説明

表面静電容量式タッチパネル構造体

【課題】マルチタッチ入力が可能な表面静電容量式タッチパネル構造体を提供する。
【解決手段】導電性基板1の透明基板2の片面の表面に、酸化金属の膜によりなる導電性ライン3を3〜100本平行して形成し、その導電性基板1の導電性ライン3が形成された表面には保護膜層を積層し、前記導電性ライン3は各々の両端から電気的に接続して電流を感知し、その電流の変化を検知する処理装置へ接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面静電容量式タッチパネル構造体に関する。さらに詳しくは、マルチタッチ入力が可能な表面静電容量式タッチパネル構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、指入力またはペン入力によるモバイル情報端末としてタッチパネルの用途が拡大しつつある。このタッチパネルは種々の方式が提案されているが、抵抗膜式と静電容量式の2つの方式が代表的である。前者の抵抗膜式タッチパネルは、入力が簡単でかつ安価であることから、携帯機器への利用が広がりつつある。一方、後者の静電容量式タッチパネルは、表面静電容量式(Surface Capacitive)と投影型静電容量式(Projected
Capacitive)とがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このうち、表面静電容量式タッチパネルは、小型のものから大型のものまで広いサイズで適しているが、マルチタッチ入力が困難とされていた。すなわち表面静電容量式は、表面保護層と基板層との間の導電性膜、4隅の電極により構成され、この電極に電圧を印加して表面全体に均一な電界を形成させて、4隅から指を経由して電流が流れ、その4隅から流れた電流の比率を測定して指の押圧位置を特定する方式であり、この方式に基づくことによってマルチタッチ入力化が困難となっている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、マルチタッチ入力が可能な表面静電容量式タッチパネルを開発すべく研究を進めた。その結果、透明基板の表面に導電性のラインを多数本並行して配列して形成させた基板を、導電性基板として使用すると、マルチタッチ入力によりその指の押圧位置を検知することが可能であることが判明し、本発明に到達した。また導電性ラインとして屈曲に対して抵抗性を有する酸化金属の微粉末により形成された導電性ラインを使用し、かつ基板として屈曲性のあるフィルムまたはシートを使用すると、屈曲性を有するタッチパネルが得られることも見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて到達されたものであって、本発明によれば、(1)〜(8)の表面静電容量式タッチパネル構造体が提供される。
【0005】
(1)
透明基板の片面の表面に、酸化金属の膜によりなる導電性ラインの3〜100本が平行して形成された導電性基板であり、その導電性基板の導電性ラインが形成された表面は、保護膜層が積層され、前記導電性ラインは各々の両端から電気的に接続して電流を感知し、その電流の変化を検知する処理装置へ接続することを特徴とする表面静電容量式タッチパネル構造体。
(2)
前記酸化金属の膜が、ITO(Indium
Tin Oxide)膜である前記(1)記載のタッチパネル構造体。
(3)
前記導電性ラインは、幅が1mm〜20mmであり、かつ隣り合うラインの間隔が0.1mm〜3mmである前記(1)記載のタッチパネル構造体。
(4)
透明基板の片面の表面に、酸化金属の微粉末よりなる導電性ラインの3〜100本が平行して形成された導電性基板であり、その導電性基板の導電性ラインが形成された表面は、保護膜層が積層され、前記導電性ラインは、各々の両端から電気的に接続して電流を感知し、その電流の変化を検知する処理装置へ接続することを特徴とする表面静電容量式タッチパネル構造体。
(5)
前記酸化金属の微粉末がITO微粉末(Indium Tin Oxide微粉末)である前記(4)記載のタッチパネル構造体。
(6)
前記透明基板が、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートまたは、ポリカーボネート(PC)シートである前記(4)記載のタッチパネル構造体。
(7)
前記透明基板が、屈曲性を有する前記(4)記載のタッチパネル構造体。
(8)
前記導電性ラインは、幅が1mm〜20mmであり、かつ隣り合うラインの間隔が0.1mm〜3mmである前記(4)記載のタッチパネル構造体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、2点同時入力のようなマルチタッチ入力が可能な表面静電容量式タッチパネル構造体が提供される。本発明の好ましい態様によれば、マルチタッチ入力が可能であるばかりではなく、屈曲性を有しかつ耐久性に優れた表面静電容量式タッチパネル構造体が提供され、さらに携帯性に優れた小型〜中型のタッチパネル構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の表面静電容量式タッチパネル構造体に使用される導電性基板であって、その表面から見た平面図を示す模式図である。
【図2】図1に示した導電性基板のX−X´の直角断面図を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の表面静電容量式タッチパネル構造体についてさらに詳細に説明する。先ず、図1および図2を用いて具体的に説明する。図1は、本発明の表面静電容量式タッチパネル構造体に使用される導電性基板であって、その表面から見た平面図を示す模式図である。図2は、図1で示した導電性基板のX−X´の直角断面図を示す模式図である。
本発明のタッチパネル構造体に使用される導電性基板1は、図2に示すように透明基板2、導電性ライン3および保護膜層4より基本的に構成される。導電性基板1は、透明基板2の片面の表面に導電性ラインの3〜100本が平行して形成されている。図1では、導電性ライン3が5本平行して形成されている態様が示されている。各々の導電性ライン3は、平行しかつ一定の間隔をおいて、透明基板2の両端部まで形成されている。各々の導電性ライン3は透明基板2の表面に密着して接合されている。また図2に示すように、透明基板2の表面に形成された導電性ライン3は、透明の保護膜層4により覆われているが、図1にはこの保護膜層は全面に覆われており透明であるので、図面上示されていない。
【0009】
図1に示すように、5本の導電性ライン3は、それぞれ両端部において回線ライン5に電気的に接線し、回路端子6を通じて外部の処理装置(図示されていない)へ通電される。5本の導電性ラインは、各々電気的に独立しており、各々のラインは電気的に接触しないように一定の間隔(0.1mm〜3mm)をおいて配置されている。
導電性基板1に使用される透明基板2は、透明性を有するフィルムまたはシートであればよく、フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムの如きポリエステルフィルムが好ましく、フィルムの厚みとしては、50μm〜250μm、好ましくは100μm〜220μmの範囲が望ましい。一方シートとしては、樹脂シートまたはガラスシートが挙げられ、具体的にはPETシート、PENシート、ポリカーボネート(PC)シート、ポリシクロオレフィンシートまたはアクリル樹脂シートが例示されるが、好ましくはビスフェノールAを主たるモノマーとするポリカーボネートシートである。樹脂シートの厚みは0.2mm〜2.5mm、好ましくは0.4mm〜2mmの範囲が有利である。またガラスシートの場合、厚みは0.1mm〜2mm、好ましくは0.5mm〜1.5mmが望ましい。
【0010】
透明基板2の片面の表面に形成される導電性ライン3としては、導電性を有するラインであればよく、そのラインを形成する材料としては、導電性の酸化金属の膜や導電性の酸化金属の微粉末が挙げられる。この酸化金属とITO(Indium Tin Oxide)やSnOが挙げられ、具体的にはITO膜のラインやITO微粉末のラインが好ましい。殊に透明基板がフィルム或いは屈曲性を有するシートである場合には、導電性ラインはITO微粉末のラインであることが好適である。
透明基板の表面にITO膜のラインを形成するには、基板上に所望する幅および厚みを有するラインをパターニングし、次いでエッチングした後、ITOをスパッタリングまたは蒸着法により、ライン(膜)を形成させればよい。一方ITO微粉末のラインを形成するには、ITO微粉末を樹脂および溶媒よりなるドープ中に分散してインクを調製し、得られたITO微粉末インクを用いて、塗布するか印刷してラインを形成すればよい。塗布または印刷後、200〜400℃の温度で焼成することが望ましい。ITO微粉末としては、好ましくは平均粒径が5nm〜50nm特に10〜40nmの微粒子が使用できる。
【0011】
ITO微粉末はインジウム(In)と錫(Sn)の元素比が10:0.1〜10:1の範囲であるものが好ましく、その調整方法は特に制限されないが、下記の方法により得ることができる。インジウム塩の水溶液と錫塩の水溶液との混合水溶液を前記In:Snの元素比となるように準備し、この混合水溶液とアルカリ水溶液とを混合し、20〜70℃の温度で25〜130分間共沈反応を行い、水酸化物の沈殿物を得る。この沈殿物をイオン交換水で充分に洗浄し、水酸化物を濾別する。次いでこの水酸化物を大気中にて350〜800℃、望ましくは400〜750℃の温度で焼成してITOの凝集粒子を得、その凝集粒子を粉砕することによってITO微粉末を調整することができる。この焼成処理は、ITO微粉末の結晶粒界を充分に成長させるために温度と時間を制御することが望ましい。
【0012】
前記反応の原料に使用されるインジウム塩としては、例えば塩化インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウムの如き鉱酸塩および酢酸インジウム、シュウ酸インジウムの如き有機酸塩が例示される。また錫塩としては、例えば塩化錫、硝酸錫、硫酸錫の如き鉱酸塩および酢酸錫、シュウ酸錫の如き有機酸塩が挙げられる。さらにアルカリ水溶液としては、例えばアンモニア水溶液、苛性ソーダ水溶液などが使用される。
ITO微粉末はそのままでは透明基板の表面に接着できないので、インクを調製して、そのインクを塗布または印刷して導電性ラインを形成させる。インクの調製に使用されるバインダーは接着性に優れ透明のよいものが優れている。バインダーとしては、具体的にはアクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらバインダーとしての樹脂は、インク全体として重量で10〜80%、好ましくは20〜60%の範囲で使用される。またインク中には必要に応じて溶媒が使用される。インク中のITO微粉末の含有量は重量で10〜80%、好ましくは20〜60重量%の範囲がよい。
【0013】
透明基板の表面に形成される導電性ラインの数は3〜100本、好ましくは5〜50本である。導電性ラインの数が100本を越えると、タッチして入力する数は増加するが、各々のラインから電気的に接続して検知する回線の数が増え処理が複雑となる。
本発明の導電性基板1は、最表面は保護膜層4が積層されている。この保護膜層4により表面が保護されタッチにより傷がつくのを防止する。この保護膜層4は表面硬度の高くかつ透明性に優れたものがよい。
具体的には、熱硬化性または活性エネルギー硬化性のいずれの樹脂も使用することができる。熱硬化性樹脂としては、オルガノポリシロキサンなどのシリコーン樹脂およびメラミン系樹脂が挙げられる。活性エネルギー硬化性樹脂としては、例えば、ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレートとイソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。硬化させるための活性エネルギー線としては紫外線(UV)が使用され、その際、光重合開始剤を用いることが望ましい。表面に保護膜層を形成させる手段は、例えば、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法、フローコート法、ロールコート法が採用できるが、ディップ法およびスピンコート法が面精度の点から好ましい。
【0014】
保護膜層4の厚みは、1〜50μm、好ましくは2〜40μmであるのが耐摩耗性、耐擦傷性の点から望ましい。
必要に応じて、前記保護膜層4の表面には、反射防止層を形成させてもよい。反射防止層の成分としては、無機酸化物、フッ化物、窒化物などが例示できるが具体的には二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、フッ化マグネシウム、窒化ケイ素などがある。反射防止層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法が挙げられる。
本発明の表面静電容量式タッチパネル構造体は、前記した導電性基板を使用し、通常の静電容量式タッチパネルに使用される処理装置(コントローラー)に接続して利用することが可能であり、多点接触(マルチタッチ入力)の感知ができる処理装置に接続して利用することが好ましい。
殊に本発明のタッチパネル構造体は、導電性基板が屈曲性の場合、全体として屈曲性を有しているので広い分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 導電性基板
2 透明基板
3 導電性ライン
4 保護膜層
5 回線ライン
6 回路端子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の片面の表面に、酸化金属の膜によりなる導電性ラインの3〜100本が平行して形成された導電性基板であり、その導電性基板の導電性ラインが形成された表面は、保護膜層が積層され、前記導電性ラインは各々の両端から電気的に接続して電流を感知し、その電流の変化を検知する処理装置へ接続することを特徴とする表面静電容量式タッチパネル構造体。
【請求項2】
前記酸化金属の膜が、ITO(Indium Tin Oxide)膜である請求項1記載のタッチパネル構造体。
【請求項3】
前記導電性ラインは、幅が1mm〜20mmであり、かつ隣り合うラインの間隔が0.1mm〜3mmである請求項1記載のタッチパネル構造体。
【請求項4】
透明基板の片面の表面に、酸化金属の微粉末よりなる導電性ラインの3〜100本が平行して形成された導電性基板であり、その導電性基板の導電性ラインが形成された表面は、保護膜層が積層され、前記導電性ラインは、各々の両端から電気的に接続して電流を感知し、その電流の変化を検知する処理装置へ接続することを特徴とする表面静電容量式タッチパネル構造体。
【請求項5】
前記酸化金属の微粉末がITO微粉末(Indium Tin Oxide微粉末)である請求項4記載のタッチパネル構造体。
【請求項6】
前記透明基板が、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートまたは、ポリカーボネート(PC)シートである請求項4記載のタッチパネル構造体。
【請求項7】
前記透明基板が、屈曲性を有する請求項4記載のタッチパネル構造体。
【請求項8】
前記導電性ラインは、幅が1mm〜20mmであり、かつ隣り合うラインの間隔が0.1mm〜3mmである請求項4記載のタッチパネル構造体。







【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−48515(P2011−48515A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194920(P2009−194920)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(504203354)株式会社タッチパネル研究所 (41)
【Fターム(参考)】