説明

袋織エアバッグ

【課題】外周縁に第2閉部を設けることにより、漏れたエアの外部への漏洩が抑制される袋織エアバッグを提供する。
【解決手段】インフレータからの噴出エアが内部に流入して膨張し、展開する袋織組織からなる膨張展開部11を備え、膨張展開部11に隣接して設けられた第1閉部121(平織組織、斜子組織、袋織組織等により形成される。)と、外周縁13(特に外縁端部Eから1〜10mmの範囲)に設けられた第2閉部122(平織組織、斜子組織、反転袋織組織、袋織組織等により形成される。)と、第1閉部121と第2閉部122との間に設けられた中間部123(平織組織、斜子組織、袋織組織等により形成され、袋織組織では接結部が設けられることが多い。)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時に膨張し、展開して、乗員に加わる衝撃を吸収し、緩和する袋織エアバッグに関する。更に詳しくは、本発明は、特にロールオーバー時などに、乗員の頭部等を十分に保護するため、所定時間、内圧が保持されることが要求されるカーテンシールドエアバッグ等として好適な袋織エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のエアバッグは、膨張し、展開する袋部[カーテンエアバッグの平面形状の一例を説明するための図15の膨張展開部(符号11)参照]と、袋部からのエア漏れを抑えるため、袋部の周縁に設けられた閉部[図15〜図17の第1閉部(符号121)参照]とを備える。また、膨張、展開時のエア漏れ[図17(符号L)参照]をより抑えるため、外面側にはシリコーンゴム等からなるコーティング層[図17(符号C)参照]が設けられている。このコーティング層を厚くするほどエア漏れは少なくなるが、コーティングされていない内部を通じての微量のエア漏れまで防止することは容易ではない。更に、エアバッグは、通常、コンパクトに丸められ、又は折り畳まれ、車両の所定箇所に収納されるが、コーティング層を厚くした場合、エアバッグが剛直になり、丸めたり、折り畳んだりすることが容易でないばかりか、膨張、展開性能も低下する。
【0003】
また、エア漏れは、エアバッグ全体を閉部と同様の緻密な織組織とすることによっても抑えることができ、このように緻密な織組織とすることは、コーティング層が設けられていない内部を通じてのエア漏れの抑制にも有効である。しかし、エアバッグ全体を緻密な織組織とした場合、コーティング層を厚くしたときと同様に、エアバッグが剛直になり、同様に、丸めたり、折り畳んだりすることが容易でなく、膨張、展開性能も低下する。
【0004】
前記のようなエア漏れを抑え、エアバッグの気密性を確保するための各種の方法が提案されており、例えば、袋部と、袋部に隣接し、2以上の織組織を有する閉部とで構成され、閉部が、第2織組織と、第2織組織よりルーズな織組織部分を含む第1織組織とで構成されている袋織エアバッグが知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、この袋織エアバッグでは、袋部と閉部との境界における織密度の急激な変化が緩和され、展開時に境界部に応力が集中せず、気密性低下の原因となる境界部でのエア圧による目開きが抑制されると説明されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−267176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された袋織エアバッグでは、閉部を特定の組織とすることにより、膨張、展開時に、袋部と閉部との境界部に応力が集中して目開することによる気密性の低下は抑えることができるかもしれないが、展開後、コーティング層が設けられていない内部において微量のエア漏れが発生することまでは防止することができないと考えられ、気密性の更なる向上が必要とされる。
【0007】
本発明は、前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、膨張展開部に隣接する第1閉部の他に、外周縁に第2閉部を設けることにより、特にロールオーバー時などに、乗員の頭部等を十分に保護するため、所定時間、内圧が保持されることが要求されるカーテンシールドエアバッグ等として好適な袋織エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のとおりである。
1.インフレータからの噴出ガスが内部に流入して膨張し、展開する袋織組織からなる膨張展開部を備える袋織エアバッグであって、前記膨張展開部に隣接して設けられた第1閉部と、外周縁に設けられた第2閉部と、前記第1閉部と前記第2閉部との間に設けられた中間部と、を備えることを特徴とする袋織エアバッグ。
2.前記第2閉部は、平織部を有する前記1.に記載の袋織エアバッグ。
3.前記中間部は袋織組織からなり、前記第2閉部は、前記中間部に隣接する反転袋織部を有する前記1.又は2.に記載の袋織エアバッグ。
4.前記第2閉部は、前記中間部の側から外方側に向かって、平織部と袋織部とが繰り返されて設けられている前記1.に記載の袋織エアバッグ。
5.前記第2閉部は、外縁端部から内方側に向かって1〜10mmの範囲に形成されている前記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の袋織エアバッグ。
6.繊度が235〜700デシテックスのマルチフィラメントを用いて形成されている前記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の袋織エアバッグ。
7.前記マルチフィラメントを構成するフィラメント数が36〜200本である前記6.に記載の袋織エアバッグ。
8.前記フィラメントが異形断面を有する前記7.に記載の袋織エアバッグ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の袋織エアバッグは、膨張展開部に隣接する第1閉部の他に、外周縁に第2閉部を備えるため、第1閉部において、コーティング層が設けられていない内部を通じての微量のエア漏れがあったとしても、外部へのエア漏れは第2閉部で防止され、又は少なくとも抑制される。その結果、ロールオーバー時等の、所定時間、内圧が保持される必要がある場合に特に有用である。また、ロールオーバーを想定した場合、通常、シリコーンゴム等からなるコーティング層を厚くする必要があるが、本発明の袋織エアバッグでは、第1閉部と第2閉部とによって、エア漏れがより十分に抑えられるため、コーティング層を通常より薄くすることもでき、これによって、丸めたり、折り畳んだりすることが容易となり、且つ十分な膨張、展開性能を有する袋織エアバッグとすることができる。
更に、第2閉部が、平織部を有する場合は、この平織部の組織の緻密度の設定により、コーティング層が設けられていない内部を通じてのエア漏れを十分に抑えることができ、且つ過度に剛直にならず、容易に丸めたり、折り畳んだりすることができ、十分な膨張、展開性能を有する袋織エアバッグとすることができる。
また、中間部が袋織組織からなり、第2閉部が、中間部に隣接する反転袋織部を有する場合は、第2閉部が平織部を有するときと比べて、内部を通じてのエア漏れを抑える作用効果は少し低いかもしれないが、より柔軟であって、収納するために丸めたり、折り畳んだりするときの作業性、及び膨張、展開性能の観点で、より好ましい袋織エアバッグとすることができる。
更に、第2閉部が、中間部の側から外方側に向かって、平織部と袋織部とが繰り返されて設けられている場合は、内部を通じてのエア漏れをより十分に抑えることができるとともに、より柔軟であって、収納するために丸めたり、折り畳んだりするときの作業性、及び膨張、展開性能の面でもより優れており、特に好ましい袋織エアバッグとすることができる。
また、第2閉部が、外縁端部から内方側に向かって1〜10mmの範囲に形成されている場合は、内部を通じてのエア漏れを十分に抑えることができるとともに、特に、丸めたり、折り畳んだりして収納するときの作業性、及び膨張、展開性能の観点で、より好ましい袋織エアバッグとすることができる。
更に、繊度が235〜700デシテックスのマルチフィラメントを用いて形成されている場合は、適度に緻密な織組織とすることが容易であり、内部を通じてのエア漏れが十分に抑えられ、且つ剛直に過ぎず、収納するために丸めたり、折り畳んだりするときの作業性、及び膨張、展開性能に優れた袋織エアバッグとすることができる。
また、マルチフィラメントを構成するフィラメント数が36〜200本である場合は、フィラメント間の空隙が少なく、且つ適度な繊度を有するマルチフィラメントとすることが容易であり、内部を通じてのエア漏れが十分に抑えられ、且つ剛直に過ぎず、収納するため丸めたり、折り畳んだりするときの作業性、及び膨張、展開性能に優れた袋織エアバッグとすることができる。
更に、フィラメントが異形断面を有する場合は、フィラメント間の空隙がより少ないマルチフィラメントとすることができ、内部を通じてのエア漏れが特に十分に抑えられる袋織エアバッグとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、図も参照しながら詳しく説明する。
本発明の袋織エアバッグ1(以下、「エアバッグ」ということもある。)は、インフレータからの噴出エアが内部に流入して膨張し、展開する袋織組織からなる膨張展開部11を備え、膨張展開部11に隣接して設けられた第1閉部121と、外周縁13に設けられた第2閉部122と、第1閉部121と第2閉部122との間に設けられた中間部123と、を備える(図1、2参照)。
【0011】
(1)膨張展開部
前記「膨張展開部11」は袋織組織からなり、車両が衝突したとき、インフレータからの噴出エアが内部に流入することにより、膨張し、展開して、乗員の頭部、顔面、胸部等に加わる衝撃が緩和される。膨張展開部11は、通常、二重織りにより形成され、一面側及び他面側の各々の織物組織は特に限定されず、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができる。また、膨張展開部11の織組織も特に限定されず、1/1袋組織、2/1袋組織、1/2袋組織、2/2袋組織、2/3袋組織、3/3袋組織、3/2袋組織等とすることができる。これらの織組織のうち、1/1袋組織、2/1袋組織、1/2袋組織、特に1/1袋組織では、エアバッグ1が剛直になることがあるため、その場合は2/2袋組織等の他の織組織とすることが好ましい。
【0012】
(2)第1閉部
前記「第1閉部121」は、膨張展開部11に隣接して設けられ、膨張展開部11が膨張し、展開して所定の立体形状となるように、膨張展開部11に流入したエアの漏洩を抑えるための通気度の低い帯状部である。第1閉部121の織物組織は、流入したエアの漏洩を十分に抑えることができる限り、特に限定されない。この第1閉部121の織物組織は、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができ、これらの織物組織の間に袋織組織を介在させることもできる。この第1閉部121の織物組織は、平織組織、斜子組織及び平織組織と斜子組織との組み合わせであることが多く、これらの間に袋織組織を介在させることもできる。
【0013】
また、第1閉部121の織組織は、収納するため丸めたり、折り畳んだりするときの作業が容易である限り、特に限定されず、1/1組織、2/1組織、1/2組織、2/2組織、2/3組織、3/3組織、3/2組織等とすることができる。より具体的には、例えば、1/1平組織、2/2平組織、3/3平組織、1/2斜子組織、2/1斜子組織、3/3斜子組織、1/1袋組織、2/1袋組織、1/2袋組織、2/2袋組織、2/3袋組織、3/3袋組織、3/2袋組織、2/1綾組織、1/2綾組織等とすることができる。これらの織組織のうち、1/1組織、2/1組織、1/2組織、特に1/1組織では、エアバッグ1が剛直になることがあるため、その場合は2/2組織等の他の織組織とすることが好ましい。
尚、第1閉部121の幅方向の糸本数は特に限定されないが、4〜80本、特に10〜50本であることが好ましい。この範囲の本数であれば、中間部123へのエア漏れを十分に抑えることができる。
【0014】
(3)第2閉部
前記「第2閉部122」は、エアバッグ1の外周縁13に設けられ、第1閉部121の内部側のマルチフィラメント2間及び/又はこのマルチフィラメント2を構成するフィラメント21間(図13参照)の空隙等を通じて洩れたエアが、第1閉部121と第2閉部122との間の中間部123の内部を流通し、エアバッグ1の外縁端部Eから外部に漏れ出てしまうのを抑えるための通気度の低い帯状部である。第2閉部122の織物組織は、第1閉部121及び中間部123を通じて漏れてきたエアがエアバッグ1の外部へ漏れ出てしまうのを十分に抑えることができる限り、特に限定されない。この第2閉部122の織物組織は、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができる。また、これらの織物組織の間に袋織組織を介在させることもできる。
【0015】
更に、第2閉部122の織組織は、収納するため丸めたり、折り畳んだりするときの作業が容易である限り、特に限定されず、1/1組織、2/1組織、1/2組織、2/2組織、2/3組織、3/3組織、3/2組織等とすることができる。より具体的には、例えば、1/1平組織、2/2平組織、3/3平組織、1/2斜子組織、2/1斜子組織、3/3斜子組織、1/1袋組織、2/1袋組織、1/2袋組織、2/2袋組織、2/3袋組織、3/3袋組織、3/2袋組織等とすることができる。これらの織組織のうち、1/1組織、2/1組織、1/2組織、特に1/1組織では、エアバッグ1が剛直になることがあるため、その場合は2/2組織等の他の織組織とすることが好ましい。
【0016】
また、中間部123が袋織組織からなる場合、第2閉部122は、中間部123に隣接する反転袋織組織からなる反転袋織部cを有していてもよい。この反転袋織組織とは、その下布が、隣接する中間部123の袋織組織の上布を構成する経糸及び緯糸によって形成され、上布が、隣接する中間部の袋織組織の下布を構成する経糸及び緯糸によって形成されている織物組織である。更に、第2閉部122の幅方向に、2以上の反転袋織部cが隣接して設けられていてもよく、2以上の反転袋織部cが平織部a等を介して設けられていてもよい。2以上の反転袋織部cが隣接して設けられている場合、隣接する各々の反転袋織部cは、一方の下布が他方の上布を構成する経糸及び緯糸によって形成され、一方の上布が他方の下布を構成する経糸及び緯糸によって形成される。
【0017】
第2閉部122は、より具体的には、中間部123の側から外縁端部Eに向かって、(1)平織組織のみからなる閉部(織組織の異なる2以上の平織組織が隣接していてもよい。)。(2)平織組織と、平織組織の間に介装された袋織組織とからなる閉部、(3)反転袋織組織のみからなる閉部、(4)反転袋織組織と平織組織とからなる閉部(例えば、2以上の反転袋織組織の間に平織組織が介装されてなる閉部)等の各種の織物組織を有する閉部とすることができる。
【0018】
第2閉部122の幅方向の糸本数は特に限定されないが、6〜30本、特に10〜25本であることが好ましい。この範囲の本数であれば、エアがエアバッグ1の外部へ漏れ出るのを十分に抑えることができる。
【0019】
第2閉部122は、エアバッグ1の外周縁13に設けられておればよく、第2閉部122のエアバッグ1の外縁端部Eからの距離(外縁端部Eから第2閉部122の外周線までの距離)及び第2閉部122の幅は特に限定されない。第2閉部122のエアバッグ1の外縁端部Eからの距離は、0.5〜2mmであることが好ましく、第2閉部122の幅は1〜10mm、特に3〜5mmであることが好ましい。また、第2閉部122は、外縁端部Eから内方側に向かって1〜10mmの範囲に形成されていることがより好ましい。このような第2閉部122を備えるエアバッグ1であれば、エア漏れをより十分に抑えることができ、且つ収納するために丸めたり、折り畳んだりするときの作業性、及び膨張、展開性能に優れた袋織エアバッグ1とすることができる。
【0020】
更に、第2閉部122は、エア漏れの抑制と、収納のために丸めたり、折り畳んだりするときの作業性、及び膨張、展開性能とを勘案し、エアバッグ1の外周縁13の全周に亘って設けることもでき、一部のみに設けることもできる。この第2閉部122は、特に、第1閉部121の外周線とエアバッグ1の外縁端部Eとの距離が小さい箇所、即ち、中間部123が幅狭である箇所に設けることが好ましい。このような箇所では、第1閉部121の内部を通じて漏れたエアが、容易にエアバッグ1の外縁端部Eに達し、外部に漏れ出てしまうため、第2閉部122を設けることが好ましい。より具体的には、エアバッグ1の平面形状及び寸法等にもよるが、第1閉部121の外周線とエアバッグ1の外縁端部Eとの距離が、30mm以下、特に10mm以下である箇所に第2閉部122を設けることが特に好ましい。
【0021】
(4)中間部
前記「中間部123」は、第1閉部121と第2閉部122との間を構成する部分であり、その織物組織は特に限定されないが、袋織組織、平織組織、斜子組織であることが多い。中間部123では内部を通じてのエア漏れの抑制を特に考慮する必要はなく、エアバッグ1の概形を整え、保持することができればよい。また、収納するために丸めたり、折り畳んだりし易いように、適度に粗な織組織とすることができる。
【0022】
更に、中間部123が袋織組織からなる場合、上布と下布とは繋がれていてもよく、繋がれていなくてもよいが、繋がれていることが好ましい。即ち、中間部123は、その上布と下布の一部が本体と同じフィラメントにより繋がれた接結組織を有していることが好ましい。更に、接結部位及び接結密度は、中間部123の強度、収納のために丸めたり、折り畳んだりするときの作業性等を勘案し、設定することが好ましい。
【0023】
(5)糸の材質、繊度等
本発明の袋織エアバッグ1の製造には、合成樹脂からなるフィラメントが用いられ、このフィラメントとしては、マルチフィラメントとモノフィラメントとがあるが、通常、マルチフィラメントが用いられる。フィラメントの材質は特に限定されず、各種の合成樹脂からなるフィラメントを用いることができる。この合成樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。合成樹脂としては、特にポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましく、ポリアミド系樹脂がより好ましい。
【0024】
マルチフィラメント等の合成樹脂フィラメントの繊度は特に限定されず、エアバッグの種類、及び平面形状、寸法等により、適宜の繊度のマルチフィラメント等を用いることが好ましい。繊度は235〜700デシテックス、特に350〜470デシテックスであることが好ましい。マルチフィラメント等の繊度が235〜700デシテックスであれば、エア漏れを十分に抑えることができる第1閉部121及び第2閉部122を形成することができるとともに、収納のために丸めたり、折り畳んだりすることが容易なエアバッグ1とすることができ好ましい。
【0025】
また、マルチフィラメントの場合、このマルチフィラメントを構成するフィラメント数は特に限定されず、その繊度等によって設定することができるが、36〜200本、特に72〜144本であることが好ましい。
【0026】
更に、前記のように、エアは、第1閉部121の内部側のマルチフィラメント2間及び/又はこのマルチフィラメント2を構成するフィラメント21間(図13参照)の空隙等を通じて洩れるため、異形断面を有するフィラメントを用いることが好ましい。三角形、六角形(図14参照)、扁平形状等の異形断面のフィラメントでは、断面円形のフィラメント(図13参照)と比べてフィラメント間の空隙が少なく、フィラメント間を通じてのエアの漏れをより抑えることができる。
【0027】
(6)エアバッグの種類
本発明の袋織エアバッグ1の種類は特に限定されず、カーテンシールドエアバッグ、運転席エアバッグ、助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、ニーエアバッグ及びITSヘッド・エアバッグ等の各種の自動車用エアバッグとして用いることができ、特に、所定時間、内圧が保持されることが要求されるカーテンシールドエアバッグとして好適である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
ポリアミド製の108本のフィラメントにより構成される繊度350デシテックスのマルチフィラメントを使用し、図1のように、平面形状が長方形のカーテンシールドエアバッグ1を製造した。製品寸法は横方向が1800mm、縦方向が400mm(エア導入口14等の凸状部は含まない。)である。また、第1閉部121は、膨張展開部11の側から1/1平織部及び2/2平織部の組織とした。更に、第2閉部122は、図7のように、中間部123の側から、2/2平織部a2(幅方向のマルチフィラメント数4本)+袋織部b1(幅方向のマルチフィラメント数4本)+2/2平織部a2(幅方向のマルチフィラメント数4本)+袋織部b1(幅方向のマルチフィラメント数4本)+2/2平織部a2(幅方向のマルチフィラメント数4本)の組織とした。尚、中間部123は袋織組織とし、上布と下布の一部が繋がれた接結組織とした。
【0029】
(3)実施例の効果
この実施例の袋織エアバッグ1では、第2閉部122は、中間部123の側から外方側に向かって、平織部aと袋織部bとが繰り返されて設けられているため、エアバッグ1の外部へエアが漏れ出るのをより十分に抑えることができ、且つ収納するために丸めたり、折り畳んだりするときの作業性、及び膨張、展開性能に優れた袋織エアバッグ1とすることができる。
【0030】
尚、本発明においては、前記の実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、第2閉部122は、(1)1/1平織部a1(幅方向のマルチフィラメント数4本、図4参照)、(2)2/2平織部a2(幅方向のマルチフィラメント数8本、図5参照)、(3)3/3平織部a3(幅方向のマルチフィラメント数12本、図6参照)、(4)1/1平織部a1(幅方向のマルチフィラメント数2本)+袋織部b2(幅方向のマルチフィラメント数8本)+1/1平織部a1(幅方向のマルチフィラメント数2本)+袋織部b2(幅方向のマルチフィラメント数8本)+1/1平織部a1(幅方向のマルチフィラメント数2本)(図8参照)、(5)1/1平織部a1(幅方向のマルチフィラメント数2本)+袋織部b1(幅方向のマルチフィラメント数4本)+2/2平織部a2(幅方向のマルチフィラメント数4本)+袋織部b1(幅方向のマルチフィラメント数4本)+3/3平織部a3(幅方向のマルチフィラメント数12本)(図9参照)、(6)反転袋織部c1(幅方向のマルチフィラメント数4本)+袋織部c11(幅方向のマルチフィラメント数4本)(図10参照)、(7)反転袋織部c1(幅方向のマルチフィラメント数4本)+平織部a2(幅方向のマルチフィラメント数4本)+平織部a1(幅方向のマルチフィラメント数2本)(図11参照)、及び(8)反転袋織部c1(幅方向のマルチフィラメント数4本)+平織部a2(幅方向のマルチフィラメント数4本)+反転袋織部c1(幅方向のマルチフィラメント数4本)+平織部a2(幅方向のマルチフィラメント数4本)(図12参照)等の各種の構成の閉部とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、自動車用の袋織エアバッグの技術分野において利用することができる。特に、ロールオーバー時に有用なカーテンシールドエアバッグ等の技術分野において好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】外周縁に第2閉部を備える本発明の袋織エアバッグの一例の模式的な平面図である。
【図2】図1の袋織エアバッグのA−A断面の模式図な断面図である。
【図3】インフレータからの噴出エアが流入して膨張し、展開したときに、第1閉部の内部を通じて漏洩したエアの外部への漏れが、第2閉部により抑制されている様子を説明するための模式図である。
【図4】平織部を有する第2閉部を備える袋織エアバッグの一部の模式的な平面図である。
【図5】平織部を有する第2閉部を備える他例の袋織エアバッグの一部の模式的な平面図である。
【図6】平織部を有する第2閉部を備える更に他例の袋織エアバッグの一部の模式的な平面図である。
【図7】中間部の側から平織部と袋織部とが繰り返されてなる第2閉部を備える袋織エアバッグの一部の模式的な平面図である。
【図8】図7と同様に、平織部と袋織部とが繰り返されてなる第2閉部を備える第2閉部を備える他例の袋織エアバッグの一部の模式的な平面図である。
【図9】図7と同様に、平織部と袋織部とが繰り返されてなる第2閉部を備える第2閉部を備える更に他例の袋織エアバッグの一部の模式的な平面図である。
【図10】反転袋織部を有する第2閉部を備える袋織エアバッグの一部の模式的な平面図である。
【図11】反転袋織部と平織部とを有する第2閉部を備える袋織エアバッグの一部の模式的な平面図である。
【図12】反転袋織部と平織部を有する第2閉部を備える他例の袋織エアバッグの一部の模式的な平面図である。
【図13】断面円形のフィラメントを用いてなるマルチフィラメントであり、フィラメント間に空隙が多いことを説明するための模式的な断面図である。
【図14】異形断面(六角形)のフィラメントを用いてなるマルチフィラメントであり、フィラメント間に空隙が少ないことを説明するための模式的な断面図である。
【図15】第1閉部のみを備える従来の袋織エアバッグの一例の模式的な平面である。
【図16】図15の袋織エアバッグのB−B断面の模式図な断面図である。
【図17】インフレータからの噴出エアが流入して膨張し、展開したときに、第1閉部の内部を通じて漏洩したエアが外部へ漏れ出す様子を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1;袋織エアバッグ、11;膨張展開部、121;第1閉部、122;第2閉部、123;中間部、13;外周縁、14;エア導入口、2;マルチフィラメント、21;フィラメント、3;コーティング層、a、a1、a2;平織部、b、b1、b2;袋織部、c、c1、c11;反転袋織部、E;外縁端部、L;エア漏れ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータからの噴出エアが内部に流入して膨張し、展開する袋織組織からなる膨張展開部を備える袋織エアバッグであって、
前記膨張展開部に隣接して設けられた第1閉部と、外周縁に設けられた第2閉部と、前記第1閉部と前記第2閉部との間に設けられた中間部と、を備えることを特徴とする袋織エアバッグ。
【請求項2】
前記第2閉部は、平織部を有する請求項1に記載の袋織エアバッグ。
【請求項3】
前記中間部は袋織組織からなり、前記第2閉部は、前記中間部に隣接する反転袋織部を有する請求項1又は2に記載の袋織エアバッグ。
【請求項4】
前記第2閉部は、前記中間部の側から外方側に向かって、平織部と袋織部とが繰り返されて設けられている請求項1に記載の袋織エアバッグ。
【請求項5】
前記第2閉部は、外縁端部から内方側に向かって1〜10mmの範囲に形成されている請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の袋織エアバッグ。
【請求項6】
繊度が235〜700デシテックスのマルチフィラメントを用いて形成されている請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の袋織エアバッグ。
【請求項7】
前記マルチフィラメントを構成するフィラメント数が36〜200本である請求項6に記載の袋織エアバッグ。
【請求項8】
前記フィラメントが異形断面を有する請求項7に記載の袋織エアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−143486(P2010−143486A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324619(P2008−324619)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】