説明

表面被覆アルミニウム顔料の製造方法

【課題】輝度に優れ、耐水性・耐薬品性に優れ、高温・高湿下においても変色・退色が少なく、長期の屋外使用にも耐え得るアルミニウム顔料、および該顔料を配合した塗料またはインクを提供すること。
【解決手段】アルミニウムを主体とする金属からなるアルミニウム顔料を、下記一般式1で示されるアルコキシシラン化合物と、活性水素を持たない有機溶剤と、脱アルコール触媒とを必須成分とする処理溶液中で処理することを特徴とする表面被覆アルミニウム顔料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリック調塗料やインクに使用されるアルミニウムを主体とする金属からなる表面被覆アルミニウム顔料の製造方法、表面被覆されたアルミニウム顔料、該顔料を配合したメタリック調塗料またはインクに関する。より詳しくは、輝度に優れ、耐水性・耐薬品性に優れ、高温・高湿下においても変色・退色が少なく、長期の屋外使用にも耐え得る表面被覆アルミニウム顔料の製造方法、表面被覆されたアルミニウム顔料、該顔料を配合した塗料またはインクに関する。
【背景技術】
【0002】
メタリック塗料用の顔料として、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、マグネシウム、クロム、銀、金などの金属を加工した粉体・蒸着箔、およびガラスフレークなどの表面にこれらの金属層を蒸着・メッキなどにより付与した粉体などが市販されており、特に、アルミニウムを主体とする金属からなるフレーク状アルミニウム顔料は、生産性が良く、また、優れた金属調の意匠が得られることからメタリック調塗料に広く使用され、家電、車両、スポーツ用品、玩具などの多くの産業分野において広く利用されている。
【0003】
ところで、アルミニウムは大気中での安定性が低く、水と反応して水酸化アルミニウムを生成し、金属光沢を失う。この水とアルミニウムとの反応は水素ガスの発生を伴い、水素ガスの発生は酸またはアルカリ存在下で促進される。従って、アルミニウム顔料をメタリック塗料の顔料として使用するためには、その表面を不活性にするための表面処理が必要である。
【0004】
アルミニウム顔料における最も一般的な表面処理方法としては、その製造工程において、表面活性の低下および凝集防止を目的として、アルミニウム微粉末にステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸、脂肪族アミンなどの分散剤を加え、これを乾式法または湿式法などの公知の方法により展伸し、フレーク状とするものであり、メタリック調塗料用途に広く使用されている。
【0005】
しかしながら、このような分散剤により処理されたアルミニウム顔料を含むメタリック調塗料は、分散剤の表面吸着を利用してアルミニウム表面を保護するものであるため、アルミニウム顔料の不活性化が十分とはいえず、塗装後に塗装面にクリヤー塗装などを保護コートとして上塗りする必要がある。
【0006】
また、このような分散剤を吸着させたアルミニウム顔料を水系塗料に使用した場合、貯蔵時にアルミニウムが水と反応し、金属光沢の低下、変色および水素ガスの発生が起こるといった欠点がある。これらの欠点を解決するため、アルミニウムの表面をさらに不活性化するための技術が提案されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、アルミニウム顔料を、リン酸系化合物で処理することにより、アルミニウム顔料を水系塗料中で安定化して存在させ得ることが開示されている。
【0007】
しかしながら、当該方法によってもアルミニウムの不活性化は不十分であり、このようなアルミニウム顔料を水系塗料に使用した場合、保管中にアルミニウム顔料が変色し、金属光沢感が低下するなどの問題があった。さらに特許文献3および特許文献4には、アルミニウム顔料表面をクロムイオンにより処理し、表面を不動態化して表面を不活性化させることが開示されているが、この方法は、アルミニウム顔料がクロム酸により変色し、さらに、金属光沢感が低下するなどの問題があった。
【0008】
金属アルコキシドを使用したアルミニウム顔料の表面処理について、特許文献5では、アルミニウム顔料の着色を目的としてチタンおよびジルコニアなどの金属アルコキシドを、アルコールおよび水中で予め加水分解し生成した金属酸化物微粒子を原料アルミニウム粒子表面に吸着被覆し、着色する方法が記載されている。
【0009】
また、特許文献6には、アルミニウム顔料をシリコンアルコキシド、水、親水性有機溶剤およびリン酸化合物の混合液に作用させ、生成したシリカ微粒子を原料アルミニウム粒子表面に吸着被覆し、表面活性を低下させる方法が記載されている。
【0010】
これらの方法は、水の存在下にアルミニウムを表面処理する方法であるため、処理工程中に水とアルミニウムとの反応が進行し、金属光沢の低下および水素ガスの発生といった問題があり、また、アルミニウム顔料に付着した金属酸化物微粒子による光散乱により、アルミニウム顔料の金属光沢が一層低下するといった欠点を有する。
【0011】
これらの文献による方法で表面処理されたアルミニウム顔料は、本質的にはアルミニウム表面に金属酸化物微粒子が吸着したものであるため、アルミニウム顔料表面の不活性化が十分ではない。このため特許文献7、8、9に記載されているように、特許文献6に記載のシリコンアルコキシドを用いて処理したアルミニウム顔料粒子に、さらにポリシリケート、リン含有チタネートおよびシランカップリング剤などにより処理し、複合被覆する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭63−54475号公報
【特許文献2】特開平3−74472号公報
【特許文献3】特公平1−54386号公報
【特許文献4】特開平2−60972号公報
【特許文献5】特開平10−114874号公報
【特許文献6】特開2002−88274号公報
【特許文献7】特開2005−232316号公報
【特許文献8】特開2008−127416号公報
【特許文献9】特開2008−120901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の目的は上述した従来技術の問題点を解決し、輝度に優れ、耐水性・耐薬品性に優れ、高温・高湿下においても変色・退色が少なく、長期の屋外使用にも耐え得るアルミニウム顔料、および該顔料を配合した塗料またはインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は鋭意検討の結果、上述した課題は、アルミニウム表面をアルコキシシランを主たる成分とする緻密な連続被膜により被覆することにより解決されることを見出し本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明は、アルミニウムを主体とする金属からなるアルミニウム顔料を、下記一般式1で示されるアルコキシシランと、活性水素を持たない有機溶剤と、脱アルコール触媒とを必須成分とする処理溶液中で処理することを特徴とする表面被覆アルミニウム顔料の製造方法を提供する。該方法では、反応終了後、反応混合物を7〜30日間熟成させることが好ましい。

(式中Rは炭素数1〜4のアルキル基を、nは1〜20の数を表す。)
【0016】
上記本発明において、上記処理溶液は、さらに下記一般式2で示されるオルガノアルコキシシラン、または下記一般式3で示される金属アルコキシド、または両者を含むことができる。
【0017】
12a−Si−(OR33-a ・・・一般式2
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、グリシドキシ基、炭素数5または6のエポキシシクロアルキル基、(メタ)アクリル基、アミノ基、メルカプト基およびイソシアネート基から選ばれる官能基を有する1価の基を、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基およびフェニル基から選ばれる基を、R3は1価の炭素数1〜4の低級アルキル基を、aは0、1または2を表わす。)

(式中、MはTi、ZrまたはAlの原子を、R4 は炭素数1〜10のアルキル基を、bは0または1を、nは1〜20の数を表す。)
【0018】
また、本発明は、前記一般式1の化合物の縮合体、前記一般式1の化合物と前記一般式2の化合物との共縮合体、前記一般式1の化合物と前記一般式3の化合物との共縮合体、または前記一般式1の化合物と前記一般式2の化合物と前記一般式3の化合物との3元共縮合体で表面が被覆されていることを特徴とする表面被覆アルミニウム顔料を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記本発明の表面被覆アルミニウム顔料を含有することを特徴とする塗料またはインク、該塗料またはインクからなる連続被膜または不連続被膜が形成されていることを特徴とする塗装物または印刷物を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、輝度に優れ、耐水性・耐薬品性に優れ、高温・高湿下においても変色・退色が少なく、長期の屋外使用にも耐え得るアルミニウム顔料、および該顔料を配合した塗料またはインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の技術的構成は、主にアルコキシシランにより、アルミニウム顔料の表面に、アルコキシシランの縮合体、具体的には酸化ケイ素縮合体を主体とする縮合体による被膜を形成するものであるが、アルコキシシランを選択的にアルミニウム顔料表面で反応させ、顔料表面で被膜を形成させるために、原料アルミニウム顔料およびアルコキシシランを活性水素を持たない溶剤中で分散・反応させるものである。
【0022】
一般にアルコキシシランは、活性水素を持つ化合物と化学反応して変性する。活性水素を持たない溶液中ではアルコキシシランは安定に存在するため、アルコキシシランがアルミニウム表面に選択的に吸着し、アルミニウム表面のアルミニウム原子に直接結合した水酸基および吸着水を起点とし、穏やかな脱アルコール反応が進み、アルコキシシランがアルミニウム表面と反応し、かつ反応生成物が三次元架橋を繰り返し、該三次元架橋物が、アルミニウム顔料表面に緻密で均一な被膜を形成するものと考えられる。
【0023】
従って、上記被覆顔料は、アルミニウム顔料の本来の輝度の低下が少なく、かつ表面活性を低下させることが可能であると考えられる。前述の特許文献5および6に記載の水および親水溶剤中での表面処理方法は、先ずアルコキシシランを処理溶液中で急激に加水分解し、コロイド粒子とし、この微粒子をアルミニウム表面に吸着し表面被覆するというものであり、これが本発明との本質的な相違である。
【0024】
上記従来技術の微粒子による表面被覆処理では、アルミニウム顔料表面に緻密で均一な被覆層を形成することが困難であり、表面活性のさらなる低下のために特許文献7〜9に記載されているように、特許文献6に記載のシリコンアルコキシドを用いて処理したアルミニウム粒子をさらにポリシリケート、リン含有チタネートおよびシランカップリング剤などにより複合被覆することが提唱されていると思われる。
【0025】
また、前記コロイド粒子は一般に凝集し易いため、アルミニウム顔料の表面に吸着された際、光を散乱するため、アルミニウム顔料の活性を下げるために処理量を増やすと、アルミニウム顔料の輝度が低下するという問題もある。さらに、アルミニウム顔料が水系処理液中で水と反応し、光沢低下、水素ガス発生といった諸問題があった。
【0026】
以下に本発明で用いる原料について説明する。
[アルミニウム顔料]
本発明において、原料に用いられるアルミニウム顔料は、特に限定されるものではないが、アルミニウム微粉末を公知の方法で展伸し、フレーク状としたもの、および蒸着アルミニウム箔を粉砕しフレーク状にしたものなど、メタリック塗料用として市販されているものを使用できる。特に蒸着アルミニウム箔フレークは、表面が平滑で高輝度が得られる半面、厚さが0.1μm以下と非常に薄いため、公知の微粒子による被覆方法では、耐水性が不十分であり、例えば、40℃の温水浸漬によりアルミニウムが溶出し、退色することから、本発明の原料アルミニウム顔料として好適である。
【0027】
[一般式1の化合物]
本発明に使用される前記一般式1の化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランおよびこれらの縮合体(nが2以上)が挙げられる。本発明においてはこれらのアルコキシシランは、単独でも、2種類以上を混合しても使用することができる。また、一般式1においてアルキル基(R)の炭素数が5以上の化合物も公知であるが、炭素数が5以上の化合物は、アルミニウム顔料表面での縮合反応速度が遅く実用的ではない。
【0028】
[活性水素を持たない有機溶剤]
本発明にける表面被覆は、アルミニウム顔料ペーストを有機溶剤で希釈し、攪拌し、アルミニウム顔料を分散した状態で行うことが好ましい。希釈する溶剤として、水、アルコール類、1級アミン類、2級アミン類、チオール類、およびカルボン酸類のような活性水素を持つ有機溶剤を使用した場合、アルミニウム顔料の表面腐食や、被覆成分となる前記一般式1のアルコキシシラン、前記一般式2のオルガノアルコキシシラン、前記一般式3の金属アルコキシドと反応するため、脱アルコール縮合反応を阻害し、反応速度を著しく低下させるため不向きである。
【0029】
従って、本発明で使用する有機溶剤としては、活性水素を持たない有機溶剤を使用する必要がある。具体的には、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、有機酸エステル、エーテル、ケトンなどが例示され、使用することができるが、安全性およびアルコキシシランなどの溶解性から、有機酸エステル類が好ましく、具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどの酢酸エステル類が入手し易く好適である。さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどの水溶性エステル類は、反応混合物が、直ちに油性塗料やインクおよび水性塗料やインクの何れにも使用可能なため好適である。
【0030】
[脱アルコール触媒]
前記一般式1のアルコキシシランの脱アルコール縮合反応は、無触媒であっても進行するが、通常反応が遅く実用的ではない。本発明に使用される脱アルコール触媒は、前記アルコキシシランの脱アルコール縮合反応を促進するために添加するものである。脱アルコール触媒としては、アルキルチタン酸塩やオクチル酸錫などのカルボン酸の金属塩、ジメチルアミンアセテートなどのアミン塩、酢酸テトラアミンアンモニウムなどのカルボン酸第四級アンモニウム塩、テトラメチルペンタミンなどのアミン類、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系シランカップリング剤、p−トルエンスルホン酸などの酸類、アルミニウムエトキシドなどのアルミニウムアルコキシド、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどのアルミニウムキレート、チタンテトラプロポキシドのようなチタンアルコキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)のようなチタンキレート、ジルコニウムテトラプロポキシドのようなジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートのようなジルコニウムキレートなどの化合物が知られており、適宜使用すればよい。
【0031】
本発明においては、反応終了後に触媒自体がアルミニウム顔料の被覆層の構成成分となるという点から、アルミニウムエトキシドなどのアルミニウムアルコキシド、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどのアルミニウムキレート、チタンテトラプロポキシドのようなチタンアルコキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)のようなチタンキレート、ジルコニウムテトラプロポキシドのようなジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートのようなジルコニウムキレートなどの金属化合物が好ましい。
【0032】
[一般式2の化合物]
本発明において使用される前記一般式2のオルガノアルコキシシランは、アルミニウム表面で一般式1のアルコキシシランと共縮合し、被覆層の構成成分となるとともに、塗料として各種バインダーを配合した場合、含まれる有機官能基により、バインダーとの密着性を向上するために添加することができる。
【0033】
このため、一般式2の化合物は、使用するバインダーによって適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、具定例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどを例示できる。また、さらに目的に応じて2種以上を混合して使用することもできる。
【0034】
[一般式3の化合物]
本発明における一般式3の金属アルコキシドは、前記一般式1のアルコキシシラン(および前記一般式2の化合物)と共縮合し、得られる顔料の耐候性、耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水性などの耐環境性能向上を目的として添加する。上記金属アルコキシドの使用量によってはアルミニウム顔料の色相変化を伴う。従って、一般式3の金属アルコキシドは、アルミニウム顔料の被覆と同時に着色を目的としても使用することができる。さらに、一般式3の金属アルコキシドは活性が高く、一般式1のアルコキシシランの縮合触媒としても作用する。一般式3の金属アルコキシドの具体例としては、例えば、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリブチレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシドなどが例示される。
【0035】
次に上記原料を使用する本発明の製造方法を説明する。
[製造方法1]
本発明の製造方法1(請求項1)は、前記アルミニウムを主体とする金属からなるアルミニウム顔料を、前記一般式1の化合物と、前記活性水素を持たない有機溶剤と、前記脱アルコール触媒とを必須成分とする処理溶液中で処理することを特徴としている。
【0036】
原料アルミニウム顔料は、通常、ミネラルスピリット、キシレンなどの炭化水素系溶剤や、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤などにより、固形分10〜80質量%のペースト状とされており、該原料アルミニウム顔料と、前記一般式1の化合物と、前記活性水素を持たない有機溶剤と、前記脱アルコール触媒とを混合する。混合する方法は特に限定されず、例えば、処理溶液をまず作成しておき、この中に原料アルミニウム顔料を加えて攪拌混合して反応混合物として反応を行うことができる。
【0037】
反応混合物中における原料アルミニウム顔料の濃度は、通常1〜40質量%であることが好ましく、濃度が低過ぎると不経済であり、濃度が高過ぎると反応の均一性が低下する虞がある。前記一般式1の化合物の使用量は原料アルミニウム顔料の100質量部当たり、5〜50質量部が好ましい。アルコキシシランの使用量が少な過ぎると、原料アルミニウム顔料の被覆が不十分となる虞があり、一方、アルコキシシランの使用量が多過ぎると、不経済であるとともに、得られる製品の輝度が低下する虞がある。
【0038】
脱アルコール触媒の使用量は、前記一般式1の化合物の100質量部当たり、0.1〜5質量部であることが好ましい。上記脱アルコール触媒の使用量が少な過ぎると反応に長時間を要することから不経済であり、脱アルコール触媒の使用量が多過ぎても特に反応に有利であることはない。反応温度は40〜90℃で行うことが好ましく、反応温度が低過ぎると、反応に長時間を要することから不経済であり、一方、反応温度が高過ぎると被膜の均一性が損なわれる虞がある。
【0039】
本発明の反応は一般的に遅く、反応温度によっても異なるが、通常4〜8時間である。反応時間が短過ぎるとアルコキシドの縮合が不足し、生成する被膜の耐久性が不足する場合があり、一方、反応時間が長過ぎると不経済である。これらの反応は、大気雰囲気下または窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で常圧で行うことができる。なお、反応を完結させかつ緻密で均一な被膜とするために、上記反応終了後、任意の温度、好ましくは15〜30℃の温度で7〜30日間熟成することが好ましい。
【0040】
反応終了後、好ましくは熟成後は、反応混合物を濾別し、そのままのペーストの状態で保存し、塗料やインクの成分とすることが好ましいが、濾別後ペーストをメタノールなどの低級アルコールやアセトンなどの低沸点溶剤で洗浄後乾燥してもよい。
【0041】
[製造方法2]
本発明の製造方法2(請求項2)は、前記製造方法1における被覆材である前記一般式1の化合物に、前記一般式2の化合物を併用することが特徴であり、それ以外は前記製造方法1と同じである。一般式2の化合物を併用することにより、被覆層に有機官能基が導入され、アルミニウム顔料と有機系塗料のバインダーとの密着性が向上するという効果が得られる。製造方法2によれば、一般式1の化合物と一般式2の化合物との共縮合体で被覆された表面被覆アルミニウム顔料が得られる。
【0042】
前記一般式1の化合物と一般式2の化合物との合計使用量は、前記製造方法1における一般式1の化合物の使用量と同じである。一般式2の化合物の使用量は一般式1の化合物100質量部当たり5〜200質量部の範囲であり、一般式2の化合物の使用量が少な過ぎると前記効果が顕著ではなく、一方、一般式2の化合物の使用量が多過ぎると、被膜の強度が低下し、アルミニウム顔料の耐水性および耐薬品性が不十分となり、好ましくない。
【0043】
[製造方法3]
本発明の製造方法3(請求項3)は、前記製造方法1における被覆材である前記一般式1の化合物に前記一般式3の化合物を併用することが特徴であり、それ以外は前記製造方法1と同じである。一般式3の化合物を併用することにより、耐薬品性、特に耐酸性および耐アルカリ性の向上効果が得られる。製造方法3によれば、一般式1の化合物と一般式3の化合物との共縮合体で被覆された表面被覆アルミニウム顔料が得られる。
【0044】
前記一般式1の化合物と一般式3の化合物との合計使用量は、前記製造方法1における一般式1の化合物と同じである。一般式3の化合物の使用量は一般式1の化合物100質量部当たり1〜50質量部の範囲であり、一般式3の化合物の使用量が少な過ぎると前記効果が顕著ではなく、一方、一般式3の化合物の使用量が多過ぎると、被膜形成反応が不均一となり、好ましくはない。
【0045】
[製造方法4]
本発明の製造方法4(請求項4)は、前記製造方法1における被覆材である前記一般式1の化合物に前記一般式2の化合物と前記一般式3の化合物を併用することが特徴であり、それ以外は前記製造方法1と同じである。前記一般式2の化合物と一般式3の化合物を一般式1の化合物に併用することにより、アルミニウム顔料の有機系塗料のバインダーとの密着性向上および耐酸性および耐アルカリ性向上などの効果が得られる。製造方法4によれば、一般式1の化合物と一般式2の化合物と一般式3の化合物との3元共縮合体で被覆された表面被覆アルミニウム顔料が得られる。
【0046】
前記一般式1の化合物と前記一般式2の化合物と一般式3の化合物との合計使用量は、前記製造方法1における一般式1の化合物と同じである。一般式2の化合物の使用量は一般式1の化合物100質量部当たり5〜200質量部の範囲であり、一般式2の化合物の使用量が少な過ぎると前記効果が顕著ではなく、一方、一般式2の化合物の使用量が多過ぎると、被膜の強度が低下し、耐水性および耐薬品性が不十分となり、好ましくはない。また、一般式3の化合物の使用量は一般式1の化合物と一般式2の化合物との合計100質量部当たり1〜50質量部の範囲であり、一般式3の化合物の使用量が少な過ぎると前記効果が顕著ではなく、一方、一般式3の化合物の使用量が多過ぎると、被膜形成反応が不均一となり、好ましくはない。
【0047】
[本発明の表面被覆アルミニウム顔料]
本発明の表面被覆アルミニウム顔料は、前記一般式1の化合物の縮合体、前記一般式1の化合物と前記一般式2の化合物との共縮合体、前記一般式1の化合物と前記一般式3の化合物との共縮合体または前記一般式1の化合物と前記一般式2の化合物と前記一般式3の化合物との3元共縮合体で表面が被覆されていることを特徴とし、これらの被膜は単なるシリカ微粒子の集合体ではなく、緻密な前記化合物の透明な(共)縮合体であるので、得られるアルミニウム顔料の輝度が優れ、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性に優れ、高温・高湿下においても変色・退色が少なく、長期の屋外使用にも耐え得ることができ、金属光沢塗料またはインクの原料として有用である。特に水性塗料や水性インクにおいても上記特性を十分に保持することができる。
【0048】
[本発明の塗料およびインク]
本発明の塗料およびインクは、前記の表面被覆アルミニウム顔料を水性塗料、油性塗料或いは電子線・紫外線硬化型塗料のベヒクル、または水性インク、油性インク或いは電子線・紫外線硬化型インク(グラビア、オフセット、スクリーンなど)のワニスに分散させて得られる。本発明で使用する塗料ベヒクルやインクワニスは従来公知の塗料やインクにおいて使用されているベヒクルまたはワニスでよく特に限定されない。これらのベヒクルまたはワニスに添加する本発明のアルミニウム顔料の量は、目的とする意匠および金属感により決定されるため特に限定されないが、一般的には塗料またはインクの固形分100質量部に対して50〜500質量部であり、塗料またはインクにより形成された被膜またはインク膜に高度の金属光沢を与えることができる。
また、各種着色顔料および柄材などと併用することで被膜またはインク膜に高度の意匠および着色金属光沢を与えることができる。さらに本発明の塗料またはインクからなる被膜中の表面被覆アルミニウム顔料は、前記の如き特性を有していることから、従来のアルミニウム顔料を使用した場合に必須である保護層(クリヤー層)は必須ではないが、各種着色顔料および柄材などを添加したクリヤー層を上塗りし、被膜またはインキ膜に高度の意匠および着色金属光沢を与えることができる。
【実施例】
【0049】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0050】
実施例1
スターラーおよびコンデンサーを取り付けた500ml丸底フラスコに、アルミペースト1を100部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部およびテトラエトキシシラン7部を攪拌混合後、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート0.02部を加え、湯浴で85℃で5時間攪拌した。室温まで冷却後、ガラス瓶に移液し、密栓して20日間静置し、アルミニウム濃度35%の本発明の表面被覆アルミニウム顔料のペーストとした。該ペーストを一部取り、150℃で2時間乾燥させ、電子顕微鏡で観察したところ、アルミニウム顔料粒子の表面はテトラエトキシシランの透明な縮合体で被覆され均一平坦であった。
【0051】
実施例2〜18
下記表1に記載の各成分を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の表面被覆アルミニウム顔料を得た。
【0052】

【0053】

【0054】
比較例1
1Lのガラスビーカーにアルミペースト1を100部、プロピレングリコールモノメチルエーテル200部およびテトラエトキシシラン7部を攪拌混合後、25%アンモニア水15部を添加し室温で1時間攪拌後、0.5%オルトリン酸水溶液400部を加え、さらに湯浴で40℃で5時間攪拌し濾過した。濾過ケーキをプロピレングリコールモノメチルエーテルで洗い、表面被覆アルミニウム顔料濃度35%のペーストとした。ペーストを一部取り、150℃で2時間乾燥させ、顔料粒子を電子顕微鏡で観察したところ、アルミニウム顔料表面にシリカによる微細な粒状物の付着が見られた。粒状物の付着は均一ではなく、特にアルミニウムフレーク顔料のエッジ部分において、素地の露出が見られた。
【0055】
比較例2
1Lのガラスビーカーに、アルミペースト2の100部、プロピレングリコールモノメチルエーテル100部およびテトラエトキシシラン3部を攪拌混合後、25%アンモニア水15部を添加し室温で1時間攪拌後、0.5%オルトリン酸水溶液300部を加え、さらに湯浴で40℃で5時間攪拌し、表面被覆アルミニウムフレーク顔料を遠心分離により取り出した。このとき、アルミニウムフレーク顔料は白色化が進み、金属光沢が消失した。また、顔料粒子を電子顕微鏡で観察したところ、アルミニウムフレーク顔料の一部にシリカによる微細な粒状物が見られたものの、アルミニウムフレーク顔料の変形が顕著であった。これは処理中にアルミニウムの溶出が進行したものと思われる。本処理品は塗料用のアルミニウム顔料としては不向きであった。
【0056】
比較例3(未処理)
アルミペースト1をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈しアルミニウム顔料濃度を35%としたペースト。
【0057】
比較例4(未処理)
アルミペースト2をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈しアルミニウム顔料濃度を5%としたペースト。
【0058】
水性塗料(A)実施例1〜9
前記実施例1〜9の各表面被覆アルミニウム顔料ペースト(固形分35%)100部のそれぞれを、それぞれバーノックWE−304(固形分45%)39部、ジエチレングリコール100部、水100部およびバーノックDNW−5000の3.5部と混合して本発明の水性塗料(A)1〜9を得た。
【0059】
水性塗料(B)実施例10〜18
前記実施例10〜18の各表面被覆アルミニウム顔料ペースト(固形分5%)100部のそれぞれを、それぞれバーノックWE−304(固形分45%)5.6部、ジエチレングリコール100部、水100部およびバーノックDNW−5000の0.23部と混合して本発明の水性塗料(B)10〜18を得た。
【0060】
油性塗料(A)実施例1〜9
前記実施例1〜9の各表面被覆アルミニウム顔料ペースト(固形分35%)100部のそれぞれを、それぞれオレスターQ174(固形分50%)35部、酢酸エチル200部、酢酸ブチル100部およびタケネートD170Nの6部と混合して本発明の油性塗料(A)1〜9を得た。
【0061】
油性塗料(B)実施例10〜18
前記実施例10〜18の各表面被覆アルミニウム顔料ペースト(固形分5%)100部のそれぞれを、それぞれオレスターQ174(固形分50%)5部、酢酸エチル200部、酢酸ブチル100部およびタケネートD170Nの0.85部と混合して本発明の油性塗料(B)10〜18を得た。
【0062】
UV硬化型油性塗料(A)実施例1〜9
実施例1〜9の各表面被覆アルミニウム顔料ペースト(固形分35%)100部のそれぞれを、それぞれエポキシエステル80MFAの17.5部、酢酸エチル200部、酢酸ブチル100部およびイルガキュア184の0.53部と混合して本発明のUV硬化型油性塗料(A)1〜9を得た。
【0063】
UV硬化型油性塗料(B)実施例10〜18
前記実施例10〜18の各表面被覆アルミニウム顔料ペースト(固形分5%)100部のそれぞれを、それぞれエポキシエステル80MFAの2.5部、酢酸エチル200部、酢酸ブチル100部およびイルガキュア184の0.075部と混合して本発明のUV硬化型油性塗料(A)10〜18を得た。
【0064】
塗料比較例1
水性塗料(A)実施例1のアルミニウム顔料に代えて、比較例1のアルミニウム顔料を使用した以外は水性塗料(A)実施例1と同様にして比較例の水性塗料1を得た。
【0065】
塗料比較例2
油性塗料(A)実施例1のアルミニウム顔料に代えて、比較例1のアルミニウム顔料を使用した以外は油性塗料(A)実施例1と同様にして比較例の油性塗料2を得た。
【0066】
塗料比較例3
UV硬化型油性塗料(A)実施例1のアルミニウム顔料に代えて、比較例1のアルミニウム顔料を使用した以外はUV硬化型油性塗料(A)実施例1と同様にして比較例のUV硬化型油性塗料3を得た。
【0067】
塗料比較例4
水性塗料(A)実施例1のアルミニウム顔料に代えて、アルミペースト1をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで50%に希釈したアルミニウム顔料を使用した以外は水性塗料(A)実施例1と同様にして比較例の水性塗料4を得た。
【0068】
塗料比較例5
油性塗料(A)実施例1のアルミニウム顔料に代えて、アルミペースト1をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで50%に希釈したアルミニウム顔料を使用した以外は油性塗料(A)実施例1と同様にして比較例の油性塗料5を得た。
【0069】
塗料比較例6
UV硬化型油性塗料(A)実施例1のアルミニウム顔料に代えて、アルミペースト1をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで50%に希釈したアルミニウム顔料を使用した以外はUV硬化型油性塗料(A)実施例1と同様にして比較例のUV硬化型油性塗料6を得た。
【0070】
塗料比較例7
水性塗料(A)実施例1のアルミニウム顔料に代えて、アルミペースト2をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで50%に希釈したアルミニウム顔料を使用した以外は水性塗料(A)実施例1と同様にして比較例の水性塗料7を得た。
【0071】
塗料比較例8
油性塗料(A)実施例1のアルミニウム顔料に代えて、アルミペースト2をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで50%に希釈したアルミニウム顔料を使用した以外は油性塗料(A)実施例1と同様にして比較例の油性塗料8を得た。
【0072】
塗料比較例9
UV硬化型油性塗料(A)実施例1のアルミニウム顔料に代えて、アルミペースト2をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで50%に希釈したアルミニウム顔料を使用した以外はUV硬化型油性塗料(A)実施例1と同様にして比較例のUV硬化型油性塗料9を得た。
【0073】
以上の実施例および比較例で使用した原料および測定装置などの詳細は以下の通りである。
・アルミペースト1(展伸アルミニウムフレーク):東洋アルミニウム株式会社製、商品名アルミニウムペースト5660NS、アルミニウム含量70%、オレイン酸2%、炭化水素系溶剤28%
・アルミペースト2(蒸着アルミニウムフレーク):チバ・ジャパン株式会社(Ciba Specialty Chemicals)製、商品名 METASHEEN 71-0010、アルミニウム含量10%、酢酸エチル45%、酢酸イソプロピル45%
・テトラエトキシシラン:信越化学工業株式会社製、商品名KBE−04
・テトラn−プロポキシシラン:コルコート株式会社製、商品名N−プロピルシリケート
・テトラn−ブトキシシラン:コルコート株式会社製、商品名N−ブチルシリケート
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製、商品名KBM−403
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製、商品名KBM−503
・メチルシリケート:三菱化学株式会社製、商品名MS56:平均分子量1200
【0074】
・ジルコニウムテトラブトキシド:マツモトファインケミカル株式会社製、商品名オルガチックスTA25
・チタンテトラブトキド:マツモトファインケミカル株式会社製、商品名オルガチックスZA65
・アルミニウムトリsec−ブトキシド:川研ファインケミカル株式会社製、商品名ASBD
・アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート:川研ファインケミカル株式会社製、商品名ALCH
・ジルコニウムテトラアセチルアセトネート:マツモトファインケミカル株式会社製、商品名オルガチックスZC150
・その他溶剤など:関東化学株式会社 試薬
【0075】
・バーノックWE−304(主剤):大日本インキ化学工業株式会社製、固形分45%
・バーノックDNW−5000(硬化剤):大日本インキ化学工業株式会社製、固形分80%
・オレスターQ174(主剤):三井化学株式会社製、アクリルウレタン樹脂、固形分50%
・タケネートD170N(硬化剤):固形分100%
・エポキシエステル80MFA:共栄社化学株式会社製、紫外線硬化樹脂バインダー
・イルガキュア184(開始剤):チバガイギー株式会社製
・電子顕微鏡観察およびアルミフレーク表面元素X線分析:株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、商品名TM−1000および付属エネルギー分散型X線分析装置
【0076】
以上で得られた実施例および比較例で使用したアルミニウム顔料を、150℃で2時間乾燥させたものを、電子顕微鏡付属のエネルギー分散型X線分析装置を用いて、各顔料粒子の表面から深さ方向1μm程度までの元素組成(質量%)を定量したところ、下記表2の結果を得た。表2の結果からして、本発明の顔料は、酸化珪素縮合体の薄膜で被覆されていることが確認された。
【0077】

【0078】

【0079】

【0080】
[被膜試験]
以上の各実施例および各比較例の塗料を用いて市販スプレーガンで、厚さ1mm、10cm角の透明ガラス板に、乾燥時被膜厚みが5μmとなるように塗装し、80℃で2時間乾燥(水性・油性塗料)し、また、UV硬化型の場合は80W高圧水銀灯(中心波長350nm)で、1000mJ/cm2照射して硬化させた。得られた被膜の物性を下記表3に示す。
【0081】

【0082】

【0083】

【0084】

【0085】

【0086】

【0087】

【0088】
上記被膜試験で使用した装置の詳細は以下の通りである。
・光反射率測定:日本電色工業株式会社製、商品名分光色彩計 SD5000 塗装裏面(ガラス面)の波長500nmにおける全反射率を測定
・恒温恒湿試験:60℃相対湿度95%に24時間保持
・光沢保持率測定:恒温恒湿試験後の波長500nmにおける全反射率を測定し、初期反射率に対する割合を%で表したものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように本発明によれば、輝度に優れ、耐水性・耐薬品性に優れ、高温・高湿下においても変色・退色が少なく、長期の屋外使用にも耐え得るアルミニウム顔料、および該顔料を配合した塗料またはインクを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを主体する金属からなるアルミニウム顔料を、下記一般式1で示されるアルコキシシランと、活性水素を持たない有機溶剤と、脱アルコール触媒とを必須成分とする処理溶液中で処理することを特徴とする表面被覆アルミニウム顔料の製造方法。

(式中Rは炭素数1〜4のアルキル基を、nは1〜20の数を表す。)
【請求項2】
処理溶液が、さらに下記一般式2で示されるオルガノアルコキシシランを含む請求項1に記載の表面被覆アルミニウム顔料の製造方法。
12a−Si−(OR33-a ・・・一般式2
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、グリシドキシ基、炭素数5または6のエポキシシクロアルキル基、(メタ)アクリル基、アミノ基、メルカプト基およびイソシアネート基から選ばれる官能基を有する1価の基を、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基およびフェニル基から選ばれる基を、R3は1価の炭素数1〜4の低級アルキル基を、aは0、1または2を表わす。)
【請求項3】
処理溶液が、さらに下記一般式3で示される金属アルコキシドを含む請求項1に記載の表面被覆アルミニウム顔料の製造方法。

(式中、MはTi、ZrまたはAlの原子を、R4は炭素数1〜10のアルキル基を、bは0または1を、nは1〜20の数を表す。)
【請求項4】
処理溶液が、さらに下記一般式3で示される金属アルコキシドを含む請求項2に記載の表面被覆アルミニウム顔料の製造方法。

(式中、MはTi、ZrまたはAlの原子を、R4は炭素数1〜10のアルキル基を、bは0または1を、nは1〜20の数を表す。)
【請求項5】
反応終了後、反応混合物を7〜30日間熟成させる請求項1〜4の何れか1項に記載の表面被覆アルミニウム顔料の製造方法。
【請求項6】
下記一般式1の化合物の縮合体、下記一般式1の化合物と下記一般式2の化合物との共縮合体、下記一般式1の化合物と下記一般式3の化合物との共縮合体、または下記一般式1の化合物と下記一般式2の化合物と下記一般式3の化合物との3元共縮合体で表面が被覆されていることを特徴とする表面被覆アルミニウム顔料。

(式中Rは炭素数1〜4のアルキル基を、nは1〜20の数を表す。)
12a−Si−(OR33-a ・・・一般式2
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、グリシドキシ基、炭素数5または6のエポキシシクロアルキル基、(メタ)アクリル基、アミノ基、メルカプト基およびイソシアネート基から選ばれる官能基を有する1価の基を、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基およびフェニル基から選ばれる基を、R3は1価の炭素数1〜4の低級アルキル基を、aは0、1または2を表わす。)

(式中、MはTi、ZrまたはAlの原子を、R4は炭素数1〜10のアルキル基を、bは0または1を、nは1〜20の数を表す。)
【請求項7】
請求項6に記載の表面被覆アルミニウム顔料を含有することを特徴とする塗料またはインク。
【請求項8】
表面に、請求項7に記載の塗料またはインクからなる連続被膜または不連続被膜が形成されていることを特徴とする塗装物または印刷物。

【公開番号】特開2010−202709(P2010−202709A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47046(P2009−47046)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【特許番号】特許第4358897号(P4358897)
【特許公報発行日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(505153188)株式会社システム・トート (8)
【Fターム(参考)】