説明

表面評価具及び表面評価方法

【課題】 コーティング剤などにより特定の表面処理を施した場合とそうでない場合とにおける表面性状の比較評価を容易に且つ安価に実施可能な表面評価具及び表面評価方法を提供する。
【解決手段】 特定の表面処理を施したサンプル板3Lと、表面処理を施していないサンプル板3Rとを併設し、両サンプル板3L、3Rに対して擦り付け可能なシート体4を設け、サンプル板3L、3Rに対するシート体4の滑り具合によって、両サンプル板3L、3Rの表面性状を比較評価可能となした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤などにより特定の表面処理を施した場合と、そうでない場合とにおける表面性状の比較評価を容易に且つ安価に実施可能な表面評価具及び表面評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品購入時の判断基準を利用者に提供するため、商品見本を用いることが広く実施されている。例えば、毛髪化粧料においては、それを使用することにより、毛髪の色が実際にどのように変化するのかを示す毛束見本を毛髪化粧料の近くに陳列している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、自動車用のワックスやコーティング剤等の商品においては、使用前と使用後とにおける撥水性を視覚的に訴えるため、使用前後における水切れ状態を示す写真を商品近くに展示することも広く実施されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−38316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コーティング剤やワックスなどの商品評価をするために、水切れ状態を示す写真を展示することは有効である。しかし、本出願人は、単に写真を展示するだけでなく、サンプル品を用いた、よりインパクトのある展示方法の可能性について鋭意検討した。ところが、コーティング剤やワックスなどによる表面処理は、光沢や触った感じだけでは十分にその効果を知ることができず、表面処理を施したサンプル品と表面処理を施していないサンプル品を単に並べて展示しただけでは、商品購入の判断材料としては十分な効果が得られないことが判った。そこで、更に鋭意検討を重ね、サンプル品を不織布で擦ると、その滑り具合によって表面処理の有無を明確に判別できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の目的は、コーティング剤などにより特定の表面処理を施した場合とそうでない場合とにおける表面性状の比較評価を容易に且つ安価に実施可能な表面評価具及び表面評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表面評価具は、特定の表面処理を施した表面処理部と、特定の表面処理を施していない比較部とを設け、表面処理部及び比較部に対して擦り付け可能なシート体を設け、表面処理部と比較部とに対するシート体の滑り具合によって、表面処理部と比較部との表面性状を比較評価可能となしたものである。
【0008】
この表面評価具では、シート体を表面処理部に擦り付けた場合と、比較部に擦り付けた場合とで、シート体の滑り具合が全く異なることから、表面処理部の表面性状が比較部よりも滑らかであることを明確に評価できる。しかも、表面処理部と比較部とをシート体で擦るので、利用者の手指の汗や油が表面処理部や比較部に付着することを防止して、汗や油による評価結果の変動を防止して、安定的な評価が可能となる。尚、本明細書において、特定の表面処理を施していない比較部とは、何ら表面処理剤で表面処理していない部分、または特定のコーティング剤以外の表面処理剤で表面処理した部分を意味する。また、比較部として、表面処理していない比較部と、特定のコーティング剤以外の表面処理剤で表面処理した1乃至複数の比較部とを任意に組み合わせて設けることも可能である。
【0009】
ここで、前記表面処理部と比較部とを別個のサンプル板の表面部に形成すること、前記表面処理部及び比較部をそれぞれ覆うように、前記シート体を表面処理部及び比較部の前側にそれぞれ吊り下げて設けること、前記表面処理部及び比較部の少なくとも一部が外部に露出するように、前記シート体を表面処理部及び比較部の前側にそれぞれ吊り下げて設けること、前記表面処理が、自動車の外板に対してなされるコーティング処理であること、などが好ましい実施の形態である。
【0010】
本発明に係る表面評価方法は、特定の表面処理を施した表面処理部と特定の表面処理を施していない比較部とに対してシート体をそれぞれ擦り付けて、表面処理部と比較部とに対するシート体の滑り具合によって、表面処理部と比較部との表面性状を比較評価するものである。
【0011】
この表面評価方法では、シート体を表面処理部に擦り付けた場合と、比較部に擦り付けた場合とで、シート体の滑り具合が全く異なることから、表面処理部の表面性状が比較部よりも滑らかであることを明確に評価できる。しかも、表面処理部と比較部とをシート体で擦るので、利用者の手指の汗や油が表面処理部や比較部に付着することを防止して、汗や油による評価結果の変動を防止して、安定的な評価が可能となる。
【0012】
ここで、前記表面処理部及び比較部をそれぞれ覆うように、前記シート体を表面処理部及び比較部の前側にそれぞれ吊り下げて設け、指でシート体を表面処理部又は比較部に押し付けながら、指とともにシート体をスライドさせて、表面処理部と比較部とに対するシート体の滑り具合によって、表面処理部と比較部との表面性状を比較評価すること、が好ましい実施の形態である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表面評価具及び表面評価方法によれば、シート体を表面処理部に擦り付けた場合と、比較部に擦り付けた場合とで、シート体の滑り具合が全く異なることから、表面処理部の表面性状が比較部よりも滑らかであることを明確に評価できる。しかも、表面処理部と比較部とをシート体で擦るので、利用者の手指の汗や油が表面処理部や比較部に付着することを防止して、汗や油による評価結果の変動を防止して、安定的な評価が可能となる。また、シート体で表面処理部と比較部とを擦るだけなので、安価に実施することができる。
【0014】
ここで、前記表面評価具において、表面処理部と比較部とは1枚のサンプル板の表面部に並べて形成することも可能であるが、前記表面処理部と比較部とを別個のサンプル板の表面部に形成すると、表面処理部と比較部とを明確に区別できるので好ましい。
【0015】
前記表面処理部及び比較部をそれぞれ覆うように、前記シート体を表面処理部及び比較部の前側にそれぞれ吊り下げて設けると、表面処理部又は比較部側へシート体を指で押し付けながら、そのまま指とともにシート体を移動させることで、シート体の滑り具合を容易に把握することができる。
【0016】
前記表面処理部及び比較部の少なくとも一部が外部に露出するように、前記シート体を表面処理部及び比較部の前側にそれぞれ吊り下げて設けると、シート体を持ち上げたりすることなく、表面処理部と比較部の表面性状を目視にて観察することが可能となる。
【0017】
自動車の外板に対してなされるコーティング剤を評価するための秤として、コーティング処理を施す前後の水切状態を示す写真が用いられていたが、本発明では、それ以外にシート材の滑りによってもコーティング処理を評価できるので、商品購入のための判断材料を増やすことができる。
【0018】
ここで、前記表面評価方法において、表面処理部及び比較部をそれぞれ覆うように、前記シート体を表面処理部及び比較部の前側にそれぞれ吊り下げて設け、指でシート体を表面処理部又は比較部に押し付けながら、指とともにシート体をスライドさせて、表面処理部と比較部とに対するシート体の滑り具合によって、表面処理部と比較部との表面性状を比較評価すると、簡単な操作で容易に表面処理の評価をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、表面評価具1は、ベース板2と、ベース板2の前側に設けた左右1対のサンプル板3L、3Rと、左右のサンプル板3L、3Rを覆うように設けた1枚のシート体4とを備え、図2に示すように、サンプル板3L、3Rに対してシート体4を指で押し付けた状態で、これを例えば上下に移動させることで、サンプル板3L、3Rにシート体4を擦り付けて、シート体4の滑り抵抗からシート体4の表面性状を評価できるように構成したものである。
【0020】
ベース板2としては、合成樹脂板、発泡樹脂板、厚紙、合板など任意の素材からなるものを採用できる。ベース板2の形状は、本実施の形態では長方形板状のものを採用したが、正方形状や円形やハート型など任意の形状のものを採用できる。
【0021】
サンプル板3L、3Rは、自動車の外板と同様に、鉄板やアルミニウム板や合成樹脂板などの表面にプライマー塗装、上塗り塗装などの塗膜層を形成したもので、一方のサンプル板3Lの全表面には、特定の表面処理として、4フッ化エチレン樹脂などからなるコーティング剤などの表面保護剤をコートした表面処理部が形成され、他方のサンプル板3Rには全表面には表面保護剤をコートしていないで、塗膜層がそのまま露出した比較部が形成されている。但し、表面保護剤としては、その他の組成のものを採用することが可能である。また、特定の表面処理として、コーティング剤に代えて、ワックス等を表面処理剤として塗布して表面処理部を形成し、ワックス等による表面性状の変化を評価することもできる。更に、サンプル板3Rに、特定の表面処理を施すための表面処理剤以外の表面処理剤をコートして、特定の表面処理を施すための表面保護剤とそれ以外の表面保護剤とを比較評価できるようにしてもよし、表面処理していないサンプル板と、特定の表面処理を施すための表面処理剤以外の表面処理剤で表面処理した1乃至複数枚のサンプル板とを任意に組み合わせて、評価対象の表面処理剤で表面処理したサンプル板3Lとともに併設してもよい。
【0022】
両サンプル板3L、3Rは、鉄板側をベース板2側にして、接着剤でベース板2に取り付けられている。サンプル板3L、3Rの形状は、本実施の形態では長方形状に形成したが、正方形や三角形などの多角形状や、円形や楕円形、星型やハート型など任意の形状のものを採用できる。また、ベース板2に対するサンプル板3L、3Rの固定は、ビス等の固定具を用いて行うことも可能である。
【0023】
シート体4としては、織布、不織布、紙、フェルトなど、任意の構成の繊維シートを採用できる。繊維素材としては、熱可塑性合成繊維、レーヨン繊維等の化学繊維、コットン繊維やパルプ繊維等の天然繊維、或いはこれら繊維を任意に組み合わせた混合繊維を採用することができる。特に、不織布からなるシート体は、端部処理が不要で安価に製作できるので好ましい。シート体4の上縁部はベース板2の上部に接着剤などで固定され、左右の側縁部と下縁部はベース板2に固定しないように設けられ、シート体4は両サンプル板3L、3Rの前側に吊り下げ状態で設けられている。
【0024】
この表面評価具1は、例えば表面処理剤の販売エリアに設置され、表面処理剤の購入希望者や表面処理剤の施工希望者が、図2に示すように、サンプル板3L、3Rに対してシート体4を指で押し付けた状態で、例えば指の上側のシート体4を撓ませながら指とともにシート体4を上下に移動させることで、サンプル板3L、3Rにシート体4を擦り付けて、表面処理剤をコーティングしたサンプル板3Lと、表面処理剤をコーティングしていないサンプル板3Rとに対するシート体4の滑り具合、具体的には表面処理剤をコーティングしたサンプル板3Lにおいてはシート体4が良好に滑るのに対して、表面処理剤をコーティングしていないサンプル板3Rにおいてはシート体4が滑り難くなることを指の感覚として体験でき、表面処理を施すことによるメリットを実体験できることになる。
【0025】
次に、表面評価具1の構成を部分的に変更した他の実施の形態について説明する。尚、前記実施の形態と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
(1)図3(a)に示す表面評価具1Aのように、前記シート体4を左右に分割構成したシート体4Aを用い、両サンプル板3L、3Rの前側にシート体4Aをそれぞれ配置させることもできる。
【0026】
(2)図3(b)に示す表面評価具1Bのように、前記シート体4を上下方向に短尺に構成したシート体4Bを用い、両サンプル板3L、3Rの上側半分の前側にのみシート体4Bを配置し、下側半分にシート体4Bを配置しないように構成することもできる。この場合には、シート体をまくり挙げなくても、サンプル板3L、3Rの表面状態を目視にて観察することが可能となる。
【0027】
(3)図3(c)に示す表面評価具1Cのように、前記シート体4を左右に分割構成するとともに、上下方向に短尺に構成したシート体4Cを用い、両サンプル板3L、3Rの前側にシート体4Cをそれぞれ配置するとともに、両サンプル板3L、3Rの上側半分の前側にのみシート体4Cが配置し、下側半分にはシート体4Cを配置しないように構成することもできる。
【0028】
(4)図3(d)に示す表面評価具1Dのように、前記シート体4に代えて、ベース板2に紐5で吊り下げたシート体4Dを設けることもできる。
【0029】
(5)図3(e)に示す表面評価具1Eのように、前記シート体4に代えて、複数枚のシート体4Eをケーシング6に対して別個にセットして設けてもよい。シート体は、サンプル板3L、3Rに対して擦り付けることで徐々に劣化するが、この表面評価具1Eのようにベース板とは別個にシート体4Eを設けると、シート体が劣化してもベース板及びサンプル板を繰り返し使用することができる。
【0030】
(6)図4(a)に示す表面評価具1Fのように、1枚のサンプル板3Fをベース板2に固定し、サンプル板3Fの左半分又は右半部に表面処理を施し、右半部又は左半部に表面処理を施さないように構成することもできる。また、このようなサンプル板3Fを前記表面評価具1A〜1Eに適用して、図4(b)〜(f)に示す表面評価具1G〜1Kのように構成することも可能である。
【0031】
尚、本実施例では、コーティング剤やワックスを施した場合とそうでない場合における表面性状の変化を評価可能となしたが、表面性状が変化する処理を施すための商品であれば、任意の商品に本発明を適用でき、例えば洗髪時に使用するリンスやコンディショナーを使用した場合における毛髪の表面性状の変化を評価するように構成することも可能で、この場合にはリンスやコンディショナーなどで処理した毛髪見本と処理していない毛髪見本を用意し、両毛髪見本にシート体を擦り付けてその表面性状を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】表面評価具の斜視図
【図2】図1のII-II線断面図
【図3】(a)〜(e)は、それぞれ他の構成の表面評価具の斜視図
【図4】(a)〜(f)は、それぞれ他の構成の表面評価具の斜視図
【符号の説明】
【0033】
1 表面評価具 2 ベース板
3L サンプル板 3R サンプル板
4 シート体 5 紐
6 ケース
1A 表面評価具 4A シート体
1B 表面評価具 4B シート体
1C 表面評価具 4C シート体
1D 表面評価具 4D シート体
1E 表面評価具 4E シート体
1F 表面評価具 3F サンプル板
1G 表面評価具 1H 表面評価具
1I 表面評価具 1J 表面評価具
1K 表面評価具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の表面処理を施した表面処理部と、特定の表面処理を施していない比較部とを設け、表面処理部及び比較部に対して擦り付け可能なシート体を設け、表面処理部と比較部とに対するシート体の滑り具合によって、表面処理部と比較部との表面性状を比較評価可能となしたことを特徴とする表面評価具。
【請求項2】
前記表面処理部と比較部とを別個のサンプル板の表面部に形成した請求項1記載の表面評価具。
【請求項3】
前記表面処理部及び比較部をそれぞれ覆うように、前記シート体を表面処理部及び比較部の前側にそれぞれ吊り下げて設けた請求項1又は2記載の表面評価具。
【請求項4】
前記表面処理部及び比較部の少なくとも一部が外部に露出するように、前記シート体を表面処理部及び比較部の前側にそれぞれ吊り下げて設けた請求項1〜3のいずれか1項記載の表面評価具。
【請求項5】
前記表面処理が、自動車の外板に対してなされるコーティング処理である請求項1〜4のいずれか1項記載の表面評価具。
【請求項6】
特定の表面処理を施した表面処理部と特定の表面処理を施していない比較部とに対してシート体をそれぞれ擦り付けて、表面処理部と比較部とに対するシート体の滑り具合によって、表面処理部と比較部との表面性状を比較評価するたことを特徴とする表面評価方法。
【請求項7】
前記表面処理部及び比較部をそれぞれ覆うように、前記シート体を表面処理部及び比較部の前側にそれぞれ吊り下げて設け、指でシート体を表面処理部又は比較部に押し付けながら、指とともにシート体をスライドさせて、表面処理部と比較部とに対するシート体の滑り具合によって、表面処理部と比較部との表面性状を比較評価する請求項6記載の表面評価方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−312354(P2006−312354A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135293(P2005−135293)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(593222090)中央自動車工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】