説明

袋状容器充填装置

【課題】輸液バッグ2の開口部2eから充填ノズル6を挿入した際に、充填ノズルと輸液バッグとの隙間をできるだけ小さくする。
【解決手段】輸液バッグは左右両側部2a、2bと底部2cを溶着され、上部は中央に開口部2eを残して溶着されている。この輸液バッグを一対のグリップ部材4A、4Bで両側から保持して充填ポジションFに送る。この位置Fの上方に昇降可能な充填ノズル6が配置されている。充填ノズルは二重管構造で、薬液供給手段12と、吸引手段20および窒素ガス供給手段22に接続されている。一対のクランプ部材24、26に、開口部から輸液バッグ内に挿入された充填ノズルの外側から挟持する第1挟持部24a、26aと、その外側の第2挟持部24b、26bが設けられている。第2挟持部の第1挟持部との境界に互いに噛み合う凹凸24c、26c、24d、26dが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴用の輸液バッグ等の袋状容器の開口部に充填ノズルを挿入し、袋状容器内に液体を充填し、あるいは窒素置換等の気体の給排を行う袋状容器充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
点滴用の輸液バッグ等の袋状容器に液体等の内容物を充填して密封する装置は従来から各種用いられている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。このような袋状容器充填装置では、例えば、充填される液体が酸素を嫌う性質の液体の場合には、袋状容器内の酸素の残存量を極力少なくすることが要求される。そのためには、輸液バッグの開口部に充填ノズルを挿入して液体の充填や窒素置換を行う際に、充填ノズルの外周面と輸液バッグの開口部の内面との間の隙間をできるだけ少なくすることが望ましい。
【0003】
前記特許文献1に記載された袋詰包装機の包装袋の脱気方法の発明は、「袋内にノズルを挿入し、緊張手段で袋口を緊張させて蒸気噴射を行う」ようにしている。つまり、袋口の両側を緊張手段(把持爪2a、2b)によって引っ張ることによりノズルと袋口との隙間を小さくしようとしている。また、この特許文献1には、包装袋内に扁平状のノズルを挿入し、袋口を横方向に緊張させる構成も記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、気密包装用袋の開口、この袋内への物品の挿入、この袋の閉口、閉口時にくわえさせた吸気管を介して行う袋内の脱気、閉口した口部のシール、の各工程を順次行う気密包装装置が記載されている。この発明に係る装置では、袋体の口部を閉口する際に、脱気手段の吸気管をくわえさせて、スポンジ等の柔軟な弾性体からなる押圧体で両側から押さえるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−169416号公報
【特許文献2】特開2001−171612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載された発明の構成では、袋状容器の開口部(包装袋の袋口)にノズルを挿入して袋口を横方向に緊張させるだけなので、ノズルの形状を扁平にする等の工夫をしなければ、袋状容器の開口部とノズルの外面との間の隙間を小さくすることはできない。また、たとえノズルの形状を扁平にしたとしても、隙間を充分に小さくすることは困難である。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明の構成では、押圧体で両側から押さえているので、柔らかな材質の袋体であれば、袋体とノズルとの間の隙間をある程度小さくすることはできるが、例えば、輸液バッグ等のように厚みがあり、比較的硬い可撓性の材質を用いている場合には、スポンジ等の柔軟な押圧体で押圧してもうまく変形せず、隙間を小さくすることができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、袋体の開口部にノズルを挿入して液体の充填や気体の給排を行う際に、袋体とノズルとの間を確実にシールすることができる袋体容器充填装置を提供することを目的とするもので、袋状容器に形成された開口部を上方に位置させて保持する保持手段と、袋状容器に挿入可能な充填ノズルと、袋状容器内に充填する液体を前記充填ノズルに供給する液体供給手段と、開閉可能に配置され、前記開口部に挿入した充填ノズルを開口部の外側から挟持する一対のクランプ部材とを備え、前記一対のクランプ部材は、充填ノズルの外周面とこのクランプ部材とによって袋状容器を保持する第1挟持面と、両クランプ部材間に袋状容器を挟持する第2挟持面とを有するとともに、これら両クランプ部材の第2挟持面と第1挟持面との境界に、一方が凸部で他方が凹部の嵌合部を形成し、これら凹部と凸部を噛み合わせて袋状容器を挟持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の袋状容器充填装置は、袋状容器の開口部に挿入した充填ノズルを、袋状容器の両面を外側から押さえる一対のクランプ部材を設け、かつ、このクランプ部材の、前記充填ノズルの外面側から袋状容器を押さえる位置と隣接した位置に、一方が凸で他方が凹となって噛み合う凹凸部を形成したので、充填ノズルと袋状容器との間の隙間を極めて小さくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は袋状容器充填装置の構成を簡略化して示す図である。(実施例1)
【図2】図2は図1に示す袋状容器充填装置の縦断面図である。
【図3】図3は一対のクランプ部材の平面図である。
【図4】図4は第2の実施例に係るクランプ部材の平面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0011】
袋状容器は開口部を有しており、この開口部を上方に位置させて保持手段によって保持される。この袋状容器の開口部内に挿入可能な充填ノズルが配置されており、液体供給手段から充填ノズルに液体を供給して袋状容器内に充填する。開閉可能な一対のクランプ部材を備えており、袋状容器の開口部内に挿入した充填ノズルを、開口部の外側から挟持する。前記一対のクランプ部材は、開口部内に挿入された充填ノズルの外側から袋状容器を挟持する第1挟持面と、この第1挟持面の両側に配置され、袋状容器の両面を挟持する第2挟持面とを有している。第2挟持面の、前記第1挟持面との境界部に、クランプ部材の一方が凸部で、他方が凹部となる凹凸部を形成して、これら両クランプ部材の凹凸部を噛み合わせることにより袋状容器を保持するようにしているので、充填ノズルと袋状容器との隙間を極小化するという目的を達成することができる。
【実施例1】
【0012】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。この発明に係る袋状容器充填装置によって液体が充填される容器2は、可撓性を有する素材から形成されている輸液バッグ等の袋状容器であり、両側部2a、2bおよび底部2c(図2参照)が溶着され、さらに、上部2dの両側部2da、2dbが溶着されており、上部2dの両側溶着部2da、2dbの中央に開口部2eが形成されている。この輸液バッグ2は、前記開口部2eを上方にして、両側部2a、2bを一対のグリッパ4A、4Bに保持された状態で充填ポジションFに供給される。
【0013】
前記充填ポジションFの、輸液バッグ2が供給される位置の上方に、この輸液バッグ2内に液体を充填する充填ノズル6が設置されている。充填ノズル6は、鉛直方向を向いた充填ノズル昇降用エアシリンダ8のピストンロッド8aに、水平な連結部材9を介して連結されており、このエアシリンダ8の作動によって昇降できるようになっている。充填ノズル6は、下降したときに、先端部6a(下端部)が前記輸液バッグ2の開口部2eから内部に挿入される。
【0014】
充填ノズル6は二重管構造になっており、内部に薬液供給通路と気体通路が形成されている(いずれも図示せず)。薬液供給通路は、供給配管10を介して薬液供給手段12に接続されており、前記供給配管10に設けた開閉バルブ14を開放することにより、薬液供給手段12から充填ノズル6へ薬液を供給することができる。
【0015】
充填ノズル6内の気体通路は、給排配管16に設けられた三方弁18を介して、真空ポンプなどの吸引手段20と、窒素ガス供給手段22に接続されている。三方弁18を切り換えて、気体通路を吸引手段20側に連通すると、給排配管16および充填ノズル6内の気体通路を介して輸液バッグ2内を吸引し、また、窒素ガス供給手段22側に連通すると、給排配管16および気体通路を介して輸液バッグ2内に窒素ガスを供給することができる。
【0016】
充填ポジションFには、前記一対のグリッパ4A、4Bの位置と直交する方向を向けて、輸液バッグ2の開口部2eを両面側から挟む一対のクランプ部材(第1クランプ部材24と第2クランプ部材26)が配置されている。両クランプ部材24、26は、互いに向かい合うようにして水平に配置されたクランプ部材開閉用エアシリンダ28、30のピストンロッド28a、30aにそれぞれ取り付けられており、これら両エアシリンダ28、30を同時に作動させることにより、輸液バッグ2の開口部2eとこの開口部2e内に挿入された充填ノズル6とを挟持するようになっている。
【0017】
一対のクランプ部材24、26の互いに対向する面(開口部2e内に充填ノズル6が挿入された輸液バッグ2を両側から挟み込む面)は、図3に示すように、開口部2e内に挿入された充填ノズル6を輸液バッグ2の外側から押さえる第1挟持面24a、26aと、その第1挟持面24a、26aの両側に連続して位置し、輸液バッグ2を直接挟み込む第2挟持面24b、26bとを有している。各クランプ部材24、26の第1挟持面24a、26aは、それぞれ充填ノズル6の外径とほぼ同じかあるいは僅かに大きい内径を有する半円弧状をしている。また、第2挟持面は24b、26bは、前記第1挟持面24a、26aとの境界部分に設けられた凹凸形状の嵌合部(この凹凸の嵌合部の形状については後に説明する)と、その外側に形成された平坦部24e、24f、26e、26fとを有している。
【0018】
第2挟持面24b、26bの嵌合部は、第1クランプ部材24と第2クランプ部材26の一方に設けられている凸部と他方に設けられている凹部とが互いに噛み合うようになっている。この実施例では、第1クランプ部材24の中央に形成されている第1挟持部24aの、図3の右側に示す位置に前記平坦部24eよりも凹陥した凹部24cが形成され、一方、第2クランプ部材26には、前記第1クランプ部材24の凹部24cと対向する位置に、この凹部24cに嵌合する凸部26cが形成されている。また、両クランプ部材24、26の中央に形成された第1挟持部24a、26aの、図3の左側には、第2クランプ部材26に凹部26dが形成され、第1クランプ部材24側にその凹部26dに嵌合する凸部24dが形成されている。これら2つのクランプ部材24、26を突き合わせると、前記充填ノズル6を挟み込む第1挟持面24a、26aの両側の第2挟持面24b、26bは、中間に輸液バッグ2を挟んで隙間なく当接した状態になる。なお、この実施例では、第1クランプ部材24の第2挟持面24bは、第1挟持面24aの両側に位置する凹部24cと凸部24dおよびその外側の両平坦部24e、24fによって構成されている。また、第2クランプ部材26の第2挟持面26bは、第1挟持面26aの両側に位置する凸部26cと凹部26dおよびその外側の両平坦部26e、26fによって構成されている。
【0019】
以上の構成に係る袋状容器充填装置の作動について説明する。袋状容器(輸液バッグ)2は、開口部2eを上にして両側部2a、2bを一対のグリッパ4A、4Bに保持されて充填ポジションFに供給される。両側部2a、2bをグリッパ4A、4Bに保持された状態では、輸液バッグ2の開口部2eが閉じているので、充填ポジションFに設けられている輸液バッグ開口手段(図示せず)によって、輸液バッグ2の開口部2eを開く。続いて、充填ノズル昇降用エアシリンダ8の作動によって充填ノズル6を下降させて、その下端部6aを輸液バッグ2の開口部2e内に挿入する。
【0020】
その後、クランプ部材開閉用エアシリンダ28、30を作動させて、第1クランプ部材24および第2クランプ部材26を、前進させてその前面側を輸液バッグ2を挟んで突き当てる。すると、両クランプ部材24、26の中央の第1挟持部24a、26aが、輸液バッグ2の両面を介して充填ノズル6の外面を押さえて保持する。また、第1挟持部24a、26aの両側に位置する第2挟持部24b、26bは、輸液バッグ2の充填ノズル6が挿入されている位置の両側を直接挟み込む。
【0021】
輸液バッグ2の、開口部2e内に挿入されている充填ノズル6の外周面に接触している部分と、その外側の部分との境界は、前記両クランプ部材24、26の凹部24c、26dと凸部24d、26cによって挟み込まれる。充填ノズル6に最も近い部分は、図3の右側では、第1クランプ部材24の第1挟持部24aと凹部24cとの間の突起24gの先端と、第2クランプ部材26の第1挟持部26aと凸部26cとの境界点26gとによって挟み込まれ、さらにその外側の部分は、第1クランプ部材24の凹部24cと第2クランプ部材26の凸部26cによって急激に折り曲げられた状態になる。また、図3の左側では、第1クランプ部材24の第1挟持部24aと凸部24dとの境界点24hと、第2クランプ部材26の第1挟持部26aと凹部26dとの間の突起26hの先端とによって挟み込まれ、さらにその外側の部分は、第1クランプ部材24の凸部24cと第2クランプ部材26の凹部26cによって急激に折り曲げられた状態になる。このように両クランプ部材24、26によって、充填ノズル6が開口部2eに挿入された状態で輸液バッグ2を挟持すると、その第1挟持部24a、26aと第2挟持部24b、26bとによって、輸液バッグ2の充填ノズル6に接触している部分と、その両側の部分との境界が折り曲げられた状態になるので、この境界部分にできる隙間を極めて小さくすることができる。
【0022】
前記のように一対のクランプ部材24、26によって充填ノズル6を挿入した輸液バッグ2を挟持した後、三方弁18を吸引手段20側に切り換えて輸液バッグ2内を所定時間吸引する。その後、三方弁18を切り換えて閉鎖位置にする。この状態で供給配管10の開閉バルブ14を開放して、薬液供給手段12から供給配管10を通って薬液を供給し、輸液バッグ2内に充填する。この実施例では、充填方式はタイマー充填であり、所定時間経過したら開閉バルブ14を閉鎖して充填を停止する。続いて、三方弁18を窒素ガス供給手段22側に切り換えて、窒素ガス供給手段22から給排配管16を通して充填ノズル6へ送り、輸液バッグ2内の液体よりも上部の空間に供給する。充填ポジションFには、図示しないヒートシール手段(図示せず)が設けられており、液体の充填および窒素置換を行った後、このヒートシール手段によって前記クランプ部材24、26および充填ノズル6の先端6aよりも下方の位置を溶着する。このようにして充填工程が完了した後、両クランプ部材24、26を後退させるとともに、充填ノズル6を上昇させて輸液バッグ2の開口部2eから抜き取る。その後、両グリッパ4A、4Bによって保持したまま充填ポジションFから排出する。
【実施例2】
【0023】
前記第1実施例では、図3に示すように、第1クランプ部材24の中央に形成された第1挟持部24aの一方の側部(図3の右側の側部)に凹部24cを、そして他方の側部(図3の左側の側部)に凸部24dを形成し、第2クランプ部材26には、前記凹部24cに嵌合する凸部26cと、凸部24dに噛み合う凹部26dを形成したが、両クランプ部材24、26の充填ノズル6を保持する第1挟持部24a、26aの両側に形成した凹凸部24c、26c、24d、26dの形状をその他の形状とすることもできる。図4は実施例2のクランプ部材(第1クランプ部材124と第2クランプ部材126)の形状を示す平面図であり、その他の構成は前記実施例1と同一なので、同一の部分には図3の符号に100を加えた符号を付してその説明を省略する。
【0024】
この実施例の第1クランプ部材124は、前記第1実施例と同様に中央部に半円弧状の第1挟持部124aが形成され、その一方の側部(図4の右側の側部)に凹部124cが、そして、他方の側部(図4の左側の側部)に凸部124dが形成されている。さらに、凹部124cの外側に隣接して大きい凸部124jが、そして凸部124dに隣接して大きい凹部124kが形成されている。また、第2クランプ部材126には、前記第1クランプ部材124と逆に、中央の第1挟持部126aの右側に、凸部126cおよび大きい凹部126jが形成され、左側に、凹部126dおよび大きい凸部126kが形成されている。この実施例では、第1挟持部124a、126aに隣接した凹部と凸部(124cと126c、124dと126d)によって一度折り曲げられた輸液バッグ2が、その外側の大きい凹部と大きい凸部(124jと126j、124kと126k)とによって、逆方向に再度折り曲げられる。この実施例でも前記第1実施例と同様に、輸液バッグ2の充填ノズル6が挿入されている位置と、輸液バッグ2が直接圧接される位置との境界部分にできる隙間を極めて小さくすることができる。
【符号の説明】
【0025】
2 袋状容器(輸液バッグ)
2e 開口部
4A 保持手段(グリッパ)
4B 保持手段(グリッパ)
6 充填ノズル
12 液体供給手段(薬液供給手段)
24 クランプ部材(第1クランプ部材)
26 クランプ部材(第2クランプ部材)
24a (第1クランプ部材の)第1挟持面
26a (第2クランプ部材の)第1挟持面
24b (第1クランプ部材の)第2挟持面
26b (第2クランプ部材の)第2挟持面
24c 第1クランプ部材の凹部
26c 第2クランプ部材の凸部
24d 第1クランプ部材の凸部
26d 第2クランプ部材の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状容器に形成された開口部を上方に位置させて保持する保持手段と、袋状容器に挿入可能な充填ノズルと、袋状容器内に充填する液体を前記充填ノズルに供給する液体供給手段と、開閉可能に配置され、前記開口部に挿入した充填ノズルを開口部の外側から挟持する一対のクランプ部材とを備え、
前記一対のクランプ部材は、充填ノズルの外周面とこのクランプ部材とによって袋状容器を保持する第1挟持面と、両クランプ部材間に袋状容器を挟持する第2挟持面とを有するとともに、
これら両クランプ部材の第2挟持面と第1挟持面との境界に、一方が凸部で他方が凹部の嵌合部を形成し、これら凹部と凸部を噛み合わせて袋状容器を挟持することを特徴とする袋状容器充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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