導入されてマイクロ波発振器22から導波管20内にマイクロ波が出力されると、該マイクロ波は、スロットアンテナ21を介してマイクロ波透過窓16側に放射され、その後、マイクロ波透過窓16を透過してチャンバ本体10内に伝播する。そして、マイクロ波透過窓16を透過したマイクロ波によって、反応性ガスからなる表面波プラズマがマイクロ波透過窓16の直下に生成される。なお、反応性ガスとしては水素もしくは酸素を使用することができる。
【0021】
チャンバ本体10の上壁における外側の角部には、冷却ブロック40が連結されている。冷却ブロック40は、チャンバ本体10の上壁や導波管20の下壁等を介してスロットアンテナ21を冷却するとともに、チャンバ本体10の上壁や連結部材31等を介して遮蔽部材30を冷却する。
【0022】
次に、スロットアンテナ21及び遮蔽部材30の詳細な構成について、図2及び図3を参照して説明する。なお、図2(a),(b)は、スロットアンテナ21及び遮蔽部材30をそれぞれ基板Sが載置されるステージ12の載置面に対する法線方向から見た平面図であり、(b)の遮蔽部材30については、スロットアンテナ21の直下に位置する部分のみが図示されている。
【0023】
図2(a)に示されるように、矩形板状をなす金属製のスロットアンテナ21は、矩形孔状をなす7つの開口23a〜23gと、該開口23a〜23g以外の部分であるアンテナ部24とを有している。
【0024】
開口23a〜23gからなる開口部分23のうち2つの開口23a,23bは、上記進行方向に延びる矩形孔であり、同進行方向に並んでいる。また同様に、2つの開口23c,23dは、進行方向に延びる矩形孔であり、同進行方向に並んでいる。これら2つの開口23a,23bと2つの開口23c,23dとは、導波管20内を進行するマイクロ波の振動方向にて互いに向い合うように配置されている。開口23eは、振動方向に延びる矩形孔であり、互いに向い合う開口23aと開口23cとの間の部分から進行方向にそれる位置に配置されている。また同様に、開口23fは、振動方向に延びる矩形孔であり、互いに向かい合う開口23bと開口23dとの間の部分から進行方向とは反対方向にそれる位置に配置されている。また同様に、開口23gは、振動方向に延びる矩形孔であり、進行方向において2つの開口23e,23fとの間に配置されている。
【0025】
図2(b)に示されるように、遮蔽部材30の基材は、アルミニウム等の金属板に多数の貫通孔が形成されたパンチングメタルであり、該基材の一部で貫通孔が塞がれている。このうち、貫通孔の塞がれた部分が先に説明した遮蔽部32であり、遮蔽部32以外の部分が先に説明した透過部33である。遮蔽部32は、同心環状に形成された第1の遮蔽部32a、第2の遮蔽部32b、及び第3の遮蔽部32cから構成されている。第1の遮蔽部32aは、進行方向に延びる矩形環状に形成され、振動方向に延びる帯部分の中央部に、他の部位よりも幅が広い幅広部32e,32fを有している。また、第2の遮蔽部32bは、第1の遮蔽部32aよりも小さい矩形環状に形成され、第1の遮蔽部32aの内側に配置されている。さらに、第3の遮蔽部32cは、第2の遮蔽部32bよりも小さい矩形板状に形成され、第2の遮蔽部32bの内側に配置されている。
【0026】
次に、これらスロットアンテナ21の開口23a〜23gと遮蔽部材30の遮蔽部32a〜32cとの相対的な位置関係について説明する。図3は、遮蔽部材30に対して載置面の法線方向に沿ってスロットアンテナ21を投影した図であり、開口23a〜23gと遮蔽部32とが重なる部分、アンテナ部24と透過部33とが重なる部分、アンテナ部24と遮蔽部32とが重なる部分、この順に濃いドットが付されている。
【0027】
図3に示されるように、第1の遮蔽部32aのうち進行方向に延びる2つの帯部分の一方は、2つの開口23a,23bと重なり、他方は、2つの開口23c,23dと重なっている。また、第1の遮蔽部32aの幅広部32eは、該幅広部32eの縁と開口23eの縁とが一致するように開口23eと重なり、幅広部32fは、該幅広部32fの縁と開口23fとが一致するように開口23fと重なっている。すなわち、進行方向に延びる4つの開口23a,23b,23c,23dの各々は、その一部が第1の遮蔽部32aと重なり、振動方向に延びる2つの開口23e,23fの各々は、その全体が遮蔽部32aと重なっている。
【0028】
第2の遮蔽部32bのうち進行方向に延びる2つの帯部分の一方は、開口23gの上端部と重なり、他方は、開口23gの下端部と重なっている。また、第3の遮蔽部32cは、開口23gの中央部分と重なっている。すなわち、スロットアンテナ21の略中央に形成された開口23gは、その一部が第2の遮蔽部32b及び第3の遮蔽部32cと重なっている。
【0029】
このように、ステージ12における載置面の法線方向から見て、各遮蔽部32a〜32cの各々は、その一部が開口23a〜23gと重なり、それ以外の部分がアンテナ部24と重なっている。ここで、載置面の法線方向から見て、アンテナ部24の面積をS1とし、アンテナ部24と各遮蔽部32a〜32cとの重なる部分の面積をS2とする。すなわち、面積S2は、図3において最も薄いドットが付された部分の面積の合計である。また、載置面の法線方向から見て、スロットアンテナにおける開口23a〜23gの合計の面積をS3とし、開口23a〜23gと各遮蔽部32a〜32cとの重なる部分の面積をS4とする。すなわち、面積S4は、図3において最も濃いドットが付された部分の面積の合計である。そして、スロットアンテナ21の開口23a〜23gと遮蔽部材30の遮蔽部32a〜32cとは、下記式1で示される遮蔽条件が満たされるように、相対的に配置されている。
(遮蔽条件) S2/S1<S4/S3 …(式1)
次に、このように構成される表面波プラズマ処理装置の作用について説明する。
【0030】
上述のように、表面波プラズマ処理装置では、スロットアンテナ21から放射されたマイクロ波は、マイクロ波透過窓16を透過してマイクロ波透過窓16の直下で反応ガスから表面波プラズマを生成する。このとき、マイクロ波透過窓16上でのマイクロ波の伝播の態様がスロットアンテナ21の形状の影響を受けるために、マイクロ波透過窓16の直下で生成されるプラズマの密度もその影響を受ける。特に、スロットアンテナ21の開口部分23の直下においてプラズマ密度が高くなることが、本発明者による実験によって見出された。
【0031】
そこで、第1実施形態では、ステージ12とマイクロ波透過窓16との間に遮蔽部材30が配置され、該遮蔽部材30の遮蔽部32によってプラズマの一部が遮蔽されることにより、基板S上におけるプラズマ密度の分布が変えられている。この際、上記遮蔽条件が満たされるように遮蔽部32の形状や配置が設定されている。すなわち、アンテナ部24の面積に対するその直下における遮蔽部32の面積の割合(S2/S1)よりも、開口部分23の面積に対するその直下における遮蔽部32の面積の割合(S4/S3)の方が大きくなる。したがって、アンテナ部24の直下におけるプラズマが基板Sに対して遮蔽される割合よりも、開口部分23の直下におけるプラズマが基板Sに対して遮蔽される割合の方が大きくなる。この際、上述のように、開口部分23の直下ではプラズマ密度が高くなる傾向があるため、このように開口部分23の直下においてプラズマが多く遮蔽されることによって、基板Sの表面が曝されるプラズマの密度の均一性が高められることとなる。
【0032】
次に、上述した表面波プラズマ処理装置の作用を基板Sに形成されたレジスト膜におけるアッシング量の一例を用いてより詳細に説明する。なお、図4は、互いに形状が異なる3種類の遮蔽部材30を用いて得られた水素プラズマによるアッシング量と基板S上の位置との関係を遮蔽部材30ごとに示すグラフである。図4にて、曲線L1は、遮蔽部32の全てが省略されて遮蔽部材30の全てが透過部に変更された場合のアッシング量を示す。また、曲線L2は、先の図2(b)に示された遮蔽部32bの内側の全てが遮蔽部に変更されて遮蔽部32aが省略された場合のアッシング量を示す。そして、曲線L3は、図2(b)に示された態様にて遮蔽部32が設けられた場合のアッシング量を示す。
【0033】
図4中の曲線L1に示されるように、遮蔽部材30の全てが透過部33に変更された場合には、基板Sの中央部におけるアッシング量が他の部分よりも大きく、アッシング量の面内均一性が十分に得られがたい。これは、スロットアンテナ21において開口23a〜23gに囲まれる部分と基板Sの中央部とが互いに向かい合うため、基板Sの中央部に達するプラズマの密度が他の部分よりも高くなるためである。
【0034】
一方、図4中の曲線L2に示されるように、第2の遮蔽部32bより内側の部分が全て遮蔽部に変更された場合には、曲線L1に比べて、基板Sの面内におけるアッシング量の均一性が向上している。特に、曲線L1と比較して、曲線L2は、スロットアンテナ21の中央部と互いに向い合う基板Sの中央部において低いアッシング量を示す。
【0035】
また、図4中の曲線L3に示されるように、図2(b)に示された態様にて遮蔽部32が配置される場合には、曲線L2の場合よりもさらに基板Sの面内におけるアッシング量の均一性が向上している。すなわち、曲線L1よりも曲線L2の方が、プラズマ密度の均一性が高められ、また曲線L2よりも曲線L3の方が、さらにプラズマ密度の均一性が高められている。なお、曲線L2が得られる構成と曲線L3が得られる構成とを比較すると、双方とも上記遮蔽条件を満たしているものの、曲線L3が得られる構成の方が、S2/S1とS4/S3との差が大きい。すなわち、上記遮蔽条件が満たされる場合、S2/S1に対してS4/S3がより大きい方が、よりプラズマ密度の均一性を高めることができる。これは、S2/S1に対してS4/S3がより大きい方が、アンテナ部24の直下よりも開口部分23の直下において、遮蔽部32が割合としてより多くのプラズマを遮蔽することとなるためである。
【0036】
以上説明したように、第1実施形態の表面波プラズマ処理装置によれば、以下に列記する効果が得られるようになる。
(1)ステージ12とマイクロ波透過窓16との間に、遮蔽部32と透過部33とを有する遮蔽部材30が配置され、該遮蔽部材30において上記遮蔽条件が満たされる。これにより、アンテナ部24の直下よりも開口部分23の直下の方で、遮蔽部32による遮蔽の割合が大きくなるため、基板Sの表面が曝されるプラズマの密度の均一性を高められる。また、スロットアンテナ21の形状を変更することなくプラズマ密度を変えることが可能であるから、表面波プラズマ処理装置としての汎用性も高いものとなる。
【0037】
(2)遮蔽部材30が冷却ブロック40によって冷却されるため、プラズマからの熱によって遮蔽部材30の温度が高まることを抑えることが可能である。そのため、遮蔽部材30を構成する材料や遮蔽部材30の構造に対してその選択範囲を広げることが可能である。そして、遮蔽部材30を冷却することにより、遮蔽部材30に接触したプラズマの活性種が失活することを抑制できるようになる。
【0038】
(3)スロットアンテナ21と遮蔽部材30とが同一の冷却機構である冷却ブロック40によって冷却されるため、これらスロットアンテナ21と遮蔽部材30とが互いに異なる冷却機構で冷却される場合と比べて、表面波プラズマ処理装置を構成する部材の点数を抑えることが可能である。
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態について図5〜図7を参照して説明する。なお、第2実施形態の表面波プラズマ処理装置も、その基本的な構成は第1実施形態と同等である。ただし、第2実施形態では、スロットアンテナ及び遮蔽部材の形状が第1実施形態と異なっている。したがって、以下ではこの点を中心に説明する。なお、図5〜図7は、スロットアンテナ及び遮蔽部材をそれぞれステージ12における載置面の法線方向から見た平面図であり、遮蔽部材については、スロットアンテナの直下に位置する部分のみが図示されている。
【0039】
図5(a)に示されるように、金属板を基材とするスロットアンテナ50は、7つの開口51a〜51gと、開口51a〜51g以外の部分であるアンテナ部52とを有している。開口51a〜51gはそれぞれがマイクロ波の振動方向に延びる矩形状に形成され、マイクロ波の進行方向に並んでいる。これらの開口51a〜51gのうち、スロットアンテナ50の進行方向の中央に配置された開口51dの面積が最も大きく、進行方向の先端に配置された開口51aと進行方向の基端に配置された開口51gとは、この順に面積が大きい。また、開口51aと開口51dとの間に配置された2つの開口51b,51cと、開口51dと開口51gとの間に配置された2つの開口51e,51fとは、互いに等しい大きさに形成されており、開口51a〜51gのうちでは面積が最も小さい。
【0040】
図5(b)に示されるように、第2実施形態の遮蔽部材60における基材であるアルミニウム等の金属板には、振動方向に延びる矩形孔状の複数の開口が進行方向に並び、これら複数の開口によって透過部62が構成されている。また、遮蔽部材60のうち、透過部62の形成されていない部分が遮蔽部分であり、進行方向に隣接する二つの開口の間の部分により一つの遮蔽部が区画され、遮蔽部材60には、合計で7つの遮蔽部61a〜61gが区画されている。
【0041】
遮蔽部61a〜61gにて進行方向で対向する両縁は、ステージ12の載置面の法線方向から見て、開口51a〜51gにて進行方向で対向する両縁と一致している。また、遮蔽部材60の開口にて振動方向で対向する両縁は、ステージ12の載置面の法線方向から見て、開口51a〜51gにて振動方向で対向する両縁と同一の直線上にある。すなわち、遮蔽部61aにおける進行方向の幅と、開口51aにおける進行方向の幅とは、互いに等しい幅W1である。また、遮蔽部61aにおける振動方向の幅と、開口51aにおける振動方向の幅とは、互いに等しい幅W2である。そして、遮蔽部61bと開口51b、遮蔽部61cと開口51c、遮蔽部61dと開口51d、遮蔽部61eと開口51e、遮蔽部61fと開口51f、遮蔽部61gと開口51gのそれぞれについても、同様にステージ12の載置面の法線方向から見て互いに一致するかたちに形成されている。
【0042】
ここで、このように構成される第2実施形態の表面波プラズマ処理装置の作用について説明する。
上述のような構成により、スロットアンテナ50の開口51a〜51gの全てについて、その直下部分全域に遮蔽部材60の遮蔽部61a〜61gが存在することとなる。特に、導波管20におけるマイクロ波の進行方向において、遮蔽部61a〜61gが開口51a〜51gの縁と互いに重なる縁を有しているため、遮蔽部61a〜61gは、スロットアンテナ50の開口51a〜51gの直下に位置する一方で、アンテナ部52の直下に位置する部分がほぼない。
【0043】
したがって、プラズマ密度が高くなるスロットアンテナ50の開口51a〜51gの直下において、的確にプラズマを遮蔽することができる。また、スロットアンテナ50のアンテナ部52の直下においてプラズマを遮蔽してしまうことによってプラズマの遮蔽が過剰となることを抑制することができる。そのため、基板Sの表面が曝されるプラズマの密度の均一性を適切に向上させることが可能となる。
【0044】
なお、第2実施形態において、遮蔽部材の形状は以下のように変更してもよい。
例えば、図6(b)に示されるように、遮蔽部材70では、遮蔽部71a〜71gにおける進行方向の幅が、各遮蔽部71a〜71gの直上に位置するスロットアンテナ50の開口51a〜51gの各々における進行方向の幅よりも大きく形成されている。すなわち、ステージ12の載置面の法線方向から見て、遮蔽部71a〜71gは、スロットアンテナ50の開口51a〜51gの各々の全体と重なるように、各開口51a〜51gよりも大きく形成されている。
【0045】
このような構成によっても、スロットアンテナ50の開口51a〜51gの全てについて、その直下部分全域に遮蔽部材70の遮蔽部71a〜71gが存在することとなる。したがって、基板Sの表面が曝されるプラズマの密度の均一性を向上させることが可能となる。
【0046】
なお、上記遮蔽部材70は、さらに以下のように変更して実施することも可能である。すなわち、遮蔽部材70には、ステージ12の載置面の法線方向から見て、スロットアンテナ50の開口51a〜51gの全てに対し、その各々の全体と重なる遮蔽部71a〜71gが形成されている。これに限られず、遮蔽部材70では、開口51a〜51gの少なくとも一つに対して、該開口の全体と重なる遮蔽部が形成される構成であってもよい。
【0047】
例えば、最も面積が大きい開口51dの全体と重なる遮蔽部71dのみが遮蔽部材70に形成される構成であってもよい。このような構成によれば、開口51a〜51gの中で最も面積が大きい開口51d、すなわちプラズマ密度の増大に与える影響が最も大きい開口51dの直下部分全域に遮蔽部71dが存在することとなる。したがって、特にプラズマ密度が高くなる部位においてプラズマが遮蔽されることとなるため、基板Sの表面に曝されるプラズマの密度の均一性を、より簡単な構成で効果的に向上させることが可能となる。
【0048】
また、例えば、図7(b)に示されるように、遮蔽部材80は、3つの遮蔽部81a〜81cを有しており、ステージ12の載置面の法線方向から見て、遮蔽部81aは開口51aの一部と、遮蔽部81bは開口51dの一部と、遮蔽部81cは開口51gの一部と重なるように配置されている。ここで、各遮蔽部81a〜81cと開口51a,51d,51gとの重なる部分の面積は、遮蔽部81bと開口51dが最も大きく、次いで、遮蔽部81aと開口51a、遮蔽部81cと開口51gの順に大きい。また、開口51b,51c,51e,51fに対しては、これらの開口と重なる遮蔽部は設けられていない。すなわち、開口51a〜51gの面積が大きくなるほど、その開口における遮蔽部と重なる部分の面積が大きくなっている。
【0049】
このような構成によれば、開口51a〜51gに関し、プラズマ密度の増大に与える影響が大きくなるほど、その直下に遮蔽部81a〜81cが存在する部分の面積が大きくなることとなる。したがって、プラズマ密度が高くなる部位であるほどプラズマが多く遮蔽されることとなるため、基板Sの表面が曝されるプラズマの密度の均一性を向上させることが可能となる。このことは、上述の第2実施形態においても共通している。
【0050】
なお、図5〜図7から明らかなように、第2実施形態及びその変形例においても、遮蔽部の面積については、第1実施形態にて説明された遮蔽条件が満たされている。
以上説明したように、本実施形態の表面波プラズマ処理装置によれば、第1実施形態の(1)〜(3)の効果に加え、以下に列記する効果が得られるようになる。
【0051】
(4)面積が互いに異なる開口を含む複数の開口51a〜51gを有するスロットアンテナ50に対し、ステージ12の載置面の法線方向から見て、開口51a〜51gの面積が大きくなるほど、該開口における遮蔽部材60の遮蔽部61a〜61gと重なる部分の面積が大きくなる。これにより、プラズマ密度が高くなる部位であるほどプラズマが多く遮蔽されるため、基板Sの表面が曝されるプラズマの密度の均一性をより適切に向上させることができる。
【0052】
(5)遮蔽部材60に、ステージ12の載置面の法線方向から見て、スロットアンテナ50の複数の開口51a〜51gのうち、最も面積が大きい開口51dの全体と重なる遮蔽部61dが設けられる。これにより、特にプラズマ密度が高くなる部位においてプラズマが遮蔽されるため、基板Sの表面が曝されるプラズマの密度の均一性をより適切に向上させることができる。
【0053】
(6)さらに、遮蔽部材60に、ステージ12の載置面の法線方向から見て、スロットアンテナ50の開口51a〜51gの各々の全体と重なる遮蔽部61a〜61gが設けられる。これにより、プラズマ密度が高くなるスロットアンテナ50の開口51a〜51gの直下において、的確にプラズマを遮蔽することができるようになる。そのため、基板Sの表面が曝されるプラズマの密度の均一性をより適切に向上させることが可能となる。
【0054】
(7)特に、遮蔽部材60の遮蔽部61a〜61gは、ステージ12の載置面の法線方向から見て、導波管20におけるマイクロ波の進行方向では、スロットアンテナ50の開口51a〜51gの縁と互いに重なる縁を有する。これにより、プラズマ密度が高くなるスロットアンテナ50の開口51a〜51gの直下において、的確にプラズマを遮蔽することができる。また同時に、スロットアンテナ50のアンテナ部52の直下においてプラズマを遮蔽してしまうことによってプラズマの遮蔽が過剰となることを抑制することができるようになる。そのため、基板Sの表面が曝されるプラズマの密度の均一性を適切に向上させることが可能となる。
【0055】
なお、上記の各実施形態は、例えば以下のような形態にて実施することもできる。
・第2実施形態及びその変形例では、開口がマイクロ波の進行方向に並んで形成されているスロットアンテナに対する遮蔽部材の形状について説明した。しかし、第2実施形態及びその変形例で述べた遮蔽部材の形状における特徴を、第1実施形態のように開口がマイクロ波の進行方向及び振動方向の2方向に並んで形成されているスロットアンテナに対する遮蔽部材に適用してもよい。
【0056】
・上記各実施形態では、遮蔽部材を金属製としたが、セラミック等の非導電性の材料から形成するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、複数の開口を有するスロットアンテナを備える表面波プラズマ処理装置に本発明を適用したが、単一の開口を有するスロットアンテナを備える場合であっても、本発明を適用することができる。また、スロットアンテナの開口の形状や配置も任意である。
【0057】
・上記各実施形態では、反応性ガスとして水素もしくは酸素を使用することとしたが、反応性ガスの種類はこれに限られない。
・上記各実施形態では、アッシングを行う表面波プラズマ処理装置に本発明を適用したが、表面波プラズマを利用してドライエッチングや表面改質を行う装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
S…基板、10…チャンバ本体、12…ステージ、16…マイクロ波透過窓、20…導波管、21,50…スロットアンテナ、23a〜23g,51a〜51g…開口、24,52…アンテナ部、30,60,70,80…遮蔽部材、32,32a〜32c,61a〜61g,71a〜71g,81a〜81c…遮蔽部、33,62…透過部、40…冷却ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される載置面を有した基台が収容される真空槽と、
前記真空槽に設けられた誘電窓上に配設される導波管とを備え、
前記導波管には、前記誘電窓と互いに向い合う部位にマイクロ波を放射するスロットアンテナが設けられ、該放射されたマイクロ波が前記誘電窓を介して前記真空槽内に伝播する表面波プラズマ処理装置であって、
前記基台と前記誘電窓との間に、遮蔽部と透過部とを有する遮蔽部材を備え、
前記載置面の法線方向から見て、
前記スロットアンテナのアンテナ部の面積をS1、
前記アンテナ部と前記遮蔽部との重なる部分の面積をS2、
前記スロットアンテナにおける1以上の開口からなる開口部の面積をS3、
前記開口部と前記遮蔽部との重なる部分の面積をS4とすると、
S2/S1<S4/S3が満たされる
ことを特徴とする表面波プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記スロットアンテナの開口部は、前記載置面の法線方向から見て、面積が互いに異なる開口を含む複数の開口を有し、
前記開口の面積が大きくなるほど、前記載置面の法線方向から見て、該開口における前記遮蔽部と重なる部分の面積が大きくなる
請求項1に記載の表面波プラズマ処理装置。
【請求項3】
前記スロットアンテナの開口部は、前記載置面の法線方向から見て、面積が互いに異なる開口を含む複数の開口を有し、
前記遮蔽部材の遮蔽部は、前記載置面の法線方向から見て、前記複数の開口のうち、最も面積が大きい開口の全体と重なる
請求項1または2に記載の表面波プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材の遮蔽部は、前記載置面の法線方向から見て、前記スロットアンテナの開口部の全体と重なる
請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面波プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材の遮蔽部は、前記載置面の法線方向から見て、前記導波管におけるマイクロ波の進行方向では、前記スロットアンテナの開口部の縁と互いに重なる縁を有する
請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面波プラズマ処理装置。
【請求項6】
前記スロットアンテナと前記遮蔽部材とを冷却する冷却機構を有する
請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面波プラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−105949(P2013−105949A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249817(P2011−249817)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】