説明

袋状おくるみ

【課題】乳児の首を支えて安定させることができる袋状おくるみを課題とする。
【解決手段】袋状おくるみ1は、乳児の頭部及び首部を除く全身を収容するための袋体2を有し、袋体2の上部に、乳児の頭部を露出させるための開口部14を形成し、この開口部14を画定する開口縁部16に、乳児の首部を支えるためのまくら部22を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳児用のおくるみに関するものである。
【背景技術】
【0002】
市販されている一般的なおくるみは、正方形又は長方形の一枚布からなるものであり、乳児を包み込むようにして使用される。この他にも、様々なタイプのおくるみが提案されており、例えば、特許文献1では、乳児の頭部を温度調節できるように、使用時に乳児の頭部を囲む布部分を収縮させたり、拡げたりできるようにしている。
【0003】
また、特許文献2では、おくるみを予め袋状に形成しておき、その前身頃に乳児を出し入れするためのファスナーを設け、袋状のおくみの上部に乳児の頭部を露出させる開口部を形成している。そして、袋状のおくるみの底部を閉塞しておくことで、乳児を抱いたときに乳児がおくるみから抜け落ちないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−68584号公報
【特許文献2】特開2006−124873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような特許文献1及び2に記載のおくるみでは、乳児の首部の安定性については考慮されていない。このため、乳児を寝かしておくときに、別途、まくらを用意する必要があるなど、改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、乳児の首を支えて安定させることができる袋状おくるみを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の袋状おくるみは、乳児の頭部及び首部を除く全身を収容するための袋体を有し、袋体の上部には、乳児の頭部を露出させるための開口部が形成され、この開口部を画定する開口縁部には、乳児の首部を支えるためのまくら部が設けられているものである。
【0008】
本発明によれば、使用時に、乳児の体が袋体内に収容されて覆われる一方、乳児の頭部が袋体上部の開口部から露出し、且つ、乳児の首部がまくら部によって支えられることになる。このため、乳児を寝かせておく際に、別途まくらを用意しなくとも、一つの袋状おくるみによって、乳児の首部を支えて安定させることができる。また、まくら部を開口縁部に設けた構成であるので、乳児の頭部を露出させるための開口部を有効に利用して、まくら部を設けることができる。
【0009】
好ましくは、開口縁部には、開口部の大きさを調節する調節部材が設けられており、まくら部と調節部材とは、互いに異なる位置で開口縁部に内蔵されているとよい。
【0010】
この構成によれば、開口部の大きさを加減することができるので、授乳時などにおいて、乳児の頭部の露出量を簡単に調整することができる。また、まくら部と調節部材とを開口縁部に内蔵することで、これらが乳児の口に入ることを防止することができる。さらに、調節部材はまくら部とは異なる位置で開口縁部に内蔵されるため、開口部の有効利用を図りながら、開口縁部に調節部材を簡単に設けることができる。
【0011】
好ましくは、袋状おくるみは、乳児の頭部を支えるためのヘッド部を更に有し、ヘッド部は、開口縁部から上方に延在するように設けられるとよい。
【0012】
この構成によれば、使用時に、乳児の頭部をヘッド部で保護することができる。これにより、袋状おくるみに入れた乳児を寝かせておいておく際に、洗面室など、様々な場所におき易くなる。
【0013】
好ましくは、袋状おくるみは、袋体の左右両側部における部分のうち、少なくとも乳児の胸部に対応する上下方向の位置にある部分を前方に折り返した位置で保持するための保持手段を、さらに有しているとよい。
【0014】
この構成によれば、袋体の左右両側部を折り返した位置で保持した場合、袋体内の左右両脇における空間が小さくなると共に、折り返した部分が元の位置に戻るのが抑制される。これにより、袋状おくるみに入れた乳児を寝かせた場合、乳児の手がバタバタと動くのが抑制されるので、乳児を安定させた状態で寝かしておくことができる。
【0015】
好ましくは、袋体は、吸湿性を有する布地からなり、少なくとも左右の両側部について袋縫いされているとよい。
【0016】
この構成によれば、袋縫いされた部分には縫い目が出ないので、乳児の肌にとってやさしい縫製となる。また、乳児の汗を袋体で適切に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る袋状おくるみの正面図である。
【図2】図1の袋状おくるみの背面図である。
【図3】図1の袋状おくるみについて、袋体の左右両側部を折り返して保持した状態を示す正面図である。
【図4】図1のIV−IV線で切断した断面図である。
【図5】図1の袋状おくるみの使用状態を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る袋状おくるみの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る袋状おくるみについて説明する。本明細書において袋状おくるみの各部位に関連して用いる前後上下等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0019】
図1、図2及び4に示すように、袋状おくるみ1は、上部が開口した袋体2を有する。袋体2は、一枚又は複数枚の布地を適宜の位置で縫うことで作られる。本実施形態では、一枚の布地を袋体2の下部4に相当する位置で折り返すことで、二つ折りにし、袋体2の左右両側部6a,6bを袋縫いすると共に、これに連続するように下部4の一部4a,4bを袋縫いすることで袋体2が作られている。このようにして作られた袋体2は、左右の両側部6a,6b及び下部4が閉じており、全体として、乳児の頭部及び首部を除く全身を収容するための空間3を内部に構成している。
【0020】
袋体2に使用する布地は、洗濯可能で乳児の肌にやさしいものであれば各種のものを用いることができるが、耐アレルギー性や吸湿性を有することが好ましい。吸湿性があれば、乳児の汗を吸収できるばかりか、入浴後の体についている水滴を吸収できる。この種の吸湿性を有する好ましい布地としては、例えば、フリース地のほか、バスタオルに代表されるタオル地、マイクロファイバーが挙げられる。なお、布地は、季節や用途に応じたものを用いたり、表生地に風を通さない素材を用いたりすることもできる。
【0021】
袋体2の前身頃8には、ポケット10が縫い付けられている。ポケット10の位置及びサイズは、任意であり、ここでは小物を入れることができる程度のサイズで構成されている。前身頃8には、デザイン性を高めるために、ボタンやキャラクターグッズなどの装飾品を縫い付けることもできる。一方、袋体2の後身頃12には、ポケットなどは縫いつけられておらず、乳児の背中に違和感を与えないような配慮がなされている。
【0022】
袋体2の上部には、乳児の頭部を露出させるための開口部14が形成されている。開口部14は、乳児の体を袋体2内の空間3に出し入れできる大きさを有している。開口部14を画定する開口縁部16は、袋体2の内部と外部との境界において、環状に延在している。開口縁部16には、前身頃8側の中心位置に二つのボタン18a,18bが取り付けられている。
【0023】
図1及び図5に示すよだれかけ20には、二つのボタン穴21a,21bがあけられている。このボタン穴21a,21bにボタン18a,18bを通してかけることで、よだれかけ20が開口縁部16に取り外し可能に取り付けられる。よだれかけ20は、角を丸くした正方形の布地からなり、その丸くした上下の角部が袋体2の中心線上に位置するように、45度傾けた状態で開口縁部16に取り付けられる。このため、図5に示す如くの取付け状態では、よだれかけ20が開口縁部16を上下に跨いで延在することになり、開口縁部16よりも上側に位置するよだれかけ20の上部20aによって、乳児のよだれが確実性良く受け止められるようになっている。ただし、よだれかけ20の上部20aは、乳児の口にかからない。
【0024】
なお、よだれかけ20は、マジックテープ(登録商標)など、他の手段を用いて袋体2に取り付けてもよく、その場合にも着脱可能となるように取り付けることが好ましい。着脱可能とすることで、袋体2とは別に、よだれかけ20のみを洗濯することができるからである。また、よだれかけ20の形状や取付けの向きなどは上記に限定されるものではなく、例えば、図6に示すように、45度傾けることなく正方形のよだれかけ20を開口縁部16に取り付けてもよい。
【0025】
図1,2及び4に示すように、開口縁部16には、まくら部22と調整ゴム24とが互いに異なる位置に設けられている。具体的には、まくら部22は、開口縁部16の後身頃12側に設けられ、調整ゴム24は、まくら部22が設けられていない位置、例えば、まくら部22の左右両側の位置から前身頃8側にかけた位置に設けられている。
【0026】
ここで、開口縁部16は、袋体2を構成する上記した一枚の布地を、袋体2の上部に相当する位置で数cmほど内側に折り返し、この折り返した部分が閉じた筒部(袋状の部位)となるように、布地の表地と裏地とを縫うことで構成されている(図4参照)。開口縁部16における筒部の内部が、まくら部22と調整ゴム24とを入れるための空間となっており、まくら部22と調整ゴム24とは、開口縁部16に内蔵されることで設けられている。
【0027】
また、まくら部22と調整ゴム24とは、互いに干渉しないように、開口縁部16において両者の領域が縫着線によって区画されている。具体的には、図1及び図2に示すように、まくら部22が存在する領域は、開口縁部16の後身頃12側を上下方向に縫った左右の縫着線26a,26bの内側となる。一方、調整ゴム24が存在する領域は、この縫着線26a,26の外側であり、前身頃8側の一部又は全部にかけた位置となる。
【0028】
まくら部22は、乳児の首部を支えるためものである。まくら部22は、開口縁部16の筒部内にセットされ、乳児の首部を支えるのに適した膨らみを開口縁部16に持たせている。別の観点で換言すると、まくら部22は、袋体2の大部分よりも厚みを有しており、袋体2を構成する後身頃12の部分よりも前後の各方向に突出するように、開口縁部16に内蔵されている。
【0029】
まくら部22の厚み、高さ、幅、形状及び素材などの性状は、適宜設計することが可能である。好ましい一例を挙げると、まくら部22の厚みは約2cmであり、高さは約2〜3cmであり、幅は約20cmである。また、形状については、円形の断面形状とすることもできるが、楕円形(長円形、トラック形状などを含む。)の断面形状を採用し、その長手方向が上下方向となるように、開口縁部16内にセットすることが好ましい。もっとも、まくら部22の厚み、高さ、幅及び形状は、まくら部22に使用する素材との関係をも考慮して決定されるべきものであり、上記の好ましい一例は、まくら部22の素材として綿を用いた場合に好適となる。一方で、より低反発の素材(例えばウレタン)などを用いる場合には、綿の素材の場合よりも高さや厚みを大きくすることが好ましい。
【0030】
調整ゴム24は、開口部14の大きさを調節する調節部材である。調整ゴム24は、例えば平ゴムからなり、自身が伸縮することにより、開口部14の大きさを調節する。ここでは、平ゴムからなる調整ゴム24は、自然状態で(袋状おくるみ1の不使用時に)、開口部14が所定の縮んだ状態の大きさに維持されるように設けられている。このため、自然状態では、調整ゴム24が存在する開口縁部16の部位は、調整ゴム24によって皺がより、縮んでいる。この縮んだ状態から開口縁部16を外側に引っ張ることで、調整ゴム24の弾性力に抗して、開口部14の大きさが拡がることになる。一方で、拡げた開口部14の大きさを縮めるには、開口縁部16を引っ張ることをやめればよい。そうすることで、調整ゴム24の復元力により、開口部14が元の状態(所定の縮んだ状態)の大きさに戻ることになる。
【0031】
ここで、調整ゴム24が調節できる開口部14の大きさの範囲に関して説明すると、その下限(所定の縮んだ状態の大きさ)は、開口縁部16が乳児の首部を圧迫しない程度であればよい。一方、開口部14の大きさの上限は、上記した袋体2の縫製を考慮すると、左右方向については、袋体2の左右両側部6a,6bを縫っている縫い目となるが、これを超える位置とすることも可能である。
【0032】
ヘッド部30は、乳児の頭部を支えるためのものであり、開口縁部16から上方に延在している。ヘッド部30は、袋体2の布地と同じ布地で構成することもできるが、異なる布地を用いたり、二以上の重ねた布地を用いたりすることも可能である。また、ヘッド部30は、開口縁部16の上端に縫い付けることもできるし、開口縁部16に取り外し可能に設けることも可能である。取り外し可能とするには、マジックテープ(登録商標)やボタンなどを用いることができる。ただし、ボタンの場合には乳児の頭部等に違和感を与えるおそれがあるので、マジックテープ(登録商標)を用いた方が好ましい。この場合には、ヘッド部30の下部の前身頃側と、開口縁部16のまくら部22が存在する後身頃側とが着脱可能となるように、両者にマジックテープ(登録商標)を設ければよい。
【0033】
ここで、ヘッド部30の平面形状は、例えば図1に示す如くの逆台形とすることもできるし、正方形、長方形、ハート形などその他の形状を採用することも可能である。ヘッド部30の厚みは、袋体2の大部分の厚みと同程度であればよいが、まくら部22の厚みよりも小さいことが好ましい。また、ヘッド部30の大きさは、ヘッド部の30の端部が乳児の口部に回り込まないような大きさであることが好ましい。したがって、ヘッド部30は、フードや帽子としては機能しない程度の大きさであることが好ましい。なお、図5では、乳児の頭部がヘッド部30に支えられていることを明りょうに示すことのみを企図して、ヘッド部30の大きさが図1〜4における大きさよりも大きく表されている。
【0034】
図1〜3に示すように、袋体2の左右両側部6a,6bには、それぞれ、腕部32a,32bが縫い付けられている。この縫い付け位置は、乳児の胸部に対応する上下方向の位置となっている。腕部32a,32bは、デザイン性を考慮して、乳児の腕を模した平面形状を有しているが、このような形状に限られない。腕部32a,32bは、それぞれ、袋体2を構成するために左右両側部6a,6bを縫っている縫い目(脇線)から外方に延在しており、腕部32a,32bにおける左右両側部6a,6b側の端部は、閉じられている。すなわち、袋体2の中に入った乳児の手は、腕部32a,32bの中には入らないようになっている。
【0035】
腕部32a,32bは、互いの先端部を着脱できるように、それぞれ、係止部34a,34bが設けられている。具体的には、腕部32aの先端部の背面に係止部34aが設けられ、腕部32bの先端部の正面に係止部34bが設けられている。そして、図3に示すように、袋体2の前身頃8側にて、腕部32a,32bの先端部同士を交差させた状態で、係止部34a,34bを互いに着脱可能に係止できるようになっている。
【0036】
この係止した状態では、袋体2の左右両側部6a,6bが前方に折り返され、その折り返した位置で保持されることになる。このとき、袋体2の左右両側部6a,6bにおける部分のうち、腕部32a,32bが縫い付けられている部位が最も内側に絞られるように折り返されると共に、この部位に連続する上下の部位も僅かであるが内側に絞られるように折り返される。このような腕部32a,32b及び係止部34a,34bによって、後述する特許請求の範囲に記載の「保持手段」が構成されており、乳児の手がバタバタと動くのが抑制されるようになっている。
【0037】
なお、腕部32a,32bの縫い付け位置は、上記の位置に限るものではないが、乳児の手が安定する位置とする必要がある。また、係止部34a,34bを左右に一つずつ設けるのではなく、それぞれ、複数を腕部32a,32bに設けてもよい。こうすることで、係止ポイント(折り返した左右両側部6a,6bを保持するポイント)を変えることができるため、サイズへの適応性が高まることになる。
【0038】
図5に示すように、乳児を入れて寝かせたときの袋状おくるみ1の使用状態では、乳児の全身(ただし、頭部及び首部を除く。)が袋体2の内部に収容され、乳児の頭部が開口部14から露出してヘッド部30に下側から支えられる。また、乳児の首部がまくら部22に下側から支えられる。
【0039】
以上説明した本実施形態の袋状おくるみ1の作用効果を説明する。
【0040】
まず、まくら部22が設けられているため、乳児の首を支えて安定させることができる。これにより、乳児を寝かせておく際に、袋状おくるみ1とは別個のまくらを用意する必要がなく、また、乳児の頭部がいわゆるぜっぺき頭となることを抑制することができる。さらに、まくら部22を開口縁部16に内蔵したので、袋体2に乳児を出し入れするのに必要な開口部14を有効に利用して、まくら部22を設けることができると共に、まくら部22が誤って乳児の口に入るようなことを防止することもできる。
【0041】
加えて、まくら部22が袋体2の大部分よりも膨らんでいるため、使用者にまくら部22の存在を視覚的に意識させることができ、袋状おくるみ1が意図する位置に乳児をセットすることを促すことができる。また、まくら部22は、調整ゴム24の伸縮による影響を受けないように開口縁部16に内蔵されているため、調整ゴム24の伸縮によってまくら部22の位置がずれるようなことがない。このため、まくら部22の機能を犠牲にすることなく、調整ゴム24を設けて開口部14の大きさを調整することができる。
【0042】
さらに、調整ゴム24が入っている開口縁部16の部位には皺がよっているため、使用者に、調整ゴム24の存在ひいては開口部14の大きさが調整可能であることを視覚的に意識させることができる。また開口部14の大きさを加減することができので、例えば授乳時に、乳児の頭部の露出量を増やすことが簡単にできるようになる。さらに、調整ゴム24によって、開口部14の大きさが所定の縮んだ状態に維持されることから、寝かしている乳児が動いたとしても、袋体2内の乳児の体が開口部14から容易に抜け出手しまうようなことが抑制される。
【0043】
また、ヘッド部30が設けられているため、寝かせた乳児の頭部を支えて保護することができる。これにより、乳児を寝かせる場所を制約されずに済む。例えば、フローリングの上はもとより、洗面室などの床の上であっても、乳児の頭部の衛生面をそれほど気にかけることなく、袋状おくるみ1に入れた乳児を寝かせておくことが可能となる。これにより、母親一人でも、乳児と入浴することがスムーズになる。
【0044】
さらに、使用時に係止部34a,34bを係止すれば、袋体2内の乳児の手がバタバタと動くのが抑制されるので、乳児を安定させた状態で寝かしておくことができる。とりわけ、睡眠中の乳児はしばしば手を首よりもあげて寝るが、このような手の動きを抑制することができ、乳児が自身の爪で顔を引っ掻くことも防止することができる。加えて、乳児にミトンをつける必要も無い。一方で、乳児が起きているときや、授乳のときには、係止部34a,34bによる係止を解除することができ、こうすることで乳児は手を自由に動かし易くなる。なお、乳児の眠りの状態により、係止部34a,34bによる係止を解除してもよい。
【0045】
また、袋体2の縫製において袋縫いを使用しているため、袋縫いされた部分には縫い目が出ない。このため、乳児の肌にとってやさしいものとなる。また、ヨーロッパでは、一般に赤ちゃんを寝かせる時にくるんで安定させるが、袋状おくるみ1によれば、このヨーロッパの方式を取り入れることができ、成長期の一時期にとって効果的なものとなる。さらに、袋状おくるみ1によれば、別途上掛けを必要としないため、寝ている乳児の口や鼻に上掛けがかかることがなく、また、これがずれて乳児のお腹等を冷やすことも防止される。
【0046】
さらに、乳児を寝かせて使用しない場合、例えば抱っこする場合、まくら部22があることで、特に首がまだすわなっていない乳児を抱っこし易い。また、袋体2の下部4が閉塞しているため、乳児の足の保温性も確保することができる。
【0047】
さらに、袋状おくるみ1は、一般の一枚布のおくるみに比べて保温性が高いものとなるため、例えば0ヶ月〜1ヵ月半程度の乳児のための必要な衣服を簡素化することも可能となる。また、袋状おくるみ1に入れた乳児をベビーカーに乗せることも可能であり、その際に、袋状おくるみ1の部位がベビーカーの車輪に巻き込まれたりすることも抑制される。
【0048】
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る袋状おくるみ1について説明する。第1実施形態との主な相違点は、保持手段(腕部32a,32b及び係止部34a,34b)を変更したことである。なお、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
本実施形態の保持手段は、一対のリボン40a,40bで構成されている。リボン40a,40bは、上述した腕部32a,32bと同様に、袋体2の左右両側部6a,6bの脇線の近傍において、乳児の胸部に対応する上下方向の位置に縫い付けられている。ただし、リボン40a,40bは、腕部32a,32bよりも長く形成されている。
【0050】
袋体2の左右両側部6a,6bを前方に折り返した位置で保持するには、リボン40a,40bを互いに袋体2の前身頃8側で結べばよい。こうすることで、第1実施形態と同様に、袋体2の左右両側部6a,6bにおける部分のうち、リボン40a,40bが縫い付けられている部位が最も内側に折り返されると共に、この部位に連続する上下の部位も僅かであるが内側に折り返され、この状態が保持される。
【0051】
したがって、第2実施形態によっても、使用時にリボン40a,40bを結べば、袋体2内の乳児の手がバタバタと動くのが抑制されるので、乳児を安定させた状態で寝かしておくことができる。また、リボン40a,40bの結びを解けば、簡単にもとの状態に戻すことができる。さらに、リボン40a,40bの結び位置を適宜可変することができるので、左右両側部6a,6bの折り返し度合いを調整することができる。すなわち、リボン40a,40bの結び位置によって、折り返した左右両側部6a,6bを保持するポイントを変えることができる。このため、サイズへの適応性が高い。
【0052】
なお、リボン40a,40bに代えて、これと同様のひも状部材又はテープ状部材を用いることも可能である。
【0053】
<変形例>
以下、第1実施形態及び第2実施形態に係る袋状おくるみ1に適用可能な変形例について、簡単に言及する。
【0054】
まくら部22については、開口縁部16から出し入れできるようにしてもよい。まくら部22は乳児の汗で汚れ易いが、これを簡単に交換し、洗濯することが可能となる。
【0055】
また、開口部14の大きさは、調整ゴム24の位置をボタンなどで調節できるようにしてもよい。こうすることで、幅広いサイズに対応することができる。また、開口部14の大きさを調節する調節部材としては、調整ゴム24に代えて、伸縮しない紐状部材を用いることも可能である。この場合には、紐状部材の端部のみ、開口縁部16における筒状空間から露出させ、その露出量を調節することで、開口部14の大きさを調節することができる。
【0056】
さらに、乳児を袋体2に出し入れするためのアクセス開口部は、上記の開口部14に限るものではない。例えば、袋体2の前身頃8に開口部を設け、その開口部をファスナーで開閉できるようにしてもよい。こうすることで、袋体2の前身頃8から乳児を袋体2内に出し入れすることもできるようになる。もっとも、ファスナーは、乳児に接触しない又はできるだけ接触しないような位置に設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0057】
1:袋状おくるみ、2:袋体、3:空間、4:下部、8:前身頃、10:ポケット、12:後身頃、14:開口部、16:開口縁部、18a,18b:ボタン、20:よだれかけ、21a,21b:ボタン穴、22:まくら部、24:調整ゴム、26a,26b:縫着線、30:ヘッド部、32a,32b:腕部、34a,34b:係止部、40a,40b:リボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳児の頭部及び首部を除く全身を収容するための袋体を有し、
前記袋体の上部には、乳児の頭部を露出させるための開口部が形成され、
前記開口部を画定する開口縁部には、乳児の首部を支えるためのまくら部が設けられている、袋状おくるみ。
【請求項2】
前記開口縁部には、前記開口部の大きさを調節する調節部材が設けられており、
前記まくら部と前記調節部材とは、互いに異なる位置で前記開口縁部に内蔵されている、請求項1に記載の袋状おくるみ。
【請求項3】
乳児の頭部を支えるためのヘッド部を更に有し、
前記ヘッド部は、前記開口縁部から上方に延在するように設けられている、請求項1又は2に記載の袋状おくるみ。
【請求項4】
前記袋体の左右両側部における部分のうち、少なくとも乳児の胸部に対応する上下方向の位置にある部分を前方に折り返した位置で保持するための保持手段を、さらに有している、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の袋状おくるみ。
【請求項5】
前記袋体は、吸湿性を有する布地からなり、少なくとも左右の両側部について袋縫いされている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の袋状おくるみ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102420(P2012−102420A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250042(P2010−250042)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(510295837)
【Fターム(参考)】