説明

被めっき層形成用組成物、表面金属膜材料およびその製造方法、並びに、金属パターン材料およびその製造方法

【課題】本発明の目的は、表面が平滑であっても、その表面上に形成されるめっき膜(金属膜)と高密着性を達成し、絶縁信頼性に優れたポリマー層を形成しうる被めっき層形成用組成物、および、該組成物を用いて得られるポリマー層を有する積層体を提供することにある。
【解決手段】ラジカル重合性基と、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基と、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、一級アミノ基、および二級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基とを含むポリマーを、含有する被めっき層形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被めっき層形成用組成物、表面金属膜材料およびその製造方法、並びに、金属パターン材料およびその製造方法に関する。より詳細には、所定の種類の官能基を有するポリマーを含む被めっき層形成用組成物、該被めっき層形成用組成物を用いて得られる表面金属膜材料および金属パターン材料、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の製造方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果によって、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、金属配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理することが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点もあった。
【0004】
また、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化等が進んでおり、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等も小型化かつ高密度化が進んでいる。
その中で柔軟性を有する金属層付樹脂フィルム基板は、液晶画面に画像を表示するための駆動用半導体を実装するための基板や屈曲性を要求される稼動部に用いられる基板として汎用されている。近年、液晶画面表示用ドライバーICチップを実装する手法としてCOF[チップオンフィルム]が注目されてきている。COFは従来の実装法の主流であったTCP(テープキャリアーパッケージ)に比べ、ファインピッチ実装が可能であるとともに、ドライバーICの小型化、およびコストダウンを図ることができると言われている。
近年COFにおいて、最近の液晶表示画面の高精細化、液晶駆動用ICの小型化等に伴い、電子回路の高精細化、ファインピッチ化が強く求められるようになってきた。
【0005】
上記の柔軟性を有する樹脂フィルム基板に好適な層間絶縁材料用の組成物として、グリシジルメタクリレートと特定物性を有する合成ゴムと硬化性成分とを含む粘弾性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この樹脂組成物は柔軟な特性を有し、層間絶縁膜として有用であるが、表面に金属膜を形成するに際しては、表面粗化処理なしでは十分な密着を達成し得ないことから、表面の粗面化は必要であり、微細配線の形成には不十分である。
【0006】
また、柔軟性を有する基板または絶縁性樹脂フィルム上に配線パターンを形成する場合、基板または絶縁性樹脂フィルムと配線パターンとの密着性が問題となる。例えば、銅箔上に絶縁性樹脂であるポリイミドワニス層を形成し、熱反応により金属層付樹脂フィルムを形成する場合、その密着性は銅箔層とポリイミドワニス層との密着性によることになる。しかし、銅箔の表面を凹凸処理してアンカー効果により密着性を発現させるのは、配線が細く、配線間が狭くなるほど配線形状に影響を与えない程度に凹凸も小さくせざるを得ず、十分な密着をだすことができないという問題があった。一方、スパッタリング法でポリイミド上に銅を形成させる方法は十分な密着が出ない上に、真空装置が必要になり成膜速度が遅いためコスト高になるという問題があった。
【0007】
この問題を解決するため、基板の表面にプラズマ処理を行い、基板表面に重合開始基を導入し、その重合開始基からモノマーを重合させて、基板表面に極性基を有する表面グラフトポリマーを生成させるという表面処理を行うことで、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良させる方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法によれば、グラフトポリマーが極性基を有することから、温度や湿度変化により水分の吸収や脱離が生じ易く、その結果、形成された金属膜や基板が変形してしまうという問題を有していた。
また、この方法を利用して得られた金属パターンを金属配線基板の配線として使用する際には、基板界面部分に極性基を有するグラフトポリマーが残存し、水分やイオン等を保持しやすくなるため、温・湿度依存性や配線間の耐イオンマイグレーション性や、形状の変化に懸念があった。
特に、プリント配線板などの微細配線に適用した際には、配線(金属パターン)間における高い絶縁性が必要であり、配線間の絶縁信頼性のより一層の向上が要求されているのが現状である。
【0008】
さらに、金属膜との密着性の観点から、金属イオンなどと相互作用を形成する官能基を有するポリマーの使用が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、分子内に極性基を多く有することから、密着性には優れ、微細配線の形成に有用であるものの、配線間の絶縁信頼性の観点からは、なお、改良の余地があった。
このため、微細配線であっても、実用上満足できる程度の密着性が達成され、微細配線間の絶縁性にも優れ、且つ、フレキシブル基板にも適用可能な金属膜の形成手段が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−7756号公報
【特許文献2】特開2007−131875号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の第1の目的は、表面が平滑であっても、その表面上に形成されるめっき膜(金属膜)と高密着性を達成し、絶縁信頼性に優れたポリマー層を形成しうる被めっき層形成用組成物、および、該組成物を用いて得られるポリマー層を有する積層体を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、ポリマー層と金属膜との密着性に優れた表面金属膜材料およびその製造方法、並びに、それを用いた金属パターンの非形成領域の絶縁信頼性に優れた金属パターン材料を提供することにある。
更に、本発明の第3の目的は、配線の絶縁樹脂に対する密着性に優れ、且つ、微細な配線であっても、配線間の絶縁信頼性に優れた配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
【0013】
<1> ラジカル重合性基と、
めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基と、
エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、一級アミノ基、および二級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基とを含むポリマー、を含有する被めっき層形成用組成物。
<2> 前記めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基が、シアノ基である<1>に記載の被めっき層形成用組成物。
<3> 前記ポリマーが、後述する式(1)で表されるユニット、後述する式(2)で表されるユニット、および後述する式(3)で表されるユニットを含むポリマーである、<1>または<2>に記載の被めっき層形成用組成物。
【0014】
<4> 基板と、前記基板上に<1>〜<3>のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物から形成されるポリマー層を有する積層体。
<5> (a1)基板上に、<1>〜<3>のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物を用いてポリマー層を形成する工程と、
(a2)前記ポリマー層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程と、
(a3)前記めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を備える、表面にめっき膜を有する表面金属膜材料の製造方法。
<6> 前記(a1)工程が、基板上に、前記ポリマー層中の前記ポリマーを直接化学結合させることにより行われる<5>に記載の表面金属膜材料の製造方法。
【0015】
<7> 前記(a3)工程で、無電解めっきが行われる、<5>または<6>に記載の表面金属膜材料の製造方法。
<8> <5>〜<7>のいずれかに記載の表面金属膜材料の製造方法により得られた表面金属膜材料。
<9> <5>〜<7>のいずれかに記載の表面金属膜材料の製造方法により得られた表面金属膜材料のめっき膜を、パターン状にエッチングする工程を有する、金属パターン材料の製造方法。
<10> <9>に記載の金属パターン材料の製造方法により得られた金属パターン材料。
<11> <10>に記載の金属パターン材料と、前記金属パターン材料上にエポキシ樹脂を含む絶縁層とを備える配線基板。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表面が平滑であっても、その表面上に形成されるめっき膜と高密着性を達成し、絶縁信頼性に優れたポリマー層を形成しうる被めっき層形成用組成物、および、該組成物から形成されるポリマー層を有する積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、ポリマー層と金属膜との密着性に優れた表面金属膜材料およびその製造方法、並びに、それを用いた金属パターンの非形成領域の絶縁信頼性に優れた金属パターン材料を提供することができる。
更に、本発明によれば、配線の絶縁樹脂に対する密着性に優れ、且つ、微細な配線であっても、配線間の絶縁信頼性に優れた配線基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の被めっき層形成用組成物、該組成物を用いて得られる表面金属膜材料およびその製造方法、並びに金属パターン材料およびその製造方法について説明する。
本発明においては、エポキシ基などの所定の官能基を有するポリマーを使用することにより、密着性に優れためっき膜や、配線間の絶縁信頼性に優れた金属パターンなどを得ることができる。該効果が得られる理由はいくつかあるが、例えば、本発明者らは、従来技術において金属配線間の絶縁信頼性が十分でない原因の一つとして、金属配線が形成されている基板と、金属配線を覆うエポキシ樹脂などによって形成される絶縁層との密着性が必ずしも十分でない点を見出した。その結果、金属配線間の基板と絶縁層との界面において水などの吸収が起こり、金属配線間に金属デンドライトが発生し、金属配線間がショートしていた。
本発明においては、その表面に金属配線が形成されるポリマー層中にエポキシ基などが含まれることにより、金属配線を覆うエポキシ樹脂などの絶縁樹脂層とポリマー層との密着性が向上し、その結果、金属デンドライトなどの発生が抑制され、金属配線間の絶縁信頼性が向上している。
まず、本発明の被めっき層形成用組成物に含まれるポリマーについて詳述する。
【0018】
<ポリマー>
本発明で使用されるポリマーは、ラジカル重合性基と、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基と、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、一級アミノ基、および二級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基(以後、「特定官能基」とも称する)とを含むポリマーである。これらの官能基をポリマーが有することにより、該ポリマーを用いて得られるポリマー層とその上に形成される絶縁層との密着性が向上し、結果として金属配線間の絶縁性能がより良好なものとなる。
【0019】
(ラジカル重合性基)
本発明で使用されるポリマーには、ラジカル重合性基が含まれる。該基を有することにより、後述する基板との優れた密着性が発現されると共に、膜中で架橋反応が進行し強度に優れた膜を得ることができる。
ラジカル重合性基の種類は特に制限されず、例えば、エチレン性不飽和性基などが挙げられる。より具体的には、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、ビニル基、マレイミド基などが挙げられる。中でも、メタクリル酸エステル基(メタアクリロイル基)、アクリル酸エステル基(アクリロイル基)、ビニル基、スチリル基が好ましく、アクリロイル基、メタアクリロイル基が特に好ましい。
【0020】
(めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基)
本発明で使用されるポリマーには、後述するめっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基が含まれる。該基が含まれることにより、後述するめっき触媒などの優れた吸着性が達成され、結果としてめっき処理の際に十分な厚さのめっき膜を得ることができる。
【0021】
非解離性官能基とは、官能基が解離によりプロトンを生成しない官能基を意味する。このような官能基は、めっき触媒またはその前駆体、または金属と相互作用する機能はあっても、解離性の極性基(親水性基)のように高い吸水性、親水性を有するものではないため、湿度変化などによるめっき層の密着力の変動などが少ない。
【0022】
非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基、含リン官能基などが好ましい。より具体的には、イミド基、ピリジン基、3級アミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基などの含酸素官能基、チオエーテル基、チオキシ基、チオフェン基、チオール基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、フォスフィン基、ホスフェート基、ホスフォロアミド基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、および不飽和エチレン基などが挙げられる。また、隣接する原子または原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。さらに、シクロデキストリンやクラウンエーテルなどの包接能を有する化合物に由来する官能基であってもよい。
なかでも、極性が高く、めっき触媒などへの吸着能が高いことから、エーテル基(より具体的には、−O−(CH2)n−O−(nは1〜13の整数)で表される構造)、またはシアノ基が特に好ましく、シアノ基がさらに好ましい。
【0023】
一般的に、高極性になるほど吸水率が高くなる傾向であるが、シアノ基はポリマー層中にて互いに極性を打ち消しあうように相互作用しあうため、層が緻密になり、且つ、ポリマー層全体としての極性が下がるため、吸水性が低くなる。また、後述する工程において、ポリマー層の良溶媒にてめっき触媒を吸着させることで、シアノ基が溶媒和されてシアノ基間の相互作用がなくなり、めっき触媒と相互作用できるようになる。よって、シアノ基を有するポリマー層は低吸湿でありながら、めっき触媒とはよく相互作用する、相反する性能を発揮する点で、好ましい。
なお、非解離性官能基は1種のみ含まれていてもよいし、異なる種類の官能基が2種以上含まれていてもよい。
【0024】
(特定官能基)
本発明で使用されるポリマーには、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、一級アミノ基、および二級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基(特定官能基)が含有される。該官能基が含まれることにより、該ポリマーより形成されるポリマー層と、このポリマー層上に形成されるエポキシ樹脂含有絶縁層との密着性が改善し、結果として金属配線間の絶縁信頼性が向上する。
【0025】
特定官能基は、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、一級アミノ基、または二級アミノ基であり、エポキシ樹脂含有絶縁層との密着性がより優れる点と、吸水率の点から、エポキシ基、オキセタニル基がより好ましい。該基はポリマー中に一種のみ含まれていてもよく、2種以上の基が含まれていてもよい。
【0026】
<好適実施態様>
本発明のポリマーの好適実施態様としては、合成が容易であり、基板との密着性がより優れる点から、ラジカル重合性基を有するユニット(繰り返し単位)、非解離性官能基を有するユニット、および特定官能基を有するユニットを含む共重合体(3元系ポリマー)であることが好ましい。
また、より好ましい実施態様として、式(1)で表されるユニット、式(2)で表されるユニット、式(3)で表されるユニットを含有するポリマー(共重合体)が挙げられる。
【0027】
【化1】

【0028】
(式(1)で表されるユニット)
式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
1〜R4が、置換または無置換のアルキル基である場合、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましい。より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0029】
なお、R1としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
2としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
3としては、水素原子が好ましい。
4としては、水素原子が好ましい。
【0030】
YおよびZは、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。該有機基は、発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0031】
置換または無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、または、これらの基がメトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたものが好ましい。
置換または無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたフェニレン基が好ましい。
【0032】
YおよびZとしては、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。
【0033】
1は、置換または無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記YおよびZで表される有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
1としては、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、無置換のアルキレン基およびウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
1の構造として、より具体的には、式(1−1)、または式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0034】
【化2】

【0035】
式(1−1)および式(1−2)中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基である。好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、またはブチレン基、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0036】
(好適態様)
式(1)で表されるユニットの好適態様として、式(4)で表されるユニットが挙げられる。
【0037】
【化3】

【0038】
式(4)中、R1、R2、ZおよびL1は、式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Tは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0039】
式(4)で表されるユニットの好適態様として、式(5)で表されるユニットが挙げられる。
【0040】
【化4】

【0041】
式(5)中、R1、R2、およびL1は、式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。TおよびQは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0042】
上記式(4)および式(5)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。
また、上記式(4)および式(5)において、L1は、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0043】
(式(2)で表されるユニット)
式(2)中、R5は、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R5で表される置換または無置換のアルキル基は、上述したR1〜R4で表される置換または無置換のアルキル基と同義である。
5としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0044】
XおよびL2は、それぞれ独立して、単結合、または置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記ZおよびYで表される二価の有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0045】
Xとしては、単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられ、より好ましくは単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)である。
【0046】
2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。
中でも、L2は総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、L2の総炭素数とは、L2で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、およびこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0047】
式(2)で表されるユニットの好適態様として、式(6)で表されるユニットが挙げられる。
【0048】
【化5】

【0049】
上記式(6)中、R5およびL2は、式(2)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Uは、酸素原子、またはNR’(R’は、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0050】
式(6)におけるL2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(6)においては、L2中のシアノ基との連結部位が、直鎖、分岐、または環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(6)におけるL2中のシアノ基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0051】
(式(3)で表されるユニット)
式(3)中、R6は、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
6としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
3は、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。L3で表される二価の有機基の定義は、上記ZおよびYで表される二価の有機基と同義である。
3としては、アルキレン基が好ましい。
【0052】
Wは、単結合、または置換若しく無置換の二価の有機基を表す。Wで表される二価の有機基の定義は、上記ZおよびYで表される二価の有機基と同義である。
Wとしては、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。
【0053】
Vは、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基(−NCO)、ブロックイソシアネート基、一級アミノ基(−NH2)、または二級アミノ基を表す。なかでも、エポキシ基、オキセタニル基、ブロックイソシアネート基が好ましい。
オキセタニル基としては、式(8)で表される基が好ましい。式(8)中、RCは水素原子またはアルキル基を表す。二級アミノ基としては、−NHRd(Rdは、アルキル基を表し、炭素数1〜8好ましい。)で表される基が好ましい。なお、エポキシ基としては、脂環式エポキシ基も含まれる。
また、ここでいう、ブロックイソシアネート基とは、イソシアネート基が保護基でブロックされ、熱または湿気により容易にブロックが外れてイソシアネート基を発生しうる基をいう。例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、トリアゾール類、カプロラクタム類等のブロック剤等でブロックしたイソシアネート基が好ましく挙げられる。
【0054】
アルコール類の好ましい例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、ラウリルアルコール、t−ブタノール、シクロヘキサノール等を挙げることができる。フェノール類の好ましい例としては、キシレノール、ナフトール、4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール等を挙げることができる。オキシム類の好ましい例としては、2,6−ジメチル−4−ヘプタノンオキシム、メチルエチルケトオキシム、2−ヘプタノンオキシム等が挙げられる。その他、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール等を好適に用いることができる。これらのなかでも、ブロック剤としてはメチルエチルケトオキシム、3,5−ジメチルピラゾールが好ましい。
ブロックイソシアネート基を有するモノマーとしては、カレンズMOI-BM(商品名:昭和電工(株))、カレンズMOI-BP(商品名:昭和電工(株))などが市販されており、好適に用いることができる。
【0055】
【化6】

【0056】
式(3)で表されるユニットの好適態様として、式(7)で表されるユニットが挙げられる。
【0057】
【化7】

【0058】
上記式(7)中、V、R6およびL3は、式(3)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Qは、酸素原子、またはNR’(R’は、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0059】
ポリマー中における式(1)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、後述する基板との密着性がより優れる点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましい。5モル%未満の場合、反応性(硬化性、重合性)が低下することがあり、50モル%を超える場合、ポリマーの合成の際にゲル化が起きやすく、反応の制御が難しくなる。
【0060】
ポリマー中における式(2)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、めっき触媒などに対する吸着性の点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜94モル%が好ましく、10〜80モル%がより好ましい。
【0061】
ポリマー中における式(3)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、後述する絶縁層との密着性がより優れる点で、全ユニット(100モル%)に対して、1〜50モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましい。
【0062】
本発明のポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、本発明のポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、本発明のポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0063】
<ポリマーの合成方法>
上記ポリマーの合成方法は特に限定されず、使用されるモノマーも市販品または公知の合成方法を組み合わせて合成したものであってもよい。本発明のポリマーは、特許公開2009−7662号の段落[0120]〜[0164]に記載の方法などを参照して合成することができる。
なお、ポリマーの合成方法としては、以下の方法が好ましく挙げられる。
i)ラジカル重合性基を有するモノマー、非解離性官能基を有するモノマー、および特定官能基を有するモノマーを共重合する方法、ii)非解離性官能基を有するモノマー、特定官能基を有するモノマー、およびラジカル重合性基前駆体を有するモノマーを共重合させ、次に塩基などの処理によりラジカル重合性基を導入する方法、iii)非解離性官能基を有するモノマー、特定官能基を有するモノマー、およびラジカル重合性基導入のための反応性基を有するモノマーを共重合させ、ラジカル重合性基を導入する方法が挙げられる。
合成適性の観点から、好ましい方法としては、上記ii)および上記iii)の方法である。合成する際の重合反応の種類は特に限定されず、ラジカル重合で行うこと好ましい。
なお、上記で使用されるモノマーは市販品や公知の物質を用いることができ、例えば、非解離性官能基を有するモノマーとしては、特開2009−7662号公報の段落[0081]〜[0084]に記載される化合物などが挙げられる。
【0064】
より具体的に、上記ii)の合成方法において、ラジカル重合性基前駆体をラジカル重合性基に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用することが好ましい。
なお、下記式中、Aは重合性基を有する有機団、R1〜R3は、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基、BおよびCはそれぞれ独立して脱離反応により除去される脱離基であり、A、Bのいずれか一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子、スルホン酸エステル基、エーテル基、またはチオエーテル基を表す。ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。
また、塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物または炭酸塩、有機アミン化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
【0065】
【化8】

【0066】
また、上記iii)の合成方法において、ラジカル重合性基導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基としてカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、またはイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。ポリマーの反応性基と、モノマー中の反応性基との組み合わせとしては、以下のようなパターンがある。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの反応性基)=(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
【0067】
なお、本発明のポリマーの合成方法として、側鎖にヒドロキシル基を有するポリマー、および、イソシアネート基とラジカル重合性とを有する化合物を用い、該ヒドロキシル基に該イソシアネート基を付加させることによりL1中のウレタン結合を形成することが好ましい。
【0068】
非解離性官能基を有するモノマーとしては、例えば、シアノメチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、1−シアノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0069】
本発明におけるポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも3000〜150000の範囲である。
【0070】
【化9】

【0071】
【化10】

【0072】
【化11】

【0073】
<被めっき層形成用組成物>
本発明の被めっき層形成用組成物には、上記ポリマーが含まれる。
被めっき層形成用組成物中のポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、後述するポリマー層の層厚の制御などがしやすい。
【0074】
(溶剤)
本発明の被めっき層形成用組成物は、上記ポリマー以外に、溶剤を含んでいてもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
この中でも、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
また、上記ポリマーを含有する組成物を塗布液として用いる場合には、取り扱い安さから、沸点が50〜150℃の溶剤を用いることが好ましい。
なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0075】
また、更に、該組成物には、必要に応じて、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、硬化剤/硬化促進剤、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レべリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。
【0076】
任意の基板などにポリマー層を形成する際に、組成物を液状のまま接触させる場合、任意の方法により行うことができる。塗布法によりポリマー層を形成する場合の塗布量は、めっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用性の点、および、均一な塗布膜を得る点から、固形分換算で0.1g/m2〜10g/m2が好ましく、特に0.5g/m2〜5g/m2が好ましい。
【0077】
<積層体>
本発明の被めっき層形成用組成物は、任意の固体表面にめっき金属の受容層を形成するのに有用である。従って、任意の基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を用いて形成されるポリマー層を備える積層体は、基板上に密着性良好なめっき膜を形成するのに有用である。
【0078】
<表面金属膜材料の製造方法>
次に、本発明の被めっき層形成用組成物を用いた表面金属膜材料の製造方法について、以下に説明する。本発明の表面金属膜材料の製造方法は特に限定されないが、以下の(a1)〜(a3)工程を経て製造されることが好ましい。
(a1)基板上に、上記被めっき層形成用組成物を用いてポリマー層を形成する工程
(a2)該ポリマー層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程、
(a3)該めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程
ここで、(a1)工程が、基板上に、上述したポリマーを直接化学結合させることにより行われることが好ましい。
また、(a3)工程におけるめっき工程は、無電解めっき工程であることが好ましい。
以下、各工程について説明する。
【0079】
<(a1)工程(ポリマー層形成工程)>
(a1)工程は、上記組成物を用いて基板上にポリマー層を製造する工程であって、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基、ラジカル重合性基、および特定官能基を有するポリマーを基板表面と直接化学結合させることにより行われることが好ましい。
この工程により、基板上にポリマー層を有する積層体を得ることができる。また、(a1)工程が、(a1−1)基材上に、重合開始剤を含有する、または重合開始可能な官能基を有する重合開始層(または、密着補助層)が形成された基板を製造する工程と、(a1−2)該重合開始層(または、密着補助層)上に、非解離性官能基を有し、且つ、該重合開始層(または、密着補助層)と直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する工程であることも好ましい態様である。
また、上記(a1−2)工程は、重合開始層(または、密着補助層)上に、上述したポリマーを接触させた後、エネルギーを付与することにより、基板表面に当該ポリマーを直接化学結合させる工程であることが好ましい。
【0080】
(表面グラフト)
基板上におけるポリマー層の形成は、一般的な表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いる。グラフト重合とは、高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。特に、活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には、表面グラフト重合と呼ばれる。
【0081】
本発明に適用される表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、p135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0082】
ポリマー層を形成する際には、上記の表面グラフト法以外にも、高分子化合物鎖の末端に、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を付与し、これと基板表面に存在する官能基とのカップリング反応により結合させる方法を適用することもできる。
これらの方法の中でも、より多くのグラフトポリマーを生成する観点からは、光グラフト重合法、特に、UV光による光グラフト重合法を用いてポリマー層を形成することが好ましい。
【0083】
(基板)
本発明における「基板」とは、その表面が、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基を有するポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有するものであり、基板自体がこのような表面特性を有するものであってもよく、また、基材上に別途中間層(例えば、後述する重合開始層または密着補助層)を設け、該中間層がこのような特性を有するものであってもよい。つまり、基材と該中間層とで基板を形成していてもよい。
【0084】
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、上記ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
【0085】
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0086】
また、本発明の金属パターン材料の製造方法により得られた金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、または、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0087】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機または有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0088】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でも、またそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0089】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)、または、これとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92, 1252-1258(2004)に記載)、液晶性ポリマー(具体的には、クラレ製のベクスターなど)、フッ素樹脂(PTFE)などが挙げられる。
【0090】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これは、それぞれの欠点を補い、より優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。たとえば、PPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、或いは重合性官能基を導入したPPEとそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、“電子技術”2002/9号、P35に記載されている。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂および/またはフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂および/またはポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
【0091】
本発明に用いられる基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸(後述するRz)が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面凹凸(中間層や重合開始層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0092】
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(a1)工程を施すことで、樹脂フィルムの両面にポリマー層を形成することができる。このように樹脂フィルム(基板)の両面にポリマー層が形成された場合には、更に、後述する(a2)工程、および(a3)工程を行うことで、両面に金属膜が形成された表面金属膜材料を得ることができる。
【0093】
本発明において、基板表面に活性種を与え、それを起点としてグラフトポリマーを生成させる表面グラフト重合法を用いる場合、グラフトポリマーの生成に際しては、基材上に、重合開始剤を含有する、または重合開始可能な官能基を有する重合開始層を形成した基板を用いることが好ましい。この基板を用いることで、活性点を効率よく発生させ、より多くのグラフトポリマーを生成させることができる。
以下、本発明における重合開始層について説明する。なお、基材が板状物であれば、その両面に重合開始層を形成してもよい。
【0094】
(重合開始層)
本発明における重合開始層としては、高分子化合物と重合開始剤とを含む層や、重合性化合物と重合開始剤とを含む層、重合開始可能な官能基を有する層が挙げられる。本発明における重合開始層は、必要な成分を、溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基板表面上に設け、加熱または光照射により硬膜し、形成することができる。
【0095】
(a)重合性化合物
重合開始層に用いられる重合性化合物は、基材との密着性が良好であり、且つ、活性光線照射などのエネルギー付与により表面グラフトポリマーを生成するものであれば特に制限はなく、多官能モノマー等を用いてもよいが、特に好ましくは、分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーを用いる態様である。
【0096】
重合性化合物の含有量は、重合性層中、固形分で0〜100質量%の範囲が好ましく、10〜80質量%の範囲が特に好ましい。
【0097】
(b)重合開始剤
重合開始層には、エネルギー付与により重合開始能を発現させるための重合開始剤を含有することが好ましい。ここで用いられる重合開始剤は、例えば、特開2007−154306号公報の段落番号〔0043〕から〔0044〕に記載されており、これらに代表される公知の重合開始剤を目的に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため、光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0098】
光重合開始剤は、照射される活性光線に対して活性であり、表面グラフト重合が可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができるが、反応性の観点からはラジカル重合開始剤が好ましい。
【0099】
重合開始剤の含有量は、重合開始層中、固形分で0.1〜70質量%の範囲が好ましく、1〜40質量%の範囲が特に好ましい。
【0100】
重合性化合物および重合開始剤を塗布する際に用いる溶媒は、それらの成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、特開2007−154306号公報段落番号〔0045〕に記載されている溶剤を使用することができる。
これらの溶媒は、単独または混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0101】
重合開始層を基板上に形成する場合の塗布量は、充分な重合開始能の発現、および、膜性を維持して膜剥がれを防止するといった観点からは、乾燥後の質量で、0.1g/m2〜20g/m2が好ましく、更に、1g/m2〜15g/m2が好ましい。
【0102】
(グラフトポリマーの生成)
(a1)工程におけるグラフトポリマーの生成態様としては、前述した如く、基板表面に存在する官能基と、高分子化合物がその末端または側鎖に有する反応性官能基とのカップリング反応を利用する方法や、光グラフト重合法を用いることができる。
本発明においては、基材上に重合開始層が形成された基板を用い、該重合開始層上に、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基(相互作用性基)を有し、且つ、該重合開始層と直接化学結合したポリマーを含むポリマー層を形成する態様〔(a1−2)工程〕が好ましい。更に好ましくは、重合開始層上に、上記ポリマーを接触させた後、エネルギーを付与することにより、前記基板表面に当該ポリマーを直接化学結合させる態様である。即ち、上記ポリマーを含有する組成物を、重合開始層表面に接触させながら、当該重合開始層表面に生成する活性種により直接結合させるものである。
【0103】
(密着補助層)
本発明においては、重合開始層に代えて密着補助層を設けることも可能である。例えば、後述する基材が、多層積層板、ビルドアップ基板、またはフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該基材との密着性の観点から、密着補助層を形成する際に用いられる樹脂組成物として、絶縁樹脂組成物が用いられることが好ましい。
以下、基材が絶縁樹脂の場合に好適な絶縁樹脂組成物から形成される密着補助層の態様について説明する。
【0104】
密着補助層を形成する際に用いられる絶縁樹脂組成物は、基材を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよいが、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、基材を構成する絶縁樹脂と同じ種類の絶縁樹脂を使用することが密着の点で好ましい。また、これ以外の成分として、密着補助層の強度を高める、また、電気特性を改良するために、無機若しくは有機の粒子を添加してもよい。
【0105】
なお、本発明における絶縁樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シソシアネート系樹脂等が挙げられる。
【0106】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0107】
本発明における密着補助層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて、種々の化合物を添加することができる。
具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0108】
密着補助層には、前述のように、被めっき層形成用組成物中のポリマーと相互作用を形成し得る活性点を発生させる活性種(化合物)が用いられることが好ましい。この活性点を発生させるためには、何らかのエネルギーを付与すればよく、好ましくは、光(紫外線、可視光線、X線など)、プラズマ(酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、熱、電気、等が用いられる。更に、酸化性の液体(過マンガン酸カリウム溶液)などによって表面を化学的に分解することで活性点を発生させてもよい。
活性種の例としては、前述した重合開始層中に添加される熱重合開始剤、光重合開始剤が好ましく挙げられる。具体的には、特開2007−154306号公報段落番号〔0043〕、〔0044〕に記載されている。ここで、密着補助層に含有させる重合開始剤の量は、固形分で0.1〜50質量%であることが好ましく、1.0〜30質量%であることがより好ましい。この手段により、密着補助層は前述の重合開始層と同様の機能を有することになる。
【0109】
本発明における密着補助層の厚みは、一般に、0.1〜10μmの範囲であり、0.2〜5μmの範囲であることが好ましい。
上記密着補助層を構成する成分を含む塗布液を塗布する際に用いる溶媒は、それらの成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどを使用することができる。上記例示溶媒は、単独または混合して使用することができる。塗布液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0110】
密着補助層を基材上に形成する場合の塗布量は、十分な重合開始能の発現、および、膜性を維持して膜剥がれを防止するといった観点から、乾燥後の質量で、0.1g/m2〜20g/m2が好ましく、0.1g/m2〜15g/m2がより好ましく、0.1g/m2〜2g/m2が更に好ましい。
【0111】
本発明においては、上記のように、基材上に上記の密着補助層形成用の組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜させて密着補助層を形成するが、この時、加熱および/または光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、密着補助層上にグラフトポリマーが生成した後に密着補助層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適性の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
本発明においては、ポリマー層の下層として、重合開始層または密着補助層を設けることが可能であり、密着補助層を設けることが好ましい。
【0112】
被めっき層形成用組成物と上述した基板との接触は、所望により重合開始層または密着補助層が形成された基板を、被めっき層形成用組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、本発明の組成物からなる層を基板表面(重合開始層または密着補助層表面)に、塗布法により形成することが好ましい。
【0113】
上述した被めっき層形成用組成物を接触させる場合には、その塗布量は、めっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で、0.1g/m2〜10g/m2が好ましく、特に0.5g/m2〜5g/m2が好ましい。
なお、基板上に、上記組成物を塗布し、乾燥させて、ポリマー層を形成する場合、塗布と乾燥との間に、20℃〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0114】
(エネルギーの付与)
基板表面へのエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量および光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0115】
なお、エネルギーの付与を露光にて行う場合、その露光パワーは、グラフト重合を容易に進行させるため、また、生成されたグラフトポリマーの分解を抑制するため、10mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは50mJ/cm2〜3000mJ/cm2の範囲である。
また、重合性基および非解離性官能基を有する化合物として、平均分子量2万以上、重合度200量体以上のポリマーを使用すると、低エネルギーの露光でグラフト重合が容易に進行するため、生成したグラフトポリマーの分解を更に抑制することができる。
【0116】
以上説明した(a1)工程により、基板上には、相互作用性基を有するグラフトポリマーからなるポリマー層(グラフトポリマー層)を形成することができる。
【0117】
得られたポリマー層が、例えば、pH12のアルカリ性溶液に添加し、1時間攪拌したときの重合性基部位の分解が50%以下である場合は、該ポリマー層に対して高アルカリ性溶液による洗浄を行うことができる。
【0118】
<(a2)工程(めっき触媒付与工程)>
(a2)工程では、上記(a1)工程において形成されたポリマー層に、めっき触媒またはその前駆体を付与する。本工程においては、ポリマー層を構成するグラフトポリマーが有する非解離性官能基(例えば、シアノ基)が、その機能に応じて、付与されためっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、めっき触媒またはその前駆体としては、後述する(a3)めっき工程における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒またはその前駆体は、(a3)めっき工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、本工程において用いられるめっき触媒またはその前駆体は、無電解めっき触媒またはその前駆体であることが好ましい。
【0119】
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができる。例えば、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(例えば、Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤または保護剤により調節することができる。
【0120】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、ポリマー層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0121】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いてポリマー層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)、M(OAc)n(Mは、n価の金属原子を表し、Acはアセチル基を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、および触媒能の点で、Pdイオンが好ましい。
【0122】
(その他の触媒)
後述する(a3)工程において、ポリマー層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、非解離性官能基(シアノ基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0123】
無電解めっき触媒である金属、または、無電解めっき前駆体である金属塩をポリマー層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適当な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液または溶液をポリマー層上に塗布するか、或いは、その分散液または溶液中にポリマー層が形成された基板を浸漬すればよい。
また、(a1)工程において、表面グラフト重合法を用いる場合、基板上に、上述した組成物を接触させるが、この組成物中に、無電解めっき触媒またはその前駆体を添加する方法を用いてもよい。上記ポリマーと、無電解めっき触媒またはその前駆体と、を含有する組成物を、基板上に接触させて、表面グラフト重合法を適用することにより、非解離性官能基(例えば、シアノ基)を有し、且つ、基板と直接化学結合したポリマーと、めっき触媒またはその前駆体と、を含有するポリマー層を形成することができる。なお、この方法を用いれば、本発明における(a1)工程と(a2)工程とが1工程で行えることになる。
【0124】
(有機溶剤)
めっき触媒またはその前駆体を含有する液(めっき触媒液)には、有機溶剤を含有することができる。この有機溶剤を含有することで、ポリマー層に対するめっき触媒またはその前駆体の浸透性が向上し、非解離性官能基に効率よくめっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
めっき触媒液の調製に用いられる溶剤としては、ポリマー層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、めっき触媒液の主たる溶媒(分散媒)として一般に水が用いられることから、以下に詳述する水溶性の有機溶剤が好ましい。
【0125】
(水溶性有機溶剤)
本発明のめっき触媒液に使用される水溶性有機溶剤としては、水に1質量%以上溶解する溶剤であれば、特に限定されない。例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などの水溶性の有機溶剤が挙げられる。
【0126】
上記のように無電解めっき触媒またはその前駆体を接触させることで、ポリマー層中の非解離性官能基(例えば、シアノ基)に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、または、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、めっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
以上説明した(a2)工程を経ることで、ポリマー層中の非解離性官能基(例えば、シアノ基)とめっき触媒またはその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0127】
<(a3)工程(めっき工程)>
(a3)工程では、めっき触媒(例えば、無電解めっき触媒)またはその前駆体が付与されたポリマー層に対し、めっきを行うことで、めっき膜(金属膜)が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、上記(a2)工程において、ポリマー層との間に相互作用を形成しためっき触媒またはその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、ポリマー層中に発現するハイブリッド構造の形成性および密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0128】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体がポリマー層に吸着または含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、濃度は0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%が好適である。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0129】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0130】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶剤である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0131】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO4、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH3)4)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0132】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0133】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき膜は、SEMによる断面観察により、ポリマー層中に無電解めっき触媒やめっき金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、更にポリマー層上にめっき金属が析出していることが確認された。基板とめっき膜との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(触媒金属またはめっき金属)との界面が平滑(例えば、凹凸差が500nm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0134】
(電気めっき)
本工程おいては、(a2)工程において付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつめっき膜(金属膜)を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0135】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0136】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚は、用途に応じて異なり、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0137】
本発明において、前述のめっき触媒、めっき触媒前駆体に由来する金属や金属塩、および/または、無電解めっきにより、ポリマー層中に析出した金属が、該層中でフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、金属膜とポリマー層との密着性を更に向上させることができる。
ポリマー層中に存在する金属量は、基板断面を金属顕微鏡にて写真撮影したとき、ポリマー層の最表面から深さ0.5μmまでの領域に占める金属の割合が5〜50面積%であり、ポリマー層と金属界面の算術平均粗さRa(JIS B0633−2001)が0.05μm〜0.5μmである場合に、更に強い密着力が発現される。
【0138】
<表面金属膜材料>
本発明の表面金属膜材料の製造方法の各工程を経ることで、本発明の表面金属膜材料を得ることができる。
本発明の表面金属膜材料の製造方法により得られた表面金属膜材料は、高温高湿下であっても、金属膜の密着力の変動が少ないといった効果を有する。この表面金属膜材料は、例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL(Copper Clad Laminate)材料、電気配線用材料等の種々の用途に適用することができる。
【0139】
<金属パターン材料、およびその製造方法>
上記の表面金属膜材料における金属膜を、パターン状にエッチングする工程を行うことで、金属パターン材料を製造することができる。即ち、本発明の表面金属膜材料中の金属膜(めっき膜)をパターニングすることで配線(金属パターン)とすることができる。
このエッチング工程(a4工程)について以下に詳述する。
【0140】
<(a4)工程(エッチング工程)>
(a4)工程は、上記(a3)工程で形成された金属膜(めっき膜)をパターン状にエッチングする工程である。即ち、本工程では、基板表面全体に形成されためっき膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望の金属パターンを形成することができる。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0141】
サブトラクティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液でめっき膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などの簡便性の点で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0142】
また、セミアディティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジストパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、めっき膜をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジスト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては上記記載の手法が使用できる。
【0143】
以上の(a1)〜(a4)工程を経ることにより、所望の金属パターンを有する金属パターン材料が製造される。
【0144】
一方、(a1)工程で得られるポリマー層をパターン状に形成し、パターン状のポリマー層に対し(a2)、および(a3)工程を行うことで、金属パターン材料を製造することもできる(フルアディティブ工法)。
(a1)工程で得られるポリマー層をパターン状に形成する方法としては、具体的には、ポリマー層を形成する際に付与されるエネルギーをパターン状とすればよく、また、エネルギーを付与しない部分を現像で除去することでパターン状のポリマー層を形成することができる。
なお、現像方法としては、ポリマー層を形成するために用いられる材料を溶解しうる溶剤に浸漬することで行われる。浸漬する時間は1分〜30分が好ましい。パターン形成したポリマー層上にめっき膜を形成するための(a2)、および(a3)工程は、前述の方法と同じである。
【0145】
<金属パターン材料>
本発明の金属パターン材料を構成するポリマー層は、前述のように、吸水性が低く、疎水性が高いため、このポリマー層の露出部(金属パターンの非形成領域)は、絶縁信頼性に優れる。
本発明の金属パターン材料は、表面の凹凸が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の基板上の全面または局所的に、金属膜(めっき膜)を設けたものであることが好ましい。また、基板と金属パターンとの密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
【0146】
なお、基板表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値である。
より詳細には、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下であることが好ましい。
また、基板と金属膜との密着性の値は、金属膜(金属パターン)の表面に、銅板(厚さ:0.1mm)をエポキシ系接着剤(アラルダイト、チバガイギー製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行うか、または、金属膜自体の端部を直接剥ぎ取り、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行って得られた値である。
【0147】
<配線基板>
本発明の金属パターン材料の製造方法により得られた金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
なかでも、本発明の金属パターン材料の製造方法により製造された金属パターンを配線として有する配線基板は、平滑な基板との密着性に優れた配線が形成でき、高周波特性も良好であるとともに、微細な高密度配線であっても、配線間の絶縁信頼性に優れる。
本発明における配線基板を多層配線基板として構成する場合、金属パターン材料の表面に、さらに絶縁樹脂層(層間絶縁膜)を積層して、その表面にさらなる配線(金属パターン)を形成してもよく、または、金属パターン材料表面にソルダーレジストを形成してもよい。
【0148】
本発明に用いうる層間絶縁膜としては、エポキシ樹脂、アラミド樹脂、結晶性ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、フッ素含有樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、全フッ素化ポリイミド、全フッ素化アモルファス樹脂など)、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂など挙げられる。
これらの中でも、上述したポリマー層との密着性、寸法安定性、耐熱性、電気絶縁性等の観点から、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、または液晶樹脂を含有するものであることが好ましく、より好ましくはエポキシ樹脂である。具体的には、味の素ファインテクノ(株)製、ABF GX−13などが挙げられる。
【0149】
また、金属パターン材料表面における配線保護のために用いられるソルダーレジストについては、例えば、特開平10−204150号公報や、特開2003−222993号公報等に詳細に記載され、ここに記載の方法を所望により本発明にも適用することができる。ソルダーレジストは市販品を用いてもよく、具体的には、例えば、太陽インキ製造(株)製 PFR800、PSR4000(商品名)、日立化成工業(株)製 SR7200G、などが挙げられる。
本発明の被めっき層形成用組成物は、これを用いて形成された金属パターン材料表面に層間絶縁樹脂膜やソルダーレジスト膜を形成する際に、被めっき層形成用組成物に含有されるエポキシ基等の特定官能基を有するポリマーの機能により、これらの層とも良好な密着性を発現するという効果を有するものである。
【実施例】
【0150】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0151】
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、電気的絶縁層として味の素ファインテクノ社製エポキシ系絶縁膜GX−13(膜厚45μm)を、加熱、加圧して、真空ラミネーターにより0.2MPaの圧力で100℃〜110℃の条件により接着して、基材を得た。
【0152】
(密着補助層の形成)
JER806(ビスフェノールF型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製)11.9質量部、LA7052(フェノライト、硬化剤:大日本インキ化学工業製)4.7質量部、YP50−35EK(フェノキシ樹脂、東都化成製)21.7質量部、シクロヘキサノン61.6質量部、および2−エチル−4−メチルイミダゾール(硬化促進剤)0.1質量部を混合した混合溶液を、ろ布(メッシュ#200)にて濾過し、塗布液を調製した。
この塗布液を、スピンコータ(300rpmで5秒回転後、1500rpmで25秒回転)にて上記基材に塗布し、その後、170℃で乾燥して硬化させた。これにより、基板A1を得た。硬化した密着補助層の厚みは1.3μmであった。この基板A1の表面凹凸(Rz)は0.5μm(200μm2)であった。
【0153】
(重合開始層の形成)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量176、ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート825)5g、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライトLA−7052、不揮発分62%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120)2g、フェノキシ樹脂MEKワニス(東都化成(株)製、YP−50EK35、不揮発分35%)10.7g、重合開始剤として2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン2.3g、MEK5.3g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.053gを混合し、攪拌して完全に溶解させて、ろ布(メッシュ#200)にて濾過し、塗布液を調製した。
この塗布液を、スピンコータ(300rpmで5秒回転後、1500rpmで25秒回転)にて上記基材に塗布し、その後、180℃で30分間硬化処理を施し、硬化させた。これにより、基板B1を得た。硬化した重合開始層の厚みは1.8μmであった。この基板B1の表面凹凸(Rz)は0.2μm(200μm2)であった。
【0154】
[ポリマーの合成]
(ポリマーAの合成)
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート23gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成製)5.60g、2−シアノエチルアクリレート18.0g、グリシジルメタクリレート6.8g、およびV−65(和光純薬製)0.48gのジメチルカーボネート23g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、アセトニトリル11gを加え10分間攪拌後、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.13g、U−600(日東化成製)0.40g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)12.1g、およびアセトニトリル12.1gを加え、40℃、8時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを3.0g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーA(重量平均分子量4.8万)を15g得た。なお、化学式中の数値は、各ユニット(繰り返し単位)のモル%を表す。
【0155】
【化12】

【0156】
(ポリマーBの合成)
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート24gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成製)5.60g、2−シアノエチルアクリレート18.0g、モノマーA8.8g、およびV−65(和光純薬製)0.48gのジメチルカーボネート24g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、アセトニトリル12gを加え10分間攪拌後、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.13g、U−600(日東化成製)0.40g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)12.4g、およびアセトニトリル12.4gを加え、40℃、8時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを3.0g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーB(重量平均分子量5.5万)を17g得た。なお、化学式中の数値は、各ユニット(繰り返し単位)のモル%を表す。
【0157】
【化13】

【0158】
【化14】

【0159】
(ポリマーCの合成)
300mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド20.6gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、モノマーB23.32g、モノマーC10.6g、モノマーD7.4g、およびV−65(和光純薬製)0.40gのN,N−ジメチルアセトアミド20.6g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド55gを加え10分間攪拌後、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、氷冷下、4−ヒドロキシテンポ0.07g、DBU30.4gを加え、室温にて1時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーCを21g得た。
【0160】
【化15】

【0161】
【化16】

【0162】
(ポリマーDの合成)
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート30gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成製)5.6g、2−シアノエチルアクリレート3.0g、グリシジルメタクリレート3.4g、モノマーB28.0、およびV−65(和光純薬製)0.48gのジメチルカーボネート23g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、アセトニトリル14gを加え10分間攪拌後、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.13g、U−600(日東化成製)0.40g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)12.1g、およびアセトニトリル12.1gを加え、40℃、8時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを3.0g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーD(重量平均分子量6.8万)を19g得た。なお、化学式中の数値は、各ユニット(繰り返し単位)のモル%を表す。
【0163】
【化17】

【0164】
(ポリマーEの合成)
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート8.3gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成製)1.4g、2−シアノエチルアクリレート0.75g、モノマーB6.14g、モノマーE2.7g、およびV−65(和光純薬製)0.12gのジメチルカーボネート8.3g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、アセトニトリル4gを加え10分間攪拌後、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.04g、U−600(日東化成製)0.11g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)3.3g、およびアセトニトリル3.3gを加え、40℃、8時間反応を行った。その後、反応溶液に水を0.4g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル:ヘキサン=2:3で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーE(重量平均分子量7.8万)を6g得た。なお、化学式中の数値は、各ユニット(繰り返し単位)のモル%を表す。
【0165】
【化18】

【0166】
【化19】

【0167】
[実施例1]
(塗布溶液(被めっき層形成用組成物1)の調製)
ポリマーAを7質量部、アセトニトリル溶液93質量部を混合攪拌し、被めっき層形成用組成物1の塗布液を調製した。
【0168】
(グラフトポリマーの生成)
調製された塗布液を、上記基板A1の密着補助層上に、スピンコータ(300rpmで5秒回転後、750rpmで20秒回転)にて塗布し、80℃にて30分乾燥した。
乾燥後、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、10mW/cm2の照射パワー(ウシオ電機製 紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、100秒間照射させて、基板A1の密着補助層の全面にグラフトポリマーを生成させた。積算露光量は1000mJであった。
【0169】
その後、攪拌した状態のアセトニトリル中にグラフトポリマーが生成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、上記ポリマーを含むポリマー層を有する基板A2を得た。このときのポリマー層の厚みは0.5μmであった。
【0170】
[めっき触媒の付与]
ポリマー層を有する基板A2を、硝酸パラジウムの0.5質量%水−アセトン混合溶液〔水/アセトン混合比:質量比6/4、以下、触媒液Aと称する〕に、25℃で30分間浸漬した後、水−アセトン混合溶液〔水/アセトン混合比:質量比6/4〕および蒸留水で、各々1分〜2分間洗浄した。
【0171】
[無電解めっき]
上記のようにして、めっき触媒が付与されためっき触媒受容性の硬化物層を有する基板A2に対し、上村工業(株)製スルカップPGTを用い、下記組成の無電解めっき浴(1)を用い、無電解めっき温度26℃で30分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.5μm(重量法)であった。
無電解めっき液(1)の調液順序および原料は以下の通りである。
〔無電解めっき液(1)〕
蒸留水 約60容量%
PGT−A 9.0容量%
PGT−B 6.0容量%
PGT−C 3.5容量%
ホルマリン液 2.3容量%
最後に、全量が100容量%となるように蒸留水にて調整した。
*ここで用いたホルマリンは、和光純薬工業(株)製のホルムアルデヒド液(特級)である。
【0172】
[電気めっき]
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dm2の条件で、電気めっきを30分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは19.5μmであった。
【0173】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0174】
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、100℃で30分間、180℃で1時間ベーク処理を行った後、オートグラフAGS−J((株)島津製作所製)を用いて、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.70kN/mであった。
【0175】
[金属パターンの形成、ソルダーレジストの貼付けおよび絶縁信頼性試験]
電気めっき後の基板に対し180℃/1時間の熱処理を行なった後、該基板の表面に、ドライレジストフィルム(日立化成(株)製;RY3315、膜厚15μm)を真空ラミネーター((株)名機製作所製:MVLP−600)を用いて、70℃、0.2MPaでラミネートした。次いで、ドライレジストフィルムがラミネートされた基板に、JPCA−ET01に定めるL/S=50μm/50μmの櫛型配線が形成できるガラスマスクを密着させ、レジストに中心波長405nmの露光機にて70mJの光エネルギーを照射した。露光後の基板に、1%Na2CO3水溶液を0.2MPaのスプレー圧で噴きつけ、現像を行なった。その後、基板の水洗・乾燥を行い、銅めっき膜上に、サブトラクティブ法用のレジスト・パターンを形成した。
レジスト・パターンを形成した基板を、FeCl3/HCl水溶液(エッチング液)に温度40℃で浸漬することによりエッチングを行い、レジスト・パターンの非形成領域に存在する銅めっき層を除去した。その後、3%NaOH水溶液を0.2MPaのスプレー圧で基板上に噴き付けることで、レジスト・パターンを膨潤剥離し、10%硫酸水溶液で中和処理を行い、水洗することで櫛型配線を得た。
【0176】
さらに、櫛型配線上にソルダーレジスト(PFR800;太陽インキ製造(株)製)を70℃、0.2MPaの条件で真空ラミネートし、中心波長365nmの露光機にて420mJの光エネルギーを照射した。このとき、後の絶縁信頼性試験ではんだ付けする部分に関しては、遮光テープでマスクした。次いで、基板を80℃/10分間の加熱処理を施した後、Na2CO31%水溶液を、スプレー圧0.2MPaで基板表面に噴きつけ現像し、水洗、乾燥した。その後、再度、中心波長365nmの露光機にて1000mJの光エネルギーを、基板に対し照射した。最後に150℃/1hrの加熱処理を行ない、ソルダーレジストに被覆された配線間絶縁信頼性を測定するための櫛形配線(金属パターン材料)を得た。
【0177】
[絶縁信頼性試験]
得られた櫛型配線基板に対し、JPCA規格 プリント配線板環境試験方法JPCA−ET01(通則)およびET07(高温・高湿・定常不飽和加圧水蒸気試験)に基づいて絶縁信頼性試験を行なった。ESPEC製HAST試験機(AMI−150S−25(EHS-211-MD))にて、130℃−85%相対湿度(不飽和)、印加電圧20Vで200時間試験し、試験槽内絶縁抵抗および面状検査で配線間を観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
なお、実用上、以下の絶縁抵抗評価およびデンドライト評価は、それぞれ「○」以上が好ましい。
【0178】
<絶縁抵抗評価>
「◎」:絶縁抵抗が5.0×E7Ω以上であった場合
「○」:絶縁抵抗が1.0×E7Ω以上5.0×E7Ω未満であった場合
「△」:絶縁抵抗が1.0×E7Ω未満であった場合
「×」:配線間に絶縁不良が見られた場合
<デンドライト評価>
「◎」:デントライトがほぼ観察されなかった場合
「○」:絶縁不良には至らないわずかなデントライトが観察された場合
「△」:絶縁不良には至らない程度のデントライトが観察された場合
「×」:絶縁不良が見られた場合
【0179】
〔実施例2〕
ポリマーBを7質量部、アセトニトリル溶液93質量部を混合攪拌し、被めっき層形成用組成物2の塗布液を調製した。この被めっき層形成用組成物2の塗布液を用いた他は、実施例1と同様の方法にて表面金属膜材料および金属パターン材料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0180】
〔実施例3〕
ポリマーCを7質量部、アセトニトリル溶液93質量部を混合攪拌し、被めっき層形成用組成物3の塗布液を調製した。この被めっき層形成用組成物3の塗布液を用いた他は、実施例1と同様の方法にて表面金属膜材料および金属パターン材料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0181】
〔実施例4〕
ポリマーDを7質量部、アセトニトリル溶液93質量部を混合攪拌し、被めっき層形成用組成物4の塗布液を調製した。この被めっき層形成用組成物4の塗布液を用いた他は、実施例1と同様の方法にて表面金属膜材料および金属パターン材料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0182】
〔実施例5〕
ポリマーEを7質量部、アセトニトリル溶液93質量部を混合攪拌し、被めっき層形成用組成物5の塗布液を調製した。この被めっき層形成用組成物5の塗布液を用いた他は、実施例1と同様の方法にて表面金属膜材料および金属パターン材料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0183】
〔実施例6〕
(塗布溶液の調製)
ポリマーCを7質量部、アセトニトリル溶液93質量部を混合攪拌し、被めっき層形成用組成物3の塗布液を調製した。
【0184】
(グラフトポリマーの生成)
調製された塗布液を、上記基板B1の重合開始層上に、スピンコータ(300rpmで5秒回転後、750rpmで20秒回転)にて塗布し、80℃にて30分乾燥した。
乾燥後、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、10mW/cm2の照射パワー(ウシオ電機製 紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、100秒間照射させて、基板B1の重合開始層の全面にグラフトポリマーを生成させた。積算露光量は1000mJであった。
【0185】
その後、攪拌した状態のアセトニトリル中にグラフトポリマーが生成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、基板B1と直接化学結合したポリマーを含むポリマー層を有する基板B2を得た。このときの樹脂層の厚みは0.5μmであった。
ポリマー層を有する基板B2を用いた以外は実施例1と同様にして表面金属膜材料および金属パターン材料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0186】
〔実施例7〕
実施例1で用いた被めっき層形成用組成物1を用いて作製した基板A2を用い、めっき触媒の付与を以下のようにして調製した触媒液Bを用いて行った以外は、実施例1と同様の方法にて表面金属材料および金属パターン材料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0187】
(触媒液Bの調製)
純水:硝酸の60質量%水溶液:ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDE,別名:ビス(2−エトキシエチル)エーテル)を質量比2:1:2で混合した混合溶液100質量部に対し、0.25質量部の酢酸パラジウムを溶解させた0.25質量%パラジウム触媒溶液(以下、触媒液Bと称する)を調液した。
なお、触媒液Bの調製に用いた硝酸(60質量%水溶液)は和光純薬工業(株)製硝酸(1.38)和光特級であり、DEGDEは和光純薬工業(株)製ビス(2−エトキシエチル)エーテル(和光1級)であり、酢酸パラジウムは、和光純薬工業(株)製和光特級である。
【0188】
(触媒の付与)
基板A2を触媒液Bに、25℃で5分間浸漬した後、蒸留水で2分間洗浄した。
その結果、得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.5μm(重量法)であり、得られた電気銅めっき膜の厚みは19μmであった。
【0189】
〔実施例8〕
実施例4で用いた被めっき層形成用組成物4を用いて得られた基板A2を用い、上記実施例5と同様にしてめっき触媒を付与した。
その後、無電解めっき時に使用するめっき浴およびめっき条件を下記に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて表面金属材料および金属パターン材料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0190】
無電解めっき液(2)の調液順序および原料は以下の通りである。無電解めっき液(2)の調製には、奥野製薬工業(株)製OPCカッパーTを使用した。
〔無電解めっき液(2)〕
蒸留水 約60容量%
T−1液 6.0容量%
T−2液 1.2容量%
T−3液 10.0容量%
最後に、全量が100容量%となるように蒸留水にて液面調整した。
この無電解めっき液(2)に、基板A2を温度30℃で25分間浸漬して、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.7μmであった。また、得られた電気銅めっき膜の厚みは20μmであった。
【0191】
〔実施例9〕
実施例4で用いた被めっき層形成用組成物4を用いて得られた基板A2を用い、上記実施例6の触媒液Bを実施例6と同様にしてめっき触媒を付与した。その後、実施例7の無電解めっき液(2)を用いて実施例7と同様に無電解めっきを行った。
その後、実施例1の条件で金属パターンを形成後、ソルダーレジスト(PFR800)の代わりに下記条件にて絶縁膜(ABF GX−13、味の素ファインテクノ(株)製)を貼り付け、実施例1と同様の評価を行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.7μmであった。また、得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
めっき膜の基板に対する密着力は0.72kN/mであった。
【0192】
(絶縁膜の形成方法)
実施例1と同様の条件で作製した櫛型配線上に真空ラミネーター(MVLP−600、(株)名機製作所製)を用い、絶縁膜フィルムABF GX−13(味の素ファインテクノ(株)製)を100℃、0.5MPaの条件で真空ラミネートしたのち、180℃/1hrの加熱処理を行ない、線間絶縁信頼性を測定するための絶縁膜で被覆された櫛形配線(金属パターン材料)を得た。
この櫛型配線基板に対し、実施例1と同様にして絶縁信頼性試験を行った。結果を表1に示す。
【0193】
〔比較例1〕
まず、下記のようにして、比較ポリマー1を合成した。
1000mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成製)6.60g、2−シアノエチルアクリレート28.4g、およびV−601(和光純薬製)0.65gのN,N−ジメチルアセトアミド35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで反応溶液を加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.29g、ジブチルチンジラウレート0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)18.56g、N,N−ジメチルアセトアミド19gを加え、55℃、4時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル:ヘキサン=1:1で再沈を行い、固形物を取り出し、比較ポリマー1を(重量平均分子量6.2万)を32g得た。なお、化学式中の数値は、各ユニット(繰り返し単位)のモル%を表す。
【0194】
【化20】

【0195】
実施例1で用いた被めっき層形成用組成物1において、ポリマーAに代えて比較ポリマー1を用いた他は、同様にして表面金属材料および金属パターン材料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0196】
〔比較例2〕
まず、下記のようにして、比較ポリマー2を合成した。
〔合成例:比較ポリマー2の合成〕
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート16.7gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−シアノエチルアクリレート12.5g、アクリル酸7.2g、およびV−65(和光純薬製)0.40gのジメチルカーボネート16.7g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、アセトニトリル8gを加え10分間攪拌後、室温まで反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、室温下、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.04g、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド3.0g、グリシジルメタクリレート6.0gを加え、100℃、5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル:ヘキサン=2:3で再沈を行い、固形物を取り出し、下記構造の比較ポリマー2を13g得た。なお、化学式中の数値は、各ユニット(繰り返し単位)のモル%を表す。
【0197】
【化21】

【0198】
実施例1で用いた被めっき層形成用組成物1において、ポリマーAに代わりに比較ポリマー2を用いた他は、同様にして表面金属材料および金属パターン材料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0199】
これらの結果を、下記表1にまとめる。下記表1においてソルダーレジストを「SR」と、層間絶縁膜を「絶縁膜」とそれぞれ表記する。
表1中、膜厚は、無電解銅めっき膜の厚みを意味する。また、密着力の単位は「kN/m」である。
【0200】
【表1】

【0201】
以上のことから、本発明の被めっき層形成用組成物により得られた表面金属膜材料および金属パターン材料は、金属膜と樹脂層の密着性、配線間の絶縁信頼性に優れることが分かった。
【0202】
比較例1および2と各実施例との対比より、上記各実施例は、特定の官能基を有さない従来の被めっき層形成用組成物により得られた表面金属膜材料(比較例1、2の材料)に比べ、厳しい条件下であっても、配線間の絶縁信頼性が改良されていることが分かった。特に、比較例2に記載のカルボニル基を有するポリマーは、親水性が上がりすぎ、吸水率が上がることで、絶縁信頼性が悪化したと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性基と、
めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基と、
エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、一級アミノ基、および二級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基とを含むポリマー、
を含有する被めっき層形成用組成物。
【請求項2】
前記めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基が、シアノ基である請求項1に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、式(1)で表されるユニット、式(2)で表されるユニット、および式(3)で表されるユニットを含むポリマーである、請求項1または2に記載の被めっき層形成用組成物。
【化1】


(式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。ZおよびYは、それぞれ独立して、単結合、または置換若しく無置換の二価の有機基を表す。L1は、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
式(2)中、R5は、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。XおよびL2は、それぞれ独立して、単結合、または置換若しく無置換の二価の有機基を表す。
式(3)中、R6は、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。L3は、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Wは、単結合、または置換若しく無置換の二価の有機基を表す。Vは、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、一級アミノ基、または二級アミノ基を表す。)
【請求項4】
基板と、前記基板上に請求項1〜3のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物から形成されるポリマー層を有する積層体。
【請求項5】
(a1)基板上に、請求項1〜3のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物を用いてポリマー層を形成する工程と、
(a2)前記ポリマー層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程と、
(a3)前記めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を備える、表面にめっき膜を有する表面金属膜材料の製造方法。
【請求項6】
前記(a1)工程が、基板上に、前記ポリマー層中の前記ポリマーを直接化学結合させることにより行われる、請求項5に記載の表面金属膜材料の製造方法。
【請求項7】
前記(a3)工程で、無電解めっきが行われる、請求項5または6に記載の表面金属膜材料の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の表面金属膜材料の製造方法により得られた表面金属膜材料。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれかに記載の表面金属膜材料の製造方法により得られた表面金属膜材料のめっき膜を、パターン状にエッチングする工程を有する、金属パターン材料の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の金属パターン材料の製造方法により得られた金属パターン材料。
【請求項11】
請求項10に記載の金属パターン材料と、前記金属パターン材料上にエポキシ樹脂を含む絶縁層とを備える配線基板。

【公開番号】特開2011−202109(P2011−202109A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72927(P2010−72927)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】