説明

袋付きセグメント

【課題】袋付きセグメントにおいて、袋体の折り畳む手間を省け、袋体を均一に膨張でき、また注入孔ソケットを簡単に取付けでき、確実な袋体の離脱防止と止水効果が得られ、また簡単に確実な袋体の防護を図ることができ、また袋体端部を簡単に取付けでき、袋体の端部を着脱可能に固定できるようにする。
【解決手段】セグメント本体2の外周側の凹部A内の袋体3をグラウトGの充填で膨張させ地山に密着させてシールを行う袋付きセグメントにおいて、凹部A内の底面に敷設できる大きさに袋体3を折り畳み、水溶性の糸13で型崩れしないように縫い合わせて偏平な袋体とし、この偏平袋体3を凹部A内の底面に敷設し、グラウト注入孔位置のソケットと大型ナットによる固定装置4と袋体の両端部の丸鋼とスライド孔、雌ねじ孔を有する固定装置5でセグメント本体2に固定し、この偏平袋体の上に軟質ポリエチレン板、硬質ポリエチレン板、薄鉄板からなる防護板を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルに用いられる袋付きセグメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド工事において、例えば掘進方向が急激に変化する急曲線施工箇所では、施工を円滑にする補助工法としてセグメント背面に袋体をセットした袋付きセグメントが用いられている。急曲線では曲線に沿って大きな余堀り部が生じるが、リング状に組み立てられたセグメントがシールド機のテールを離脱した後、袋体にグラウト(瞬結用充填材)を注入し、膨張した袋体を地山に固定させることにより、ジャッキ推力の反力体が得られ、急曲線施工が容易になる。また、トンネル軸方向に間隔をおいて配置された袋体間の空間に裏込め材を充填することにより、裏込め材が切羽にまわることがなく、早期裏込め充填が可能となり、周辺の地山を安定させることができる。その他、発進部における補助工法等にも用いられる。
【0003】
このような袋付きセグメントでは、袋体にグラウトを注入したときに袋体の隅々までグラウトが行き渡るように、袋体をセグメント背面の袋体収納部位にきちんと折り畳んで収納する必要がある。なお、特許文献3等には、袋体の端部を内折りで折り畳んで収納することが記載されている。
【0004】
また、袋体をグラウト注入孔位置でセグメント本体に固定する技術として、特許文献1がある。この特許文献1の発明は、操作ロッドとフランジ付きの固定筒を袋体の透孔から外に出し、セグメント本体のスキンプレートの内側に設けられた注入ソケットの内部にねじ込み、その後、工具の先端を注入ソケットの内部を通して袋体内に差し込んで固定筒の操作ロッドを操作し、固定筒を注入ソケットに強く締め付け、固定筒のフランジとスキンプレートで袋体を挟み込み、袋体をセグメント本体に固定するものである。
【0005】
また、袋体がセグメントの運搬、組立、シールド機のテールから離脱する時などに破損しないように保護板を設ける必要があるが、例えば特許文献2には、セグメント背面の袋体収納部に袋体を折り畳んで収納し、この袋体の上から発泡硬質ウレタン等の塑性変形しやすい材料の原液を充填し、発泡・硬化させて蓋をすることが記載されている。
【0006】
また、袋体の長さ方向の端部の固定には、例えば特許文献3に記載されているように、袋体の両端部に取付けた板状の端部閉塞用金具をセグメント本体のスキンプレートにボルトで固定する方法がある。また、袋体の端部の袖に丸鋼を通し、丸鋼をリブまたはスキンプレートに溶接して袋体を固定する方法もある。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献4〜特許文献9がある。
【特許文献1】特開2002−295185号公報
【特許文献2】特公平5−34477号公報
【特許文献3】特開平8−193497号公報
【特許文献4】特許第2648665号公報
【特許文献5】特開2003−247392号公報
【特許文献6】特開2002−235493号公報
【特許文献7】特開平11−324582号公報
【特許文献8】特開平11−193692号公報
【特許文献9】特開平10−88980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のような従来の袋付きセグメントの場合、次のような課題がある。
(1)カーブの付いたセグメント本体に袋体をきちんと折り畳んで収納するためには、大変な手間がかかる。
(2)特許文献1の発明の場合、セグメントの内側から工具の先端を注入ソケットの内部を通して袋体内に差し込んで固定筒の操作ロッドを操作し、固定筒を強く締め付けなければならず、操作がしづらい。
(3)特許文献2の発明の場合、袋体収納部を形成するリブの先端面と、発泡硬質ウレタンの外面の位置を揃え、綺麗に整形するためには型枠が必要となり、コストと手間がかかる。
(4)特許文献3の発明の場合、スキンプレートにボルト孔を明ける作業は、溶接で取付ける以上に手間がかかる。また、単に丸鋼をスキンプレートに溶接する方法は、高熱の溶接スパッタにより袋体に孔を開ける可能性があったり、袋体の取外しができないなどの課題がある。
【0009】
本発明は、前述のような課題の解決を図ったものであり、セグメント本体の背面に袋体を備えた袋付きセグメントにおいて、袋体をセグメントに設置する際、折り畳む手間を省くことができると共に、袋体にグラウトを隅々まで注入することができ、袋体を均一に膨張させることができ、またグラウト注入孔位置の固定装置としての注入孔ソケットを簡単に取付けることができると共に、確実な袋体の離脱防止と止水効果が得られ、また袋体上の防護板の設置に際し、従来の表面を成型する型枠を不要とすることができると共に、確実な袋体の防護を図ることができ、また袋体端部の固定装置をセグメント本体に容易に取付けることができると共に、袋体の端部を着脱可能に固定することができる袋付きセグメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、掘削されたトンネル内で円周方向に連結してリングを構成するセグメント本体の外周側に設けられた凹部内に、グラウトの充填により膨張し、地山に密着してシールを行う袋体を収納してなる袋付きセグメントにおいて、袋体の縫製時に、セグメント本体の凹部内の底面に敷設できるような大きさに袋体を折り畳み、水溶性の糸で型崩れしないように縫い合わせて偏平な袋体とし、この偏平袋体をセグメント本体の凹部内の底面に敷設し、袋体のグラウト注入孔位置の固定装置と袋体の両端部の固定装置によりセグメント本体に固定し、この偏平袋体の上に凹部の蓋となる防護板を設けて構成されていることを特徴とする袋付きセグメントである。
【0011】
鋼製セグメントの場合には、セグメント円周方向(トンネル軸直角方向)に平行な一対の主桁と、この主桁の端部同士を連結する継手板と、セグメント外周側に位置する覆工板としてのスキンプレート等からなり、スキンプレートを内周側に若干ずらして配置することにより、セグメント本体の外周側(背面)に収納凹部が形成される。コンクリートセグメントの場合には、セグメント製作時に収納凹部を形成することができる。袋体の縫製時に、袋体の全周をセグメント本体の寸法に合わせて内側へ折り畳んで、この部分を水溶性の糸(水溶性ビニロン等)で縫い合わせる。このように縫製された偏平な袋体を前記収納凹部内の底面にセットする。グラウト注入時に、グラウトに含まれる水分により水溶性の糸が溶けて、グラウトが袋体の隅々に均一に注入され、所定形状に膨張した均質な袋体が得られる。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の袋付きセグメントにおいて、袋体のグラウト注入孔位置の固定装置は、袋体の注入孔およびセグメント本体のスキンプレートの注入孔にセグメント本体の外周側から挿入されるフランジ付きの注入孔ソケットと、この注入孔ソケットの雄ねじにねじ込まれ、注入孔ソケットのフランジとでパッキンを介しスキンプレートおよび袋体を挟持するナットから構成されていることを特徴とする袋付きセグメントである。
【0013】
ナットは大型のナットを用い、注入孔ソケットのフランジもこれに対応させて突出させ、このフランジとスキンプレートとに挟まれる袋体の注入孔外周部にパッキン(ゴムパッキン等)を配置し、大型ナットを締め付けることにより、フランジと大型ナット・スキンプレートとで袋体をパッキンを介して挟持する。フランジのパッキンに接する面には突起を設け、また袋体の注入孔外周部にはOリング等を組み込むなどし、袋体の離脱防止と止水効果を確実なものとするのが好ましい。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の袋付きセグメントにおいて、防護板は、成型された軟質と硬質の2種類の合成樹脂板を用い、軟質合成樹脂板を袋体の上に固定し、この上に硬質合成樹脂板を接着材等で固定して構成されていることを特徴とする袋付きセグメントである。
【0015】
合成樹脂は、例えば発泡ポリエチレンを用い、予め成型した軟質・硬質の厚さの薄い発泡ポリエチレン板を2種類用意し、セグメント本体の背面の収納凹部にセットされた偏平袋体の上に軟質発泡ポリエチレン板を配置して接着剤で固定し、この上に硬質ポリエチレン板を配置し、軟質ポリエチレン板及びセグメント本体に接着剤で固定し、袋体の防護板とする。また、硬質ポリエチレン板の上には薄鉄板を配置するのが好ましい。この薄鉄板はセグメント外周面に一致させ、収納凹部の開口縁部に設けた係止板で係止する。
【0016】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の袋付きセグメントにおいて、袋体の両端部の固定装置は、袋体端部の袖を通し、両端部が袖から突出するように取付けられた棒材からなるホルダーと、セグメント本体のスキンプレート上に設けられ、前記ホルダーの一端部が挿入されるスライド孔を有するホルダー固定部材と、セグメント本体のスキンプレート上に設けられ、前記ホルダーの他端部が螺着される雌ねじ孔を有するホルダー固定部材からなり、ホルダーの一端部を前記スライド孔に挿入した後、ホルダーの他端部を前記雌ねじ孔に螺入できるように構成されていることを特徴とする袋付きセグメントである。
【0017】
ホルダーの棒材には、例えば丸鋼を用い、一端部はねじ切りをせず、他端部には雄ねじを形成する。袋体の長さ方向(セグメント円周方向)の両端部には袋体の幅方向(セグメント幅方向)に平行な袖部を設け、この袖部に丸鋼ホルダーを挿通させて取付け、袖部から両端部が突出するようにする。一対のホルダー固定部材は、丸鋼ホルダーの一端部をスライド孔の奥深くまで挿入したとき、丸鋼ホルダーの他端部の雄ねじが雌ねじ孔の手前に位置するように配置し、溶接でスキンプレート及び主桁に固定する。
【発明の効果】
【0018】
(1) 袋体の縫製時に、セグメント本体の寸法に合わせて予め折り畳み、水溶性の糸で型崩れしないように縫い合わせておいたものをセグメント本体にセットするようにしたため、セグメントの袋体収納部位に袋体をきちんと折り畳んだ状態で収納する手間が省け、省力化及びコストの低減等が図られる。さらに、グラウト注入時にはグラウトに含まれる水分により水溶性の糸が溶けて、グラウトが袋体の隅々に均一に注入され、所定の形状に膨張した均質な袋体が確実に得られる。
【0019】
(2) 袋体のグラウト注入孔位置の固定装置であるフランジ付き注入孔ソケットをセグメント外周側からスキンプレートの注入孔に差し込んで、ソケットの外ねじ部に大型ナットを締め込み、ソケットのフランジとスキンプレートとで袋体を挟んで固定するようにしたため、従来のような袋体の内部にある操作ロッドを工具により締め付けるという面倒な作業を解消することができ、簡単に袋体を固定することができる。さらに、ソケットの外周部から大型ナットで締め付けるため、十分なトルクが得られ、袋体をパッキンや突起等により挟持することで、確実な袋体の離脱防止と止水効果が得られる。
【0020】
(3) 予め成型した軟質・硬質の厚さの薄い合成樹脂板を2種類用い、軟質の合成樹脂板を袋体の上に固定し、その上に硬質の合成樹脂板を固定して袋体の防護板とするようにしたため、従来の原液を充填する場合の表面を成型するための型枠が不要となり、コストと手間が低減される。さらに、1種類の成型板を配置した場合、軟質板では防護の役目を果さず、硬質板では割れを生じるが、軟質板・硬質板を併用することで、両方の欠点を補うことができる。
【0021】
(4) 袋体の端部の固定装置を、片側にねじ切りした棒材ホルダーと、スライド孔を設けたホルダー固定部材と、雌ねじ孔を設けたホルダー固定部材から構成し、ホルダー固定部材をセグメント本体に溶接で固定するようにしたため、従来のボルト接合を溶接接合とすることにより、製作時間の短縮、コストの低減が図れる。また、従来のように袋体の袖部に取付けた丸鋼をセグメント本体に直接溶接する場合、溶接スパッタ等により袋体に穴が明く可能性があったが、ホルダー固定部材を介して螺着で固定することにより、袋体に穴を明ける恐れがない。また、袋体を着脱可能とすることができ、袋体の交換が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、鋼製セグメントに本発明を適用した例である。図1は、本発明の袋付きセグメントの一実施形態であり、(a)は袋体膨張時の側面図、(b)はセグメント端部の平面図、(c)はセグメント端部の断面図である。図2は、図1の袋付きセグメントであり、(a)はセグメント中央部の断面図、(b)はセグメント全体の平面図である。図3は、袋体のグラウト注入孔位置を示したものであり、(a)は断面図、(b)〜(d)は袋体の注入孔縁部の取付け構造の種々の例を示す部分拡大断面図、(e)は注入孔ソケットの平面図、(f)は大形ナットの平面図である。図4は、袋体端部の固定装置の一例であり、(a)、(b)は工程順に示す断面図、(c)、(d)は左右のホルダー固定部材の正面図である。
【0023】
図1、図2において、本発明の袋付き鋼製セグメント1は、シールド機により掘削されたシールドトンネル内で円周方向に連結してリングを構成する側面視で円弧状のセグメント本体2と、このセグメント本体2の背面すなわち外周側に設けられた収納凹部A内に配置され、グラウトGの充填により膨張し、地山に密着してシールを行う袋体3を備えている。また、後述するように、縫製時に偏平に成形された袋体3がセグメント本体2の収納凹部A内の底面に敷設され、袋体3のグラウト注入孔位置の固定装置4と、袋体3の長さ方向の両端部の固定装置5によりセグメント本体2に固定され、偏平袋体3の上に収納凹部Aの蓋となる防護板6が設けられる。
【0024】
鋼製のセグメント本体2は、トンネル軸直角方向に平行でトンネル軸方向に所定の間隔をおいて一対の側面視で円弧状の主桁10と、この一対の主桁10の両端部に設けられる継手板11と、セグメントの外周面を構成する覆工板としてのスキンプレート12と、縦リブなどから構成され、このスキンプレート12をセグメント最外面より少し内側へ入った位置に配置し、主桁10と継手板11に溶接で固定することにより、側面視で円弧状の収納凹部Aが形成される。
【0025】
袋体3は、土木シート等の通気性を有する布材料から構成されており、グラウト注入時のエアー溜まりが防止される。このような袋体3は、図1(a)に示すように、袋体の膨らみ高さB(余堀り以上)だけ膨張させる必要があり、このような袋体3をRの付いた薄い収納凹部A内の底面に薄板状に折り畳んで収納するには、大変手間がかかる。そこで、本発明では、袋体3の縫製時に、収納凹部A内の底面に敷設できるような大きさに袋体3を折り畳み、水溶性の糸で型崩れしないように縫い合わせて偏平な袋体3とする。例えば、図1(b)に示すように、袋体の全周を内側に折り込んで水溶性の糸13で縫い合わせる。水溶性の糸13には、グラウトに含まれる水分により溶解する特殊合成繊維(水溶性ビニロン)を使用する。
【0026】
袋体3のグラウト注入孔位置の固定装置4は、図2(a)、図3に示すように、袋体3の注入孔14およびスキンプレート12の注入孔15にセグメント本体2の外周側から挿入されるフランジ付きの注入孔ソケット20と、この注入孔ソケット20の雄ねじ20aにねじ込まれ、注入孔ソケット20のフランジ21とでスキンプレート12および袋体3を挟持する大型のナット22から構成されている。袋体3に予め取付けられている注入孔ソケット20をスキンプレート12の注入孔15に差し込み、雄ねじ20aに大型のナット22をねじ込むだけで袋体3をスキンプレート12に固定できるため、簡単に作業を行うことができる。また、大型ナット22で注入孔ソケット20の外側から締め付けることにより十分なトルクが得られる。
【0027】
図3に示すように、注入孔ソケット20のフランジ21は大型ナット22の外形に合わせて突出させ、その袋体側の挟持面の外周側にはリング状の突起23が形成され、袋体3との間にゴムパッキン24が配置され、袋体3の注入孔外周部3bに後述する抜け出し防止手段が設けられ、袋体3の確実な離脱防止と止水効果が得られるようにしている。スキンプレート12と大型ナット22との間にもリング状のゴムパッキン25が配置され、ワッシャー26を介して大型ナット22を締め付けることにより止水がなされる。
【0028】
抜け出し防止手段には、例えば、図3(b)〜(d)に示す構造を用いることができる。図3(b)では、袋体3の注入孔外周部3bを二重縫製としてOリングゴム27を縫い込み、リング状の突起23には、リング状のゴムパッキン24を下から嵌め込み、このゴムパッキン24でOリングゴム27を係止めして袋体3の抜け出しを防止し、袋体3の二重縫製部分に押し付けられるゴムパッキン24と、フランジ21とスキンプレート12の間で挟圧されるOリングゴム27で止水する。また、図3(c)では、袋体3の注入孔外周部3bの二重縫製部分の下にリング状の突起付きゴムパット28を配置し、二重縫製部分をゴムパッキン24と突起付きゴムパッド28で挟持し、抜け出し防止と止水を図っている。図3(d)では、ゴムパッド28の代わりにワッシャー29を用いている。
【0029】
なお、袋体3へのグラウト充填終了後、注入孔ソケット20の雌ねじ20bにOリングゴム・つば付きのプラグ30がねじ込まれ、袋体3が閉塞される。
【0030】
防護板6は、袋体3がセグメントの運搬、組立、シールド機のテールから離脱する時などに破損しないように保護するものであり、図2に示すように、収納凹部A内の袋体3の上に袋体側から順に配置される軟質発泡ポリエチレン板6a、硬質発泡ポリエチレン板6b、薄鉄板6cから構成されている。予め成型した軟質・硬質の厚さの薄い発泡ポリエチレン板を2種類用意し、偏平に折り畳まれた袋体3の直上に軟質発泡ポリエチレン板6aを配置し、袋体3に接着剤で固定する。この上に硬質発泡ポリエチレン板6bを配置し、軟質発泡ポリエチレン板6bおよびセグメント本体2に接着剤で固定する。
【0031】
成型ポリエチレン板を用いることにより、従来のウレタン原液を充填する場合の表面を整形するための型枠が不要となる。また、成型ポリエチレン板を1種類で配置した場合には、軟質ポリエチレン板では防護の役目を果さず、硬質ポリエチレン板では割れを生じる。軟質発泡ポリエチレン板6a・硬質発泡ポリエチレン板6bを併用することで、両方の欠点を補うことができる。
【0032】
硬質発泡ポリエチレン板6bの上には薄鉄板6cを配置し、硬質発泡ポリエチレン板6bをテールブラシ等から保護する。この薄鉄板6cの表面は主桁10および継手板11の上端と面一となるようにし、主桁10および継手板11の上に係止板31を収納凹部側へ若干突出するように取付け、運搬時等に防護板6が離脱しないように、かつ、袋体3の膨張時には防護板6が外れるようにする。なお、主桁10と係止板31の溶接に際し、袋体3の両側部が溶接熱で損傷する恐れがあるため、図2(a)に示すように、袋体3の両側部と主桁10との間に適当な空間を設けるのが好ましい。この空間部分は、軟質ポリエチレン板6aを配置して埋める。
【0033】
袋体3の両端部の固定装置5は、図1に示すように、丸鋼からなるホルダー40と、スライド孔41aを有するホルダー固定部材41と、雌ねじ孔42aを有するホルダー固定部材42から構成されている。図1(b)に示すように、袋体3の長さ方向(セグメント円周方向)の端部には、袋体3の幅方向(セグメント幅方向)に平行な袖部3aが一体的に設けられており、この袖部3aに丸鋼ホルダー40を挿入して取付ける。この袖部3aは丸鋼ホルダー40の両端部が所定長さで突出するような長さとする。ホルダー固定部材41、42は、丸鋼ホルダー40の両端部を挿入できるようにスキンプレート12の上に配置され、主桁10とスキンプレート12に溶接で固定される。
【0034】
図4に示すように、ホルダー固定部材41のスライド孔41aには丸鋼ホルダー40の一端部が挿入され、ホルダー固定部材42の雌ねじ孔42aには丸鋼ホルダー40の他端部に形成された雄ねじ40aが螺着される。図4(a)に示すように、スライド孔41に丸鋼ホルダー40の端部を奥まで挿入したときに雄ねじ40a先端がホルダー固定部材42から離れるようにしておく。丸鋼ホルダー40のねじの無い端部をスライド孔41に奥まで挿入し、続いて丸鋼ホルダー40を回転させ、雄ねじ40aを雌ねじ孔42aにねじ込むことで、図4(b)に示すように、袋体袖部3aの固定がなされる。逆の手順で、袋体袖部3aを外すことができる。
【0035】
従来のボルトで固定する方法と比べ、製作時間の短縮が図れる。また、従来の丸鋼をセグメント本体に直接溶接する方法に比べ、ホルダー固定部材41、42を予め溶接で固定してホルダー40を螺着で固定するため、袋体3に穴を明ける恐れがない。また、袋体3を着脱可能に取付けることができ、袋体3の交換が可能となる。
【0036】
以上のような構成において、縫製時に折り畳まれ、水溶性の糸で縫い合わされた偏平な袋体3をセグメント本体2の収納凹部Aの底面に配置し、スキンプレート12の注入孔15に挿入された注入孔ソケット20に大型ナット22を締め付けて袋体3の中央部をスキンプレート12に固定する。袋体3の両端部の丸鋼ホルダー40をホルダー固定部材41、42に前述のように取付け、袋体3の両端部をスキンプレート12に固定する。袋体3は着脱可能に取付けられているため、交換することができる。偏平な袋体3の上に防護板6を設置して蓋をする。以上は、工場や現場の製作ヤードなどで行われる。
【0037】
シールドトンネル内でリング状に組み立てられ、シールド機のテールを離脱すると、注入孔ソケット20からグラウトを充填する。水溶性の糸はグラウトに含まれる水分により溶けて袋体3の隅々までグラウトが行き渡り、所定の形状に膨張する。薄鉄板6cおよび
発泡ポリエチレン板6b、6aは、袋体3の膨張圧力により共に外れ、袋体3の外周面が地山に密着する。
【0038】
なお、以上は鋼製セグメントに適用した場合を示したが、これに限らず、コンクリート製等のセグメントにも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の袋付きセグメントの一実施形態であり、(a)は袋体膨張時の側面図、(b)はセグメント端部の平面図、(c)はセグメント端部の断面図である。
【図2】図1の袋付きセグメントであり、(a)はセグメント中央部の断面図、(b)はセグメント全体の平面図である。
【図3】本発明の袋体のグラウト注入孔位置を示したものであり、(a)は断面図、(b)〜(d)は袋体の注入孔縁部の取付け構造の種々の例を示す部分拡大断面図、(e)は注入孔ソケットの平面図、(f)は大形ナットの平面図である。
【図4】本発明の袋体端部の固定装置の一例であり、(a)、(b)は工程順に示す断面図、(c)、(d)は左右のホルダー固定部材の正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1…袋付きセグメント
2…セグメント本体
3…袋体
3a…袋体袖部
3b…袋体注入孔外周部
4…袋体のグラウト注入孔位置の固定装置
5…袋体の長さ方向の両端部の固定装置
6…防護板
6a…軟質発泡ポリエチレン板
6b…硬質発泡ポリエチレン板
6c…薄鉄板
10…主桁
11…継手板
12…スキンプレート
13…水溶性の糸
14…袋体の注入孔
15…スキンプレートの注入孔
20…注入孔ソケット
20a…雄ねじ
20b…雌ねじ
21…フランジ
22…大型ナット
23…突起
24…ゴムパッキン
25…ゴムパッキン
26…ワッシャー
27…Oリングゴム
28…突起付きゴムパッド
29…ワッシャー
30…プラグ
31…係止板
40…丸鋼ホルダー
41…ホルダー固定部材
41a…スライド孔
42…ホルダー固定部材
42a…雌ねじ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削されたトンネル内で円周方向に連結してリングを構成するセグメント本体の外周側に設けられた凹部内に、グラウトの充填により膨張し、地山に密着してシールを行う袋体を収納してなる袋付きセグメントにおいて、
袋体の縫製時に、セグメント本体の凹部内の底面に敷設できるような大きさに袋体を折り畳み、水溶性の糸で型崩れしないように縫い合わせて偏平な袋体とし、この偏平袋体をセグメント本体の凹部内の底面に敷設し、袋体のグラウト注入孔位置の固定装置と袋体の両端部の固定装置によりセグメント本体に固定し、この偏平袋体の上に凹部の蓋となる防護板を設けて構成されていることを特徴とする袋付きセグメント。
【請求項2】
請求項1に記載の袋付きセグメントにおいて、袋体のグラウト注入孔位置の固定装置は、袋体の注入孔およびセグメント本体のスキンプレートの注入孔にセグメント本体の外周側から挿入されるフランジ付きの注入孔ソケットと、この注入孔ソケットの雄ねじにねじ込まれ、注入孔ソケットのフランジとでパッキンを介しスキンプレートおよび袋体を挟持するナットから構成されていることを特徴とする袋付きセグメント。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の袋付きセグメントにおいて、防護板は、成型された軟質と硬質の2種類の合成樹脂板を用い、軟質合成樹脂板を袋体の上に固定し、この上に硬質合成樹脂板を接着材等で固定して構成されていることを特徴とする袋付きセグメント。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の袋付きセグメントにおいて、袋体の両端部の固定装置は、袋体端部の袖を通し、両端部が袖から突出するように取付けられた棒材からなるホルダーと、セグメント本体のスキンプレート上に設けられ、前記ホルダーの一端部が挿入されるスライド孔を有するホルダー固定部材と、セグメント本体のスキンプレート上に設けられ、前記ホルダーの他端部が螺着される雌ねじ孔を有するホルダー固定部材からなり、ホルダーの一端部を前記スライド孔に挿入した後、ホルダーの他端部を前記雌ねじ孔に螺入できるように構成されていることを特徴とする袋付きセグメント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−226057(P2006−226057A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43944(P2005−43944)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000179915)ジェコス株式会社 (27)
【出願人】(591041196)旭化成ジオテック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】