説明

被めっき層形成用組成物、表面金属膜材料およびその製造方法、並びに、金属パターン材料およびその製造方法

【課題】本発明の目的は、めっき析出性に優れると共に、その表面上に形成されるめっき膜(金属膜)と高密着性を達成し、さらにその表面に形成されるパターン状の金属配線間の優れた絶縁信頼性を達成しうるポリマー層を形成する被めっき層形成用組成物を提供することにある。
【解決手段】重合性基を有するユニット(A)と、ポリオキシアルキレン基を有するユニット(B)と、脂環式炭化水素基を有するユニット(C)とを含むポリマーを含有する、被めっき層形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被めっき層形成用組成物、表面金属膜材料およびその製造方法、並びに、金属パターン材料およびその製造方法に関する。より詳細には、所定の種類のユニット(繰り返し単位)を有するポリマーを含む被めっき層形成用組成物、該被めっき層形成用組成物を用いて得られる表面金属膜材料および金属パターン材料、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属パターン(金属膜)との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンを金属配線として使用する際、金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理する必要があるため、基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、基板上に該基板と直接結合したグラフトポリマーを生成させてポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、得られた金属膜をエッチングする方法が知られている(特許文献1)。該方法によれば、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−007662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年、プリント配線板などの微細配線においては、配線(金属パターン)間においてより高い絶縁性が必要とされており、配線間の絶縁信頼性のより一層の向上が要求されている。
本発明者らは特許文献1に記載されるポリマーを用いて金属パターン材料を作製し、絶縁信頼性試験を行った結果、昨今要求される絶縁性のレベルには達しておらず、さらなる改良が必要であることを見出した。
【0007】
また、製造コストの低減の観点から、高スループットでより生産性よく微細配線を製造することが求められており、密着性などに優れた実用上耐えうる金属膜をより短時間でめっき処理により製造することも求められていた。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明の第一の目的は、めっき析出性に優れると共に、その表面上に形成されるめっき膜(金属膜)と高密着性を達成し、さらにその表面に形成されるパターン状の金属配線間の優れた絶縁信頼性を達成しうるポリマー層を形成する被めっき層形成用組成物を提供することにある。
本発明の第二の目的は、該被めっき層形成用組成物を用いて得られる表面金属膜材料および金属パターン材料、およびそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、所定の官能基を有するユニットを含有するポリマーを使用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明者らは、上記課題が下記構成により解決されることを見出した。
【0010】
(1) 重合性基を有するユニット(A)と、
ポリオキシアルキレン基を有するユニット(B)と、
脂環式炭化水素基を有するユニット(C)とを含むポリマーを含有する、被めっき層形成用組成物。
(2) 上記脂環式炭化水素基が、多環の脂環式炭化水素基である、(1)に記載の被めっき層形成用組成物。
(3) 上記脂環式炭化水素基が、総炭素数7〜15の脂環式炭化水素基である、(1)または(2)に記載の被めっき層形成用組成物。
【0011】
(4) 上記ポリオキシアルキレン基が、オキシアルキレン単位を平均3〜30個を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
(5) 上記ポリオキシアルキレン基が、ポリオキシエチレン基である、(1)〜(4)のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
(6) 上記重合性基が、ラジカル重合性基である、(1)〜(5)のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
【0012】
(7) 基板上に、(1)〜(6)のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物を用いてポリマー層を形成する工程と、
上記ポリマー層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程と、
上記めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程とを備える、表面に金属膜を有する表面金属膜材料の製造方法。
(8) (7)に記載の表面金属膜材料の製造方法によって得られる、表面金属膜材料。
(9) (8)に記載の表面金属膜材料中の金属膜をパターン状にエッチングする工程を有する金属パターン材料の製造方法。
(10) (9)に記載の金属パターン材料の製造方法により得られる金属パターン材料。
(11) (10)に記載の金属パターン材料と、上記金属パターン材料上に絶縁層とを備える配線基板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、めっき析出性に優れると共に、その表面上に形成されるめっき膜(金属膜)と高密着性を達成し、さらにその表面に形成されるパターン状の金属配線間の優れた絶縁信頼性を達成しうるポリマー層を形成する被めっき層形成用組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、該被めっき層形成用組成物を用いて得られる表面金属膜材料および金属パターン材料、並びにそれらの製造方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の被めっき層形成用組成物、該組成物を用いて得られる表面金属膜材料およびその製造方法、並びに金属パターン材料およびその製造方法について説明する。
本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討した結果、問題点の一つである金属配線間の絶縁信頼性が十分でない原因の一つとして、金属配線が形成されているポリマー層(被めっき層)を備えた基板と、金属配線を覆うエポキシ樹脂などによって形成される絶縁層との密着性が必ずしも十分でない点を見出した。また、絶縁層と基板表面上のポリマー層との密着不良に伴い、ポリマー層と絶縁層との界面において水などの吸収が起こり、結果として、金属配線間のポリマー層と絶縁層との界面部分に金属デンドライトが発生し、金属配線間がショートすることを見出した。さらに、金属デンドライトがポリマー層表面のみならず、ポリマー層内において発生する場合がある点も見出した。
【0015】
本発明においては、脂環式炭化水素基およびポリオキシアルキレン基などの所定の官能基を有するユニットから構成される3元系ポリマー(3元共重合体)を使用することにより、上記課題が解決できることを見出している。つまり、形成されるポリマー層は、従来困難とされてきた、めっき触媒の吸着性、および低吸水性の両立を高いレベルで満足することができる。そのため、該組成物を用いた場合、めっき析出性に優れると共に、形成される金属膜とポリマー層との密着性に優れる。さらに、両親媒性のポリオキシアルキレン基をポリマー鎖に導入することで、疎水性の絶縁層との相溶性を向上することができる。そのため、基板上のポリマー層とその上に設けられる絶縁層との密着性にも優れることから、ポリマー層と絶縁層との界面およびポリマー層内における金属デンドライトの発生が抑制され、優れた絶縁特性を示す金属パターン材料を得ることができる。
まず、本発明の被めっき層形成用組成物に含まれるポリマーについて詳述する。
その後、該ポリマーを含む被めっき層形成用組成物、並びに、該組成物を用いた表面金属膜材料および金属パターン材料の製造方法について説明する。
【0016】
<ポリマー(共重合体)>
本発明で使用されるポリマーは、重合性基を有するユニット(A)と、ポリオキシアルキレン基を有するユニット(B)と、脂環式炭化水素基を有するユニット(C)とを含有する。
該ポリマーが、親水性を示す上記ユニット(B)と、疎水性を示す上記ユニット(C)とを含有することによって、相反する特性であるめっき触媒の吸着性と低吸水性の両立を実現している。
以下に、含有される各ユニットに関して詳述する。
【0017】
<重合性基を有するユニット(A)>
ユニット(A)は、重合性基を有するユニット(繰り返し単位)である。該ユニットがポリマーに含まれることにより、後述する基板との優れた密着性が発現されると共に、膜中で架橋反応が進行し強度に優れた膜を得ることができる。
該ユニット(A)は重合性基を有していれば、その構造は特に限定されない。
重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられる。なかでも、後述する基板との反応性の観点から、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、スチリル基、ビニル基などが挙げられる。なかでも、メタクリル酸エステル基(メタアクリロイル基)、アクリル酸エステル基(アクリロイル基)、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、スチリル基が好ましく、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、スチリル基が特に好ましい。
【0018】
(好適態様)
ユニット(A)の好適態様としては、反応性(重合性、硬化性)の点から、以下の一般式(A−1)で表されるユニットが挙げられる。
【0019】
【化1】

【0020】
一般式(A−1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
1〜R4が、置換または無置換のアルキル基である場合、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0021】
なお、R1としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
2としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
3としては、水素原子が好ましい。
4としては、水素原子が好ましい。
【0022】
XおよびYは、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜3)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。該有機基は、発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0023】
置換または無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、または、これらの基がメトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたものが好ましい。
置換または無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたフェニレン基が好ましい。
【0024】
XおよびYとしては、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。
【0025】
1は、置換または無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記XおよびYで表される有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
1としては、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合、アセタール結合を有する二価の有機基が好ましく、無置換のアルキレン基、ウレタン結合またはアセタール結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
1の構造として、より具体的には、一般式(1−1)、一般式(1−2)、または一般式(1−3)、一般式(1−4)で表される構造であることが好ましい。
【0026】
【化2】

【0027】
一般式(1−1)、一般式(1−2)および一般式(1−3)中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は上記と同様であり、好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、若しくはブチレン基などのアルキレン基、または、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基などのポリオキシアルキレン基などが挙げられる。
一般式(1−4)中、nは1〜10の整数を表す。
【0028】
一般式(A−1)で表されるユニットの好適態様として、一般式(A−2)で表されるユニットが挙げられる。
【0029】
【化3】

【0030】
一般式(A−2)中、R1、R2、XおよびL1は、一般式(A−1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Tは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0031】
一般式(A−2)で表されるユニットの好適態様として、一般式(A−3)で表されるユニットが挙げられる。
【0032】
【化4】

【0033】
一般式(A−3)中、R1、R2、およびL1は、一般式(A−1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。QおよびTは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0034】
上記一般式(A−3)において、Tは、酸素原子であることが好ましい。
また、上記一般式(A−2)および一般式(A−3)において、L1は、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0035】
ポリマー中におけるユニット(A)の含有量は特に制限されないが、反応性(重合性、硬化性)および基板との密着性の点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましい。5モル%未満の場合、反応性(硬化性、重合性)が低下する場合があり、50モル%を超える場合、ポリマーの合成の際にゲル化が起きやすく、反応の制御が難しくなる。
【0036】
<ポリオキシアルキレン基を有するユニット(B)>
ユニット(B)は、ポリオキシアルキレン基を有するユニット(繰り返し単位)である。該ユニットがポリマーに含まれることにより、めっき触媒への優れた吸着性が達成され、結果としてめっき処理の際に十分な厚さの金属膜(めっき膜)を短時間で得ることができる。また、該基の有する両親媒性の特性により、金属配線が設けられたポリマー層と、その上に形成される絶縁層との樹脂間(ポリマー層/絶縁層)の相溶性が向上し、ポリマー層と絶縁層との優れた密着性が達成される。
【0037】
ポリオキシアルキレン基とは、オキシアルキレン単位(−OA−、A:アルキレン基、O:酸素原子)を繰り返し単位として有する基を意味する。
本発明においてポリオキシアルキレン基中のアルキレン基は特に制限されないが、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基がより好ましい。上記範囲内であれば、めっき液等の浸透性、触媒吸着能の点で好ましい。
【0038】
また、ポリオキシアルキレン基中のオキシアルキレン単位の平均数は特に制限されないが、3〜30であることが好ましく、9〜25であることがより好ましい。上記範囲内であれば、触媒吸着能、めっき析出性、絶縁層との相溶性の点で好ましく、特にめっき析出性がより向上する。なお、平均数は、NMR、MSなどの公知の手段により測定することができる。
【0039】
ポリオキシアルキレン基の具体例としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、それらが二つ以上組み合わされた基(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等)などが挙げられるが、なかでもめっき析出性、金属膜とポリマー層との密着性、ポリマー層と絶縁層との密着性がより優れる点で、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基が好ましく、ポリオキシエチレン基がより好ましい。
なお、ユニット(B)はユニット(A)とは異なるユニットであり、ユニット(B)には重合性基は含まれない。
【0040】
(好適態様)
ユニット(B)の好適態様としては、めっき析出性、金属膜とポリマー層との密着性、ポリマー層と絶縁層との密着性がより優れる点から、以下の一般式(B)で表されるユニットが挙げられる。
【0041】
【化5】

【0042】
一般式(B)中、R5は、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R5で表される置換または無置換のアルキル基は、上述したR1〜R4で表される置換または無置換のアルキル基と同義である。
5としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0043】
一般式(B)中、L2は、置換または無置換の二価の有機基を表す。L2で表される二価の有機基の定義は、上記XおよびYで表される有機基と同義である。なかでも、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−またはこれらを組み合わせた基などが好ましく挙げられる。
【0044】
一般式(B)中、Aはアルキレン基を表す。好ましいアルキレン基の態様は、上述の通りである。
【0045】
一般式(B)中、R6は、水素原子、アルキル基、または芳香族炭化水素基を表す。アルキル基は特に制限されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、炭素数1〜18が好ましく、炭素数1〜12がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、プロピル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては特に制限されないが、フェニル基およびアルキル基置換されたフェニル基が好ましい。
【0046】
一般式(B)中、nはオキシアルキレン単位数(平均数)を表し、上述したように、3〜30の数であり、9〜25であることがより好ましい。
【0047】
ポリマー中におけるユニット(B)の含有量は特に制限されないが、めっき触媒などに対する吸着性の点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましい。ユニット(B)の含有量が60モル%より多い場合、本発明の効果は得られるものの、ポリマーの吸水性が上昇し、ポリマー層の絶縁性能に悪影響を及ぼす要因となることがあり好ましくない。また、含有量が5モル%より少ない場合、本発明の効果は得られるものの、ポリマー層への触媒吸着量が低下を招くことがあり、めっき性に悪影響を及ぼすことがあるため好ましくない。
【0048】
<脂環式炭化水素基を有するユニット(C)>
ユニット(C)は、脂環式炭化水素基を有するユニット(繰り返し単位)である。該ユニットがポリマーに含まれることによって、ポリマー層の低吸水性が実現され、金属デンドライトの発生が抑制される。
【0049】
該ユニット(C)中の脂環式炭化水素基は特に制限されず、単環(単環構造)でも、多環(多環構造)でもよい。具体的には、モノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。
なかでも、めっき析出性、疎水性、絶縁信頼性がより優れる(特に、金属デンドライトの発生が抑制される)点で、多環の脂環式炭化水素基が好ましい。より具体的には、2〜4個の脂肪族環(脂環)を有する炭化水素基(ビシクロ構造、トリシクロ構造、テトラシクロ構造)が好ましく挙げられる。
また、脂環式炭化水素基の総炭素数は、7〜15が好ましく、特に炭素数7〜13が好ましい。総炭素数が上記範囲であれば、めっき析出性、疎水性、絶縁信頼性がより優れる。
これらの脂環式炭化水素基は置換基(例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基)を有していてもよいが、該置換基には重合性基およびポリオキシアルキレン基は含まれない。なお、脂環式炭化水素基の総炭素数とは、脂環式炭化水素基を構成する炭素数を意味し、置換基を有する場合は該置換基を含めた炭素数を意味する。
以下に、脂環式炭化水素基の構造例を示す。
【0050】
【化6】

【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
本発明において脂環式炭化水素基の好ましいものとしては、ノルボルニル基、イソボルニル基などのビシクロ構造の脂環式炭化水素基、トリシクロデカニル基などのトリシクロ構造の脂環式炭化水素基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基などのテトラシクロ構造の脂環式炭化水素基などを挙げることができる。より好ましくは、イソボロニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基である。
【0054】
(好適態様)
ユニット(C)の好適態様としては、ユニット(A)およびユニット(B)との共重合性の点から、以下の一般式(C)で表されるユニットが挙げられる。
【0055】
【化9】

【0056】
一般式(C)中、R7は、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R7で表される置換または無置換のアルキル基は、上述したR1〜R4で表される置換または無置換のアルキル基と同義である。
7としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0057】
一般式(C)中、L3は、置換または無置換の二価の有機基を表す。L3で表される二価の有機基の定義は、上記XおよびYで表される有機基と同義である。なかでも、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−またはこれらを組み合わせた基などが好ましく挙げられる。
【0058】
一般式(C)中、R8は、脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基の好適態様は、上述の通りである。
【0059】
ポリマー中におけるユニット(C)の含有量は特に制限されないが、得られるポリマーの低吸水性およびポリマー層のめっき性を両立させる点で、全ユニット(100モル%)に対して、20〜80モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましい。
【0060】
ポリマーの好適実施態様としては、上記の一般式(A−1)で表されるユニット、一般式(B)で表されるユニット、および一般式(C)で表されるユニットを含むポリマーが好ましい。
【0061】
ポリマー中におけるユニット(A)、ユニット(B)、およびユニット(C)の結合様式は特に限定されず、各ユニットがランダムに結合したランダム重合体であっても、各ユニットが同じ種類同士連結してブロック部を形成するブロックポリマーであってもよい。
【0062】
ポリマーは、ユニット(A)、ユニット(B)、およびユニット(C)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他のユニットを含んでいてもよい。
ただし、後述するように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第4のユニットとなる可能性もある。
【0063】
ポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、ポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0064】
<ポリマーの合成方法>
上記ポリマーの合成方法は特に限定されず、使用されるモノマーも市販品または公知の合成方法を組み合わせて合成したものであってもよい。なお、ポリマーの合成方法としては、以下の方法が好ましく挙げられる。
i)脂環式炭化水素基を有するモノマー、ポリオキシアルキレン基を有するモノマー、および重合性基を有するモノマーを共重合する方法、ii)脂環式炭化水素基を有するモノマー、ポリオキシアルキレン基を有するモノマー、二重結合前駆体を有するモノマーを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)脂環式炭化水素基を有するモノマー、ポリオキシアルキレン基を有するポリマー、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとを共重合させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)する方法が挙げられる。
合成適性の観点から、好ましい方法としては、上記ii)および上記iii)の方法である。合成する際の重合反応の種類は特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などが挙げられるが、ラジカル重合で行うこと好ましい。
なお、ポリマーは、特許公開2009−280905号の段落[0097]〜[0125]に記載の方法などを参照して合成することができる。
【0065】
具体的には、上記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
なお、下記式中、Aは重合性基を有する有機団、R1〜R3は、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基、BおよびCはそれぞれ独立して脱離反応により除去される脱離基であり、いずれか一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子、スルホン酸エステル基、エーテル基、またはチオエーテル基を表す。ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。
また、塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物または炭酸塩、有機アミン化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
【0066】
【化10】

【0067】
また、上記iii)の合成方法において、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基としてカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、またはビニルエーテル基を有するモノマーが挙げられる。ポリマーの反応性基と、モノマー中の反応性基との組み合わせとしては、以下のようなパターンがある。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの反応性基)=(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)、(ビニルエーテル基、水酸基)等を挙げることができる。
【0068】
<被めっき層形成用組成物>
本発明の被めっき層形成用組成物には、上記ポリマーが含まれる。
該被めっき層形成用組成物を使用して、上記ポリマーを表面グラフト重合法などにより所望の基板上に直接化学結合させることで、基板との密着性が高く、めっき触媒に対する吸着性に優れ、更に、吸水性の少ないポリマー層を形成することができる。このポリマー層上にめっき触媒を付与し、その後、めっき処理を施すことで形成された金属膜(めっき膜)は、ポリマー層との密着性が優れるといった効果と共に、ポリマー層が水分やイオン等を保持し難いため、温・湿度依存性や、形状の変化が見られないといった効果も有する。
この金属膜(めっき膜)が形成された基板を、配線基板等の製造に用いる際には、ポリマー層とその上に形成される絶縁層との密着性に優れ、さらに金属配線間の絶縁信頼性に優れるといった効果も奏する。
【0069】
被めっき層形成用組成物中のポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、後述するポリマー層の層厚の制御がしやすい。
【0070】
(溶剤)
本発明の被めっき層形成用組成物は、上記ポリマー以外に、溶剤を含んでいてもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
この中でも、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
また、本発明のポリマーを含有する組成物を塗布液として用いる場合には、取り扱い安さから、沸点が50〜150℃の溶剤を用いることが好ましい。
なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0071】
被めっき層形成用組成物中の溶剤の含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、50〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、後述するポリマー層の層厚の制御などがしやすい。
【0072】
(その他の添加剤)
本発明の被めっき層形成用組成物には、更に、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、硬化剤、ラジカル発生剤、増感剤、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レべリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。
【0073】
<表面金属膜材料、およびその製造方法>
上述した被めっき層形成用組成物を用いることにより、表面に金属膜を有する表面金属膜材料を得ることができる。以下に、表面金属膜材料およびその製造方法について詳述する。
本発明の表面金属膜材料は、基板と、基板上に形成された上記被めっき層形成用組成物から形成されるポリマー層(被めっき層)と、ポリマー層上に形成される金属膜とを有する材料である。
この表面金属膜材料の製造方法は特に限定されないが、以下の(a1)〜(a3)工程を有する方法が好ましい。
(a1)基板上に、上記被めっき層形成用組成物を用いてポリマー層を形成する工程
(a2)該ポリマー層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程
(a3)該めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程
以下に各工程の手順について説明する。
【0074】
<a1工程(ポリマー層形成工程)>
(a1)工程では、基板上に、上述した被めっき層形成用組成物を用いてポリマー層を形成する工程(ポリマー層形成工程)である。形成されたポリマー層中のポリマーは、重合性基を介して基板と直接化学結合していることが金属膜との密着性の観点から好ましい態様といえる。
【0075】
(a1)工程の好ましい態様として、基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、基板上にポリマーを直接結合させてなるポリマー層を形成する工程であることが好ましい。
特に、(a1)工程は、(a1−1)基材上に、重合開始剤を含有する、または重合開始可能な官能基を有する重合開始層が形成された基板を作製する工程、および、(a1−2)該重合開始層に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、基板上の重合開始層に、ポリマーを直接結合させてなるポリマー層を形成する工程であることが好ましい。
【0076】
(形成方法:表面グラフト)
基板上におけるポリマー層の形成は、一般的な表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いることが好ましい。グラフト重合とは、高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。特に、活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には、表面グラフト重合と呼ばれる。
【0077】
本発明に適用される表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、p135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報、および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0078】
本発明におけるポリマー層を形成する際には、上記の表面グラフト法以外にも、高分子化合物鎖の末端に、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を付与し、これと基板表面に存在する官能基とのカップリング反応により結合させる方法を適用することもできる。
これらの方法の中でも、より多くのグラフトポリマーを生成する観点からは、光グラフト重合法、特に、UV光による光グラフト重合法を用いてポリマー層を形成することが好ましい。
【0079】
(基板)
本工程で用いられる基板としては、形状保持性を有するものであればよく、その表面が、上記ポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体が露光によりラジカルを発生しうるものであるか、基材上に、露光によりラジカルを発生しうる中間層(例えば、後述する重合開始層)を設け、この基材と中間層とで基板が構成されていてもよい。
【0080】
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙、またはプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、上記ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
【0081】
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0082】
また、本発明の表面金属膜材料を用いて得られる金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、または、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0083】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、または有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0084】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。
【0085】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0086】
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種または二種以上添加してもよい。
【0087】
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(a1)工程を施すことで、樹脂フィルムの両面にポリマー層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面にポリマー層が形成された場合には、更に、後述する(a2)工程および(a3)工程を行うことで、両面に金属膜が形成された表面金属膜材料を得ることができる。
【0088】
(重合開始層)
本発明において、基板表面に活性種を与え、それを起点としてグラフトポリマーを生成させる表面グラフト重合法を用いる場合、グラフトポリマーの生成に際しては、基材上に、重合開始剤を含有する、または重合開始可能な官能基を有する重合開始層を形成した基板を用いることが好ましい。この基板を用いることで、活性点を効率よく発生させ、より多くのグラフトポリマーを生成させることができる。
以下、重合開始層について説明する。なお、基材が板状物であれば、その両面に重合開始層を形成してもよい。
【0089】
重合開始層は重合開始剤を含むことが好ましく、具体的には、高分子化合物と重合開始剤とを含む層や、重合性化合物と重合開始剤とを含む層、重合開始可能な官能基を有する層などが挙げられる。
重合開始層は、必要な成分を、溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基材表面に設け、加熱または光照射により硬膜することで、形成することができる。
【0090】
本発明における重合開始層に用いられる化合物としては、基材との密着性が良好であり、且つ、活性光線照射などのエネルギー付与により、活性種を発生するものであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、多官能モノマーや分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーと重合開始剤とを混合したもの、熱架橋ポリマーと重合開始剤とを混合したもの、を用いることができる。
【0091】
重合開始層には、エネルギー付与により重合開始能を発現させるための重合開始剤を含有することが好ましい。ここで用いられる重合開始剤は、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを、目的に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため光重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤は、照射される活性光線に対して活性であり、これを含む重合開始層から表面グラフト重合が可能なものであれば特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができるが、扱い易さ、反応性の観点からは、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が好ましく、更に、ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0092】
重合開始層の製造方法は特に制限されないが、例えば、基材上に重合開始剤や溶剤などを含む重合開始層形成用組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより重合開始層を形成することができる。この時、加熱および/または光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、重合開始層上に樹脂層が生成した後に重合開始層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
【0093】
重合開始層の形成に用いられる各種化合物の詳細、および重合開始層の形成方法に関する事項としては、特開2007−154306号公報の段落番号[0042]〜[0048]に記載される事項を、本発明における重合開始層にも同様に適用することができる。なお、重合開始層に用いうる化合物のうち、熱架橋ポリマーとしては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0094】
また、重合開始剤として、重合開始基を側鎖に有するポリマーを使用してもよい。例えば、特開2004−161995号公報に記載の重合開始基が側鎖にペンダントしてなるポリマーを用いた重合開始層も好ましい。そのような重合開始層に用いられる各種の化合物、および重合開始層の形成方法に関する事項としては、特開2007−154306号公報の段落番号[0049]〜[0061]に記載される事項を、本発明においても同様に適用することができる。
【0095】
更に、本発明において、前述のような、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いる場合、この絶縁性樹脂からなる層中に、公知の重合開始剤を含有させて、絶縁性の重合開始層とすることが好ましい。この絶縁性の重合開始層中に含有させる重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、前述の、熱重合開始剤、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤)や、特開平9−77891号、特開平10−45927号に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物、更には、側鎖に重合開始能を有する官能基および架橋性基を有するポリマー(重合開始ポリマー)などを用いることができる。
絶縁性の重合開始層中に含有させる重合開始剤の量は、一般的には、絶縁層中に固形分で0.1〜50質量%程度であることが好ましく、1.0〜30.0質量%程度であることがより好ましい。
【0096】
(グラフトポリマー(ポリマー層)の生成)
(a1)工程におけるグラフトポリマーの生成態様としては、前述した如く、基板表面に存在する官能基と、高分子化合物がその末端または側鎖に有する反応性官能基(重合性基)とのカップリング反応を利用する方法や、光グラフト重合法を用いることができる。
本発明においては、基材上に重合開始層が形成された基板を用い、該重合開始層上に、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成するポリオキシアルキレン基を有し、且つ、該重合開始層と直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する態様〔(a1−2)工程〕が好ましい。更に好ましくは、重合開始層上に、上記ポリマーを接触させた後、エネルギーを付与することにより、基板表面全体(重合開始層表面全体)に当該ポリマーを直接化学結合させる態様である。即ち、上記被めっき層形成用組成物を、重合開始層表面に接触させながら、当該重合開始層表面に生成する活性種により直接結合させるものである。
【0097】
上記接触は、重合開始層が形成された基板を、本発明の被めっき層形成用組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、塗布法により被めっき層形成用組成物からなる層を基板表面(重合開始層表面)に形成することが好ましい。
【0098】
被めっき層形成用組成物を基板と接触させる場合、その塗布量は、めっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で0.1g/m2〜10g/m2が好ましく、特に0.5g/m2〜5g/m2が好ましい。
なお、(a1)工程においてポリマー層を形成するに際しては、塗布と乾燥との間に、20〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0099】
(エネルギーの付与)
基板表面へのエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。
光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量および光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0100】
なお、エネルギーの付与を露光にて行う場合、その露光パワーは、グラフト重合を容易に進行させるため、また、生成されたグラフトポリマーの分解を抑制するため、10mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは、50mJ/cm2〜3000mJ/cm2の範囲である。
また、上記ポリマーとして、平均分子量2万以上、重合度200量体以上のポリマーを使用すると、低エネルギーの露光でグラフト重合が容易に進行するため、生成したグラフトポリマーの分解を更に抑制することができる。
【0101】
以上説明した(a1)工程により、基板上には、ポリオキシアルキレン基を有するグラフトポリマーからなるポリマー層(グラフトポリマー層)を形成することができ、基板とポリマー層とを備える積層体を得ることができる。
ポリマー層の層厚は特に限定されないが、金属膜との密着性を確保する点からは、0.1〜5μmが好ましく、0.3〜4μmがより好ましい。
【0102】
得られたポリマー層は、必要に応じて、光照射前(エネルギー付与前)のポリマーが溶解可能な溶媒などによって洗浄を行ってもよい。該洗浄を行うことにより、未硬化部を除去(現像処理)することができる。
【0103】
<(a2)工程(めっき触媒付与工程)>
(a2)工程では、上記(a1)工程において形成されたポリマー層に、めっき触媒またはその前駆体を付与する工程である(めっき触媒付与工程)。本工程においては、ポリマー層を構成するグラフトポリマーが有するポリオキシアルキレン基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、めっき触媒またはその前駆体としては、後述する(a3)工程(めっき工程)における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒またはその前駆体は、(a3)めっき工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒またはその前駆体は、無電解めっき触媒またはその前駆体であることが好ましい。
【0104】
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができる。具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤または保護剤により調節することができる。
【0105】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンをポリマー層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0106】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いてポリマー層上に付与される。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)Pd(OAc)n(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられる。なかでも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数および触媒能の点で、Pdイオンが好ましい。
【0107】
本発明で用いられる無電解めっき触媒またはその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)またはその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されない。例えば、パラジウム塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0108】
無電解めっき触媒である金属、または、無電解めっき前駆体である金属塩をポリマー層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液若しくは溶液をポリマー層上に塗布するか、または、その分散液若しくは溶液中にポリマー層が形成された基板を浸漬すればよい。
【0109】
また、(a1)工程において、表面グラフト重合法を用いる場合、基板上に被めっき層形成用組成物を接触させるが、この組成物中に、無電解めっき触媒またはその前駆体を添加する方法を用いてもよい。
つまり、上記ポリマーと、無電解めっき触媒またはその前駆体とを含有する組成物を基板上に接触させて、表面グラフト重合法を適用することにより、ポリオキシアルキレン基を有し、且つ、基板と直接化学結合したポリマーと、めっき触媒またはその前駆体とを含有するポリマー層を形成することができる。なお、この方法を用いれば、本発明における(a1)工程と(a2)工程とが1工程で行えることになる。
【0110】
上記のように無電解めっき触媒またはその前駆体を接触させることで、ポリマー層中のポリオキシアルキレン基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、または、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、または溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0111】
無電解めっき触媒を含む溶液に使用できる溶剤としては、本発明の被めっき層形成用組成物に使用する溶剤として上述したものを使用することができる。
【0112】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(a3)工程において、ポリマー層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、ポリオキシアルキレン基に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0113】
以上説明した(a2)工程を経ることで、ポリマー層中のポリオキシアルキレン基とめっき触媒またはその前駆体との間に相互作用を形成することができる。めっき触媒が付与されたポリマー層は、めっき処理が施されるめっき受容性層として用いられる。
【0114】
<(a3)工程(めっき工程)>
(a3)工程では、無電解めっき触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層に対し、めっき処理を施すことで、金属膜(めっき膜)を形成する工程である。形成された金属膜は、優れた導電性、およびポリマー層との間で優れた密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、上記(a2)工程において、ポリマー層との間に相互作用を形成しためっき触媒またはその前駆体の機能によって、適宜選択することができる。つまり、本工程では、めっき触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、ポリマー層中に発現するハイブリッド構造の形成性および密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっき処理について説明する。
【0115】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体がポリマー層に吸着または含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、その濃度は0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0116】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、公知の添加物が含まれていてもよい。
【0117】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶剤である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0118】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO4、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH3)4)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0119】
このようにして形成される無電解めっきによる金属膜(めっき膜)の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、または、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0120】
以上のようにして得られた無電解めっきによる金属膜(めっき膜)は、SEMによる断面観察により、ポリマー層中に無電解めっき触媒やめっき金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、更にポリマー層上にめっき金属が析出していることが確認された。基板とめっき膜との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(触媒金属またはめっき金属)との界面が平滑(例えば、凹凸差が500nm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0121】
(電気めっき)
本工程おいては、(a2)工程において付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0122】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0123】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0124】
本発明において、前述のめっき触媒、めっき触媒前駆体に由来する金属や金属塩、および/または、無電解めっきにより、ポリマー層中に析出した金属が、該層中でフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、金属膜とポリマー層との密着性を更に向上させることができる。
【0125】
上述した方法により得られた表面金属膜材料は、高温高湿下であっても、金属膜の密着力の変動が少ないといった効果を有する。
【0126】
表面金属膜材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面の凹凸(Rz)が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の基板上の全面または局所的に、金属膜(めっき膜)を設けたものであることが好ましい。この基板の表面凹凸(中間層や重合開始層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
また、基板と金属膜との密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属膜との密着性に優れる。
なお、表面の凹凸は、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下であることが好ましい。基板表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定できる。
また、基板と金属膜との密着性の値は、金属膜の表面に、銅板(厚さ:0.1mm)をエポキシ系接着剤(アラルダイト、チバガイギー製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行うか、または、金属膜自体の単部を直接はぎ取り、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行って得られた値である。
この表面金属膜材料は、例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL(Copper Clad Laminate)材料、電気配線用材料等の種々の用途に適用することができる。
【0127】
<金属パターン材料、およびその製造方法>
上記の表面金属膜材料における金属膜を、パターン状にエッチングする工程を行うことで、金属パターン材料を製造することができる。即ち、本発明の表面金属膜材料中の金属膜(めっき膜)をパターニングすることで配線(金属パターン)とすることができる。
このエッチング工程(a4工程)について以下に詳述する。
【0128】
<(a4)工程(エッチング工程)>
(a4)工程は、上記(a3)工程で形成された金属膜(めっき膜)をパターン状にエッチングする工程である。即ち、本工程では、基板表面全体に形成されためっき膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望の金属パターンを形成することができる。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0129】
サブトラクティブ法とは、形成された金属膜上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液で金属膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては、如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。
なお、このサブトラクティブ法が適用される金属膜の膜厚としては、5μm以上であることが好ましく、5μm〜30μmの範囲であることがより好ましい。
【0130】
また、セミアディティブ法とは、形成された金属膜上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジストパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、金属膜をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジスト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっきの手法としては上記記載の手法が使用できる。
なお、このセミアディティブ法が適用される金属膜の膜厚としては、エッチング処理を短時間で行えるように、0.3μm〜3μmの範囲であることが好ましい。
【0131】
上記の(a1)〜(a4)工程を経ることにより、所望の金属パターンを有する金属パターン材料を製造することができる。
【0132】
なお、(a1)工程で得られるポリマー層をパターン状に形成し、パターン状のポリマー層に対して、(a2)工程および(a3)工程を行うことで、金属パターン材料を作製することもできる(フルアディティブ工程)。
(a1)工程においてポリマー層をパターン状に形成する方法としては、具体的には、ポリマー層を形成する際に付与されるエネルギーをパターン状とすればよく、また、エネルギーを付与しない部分を現像で除去することでパターン状のポリマー層を形成することができる。
【0133】
現像処理の際に使用される処理液は特に制限されないが、例えば、高アルカリ性現像液(pH12程度)などが挙げられる。該アルカリ性現像液を用いる場合には、浸漬時間(現像時間)は1分〜30分程度であることが好ましい。
【0134】
上述した金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【0135】
<金属パターン材料>
本発明の金属パターン材料を構成するポリマー層は、前述のように、吸水性が低く、疎水性が高いため、このポリマー層の露出部(金属パターンの非形成領域)は、絶縁信頼性に優れる。
本発明の金属パターン材料は、表面の凹凸(Rz)が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の基板上の全面または局所的に、金属膜(めっき膜)を設けたものであることが好ましい。この基板の表面凹凸が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
また、基板と金属パターンとの密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
なお、Rzの測定方法、密着性の測定方法は上述の通りである。
【0136】
<配線基板>
本発明の金属パターン材料の金属パターンを配線として有する配線基板は、平滑な基板との密着性に優れた配線が形成でき、高周波特性も良好であるとともに、微細な高密度配線であっても、配線間の絶縁信頼性に優れる。
本発明における配線基板を多層配線基板として構成する場合、金属パターン材料の表面に、さらに絶縁層(絶縁樹脂層、層間絶縁膜、ソルダーレジスト)を積層して、その表面にさらなる配線(金属パターン)を形成してもよい。
【0137】
本発明に用いうる絶縁膜の材料としては、エポキシ樹脂、アラミド樹脂、結晶性ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、フッ素含有樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、全フッ素化ポリイミド、全フッ素化アモルファス樹脂など)、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂など挙げられる。
これらの中でも、上述したポリマー層との密着性、寸法安定性、耐熱性、電気絶縁性等の観点から、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、または液晶樹脂を含有するものであることが好ましく、より好ましくはエポキシ樹脂である。具体的には、味の素ファインテクノ(株)製、ABF GX−13などが挙げられる。
【0138】
また、金属パターン材料表面における配線保護のために用いられる絶縁層の材料の一種であるソルダーレジストについては、例えば、特開平10−204150号公報や、特開2003−222993号公報等に詳細に記載され、ここに記載の材料を所望により本発明にも適用することができる。ソルダーレジストは市販品を用いてもよく、具体的には、例えば、太陽インキ製造(株)製 PFR800、PSR4000(商品名)、日立化成工業(株)製 SR7200G、などが挙げられる。
【実施例】
【0139】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0140】
[ポリマーの合成]
以下に、ポリマーの合成方法を詳述する。
後述する各ポリマー(ポリマー1〜13、並びに、比較ポリマー1および2)の重量平均分子量の測定は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。
また、各ポリマー(ポリマー1〜13、並びに、比較ポリマー1および2)の構造の同定は、NMR(ブルカー製 400MHz)を用いて、ポリマーを重DMSOに溶解させ1H−NMRで確認した。
【0141】
1.ポリマー1の合成
300mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート19.8gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)2.32g、ブレンマーAME400(日油(株)製)13.62g、イソボロニルアクリレート(東京化成工業(株)製)10.42g、およびV−65(和光純薬(株)製)0.199gのジメチルカーボネート19.8g溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、室温まで反応溶液を冷却し、アセトニトリル9.0gを添加した。
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.076g、U−600(日東化成工業(株)製)0.225g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)6.84gのアセトニトリル6.84g溶液を添加し、45℃、6時間反応を行った。その後、反応溶液に、水を0.87g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、ヘキサン/酢酸エチル(=5/1)で再沈殿を行い、固形物を取り出し、本発明のポリマー1を24g得た。ポリマー1の重量平均分子量は、6.8万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0142】
【化11】

【0143】
2.ポリマー2の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート(ENF TECHNOLOGY 社製)、ブレンマーAME400をそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により本発明のポリマー2を20g得た。ポリマー2の重量平均分子量は、5.4万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0144】
【化12】

【0145】
3.ポリマー3の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成工業(株)製)、ブレンマーAME400をそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により本発明のポリマー3を21g得た。ポリマー3の重量平均分子量は、7.3万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0146】
【化13】

【0147】
4.ポリマー4の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、ブレンマーTBCHMA(日油(株)製)、ブレンマーAME400をそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により本発明のポリマー4を25g得た。ポリマー4の重量平均分子量は、7.0万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0148】
【化14】

【0149】
5.ポリマー5の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート、NKエステルAM−30G(新中村化学(株)製)をそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により本発明のポリマー5を19g得た。ポリマー5の重量平均分子量は、6.8万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0150】
【化15】

【0151】
6.ポリマー6の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、アダマンチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)、ブレンマーAME400をそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により本発明のポリマー6を25g得た。ポリマー6の重量平均分子量は、6.1万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0152】
【化16】

【0153】
7.ポリマー7の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート、NKエステルAM−130G(新中村化学(株)製)をそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により本発明のポリマー7を28g得た。ポリマー7の重量平均分子量は、9.1万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0154】
【化17】

【0155】
8.ポリマー8の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート、NKエステルM−230G(新中村化学(株)製)をそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により本発明のポリマー8を28g得た。ポリマー8の重量平均分子量は、8.5万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0156】
【化18】

【0157】
9.ポリマー9の合成
アクリル酸(和光純薬(株)製)、ブレンマーAME400、イソボロニルアクリレートをそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の操作で重合反応を行った。
上記の反応溶液に、ジ−t−ブチルヒドロキノン(和光純薬(株)製)0.050g、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド(市販品、東京化成工業(株)製)0.50g、グリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)5.69gを加え、70℃で6時間攪拌した。反応終了後、ヘキサン/酢酸エチル(=5/1)で再沈殿を行い、固形物を取り出し、本発明のポリマー9を24g得た。ポリマー9の重量平均分子量は、5.6万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0158】
【化19】

【0159】
10.ポリマー10の合成
300mlの三口フラスコに、N−エチルピロリドン13gを入れ、窒素気流下、80℃まで加熱した。そこへ、下記重合性基含有モノマー前駆体1を4.23g、ジシクロペンタニルアクリレート6.21g、ブレンマーAME400(13.62g)、及びV−601(和光純薬(株)製)0.184gのN−エチルピロリドン13gの溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
【0160】
【化20】

【0161】
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成工業(株)製)0.040g、DBU(和光純薬(株)製)6.09g、N−エチルピロリドン10gを加え、24時間室温で攪拌した。反応終了後、ヘキサン/酢酸エチル(=5/1)で再沈殿を行い、固形物を取り出し、本発明のポリマー10を18g得た。ポリマー10の重量平均分子量は、4.3万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0162】
【化21】

【0163】
11.ポリマー11の合成
下記重合性基含有モノマー前駆体2、アダマンチルアクリレート、ブレンマーAME400をそれぞれ所定量使用し、ポリマー10と同様の操作で重合反応を行った。
【0164】
【化22】

【0165】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.06g、トリエチルアミン22.26gを加え、室温で4時間反応を行った。反応終了後、ヘキサン/酢酸エチル(=5/1)で再沈殿を行い、固形物を取り出し、本発明のポリマー11を19g得た。ポリマー11の重量平均分子量は、4.0万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0166】
【化21】

【0167】
12.ポリマー12の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、ブレンマーAME400、イソボロニルアクリレートをそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の操作で重合反応を行った。
上記の反応溶液に、VEEA(日本触媒(株)製)8.15g、トリフルオロ酢酸(和光純薬(株)製)0.076gを加え、45℃で6時間反応を行った。その後、炭酸カリウム(和光純薬(株)製)0.092gを加え、1時間反応した。反応終了後、不溶物をろ別し、ヘキサン/酢酸エチル(=5/1)で再沈殿を行い、本発明のポリマー12を20g得た。ポリマー12の重量平均分子量は、6.0万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0168】
【化22】

【0169】
13.ポリマー13の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(東京化成工業(株)製)、イソボロニルアクリレートをそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により本発明のポリマー13を22g得た。ポリマー13の重量平均分子量は、8.0万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0170】
【化23】



【0171】
14.比較ポリマー1の合成
500ml三口ナスフラスコに、1−デカノール(和光純薬(株)製)50g、トリエチルアミン(和光純薬(株)製)41.7g、酢酸エチル300gを入れ、氷浴で0℃に冷却した。その混合物に、アクリル酸クロライド(和光純薬(株)製)28.5gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃で1時間攪拌し、不溶物をろ別した。ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒はヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製し、下記モノマー1を61.4g得た。
【0172】
【化24】

【0173】
ヒドロキシエチルアクリレート、モノマー1、ブレンマーAME400をそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により比較ポリマー1を25g得た。比較ポリマー1の重量平均分子量は、8.5万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0174】
【化25】

【0175】
15.比較ポリマー2の合成
ヒドロキシエチルアクリレート、ブレンマーAME400をそれぞれ所定量使用し、ポリマー1と同様の合成方法により比較ポリマー2を22g得た。比較ポリマー2の重量平均分子量は、5.8万であった。なお、以下の各ユニットの化学式中に記載される数値は、全ユニットに対する、各ユニットのモル%を表す。
【0176】
【化26】

【0177】
<実施例1>
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、電気的絶縁層として味の素ファインテクノ社製エポキシ系絶縁膜GX−13(膜厚45μm)を、加熱、加圧して、真空ラミネーターにより0.2MPaの圧力で100℃〜110℃の条件により接着して、基材Aを得た。
ついで、基材Aの上に、下記組成の重合開始剤を含有する絶縁性組成物を厚さ3μmになるようにスピンコート法で塗布し、30℃にて1時間放置して溶剤を除去した後、140℃で30分乾燥して重合開始層(絶縁性の重合開始層)を形成した。
【0178】
(重合開始剤を含有する絶縁性組成物)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量176、ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート825)5g、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライトLA−7052、不揮発分62%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120)2g、フェノキシ樹脂MEKワニス(東都化成(株)製、YP−50EK35、不揮発分35%)10.7g、重合開始剤として2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン2.3g、MEK5.3g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.053gを混合し、攪拌して完全に溶解させて、重合開始剤を含有する絶縁性組成物を得た。
【0179】
上記により重合開始層を形成した後、180℃で30分間硬化処理を実施した。これにより、基板A1を得た。この基板A1の表面凹凸(Rz)は0.2μmであった。
【0180】
[ポリマー層の形成]
(塗布溶液の調製)
前述の合成例で得られたポリマー1を10.5質量部、アセトン73.3質量部、メタノール33.9質量部、およびN,N−ジメチルアセトアミド4.8質量部を混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
【0181】
(露光)
調製した塗布溶液を、上記基板A1の重合開始層上に厚さ1μmになるようにスピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した。その後、(株)三永電機製作所製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、1.5mW/cm2の照射パワー(ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、660秒間照射させて、基板A1の重合開始層の全面で、ポリマー1を反応させた。
【0182】
その後、攪拌した状態のアセトン中に、ポリマー層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、基板A1と直接結合したポリマー層(厚み:0.9μm)を有する基板A2を得た。
【0183】
[めっき触媒の付与]
ポリマー層を有する基板A2を、硝酸パラジウムの1質量%アセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
続いて、1%ジメチルアミノボラン−水/メタノール(水/メタノール=1/3)混合溶液を触媒活性化液(還元液)として用い、この溶液中に、ポリマー層を有する基板A2を15分浸漬させた後、アセトンに浸漬し洗浄を行った。
【0184】
[無電解めっき]
めっき触媒が付与されたポリマー層を有する基板A2に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、60℃で5分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.3μmであった。
【0185】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 859g
・メタノール 850g
・硫酸銅 18.1g
・エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩 54.0g
・ポリオキシエチレングリコール(分子量1000) 0.18g
・2,2’−ビピリジル 1.8mg
・10%エチレンジアミン水溶液 7.1g
・37%ホルムアルデヒド水溶液 9.8g
以上の組成のめっき浴のpHは、水酸化ナトリウム及び硫酸で12.5(60℃)に調整した。
【0186】
[電気めっき]
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dm2の条件で、電気めっきを20分間行った。その後、100℃で30分、続いて180℃で1時間、べーク処理を行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
【0187】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0188】
[金属膜の密着性評価]
得られためっき膜に対して、引張試験機(島津製、オートグラフ)を用いて、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、密着力は0.49kN/mであった。なお、表1の金属膜の密着性は、上記試験により測定された密着力を以下の基準に沿って評価したものである。実用上の観点から、「×」でないことが必要である。
<金属膜の密着性>
○=密着力0.4kN/m以上
△=密着力0.2kN/m以上、0.4kN/m未満
×=密着力0.2kN/m未満
【0189】
[金属パターンの形成、ソルダーレジストの貼付け及び絶縁信頼性試験]
電気めっき後の基板に対し180℃/1時間の熱処理を行なった後、該基板の表面に、ドライレジストフィルム(日立化成(株)製;RY3315、膜厚15μm)を真空ラミネーター((株)名機製作所製:MVLP−600)で70℃、0.2MPaでラミネートした。次いで、ドライレジストフィルムがラミネートされた基板に、JPCA−ET01に定めるL/S=75μm/75μmの櫛型配線(JPCA−BU01−2007準拠、パターンFB)が形成できるガラスマスクを密着させ、レジストを中心波長405nmの露光機にて70mJの光エネルギーを照射した。露光後の基板に、1%Na2CO3水溶液を0.2MPaのスプレー圧で噴きつけ、現像を行なった。その後、基板の水洗・乾燥を行い、銅めっき膜上に、サブトラクティブ法用のレジスト・パターンを形成した。
レジスト・パターンを形成した基板を、FeCl3/HCl水溶液(エッチング液)に温度40℃で浸漬することによりエッチングを行い、レジスト・パターンの非形成領域に存在する銅めっき層を除去した。その後、3%NaOH水溶液を0.2MPaのスプレー圧で基板上に噴き付けることで、レジスト・パターンを膨潤剥離し、10%硫酸水溶液で中和処理を行い、水洗することで櫛型配線(金属パターン材料)を得た。
【0190】
さらに、櫛型配線上に真空ラミネーター(MVLP−600、(株)名機製作所製)を用い、絶縁膜フィルムABF GX−13(味の素ファインテクノ(株)製)を100℃、0.5MPaの条件で真空ラミネートしたのち、180℃/1hrの加熱処理を行ない、配線間絶縁信頼性を測定するための絶縁膜で被覆された櫛形配線(配線基板)を得た。このとき、後の絶縁信頼性試験ではんだ付けする部分に関しては、遮光テープでマスクした。
この櫛型配線基板に対し、JPCA規格 プリント配線板環境試験方法JPCA−ET01(通則)およびET07(高温・高湿・定常不飽和加圧水蒸気試験)に基づいて絶縁信頼性試験を行なった。ESPEC製HAST試験機(AMI−150S−25(EHS-211-MD))にて、130℃−85%相対湿度(不飽和)、印加電圧20Vで200時間放置したが、配線間の絶縁不良、および、金属デンドライトの形成は見られなかった。
【0191】
ポリマー1を使用した実施例1と同様の評価をポリマー2〜13、および比較ポリマー1〜2を用いて行った結果を、表1にまとめて示す。
なお、表1中のめっき性は、無電解めっき時のめっき厚が0.3μmになるまでの、めっき析出時間を以下の基準に沿って評価したものである。実用上の観点から、「×」でないことが必要である。
<めっき性>
◎=めっき析出時間30分以内
○=めっき析出時間30分超60分以内
△=めっき析出時間は60分超120分以内
×=めっき析出せず
【0192】
金属デンドライトの有無は、以下の2つの観点から評価した。
まず、ポリマー層表面のパターン状の金属配線(金属膜)間の領域における金属デンドライトの有無を、光学顕微鏡による目視観察にて評価した。
また、ポリマー層と金属膜とを備える基板をミクロトームにより切断し、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、絶縁膜またはSR層とポリマー層との界面、および、ポリマー層内における金属デンドライトの有無を評価した。
なお、評価は以下の基準に従って行った。実用上の観点から、「×」でないことが必要である。
<金属デンドライト評価>
「○」:金属デントライトが観察されなかった場合
「△」:金属デンドライトが若干観察されるが、絶縁信頼性には影響しなかった場合
「×」:金属デンドライトが観察され、絶縁信頼性を損なう場合
【0193】
上記の方法によって測定される絶縁信頼性の評価は、以下の基準に従って行った。実用上の観点から、「×」でないことが必要である。
<絶縁抵抗評価>
「◎」:絶縁抵抗が5.0×107Ω以上であった場合
「○」:絶縁抵抗が1.0×107Ω以上5.0×107Ω未満であった場合
「△」:絶縁抵抗が1.0×107Ω未満であった場合
「×」:配線間に絶縁不良が見られた場合
【0194】
また、上層として上述した絶縁膜フィルムの代わりに、ソルダーレジストを使用する場合、まず、櫛型配線上にソルダーレジスト(PFR800;太陽インキ製造(株)製)を70℃、0.2MPaの条件で真空ラミネートし、中心波長365nmの露光機にて420mJの光エネルギーを照射した。このとき、後の絶縁信頼性試験ではんだ付けする部分に関しては、遮光テープでマスクした。次いで、基板を80℃/10分間の加熱処理を施した後、Na2CO3;1%水溶液を、スプレー圧0.2MPaで基板表面に噴きつけ現像し、水洗、乾燥した。その後、再度、中心波長365nmの露光機にて1000mJの光エネルギーを、基板に対し照射した。最後に150℃/1hrの加熱処理を行ない、ソルダーレジスト(SR層)に被覆された線間絶縁信頼性を測定するための櫛形配線(金属パターン材料)を得た。
【0195】
なお、表1において、基板の上層として「絶縁膜フィルム」を使用した場合は「絶縁膜」と、ソルダーレジストを使用した場合は「SR層」とそれぞれ表記する。
また、表1中、「−」は未実施を意味し、実施例13においては、上層の作製を行わずに、めっき性のみを評価した。
また、表1中の比較ポリマー1を使用した場合、めっきが析出しなかったため、金属デンドライトの有無、絶縁信頼性試験は実施できなかった。
【0196】
【表1】

【0197】
表1の結果より、本発明の被めっき層形成用組成物により得られた表面金属膜材料および金属パターン材料は、金属膜と樹脂層の密着性、配線間の絶縁信頼性に優れることが分かった。
なかでも、単環構造の脂環式炭化水素基を有するポリマー4と、多環構造の脂環式炭化水素基を有するポリマー1〜3および6との比較より、多環構造の脂環式炭化水素基を有するポリマーのほうが、めっき性および絶縁抵抗性により優れ、かつ、金属デンドライトの発生がより抑制されることが確認された。
また、2個の繰り返しオキシエチレンユニットを有するポリマー13と、3個の繰り返しオキシエチレンユニットを有するポリマー5との比較より、より長いオキシエチレンユニットを有するポリマー5のほうが、めっき性により優れることが確認された。さらに、ポリマー5と、9個のオキシエチレンユニットを有するポリマー1との比較より、さらに長いオキシエチレンユニットを有するポリマーのほうが、めっき性により優れることが確認された。
【0198】
一方、脂環式炭化水素基の代わりに、鎖状の炭化水素基を有する比較ポリマー1を用いた比較例1においては、めっきが析出しなかった。
また、脂環式炭化水素基を有しない比較ポリマー2を用いた比較例2においては、めっきは析出するものの、金属デンドライトの発生が確認され、絶縁信頼性などに劣っていた。
これらの結果より、所定の官能基(特に、ポリオキシアルキレン基、脂環式炭化水素基)を有するポリマーを使用することにより、絶縁信頼性およびめっき性などに優れた材料を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性基を有するユニット(A)と、
ポリオキシアルキレン基を有するユニット(B)と、
脂環式炭化水素基を有するユニット(C)とを含むポリマーを含有する、被めっき層形成用組成物。
【請求項2】
前記脂環式炭化水素基が、多環の脂環式炭化水素基である、請求項1に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項3】
前記脂環式炭化水素基が、総炭素数7〜15の脂環式炭化水素基である、請求項1または2に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレン基が、オキシアルキレン単位を平均3〜30個有する、請求項1〜3のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレン基が、ポリオキシエチレン基である、請求項1〜4のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項6】
前記重合性基が、ラジカル重合性基である、請求項1〜5のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項7】
基板上に、請求項1〜6のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物を用いてポリマー層を形成する工程と、
前記ポリマー層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程と、
前記めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程とを備える、表面に金属膜を有する表面金属膜材料の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の表面金属膜材料の製造方法によって得られる、表面金属膜材料。
【請求項9】
請求項8に記載の表面金属膜材料中の金属膜をパターン状にエッチングする工程を有する金属パターン材料の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の金属パターン材料の製造方法により得られる金属パターン材料。
【請求項11】
請求項10に記載の金属パターン材料と、前記金属パターン材料上に絶縁層とを備える配線基板。


【公開番号】特開2012−31447(P2012−31447A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169980(P2010−169980)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】