説明

表面被覆切削工具

【課題】耐摩耗性、耐欠損性、および密着性を兼ね備えた被覆膜を表面に有する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】本発明の表面被覆切削工具は、基材とその上に形成された被覆膜とを備え、該被覆膜は、1μm以上15μm以下の膜厚であり、かつAlaTibSicN(ただし式中、0.35≦a≦0.7、0<c≦0.1、a+b+c=1)からなるA層と、TidSieN(ただし式中、0<e≦0.1、d+e=1)からなるB層とが交互に各2層以上積層された積層体を含み、A層およびB層はそれぞれ、20nm以下の層厚であり、A層を構成するSiの原子比cと、B層を構成するSiの原子比eとは、以下の式(I)を満たすことを特徴とする。
|c−e|≦0.05 ・・・(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材とその上に形成された被覆膜とを備える表面被覆切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の切削工具の動向として、地球環境保全の観点から切削油剤を用いないドライ加工が求められていること、被削材が多様化していること、加工能率を一層向上させるため切削速度がより高速になってきていることなどの理由から、工具刃先温度はますます高温になる傾向にあり、工具材料に要求される特性は厳しくなる一方である。特に工具材料の要求特性として、基材上に形成される被覆膜の高温での安定性(耐酸化特性や被覆膜の密着性)はもちろんのこと、切削工具寿命に関係する耐摩耗性の向上や耐欠損性の向上が一段と重要になっている。
【0003】
耐摩耗性および表面保護機能改善のため、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼等の硬質基材からなる切削工具や耐摩耗工具等の表面には、硬質被覆膜としてTiAlの窒化物を単層または複層形成することはよく知られているところである。しかしながら、最近の高速、ドライ加工では、TiAlの窒化物からなる被覆膜では十分な工具寿命が得られないのが現状である。
【0004】
このような状況下、被覆膜の耐熱性を向上し、長い工具寿命を実現する方法として、特許文献1には、TiとAlとの複合窒化物において、さらにSiを添加した被覆膜が提案されている。このようにSiを含む被覆膜は、その表面にSiを含有する緻密な酸化保護膜が形成されることから、TiAlの窒化物からなる被覆膜よりも耐熱性が優れるという利点がある。しかし、その一方で特許文献1に開示される被覆膜は、その硬度および靭性の性能が十分ではないという問題があった。
【0005】
このような問題を解決する試みとして、特許文献2および特許文献3には、Tiの窒化物、炭窒化物、窒酸化物、または炭窒酸化物にSiを適量含有した層と、TiおよびAlを主成分とする窒化物、炭窒化物、窒酸化物、または炭窒酸化物からなる層とを交互に積層した被覆膜が開示されている。また、特許文献4には、AlTiSiNからなる層と、TiSiNからなる層とを交互に積層した被覆膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−310174号公報
【特許文献2】特開2000−334606号公報
【特許文献3】特開2000−334607号公報
【特許文献4】特開2003−291005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2および特許文献3に開示されているTiSi系の被覆膜は、圧縮残留応力が極端に高いことにより、被覆膜自体が自己破壊しやすいため、基材または下層との密着性が十分ではないという問題があった。また、上記の特許文献4で開示されている被覆膜は、耐熱性、硬度、および靭性に優れる一方、かかる被覆膜で被覆した切削工具を用いて切削加工を行なうと、積層構造中の層間で剥離する傾向があり、十分な工具寿命が得られないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、耐熱性、硬度、および応力バランスに優れるというAlTiSiNの特性と、耐摩耗性と靭性に優れるというTiSiNの特性とを兼備し、耐摩耗性、耐欠損性、および密着性を兼ね備えた被覆膜を表面に有する表面被覆切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のような課題を解決するために、被覆膜の構成について種々の検討を重ねたところ、特許文献4に開示される被覆膜が層間で剥離しやすいのは、積層構造を構成する各層のSi比がマッチングしていなかったことによるものであるという知見を得た。かかる知見に基づいて、AlTiSiNからなる層と、TiSiNからなる層との原子比についてさらに鋭意検討を重ねることにより、ついに本発明を完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基材とその上に形成された被覆膜とを備え、該被覆膜は、1μm以上15μm以下の膜厚であり、かつAlaTibSicN(ただし式中、0.35≦a≦0.7、0<c≦0.1、a+b+c=1)からなるA層と、TidSieN(ただし式中、0<e≦0.1、d+e=1)からなるB層とが交互に各2層以上積層された積層体を含み、A層およびB層はそれぞれ、20nm以下の層厚であり、A層を構成するSiの原子比cと、B層を構成するSiの原子比eとは、以下の式(I)を満たすことを特徴とする。
【0011】
|c−e|≦0.05 ・・・(I)
A層およびB層はいずれも、2nm以上10nm以下の層厚であることが好ましい。A層の層厚は、B層の層厚よりも厚いことが好ましい。
【0012】
A層を構成するSiの原子比cと、B層を構成するSiの原子比eとは、以下の式(II)を満たすことが好ましい。
【0013】
|c−e|≦0.03 ・・・(II)
被覆膜は、その表面側に最表面層を有し、該最表面層は、TidSieCN(ただし式中、0<e≦0.1、d+e=1)からなることが好ましい。上記の最表面層は、AlNからなるものであってもよい。さらに、AlNは、六方晶構造を含む結晶構造からなることが好ましい。
【0014】
A層は、AlaTibSicN(ただし式中、0.5≦a≦0.6、0.03≦c≦0.08、a+b+c=1)からなることが好ましく、B層は、TidSieN(ただし式中、0.03≦e≦0.08、d+e=1)からなることが好ましい。
【0015】
被覆膜は、物理蒸着法により形成されることが好ましい。A層およびB層は、アークイオンプレーティング法により形成され、最表面層は、スパッタリング法により形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表面被覆切削工具は、上記のような構成を有することにより、耐熱性、硬度、および応力バランスに優れるというAlTiSiNの特性と、耐摩耗性および靭性に優れるというTiSiNの特性とを兼備し、耐摩耗性、耐欠損性、および密着性を兼ね備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】基材直上にA層が形成され、表面側のB層上に最表面層が形成された態様の被覆膜を示す概略断面図である。
【図2】アークイオンプレーティング法とスパッタリング法との両方を行なうことができる複合装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。なおまた、本発明において、層厚または膜厚は走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)または透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により測定し、被覆膜の組成はエネルギー分散型X線分析装置(EDS:Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)により測定するものとする。
【0019】
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材とその上に形成された被覆膜とを備えたものである。このような基本的構成を有する本発明の表面被覆切削工具は、たとえばドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、またはクランクシャフトのピンミーリング加工用チップ等として極めて有用に用いることができる。
【0020】
<基材>
本発明の表面被覆切削工具の基材としては、このような切削工具の基材として知られる従来公知のものを特に限定なく使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb等の炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびこれらの混合体など)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体等をこのような基材の例として挙げることができる。このような基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素やη相と呼ばれる異常相を含んでいても本発明の効果は示される。
【0021】
なお、これらの基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。たとえば、超硬合金の場合はその表面に脱β層が形成されていたり、サーメットの場合には表面硬化層が形成されていてもよく、このように表面が改質されていても本発明の効果は示される。
【0022】
<被覆膜>
本発明の被覆膜は、AlaTibSicN(ただし式中、0.35≦a≦0.7、0<c≦0.1、a+b+c=1)からなるA層と、TidSieN(ただし式中、0<e≦0.1、d+e=1)からなるB層とが交互に各2層以上積層された積層体を含み、該A層および該B層はそれぞれ20nm以下の層厚であり、A層を構成するSiの原子比cと、B層を構成するSiの原子比eとは、以下の式(I)を満たすことを特徴としている。
【0023】
|c−e|≦0.05 ・・・(I)
このような本発明の被覆膜は、基材上の全面を被覆する態様を含むとともに、部分的に被覆膜が形成されていない態様をも含み、さらにまた部分的に被覆膜の一部の積層態様が異なっているような態様をも含む。また、本発明の被覆膜は、その全体の膜厚が1μm以上15μm以下であることを特徴とする。1μm未満であると耐摩耗性に劣る場合があり、15μmを超えると基材との密着性および耐欠損性が低下する場合がある。このような被覆膜の特に好ましい膜厚は2μm以上8μm以下である。本発明の被覆膜は、その表面側に後述の最表面層を含むことができる。なお、上記の被覆膜は、A層、B層、および最表面層以外の他の任意の層を含んでいてもよい。
【0024】
以下、このような被覆膜についてさらに詳細に説明する。
<A層>
積層体を構成するA層は、AlaTibSicN(ただし式中、0.35≦a≦0.7、0<c≦0.1、a+b+c=1)からなることを特徴とする。このようなA層は、耐熱性、硬度、および応力バランスに優れるため、高速、ドライ加工時の刃先の耐欠損性に効果的である。また、上記aは0.5≦a≦0.6であり、上記cは0.03≦c≦0.08であることがより好ましい。この場合耐熱性、硬度、および圧縮残留応力のバランスがさらに良好なものとなる。上記式中、aが0.35未満であるか、またはcが0.1を超えると、Si添加による耐熱性(特に耐酸化性)および硬度を向上させる効果を十分に得ることができず、aが0.7を超えると、被覆膜の硬度が大きく低下して耐摩耗性が低下するため好ましくない。
【0025】
なお、AlaTibSicNという表記において、「AlaTibSic」と、「N」との組成比は1:1の場合のみに限られるものではなく、組成比として可能である比を全て含み得るものであり、両者の比は特に限定されない。
【0026】
<B層>
上記のA層とともに積層体を構成するB層は、TidSieN(ただし式中、0<e≦0.1、d+e=1)であることを特徴とする。このようなB層は、耐摩耗性と靭性に優れるが、さらなる高速、ドライ加工へ対応するためにはそれ単体では限界があるため、本発明においては上記のA層と交互に積層されるものである。上記のeが0.1以下であることにより、B層の急激な圧縮応力の増加を抑制し、密着性の低下を抑制することができる。ここで、上記eは0.03≦e≦0.08であることがより好ましく、この場合耐摩耗性と靭性のバランスが一層良好なものとなる。上記式中、eが0.1を超えると、圧縮残留応力が大きくなり、層間剥離が生じやすくなるため好ましくない。
【0027】
なお、TidSieNという表記において、「TidSie」と「N」との組成比は1:1の場合のみに限られるものではなく、組成比として可能である比を全て含み得るものであり、両者の比は特に限定されない。
【0028】
<A層およびB層の層厚>
上記のようなA層およびB層はそれぞれ、20nm以下の層厚であることを特徴とする。このような層厚のA層およびB層を2層以上交互に積層させることにより、A層およびB層の密着が強固なものとなり、層間の剥離を抑制しつつ、A層およびB層の両層が有するそれぞれの特性を享受することができる。かかるA層およびB層は、層間で剥離しない程度に薄くすることにより密着性を向上できることから、可能な限り薄い層厚であることが好ましいが、製造設備の都合上、2nm以上10nm以下であることがより好ましい。これらの層厚が2nm未満の場合、成膜装置の基材をセットする回転テーブルの回転数が早すぎて、装置のスペック上成膜が困難となり、20nmを超えると層厚が厚すぎるため、A層およびB層の両層が有するそれぞれの特性を享受することができない。
【0029】
このようなB層は、A層よりも圧縮応力が高くなる傾向にある。このため、A層の層厚が、B層の層厚よりも厚いことが好ましい。これにより被覆膜全体の応力バランスが安定したものとなり、密着性や耐欠損性を向上させることができる。なお、本発明は、A層およびB層を交互に各2層以上積層させた積層体を形成するが、かかる積層体を構成する各A層および各B層の層厚は、同一の厚みであってもよいし、異なる厚みであってもよい。各A層の層厚および各B層の層厚がそれぞれ異なる場合、最も厚みが薄いA層の層厚が、最も厚みが厚いB層の層厚よりも厚いことが好ましい。これにより被覆膜全体の応力バランスが顕著に良好なものとなる。
【0030】
ここで、被覆膜105に含まれる積層体は、図1に示されるように基材110の直上に設けてもよいし、基材110上に中間層を形成した後に、該中間層上に設けてもよい。かかる積層体は、A層102およびB層103の両層が交互に積層される限り、どちらの層により積層を開始してもよいし、どちらの層により積層を終えてもよい。また、被覆膜105の最表面に最表面層104を形成してもよいし、最表面層104を形成しなくてもよい。最表面層104を形成する場合、図1に示すようにB層103上に最表面層104を形成してもよいし、図示はしていないがA層上に最表面層を形成してもよい。また、積層体上にバインダー層を形成してから最表面層104を形成してもよい。なお、図1における点線部分は積層が繰り返されていることを示すものであるが、本発明の積層態様の最少積層数はA層102、B層103がともに2層ずつである計4層の場合である。
【0031】
<Siの原子比>
A層を構成するSiの原子比cと、B層を構成するSiの原子比eとはそれぞれ、各式中において0.1以下であることを特徴とする。これにより耐熱性を向上しつつ圧縮応力の増加を抑えることができ、密着性の低下を防ぐことができる。Siの原子比であるcまたはeが0.1を超えると、圧縮応力が増加することにより層間の剥離が生じやすくなる。
【0032】
<Siの原子比の差>
本発明の被覆膜は、上記のA層と上記のB層とが交互に各2層以上積層された積層体を含むことを基本とする。これは、耐熱性、硬度、および応力バランスに優れるA層と、耐摩耗性および靭性に優れるB層とを交互に積層させることにより、これらの両層が有するそれぞれの特性を享受することを期待したものである。しかし、これら両層をSiの組成を限定せずに単純に積層させただけでは両層が有する特性を十分に発揮することができず、特に鉄系の被削材の高速加工およびドライ加工において、被覆膜に含まれる積層体中の層間での剥離が発生しやすいものであった。
【0033】
そこで、本発明者らが種々の検討を重ねた結果、上記のA層を構成するSiの原子比cと、B層を構成するSiの原子比eとが、以下の式(I)を満たすことにより、A層とB層との密着性を高め、層間での剥離を抑制することができることを見出した。
【0034】
|c−e|≦0.05 ・・・(I)
なお、式(I)中の|c−e|を以下においては「Siの原子比の差」とも記す。
【0035】
Siの原子比の差が0.05を超えると、被覆膜に含まれるSiの厚み方向の組成の均一性が取れなくなるためか、各層の応力差が大きすぎるためか、その理由は定かではないが密着性が低下する。A層およびB層の密着性を向上する観点から、A層およびB層を構成するSiの原子比の差は、0.03以下であることがより好ましい。
【0036】
<最表面層>
本発明の表面被覆切削工具は、上記被覆膜の表面側(すなわち被覆膜の基材と接する側とは反対側)に最表面層を備えることが好ましい。ここで、最表面層は、その層厚が0.05μm以上4μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上2μm以下である。
【0037】
このような最表面層は、TidSieCN(ただし式中、0<e≦0.1、d+e=1)からなることが好ましい。このようにB層を構成する組成の炭窒化物からなる最表面層は、その層中に炭素が分散していることにより、窒化物に比して摩擦係数が低く、潤滑性が高いものとなる。このため、切削加工中の工具の刃先が高温になりにくくなり、被覆膜の酸化を抑制するとともに、被削材が刃先に溶着しにくくなり、加工面粗さを向上させることができる。
【0038】
また、最表面層は、AlNからなるものとすることも好ましい。AlNからなる最表面層は、切削で高温になったときにアルミナとなって耐熱性を向上させるとともに、被削材の耐溶着性をも向上させることができる。最表面層を構成するAlNは、六方晶構造を含む結晶構造からなることが好ましい。六方晶構造のAlNは、熱浸透率が著しく低下して断熱効果が発揮されるため、耐酸化摩耗性および耐熱亀裂性を向上させ、工具寿命を向上させることができる。
【0039】
<製造方法>
本発明の被覆膜は、物理的蒸着法(PVD法)により形成されることが好ましい。これは、本発明の被覆膜を基材表面に成膜するためには結晶性の高い化合物を形成することができる成膜プロセスであることが不可欠であり、種々の成膜方法を検討した結果、物理的蒸着法を用いることが最適であることが見出されたからである。物理的蒸着法には、たとえばスパッタリング法、イオンプレーティング法などがあるが、特に原料元素のイオン率が高いカソードアークイオンプレーティング法を用いると、被覆膜を形成する前に基材表面に対して金属またはガスイオンボンバードメント処理が可能となるため、被覆膜と基材との密着性が格段に向上するので好ましい。
【0040】
したがって、本発明の被覆膜は、物理的蒸着法の一種であるカソードアークイオンプレーティング法を採用してA層およびB層を形成することが好ましく、A層およびB層を形成した後にTiSiCNからなる最表面層を形成する場合は、A層およびB層の形成と同様カソードアークイオンプレーティング法により最表面層を形成することが好ましい。これによりTiSiCNの結晶構造を緻密にすることができる。
【0041】
一方、A層およびB層をアークイオンプレーティング法により形成した後に、AlNからなる最表面層を形成する場合は、スパッタリング法により最表面層を形成することが好ましい。スパッタリング法を用いて最表面層を形成することにより、AlNの結晶構造を緻密にすることができる。
【0042】
図2は、カソードアークイオンプレーティング法とスパッタリング法の両方を行なうことができる複合装置の概略図である。TiSiCNからなる最表面層を形成する場合は、対向するアーク蒸発源201、202において、アーク蒸発源201にはA層用のAlTiSiターゲットをセットし、アーク蒸発源202にはB層用のTiSiターゲットをセットするとともに、回転テーブル204に基材210(切削工具)をセットする。
【0043】
ここで、アーク蒸発源201にセットされるターゲットの組成(AlとTiとSiとの比)によりA層を構成するAlaTibSicNの原子比であるa、b、およびcを決定することができる。また、アーク蒸発源202にセットされるターゲットの組成(TiとSiとの比)によりB層を構成するTidSieNの原子比であるd、およびeを決定することができる。
【0044】
そして、複合装置200内が真空となるように排気した後に、複合装置内をたとえば500℃に加熱した状態で回転テーブル204を5rpmで回転させながら、Arガスによるスパッタクリーニング(ボンバード)を行なう。その後、基材に−50Vのバイアス電圧を印加し、回転テーブル204を3rpmで回転させながら、アーク電流によりアーク蒸発源201、202をアーク放電させることにより、各ターゲットをイオン化させる。同時に反応ガスである窒素をガス導入口205から導入し、基材210の表面にA層およびB層を交互に成膜する。
【0045】
すなわち、アーク蒸発源201の前を基材210が通過するときにAlaTibSicNからなるA層が成膜され、アーク蒸発源202の前を基材210が通過するときにTidSieNからなるB層が成膜され、このように回転テーブル204が回転するのに従いA層とB層とを順次交互に積層させることができる。なお、成膜する間のアーク蒸発源201のアーク電流、およびテーブルの回転数を調整することにより、A層およびB層の層厚を調整することができる。
【0046】
ここで、アーク蒸発源201、202のアーク電流を低くするほど、A層およびB層の層厚は薄く形成される。したがって、A層の層厚をB層の層厚よりも厚くするためには、アーク蒸発源201のアーク電流をアーク蒸発源202のアーク電流よりも大きくすればよい。ただし、ターゲットの放電を安定させるためにはアーク電流は80A以上とする必要がある。アーク電流を80A未満にすると、アーク放電が不安定になり、A層およびB層の層厚を均一に形成しにくくなる。
【0047】
また、アーク電流を150A程度とした場合、テーブルの回転数を3rpm以上15rpm以下にすることにより、20nm以下の層厚のA層およびB層を形成することができる。テーブルの回転数を3rpm未満にすると、A層およびB層の層厚が20nmを超える場合があり、一方、15rpmを超えることは製造設備の制約上好ましくない。なお、A層およびB層の各層厚が2nm未満では回転テーブルの回転数が非常に早くなり、複合装置のスペック上成膜が困難となる。なお、複合装置200は、複数のヒータ206が備えられている。
【0048】
上記のようにA層およびB層を形成した後に、カソードアークイオンプレーティング法によりTiSiCNからなる最表面層を形成する場合、まずはチャンバー内の窒素およびArを排気してから、ガス導入口205から反応ガスである窒素と炭素ガスとを導入する。同時に、基材210にバイアス電圧を印加し、回転テーブル204を回転させながら、アーク電流を印加してアーク蒸発源202をアーク放電し、TiSiターゲットをイオン化させることにより形成する。
【0049】
このようにカソードアークイオンプレーティング法により最表面層を形成する場合は、チャンバー内の温度を550℃以上の高温にした上で、成膜時のバイアス電圧を200V以上に印加して成膜することが好ましい。このような条件で成膜することにより緻密なTiSiCNを形成することができる。なお、最表面層を形成するときのバイアス電圧が、30V以上100V以下のような通常のアークイオンプレーティング法の成膜条件では、炭素ガスであるメタンやアセチレンが十分に分解されずに部分的に炭素が析出し、耐熱性および強度が低下する場合があるため好ましくない。
【0050】
一方、AlNからなる最表面層を形成する場合は、複合装置200に上記A層用およびB層用のターゲットをセットするのに加えて、スパッタ蒸発源203にAlターゲットをセットする。そして、上記と同様のアークイオンプレーティング法を用いてA層およびB層を形成した後に、スパッタリング法により最表面層を形成する。AlNからなる最表面層を形成するときには、チャンバー内の温度を700℃以下とすることが好ましく、より好ましくは450℃以上550℃以下である。そして、チャンバー内の圧力が0.6PaになるようにArと窒素を1:1の流量比で導入するとともに、基材210にパルスDCバイアス電圧を印加し、回転テーブル204を回転させながら、スパッタ蒸発源203に所定の電力を加えてAlターゲットをイオン化し、窒素と反応させることによりAlNからなる最表面層を成膜する。
【0051】
このようにスパッタリング法により最表面層を形成する場合は、20nm以上70nm以下の層厚を成膜するごとに、スパッタ蒸発源203のパルス周波数を100kHz以下、または300kHz以上となるように交互に制御することが好ましい。そして、スパッタ蒸発源203のパルス周波数が300kHz以上のときには、基材バイアス電圧を50V未満、かつ周波数100kHz以下とすることがより好ましく、スパッタ蒸発源203のパルス周波数が100kHz以下のときには、基材バイアス電圧を50V以上、かつ周波数200kHz以上とすることがより好ましい。このようにチャンバー内の温度、基材バイアス電圧、およびパルス周波数を調整することにより、熱浸透率が低く、六方晶を含む緻密な結晶構造のAlNを形成することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
<実施例1〜21、比較例1〜12>
図2のようなカソードアークイオンプレーティング法とスパッタリング法の両方を行なうことができる複合装置を用い、各層形成用のターゲットを蒸発源にセットし、基材温度450℃にて基材上に被覆膜を成膜した。
【0054】
基材としては、超硬合金製エンドミル(φ10mm、6枚刃)、超硬合金製ドリル(φ8mm)、P20相当超硬合金製フライス用スローアウェイチップ(形状:SEET13T3AGSN−G)の3種類を準備し、それぞれに表1に示した被覆膜を成膜した。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例1〜21および比較例1〜12では、表1中の「組成」の欄に記載した「A層」および「B層」を積層させた上で、その最表面に表1中の「組成」の欄に記載した「最表面層」を形成することにより被覆膜を構成した。また、最表面層を形成しない場合は、表1中に「−」を示した。「層厚」の欄には、A層、B層、および最表面層のそれぞれの層厚を示し、「全体膜厚」の欄は、被覆膜の膜厚を示した。また、「Si比の差」の欄には、その積層体を構成するA層を構成するSiの原子比cと、B層を構成するSiの原子比eとの差を示した。
【0057】
たとえば、実施例1は、図2の複合装置を用い、アーク蒸発源201のターゲット材料にAl0.55Ti0.4Si0.05をセットし、アーク蒸発源202のターゲット材料にTi0.96Si0.04をそれぞれセットして、被覆膜を形成した表面被覆切削工具に関するものである。なお、目的の組成からなる被覆膜を得るためにN2ガス、CH4ガス、およびArガスからなる群より選択される1種以上の反応ガスを導入してチャンバー内の圧力を調整した。このようなターゲット材料を用いることにより、A層を構成するSiの原子比とB層を構成するSiの原子比との差が0.01の被覆膜を得ることができる。
【0058】
まず、図2の複合装置のチャンバー内の圧力が真空になるように排気した後に、チャンバー内の温度を570℃まで昇温した。そして、Arガスを導入してチャンバー内の圧力を3.0Paに保持し、DCバイアス電圧を徐々に上げながら−1000Vとし基材表面のクリーニング(ボンバード)を15分間行なった。その後アルゴンガスを排気した。これにより、Arイオンが基材表面をスパッタクリーニングし強固な汚れや酸化膜が除去された。
【0059】
次に、A層およびB層を成膜した。チャンバー内の圧力が3PaになるようにN2ガスを導入し、基材DCバイアス電圧を−50Vとした。Al0.55Ti0.4Si0.05ターゲットをアーク電流150Aとしてイオン化し、Ti0.96Si0.04ターゲットをアーク電流130Aとしてイオン化し、それぞれN2ガスと反応させることにより、基材上に層厚が8nmのAl0.55Ti0.4Si0.05NからなるA層と、層厚が6nmのTi0.96Si0.04NからなるB層とを交互に成膜した。なお、A層とB層の積層数はそれぞれ214層であった。
【0060】
そして、最後に最表面層を成膜した。チャンバー内の温度を550℃として、その圧力が3Paとなるように、N2ガスとメタンガスとを4:1の流量比で導入し、基材DCバイアス電圧を200Vとした。そして、Ti0.96Si0.04ターゲットをアーク電流130Aとしてイオン化し、N2ガスおよびメタンガスと反応させることにより、層厚が0.5μmのTi0.96Si0.04CNからなる最表面層を成膜し、本発明の表面被覆切削工具を作製した。なお、実施例2〜21および比較例1〜12の表面被覆切削工具も実施例1と同様にして作製した。
【0061】
このようにして得られた表面被覆切削工具(すなわち表面被覆エンドミル、表面被覆ドリル、表面被覆フライス加工用スローアウェイチップ)について次に示す切削条件にて評価を行なった。その切削評価の結果を表2に示す。
【0062】
(1)エンドミル評価
表面被覆エンドミルにおいては、基材として上記の通り6枚刃、外径10mmの超硬合金製エンドミルを用い、被削材はSKD11(HRC61)とし、側面切削をダウンカットで切削速度=200m/min、送り量=0.025mm/刃、切込み量ap=10mm、ae=0.6mm、エアーブローでエンドミル切削を行なった。そして、切削長50m時点での切れ刃外周の摩耗幅を測定した。なお、摩耗幅が少ない程、耐摩耗性に優れていることを示している。
【0063】
(2)ドリル評価
表面被覆ドリルにおいては、基材として上記の通り外径8mmの超硬合金製ドリルを用い、被削材はS50Cとし、穴加工を切削速度=80m/min、送り量=0.25mm/rev、穴深さ30mmの貫通穴、切削油なしでドリル切削を行なった。そして、切削長30m時点での先端マージン部の摩耗幅を測定した。なお、摩耗幅が少ない程、耐摩耗性に優れていることを示している。
【0064】
(3)フライス評価
表面被覆フライス加工用スローアウェイチップにおいては、基材として上記の通りP20相当超硬合金製スローアウェイチップ(形状:SEET13T3AGSN−G)を用い、被削材はSCM435(幅300mm×長さ200mmのブロック材)とし、切削速度=300m/min、送り量=0.25mm/t、切込み量=1.5mm、切削油なしでフライス切削を行なった。そして、切削時間15分時点での逃げ面の摩耗幅を測定した。なお、摩耗幅が少ない程、耐摩耗性に優れていることを示している。
【0065】
【表2】

【0066】
表2より、実施例1〜21の表面被覆切削工具は、比較例1〜12の表面被覆切削工具と比較して工具寿命が著しく向上しており、高速、ドライ加工に十分対応できることがわかった。すなわち、本発明の表面被覆切削工具が、AlTiSiNの特性とTiSiNの特性とを兼備し、耐摩耗性、耐欠損性、および密着性を兼ね備えたものであることが確認された。
【0067】
<実施例22〜42、比較例13〜26>
上記の実施例1と同一の複合装置を用い、各層形成用のターゲットを蒸発源にセットし、基材温度450℃にて基材上に、それぞれに表3に示した被覆膜を成膜した。
【0068】
基材としては、超硬合金製エンドミル(φ12mm、6枚刃)、超硬合金製ドリル(φ10mm)、P20相当超硬合金製フライス用スローアウェイチップ(形状:SEET13T3AGSN−G)の3種類を準備し、それぞれに表3に示した被覆膜を成膜した。
【0069】
【表3】

【0070】
実施例22〜42および比較例13〜26では、表3中の「組成」の欄に記載した「A層」および「B層」を積層させた上で、その最表面に表3中の「最表面層の結晶構造」の欄に記載した結晶構造のAlNからなる最表面層を形成することにより被覆膜を構成した。また、最表面層を形成しない場合は、表3中に「−」を示した。「層厚」の欄には、A層、B層、および最表面層のそれぞれの層厚を示し、「全体膜厚」の欄は、被覆膜の膜厚を示した。また、「Si比の差」の欄には、その積層体を構成するA層を構成するSiの原子比cと、B層を構成するSiの原子比eとの差を示した。
【0071】
たとえば実施例22においては、上記の実施例1とは最表面層の組成が異なる他は実施例1と同様の方法により表面被覆切削工具を作製した。すなわち、実施例1と同一の方法でA層およびB層の積層体を形成した後に、チャンバー内の温度を530℃とし、チャンバー内の圧力が1PaになるようにArガスとN2ガスを1:1の流量比で導入した上で、基材210にパルスDCバイアス電圧を印加し、回転テーブル204を回転させながら、スパッタ蒸発源203に2kWのスパッタ電力を加えてAlターゲットをイオン化し、N2ガスと反応させることによりAlNからなる最表面層を形成した。
【0072】
このようなスパッタリング法により形成される最表面層は、30nmの層厚を成膜するごとに、スパッタ蒸発源203のパルス周波数として320kHzと80kHzとを交互に制御した。そして、スパッタ蒸発源203のパルス周波数が320kHzのときには、基材バイアス電圧を40Vとし、パルス周波数を80kHzとしたのに対し、スパッタ蒸発源203のパルス周波数が80kHzのときには、基材バイアス電圧を60Vとし、パルス周波数を220kHzとすることにより形成した。なお、実施例23〜42および比較例13〜26の表面被覆切削工具も実施例22と同様にして作製した。
【0073】
このようにして得られた表面被覆切削工具(すなわち表面被覆エンドミル、表面被覆ドリル、表面被覆フライス加工用スローアウェイチップ)について次に示す切削条件にて評価を行なった。その切削評価の結果を表4に示す。
【0074】
(1)エンドミル評価
表面被覆エンドミルにおいては、基材として上記の通り6枚刃、外径12mmの超硬合金製エンドミルを用い、被削材はSKD11(HRC61)とし、側面切削をダウンカットで切削速度=230m/min、送り量=0.03mm/刃、切込み量ap=6mm、ae=0.6mm、エアーブローでエンドミル切削を行なった。そして、切削長45m時点での切れ刃外周の摩耗幅を測定した。なお、摩耗幅が少ない程、耐摩耗性に優れていることを示している。
【0075】
(2)ドリル評価
表面被覆ドリルにおいては、基材として上記の通り外径10mmの超硬合金製ドリルを用い、被削材はS50Cとし、穴加工を切削速度=70m/min、送り量=0.3mm/rev、穴深さ30mmの貫通穴、切削油なしでドリル切削を行なった。そして、切削長30m時点での先端マージン部の摩耗幅を測定した。摩耗幅が少ない程、耐摩耗性に優れていることを示している。なお、摩耗幅が少ない程、耐摩耗性に優れていることを示している。
【0076】
(3)フライス評価
表面被覆フライス加工用スローアウェイチップにおいては、基材として上記の通りP20相当超硬合金製スローアウェイチップ(形状:SEET13T3AGSN−G)を用い、被削材はSCM440(幅300mm×長さ200mmのブロック材)とし、切削速度=250m/min、送り量=0.2mm/t、切込み量=2.0mm、切削油なしでフライス切削を行なった。そして、切削時間15分時点での逃げ面の摩耗幅を測定した。なお、摩耗幅が少ない程、耐摩耗性に優れていることを示している。
【0077】
【表4】

【0078】
表4より、実施例22〜42の表面被覆切削工具は、比較例13〜26の表面被覆切削工具と比較して工具寿命が著しく向上しており、高速、ドライ加工に十分対応できることがわかった。すなわち、本発明の表面被覆切削工具が、AlTiSiNの特性とTiSiNの特性とを兼備し、耐摩耗性、耐欠損性、および密着性を兼ね備えたものであることが確認された。
【0079】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0080】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
110,210 基材、102 A層、103 B層、200 複合装置、201,202 アーク蒸発源、203 スパッタ蒸発源、204 回転テーブル、205 ガス導入口、206 ヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とその上に形成された被覆膜とを備え、
前記被覆膜は、1μm以上15μm以下の膜厚であり、かつAlaTibSicN(ただし式中、0.35≦a≦0.7、0<c≦0.1、a+b+c=1)からなるA層と、TidSieN(ただし式中、0<e≦0.1、d+e=1)からなるB層とが交互に各2層以上積層された積層体を含み、
前記A層および前記B層はそれぞれ、20nm以下の層厚であり、
前記A層を構成するSiの原子比cと、前記B層を構成するSiの原子比eとは、以下の式(I)を満たす、表面被覆切削工具。
|c−e|≦0.05 ・・・(I)
【請求項2】
前記A層および前記B層はいずれも、2nm以上10nm以下の層厚である、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
【請求項3】
前記A層の層厚は、前記B層の層厚よりも厚い、請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
【請求項4】
前記A層を構成するSiの原子比cと、前記B層を構成するSiの原子比eとは、以下の式(II)を満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
|c−e|≦0.03 ・・・(II)
【請求項5】
前記被覆膜は、その表面側に最表面層を有し、
前記最表面層は、TidSieCN(ただし式中、0<e≦0.1、d+e=1)からなる、請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項6】
前記被覆膜は、その表面側に最表面層を有し、
前記最表面層は、AlNからなる、請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項7】
前記AlNは、六方晶構造を含む結晶構造からなる、請求項6に記載の表面被覆切削工具。
【請求項8】
前記A層は、AlaTibSicN(ただし式中、0.5≦a≦0.6、0.03≦c≦0.08、a+b+c=1)からなる、請求項1〜7のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項9】
前記B層は、TidSieN(ただし式中、0.03≦e≦0.08、d+e=1)からなる、請求項1〜8のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項10】
前記被覆膜は、物理蒸着法により形成される、請求項1〜9のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項11】
前記A層および前記B層は、アークイオンプレーティング法により形成され、
前記最表面層は、スパッタリング法により形成される、請求項6または7に記載の表面被覆切削工具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−167784(P2011−167784A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32552(P2010−32552)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(503212652)住友電工ハードメタル株式会社 (390)
【Fターム(参考)】