説明

被めっき層形成用組成物、金属パターン材料の作製方法及びそれにより得られた金属パターン材料、表面金属膜材料の作製方法及びそれにより得られた表面金属膜材料

【課題】基板との密着性に優れた被めっき層を形成し得る被めっき層形成用組成物等の提供。
【解決手段】ラジカル重合性基、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基、及びイオン性吸着基を有するポリマーを含有する被めっき層形成用組成物等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被めっき層形成用組成物、金属パターン材料の作製方法及びそれにより得られた金属パターン材料、表面金属膜材料の作製方法及びそれにより得られた表面金属膜材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、金属配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理するが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
この問題を解決するため、基板の表面にプラズマ処理を行い、基板表面に重合開始基を導入し、その重合開始基からモノマーを重合させて、基板表面に極性基を有する表面グラフトポリマーを生成させるという表面処理を行うことで、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良させる方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
また、下記特許文献1には、基材上に機能性素材と相互作用しうる官能基及び架橋性官能基を有するグラフトポリマーを直接結合させ、該機能性素材と相互作用しうる官能基に機能性素材を吸着させて機能性素材吸着層を形成した後、該機能性素材吸着層に加熱等によりエネルギーを付与し、機能性素材吸着層中に架橋構造を形成することで、耐久性(密着性)及び機能性素材の保持性及びその持続性に優れた機能性素材吸着層を有する表面機能性部材を得る方法が開示されている。
【0006】
一方、マイケル付加反応を適用した硬化性組成物に関しては、カプセル化された塩基触媒を利用して、多官能アクリレート(マイケル受容体)とメチルアセトアセテート等の活性メチレン化合物(マイケル供与帯)とをマイケル付加反応により硬化させる組成物が開示されている(特許文献2参照)。
【非特許文献1】Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494
【特許文献1】特開2006−56948号公報
【特許文献2】特開2007−217686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載の方法では、基材と直接結合したグラフトポリマーを含む機能性素材層中に架橋構造を形成することで、耐久性(密着性)に優れた機能性素材層が形成される。しかし、この方法に適用される架橋反応は、加熱等のエネルギー付与によるものであることから、エネルギー付与手段が必要となり、より簡便な処理により基材とその上層の密着性が要求されるような場合には、このような方法は不向きである。また、この架橋反応では機能性素材を吸着する基が架橋反応で消費されてしまうため、多くの機能性素材を層中に吸着させる必要がある場合には、このような方法は不向きであった。更に、反応活性の高い官能基を層中に共存させておく必要があるため、高い経時安定性が要求されるような場合には不向きであった。
本発明は、上記の諸事情に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
【0008】
即ち、本発明の第1の目的は、基板との密着性に優れた被めっき層を形成し得る被めっき層形成用組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、基板との密着性に優れた金属パターンを、簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及びこれにより得られた金属パターン材料を提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、基板との密着性に優れた金属膜を、簡易に形成しうる表面金属膜材料の作製方法、及びこれにより得られた表面金属膜材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により前記目的を達成しうることを見出した。
【0010】
<1> ラジカル重合性基、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基、及びイオン性吸着基を有するポリマーを含有する被めっき層形成用組成物。
<2> 前記ラジカル重合性基、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基、及びイオン性吸着基を有するポリマーが、下記式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体である<1>に記載の被めっき層形成用組成物。
ここで、上記ラジカル重合性基は下記(A)で表されるユニット中のオレフィン部分であり、上記10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基は、下記(B)で表されるユニット中のR及びRが結合した炭素原子上の活性水素であり、上記イオン性吸着基は下記(C)で表されるユニット中の官能基Vである。
【化1】

【0011】
式(A)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Z及びYは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
式(B)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Rは、単結合、−C(=O)−、又は−C(=NR10)−を表し、R及びRは、夫々独立して、水素原子、−C(=O)R11、−C(=NR12)R13、又はシアノ基を表し、R10、R11、R12、及びR13は、夫々独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。但し、Rが単結合の場合、R及びRは−C(=O)R11、−C(=NR12)R13、又はシアノ基を表す。
式(C)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Uは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Vはイオン性吸着基を表す。
【0012】
<3> 前記10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基が、α−置換酢酸エステル誘導体に由来する官能基である<1>に記載の被めっき層形成用組成物。
<4> 前記式(B)で表されるユニットにおいて、R及び/又はRがシアノ基である<2>に記載の被めっき層形成用組成物。
<5> 前記式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基である<2>に記載の被めっき層形成用組成物。
<6> (a1)基板上に、<1>〜<5>のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、前記被めっき層形成用組成物に対してパターン状にエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる工程と、
(a2)前記基板上の前記被めっき層形成用組成物の未硬化部を、pH10未満のアルカリ水溶液で現像処理し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、
(a3)現像処理後の前記パターン状の被めっき層を、pH10以上のアルカリ水溶液で架橋処理する工程と、
(a4)架橋処理後の前記パターン状の被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(a5)前記めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有する金属パターン材料の作製方法。
<7> <6>に記載の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料。
【0013】
<8> (b1)基板上に、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、前記被めっき層形成用組成物に対してその全面にエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させて、被めっき層を形成する工程と、
(b2)前記パターン状の被めっき層を、pH10以上のアルカリ水溶液で架橋処理する工程と、
(b3)架橋処理後の前記被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(b4)前記めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有する表面金属膜材料の作製方法。
<9> <8>に記載の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板との密着性に優れた被めっき層を形成し得る被めっき層形成用組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、基板との密着性に優れた金属パターンを、簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及びこれにより得られた金属パターン材料を提供することができる。
また、本発明によれば、基板との密着性に優れた金属膜を、簡易に形成しうる表面金属膜材料の作製方法、及びこれにより得られた表面金属膜材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
<被めっき層形成用組成物>
本発明の被めっき層形成用組成物は、ラジカル重合性基、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基、及びイオン性吸着基を有するポリマーを含有することを特徴とする。以下では、本発明に用いられる、ラジカル重合性基、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基、及びイオン性吸着基を有するポリマーを、適宜、「特定ポリマー」と称して説明する。
【0016】
〔特定ポリマー〕
本発明における特定ポリマーは、その分子内に、ラジカル重合性基、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基(以下、適宜、「特定官能基」と称する。)、及び、イオン性吸着基を有することを特徴としている。
【0017】
特定ポリマーが分子内に有するラジカル重合性基は、本発明の被めっき層形成用組成物による被めっき層の形成において、基板上に接触させた該被めっき層形成用組成物に対してエネルギー付与を行った際に、該被めっき層形成用組成物の硬化に寄与し、延いては基板と被めっき層との密着性向上効果が発揮される。さらに、特定ポリマーがその分子内に有するラジカル重合性基及び特定官能基は、塩基触媒の存在下、各々、マイケル付加反応におけるマイケル付加受容体及びマイケル付加供与体として機能するものであるため、被めっき層形成用組成物をエネルギー付与により硬化させて被めっき層形成を行った後に、更に、被めっき層中に存在する特定ポリマーに、マイケル付加反応を生起させると、エネルギー付与による硬化に寄与しなかったラジカル重合性基と特定官能基とにより、被めっき層中に架橋構造が形成され、基板と被めっき層との密着性が著しく向上する。なお、ここで、マイケル付加反応とは、活性化した不飽和系に活性メチレン化合物が塩基触媒によって付加する公知の反応である。
また、本発明の被めっき層形成用組成物により形成される被めっき層においては、特定ポリマーが、分子内のラジカル重合性基により基板に結合していることが好ましい態様であるが、かかる場合に、上記のマイケル付加反応により被めっき層中に架橋構造の形成が行われると、本発明の被めっき層形成用組成物により形成される被めっき層と基板との密着性がより一層優れたものとなる。
さらに、特定ポリマーは、一つの分子内に、マイケル付加受容体及びマイケル付加供与体として機能する部位(ラジカル重合性基及び特定官能基)を併有することから、マイケル付加反応による架橋構造の形成を効率よく行うことができる。
【0018】
特定ポリマー中の特定官能基は、その構造中に、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有するものである。特定官能基としては、活性水素が結合する炭素原子に隣接する部分構造として、C=O、C=N、又はCNを2つ以上有するものであることが好ましい。
特定官能基としては、α−置換酢酸エステル誘導体に由来する官能基であることが好ましい。該α−置換酢酸エステル誘導体としては、例えば、α−シアノ酢酸エステル誘導体、α−アセチル酢酸エステル誘導体、α−アリール酢酸エステル誘導体、α−ニトロ酢酸エステル誘導体、α−ビニル酢酸エステル誘導体、α−メチルスルホキシ酢酸エステル誘導体、等が挙げられる。
【0019】
特定官能基として具体的には、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、以下の例示において、Hと明記した部分が、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を示す。また、以下の例示において、波線で示される部位は、特定官能基とポリマー鎖との連結部位を示す。
【0020】
【化2】

【0021】
特定ポリマー中のラジカル重合性基は、エネルギー付与により直接、又は、共存するラジカル発生剤から発生したラジカルにより重合しうるとともに、マイケル付加反応の受容体として機能しうる官能基であれば特に制限されないが、具体的には、アクリロイルオキシ基、メタクリロイロキシ基、ビニルカルボニル基、などが挙げられる。中でも、メタアクロリロイルオキシ基又はアクロリロイルオキシ基が好ましく、マイケル付加受容性の観点からは、アクロリロイルオキシ基がより好ましい。
【0022】
このようなラジカル重合性基は、ラジカル重合性基がペンダントされたモノマーを共重合することで特定ポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、イオン性吸着基及び相互作用性基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入してもよい。
【0023】
特定ポリマー中のイオン性吸着基は、本発明の被めっき層形成用組成物により被めっき層の形成する際に用いられるめっき触媒又はその前駆体に対して吸着性を発揮するものであれば特に限定されず、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸、ボロン酸等が挙げられる。中でも、他の官能基に対する不活性性の点からは、カルボン酸基が好ましい。
【0024】
後述する本発明の金属パターン作製方法においては、パターン状の被めっき層を形成するに際して、pH10未満のアルカリ水溶性での現像処理により、未硬化部の被めっき層形成組成物を除去するが、特定ポリマー中のイオン性吸着基として、アルカリ水溶液に対する被めっき層の溶解性を向上させうる基を選択すれば、当該現像処理における未硬化部の被めっき層形成組成物の除去性を向上させることものできる。
【0025】
イオン性吸着基は、以下に説明する、ラジカル重合性基と特定官能基とを有するポリマーの一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入していてもよいし、また、上記のようなイオン性吸着基がペンダントされたモノマーを共重合することで、特定ポリマー中に導入してもよい。
【0026】
本発明における特定ポリマーは、下記式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体であることが好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
式(A)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Z及びYは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
式(B)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Rは、単結合、−C(=O)−、又は−C(=NR10)−を表し、R及びRは、夫々独立して、水素原子、−C(=O)R11、−C(=NR12)R13、又はシアノ基を表し、R10、R11、R12、及びR13は、夫々独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。但し、Rが単結合の場合、R及びRは−C(=O)R11、−C(=NR12)R13、又はシアノ基を表す。
式(C)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Uは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Vはイオン性吸着基を表す。
【0029】
式(A)〜(C)において、R〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
式(A)におけるRとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
式(A)におけるRとしては、水素原子が好ましい。
式(A)におけるRとしては、水素原子が好ましい。
式(B)におけるRとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
式(C)におけるRとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0030】
式(A)〜(C)におけるX、Y、Z、及びUは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表す。X、Y、Z、又はUが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
X、Y、Z、又はUで表される置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
X、Y、Z、又はUで表される置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
X、Y、Z、及びUとしては、夫々独立して、エステル基、アミド基、又はエーテル基が好ましく、特に好ましくはエステル基である。
【0031】
式(A)におけるLは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、又は、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0032】
【化4】

【0033】
上記式(1−1)及び式(1−2)中、R及びRは、夫々独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基であり、好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0034】
また、式(B)におけるL、及び、式(C)におけるLは、それぞれ、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L及びLはそれぞれ総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、例えば、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。Lの場合も同様である。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0035】
式(B)で表されるユニットにおいて、R、R及びRを含んで構成される下記の部分構造は、特定ポリマーにおける特定官能基に相当する部分構造である。
【0036】
【化5】

【0037】
上記部分構造中、Rは、単結合、−C(=O)−、又は−C(=NR10)−を表し、R及びRは、夫々独立して、水素原子、−C(=O)R11、−C(=NR12)R13、又はシアノ基を表し、R10、R11、R12、及びR13は、夫々独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表す。但し、Rが単結合の場合、R及びRは−C(=O)R11、−C(=NR12)R13、又はシアノ基を表す。R、R及びRは、C=O、C=N、又はCNを2つ以上有するものであることが好ましい。
、R及びRの好ましい組み合わせの具体例としては、特定官能基の具体例として先に例示したものが挙げられる。
【0038】
また、シアノ基はめっき触媒等への吸着能が高いことから、R及び/又はRがシアノ基である場合、該シアノ基は、めっき触媒等の吸着基としても寄与しうる。
【0039】
式(C)で表されるユニットにおいて、Vはイオン性吸着基を表し、このイオン性吸着基としては前述したものが挙げられる。中でも、他の官能基に対する不活性性の点から、カルボン酸基が好ましい。
【0040】
本発明における特定ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜100000の範囲である。
【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
(特定ポリマーの合成方法)
以下、本発明の特定ポリマーの合成方法について説明する。
本発明における特定ポリマーは、前述のラジカル重合性基、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基(即ち、特定官能基)及びイオン性吸着基を有するポリマーであれば特に限定されないが、ラジカル重合性基、特定官能基、及びイオン性吸着基のそれぞれを側鎖に有するポリマーであることが好ましい。本発明における特定ポリマーは、式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体のような、ラジカル重合性基を有するユニット、特定官能基を有するユニット、及びイオン性吸着基を有するユニットを含む共重合体であることが好ましい。
以下、ラジカル重合性基を有するユニット、特定官能基を有するユニット、及びイオン性吸着基を有するユニットを含む共重合体の態様を有する特定ポリマーと、その合成方法について説明する。
【0044】
上記のような共重合体の態様を有する特定ポリマーは、以下のように合成できる。
合成方法としては、下記のi)〜ii)が挙げられる。
i)特定官能基をを有するモノマーと、ラジカル重合性基を有するモノマーと、イオン性吸着基を有するモノマーと、を共重合する方法
ii)特定官能基を有するモノマー及びイオン性吸着基を有するモノマーを用いて合成され、且つ、反応性基を有するポリマーに、該ポリマー中の反応性基と反応しうるラジカル重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法
これらの中でも、好ましいのは、合成適性の観点からii)の方法である。
【0045】
なお、合成方法i)〜ii)において特定ポリマーを合成する際には、得られる特定ポリマーの吸水性を低下させるため、また、疎水性を向上させるために、他のモノマーを共重合成分として用いてもよい。他のモノマーとしては、一般的な、ラジカル重合系のモノマーが用いられ、ジエン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。中でも、無置換アルキルのアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、ターシャリーブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどが好ましく使用できる。
【0046】
上記の合成方法i)〜ii)で用いられる特定官能基を有するモノマーとしては、前記した特定官能基を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用可能であるが、例えば、具体的には、以下に示すものが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0047】
【化8】

【0048】
また、合成方法i)〜ii)で用いられるイオン性吸着基を有するモノマーとしては、前記したイオン性吸着基を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用可能であるが、例えば、具体的には、以下に示すものが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0049】
【化9】

【0050】
前記i)の合成方法で用いられるラジカル重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレートや、以下の化合物などが挙げられる。
【0051】
【化10】

【0052】
前記ii)の合成方法において用いられるポリマーは、特定官能基を有するモノマー、イオン性吸着基を有するモノマー、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーと、をラジカル重合することにより合成される。
二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基として、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
【0053】
カルボキシル基含有のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、安息香酸ビニル、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーション製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学製のライトアクリレート HOA−HH、中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどが挙げられる。
ヒドロキシ基含有のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレートのメチルエステル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、1−メチル−2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルフタル酸、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH=CRCOOCHCH[OC(=O)C10OH
(R=H又はMe、n=1〜5)
【0054】
なお、ヒドロキシ基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを用いる場合、高分子量体のポリマーを合成するといった観点から、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートを除去した原料を用いることができる。
精製の方法としては、蒸留、カラム精製が好ましい。更に好ましくは、下記(I)〜(IV)の工程を順次経ること精製される方法である。
(I)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、該ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートと、を含む混合物を、水に溶解する工程
(II)得られた水溶液に、水と分離する第1の有機溶剤を加えた後、該第1の有機溶剤と前記2官能アクリレートとを含む層を水層から分離する工程
(III)前記水層に、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物を溶解する工程
(IV)前記水層に第2の有機溶剤を加えて、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを抽出した後、濃縮する工程
【0055】
また、エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイセル化学製のサイクロマーA、Mなどが使用できる。
イソシアネート基を有するモノマーとしては、昭和電工製のカレンズAOI、MOIが使用できる。
なお、ii)の合成方法において用いられるポリマーは、更に他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0056】
前記ii)の合成方法において、反応性基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、ポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
【0057】
【化11】

【0058】
以上のようにして合成された本発明における特定ポリマーは、共重合ユニット全体に対し、重合性基含有ユニット、特定官能基含有ユニット、イオン性吸着基含有ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、特定官能基含有ユニットは、架橋性の観点から、共重合ユニット全体に対し80mol%〜10mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは50mol%〜20mol%である。
また、ラジカル重合性基含有ユニットは、ラジカル重合性、マイケル付加受容体として反応・架橋する観点から、共重合ユニット全体に対し10mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜40mol%である。
イオン性吸着基含有ユニットは、アルカリ可溶性の観点から、共重合ユニット全体に対し20mol%〜70mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20mol%〜60mol%である。
【0059】
本発明における特定ポリマーでは、ラジカル重合性ユニットの含有割合が50mol%〜20mol%で、特定官能基含有ユニットの含有割合が50mol%〜20mol%で、且つ、イオン性吸着基含有ユニットの含有割合が50ol%〜10mol%であることが、特に好ましい態様である。
また、特定ポリマーでは、ラジカル重合性ユニットの含有割合が50mol%〜30mol%で、特定官能基含有ユニットの含有割合が50mol%〜30mol%で、且つ、イオン性吸着基含有ユニットの含有割合が30mol%〜10mol%であることが、最も好ましい態様である。
【0060】
ただし、前述ii)の合成方法のように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第4のユニットとなる可能性もある。また、副反応が進行してしまうこともあり、これが第5のユニットとなる可能性もある。
【0061】
本発明における特定ポリマーの重量平均分子量は、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、本発明における特定ポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、本発明における特定の重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0062】
本発明の被めっき層形成用組成物は、上述の特定ポリマーを、組成物全体に対して、30質量%〜5質量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましい範囲は、20質量%〜5質量%である。
【0063】
〔溶剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物は、前述の特定ポリマーの他に、この特定ポリマーを溶解しうる溶剤を含有することが好ましい。
使用できる溶剤としては、例えば、アルカリ水や、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤などが挙げられる。
【0064】
〔ラジカル発生剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物は、エネルギー付与に対する感度を高めるために、ラジカル発生剤を含有することが好ましい。
使用されるラジカル発生剤としては、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、ピリジウム類化合物等が挙げられる。
【0065】
〔増感剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物には、エネルギー付与が露光で行われる場合、その露光に対する感度をより高める目的で、前記ラジカル発生剤に加え、増感剤を含有させることもできる。
増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、ラジカル発生剤と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルの発生を促進することが可能である。
【0066】
本発明に使用しうる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から露光波長に合わせて、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3'−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等が挙げられ、他に、特開平5−19475号、特開平7−271028号、特開2002−363206号、特開2002−363207号、特開2002−363208号、特開2002−363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。
【0067】
光重合開始剤と増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
本発明においては、トリアジン系の光重合開始剤と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤と、の組合せが好ましく挙げられる。
【0068】
その他の増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などが挙げられる。これらについて順次説明する。
塩基性核を有する増感剤は、その分子内に塩基性核を有する色素であれば特に制限はなく、露光波長(例えば、可視光線、可視光レーザ等)に合わせて適宜選択することができる。
本発明における増感剤としては、露光波長に応じた極大吸収波長を有するものが好ましく、例えば、360nm〜700nmの波長の露光を行う場合には、増感剤の極大吸収波長は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、450nm以下であることが特に好ましい。
【0069】
〔界面活性剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
本発明に用いられる界面活性剤は、前述の溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0070】
〔可塑剤〕
また、本発明の被めっき層形成用組成物には、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィンやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶媒も使用することができる。
【0071】
〔重合禁止剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物には、必要に応じて、重合禁止剤を添加することもできる。使用できる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン類、p−メトキシフェノール、フェノールなどのフェノール類、ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ フリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPOなどのフリーラジカル類、フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩などのニトロソアミン類、カテコール類を使用することができる。
【0072】
〔硬化剤、硬化促進剤〕
また、後述のように、本発明の被めっき層形成用組成物を用いて密着補助層上に被めっき層を形成する場合、密着補助層の硬化を進めるために、被めっき層形成用組成物に硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することができる。例えば、密着補助層にエポキシ化合物が含まれる場合の硬化剤及び/又は硬化促進剤として、重付加型では、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、活性水素を2個以上持つ化合物等、触媒型としては、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体などが挙げられる。
また、熱、光、湿気、圧力、酸、塩基などにより硬化開始するものとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒラジド、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール−トリ−2−エチルヘキシル酸塩、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチルS−トリアジン、BFモノエチルアミン錯体、ルイス酸錯体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、トリアリルセレニウム塩、ケチミン化合物などが挙げられる。
【0073】
これらの硬化剤及び/又は効果促進剤は、被めっき層形成用組成物の塗布性、基板やめっき膜との密着性などの観点から、溶剤を除去した残りの不揮発成分の0〜50質量%程度まで添加することが好ましい。
なお、硬化剤及び/又は硬化促進剤は密着補助層に添加してもよく、その場合は、密着補助層に添加した量と被めっき層形成用組成物中に添加した総和量で上記範囲を満たすことが好ましい。
【0074】
〔その他の添加剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物には、更に、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。また、これらの添加剤は必要に応じて密着補助層に添加してもよい。
【0075】
本発明の被めっき層形成用組成物として、特定ポリマーと各種の添加剤とを適宜混合した組成物を用いることで、形成された被めっき層の物性、例えば、熱膨張係数、ガラス転移温度、ヤング率、ポアソン比、破断応力、降伏応力、熱分解温度などを最適に設定することができる。特に、破断応力、降伏応力、熱分解温度については、より高い方が好ましい。
得られた被めっき層は、温度サイクル試験や熱経時試験、リフロー試験などで熱耐久性を測定することができ、例えば、熱分解に関しては、200℃環境に1時間曝した場合の質量減少が20%以下であると、十分に熱耐久性を有していると評価できる。
【0076】
<金属パターン材料の作製方法>
本発明の金属パターン材料の作製方法は、(a1)基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、前記被めっき層形成用組成物に対してパターン状にエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる工程と、(a2)前記基板上の前記被めっき層形成用組成物の未硬化部を、pH10より低いアルカリ水溶液で現像処理し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、(a3)現像処理後の前記パターン状の被めっき層を、pH10以上のアルカリ水溶液で架橋処理する工程と、(a4)架橋処理後の前記パターン状の被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(a5)前記めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
以下、この(a1)〜(a5)の各工程について説明する。
【0077】
〔(a1)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(a1)工程では、基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用組成物に対してパターン状にエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる。
本発明においては、被めっき層中の、特定ポリマーが、分子内のラジカル重合性基により基板に結合していることが好ましい態様である。
【0078】
本発明の被めっき層形成用組成物を基板に接触させる場合には、その塗布量は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点からは、固形分換算で、0.1g/m〜10g/mが好ましく、特に0.5g/m〜5g/mが好ましい。
なお、基板上に、特定ポリマーを含有する組成物を塗布し、乾燥させて、特定ポリマーを含有する層を形成する場合、塗布と乾燥との間に、20℃〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0079】
本発明の被めっき層形成用組成物と基板との接触は、基板を、該被めっき層形成用組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、被めっき層形成用組成物からなる層を基板表面(密着補助層表面)に、塗布法により形成することが好ましい。
なお、基板が樹脂フィルムであって、この樹脂フィルムの両面に対して被めっき層を形成する場合にも、被めっき層を両面同時に形成し易いといった観点から、塗布法を用いることが好ましい。
【0080】
(エネルギー付与)
本工程では、基板に本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、この被めっき層形成用組成物に対し、パターン状にエネルギー付与を行う。
エネルギー付与には、加熱や露光などが用いられることが好ましく、パターン像の形成容易性の観点からは、露光が用いられることが好ましい。
露光には、UVランプ、可視光線などによる光照射等が用いられる。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
露光時間としては、特定ポリマーの反応性及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0081】
なお、エネルギー付与として加熱を用いる場合、送風乾燥機、オーブン、赤外線乾燥機、加熱ドラムなどを用いることができる。
エネルギー付与の方法としては、赤外線や遠赤外線によりパターン状に露光することもできる。
【0082】
上記のようなエネルギー付与が行われると、その領域でのみ特定ポリマーの硬化反応が生起する。その結果、基板上では、本発明の被めっき層形成用組成物のエネルギー付与領域のみが硬化することとなる。
【0083】
(基板)
本工程で用いられる基板としては、形状保持性を有するものであればよく、その表面が、前述の特定ポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体が露光によりラジカルを発生しうるものであるか、基材上に、露光によりラジカルを発生しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)を設け、この基材と中間層とで基板が構成されていてもよい。
【0084】
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、特定ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
【0085】
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0086】
また、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、又は、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0087】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、若しくは有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0088】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0089】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92,1252−1258(2004)に記載)、液晶性ポリマー(具体的には、クラレ製のベクスターなど)、フッ素樹脂(PTFE)などが挙げられる。
【0090】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。たとえば、PPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、“電子技術”2002/9号、P35に記載されている。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂及び/又はポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
【0091】
絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0092】
本発明における絶縁性樹脂組成物には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0093】
更に、この絶縁性樹脂組成物には必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。中でも、充填材としてはシリカを用いることが好ましい。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
【0094】
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、樹脂特有の強度などの特性が低下する。
【0095】
このような用途に用いる場合の基板として、具体的には、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
【0096】
本発明に用いられる基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面凹凸(中間層や密着補助層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0097】
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(1)工程を施し、後述する(2)工程を経れば、樹脂フィルムの両面に被めっき層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面に被めっき層が形成された場合には、更に、後述する(3)工程、及び(4)工程を行うことで、両面に金属膜が形成された金属パターン材料を得ることができる。
【0098】
以下、本発明における密着補助層について説明する。なお、基材が板状物であれば、その両面に密着補助層を形成してもよい。
【0099】
(密着補助層)
本発明における密着補助層は、基板と被めっき層との密着を確保する中間層であり、この層は基板と被めっき層に親和性があるものでもよく、硬化時に特定ポリマーと反応し、化学結合を形成してもよい。
密着補助層としては、基材との密着性が良好な樹脂組成物、及び、露光によりラジカルを発生しうる化合物を用いて形成されることが好ましい。なお、樹脂組成物を構成する樹脂が、ラジカルを発生しうる部位を有する場合には、ラジカルを発生しうる化合物を別途添加する必要はない。
【0100】
本発明における密着補助層としては、例えば、基材が、多層積層板、ビルドアップ基板、若しくはフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該基材との密着性の観点から、密着補助層を形成する際に用いられる樹脂組成物としても、絶縁樹脂組成物が用いられることが好ましい。
以下、基材が絶縁樹脂からなり、密着補助層が絶縁樹脂組成物から形成される態様について説明する。
【0101】
密着補助層を形成する際に用いられる絶縁樹脂組成物は、基材を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよいが、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、基材を構成する絶縁樹脂と同じ種類の絶縁樹脂を使用することが密着の点で好ましい。
また、これ以外の成分として、密着補助層の強度を高める、また、電気特性を改良するために、無機若しくは有機の粒子を添加してもよい。
【0102】
なお、本発明において、密着補助層に使用される絶縁樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シソシアネート系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0103】
また、密着補助層に用いられる絶縁樹脂としては、めっき触媒受容性の感光性樹脂組成物と相互作用を形成し得る活性点を発生させる骨格を有する樹脂を用いることもできる。例えば、特開2005−307140号公報の段落番号〔0018〕〜〔0078〕に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドが用いられる。
【0104】
更に、密着補助層には、層内での架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に、多官能のものを用いることが好ましい。その他、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に対し、その一部を、メタクリル酸やアクリル酸等を用いて、(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0105】
本発明における密着補助層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて、種々の化合物を添加することができる。
具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0106】
また、本発明における密着補助層には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0107】
更に、この密着補助層には、必要に応じて、一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。
【0108】
また、更にこの密着補助層には、必要に応じて、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を、一種又は二種以上添加してもよい。
【0109】
これらの材料を添加する場合は、いずれも、主成分となる樹脂に対して、0質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0質量%〜80質量%の範囲で添加される。密着補助層と隣接する基材とが、熱や電気に対して同じ若しくは近い物性値を示す場合には、これら添加物は必ずしも添加する必要はない。添加物を、樹脂に対して200質量%を超える範囲で用いる場合には、樹脂自体が本来有する強度などの特性が低下する懸念がある。
【0110】
密着補助層には、前述のように、樹脂組成物と露光によりラジカルを発生しうる化合物が用いられることが好ましい。
ここで、露光によりラジカルを発生しうる化合物としては、従来公知の光重合開始剤が用いられる。
使用されうるラジカルを発生しうる化合物としては、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、ピリジウム類化合物等が挙げられる。
具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類;トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムペンタフルオロフォスフェートなどのスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムサルフェートなどのヨードニウム塩などが挙げられる。
【0111】
密着補助層に含有させる光重合開始剤(露光によりラジカルを発生しうる化合物)の量は、固形分で0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、1.0質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0112】
本発明における密着補助層の厚みは、一般に、0.1μm〜10μmの範囲であり、0.2μm〜5μmの範囲であることが好ましい。密着補助層を設ける場合、厚みが上記一般的な範囲であれば、隣接する基材や、被めっき層との十分な密着強度が得られ、また、一般の接着剤を用いるのに比較して薄層でありながら、その接着剤による層と同様の密着性が達成される。
【0113】
また、本発明における密着補助層の表面は、形成されるめっき金属膜の物性を向上させる観点から、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzが3μm以下であるものが好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。密着補助層の表面平滑性が上記値の範囲内、即ち、平滑性が高い状態であれば、回路が極めて微細な(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線板を製造する際に、好適に用いられる。
【0114】
密着補助層は基材表面に、塗布法、転写法、印刷法などの公知の層形成方法を適用して形成される。
密着補助層は、所望により、印刷法(例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、インプリント法など)や、現像法(例えば、湿式エッチング、乾式エッチング、アブレーション、光による硬化・可塑化(ネガ型/ポジ型)など)などでパターン化されてもよい。
【0115】
また、密着補助層は基材上に形成された後、何らかのエネルギーを与えて硬化処理を行ってもよい。与えるエネルギーとしては、光、熱、圧力、電子線などが挙げられるが、本実施形態においては熱又は光が一般的であり、熱の場合は、100℃〜300℃の熱を5分〜120分加えることが好ましい。また、加熱硬化の条件は、基材の材料の種類、密着補助層を構成する樹脂組成物の種類等で異なり、これらの素材の硬化温度にもよるが、120〜220℃で20分〜120分の範囲で選択されることが好ましい。
【0116】
この硬化処理は密着補助層の形成後すぐに行ってもよく、密着補助層形成後に5分〜10分程度の予備硬化処理を行っておけば、密着補助層形成後に行われる他のすべてのそれぞれの工程を行ったあとに実施してもよい。
【0117】
密着補助層の形成後、その表面に形成される被めっき層に対する密着性向上の目的で、乾式及び/又は湿式法により表面を粗化してもよい。乾式粗化法としては、バフ、サンドブラスト、等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。一方、湿式粗化法としては、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、等の酸化剤や、強塩基や樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。
【0118】
〔(a2)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(2)工程では、前記(1)工程後、基板上の前記被めっき層形成用組成物の未硬化部を、pH10未満のアルカリ水溶液で現像処理し、パターン状の被めっき層を形成する。
本工程において用いられるpH10未満のアルカリ水溶液によって、後述する(a3)工程における架橋処理に適用されるマイケル付加反応は生起されない。したがって、本工程では、前記(a1)工程におけるエネルギー付与により硬化しなかった被めっき層形成用組成物の現像処理による除去のみが行われる。
【0119】
(pH10未満のアルカリ水溶液による現像処理)
本工程における現像処理には、pH10未満のアルカリ水溶液が用いられ、pHが8〜9.5の範囲のアルカリ水溶液がより好ましい。そのようなアルカリ水溶液としては、NaHCO、Na2CO3、KHCO、KCO3、、LiHCO、又はLiCO3、を含有するアルカリ水溶液が挙げられる。中でも、イオン性基を乖離させた時の水溶解性の観点からは、NaHCO3、、又はNaCOを含有するアルカリ水溶液がより好ましい。
【0120】
また、現像処理の方法としては、シャワー現像、浸漬法などが使用できる。浸漬法を用いる場合であれば、現像液を攪拌して、そこへ基板を浸漬して現像することもできる。
現像条件としては、現像温度は室温〜50℃が好ましく、現像時間は5秒〜5分が好ましい。
【0121】
上記の現像処理により、基板上には、パターン状の被めっき層が形成される。
【0122】
〔(3)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(3)工程では、現像処理後の前記パターン状の被めっき層を、pH10以上のアルカリ水溶液で架橋処理する。
本工程においては、被めっき層を構成する特定ポリマー中に残存するラジカル重合性基に、特定官能基がマイケル付加反応により付加することで、被めっき層中に架橋構造が形成される。
【0123】
(pH10以上のアルカリ水溶液による架橋処理)
本工程における現像処理には、pH10以上のアルカリ水溶液が用いられ、pHが10.5〜16の範囲のアルカリ水溶液がより好ましい。そのようなアルカリ水溶液としては、NaOH、KOH、LiOH、DBU、等を含有するアルカリ水溶液が挙げられる。中でも、取り扱い性の観点からは、NaOHを含有するアルカリ水溶液がより好ましい。
【0124】
また、架橋処理の方法としては、(a2)工程後の基板を、アルカリ水溶液中に浸漬、 シャワー、する方法が挙げられる。
架橋処理の条件としては、室温または50℃付近までの加温、時間は1分から30分。温度は室温が好ましく、処理時間は1分〜10分が好ましい。。
【0125】
上記のような架橋処理により、被めっき層中に架橋構造が形成される。
【0126】
〔(a4)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(a4)工程では、前記(a3)工程後の被めっき層に、めっき触媒又はその前駆体を付与する。
本工程においては、被めっき層を構成する特定ポリマーが有するイオン性吸着基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒又はその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、めっき触媒又はその前駆体としては、後述する(a5)工程における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒又はその前駆体は、(a5)工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体であることが好ましい。
【0127】
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、ものであり、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0128】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0129】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数及び触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
【0130】
本発明で用いられる無電解めっき触媒又はその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、無電解めっき触媒(パラジウム)またはその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0131】
パラジウム塩としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、炭酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物などが挙げられる。なかでも、取り扱いやすさと溶解性の点で、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)が好ましい。
パラジウム錯体としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム錯体、ジパラジウムトリスベンジリデンアセトン錯体などが挙げられる。
パラジウムコロイドは、パラジウム(0)から構成される粒子で、その大きさは特に制限されないが、液中での安定性の観点から、5nm〜300nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。パラジウムコロイドは、必要に応じて、他の金属を含んでいてもよく、他の金属としては、例えば、スズなどが挙げられる。パラジウムコロイドとしては、例えば、スズ−パラジウムコロイドなどが挙げられる。なお、パラジウムコロイドは、公知の方法で合成してもよいし、市販品を使用してもよい。例えば、荷電を持った界面活性剤、または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、パラジウムイオンを還元することによりパラジウムコロイドを作製することができる。
【0132】
また、本発明で用いられる無電解めっき触媒又はその前駆体としては、選択的に被めっき層に吸着させることができるといった観点から、銀、及び銀イオンが好ましい別の例として挙げられる。
めっき触媒前駆体として銀イオンを用いる場合、以下に示すような銀化合物が解離したものを好適に用いることができる。銀化合物の具体例としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀が挙げられる。この中でも、水溶性の観点から硝酸銀が好ましい。
【0133】
無電解めっき触媒である金属、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩を被めっき層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液又は溶液を被めっき層上に塗布するか、或いは、その分散液又は溶液中に被めっき層が形成された基板を浸漬すればよい。
【0134】
また、前記(a1)工程において、基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させるが、この組成物中に、無電解めっき触媒又はその前駆体を添加する方法を用いてもよい。つまり、特定ポリマーと、無電解めっき触媒又はその前駆体と、を含有する組成物(本発明の被めっき層形成用組成物)を、基板上に接触させて、露光・現像を行うことにより、めっき触媒又はその前駆体を含有する被めっきパターン(パターン状の被めっき層)を形成することができる。なお、この方法を用いれば、本発明における(a1)工程と(a4)工程が1工程で行えることになる。
【0135】
なお、基板として樹脂フィルムを用い、該樹脂フィルムの両面に対して被めっき層が形成されている場合には、その両面の被めっき層に対して同時に無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させるために、上記の浸漬法を用いることが好ましい。
【0136】
上記のように無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させることで、被めっき層中の相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
【0137】
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0138】
なお、無電解めっき触媒又はその前駆体を含有する溶液、分散液、或いは組成物にパラジウム化合物を用いる場合、パラジウム化合物は、溶液、分散液、或いは組成物の全量に対して、0.001質量%〜10質量%の範囲で用いることが好ましく、0.05質量%〜5質量%で用いることがより好ましく、更に0.10質量%〜1質量%で用いることが好ましい。
また、無電解めっき触媒前駆体を含有する溶液に銀化合物を用いる場合、銀化合物は、溶液の全量に対して、0.1質量%〜20質量%の範囲で用いることが好ましく、0.1質量%〜20質量%の範囲で用いることがより好ましく、更に0.5質量%〜10質量%の範囲で用いることが好ましい。
どちらの化合物を用いる場合であっても、含有量が少なすぎると後述するめっきの析出がし難くなり、含有量が多すぎると、所望とされない領域までめっきが析出してしまったり、エッチング残渣除去性が損なわれることがある。
【0139】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(a5)工程において、被めっき層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、特に、相互作用性基(シアノ基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0140】
(有機溶剤、及び水)
上記のようなめっき触媒又は前駆体は、前述のように、分散液や溶液(触媒液)として被めっき層に付与される。
本発明における触媒液には、水や有機溶剤が用いられる。
【0141】
本発明に使用される水は、不純物を含まないことが好ましく、そのような観点からは、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いることが好ましく、脱イオン水や蒸留水を用いることが特に好ましい。
【0142】
めっき触媒液の調製に用いられる有機溶剤としては、被めっき層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0143】
また、その他の有機溶剤としては、ダイアセトンアルコール、γブチロラクトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0144】
特に、めっき触媒又はその前駆体との相溶性、及び被めっき層への浸透性の観点ではアセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブ、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0145】
更に、本発明における触媒液には、目的に応じて他の添加剤を含有することができる。
他の添加剤としては、例えば、膨潤剤(ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル類等の有機化合物など)や、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、双性、ノニオン性及び低分子性又は高分子性など)などが挙げられる。
【0146】
以上説明した(a4)工程を経ることで、被めっき層中のイオン性吸着基とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0147】
〔(a5)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(a5)工程では、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対し、めっきを行うことで、めっき膜が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記(a4)工程において、被めっき層との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、被めっき層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0148】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、0.1質量%〜50質量%、好ましくは1質量%〜30質量%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
浸漬の際には、無電解めっき触媒又はその前駆体が接触する被めっき層表面付近のめっき触媒またはその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌または揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0149】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0150】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0151】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0152】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm〜2μmがより好ましい。
ただし、無電解めっきによるめっき膜を導通層として、後述する電気めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の膜が均一に形成されていればよい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0153】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき層は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により、被めっき層中にめっき触媒やめっき金属からなる微粒子が高密度で分散していること、またさらに被めっき層上にめっき金属が析出していることが確認される被めっき層とめっき層との界面は、樹脂複合体と微粒子とのハイブリッド状態であるため、被めっき層(有機成分)と無機物(めっき触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、1mmの領域でRaが1.5μm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0154】
(電気めっき)
本工程おいては、前記(a4)工程において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0155】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0156】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、得られた金属パターン材料を一般的な電気配線などに適用する場合の金属膜の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm〜30μmがより好ましい。
なお、電気配線の厚みは、電気配線の線幅が狭くなる、すなわち微細化するほどアスペクト比を維持するために薄くなる。従って、電気めっきによって形成されるめっき層の層厚は、上記に限定されず、任意に設定できる。
【0157】
上述のメッキ膜の好適な他の製造方法としては、上述の被めっき層形成工程において、被めっき層の原料材料にめっき触媒またはその前駆体を予め混合しておき、上述の塗布法、押出成形法、ラミネート法により基板上に被めっき層を積層する方法も挙げられる。この方法の場合、上述の触媒付与工程を実施することなく、めっき触媒またはその前駆体を含有する被めっき層をひとつの工程で作製することができ、作業効率および生産性の観点から好ましい。
【0158】
<金属パターン材料>
本発明の金属パターン材料の作製方法の各工程を経ることで、本発明の金属パターン材料を得ることができる。
なお、本発明の金属パターン材料の作製方法において、基板として樹脂フィルム等を用いれば、その樹脂フィルムの両面に金属パターンが形成された金属パターン材料を得ることができる。
本発明の金属パターン材料は、基板に対する金属パターンの密着力に優れる。
【0159】
<表面金属膜材料の作製方法>
本発明の表面金属膜材料料の作製方法は、(b1)基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を接触させた後、前記被めっき層形成用組成物に対してその全面にエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させて、被めっき層を形成する工程と、(b2)前記被めっき層を、pH10以上のアルカリ水溶液で架橋処理する工程と、(b3)架橋処理後の前記被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(b4)前記めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
【0160】
既述のごとく、本発明の金属パターン材料の作製方法では、基板上に架橋構造を有する被めっき層をパターン状に形成した後、該パターン状に形成された被めっき層に対してめっきを行うが、本発明の表面金属膜材料料の作製方法では、架橋構造を有する被めっき層をパターン状とせず基板全面に形成し、当該基板全面に形成された被めっき層に対してめっきを行う。
【0161】
本発明の表面金属膜材料料の作製方法における(b1)工程〜(b4)工程について説明する。
【0162】
〔(b1)工程〕
本発明の表面金属膜材料の作製方法における(b1)工程は、本発明の金属パターン材料形成方法における(a1)工程におけるエネルギー付与をパターン状とせず、基板と接触している被めっき層形成用組成物の全面に対してエネルギー付与を行う以外は、(a1)工程と同様である。なお、ここで、「全面」とは、被めっき層形成用組成物による被めっき層の形成を必要とする全領域を示し、ハンドリング性向上などの目的で、基板周縁部において被めっき層を形成させない領域を設ける場合も、必要とされる全領域にわたり被めっき層が形成されていれば、これを「全面」と称することがある。
【0163】
〔(b2)〜(b4)工程、その他の任意工程〕
本発明の表面金属膜材料の作製方法における(b2)工程〜(b4)工程は、本発明の金属パターン材料形成方法における(a3)工程〜(a5)工程と同様である。
また、本発明の金属パターン材料形成方法における電気めっき等の任意の工程についても、本発明の表面金属膜材料の作製方法に同様に適用できる。
【0164】
<表面金属膜材料>
本発明の表面金属膜材料の作製方法の各工程を経ることで、本発明の表面金属膜材料を得ることができる。なお、本発明の表面金属膜材料の作製方法において、基板として樹脂フィルム等を用いれば、その樹脂フィルムの両面に金属膜が形成された表面金属膜材料を得ることができる。
本発明の金属パターン材料は、基板に対する金属パターンの密着力に優れる。
【0165】
また、本発明の表面金属膜材料を用いて、めっき膜(金属膜)をパターン状にエッチングして、めっき膜の不要部分を取り除くことにより金属パターンを形成し、所望の金属パターンを材料を作製することもできる。
金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法を用いることができる。
【0166】
本発明の金属パターン材料及び表面金属膜材料は、表面の凹凸が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の基板上の局所的に、めっき膜を設けたものであることが好ましい。また、基板と金属パターンとの密着性が、JIS−K5600に規定される碁盤の目試験にて100目中で90目以上残存することが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属パターン又は金属膜との密着性に優れることを特徴とする。
【0167】
本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料は、例えば、例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL材料、電気配線用材料等の種々の用途に適用することができる。
【実施例】
【0168】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0169】
[合成例:特定ポリマーAの合成]
500mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート3.3g、アセトニトリル1.2gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.18g、アクリル酸(東京化成製)1.3g、モノマーM1(下記構造)7.21g、V−65(和光純薬製)0.18gのジメチルカーボネート3.3gとアセトニトリル1.2gの溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、アセトニトリル15gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0170】
【化12】

【0171】
上記の反応溶液に、TEMPO(東京化成製)0.074g、U−600(日東化成製)0.221g、カレンズAOI(昭和電工製)6.7gを加え、45℃で6時間反応を行った。その後、反応液に水0.85gを加え、1.5時間後反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーA(重量平均分子量:4.5万)を10g得た。
【0172】
[合成例:特定ポリマーBの合成]
500mlの三口フラスコに、ジメチルカーボネート7g、を入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、アクリル酸10.09g、モノマーM2(下記構造)10.99g、V−65(和光純薬製)0.40gのジメチルカーボネート7gの溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、アセトニトリル35gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0173】
【化13】

【0174】
上記の反応溶液に、グリシジルメタクリレート9.9g、ジターシャリーブチルハイドロキノン(東京化成製)0.046g、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド(東京化成製)0.3g100℃で6時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーB(重量平均分子量:5.2万)を13g得た。
【0175】
〔実施例1〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーA:0.2g、炭酸ナトリウム:0.04g、水:1.8gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0176】
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、密着補助層として、9質量%のABS(Aldrich社製)のシクロヘキサン溶液をスピンコート法(条件:250rpmで5秒、その後、750rpmで20秒)にて塗布し、乾燥して基板A1を得た。
【0177】
[被めっき層の形成]
調製された被めっき層形成用組成物を、前記基板A1のプライマー層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した。
その後、被めっき層形成用組成物に対し、UV露光機((株)三永電機製作所製 型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、10mW/cmの照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、フォトマスクを通じて300秒間、パターン露光を行った。
露光後の基板を、1質量%NaHCO水溶液(pH8.3)中に5分間浸漬した(現像処理)。続いて、基板を10質量%NaOH水溶液(pH13.7)に5分間浸漬した(架橋処理)。
これにより、架橋構造を有する被めっき層がパターン状に形成された基板A2を得た。
【0178】
[めっき触媒の付与]
被めっき層を有する基板A2を、硝酸銀を10質量%水溶液に、10分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
【0179】
[無電解めっき]
上記のようにして、めっき触媒が付与された被めっき層を有する基板A2に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、26℃で10分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.1μmであった。
【0180】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 774g
・ATSアドカッパーIW−A(奥野製薬工業製) 45mL
・ATSアドカッパーIW−M(奥野製薬工業製) 72mL
・ATSアドカッパーIW−C(奥野製薬工業製) 9mL
・NaOH 1.98g
・2,2’−ビピリジル 1.8mg
【0181】
[電気めっき]
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
これにより、実施例1の金属パターン材料を得た。
【0182】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0183】
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜を、60℃85RH%で10日間保存した後、同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中2目の剥離がみられた。
【0184】
〔実施例2〕
[被めっき層形成用組成物の調製]
前述の合成法で得られた特定ポリマーB:0.2g、炭酸ナトリウム:0.04g、水:1.8gを混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0185】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を用い、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例2の金属パターン材料を得た。
【0186】
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜を60℃85RH%で10日間保存した後、同様のクロスカット試験を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
【0187】
〔実施例3〕
実施例1の[基板の作製]において、密着補助層の形成に用いたシクロヘキサン溶液に、ABSの量に対して10質量%の割合でIRG184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を添加した以外は、実施例1と同様にして基板A2を作製した。
【0188】
得られた基板A2を用いた以外は、実施例1と同様にして、[被めっき層の形成]、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行って、実施例3の金属パターン材料を得た。
【0189】
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜を60℃85RH%で10日間保存した後、同様のクロスカット試験を行ったところ、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、100目中0目の剥離がみられた。
【0190】
〔比較例1〕
実施例1の被めっき層の形成において、基板を10質量%NaOH水溶液(pH13.7 )に10分間浸漬する処理(架橋処理)を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の金属パターン材料を得た。
【0191】
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K5600)を行ったところ、100目中20目の剥離がみられた。
また、得られためっき膜を60℃85RH%で10日間保存した後、同様のクロスカット試験を行ったところ100目中40目の剥離がみられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性基、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基、及びイオン性吸着基を有するポリマーを含有する被めっき層形成用組成物。
【請求項2】
前記ラジカル重合性基、10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基、及びイオン性吸着基を有するポリマーが、下記式(A)〜(C)で表されるユニットを含む共重合体である請求項1に記載の被めっき層形成用組成物。
【化1】

[式(A)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Z及びYは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
式(B)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Rは、単結合、−C(=O)−、又は−C(=NR10)−を表し、R及びRは、夫々独立して、水素原子、−C(=O)R11、−C(=NR12)R13、又はシアノ基を表し、R10、R11、R12、及びR13は、夫々独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。但し、Rが単結合の場合、R及びRは−C(=O)R11、−C(=NR12)R13、又はシアノ基を表す。
式(C)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Uは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Vはイオン性吸着基を表す。]
【請求項3】
前記10≦pKa≦16の炭素原子に直接結合した活性水素を有する官能基が、α−置換酢酸エステル誘導体に由来する官能基である請求項1に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項4】
前記式(B)で表されるユニットにおいて、R及び/又はRがシアノ基である請求項2に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項5】
前記式(C)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基である請求項2に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項6】
(a1)基板上に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、前記被めっき層形成用組成物に対してパターン状にエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる工程と、
(a2)前記基板上の前記被めっき層形成用組成物の未硬化部を、pH10未満のアルカリ水溶液で現像処理し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、
(a3)現像処理後の前記パターン状の被めっき層を、pH10以上のアルカリ水溶液で架橋処理する工程と、
(a4)架橋処理後の前記パターン状の被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(a5)前記めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有する金属パターン材料の作製方法。
【請求項7】
請求項6に記載の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料。
【請求項8】
(b1)基板上に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、前記被めっき層形成用組成物に対してその全面にエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させて、被めっき層を形成する工程と、
(b2)前記被めっき層を、pH10以上のアルカリ水溶液で架橋処理する工程と、
(b3)架橋処理後の前記被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(b4)前記めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有する表面金属膜材料の作製方法。
【請求項9】
請求項8に記載の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料。

【公開番号】特開2010−77322(P2010−77322A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249209(P2008−249209)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】