説明

袋詰め乾燥野菜の製造方法

【課題】袋詰め凍結乾燥野菜において従来よりも多くの凍結乾燥野菜を封入できるようにする。
【解決手段】野菜をボイルし、乾燥前の高水分状態のウエット野菜を予めプラスチック製の軟包材の袋に充填し、開口状態のまま凍結乾燥を行い、その後に密封する。また、ボイル後に糖類を混合することで多量の乾燥野菜の封入が可能となる。本発明は、種々の野菜に適用できる。特に細長上や薄膜状等の野菜の凍結乾燥物を製造する際に特に有効である。また、乾燥時に割れ易い野菜に対して好適に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は即席麺等の即席食品に利用できる乾燥野菜の製造方法に関する。具体的には、水やお湯等で復元するタイプの凍結乾燥処理する乾燥野菜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾燥野菜は種々の食品分野で利用されている。特に、即席麺やカップ麺等において幅広く使用されている。これらの乾燥野菜は通常、プラスチック製の軟包材の袋に充填された袋詰め乾燥野菜であることが多い。
【0003】
従来、このような袋詰め乾燥野菜の製造においては、まず、乾燥野菜を凍結乾燥することによって製造し、得られた乾燥野菜を袋詰めしていた。すなわち、まず、原料となる野菜に対してボイル等の所定の処理を施し、高水分状態のウエットな状態の野菜を製造する。
これを網状等のトレイ等の上にバラバラになるように載置し、凍結乾燥することによって凍結乾燥された乾燥野菜を得る。
次に、得られた乾燥野菜をプラスチック製の小袋に充填し、開口部をシール等で密閉して袋詰めの乾燥野菜が完成させていた。
【0004】
しかし、上記のような製造方法であると、乾燥後の形状が定まった乾燥野菜をプラスチック製の軟包材の袋に充填するため、袋への充填の際、うまく入れることができなかったり、無理に入れようとして乾燥野菜が破損する場合があった。
【0005】
さらに、袋に入ったとしても、乾燥後で形状が定まっているために、多くの量を充填しようとしても、隙間空間が大きくなってしまい、多くの量を入れることは困難であった。
また、このような問題は、もやしや葉物等の不定形上の野菜を用いた場合に顕著であった。
【0006】
一方、このような問題を解決する先行技術として、ホウレン草等の乾燥前の野菜をデキストリン、澱粉等の粘稠剤とともに、剛性を有する容器に充填して、凍結乾燥する容器入り乾燥食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−42872 しかし、本先行技術は、剛性のある容器を用いており使用の便宜やコストの点を考えると軟包材である方が有利である。また、乾燥する野菜等とともに粘稠剤を使用するために、本粘稠剤が余分に必要になる等の問題点も指摘される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、現在汎用されている柔軟性のあるプラスチック製の軟包材の袋を利用して、充填する乾燥野菜を従来よりも多めに含み、また割れ等の問題が生じないような袋詰め乾燥野菜を効率的に製造する方法を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らの種々の鋭意検討の結果、乾燥前の高水分状態のウエット野菜を予めプラスチック製の軟包材の袋に充填して、また、袋が開口状態で凍結乾燥を行いその後に密封する方法が有効であることを見出した。
【0010】
すなわち、本願第一の発明は、
「野菜をボイルした後、プラスチック製の軟包材の袋に充填し、前記充填後の袋を開口状態で凍結乾燥した後に密封する袋詰め乾燥野菜の製造方法。」
である。
【0011】
また、ボイル後のウエット状態の野菜に糖類を添加することで凍結乾燥後の野菜について密な状態で多量を封入することが可能となることを見出した。さらに糖類の添加によって、復元性を向上させることもできる。加えて、糖類を添加することでウエット状態の野菜の柔軟性を増加させることでき、袋への充填時に折れ等の問題が回避できるという利点もある。
【0012】
すなわち、本願第二の発明は、
「前記ボイルの後に、糖類を添加する請求項1に記載の製造方法。」
である。
さらに、本件出願人は、本発明で製造されてパック詰め乾燥野菜も意図している。
【0013】
すなわち、本願第三の発明は、
「請求項1又は2のいずれかに記載の方法で製造される袋詰め乾燥野菜」、である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】比較例1、比較例2及び実施例1の袋詰め乾燥もやしの対比写真である。
【図2】比較例1、比較例2及び実施例1の袋詰め乾燥もやしのそれぞれを開封してから、内容物の乾燥もやしを平面上に載置した場合の対比写真である。
【図3】比較例3、比較例4及び実施例8の袋詰め乾燥ホウレン草の対比写真である。
【図4】比較例5、比較例6及び実施例9の袋詰め乾燥チンゲン菜の対比写真である。
【図5】比較例7、比較例8及び実施例10の袋詰め乾燥白菜の対比写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
【0016】
─野菜─
本発明にいう原料となる野菜には、種々の乾燥野菜が含まれる。具体的には、もやし、ホウレン草、チンゲン菜、白菜、キャベツ等の種々の野菜全般に適用が可能である。
【0017】
また、本発明は、種々の野菜の適用できる。また、正方形や長方形等の規則正しい形状を有する場合にももちろん適用できるが、特に細長上や薄膜状等の野菜の凍結乾燥物を製造する際に特に有効である。また、乾燥時に割れ易い野菜に対して好適に利用できる。具体的な野菜名として、もやしやほうれん草、チンゲンサイ、白菜、キャベツ等葉物全般又は、ゴボウのような根菜類などが挙げられる。
【0018】
─ボイル─
本発明においては、まず原料野菜のボイルを行う。また、ボイルはブランチングの意義を兼ねている。概ね、ボイルの方法としては、種々の温度が選択できるが、例えば、75℃で10分や、85℃で5分、95℃で3分程度を選択することができる。
【0019】
尚、本ボイル工程においては、予めカルシウム塩を溶解させた状態でボイルするのが好ましい。乳酸カルシウム、塩化カルシウム又は硫酸カルシウム等のカルシウム塩が挙げられる。本カルシウム塩を添加しておくことで本発明で得られた凍結乾燥野菜をお湯等で復元した場合の食感において繊維感を出す等の効果を奏することができる。
また、対象とする野菜によっては、食塩や重曹を溶解させた状態でボイルすることも好ましい。
【0020】
尚、ボイル後の野菜について水切りすることによって概ねの水分を取り除いて次の工程に移るのが好ましい。
【0021】
─糖類を混合─
前記ボイル後のウエット状態の野菜はそのまま、軟包材の袋に充填しても良いが、充填の前に糖類を添加するのが好ましい。ボイル後のウエット状態の野菜に糖類を添加することで、柔軟性を付与して凍結乾燥後の野菜について密な状態で多量を封入することが容易となる。
【0022】
使用する糖類については、乳糖やグルコース、マルトース、トレハロース等の種々の種類が選択できる。
【0023】
添加する糖類の量については、概ねボイル後のウエットな野菜の重量に対して4〜15重量%程度が好適である。好ましくは、7〜12重量%程度である。
【0024】
─プラスチック製の軟包材─
本発明においては柔軟性のある軟包材の袋を利用する。袋の大きさについては、必要な野菜の重量によっても異なり、特に限定されない。但し、通常の即席麺のような即席食品に利用される場合には、概ね50×50mm程度〜150mm×150mm程度の大きさが一般的である。
【0025】
また、材質についても特に限定されないが、後述ように袋も凍結状態に置かれるため、耐寒性をもつ素材が好ましい。具体的には、ポリエチレン(PE)やナイロン、また、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。また、これらの多層フィルムやアルミ蒸着等を施した包装材料でもあってよいことはもちろんである。
【0026】
さらに、本発明に利用する軟包材の形態については、3方シール、4方シール等の種々のシール方法や深絞りタイプ等、種々の形態を用いることができる。
【0027】
─野菜の軟包材への充填時の留意点─
本発明においては、ウエットな状態の野菜を袋に充填するために、袋内で多少密集した状態となる場合があるが、これでも構わない。また、一種類の野菜でなく複数の種類の野菜を混合したものを充填してもよい。また、野菜と同時にミンチ等の肉類が一部混合されていてもよい。
【0028】
─充填後の処理─
ウエットな状態の野菜を軟包材の袋に充填した後、上部が開口状態のまま、必要に応じて袋の外部から押圧する等の処理を施すこともできる。袋内でウエット野菜があまりに偏在していると凍結乾燥に時間がかかる場合があるため、これを是正するためである。
【0029】
具体的には、ウエット野菜入りの袋の極端に厚い部分を押さえたり、ローラーを通過させることにより厚みを均一にする等の処理が有効である。
─凍結乾燥─
本発明においては、ウエットな野菜を軟包材の袋に充填し、開口状態の野菜入りの軟包材の袋をそのまま凍結乾燥の工程に移る。
【0030】
まず、凍結の過程については、前記充填後の袋を開口状態で凍結を行う。凍結前の野菜を充填済みの軟包材の複数をトレイ等に整列させて準備する。次に、これを凍結庫において凍結する。凍結の条件は特に限定されない。例えば、−25℃程度の凍結庫であると概ね5〜10時間程度の凍結でよい。
【0031】
次に、凍結した状態で0.4〜1.0Torr程度の減圧下で乾燥を行う。減圧下での乾燥の条件としては通常の方法で行うことができるが、本発明では凍結した野菜が密集状態にある場合があるため、棚温度を高めに設定するか乾燥時間を長めにすることが好ましい。
【0032】
具体的には、初期の棚温度を90℃〜100℃程度に設定して所定時間保持し、乾燥が
進むにつれて温度85℃〜50℃程度に下げる方法がある。また、通常20〜30時間程
度の乾燥時間を30時間程度以上に延ばすことが好ましい。
【0033】
─凍結乾燥後─
乾燥後においては、真空を解除し、必要に応じて50℃〜80℃程度の状態に保持してから次の工程に移行する。
【0034】
─密封─
乾燥が終了した凍結乾燥野菜入りの軟包材の開口部をヒートシール等して密封する。ヒートシールは通常の条件に従えばよい。本ヒートシールによってパック詰め凍結乾燥野菜が完成する。尚、密封方法はヒートシールには限られず他の方法でもよい。本発明の製造方法により得られた袋詰め乾燥野菜は即席食品等に幅広く利用できる。
【実施例】
【0035】
以下に本発明の試験例について説明する。本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
1.もやしの場合
1.本願方法と従来までの方法との比較
<実施例1>
太さ3.5〜4.5mm程度、長さ6〜9cm程度のもやしを水洗して、薄皮、ひげ等を除去した後、水切りをしたもやし100gを、ボイル液(食塩2%、乳酸カルシウム0.1%)に入れて65℃で30分程度処理した後、85℃まで加熱した。
【0036】
得られたボイル後のもやしを流水冷却した後、水切りし、75重量%のマルトース溶液を水切り後のもやしに対して12重量%となるように添加して1分間混合した。
【0037】
混合後のもやしを静置した後、一枚のOPP(30μ)//PE(25μ)の軟包材フィルムを二つ折してその両端をヒートシールすることで開口部を設けた袋(外形が105mm×105mm(開口部のヒートシール後の内径が97mm×97mm))の開口部からウエット野菜を63gづつ充填した。
【0038】
充填後のウエットもやし入り軟包材の厚みを調製した後、これをトレーに整列させ、−25℃の凍結庫において10時間保持した。
凍結後のウエットもやし入り軟包材について0.5Torr程度まで減圧した状態で棚温度を60℃で36時間程度、保持した後、真空を解除して、凍結乾燥機より取り出した。
【0039】
凍結乾燥後のウエットもやし入り軟包材について、開口部をヒートシールして凍結乾燥もやしを完成させた。完成後のパックされたもやしはヒートシール時のもやしの噛み込みもなく良好な状態であった。また、これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は7.0gの重量であった。また、もやしに折れ等の不備な点は見られなかった。
<比較例1>(凍結乾燥後のもやしを自動充填装置の場合)
実施例1で用いたのと同様のマルトース溶液を混合後のもやしを、凍結乾燥機用の乾燥トレーに密着しないように満遍なく載置して、−25℃の凍結庫において10時間保持した。
【0040】
保持後のトレーについて、0.5Torr程度まで減圧した状態で棚温度を60℃で26時間程度、保持した後、真空を解除して凍結乾燥機より取り出した。このようにして凍結乾燥されたもやしを製造した。
【0041】
凍結乾燥により得られたもやしを、自動充填装置(三光機械株式会社製、MC101型)を用いて、種々のサイズの軟包材を用いて自動充填試験を行った。この結果、実施例1で用いたのと同じ一枚の軟包材フィルムを二つ折りしてその両端をヒートシールして開口部を設けた袋(105mm×105mm(内径97mm×97mm))に対して、開口部のシール時の噛み込み率(開口部をヒートシールした場合に内容物のもやしがヒートシール部に噛み込んでしまう率)が0.6%程度となる状態を得ようとする場合、前記包材内に充填できる凍結乾燥もやしの量は1.1gであった。
<比較例2>(凍結乾燥後のもやしを手作業で充填した場合)
比較例1で用いた凍結乾燥もやしを手作業で充填し、実施例1及び比較例1で用いたのと同様の軟包材にどの程度の量を入れることができるかを試験した。
【0042】
5人の熟練の技術者が通常の手作業(15秒程度)によって、実施例1及び比較例1で用いたのと同じ105mm×105mm(内径97mm×97mm)の2方シールし開口部を残したOPP(30μ)//PE(25μ)の軟包材の袋に対して、凍結乾燥後もやしを入れた。その結果、5人の充填できたもやしの量の平均は、4.0gであった。
【0043】
実施例1、比較例1及び比較例2で完成した袋詰め凍結乾燥もやしの対比写真を図1に、また、これらを開封してから、内容物のもやしを平面上に載置して場合の対比写真を図2に示す。本発明の製造方法によって得られる袋詰め凍結乾燥もやしは従来よりも極めて多くの乾燥もやしを無理なく封入することができることがわかった。

2.カルシウム塩と糖類の効果について
<実施例2>
太さ3.5〜4.5mm程度、長さ6〜9cm程度のもやしを水洗して、薄皮、ひげ等を除去した後、水切りをしたもやし100gを、ボイル液(食塩 2重量%)に入れて65℃で30分程度処理した後、85℃まで加熱した。
【0044】
得られたボイル後のもやしを流水冷却し、静置した後、実施例1及び比較例1で用いたのと同じ105mm×105mm(内径97mm×97mm)の2方シールし開口部を残したOPP(30μ)//PE(25μ)の軟包材の袋に53g程度づつ充填した。
【0045】
充填後のウエットもやし入り軟包材の厚みを調製した後、これをトレーに整列させ、−25℃の凍結庫において10時間保持した。
凍結後のウエットもやし入り軟包材について0.5Torr程度まで減圧した状態で棚温度を60℃で36時間程度、保持した後、真空を解除して、凍結乾燥機より取り出した。
【0046】
凍結乾燥後のウエットもやし入り軟包材について、開口部をヒートシールして凍結乾燥もやしを完成させた。完成後のパックされた乾燥もやしはヒートシール時のもやしの噛み込みもなく良好な状態であった。また、これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は1.9gの重量であった。また、もやしに折れ等の不備な点は見られなかった。
【0047】
さらに、得られた乾燥もやし約2.0gに対して熱湯200gを注加して、3分間静置し、5人の熟練の技術者がもやしを喫食した。復元性及び食感についての結果を表1に示す。
尚、復元性については、1(不良)〜5(最良)の5段階で行った。また、食感についても1(不良)〜5(最良)の5段階で評価を行った。上記の復元性、食感についての評価結果を表1に示す

<実施例3>
実施例2においてボイル後において、75重量%のマルトース溶液を水切り後のもやしに対して6重量%となるように添加して1分間混合するという工程を追加した点、及び軟包材への充填量を59g程度にした点以外は実施例2と同様に行った。
【0048】
完成後のパックされた乾燥もやしはヒートシール時のもやしの噛み込みもなく良好な状態であった。これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は4.9gの重量であった。また、もやしに折れ等の不備な点は見られなかった。
復元性、食感についての評価結果を表1に示す。

<実施例4>
実施例2においてボイル後において、75重量%のマルトース溶液を水切り後のもやしに対して12重量%となるように添加して1分間混合するという工程を追加した点、及び軟包材への充填量を63g程度にした点以外は実施例2と同様に行った。
【0049】
完成後のパックされた乾燥もやしはヒートシール時のもやしの噛み込みもなく良好な状態であった。これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は8.3gの重量であった。また、また、もやしに折れ等の不備な点は見られなかった。復元性、食感についての評価結果を表1に示す。

<実施例5>
実施例2におけるボイル時において、ボイル液を食塩2重量%、乳酸カルシウムを0.1重量%となるように調整した以外は実施例2と同様に行った。完成後のパックされた乾燥もやしはヒートシール時のもやしの噛み込みもなく良好な状態であった。これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は1.9gの重量であった。また、もやしに折れ等の不備な点は見られなかった。復元性、食感についての評価結果を表1に示す。

<実施例6>
実施例5におけるボイル後において、75重量%のマルトース溶液を水切り後のもやしに対して6重量%となるように添加して1分間混合するという工程を追加した点、及び軟包材への充填量を59g程度にした点以外は実施例2と同様に行った。復元性、食感についての評価結果を表1に示す。
【0050】
完成後のパックされた乾燥もやしはヒートシール時のもやしの噛み込みもなく良好な状態であった。これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は5.2gの重量であった。また、もやしに折れ等の不備な点は見られなかった。復元性、食感についての評価結果を表1に示す。

<実施例7>
実施例5におけるボイル後において、75重量%のマルトース溶液を水切り後のもやしに対して12重量%となるように添加して1分間混合するという工程を追加した点、及び軟包材への充填量を63g程度にした点以外は実施例2と同様に行った。復元性、食感についての評価結果を表1に示す。
【0051】
完成後のパックされた乾燥もやしはヒートシール時のもやしの噛み込みもなく良好な状態であった。これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は7.9gの重量であった。また、もやしに折れ等の不備な点は見られなかった。復元性、食感についての評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
糖類を添加することで、乾燥され密な状態で多量のもやしを封入することができることがわかった。さらに、復元性も向上することが判明した。また、ボイル時に乳酸カルシウムを添加することで、食感が改良されより繊維感が得られた。尚、ボイル後のウエットな状態のもやしに糖類を添加することでウエット野菜を軟包材の袋に充填する際に折れ等がなく、作業性においても向上した。

2.ホウレン草の場合
<実施例8>
大きさ30×30mm程度のホウレン草を水洗して、土砂・異物等を除去した後、水切りをしたホウレン草500gを、ボイル液(食塩0.1重量%、重曹溶液0.05重量%)に入れて95℃で60秒程度の処理を行った。
【0054】
得られたボイル後のホウレン草を流水冷却した後、水切りし、グルコースを水切り後のホウレン草に対して12重量%となるように添加して混合した後、30分間静置した後、3分間液切りした。
【0055】
一枚のOPP(30μ)//PE(25μ)の軟包材フィルムを二つ折してその両端をヒートシールすることで開口部を設けた袋(外形が105mm×105mm(開口部のヒートシール後の内径が97mm×97mm))の開口部から上述の液切り後のホウレン草を90gづつ充填した。
【0056】
充填後のウエット状態のホウレン草入り軟包材の厚みを調製した後、これをトレーに整列させ、−25℃の凍結庫において10時間保持した。
凍結後のウエットホウレン草入り軟包材について0.5Torr程度まで減圧した状態で棚温度を60℃で36時間程度、保持した後、真空を解除して、凍結乾燥機より取り出した。
【0057】
凍結乾燥後のホウレン草入り軟包材について、開口部をヒートシールして凍結乾燥ホウレン草を完成させた。完成後のパックされたホウレン草はヒートシール時のホウレン草の噛み込みもなく良好な状態であった。また、これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は13.4gの重量であった。また、ホウレン草に折れ等の不備な点は見られなかった

<比較例3>(凍結乾燥後のホウレン草を自動充填装置の場合)
実施例1で用いたのと同様にグルコース溶液を混合し、液切り後のホウレン草を、凍結乾燥機用の乾燥トレーに密着しないように満遍なく載置して、−25℃の凍結庫において10時間保持した。
【0058】
保持後のトレーについて、0.5Torr程度まで減圧した状態で棚温度を60℃で26時間程度、保持した後、真空を解除して、凍結乾燥機より取り出した。このようにして凍結乾燥されたホウレン草を製造した。
【0059】
凍結乾燥により得られたホウレン草を、自動充填装置(三光機械株式会社製、MC101型)を用いて、種々のサイズの軟包材を用いて自動充填試験を行った。この結果、実施例1で用いたのと同じ一枚の軟包材フィルムを二つ折りしてその両端をヒートシールして開口部を設けた袋(105mm×105mm(内径97mm×97mm))に対して、開口部のシール時の噛み込み率(開口部をヒートシールした場合に内容物のホウレン草がヒートシール部に噛み込んでしまう率)が0.6%程度となる状態を得ようとする場合、前記包材内に充填できる凍結乾燥ホウレン草の量は3.0gであった。

<比較例4>(凍結乾燥後のホウレン草を手作業で充填した場合)
比較例1で用いた凍結乾燥ホウレン草を手作業で充填し、実施例1及び比較例1で用いたのと同様の軟包材にどの程度の量を入れることができるかを試験した。
【0060】
5人の熟練の技術者が通常の手作業(15秒程度)によって、実施例1及び比較例1で用いたのと同じ105mm×105mm(内径97mm×97mm)の2方シールし開口部を残したOPP(30μ)//PE(25μ)の軟包材の袋に対して、凍結乾燥後のホウレン草を入れた。その結果、5人の充填できたホウレン草の量の平均は、5.5gであった。
【0061】
実施例8、比較例3及び比較例4で完成した袋詰め凍結乾燥ホウレン草の対比写真を図3に示す。本発明の製造方法によって得られる袋詰め凍結乾燥ホウレン草は従来よりも極めて多くの乾燥ホウレン草を無理なく封入することができることがわかった。

3.チンゲン菜の場合
<実施例9>
大きさ40×40mm程度のチンゲン菜を水洗して、土砂・異物等を除去した後、水切りをしたチンゲン菜500gを、ボイル液(水)に入れて92℃で120秒程度の処理を行った。
【0062】
得られたボイル後のチンゲン菜を流水冷却した後、遠心脱水機で脱水率65〜70重量%となるように脱水した。脱水後のチンゲン菜に対して、グルコース及び乳糖をそれぞれ5重量%、5重量%となるように添加して混合した後、30分間静置し、3分間液切りした。
【0063】
一枚のOPP(30μ)//PE(25μ)の軟包材フィルムを二つ折してその両端をヒートシールすることで開口部を設けた袋(外形が105mm×105mm(開口部のヒートシール後の内径が97mm×97mm))の開口部から上述の液切り後のホウレン草を85gづつ充填した。
【0064】
充填後のウエット状態のホウレン草入り軟包材の厚みを調製した後、これをトレーに整列させ、−25℃の凍結庫において10時間保持した。
凍結後のウエットチンゲン菜入り軟包材について0.5Torr程度まで減圧した状態で棚温度を60℃で36時間程度、保持した後、真空を解除して、凍結乾燥機より取り出した。
【0065】
凍結乾燥後のチンゲン菜入り軟包材について、開口部をヒートシールして凍結乾燥チンゲン菜を完成させた。完成後のパックされたチンゲン菜はヒートシール時のチンゲン菜の噛み込みもなく良好な状態であった。また、これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は9.9gの重量であった。また、チンゲン菜に折れ等の不備な点は見られなかった

<比較例5>(凍結乾燥後のチンゲン菜を自動充填装置の場合)
実施例1で用いたのと同様の糖類を混合し、液切り後のチンゲン菜を、凍結乾燥機用の乾燥トレーに密着しないように満遍なく載置して、−25℃の凍結庫において10時間保持した。
【0066】
保持後のトレーについて、0.5Torr程度まで減圧した状態で棚温度を60℃で26時間程度、保持した後、真空を解除して、凍結乾燥機より取り出した。このようにして凍結乾燥されたチンゲン菜を製造した。
【0067】
凍結乾燥により得られたチンゲン菜を、自動充填装置(三光機械株式会社製、MC101型)を用いて、種々のサイズの軟包材を用いて自動充填試験を行った。この結果、実施例1で用いたのと同じ一枚の軟包材フィルムを二つ折りしてその両端をヒートシールして開口部を設けた袋(105mm×105mm(内径97mm×97mm))に対して、開口部のシール時の噛み込み率(開口部をヒートシールした場合に内容物のチンゲン菜がヒートシール部に噛み込んでしまう率)が0.6%程度となる状態を得ようとする場合、前記包材内に充填できる凍結乾燥チンゲン菜の量は2.5gであった。

<比較例6>(凍結乾燥後のチンゲン菜を手作業で充填した場合)
比較例5で用いた凍結乾燥チンゲン菜を手作業で充填し、実施例9及び比較例5で用いたのと同様の軟包材にどの程度の量を入れることができるかを試験した。
【0068】
5人の熟練の技術者が通常の手作業(15秒程度)によって、実施例9及び比較例5で用いたのと同じ105mm×105mm(内径97mm×97mm)の2方シールし開口部を残したOPP(30μ)//PE(25μ)の軟包材の袋に対して、凍結乾燥後のホウレン草を入れた。その結果、5人の充填できたチンゲン菜の量の平均は、4.7gであった。
【0069】
実施例9、比較例5及び比較例6で完成した袋詰め凍結乾燥チンゲン菜の対比写真を図4に示す。本発明の製造方法によって得られる袋詰め凍結乾燥チンゲン菜は従来よりも極めて多くの乾燥チンゲン菜を無理なく封入することができることがわかった。

3.白菜の場合
<実施例10>
大きさ40×40mm程度の白菜を水洗して、土砂・異物等を除去した後、水切りをした白菜500gを、ボイル液(水)に入れて86℃で230秒程度の処理を行った。
【0070】
得られたボイル後の白菜を流水冷却した後、遠心脱水機で脱水率65〜70重量%となるように脱水した。脱水後の白菜に対してマルトース、乳糖及びグルタミン酸ソーダをそれぞれ、10重量%、5重量%及び0.75重量%となるように添加して混合後、60〜70℃で30分間加熱した。加熱後、3分間液切りした。
【0071】
一枚のOPP(30μ)//PE(25μ)の軟包材フィルムを二つ折してその両端をヒートシールすることで開口部を設けた袋(外形が105mm×105mm(開口部のヒートシール後の内径が97mm×97mm))の開口部から、上述の液切り後の白菜を95gづつ充填した。
【0072】
充填後のウエット状態の白菜入り軟包材の厚みを調製した後、これをトレーに整列させ、−25℃の凍結庫において10時間保持した。
凍結後のウエット白菜入り軟包材について0.5Torr程度まで減圧した状態で棚温度を60℃で36時間程度保持した後、真空を解除して、凍結乾燥機より取り出した。
【0073】
凍結乾燥後の白菜入り軟包材について、開口部をヒートシールして凍結乾燥白菜を完成させた。完成後のパックされた白菜はヒートシール時の白菜の噛み込みもなく良好な状態であった。また、これらを任意に5点開封してその重量を確認したところ、平均は15.4gの重量であった。また、白菜に折れ等の不備な点は見られなかった

<比較例7>(凍結乾燥後の白菜を自動充填装置の場合)
実施例1で用いたのと同様に糖類及びグルタミン酸ソーダを混合し、加熱後、3分間液切りした白菜を、凍結乾燥機用の乾燥トレーに密着しないように満遍なく載置して、−25℃の凍結庫において10時間保持した。
【0074】
保持後のトレーについて、0.5Torr程度まで減圧した状態で棚温度を60℃で26時間程度、保持した後、真空を解除して、凍結乾燥機より取り出した。このようにして凍結乾燥された白菜を製造した。
【0075】
凍結乾燥により得られた白菜を、自動充填装置(三光機械株式会社製、MC101型)を用いて、種々のサイズの軟包材を用いて自動充填試験を行った。この結果、実施例1で用いたのと同じ一枚の軟包材フィルムを二つ折りしてその両端をヒートシールして開口部を設けた袋(105mm×105mm(内径97mm×97mm))に対して、開口部のシール時の噛み込み率(開口部をヒートシールした場合に内容物の白菜がヒートシール部に噛み込んでしまう率)が0.6%程度となる状態を得ようとする場合、前記包材内に充填できる凍結乾燥白菜の量は2.5gであった。

<比較例8>(凍結乾燥後の白菜を手作業で充填した場合)
比較例5で用いた凍結乾燥白菜を手作業で充填し、実施例9及び比較例5で用いたのと同様の軟包材にどの程度の量を入れることができるかを試験した。
【0076】
5人の熟練の技術者が通常の手作業(15秒程度)によって、実施例9及び比較例5で用いたのと同じ105mm×105mm(内径97mm×97mm)の2方シールし開口部を残したOPP(30μ)//PE(25μ)の軟包材の袋に対して、凍結乾燥後の白菜を入れた。その結果、5人の充填できた白菜の量の平均は、5.0gであった。
【0077】
実施例10、比較例7及び比較例8で完成した袋詰め凍結乾燥白菜の対比写真を図5に示す。本発明の製造方法によって得られる袋詰め凍結乾燥白菜は従来よりも極めて多くの凍結乾燥白菜を無理なく封入することができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜をボイルした後、プラスチック製の軟包材の袋に充填し、前記充填後の袋を開口状態で凍結乾燥した後に開口部を密封する袋詰め乾燥野菜の製造方法。
【請求項2】
前記ボイルの後に、糖類を添加する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の方法で製造される袋詰め乾燥野菜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99314(P2013−99314A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25590(P2012−25590)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【特許番号】特許第5048875号(P5048875)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】