説明

袋状型枠及びこれを用いた太陽電池パネルの設置工法

【課題】作業が簡単であり、かつメンテナンスに優れる平面又は傾斜面への太陽電池パネルの設置工法の提供。
【解決手段】平面又は傾斜面に太陽電池パネルを設置する工法であって、閉鎖空間を有する所定厚の側面、表面、及び裏面をもつ略平面状の袋状型枠であって、表面と該裏面の間に貫通しかつ側面により画された複数のスリットが設けられた袋状型枠並びに所定面積の平板に対して略垂直に袋状型枠の側面の厚みよりも長い棒状部材を固定した複数の支持治具を用意する工程;平面又は傾斜面に支持治具の棒状部材をスリットに貫通させて仮固定した袋状型枠を敷設する工程;袋状型枠の内部に未硬化の土木硬化材を注入して硬化させる工程;スリットから突出した棒状部材に孔の開いたプレートを通し支持治具の平板とプレートで袋状型枠を挟み込むように固定する工程、及び平板上部の複数の棒状部材に太陽電池パネルを固定する工程を含む工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業が簡単であり、かつ、メンテナンスに優れる平面又は傾斜面への太陽電池パネルの設置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、クリーンエネルギーとして太陽電池パネルの普及が図られている。現在、太陽電池パネルは住宅等の建築物の屋根に設置されることが多く、また、都市部においては、建築物の屋根、外壁以外の設置場所を探すことは容易ではない。他方、非都市部においては、広大な土地等に架台を組んで太陽電池パネルを多数並べた大規模な装置も見られるものの、国土の狭い我が国においてこのような広大な土地を確保することには困難が予想され。このように、都市部において、また非都市部においても、太陽電池パネルを設置する場所を見つけることは容易なことではない。
【0003】
かかる状況下、太陽電池パネルの設置場所として、道路建設等に関連して既に造成された平面部、特に法面部(傾斜面)を有効利用することが検討されてる。一般に、法面部とは、建築や土木で人工的に造られる傾斜面を意味し、その面構成としては、コンクリート、ブロック、岩、石、土等が挙げられる。
【0004】
以下の特許文献1には、既設又は新設の法面部に太陽エネルギー変換装置を設置して形成する法面構造において、法面部上に直接又は間接的に支持部材を突出して設け、太陽エネルギー変換装置は、装置基体と、装置基体の側縁又は裏面に設けられた取付部材からなり、支持部材に太陽エネルギー変換装置の取付部材を取付ける法面構造が開示されている。特許文献1には、当該支持部材は、支持部を設けたプレート、レール部材等の連続材であってもよいし、プレートは、レール材を短片状にしたピース材であってもよいし、あるいはビス、アンカー等であってもよいと記載されており、具体的には、コンクリート製の法面部にアンカー等の支持部材を埋設することが開示されている。すなわち、特許文献1には、具体的には、太陽電池パネルの設置に際して、既設のコンクリート法面部に、支持部材としてアンカー等を埋設することが記載されているに過ぎない。
【0005】
また、以下の特許文献2には、地山等の法面上に設置された受圧板、擁壁、土留め部材、法枠又はこれに類似するモルタル・コンクリートから成るセメント構築物に対して、アンカー等を利用して架台を取付け、この架台上にボルトや接着剤等の接合用部材を介在して、太陽電池又は太陽熱集熱器等の発電蓄熱体の少なくとも一方を取付け固定したことを特徴とする太陽光熱利用発電併給装置が開示されている。すなわち、特許文献2にも、太陽電池パネルの設置に際して、既設のコンクリート法面部に、支持部材としてアンカー等を埋設することが記載されているに過ぎない。
【0006】
一方、コンクリート等で造成されていない法面部に太陽電池パネルを取り付ける場合には、一般に、法面に杭を打ち、かかる杭に架台を固定する、いわゆる「杭基礎工法」が使用されている。法面部が杭を支持するメカニズムは、地中に打ち込まれた杭の上下両方向の力に対し発生するせん断抵抗力や内圧抵抗力に因る。杭は、地盤に依存するが、一般に、小型打設機、重機打設機を使用して地中に打ち込まれ、また、N値が大きい程、また急勾配である程、仮設足場の設置が必要となる場合が多い。また、杭基礎工法においては、施工可能な地盤としては、N値が20以上の砂質又は粘性地盤で大きな玉石等を含まない地盤、砂礫地盤で礫径の小さな地盤、又は大きな礫径を含む砂礫地盤であって先行掘削及びセメントミルクの注入が可能な地盤に限定される。さらに、杭基礎工法は、地盤にかかる荷重が小さく、施工面積がコンパクトであり、景観に優れているという特徴を有するものの、コンクリート等で法面部表面を覆うものではないので、雑草が生えて太陽電池パネルを被い発電効率を低下させるという問題があることに加え、そもそも地盤が悪いために該工法を適用することができない場合がある。
図6に、杭基礎工法で傾斜面に設置した太陽電池パネルの写真を示す。
【0007】
また、以下の特許文献3には、太陽電池パネル一体型コンクリートマットに係る発明が開示されている。かかる発明においては、山腹などの傾斜地に道路を建設する場合に、道路に沿った斜面は、その崩落を防ぐために、また傾斜地に宅地を造成した場合にも、傾斜が急な部分の崩落を防止するために、コンクリートマット(合成繊維からなる筒を網状又は格子状にしたものに、コンクリートやモルタルを注入して固めるもの)を利用して、斜面の崩落保護と太陽電池パネルの設置が同時に実施される。ここで、太陽電池パネルの背面から突設された支柱が、コンクリートマットの管の交差連結部(交点)に充填されたコンクリート中に埋設され、固められる。特許文献3に記載された発明においては、斜面の崩落保護と太陽電池パネルの設置が同時にできるものの、格子状の管の交点に穴を開ける必要があるため、未硬化のコンクリートやモルタルが流れ出す虞があり、また、コンクリートマットが格子状であるため、格子(網の間)から雑草が生えて太陽電池パネルに覆いかぶさり、発電効率の低下を防止するために、定期的な雑草駆除が必要となる。
【0008】
このように、傾斜面に太陽電池パネルを設置するに際しては、設置する傾斜面の状態に応じて、種々の設置工法が知られているものの、各々前記した問題を伴っている。
【0009】
ところで、従来より、水路や斜面、法面を含む保護すべき部位に、表裏面を布によって構成した布製の袋状型枠を設置すると共に、この布製の袋状型枠にコンクリートやモルタル、砂等を充填し、充填されたコンクリートやモルタルが硬化し、あるいは砂が密着することで、これらの水路の護岸や、斜面あるいは法面を保護することが行われている(例えば、以下の特許文献4を参照のこと)。このような袋状型枠はシート材料を袋状にして密閉空間を有しており、シート材料は、ゴムシートを含む可撓性を有する合成樹脂製のものや、織布、不織布を含む繊維製のシートであることができ、繊維製シートを用いた場合には、水分を含有する流動性の水硬性材料、例えばコンクリートを充填したとき、充填に伴って含有水が外部に浸出することが可能となり、速やかな硬化が実現される。このような袋状型枠自体は従来から使用されているが、これを太陽電池パネルの設置に利用した例は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−171671号公報
【特許文献2】特許第2967326号公報
【特許文献3】特開平8−269972号公報
【特許文献4】特開2009−287306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、平面又は傾斜面に太陽電池パネルを設置するための新規工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、スリットを設けた袋状型枠を利用することにより、平面又は傾斜面の保護と太陽電池パネルの設置を、簡単に、かつ、低コストで実施することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
【0013】
[1]平面又は傾斜面に太陽電池パネルを設置する工法であって、以下の工程:
内部に注入された未硬化の土木硬化材を保持することができる閉鎖空間を有する所定厚の側面、表面、及び裏面をもつ略平面状の袋状型枠であって、該表面と該裏面の間に貫通し、かつ、該側面により画された複数のスリットが設けられた該袋状型枠、並びに所定面積の平板に対して略垂直に該袋状型枠の該側面の長さ(厚み)よりも長い棒状部材を固定した複数の支持治具を用意する工程;
平面又は傾斜面に、該支持治具を該平板が該傾斜地に接し、かつ、該棒状部材が上に向くように複数配置し、該支持治具の上に、該袋状型枠を、該各スリットに該支持治具の該棒状部材が貫通するように敷設するか、又は予め該支持治具の該棒状部材を該スリットに貫通させて仮固定した該袋状型枠を敷設する工程;
該袋状型枠の内部に未硬化の土木硬化材を注入して、硬化させる工程、ここで、土木硬化材の硬化に伴い、該袋状型枠が膨らみ該スリットに貫通する該棒状部材が該スリットを画する該側面により挟まれて拘束される;
該袋状型枠の該スリットから突出した該棒状部材に、孔の開いたプレートを通し、該支持治具の該平板と該プレートで該袋状型枠を挟み込むように、固定する工程、及び
該平板上部の複数の該棒状部材に、必要によりラックを介して太陽電池パネルを固定する工程;
を含む工法。
【0014】
[2]前記棒状部材が、その一部又は全長にわたってねじ山を有する棒状部材であり、該棒状部材と前記プレートの固定手段がナットであり、そして該棒状部材と前記ラックとを、長ナットを介して固定する、前記[1]に記載の工法。
【0015】
[3]前記袋状型枠の側面の長さ(厚み)が50〜300mmであり、該袋状型枠に、前記表面と前記裏面の距離が該厚みを保持するように40〜250mm間隔で該両面間を拘束する40〜300mmの長さの絞りロープが格子状に設けられている、前記[1]又は[2]に記載の工法。
【0016】
[4]前記長ナットによりラック又は太陽電池パネルの不陸を調整する、前記[2]又は[3]に記載の工法。
【0017】
[5]前記袋状型枠に、太陽電池パネルの電気コード用の鞘管を収容することができる、該袋状型枠の側面により又は表面の陥凹により画される長溝が設けられ、ここで、土木硬化材の硬化に伴い、該袋状型枠が膨らみ該長溝に収容された該鞘管が該長溝を画する該側面又は表面の陥凹部により挟まれて拘束される、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の工法。
【0018】
[6]内部に注入された未硬化の土木硬化材を保持することができる閉鎖空間を有する所定厚の側面、表面、及び裏面をもつ略平面状の袋状型枠であって、該表面と該裏面の間に貫通し、かつ、該側面により画された複数のスリットが設けられており、該袋状型枠の該側面の長さ(厚み)が50〜300mmであり、該袋状型枠に、前記表面と前記裏面の距離が該厚みを保持するように40〜250mm間隔で該両面間を拘束する40〜300mmの長さの絞りロープが格子状に設けられており、該袋状型枠の内部に未硬化の土木硬化材を注入して、硬化させると、土木硬化材の硬化に伴い、該袋状型枠が膨らみ該スリットに貫通させた棒状部材が存在する場合、該棒状部材は、該スリットを画する側面により挟まれて拘束される、太陽電池パネルを平面又は傾斜面に設置するために適した該袋状型枠。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、杭基礎工法によらず、粘性土、砂質土、礫質土、岩等の比較的安定した傾斜面の地盤であれば適用可能であり、太陽電池、架台などの必要支持力を袋状型枠全体の重量による地盤との摩擦により発生させる。したがって、本発明に係る工法においては、打設機を傾斜面で操作する必要がなく、杭基礎工法と比較してその工期も短い。本発明に係る工法においては、袋状型枠に土木硬化材を注入する必要あるが、打設用ポンプ車は工事を行う傾斜面付近の駐車可能な場所から配管により土木硬化材を注入することができるので、安全に作業することができる。また、本発明に係る工法においては、格子状のコンクリートマットではなく、マット状の袋状型枠を用いるため、太陽電池パネルをその上に設置した場合に、太陽電池パネルの背面全体が袋状型枠で覆われ、雨水などによる斜面の浸食の虞がなく、また、雑草の生長により太陽電池パネルが覆われることを防止するための定期的な雑草駆除等のメンテナンス費用が低減される。さらに、本発明に係る工法においては、特許文献3に記載された発明におけるように袋状型枠自体に穴を開けないので、施工時に注入した土木硬化材が漏れ出す虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】袋状型枠の概略図。
【図2】袋状型枠のスリット内に支持治具の棒状部材を挿入した状態を表す概略図。
【図3】支持治具の概略図。
【図4】袋状型枠のスリットから突出した棒状部材に、孔の開いたプレートを通し、支持治具の平板とプレートで袋状型枠を挟み込むように、ナットで固定し、ナット上部の棒状部材に長ナットを介してラックを固定しこれに太陽電池パネルを固定した状態を示す断面図。
【図5】袋状型枠に、太陽電池パネルの電気コード用の鞘管を収容した、袋状型枠の側面により又は表面の陥凹により画される長溝を表す概略図。
【図6】杭基礎工法で傾斜面に設置した太陽電池パネルの概要を示す図面に代わる写真。
【図7】支持治具の概要を示す図面に代わる写真。
【図8】袋状型枠のスリットに支持治具を貫通させた状態(土木硬化材の注入前)を表す図面に代わる写真。
【図9】袋状型枠のスリットに支持治具を貫通させた状態(土木硬化材注入硬化後)を表す図面に代わる写真。
【図10】図9においてスリットが支持治具の棒状部材を挟み込んだ状態を示す図面に代わる写真。
【図11】袋状型枠スリットから突出した棒状部材に孔の開いたプレートを通した状態を示す図面に代わる写真。
【図12】支持治具の棒状部材にラックを設置した状態を示す図面に代わる写真。
【図13】ラックに太陽電池パネルを取付けた状態を示す図面に代わる写真。
【図14】本発明に係る工法により傾斜面に設置された袋状型枠と太陽電池パネルの全体の写真。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、平面又は傾斜面に太陽電池パネル23を設置する工法であって、以下の工程:
内部に注入された未硬化の土木硬化材を保持することができる閉鎖空間を有する所定厚の側面15、表面11、及び裏面12をもつ略平面状の袋状型枠10であって、該表面11と該裏面12の間に貫通し、かつ、該側面15により画された複数のスリット14が設けられた袋状型枠10、並びに所定面積の平板18に対して略垂直に該袋状型枠10の側面15の長さ(厚み)よりも長い棒状部材17を固定した複数の支持治具16を用意する工程;
平面又は傾斜面に、該支持治具16を該平板18が該傾斜地に接し、かつ、該棒状部材17が上に向くように複数配置し、該支持治具16の上に、該袋状型枠10を、該各スリット14に該支持治具16の棒状部材17が貫通するように敷設するか、又は予め該支持治具16の棒状部材17を該スリット14に貫通させて仮固定した該袋状型枠10を敷設する工程;
該袋状型枠10の内部に未硬化の土木硬化材を注入して、硬化させる工程、
該袋状型枠10の該スリット14から突出した該棒状部材17に、孔の開いたプレート19を通し、該支持治具16の該平板18と該プレート19で該袋状型枠10を挟み込むように、固定する工程、及び
該平板18上部の複数の該棒状部材17に、必要によりラック22を介して太陽電池パネル23を固定する工程;
を含む工法に関する。
【0022】
本発明における袋状型枠工法とは、マット状に加工された高強度合成繊維製の袋状型枠に、流動性の土木硬化材をポンプで注入する硬化体成型法であり、袋状型枠が透水性を有するため、混練水の余剰分は注入によって絞り出され、水・セメント比(W/C)が低下し、硬化時間が早められ、高密度・高強度の硬化体が構築される。土木硬化材とは、土木分野で用いられる、水硬性セメントを含有する硬化性材料をいい、具体的には、コンクリートやモルタル、浚渫固化土等を含む。
【0023】
袋状型枠は、設計図に基づき予め工場で製作された袋状型枠に土木硬化材を注入するため、従来の現場打ちコンクリートやプレキャストブロック工に比べ、少人数・短時間で施工ができ;水中施工が可能なので、切替工事・止水工事が不要となり、工期の短縮・経済性にも優れ;勾配の異なった複雑な斜面にも良く馴染み、均一な厚みが得られ;ポンプによる注入のため、斜面・平坦部にかかわらず広範囲の面積を一度に押さえることができ;袋状型枠が軽量なので安全な施工ができ、運搬・保管が容易であり;さらに水・セメント比が著しく低下するので、特に初期強度が高く、養生期間が短縮される等の利点を有している。これらの利点は、本発明に係る工法においても、等しく該当する。
【0024】
図1と図2に示すように、本発明に係る袋状型枠10は、内部に注入された未硬化の土木硬化材を保持することができる閉鎖空間を有する所定厚の側面15、表面11、及び裏面12をもつ略平面状の該袋状型枠10であって、該表面11と該裏面12の間に貫通し、かつ、該側面15により画された複数のスリット14が設けられている。かかる複数の該スリット14を備えた該袋状型枠10は、設計図に基づき、予め工場で作製される。
【0025】
本発明に係る工法においては、かかる袋状型枠10の内部に未硬化の土木硬化材を注入して、硬化させる際、土木硬化材の硬化に伴い、該袋状型枠10が膨らみスリット14に貫通する支持治具の棒状部材17が、該スリット14を画する側面15により挟み込まれて、拘束される(図2中、矢印で示す)作用効果が発揮されることを特徴とする。すなわち、土木硬化材の硬化により、支持治具16が該袋状型枠10に固定され、該支持治具16と該袋状型枠10が一体化する。ここで、該袋状型枠10の閉鎖空間は維持されているので、本発明に係る工法においては、特許文献3に関して前記した問題、ずなわち、格子状の筒の交点に穴を開ける必要があるため、未硬化のコンクリートやモルタルが流れ出す虞があり、また、コンクリートマットが格子状であるため、格子(網の間)から雑草が生えて太陽電池パネルに覆いかぶさり、発電効率の低下を防止するために、定期的な雑草駆除が必要となるという問題は、生じない。
【0026】
図5に示すように、かかるスリット14の作用効果は、袋状型枠10に、太陽電池パネル23の電気コード24用の鞘管25を収容することができる該袋状型枠10の側面15により又は表面11の陥凹により画される長溝26においても発揮される。すなわち、前記したように、土木硬化材の硬化に伴い、該袋状型枠10が膨らみ該スリット14に貫通する支持治具の棒状部材17が該スリット14を画する該側面15により挟まれて拘束される作用効果が発揮されるのと同様に、土木硬化材の硬化に伴い、該袋状型枠10が膨らみ該長溝26に収容された該鞘管25が該長溝26を画する該側面15又は表面の陥凹部により挟まれて拘束される。このように、土木硬化材の硬化に伴い、支持治具16と同様に、該電気コード24用の該鞘管25も該袋状型枠10と一体化するので、これら同士を、土木硬化材の硬化後に固定する作業は必要がないばかりか、美観を有する施工が可能となる。尚、本発明においては、予め該鞘管25を該袋状型枠10内に直接挿入しておき、その後硬化材を注入して硬化させてもよい。
【0027】
本発明は、内部に注入された未硬化の土木硬化材を保持することができる閉鎖空間を有する所定厚の側面15、表面11、及び裏面12をもつ略平面状の袋状型枠10であって、該表面11と該裏面12の間に貫通し、かつ、該側面15により画された複数のスリット14が設けられており、該袋状型枠10の該側面15の長さ(厚み)が50〜300mmであり、該袋状型枠10に、前記表面11と前記裏面12の距離が該厚みを保持するように40〜250mm間隔で該両面間を拘束する40〜300mmの長さの絞りロープ13が格子状に設けられており、該袋状型枠10の内部に未硬化の土木硬化材を注入して、硬化させると、土木硬化材の硬化に伴い、該袋状型枠10が膨らみ該スリット14に貫通させた棒状部材17が存在する場合、該棒状部材17は、該スリット14を画する側面により挟まれて拘束される、太陽電池パネル23を平面又は傾斜面に設置するために適した該袋状型枠10自体にも関する(図1参照)。
【0028】
袋状型枠10の側面15の長さ(厚み)、絞りロープ13の長さと間隔は、平面又は傾斜面の形状、地盤条件、設置すべき太陽電池パネル23の大きさ・重量等に依存して適宜決定することができるが、取り扱い性等を考慮して、前記したとおりであることが好ましい。
【0029】
支持治具16の構造を、図3と図7に示す。該支持治具16の形状・材質は、使用する袋状型枠10、設置すべき太陽電池パネル23の構造等に応じて、当業者により適宜決定されることができる。例えば、該太陽電池パネル23の寿命にも依存するが、数十年間のメンテナンスを考慮して、該支持治具16の材質は、錆が生じないステンレス鋼であることが望ましい(図7参照)。
【0030】
土木硬化材の硬化により、平面又は傾斜面上で一体化した袋状型枠10と支持治具16に、太陽電池パネル23を固定する方法は、例えば、以下のとおりである。
該袋状型枠10のスリット14から突出した、その一部または全長にわたってねじ山を有するボルト状の棒状部材17に、孔の開いたプレート19を通し、該支持治具16の平板18と該プレート19で該袋状型枠10を挟み込むように、ナット20で固定し、次いで、該ナット20上部の複数の該棒状部材17に、必要により長ナット21を介して、さらに必要によりラック22を介して太陽電池パネル23を固定する。該プレート19の使用により、該袋状型枠10に該支持治具16を確実に固定できる。
【0031】
孔の開いたプレート19、ナット20、長ナット21、ラック22の構造及び位置関係を、図4に示す。これらの形状・材質は、使用する袋状型枠10、設置すべき太陽電池パネル23の構造等に応じて、当業者により適宜決定されることができる。例えば、該太陽電池パネル23の寿命にも依存するが、数十年間のメンテナンスを考慮して、これらの材質は、錆が生じないステンレス鋼であることが望ましい(図12参照)。
該長ナット21を使用することにより、該ラック22又は該太陽電池パネル23の不陸を調整することができるが、かかる該長ナット21の使用は任意である(図示せず)。
また、該太陽電池パネル23を支持する該ラック22の使用の有無も任意である。すなわち、本発明に係る工法は、平面又は斜面上に該袋状型枠10と一体化した支持治具16を簡単な作業で提供することに技術的意義を有するといえる(図12参照)。
【0032】
図8〜14により、本発明に係る平面又は傾斜面への太陽電池パネル23の設置工法の概要を説明する。
図8は、袋状型枠10のスリット14に支持治具16を貫通させた状態(土木硬化材注入前)を表す写真である。土木硬化材硬化後は、図9に示す状態となり、該スリット14部分を拡大すると、該スリット14が該支持治具16の棒状部材17を挟み込んだ状態にあることが分かる(図10参照)。該袋状型枠10の該スリット14から突出した該棒状部材17に孔の開いたプレート19を通し(図11参照)、該支持治具16の平板と該プレート19で該袋状型枠10を挟み込むように、ナット20で固定し、次いで該支持治具16の該棒状部材17にラック22を固定する(図12参照)。最後に、かかる該ラック22に太陽電池パネル23を取付ける(図13参照)。
【0033】
本発明に係る工法により平面又は傾斜面に設置された袋状型枠10と太陽電池パネル23の全体の写真を示す。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る工法は、コンクリート造成していない平面又は傾斜面への太陽電池パネル23の設置に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 袋状型枠
11 表面
12 裏面
13 絞りロープ
14 スリット
15 側面
16 支持治具
17 棒状部材
18 平板
19 プレート
20 ナット
21 長ナット
22 ラック
23 太陽電池パネル
24 電気コード
25 鞘管
26 長溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面又は傾斜面に太陽電池パネルを設置する工法であって、以下の工程:
内部に注入された未硬化の土木硬化材を保持することができる閉鎖空間を有する所定厚の側面、表面、及び裏面をもつ略平面状の袋状型枠であって、該表面と該裏面の間に貫通し、かつ、該側面により画された複数のスリットが設けられた袋状型枠、並びに所定面積の平板に対して略垂直に該袋状型枠の側面の長さ(厚み)よりも長い棒状部材を固定した複数の支持治具を用意する工程;
平面又は傾斜面に、該支持治具を該平板が該平面又は傾斜面に接し、かつ、該棒状部材が上に向くように複数配置し、該支持治具の上に、該袋状型枠を、該各スリットに該支持治具の該棒状部材が貫通するように敷設するか、又は予め該支持治具の該棒状部材を該スリットに貫通させて仮固定した該袋状型枠を敷設する工程;
該袋状型枠の内部に未硬化の土木硬化材を注入して、硬化させる工程、
該袋状型枠の該スリットから突出した該棒状部材に、孔の開いたプレートを通し、該支持治具の該平板と該プレートで該袋状型枠を挟み込むように固定する工程、及び
該平板上部の複数の該棒状部材に、必要によりラックを介して該太陽電池パネルを固定する工程;
を含む工法。
【請求項2】
前記棒状部材が、その一部又は全長にわたってねじ山を有する棒状部材であり、該棒状部材と前記プレートの固定手段がナットであり、そして前記棒状部材と前記ラックとを、長ナットを介して固定する、請求項1に記載の工法。
【請求項3】
前記袋状型枠の側面の長さ(厚み)が50〜300mmであり、該袋状型枠に、前記表面と前記裏面の距離が該厚みを保持するように40〜250mm間隔で該両面間を拘束する40〜300mmの長さの絞りロープが格子状に設けられている、請求項1又は2に記載の工法。
【請求項4】
前記長ナットによりラック又は太陽電池パネルの不陸を調整する、請求項2又は3に記載の工法。
【請求項5】
前記袋状型枠に、太陽電池パネルの電気コード用の鞘管を収容することができる、該袋状型枠の側面により又は表面の陥凹により画される長溝が設けられ、ここで、土木硬化材の硬化に伴い、該袋状型枠が膨らみ該長溝に収容された該鞘管が該長溝を画する該側面又は該表面の陥凹部により挟まれて拘束される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の工法。
【請求項6】
内部に注入された未硬化の土木硬化材を保持することができる閉鎖空間を有する所定厚の側面、表面、及び裏面をもつ略平面状の袋状型枠であって、該表面と該裏面の間に貫通し、かつ、該側面により画された複数のスリットが設けられており、該袋状型枠の該側面の長さ(厚み)が50〜300mmであり、該袋状型枠に、前記表面と前記裏面の距離が該厚みを保持するように40〜250mm間隔で該両面間を拘束する40〜300mmの長さの絞りロープが格子状に設けられており、該袋状型枠の内部に未硬化の土木硬化材を注入して、硬化させると、土木硬化材の硬化に伴い、該袋状型枠が膨らみ該スリットに貫通させた棒状部材が存在する場合、該棒状部材は、該スリットを画する該側面により挟まれて拘束される、太陽電池パネルを平面又は傾斜面に設置するために適した該袋状型枠。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate