説明

袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置

【課題】レーザ光を用いて液体が充填された袋状容器内の酸素濃度を非破壊検査にて精度良く検査し得る非破壊検査装置を提供する。
【解決手段】搬送経路5の検査領域5Eの左右位置に配置されてそれぞれ移動用エアシリンダ46により袋状容器1に対して接近離間自在に設けられた左右一対の取付板47と、これら取付板のうち一方に設けられて酸素濃度計測用のレーザ光を発信するレーザ発信部48Aと、他方に設けられてレーザ光を受信するレーザ受信部48Bとを具備し、これら発信部及び受信部の先端面に、透光性材料にて同一の奥行き方向での長さを有するガス室を有するガス充填箱50を設けるとともに、検査領域にて酸素濃度を計測する際に、左右一対の取付板を互いに接近させて袋状容器の気相部Kの表面に接触させることにより、気相部の厚さを一定に維持し且つレーザ光の発信部及び受信部の先端面と袋状容器表面との間の空気を排除させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液充填機に設けられるとともに液体が充填された袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用輸液は袋状容器、例えば輸液バッグに充填されて、輸送および保存が行われている。
ところで、このような医療用輸液が充填されたバッグにおいては、輸液が酸化して劣化するのを防止するために窒素ガスが封入されるとともに、輸液の充填後に、酸素濃度を計測して不良品であるか否かの検査が行われる。すなわち、酸素は製造途中で入り込むもので、当然に、入り込む酸素は少ない方が好ましく、したがって酸素濃度が許容値より高い場合には、製品が不良品であると判断される。
【0003】
この種の検査方法は、サンプルとしての製品バッグに注射針を刺して空気を取り出して酸素濃度を計測するという破壊式検査であり、検査後、サンプルは廃棄されている。そのため、検査は全数検査ではなく、標本検査となっており、安全衛生に関する保障については不確かな面がある。
【0004】
これに対し、輸液バッグ製剤以外のバイアル瓶製剤などにおいては、製品製造過程で容器内に混入または存在する酸素をレーザ光を用いて検出する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
具体的には、レーザ光をバイアル瓶内の上部の気相部に透過させてその透過光量を計測する、つまり、その吸収度合いを検出して酸素濃度を計測する方法である。
【特許文献1】特表2007−508567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したレーザ光を用いてバッグ内の酸素濃度を計測する場合、レーザ光の透過距離を一定にする必要がある(距離が異なると、当然に、計測する酸素濃度値が異なってしまう)。
【0007】
このため、特許文献1に記載されているように、バイアル瓶の場合には、容器が硬く、どのバイアル瓶であってもレーザ光の透過距離は一定となるため、比較的精度良く計測を行うことができる。
【0008】
しかし、輸液バッグなどのように軟質材料で構成されたものは軟らかく、したがって搬送されるバッグごとに厚みが変化するため、レーザ光を用いた非破壊検査を精度良く行うことができないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、レーザ光を用いて液体が充填された袋状容器内の酸素濃度を非破壊検査にて精度良く検査し得る非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置は、搬送体に設けられた容器保持具により保持されて少なくとも液体の充填領域、封止領域および検査領域を有する搬送経路に沿って搬送される袋状容器内に液体を充填するための液充填機に設けられるとともに、上記搬送経路の検査領域にて、液体が充填された袋状容器の気相部にレーザ光を照射し、その透過光量に基づき袋状容器内の酸素濃度を計測するための非破壊検査装置であって、
搬送経路の検査領域の左右位置に配置されてそれぞれ移動手段により袋状容器に対して接近離間自在に設けられた左右一対の移動部材と、これら移動部材のうち一方に設けられて酸素濃度計測用のレーザ光を発信するレーザ発信部と、他方に設けられてレーザ光を受信するレーザ受信部とを具備し、
上記各移動部材におけるレーザ発信部およびレーザ受信部の先端面に、透光性材料にて同一の奥行き方向での長さを有する不活性ガス室を形成するとともに、
上記検査領域にて酸素濃度を計測する際に、左右一対の移動部材を互いに接近させてレーザ発信部およびレーザ受信部の先端面を袋状容器の気相部の表面に接触させることにより、当該気相部の厚さを一定に維持させるとともにレーザ発信部およびレーザ受信部の先端面と袋状容器の気相部の表面との間の空気を排除させるようにしたものである。
【0011】
また、請求項2に係る袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、
検査領域外に、予め、互いに異なる酸素濃度の不活性ガスが充填されるとともに透光性材料にて形成された2つの校正用容器を配置し、
且つレーザ発信部およびレーザ受信部を有する一対の移動部材を、上記校正用容器内の酸素濃度を計測し得る校正位置に移動し得るようにしたものである。
【0012】
また、請求項3に係る袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置は、請求項1または2に記載の非破壊検査装置において、袋状容器の検査時に搬送体を停止させるとともに、レーザ発信部およびレーザ受信部を有する一対の移動部材を、当該停止された複数の袋状容器に対して移動させ得るように構成したものである。
【0013】
さらに、請求項4に係る袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の非破壊検査装置において、容器の搬送経路を、円形または長円形にしたものである。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成によると、先端に不活性ガス室が設けられたレーザ発信部およびレーザ受信部の先端側の不活性ガス室内に窒素ガスを充満させた状態で、これらレーザ発信部およびレーザ受信部の先端面により容器の気相部を両面から押さえて一定の厚さにするとともにレーザ発信部およびレーザ受信部の先端面と袋状容器の気相部の表面との間の空気を排除した上で、レーザ光を照射して酸素濃度を計測するようにしたので、容器がたとえ軟らかいバッグのようなものであっても、精度良く酸素濃度を計測して製品としての品質(つまり、酸素濃度)の良否を判断することができる。なお、バッグなどの軟らかい容器内の酸素濃度を精度良く計測しようとすると、バッグ内の気体を採取する必要があり、標本検査しか行うことができないが、上記の構成によると、全品検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置を図面に基づき説明する。
この非破壊検査装置は、例えば点滴などの医療用輸液(以下、液体と言う)を軟質材料(例えば、ポリオレフィンなどの軟質プラスチックが用いられる)からなる輸液バッグ(袋状容器の一例であり、以下、容器と言う)に充填する液充填機に具備されるもので、液体が充填されるとともにその口部が封止された容器内の酸素濃度の良否を検査するためのものである。また、この酸素濃度の良否は、容器内の酸素濃度をレーザ光を用いて計測するとともに、この計測値に基づき判断するようにしたものである(この計測方法は、例えば波長可変半導体レーザ吸収分光法と呼ばれている)。
【0016】
まず、この液充填機の構成を簡単に説明しておく。
この液充填機は、図1〜図4に示すように、輸液バッグである容器1を順次保持するとともに、円形の搬送経路5に沿って搬送する間に、空の容器1に医療用輸液である液体を充填した後、その口部2のシールを施し、そして液体が充填された輸液バッグ内の酸素濃度の良否を検査した後、口部2に防護フィルムを取り付け、次の工程に送り出すものである。
【0017】
上記搬送経路5は、容器1を受け取る受取領域(領域をステーションとも言う、以下、同じ)5A、口部2から容器1内に不活性ガス例えば窒素ガスを充填するガス充填領域5B、口部2から容器1内に液体を充填する液充填領域5C、液体が充填された容器1の口部2にキャップを施す封止領域5D、キャップが施された容器1内の気相部Kを検査する検査領域5E、口部2に防護フィルムを取り付けるフィルム取付領域5Fおよび不良品を排出する不良品排出領域5Gおよび次工程に容器1を受け渡す受渡領域5Hが具備されている。図示しないが、容器1の受取領域5Aおよび受渡領域5Hに対向する位置には、容器の供給および排出を行い得る容器の給排出機が具備されている。なお、本実施の形態においては、容器1は3個ずつ間欠的に移動されて、3個纏めて液体の充填などの各作業が順次行われるものである。
【0018】
この液充填機は、容器1を所定間隔置きに保持して、円形の搬送経路5に沿って搬送するもので、架台11に配置された回転駆動装置12と、この回転駆動装置12側の鉛直方向の回転駆動軸体13に連結されて水平面内で回転自在にされた回転駆動板体14と、この回転駆動板体14の外周に連結された環状板体(内側板部と外側板部とからなる)15と、この環状板体15に所定間隔置きに複数個配置されて容器1を保持するための容器保持具16とから構成されている。また、上記回転駆動装置12は、回転駆動板体14すなわち環状板体15を間欠的に回転させるように構成されている。なお、回転駆動装置12、回転駆動軸体13、回転駆動板体14、環状板体15などにより搬送体が構成される。
【0019】
上記各容器保持具16は、環状板体15に固定される取付板21と、この取付板21に設けられた筒状部材23と、この筒状部材23内に鉛直軸心回りで回転自在に保持された一対の回転軸体24(24A,24B)と、これらの回転軸体24に設けられて互いに噛合された一対の歯車25(25A,25B)と、上記一方の回転軸体24(24A)に連結アーム26を介して連結されて当該一方の回転軸体24Aを所定角度範囲でもって揺動(回動)させる回転駆動手段例えば開閉用エアシリンダ27と、これら各回転軸体24の下端部に取り付けられて容器1の口部2を両側から保持開放自在な一対の保持アーム28(28A,28B)とから構成されている。
【0020】
この構成において、開閉用エアシリンダ27を作動させて一方の回転軸体24Aを回転させると、一対の歯車25を介して、他方の回転軸体24Bが逆方向に同一回転量でもって回転することになるため、一対の保持アーム28にて容器1の口部2を両側から保持および開放することができる。勿論、両保持アーム28の先端側には、口部2に係合し得る例えば半円状の凹部が形成されている。
【0021】
さらに、上記容器保持具16側すなわち環状板体15には、当該容器保持具16により保持された容器1の両肩部1aを外側から内側に(正確に言えば、円形の搬送経路の外側から内側に)押さえることにより、容器1が揺れるのを防止するための容器押さえ具31が具備されている。
【0022】
この容器押さえ具31は、図5に示すように、環状板体15に軸受32を介して容器1の幅方向(つまり、搬送経路の接線方向)と平行な水平軸心回りで回転自在に設けられた回転軸体33と、この回転軸体33における容器1の両肩部1aに対応する位置で固定された左右一対の押さえ用アーム34と、上記回転軸体33を連結用レバー35を介して所定角度でもって揺動させる揺動用エアシリンダ36とから構成されている。なお、回転軸体33は3つの容器保持具16に応じて、言い換えれば、各領域に応じて、合計8本配置されているとともに、それぞれの両端部に揺動用エアシリンダ36が連結されている。図3においては、検査領域5Eに位置している回転軸体33を揺動させる一対の揺動用エアシリンダ36だけを示している。
【0023】
この構成において、揺動用エアシリンダ36を作動させると、回転軸体33が所定角度範囲でもって回転させられる。すなわち、図4に示すように、押さえ用アーム34が容器1の表面を外側から内側に押さえる押さえ位置(イ)と、容器1の表面から離脱した開放位置(ロ)との間で揺動させられる。
【0024】
そして、上記搬送経路5の検査領域5Eには、本発明に係る非破壊検査装置6が具備されている。
この検査に際しては、容器1の搬送が停止されるとともに一回の停止動作において、3つの容器1に対して、それぞれ順番に検査を行うようにされている。したがって、検査領域5Eとしては、それぞれ容器保持具16により保持された3つの容器1を越える長さにされている。さらに、これら3つの容器1の外側位置には、検査装置の校正(キャリブレーション)を行うために、校正用容器(後述する)が配置されている。なお、検査領域5Eに校正用容器の部分を含めて検査・校正領域5E′と言う。
【0025】
以下、上記の事項を踏まえて、非破壊検査装置について説明する。
この非破壊検査装置6は、図3〜図9に示すように、所定長さの検査領域5Eにおいて、下方位置で且つ所定長さに亘って配置された平面視が長方形状の支持架台41と、この支持架台41の左右両側部にて立設された複数の支柱材42にて支持された左右一対のガイド部材例えばガイドレール43と、これら各ガイドレール43にガイド輪44を介して移動自在に設けられた移動板体45と、これら各移動板体45の上部に取り付けられた移動用エアシリンダ(移動手段)46(46A,46B)と、この移動用エアシリンダ46のロッド部46aの先端に取り付けられた取付板(移動部材の一例)47(47A,47B)と、この取付板47に取り付けられて検査用のレーザ光を発信するレーザ発信部48Aまたは検査用のレーザ光を受信するレーザ受信部48Bと、これらレーザ発信部48Aおよびレーザ受信部48Bの前方位置で且つ取付板47に取り付けられるとともに透光性材料で形成され内部に窒素ガスが充填(充満)されたガス室(不活性ガス室)を有するガス充填箱50と、上記左右の両移動板体45を同時に検査・校正領域5E′において移動させるための移動装置51とから構成されている。なお、左右の取付板47のうち、一方の例えば図4において左側の取付板47Aには、レーザ発信部48Aが取り付けられるとともに、他方の例えば右側の取付板47Bには、レーザ受信部48Bが取り付けられている。勿論、レーザ発信部48Aとレーザ受信部48Bとの左右位置が逆であってもよい。なお、レーザ発信部48Aとレーザ受信部48Bとを検査具49とも言う。
【0026】
そして、上記移動装置51は、左右における各支柱材42の中間部にそれぞれブラケット52を介して支持されたボールねじ用のねじ軸体(案内部である)53と、このねじ軸体53にボールを介して螺合されるとともに移動板体45の下端折曲部45aに連結されたナット体(被案内部である)54と、上記左右の各ねじ軸体53の端部に取り付けられた従動側スプロケット55と、これら従動側スプロケット55に巻回された伝導ベルト56に係合する駆動側スプロケット57を回転させる電動機58とから構成されている。伝導ベルト56の途中には、伝導ベルト押さえ用のスプロケット59および伝導ベルト緊張用のスプロケット60が配置されている。
【0027】
この構成において、電動機58を駆動して両ねじ軸体53を回転させると、左右の移動板体45が、言い換えれば、レーザ発信部48Aおよびレーザ受信部48Bが同時に3つの容器1の停止位置すなわち第1検査位置(A)、第2検査位置(B)、第3検査位置(C)およびこれら3つの容器1の外側に設けられた2つの校正用容器61(61A,61B)の位置すなわち第1校正位置(D)、第2校正位置(E)に移動されることになる。
【0028】
ところで、校正用容器61は、上述したように、支持架台41の両端部すなわち前後位置に配置されており、それぞれ透光性材料(例えば、アクリル板が用いられる)で箱型に形成されるとともに、それぞれには、所定の酸素濃度の不活性ガスとして窒素ガスが充填されている。例えば、一方の校正用容器61Aの酸素濃度は5%にされるとともに、他方の校正用容器61Bの酸素濃度は10%にされている。
【0029】
そして、図10に示すように、当該非破壊検査装置6には、演算部62が具備されており、この演算部62には、上記レーザ受信部48Bからの検出値すなわちレーザ光の透過光量である受光量を入力して酸素濃度を求める受光量−酸素濃度算出部63および2つの校正用容器61における酸素濃度の検出値を入力して受光量−酸素濃度算出部63に設定されている変換係数(感度係数とも言う)Rを校正するための変換係数校正部64が設けられている。
【0030】
例えば、受光量−酸素濃度算出部63には、図11に示すように、受光量と酸素濃度との関係を表すグラフすなわち変換係数Rが具備されており、また変換係数校正部64には、図12に示すように、2つの校正用容器61を検査した際の受光量に基づき、現時点でのグラフすなわち変換係数R′が求められる。勿論、このグラフは、5%濃度における受光量と10%濃度における受光量との計測により求められる。なお、2つの校正用容器61内の酸素濃度の値は、適宜、計測対象での計測範囲に応じて、適宜変更することができる。例えば、10%濃度および20%濃度のものが用いられる。
【0031】
この求められたグラフ、すなわち新しい変換係数R′が受光量−酸素濃度算出部63に入力されて、以後、この新しい変換係数R′が用いられる。勿論、変換係数が殆ど変化していない場合には、現在の変換係数Rが用いられる。
【0032】
上記構成において、容器1が給排出機から搬送経路5の受取領域5Aに移動されて環状板体15に設けられた容器保持具16により、順次、3つずつ保持される。
そして、ガス充填領域5Bでは窒素ガスが口部2から容器1内に充填され、次の液充填領域5Cでは口部2から液体が充填された後、封止領域5Dに移動して口部2に栓が施され、さらにその後、検査領域5Eに移動されて酸素濃度の良否すなわち品質の検査が行われる。
【0033】
この検査領域5Eにおいては、3つの容器1が停止している状態(勿論、このとき容器押さえ具31により容器1の両肩部1aが内側に押さえられているため、気相部Kでの厚みが略一定になっている)であり、この3つの容器1の良否の検査が順番に行われる。
【0034】
すなわち、第1校正位置(D)に停止されている検査具49が第1検査位置(A)に移動される。
この第1検査位置(A)に移動されると、図8および図9に示すように、移動用エアシリンダ46により、取付板47が容器1側に突出される。すなわち、左右のガス充填箱50が互いに接近されて容器1の気相部Kである中央部分を両側から一定距離でもって挟んだ状態になるとともにガス充填箱50と容器1の気相部Kとの間に存在する空気層が排除された状態となる。
【0035】
そして、この状態で、レーザ発信部48Aからレーザ光が発信され、容器1を透過し、レーザ受信部48Bにて受信される。
このレーザ受信部48Bにて検出されたレーザ光の透過光量である受光量は演算部62に入力され、ここで、レーザ光の受光量(減光割合でもある)に基づき酸素濃度が求められて、酸素濃度の良否すなわち品質が判断される。勿論、図示していないが、設定値と比較することにより、酸素濃度の良否を判断する判断部が具備されている。
【0036】
この第1検査位置(A)での検査が済むと、レーザ発信部48Aおよびレーザ受信部48Bは移動装置51により第2検査位置(B)に移動されて、同様に、2番目の容器1の検査が行われ、さらにこの後、移動装置51により第3検査位置(C)に移動されて、3番目の容器1の検査が行われる。
【0037】
なお、容器1内の酸素濃度が不良であった場合、つまり酸素濃度が許容値を超えている場合には品質不良とされ、防護フィルムは取り付けられずに、そのまま不良品排出領域5Gに搬送されて外部に排出される。
【0038】
そして、3つの容器1の検査が済むと、回転駆動装置12により、環状板体15が回転されて、次の3つの容器1が検査領域Eに搬送され、そして検査が行われる。次の3つの検査を行う場合には、検査具49は、前回の検査とは逆方向に、順次、移動して3つの容器1の検査が行われる。
【0039】
ところで、検査具49が、いずれかの校正位置(DまたはE)に移動している際に、それぞれの位置で、容器1の場合と同様の検査が行われる。なお、この校正動作については、予め、設定された時に、例えば数時間おきに、またはその日の作業の開始時などに行われる。
【0040】
この校正時の検査結果は、変換係数校正部64に入力されて、レーザ光の受光量と酸素濃度との関係を示すグラフ、つまり変換係数Rの校正が行われる。
上述したように、容器押さえ具にて容器の気相部に近い両肩部が押さえられ且つ先端に不活性ガス室が設けられたレーザ発信部およびレーザ受信部の先端側の不活性ガス室内に窒素ガスを充満させた状態で、これらレーザ発信部およびレーザ受信部の先端により、容器の気相部を両面から押さえて一定の厚さにするとともにレーザ発信部およびレーザ受信部の先端面と袋状容器の気相部の表面との間の空気を排除した上で、レーザ光を照射して酸素濃度を計測するようにしたので、容器がたとえ軟らかいバッグのようなものであっても、精度良く酸素濃度を計測して酸素濃度の良否、すなわち製品としての品質の良否を判断することができ、しかも全品検査を行うことができる。例えば、バッグなどの軟らかい容器内の酸素濃度を精度良く計測しようとすると、容器内の気体を採取する必要があり、標本検査しか行うことができないが、上記の構成によると、全品検査を行うことができる。
【0041】
また、非検査時にあっては、検査具は校正位置に移動されているため、ここで、検査具つまりレーザ発信部およびレーザ受信部の校正を行うことができるので、常に、正確な計測を行うことができる。
【0042】
ところで、上記実施の形態においては、容器の搬送経路5が、円形である場合について説明したが、例えば図13に示すように、搬送経路5が長円形状であってもよい。この場合も、当然ながら、上記実施の形態の場合と、同様の作用・効果を有しており、校正位置(D)および(E)についても、容器の搬送経路5から外れた位置、例えば半円部の外側に配置されている。この場合、2つの校正位置は、一方の半円部の外側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る非破壊検査装置を具備する液充填機の概略構成を示す平面図である。
【図2】同非破壊検査装置の検査対象である袋状容器の外観図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図3】同非破壊検査装置の要部平面図である。
【図4】図3のF−F断面図である。
【図5】図4のG−G矢視図である。
【図6】同非破壊検査装置の要部断面図である。
【図7】同非破壊検査装置の要部平面図である。
【図8】同非破壊検査装置における検査時の要部断面図である。
【図9】同非破壊検査装置における検査時の要部平面図である。
【図10】同非破壊検査装置の演算部の概略構成を示すブロック図である。
【図11】同非破壊検査装置における検査に用いられるレーザ光の受光量と酸素濃度との関係を示すグラフである。
【図12】同非破壊検査装置における校正に用いられるレーザ光の受光量と酸素濃度との関係を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態に係る非破壊検査装置を他の液充填機に適用した場合の要部概略構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0044】
K 気相部
1 容器
1a 肩部
2 口部
5 搬送経路
5A 受取領域
5B ガス充填領域
5C 液充填領域
5D 封止領域
5E 検査領域
5F フィルム取付領域
5G 不良品排出領域
5H 受渡領域
6 非破壊検査装置
11 架台
12 回転駆動装置
14 回転駆動板体
15 環状板体
16 容器保持具
27 開閉用エアシリンダ
31 容器押さえ具
34 押さえ用アーム
36 揺動用エアシリンダ
41 支持架台
43 ガイドレール
45 移動板体
46 移動用エアシリンダ
47 取付板
48A レーザ発信部
48B レーザ受信部
49 検査具
50 ガス充填箱
51 移動装置
53 ねじ軸体
54 ナット体
58 電動機
61 校正用容器
62 演算部
63 受光量−酸素濃度算出部
64 変換係数校正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送体に設けられた容器保持具により保持されて少なくとも液体の充填領域、封止領域および検査領域を有する搬送経路に沿って搬送される袋状容器内に液体を充填するための液充填機に設けられるとともに、上記搬送経路の検査領域にて、液体が充填された袋状容器の気相部にレーザ光を照射し、その透過光量に基づき袋状容器内の酸素濃度を計測するための非破壊検査装置であって、
搬送経路の検査領域の左右位置に配置されてそれぞれ移動手段により袋状容器に対して接近離間自在に設けられた左右一対の移動部材と、これら移動部材のうち一方に設けられて酸素濃度計測用のレーザ光を発信するレーザ発信部と、他方に設けられてレーザ光を受信するレーザ受信部とを具備し、
上記各移動部材におけるレーザ発信部およびレーザ受信部の先端面に、透光性材料にて同一の奥行き方向での長さを有する不活性ガス室を形成するとともに、
上記検査領域にて酸素濃度を計測する際に、左右一対の移動部材を互いに接近させてレーザ発信部およびレーザ受信部の先端面を袋状容器の気相部の表面に接触させることにより、当該気相部の厚さを一定に維持させるとともにレーザ発信部およびレーザ受信部の先端面と袋状容器の気相部の表面との間の空気を排除させるようにしたことを特徴とする袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置。
【請求項2】
検査領域外に、予め、互いに異なる酸素濃度の不活性ガスが充填されるとともに透光性材料にて形成された2つの校正用容器を配置し、
且つレーザ発信部およびレーザ受信部を有する一対の移動部材を、上記校正用容器内の酸素濃度を計測し得る校正位置に移動し得るようにしたことを特徴とする請求項1に記載の袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置。
【請求項3】
袋状容器の検査時に搬送体を停止させるとともに、レーザ発信部およびレーザ受信部を有する一対の移動部材を、当該停止された複数の袋状容器に対して移動させ得るように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置。
【請求項4】
搬送経路が、円形または長円形であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の袋状容器内における酸素濃度の非破壊検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−38846(P2010−38846A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204910(P2008−204910)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】