説明

被めっき層形成用組成物、金属パターン材料の製造方法、および、新規ポリマー

【課題】本発明の第一の目的は、水溶液による現像が可能で、優れた現像性を示し、かつ、高温高湿環境下に曝されてもその表面上に形成されるめっき膜(金属膜)と高密着性を示す被めっき層を形成し得る被めっき層形成用組成物を提供することにある。
【解決手段】式(A)で表されるユニット、および、式(B)で表されるユニットを少なくとも有するポリマー、を含有する被めっき層形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被めっき層形成用組成物、金属パターン材料の製造方法、および、該被めっき層形成用組成物に有用な新規ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の製造方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法では、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成する。次いで、レジスト像をマスクとして使用し、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジスト像を剥離する。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、金属配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理することが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
このような問題を解決しつつ、基材との密着性に優れた金属パターン(めっき膜)を得る方法として、基材上に、該基材と結合したパターン状のグラフトポリマーを生成させてポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、金属膜を得る方法が知られている(特許文献1)。パターン状のポリマー層を得る方法としては、ポリマーを基板に接触させてパターン状のエネルギーを照射し、エネルギーを付与していない領域を現像する方法が開示されている。
また、特許文献2においては、パターン状のポリマー層を得る際の現像性を高めることを目的として、イオン性極性基を有するポリマーを含有する被めっき層形成用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第08/050715号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0080964号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のめっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基と重合性基とを有するポリマーは水溶液に対する親和性が低いため、エネルギー照射後の現像処理時において有機溶媒を使用する必要があるため、取り扱い上および環境上負荷があり、さらなる改良が望まれていた。なお、高アルカリ水溶液を使用すれば剥離現像を行うことは可能であるが、処理時間に長時間を要するため生産性に劣るという欠点や、高アルカリ水溶液によって硬化したグラフトポリマーが分解し、結果として形成されるめっき膜の密着性が悪化するなどの欠点があった。
【0007】
また、本発明者らが特許文献2に記載のポリマーを使用してパターン状のポリマー層を作製し、金属パターンの作製を行ったところ、パターン状の金属膜間においてめっきの析出があることを見出した。このような金属膜間のめっきは、該金属パターンを配線として利用した際に、配線間の絶縁信頼性を損なわせる。
本発明者らがめっき析出の原因について検討を行ったところ、パターン状のポリマー層を作製する際の現像処理において、ポリマーの除去性が必ずしも充分でなく、パターン領域以外の領域においてポリマーが残存していることが原因の一つであることを見出した。
【0008】
また、金属配線基板を備えた半導体素子は、近年、より過酷な高温高湿条件下で使用されることが想定され、そのような環境下に曝されても充分な金属膜の密着性を示す金属パターンの開発が望まれていた。本発明者らは、特許文献2に記載のポリマーを用いて被めっき層を作製し、昨今要求されるようなより過酷な高温高湿条件下における挙動を検討した結果、温度や湿度変化により水分の吸収や脱離が生じ易く、形成された金属膜の密着性が劣化するという問題があることを見出した。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明の第一の目的は、水溶液による現像が可能で、優れた現像性を示し、かつ、高温高湿環境下に曝されてもその表面上に形成されるめっき膜(金属膜)と高密着性を示す被めっき層を形成し得る被めっき層形成用組成物を提供することにある。
本発明の第二の目的は、基板との密着性に優れた金属パターンを、水溶液による現像を用いて簡易に形成しうる金属パターン材料の製造方法、および該方法により得られた金属パターン材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、所定の官能基を有するユニットを含有するポリマーを使用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明者らは、上記課題が下記構成により解決されることを見出した。
【0011】
(1) 後述する式(A)で表されるユニット、および、後述する式(B)で表されるユニットを少なくとも有するポリマー、を含有する被めっき層形成用組成物。
(2) ポリマーが、さらに後述する式(C)で表されるユニットを有する、(1)に記載の被めっき層形成用組成物。
(3) ポリマーが、さらに後述する式(D)で表されるユニットを有する、(1)または(2)に記載の被めっき層形成用組成物。
【0012】
(4) ポリマーの酸価が、3.0〜6.0mmol/gである、(1)〜(3)のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
(5) 式(A)中のA1がフェニル基である、(1)〜(4)のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
(6) 式(C)中のW1が、シアノ基またはエーテル基である、(2)〜(5)のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
【0013】
(7) 基板上に、(1)〜(6)のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、被めっき層形成用組成物に対してパターン状にエネルギーを付与して、エネルギー付与領域の被めっき層形成用組成物を硬化させる工程と、
基板上の被めっき層形成用組成物のうちエネルギーの未付与領域を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、
パターン状の被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程と、
めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有する金属パターン材料の製造方法。
【0014】
(8) 基板がその表面上に、ラテックスからなる水分散樹脂組成物を塗布することにより形成された密着補助層を有する、(7)に記載の金属パターン材料の製造方法。
(9) (8)または(9)に記載の金属パターン材料の製造方法により得られる、金属パターン材料。
(10) 後述する式(A)で表されるユニット、後述する式(B)で表されるユニット、および後述する式(C)で表されるユニットを少なくとも有するポリマー。
【0015】
(11) 前記ポリマーが、少なくとも、後述する式(I)で表される化合物、および、後述する式(II)で表される化合物を重合してなる重合体に、後述する式(III)で表される化合物を反応させて得られるポリマーである、(1)〜(6)に記載の被めっき層形成用組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水溶液による現像が可能で、優れた現像性を示し、かつ、高温高湿環境下に曝されてもその表面上に形成されるめっき膜(金属膜)と高密着性を示す被めっき層を形成し得る被めっき層形成用組成物を提供することができる。
本発明によれば、基板との密着性に優れた金属パターンを、水溶液による現像を用いて簡易に形成しうる金属パターン材料の製造方法、および該方法により得られた金属パターン材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の被めっき層形成用組成物、該組成物を用いて得られる金属パターン材料およびその製造方法について説明する。
まず、本発明の被めっき層形成用組成物に含まれるポリマーについて詳述する。
その後、該ポリマーを含む被めっき層形成用組成物、および、該組成物を用いた金属パターン材料の製造方法について説明する。
【0018】
<ポリマー>
本発明で使用されるポリマーは、後述する式(A)で表されるユニット、および後述する式(B)で表されるユニットを少なくとも有する。
ポリマー中に上記2つのユニットが含まれることによって、優れた現像性と、金属膜の基板に対する優れた密着性が発現される。特に、本ポリマーにおいては、式(A)で表されるユニットと式(B)で表されるユニットとが交互に結合した配置をとりやすく、架橋性基として作用する二重結合基の近傍にCOOH基が存在することから、ポリマーが膨潤しやすくなると考えられる。そのため、現像時における、本ポリマーを含むポリマー層の除去性が向上したものと考えられる。
また、本ポリマーが、適度な疎水性基を含む式(A)で表されるユニットを有していることから、ポリマーの加水分解が抑制され、湿熱経時後にもめっき膜(金属膜)の高い密着力が示される、と考えられる。
以下に、各ユニットについて詳述する。
【0019】
(式(A)で表されるユニット)
ポリマーには、式(A)で表されるユニット(以下、適宜ユニットAと称する)が含まれる。該ユニットが含まれることにより、ポリマーの疎水性を高め、得られる被めっき層の耐湿熱性をより高めることができる。
【0020】
【化1】

【0021】
式(A)中、R1は、水素原子、またはメチル基を表す。重合性の点から、好ましくは水素原子である。
【0022】
式(A)中、A1は、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、またはアセトキシ基を表す。なかでも、得られる被めっき層の耐湿熱性がより優れる点で、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が好ましく、芳香族炭化水素基がより好ましい。
【0023】
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、または環状のいずれであってもよく、炭素数1〜20が好ましく、炭素数2〜8がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、芳香族性を有する炭化水素基であれば特に制限されないが、炭素数6〜18が好ましく、炭素数6〜10がより好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜6が好ましい。具体的は、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
【0024】
ポリマー中におけるユニットAの含有量は特に制限されないが、被めっき層(ポリマー層)の現像性と得られる被めっき層の耐湿熱性の両立の点で、全ユニット(100モル%)に対して、30〜80モル%が好ましく、50〜70モル%がより好ましい。
【0025】
(式(B)で表されるユニット)
ポリマーには、式(B)で表されるユニット(以下、適宜ユニットBと称する)が含まれる。該ユニットが含まれることにより、後述する基板との優れた密着性と優れた現像性が発現されると共に、膜中で架橋反応が進行し強度に優れた被めっき層を得ることができる。
【0026】
【化2】

【0027】
式(B)中、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なかでも、重合性の観点で、水素原子であることが好ましい。
なお、R2およびR3は、互いに連結して脂肪族環(環状脂肪族炭化水素基)を形成していてもよい。
【0028】
式(B)中、R8は、水素原子、またはメチル基を表す。なかでも、加水分解耐性の点でメチル基が好ましい。
【0029】
式(A)中、X1は、−O−、−NH−、または−NR10−を表す。
10は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、または、芳香族基を表す。
アルキル基としては特に制限されず、炭素数1〜8が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、t-ブチル基などが挙げられる。
芳香族基としては芳香性を有していれば特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、芳香族性を有する炭化水素基であれば特に制限されないが、炭素数6〜18が好ましく、炭素数6〜10がより好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
芳香族複素環基としては、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を少なくとも環構成原子に含むものが好ましい。また、5〜6員環の基が好ましく、炭素数3〜12が好ましい。該芳香族複素環基は、芳香環、脂環、ヘテロ環で縮環されていてもよい。具体的には、ピリジル基、キノリル基、トリアジン基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリ基、チアジアゾリル基、チエノチアゾリル基などが挙げられる。
【0030】
Yは、単結合、または、二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜3)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、−CON(R)−(R:アルキル基)、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
【0031】
置換または無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、または、これらの基がメトキシ基などで置換されたものが好ましい。
置換または無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基などで置換されたフェニレン基が好ましい。
【0032】
Yとしては、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。なかでも、硬化感度とアルカリ加水分解耐性の観点で、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)がより好ましく、得られる金属膜と被めっき層との接着性がより優れる点で、アミド基(−CONH−)が最も好ましい。
【0033】
1は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、またはこれらを組み合わせた基を表す。なかでも、合成容易性と、金属膜(めっき膜)の密着性がより優れる点で、アルキレン基が好ましい。
【0034】
アルキレン基としては特に制限されないが、炭素数1〜8が好ましく、炭素数2〜4がより好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
芳香族基としては、芳香性を有する2価の基であれば特に制限されないが、例えば、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環基などが挙げられる。2価の芳香族炭化水素基としては、炭素数1〜12が好ましく、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、ビフェニレン基などが挙げられる。2価の芳香族複素環基としては、2価の単環または縮合環、環集合芳香族複素環基などが挙げられ、例えば、2,5−フリレン基、2,5−チエニレン基、2,5−ピリジレン基、2,5−ピラジレン基などが挙げられる。
【0035】
ポリマー中におけるユニットBの含有量は特に制限されないが、被めっき層(ポリマー層)の現像性、金属膜(めっき膜)の密着性がより優れる点で、全ユニット(100モル%)に対して、10〜50モル%が好ましく、20〜40モル%がより好ましい。
【0036】
ポリマー中のユニットAとユニットBとの結合形式は特に限定されず、ランダムに結合してもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、ユニットAとユニットBとが交互に結合した交互共重合部分を含む交互共重合体であることが好ましい。
【0037】
(任意ユニット)
上記ポリマーはユニットA、ユニットB以外に、本発明の効果を損なわない範囲で他のユニットを含有していてもよい。
【0038】
(式(D)で表されるユニット)
特に、被めっき層へのめっき触媒またはその前駆体の優れた吸着性が達成され、かつ、被めっき層と金属膜(めっき膜)との密着性がより優れる点と、ポリマーの極性を適度に制御でき、水溶液に対する現像性がより優れる点から、上記ポリマーに式(C)で表されるユニット(以後、適宜ユニットCとも称する)が含まれることが好ましい。
【0039】
【化3】

【0040】
式(C)中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なかでも、重合性の点で、水素原子が好ましい。
なお、R4およびR5は、互いに連結して脂肪族環(環状脂肪族炭化水素基)を形成していてもよい。
【0041】
2は、−O−、−NH−、または−NR11−を表す。なかでも、金属膜の密着性がより優れる点で、−NH−、または−NR11−好ましい。
11は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、芳香族基、または−L2−W1基を表す。L2およびW1の定義については、後段で詳述する。なお、R11が−L2−W1基である場合、式(C)中の2つのL2およびW1は同一でも異なっていてもよい。
アルキル基としては特に制限されず、炭素数1〜8が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
芳香族基としては芳香性を有していれば特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。これらの基の定義は、上述の通りである。
【0042】
2は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、またはこれらを組み合わせた基を表す。なかでも、合成容易性、金属膜(めっき膜)の密着性がより優れる点で、アルキレン基が好ましい。
【0043】
2で表されるアルキレン基および芳香族基は、L1で表されるアルキレン基および芳香族基と同義である。
【0044】
式(C)中、W1は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表す。
非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましく、具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、カーボネート基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、チオフェン基、チオール基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、ホスフォート基、ホスフォロアミド基、フォスフィン基などの含リン官能基、および、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、等が挙げられる。
また、隣接する原子または原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。更には、例えば、シクロデキストリンや、クラウンエーテルなどの包接能を有する化合物に由来する官能基であってもよい。
中でも、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、エーテル基、またはシアノ基が特に好ましく、シアノ基が最も好ましいものとして挙げられる。
【0045】
なお、上記エーテル基としては、以下の式(X)で表されるポリオキシアルキレン基が好ましい。
式(X) *−(YO)n−Rc
式(X)中、Yはアルキレン基を表し、Rcはアルキル基を表す。nは1〜30の数を表す。*は結合位置を表す。
アルキレン基としては、炭素数1〜3が好ましく、具体的には、エチレン基、プロピレン基が好ましく挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜10が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基が好ましく挙げられる。
nは1〜30の数を表し、好ましくは3〜23である。なお、nは平均値を表し、該数値は公知の方法(NMR)などによって測定できる。
【0046】
ポリマー中におけるユニットCの含有量は特に制限されないが、被めっき層(ポリマー層)の現像性、金属膜(めっき膜)の密着性がより優れる点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜50モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましい。
【0047】
(式(D)で表されるユニット)
特に、カルボニル基同士が近傍に存在し、水溶液に対する被めっき層の現像性、被めっき層への触媒吸着性、および、金属膜の密着性がより優れる点で、上記ポリマーに式(D)で表されるユニット(以後、適宜ユニットDとも称する)が含まれることが好ましい。
【0048】
【化4】

【0049】
式(D)中、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なかでも、現像性の点で、水素原子が好ましい。
なお、R6およびR7は、互いに連結して脂肪族環(環状脂肪族炭化水素基)を形成していてもよい。
【0050】
ポリマー中におけるユニットDの含有量は特に制限されないが、被めっき層(ポリマー層)の現像性がより優れ、金属膜の密着性が優れる点で、全ユニット(100モル%)に対して、1〜30モル%が好ましく、5〜20モル%がより好ましい。
【0051】
ポリマーの酸価は特に制限されないが、被めっき層の現像性、および金属膜の密着性がより優れる点で、2.5〜7.0mmol/gが好ましく、3.0〜6.0mmol/gがより好ましい。
【0052】
ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、3000以上30万以下が好ましく、更に好ましくは3万以上10万以下である。特に、重合感度および膜強度の観点から、ポリマーの重量平均分子量は、3万以上であることが好ましい。なお、合成中のゲル化抑制の観点から分子量の上限値は30万であることが好ましく、現像残渣除去性の観点で、好ましくは10万以下である。
なお、重量平均分子量は、GPC(使用溶媒:N−メチルピロリドン)を用いてポリスチレン換算により測定される値であり、例えば、次の条件で測定することができる。
・カラム:ガードカラム TOSOH TSKguardcolum Super AW-H
分離カラム TOSOH TSKgel Super AWM-H(サイズ6.0mm×15cmを3本連結)
・溶離液:N−メチルピロリドン(LiBr10mM含有)
・流速:0.35mL/min
・検出方法:RI
・温度:カラム40℃、インレット40℃、RI40℃
・サンプル濃度:0.1wt%
・注入量:60μL
また、ポリマーの重合度としては、20量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは30量体以上のものである。また、1500量体以下が好ましく、1000量体以下がより好ましい。
【0053】
<ポリマーの合成方法>
上記ポリマーの合成方法は特に限定されず、使用されるモノマーも市販品または公知の合成方法を組み合わせて合成したものであってもよい。
なかでも、組成の均一性が高く、合成が容易であり、生産性がより優れる点から、少なくとも式(I)で表される化合物および式(II)で表される化合物を重合してなる重合体に、式(III)で表される化合物と、必要に応じて式(IV)で表される化合物とを反応させる方法が好ましく挙げられる。
まず、該方法で使用される化合物の構造について説明する。
【0054】
【化5】

【0055】
式(I)中のA1およびR1は、式(A)中のA1およびR1と同義である。
式(II)中のR6およびR7は、式(D)中のR6およびR7と同義である。
【0056】
式(III)中のR8、Y、およびL1は、式(B)中のR8、Y、およびL1と同義である。
式(III)中、A2は、−OH、−NH2、または−NHR10を表す。なかでも、副反応抑止の観点から、−OHが好ましい。該A2は、上記式(II)で表される化合物の酸無水物基(−OCOCO−)に対して反応する。
10は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキル基、または芳香族基を表し、上述した式(B)中のR10と同義である。
【0057】
式(III)で表される化合物としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、水酸基含有アクリルアミド化合物などが挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、モノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシオリゴ(メタ)アクリレート、オリゴヒドロキシオリゴ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、反応性の観点から、モノヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートが好ましい。モノヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
水酸基含有アクリルアミド化合物としては、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられる。
【0058】
式(IV)中のW1およびL2は、式(C)中のW1およびL2と同義である。
式(IV)中、A3は、−OH、−NH2、または−NHR11を表す。R11は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキル基、芳香族基、または−L2−W1基を表し、上述した式(C)中のR11と同義である。
【0059】
次に、少なくとも式(I)で表される化合物および式(II)で表される化合物を重合してなる重合体(以後、適宜重合体Aと称する)の合成方法について詳述する。なお、式(II)で表される化合物が重合して形成されるユニットは、式(E)として表される(以後、適宜ユニットEと称する)。
【0060】
【化6】

【0061】
重合体Aの重合方法は特に制限されず、カチオン重合法、ラジカル重合法など公知の方法が採用される。なかでも、重合制御性の観点から、ラジカル重合法が好ましい。
ラジカル重合法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、または塊状重合等の重合方法が挙げられるが、特に限定されない。分子量調整の容易性、及び、得られるポリマーの成膜性等の観点から、溶液重合が好ましい。
【0062】
溶液重合に用いる溶剤としては、重合の妨げにならない限り特に限定されない。
溶剤としては、例えば、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、及びイソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0063】
ラジカル重合法で用いられる重合開始剤としては公知の重合開始剤を使用でき、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)及び2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)等のアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、及び(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過酸化水素等の無機過酸化物等が挙げられる。また、熱重合開始剤と還元剤を併用したレドックス系開始剤等も重合開始剤として使用し得る。
【0064】
溶液重合を行う反応系におけるモノマーの濃度は、10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上50重量%以下であることがより好ましく、20重量%以上40重量%以下であることが特に好ましい。重合濃度が上記範囲内であると、重合制御や得られる樹脂溶液の粘度が優れており、好ましい。
【0065】
溶液重合を行う反応系の温度は、15℃以上120℃以下であることが好ましく、30℃以上110℃以下であることがより好ましく、40℃以上100℃以下であることが特に好ましい。重合温度が上記範囲内であると、重合制御に優れており好ましい。
【0066】
また、共重合可能なモノマーとしてエチレン及びプロピレン等の気体の共重合可能なモノマーを用いる場合には、かかる共重合可能なモノマー雰囲気下、好ましくは加圧下でポリマーを製造すればよい。
【0067】
重合体(A)において、化合物(I)と化合物(II)との含有比(モル比)は、20:80〜80:20であることが好ましく、50:50〜60:40であることが特に好ましい。
【0068】
重合体(A)は、スチレン及び無水マレイン酸を重合してなる重合体(特に、交互共重合体が好ましい)であることが好ましい。
【0069】
該重合体としては、サートマー・ジャパン(株)から販売されているSMA1000、SMA2000、SMA3000、SMAEF30、SMAEF40、SMAEF60、SMAEF80がある。また、該重合体は、例えば、シグマ・アルドリッチジャパン(株)からも販売されており、NOVA Chemicals Japan Ltd.からは商品名「DYLARK」として市販されている。
【0070】
重合終了後、必要に応じて、得られた生成物に対して、再沈処理や抽出処理などを行い、未反応物を除去してもよい。
【0071】
さらに、得られた重合体Aに対して、式(III)で表される化合物を反応させ、必要に応じてさらに式(IV)で表される化合物と反応させ、さらに必要に応じてユニットEを加水分解することにより所望のポリマーを得ることができる。
【0072】
その際、共重合に使用した混合溶剤が存在しても、反応には何ら支障はないが、反応の進行とともに反応物が析出する場合などは、重合に使用した混合溶剤を除去し、所望の溶剤に変えてもよい。
【0073】
また、式(III)で表される化合物(例えば、アクリレート)の重合を抑制するために、重合禁止剤を使用することも好ましい。使用できる重合禁止剤としては公知のものを使用でき、例えば、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン類、p−メトキシフェノール、フェノールなどのフェノール類、ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ フリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPOなどのフリーラジカル類、フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩などのニトロソアミン類、カテコール類を使用することができる。重合禁止剤は、1種又は2種以上用いてもよく、使用量は、一般的には10〜50000ppm、好ましくは50〜1000ppm程度である。
【0074】
また、重合体Aに式(III)で表される化合物を反応させる際の反応温度は、混合溶剤の比率にもよるが、30〜150℃、好ましくは50〜100℃である。50℃未満にあっては反応が遅く、100℃を越える場合は加熱の方法に考慮が必要であること、150℃を越えると共重合体の熱分解が起こる危険性が生じる。
【0075】
反応時間は、上記反応温度にもよるが、1〜30時間が好ましく、3〜14時間がより好ましい。また、反応が遅い場合は公知のエステル化触媒を用いることもできる。
公知のエステル化触媒としては、具体的には、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、硝酸、リン酸などのブレーンステッド酸やその部分中和物、ならびに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモン、ゲルマニウム、アルミニウム、亜鉛、スズ、マンガン、コバルト、チタンおよびタングステンから選択される金属を含む化合物が挙げられる。
【0076】
また、ユニットEを加水分解することで、ユニットDを導入する場合、重合溶液を再沈後、乾燥し、粉体として取りだしてから行う、または、溶剤を除去せずにそのまま、水もしくはアルカリ水溶液を添加しても行うことが出来る。アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等が経済的に好ましい。
【0077】
加水分解の温度は使用するアルカリ剤にもよるが、10〜100℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。30℃未満にあっては、加水分解反応が遅い場合があり、80℃を越えると熱によりユニットBが加水分解するおそれがある。
【0078】
また、本発明に好適に使用できるポリマーにおいて、ユニットA、B、C、D以外に他のユニットを含んでいてもよい。前述の方法で反応性部分(ユニットE)を100%反応させることが困難な際には少量の反応性部分(ユニットE)が残ってしまう可能性もある。また、本発明の効果を損なわないものであれば、いかなるモノマーも使用することができる。具体的には、下記モノマーを式(I)で表される化合物および式(II)で表される化合物と共重合することで、他のユニットを導入することが可能である。
【0079】
使用されうる他のモノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの無置換(メタ)アクリル酸エステル類、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン置換(メタ)アクリル酸エステル類、2−(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアンモニウム基置換(メタ)アクリル酸エステル類、ブチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニル化合物類や、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸エルテル、安息香酸ビニル、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーヨン製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学(株)製のライトアクリレート HOA−HH、中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどのカルボキシル基含有モノマー、その他にジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルチオ−エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、N−メチルマレイミドなどを使用できる。
また、上記記載のモノマーを用いて得られたマクロモノマーも使用できる。
【0080】
<被めっき層形成用組成物>
本発明の被めっき層形成用組成物には、上記ポリマーが含まれるが、その含有量は特に制限されない。
被めっき層形成用組成物中に溶剤として有機溶剤のみが含まれる場合、ポリマーの含有量は、組成物全体に対して、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜30質量%がより好ましい。
また、被めっき層形成用組成物中に溶剤として水と水溶性有機溶剤との混合液を使用する場合は、ポリマーの含有量は、組成物全体に対して、0.01〜25質量%が好ましく、0.01〜15質量%がより好ましい。
【0081】
(溶剤)
本発明の被めっき層形成用組成物は、前述のポリマーの他に、このポリマーを溶解しうる溶剤を含有することが好ましい。
使用できる溶剤は特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
また、取り扱い安さから、沸点50℃〜150℃の溶剤が好ましい。なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0082】
本発明の被めっき層形成用組成物において、ポリマー中に含有されるカルボン酸基を塩基で中和し、親水性を上げることで、溶剤として水を使用することもできる。なお、塗布時の塗布性を考えると溶剤として水と水溶性有機溶剤とを併用することが好ましく、その際の有機溶剤の含有量は、全溶剤に対して、0.1〜40質量%であることが好ましい。
ここで、水溶性有機溶剤とは、上記の含有量の範囲において水と溶解しうるものを意味する。このような性質を有している有機溶剤であれば、特に限定されず、組成物の溶剤として用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、ハロゲン系溶媒などが好ましく用いられる。
【0083】
本発明の被めっき層形成用組成物には、更に、ラジカル発生剤、増感剤、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、硬化剤、硬化促進剤、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、水溶性物質(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のミネラル成分)、溶解性低分子物質(例えば、εカプロラクタム、ポリエチレングリコール等のポリアルキルグリコール)などを添加してもよい。また、これらの添加剤は必要に応じて後述する密着補助層に添加してもよい。
【0084】
<積層体>
本発明の積層体は、基板上に、上記被めっき層形成用組成物から形成される被めっき層を有することを特徴とする。このような積層体を用いることで、任意の基板上に、密着性に優れた金属パターンを容易に形成しうる。
以下、上記被めっき層形成用組成物や積層体を用いた金属パターン材料の製造方法について説明する。
【0085】
<金属パターン材料の製造方法>
本発明の金属パターン材料の製造方法は特に制限されないが、以下の4つの工程を備えることが好ましい。
(1)基板上に、上述した被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる工程
(2)基板上の被めっき層形成用組成物の未硬化部を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する工程
(3)該パターン状の被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程
(4)該めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程
以下に、各工程について詳述する。
【0086】
〔(1)工程:硬化工程〕
(1)工程では、基板上に、上記被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用組成物を硬化させる。
なかでも、組成物中のポリマーが、ユニットB内の二重結合基により基板に結合していることが好ましい態様である。
【0087】
被めっき層形成用組成物を基板に接触させる場合には、その塗布量は、めっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で、0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
なお、基板上に、組成物を塗布し、乾燥させて、ポリマーを含有する層を形成する場合、塗布と乾燥との間に、20℃〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0088】
被めっき層形成用組成物と基板との接触は、基板を該被めっき層形成用組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、塗布法により被めっき層形成用組成物からなる層を基板表面(または、密着補助層表面)に形成することが好ましい。
【0089】
(エネルギー付与)
本工程では、基板に上記被めっき層形成用組成物を接触させた後、この被めっき層形成用組成物に対し、エネルギー付与を行う。
エネルギー付与には、加熱や露光などが用いられることが好ましく、パターン像の形成容易性の観点からは、露光が用いられることが好ましい。
露光には、UVランプ、可視光線などによる光照射等が用いられる。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
露光時間としては、ポリマーの反応性および光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0090】
なお、エネルギー付与として加熱を用いる場合、送風乾燥機、オーブン、赤外線乾燥機、加熱ドラムなどを用いることができる。
エネルギー付与の方法として、パターン状に加熱を行う場合、赤外線や遠赤外線による露光が用いられる。
【0091】
上記のようなエネルギー付与が行われると、その領域でのみポリマーの硬化反応が生起する。その結果、基板上では、被めっき層形成用組成物のエネルギー付与領域のみが硬化することとなる。
【0092】
(基板)
本工程で用いられる基板としては、形状保持性を有するものであればよく、その表面が、ポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体が露光によりラジカルを発生しうるものであるか、基材上に、露光によりラジカルを発生しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)を設け、この基材と中間層とで基板が構成されていてもよい。
【0093】
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネートまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
【0094】
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0095】
また、本発明の金属パターン材料の製造方法により得られた金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、または、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0096】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物(多官能アクリレートモノマー、無機・有機粒子)を併用することができる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0097】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0098】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0099】
絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。
【0100】
更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤(例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルクなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラー)、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
【0101】
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10質量%〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果が小さく、また、200質量%を超えると場合には、樹脂特有の強度などの特性が低下するおそれがある。
【0102】
本発明に用いられる基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸(Rz)が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面凹凸(中間層や密着補助層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0103】
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(1)工程を施し、後述する(2)工程を経れば、樹脂フィルムの両面に被めっき層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面に被めっき層が形成された場合には、更に、後述する(3)工程、および(4)工程を行うことで、両面に金属膜が形成された金属パターン材料を得ることができる。
【0104】
(密着補助層)
以下、本発明における密着補助層について説明する。
密着補助層は、基板と被めっき層との密着を確保する中間層であり、この層は基板と被めっき層に親和性があるものでもよく、硬化時にポリマーと反応し、化学結合を形成してもよい。
なお、基材が板状物であれば、その両面に密着補助層を形成してもよい。密着補助層としては、ポリマーが硬化時(特に、光硬化時)に化学結合を生じるものが好ましい。このような化学結合を生じる密着補助層には、光開始剤を導入することが好ましい。また、密着補助層は作業性の観点から水分散ラテックスを用いて形成されることも好ましい。
【0105】
密着補助層としては、基材との密着性が良好な樹脂組成物、および、露光によりラジカルを発生しうる化合物(重合開始剤)を用いて形成されることが好ましい。なお、樹脂組成物を構成する樹脂が、ラジカルを発生しうる部位を有する場合には、ラジカルを発生しうる化合物を別途添加する必要はない。
【0106】
本発明における密着補助層としては、例えば、基材が、多層積層板、ビルドアップ基板、またはフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該基材との密着性の観点から、密着補助層を形成する際に用いられる樹脂組成物としても、絶縁樹脂組成物が用いられることが好ましい。
以下、基材が絶縁樹脂からなり、密着補助層が絶縁樹脂組成物から形成される態様について説明する。
【0107】
密着補助層を形成する際に用いられる絶縁樹脂組成物は、基材を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよいが、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、基材を構成する絶縁樹脂と同じ種類の絶縁樹脂を使用することが密着の点で好ましい。
【0108】
なお、密着補助層に使用される絶縁樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0109】
被めっき層との密着性がより優れる点で、密着補助層の形成には、ポリマーラテックスを使用してもよい。ポリマーラテックスとは、水に不溶なポリマーの微粒子が水に分散したものである。詳細には、例えば「高分子ラテックスの化学」室井宗一著、高分子刊行会発行、昭和48年)に記載されている。
ポリマーラテックスとしては、特に制限はないが、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア/ウレタン、SBR(スチレン−ブタジエン系)、MBR(MMA/ブタジエン、アクリル/ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)、NR(天然ゴム)、アクリルゴム、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、VP(SBR/ジビニルピリジン)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)およびこれらの共重合体からなるポリマーラテックスなどが挙げられる。
特に、シアノ基を含むポリマーラテックスが好ましく、具体的には、Nipol 1561(日本ゼオン(株))、Nipol 1562(日本ゼオン(株))、Nipol 1577K(日本ゼオン(株))、LX 531(日本ゼオン(株))、LX 531B(日本ゼオン(株))、Nipol SX1503A(日本ゼオン(株))、NK−300(日本エイアンドエル(株))が挙げられる。
また、ポリマーラテックスには、種類の異なるポリマーラテックスを併用することもできる。併用できるポリマーラテックスとしては、例えば、SBRとNR、IRとNR、CRとNR、NBRでニトリル量が異なるもの、SBRでスチレン量が異なるもの、SBRとVP、NBRとMBR、SBRとNBR、SBRとMBR、BRとCR、NBRとVP、CRとVPなどが挙げられる。
密着補助層をポリマーラテックスにより形成する場合には、ポリマーラテックス分散液を塗布し、乾燥すればよい。
【0110】
更に、この密着補助層には、必要に応じて、充填剤(例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルクなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラー)、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を、一種または二種以上添加してもよい。
これらの材料を添加する場合は、いずれも、主成分となる樹脂に対して、0質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0質量%〜80質量%の範囲で添加される。
【0111】
密着補助層には、樹脂組成物と露光によりラジカルを発生しうる化合物(重合開始剤)が用いられることが好ましい。ここで、露光によりラジカルを発生しうる化合物としては、従来公知の光重合開始剤が用いられる。この光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0112】
密着補助層に含有させる光重合開始剤(露光によりラジカルを発生しうる化合物)の量は、固形分で0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、1.0質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0113】
本発明における密着補助層の厚みは、一般に、0.1〜10μmの範囲であり、0.2〜5μmの範囲であることが好ましい。密着補助層を設ける場合、厚みが上記範囲であれば、隣接する基材や、被めっき層との十分な密着強度が得られ、また、一般の接着剤を用いるのに比較して薄層でありながら、その接着剤による層と同様の密着性が達成される。
【0114】
密着補助層は基材表面に、塗布法、転写法、印刷法などの公知の層形成方法を適用して形成される。
密着補助層は、所望により、印刷法(例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、インプリント法など)や、現像法(例えば、湿式エッチング、乾式エッチング、アブレーション、光による硬化・可塑化(ネガ型/ポジ型)など)などでパターン化されてもよい。
【0115】
また、密着補助層は基材上に形成された後、何らかのエネルギーを与えて硬化処理を行ってもよい。与えるエネルギーとしては、光、熱、圧力、電子線などが挙げられるが、熱または光が一般的であり、熱の場合は、100℃〜300℃の熱を5分〜120分加えることが好ましい。
【0116】
この硬化処理は密着補助層の形成後すぐに行ってもよく、密着補助層形成後に5分〜10分程度の予備硬化処理を行っておけば、密着補助層形成後に行われる他のすべてのそれぞれの工程を行ったあとに実施してもよい。
【0117】
密着補助層の形成後、その表面に形成される被めっき層に対する密着性向上の目的で、乾式および/または湿式法により表面を粗化してもよい。乾式粗化法としては、バフ、サンドブラスト、等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。一方、湿式粗化法としては、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、等の酸化剤や、強塩基や樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。
【0118】
〔(2)工程:現像工程〕
(2)工程では、上記(1)工程後、基板上の被めっき層形成用組成物の未硬化部を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する。
【0119】
(水溶液による現像)
本工程で用いられる水溶液としては、水溶液であれば特に制限されないが、具体的には、酸性水溶液、中性水溶液、アルカリ性水溶液が挙げられる。
酸性水溶液としては、塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液が用いられる。
また、中性水溶液としては水に界面活性剤を溶解させたものが用いられ、アニオン性、ノニオン性、カチオン性の界面活性剤を使用することができる。
中でも、アルカリ性水溶液が好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムの水溶液が用いられる。
これらの水溶液の濃度は特に制限されないが、現像性の観点から、0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0120】
また、現像方法としては、シャワー洗浄、浸漬法などが使用できる。また、現像液を攪拌して、そこへ基板を浸漬して現像することもできる。
現像条件としては、現像温度は室温〜50℃が好ましく、現像時間は5秒〜10分が好ましい。
【0121】
上記のような現像により、基板上には、パターン状の被めっき層が形成される。得られた被めっき層は、めっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、膜厚が、0.2〜1.5μmであることが好ましく、0.3〜1.5μmがより好ましく、0.6〜1.2μmが特に好ましい。
【0122】
〔(3)工程:めっき触媒付与工程〕
(3)工程では、上記(2)工程において形成された被めっき層に、めっき触媒またはその前駆体を付与する。
本工程においては、被めっき層を構成するポリマーが有するカルボン酸基や非解離性官能基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。つまり、被めっき層中およびその表面に、めっき触媒またはその前駆体が付着する。
ここで、めっき触媒またはその前駆体としては、後述する(4)工程における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒またはその前駆体は、(4)工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒またはその前駆体は、無電解めっき触媒またはその前駆体であることが好ましい。
【0123】
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、さらに具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤または保護剤により調節することができる。
【0124】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0125】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
【0126】
本発明で用いられる無電解めっき触媒またはその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)またはその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0127】
パラジウム塩としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウムが好ましい。
パラジウム錯体としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム錯体、トリス
(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体などが挙げられる。
パラジウムコロイドは、パラジウム(0)から構成される粒子で、その大きさは特に制限されないが、液中での安定性の観点から、5nm〜300nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
【0128】
また、本発明で用いられる無電解めっき触媒またはその前駆体としては、選択的に被めっき層に吸着させることができるといった観点から、銀、または銀イオンが好ましい別の例として挙げられる。
めっき触媒前駆体として銀イオンを用いる場合、以下に示すような銀化合物が解離したものを好適に用いることができる。銀化合物の具体例としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀が挙げられる。この中でも、水溶性の観点から硝酸銀が好ましい。
【0129】
無電解めっき触媒である金属、または、無電解めっき前駆体である金属塩を被めっき層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液若しくは溶液を被めっき層上に塗布するか、または、その分散液若しくは溶液中に被めっき層が形成された基板を浸漬すればよい。
【0130】
また、上記(1)工程において、基板上に、上記被めっき層形成用組成物を接触させるが、この組成物中に、無電解めっき触媒またはその前駆体を添加する方法を用いてもよい。つまり、ポリマーと、無電解めっき触媒またはその前駆体とを含有する組成物を、基板上に接触させて、パターン状に露光・現像を行うことにより、めっき触媒又はその前駆体を含有する被めっきパターン(パターン状の被めっき層)を形成することができる。
【0131】
なお、基板として樹脂フィルムを用い、該樹脂フィルムの両面に対して被めっき層が形成されている場合には、その両面の被めっき層に対して同時に無電解めっき触媒またはその前駆体を接触させるために、上記の浸漬法を用いることが好ましい。
【0132】
上記のように無電解めっき触媒またはその前駆体を接触させることで、被めっき層中の相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、または、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、または溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0133】
なお、無電解めっき触媒またはその前駆体を含有する溶液にパラジウム化合物を用いる場合、パラジウム化合物は、溶液の全量に対して、0.001〜10質量%の範囲で用いることが好ましく、0.05〜5質量%で用いることがより好ましく、更に0.10〜1質量%で用いることが好ましい。
また、無電解めっき触媒前駆体を含有する溶液に銀化合物を用いる場合、銀化合物は、溶液の全量に対して、0.1〜20質量%の範囲で用いることが好ましく、0.1〜20質量%の範囲で用いることがより好ましく、更に0.5〜10質量%の範囲で用いることが好ましい。
どちらの化合物を用いる場合であっても、含有量が少なすぎると後述するめっきの析出がし難くなり、含有量が多すぎると、所望しない領域までめっきが析出してしたり、エッチング残渣除去性が損なわれたりすることがある。
【0134】
被めっき層のめっき触媒またはその前駆体の吸着量に関しては、使用する無電解めっき触媒またはその前駆体の種類にもよるが、例えば、銀イオンの場合は、無電解めっきの析出性の観点から、300mg/m2以上が好ましく、500mg/m2以上がより好ましく、600mg/m2以上が更に好ましい。また、基板との密着力の高い金属パターンを作製するという観点からは、被めっき層の銀イオンの吸着量は1000mg/m2以下であることが好ましい。
また、パラジウムイオンの場合、被めっき層の吸着量は、無電解めっきの析出性の観点から、5mg/m2以上が好ましく、10mg/m2以上がより好ましい。また、基板との密着力の高い金属パターンを作製するという観点からは、被めっき層のパラジウムイオンの吸着量は1000mg/m2以下であることが好ましい。
【0135】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(4)工程において、被めっき層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、相互作用性基(シアノ基・エーテル基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0136】
(有機溶剤、及び水)
上記のようなめっき触媒または前駆体は、前述のように、分散液や溶液(触媒液)として被めっき層に付与される。
触媒液には、有機溶剤や水が用いられる。有機溶剤を含有することで、被めっき層に対するめっき触媒またはその前駆体の浸透性が向上し、非解離性官能基に効率よくめっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
【0137】
触媒液には、水を用いてもよく、この水としては、不純物を含まないことが好ましく、そのような観点からは、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水や蒸留水を用いるのが特に好ましい。
【0138】
めっき触媒液の調製に用いられる有機溶剤としては、被めっき層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0139】
また、その他の有機溶剤としては、ダイアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0140】
特に、めっき触媒またはその前駆体との相溶性、および被めっき層への浸透性の観点では水溶性の有機溶剤が好ましく、アセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブ、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0141】
更に、触媒液には、目的に応じて他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、例えば、膨潤剤や、界面活性剤などが挙げられる。
【0142】
以上説明した(3)工程を経ることで、被めっき層中にめっき触媒またはその前駆体がカルボン酸基や非解離性官能基を介して付与される。
【0143】
〔(4)工程:めっき工程〕
(4)工程では、無電解めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対し、めっきを行うことで、めっき膜が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、上記(3)工程において、被めっき層に付与されためっき触媒またはその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、金属膜の密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0144】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては、公知の無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着または含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、公知の無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、液全体に対する該還元剤の濃度が0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
浸漬の際には、無電解めっき触媒またはその前駆体が接触する被めっき層表面付近の無電解めっき触媒またはその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌または揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0145】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤(例えば、水)の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0146】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0147】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物が選択される。
【0148】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、または、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2〜2μmであることがより好ましい。
ただし、無電解めっきによるめっき膜を導通層として、後述する電気めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の膜が均一に付与されていればよい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0149】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき層は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により、被めっき層中にめっき触媒やめっき金属からなる微粒子が高密度で分散していること、また更に被めっき層上にめっき金属が析出していることが確認される。被めっき層とめっき層との界面は、樹脂複合体と微粒子とのハイブリッド状態であるため、被めっき層(有機成分)と無機物(めっき触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑であっても、密着性が良好となる。
【0150】
(電気めっき)
本工程おいては、上記(3)工程において付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0151】
電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0152】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、得られた金属パターン材料を一般的な電気配線などに適用する場合の金属膜の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
なお、電気配線の厚みは、電気配線の線幅が狭くなる、すなわち微細化するほどアスペクト比を維持するために薄くなる。従って、電気めっきによって形成されるめっき層の層厚は、上記に限定されず、任意に設定できる。
【0153】
<金属パターン材料>
上述した各工程を経ることで、金属パターン材料を得ることができる。なお、本発明の金属パターン材料の製造方法において、基板として樹脂フィルム等を用いれば、その樹脂フィルムの両面に金属パターンが形成された金属パターン材料を得ることができる。
本発明に係る金属パターン材料は、基板に対する金属パターンの密着力に優れる。
【0154】
本発明に係る金属パターン材料は、被めっき層凹凸(Rz)が500nm以下5nm以上(より好ましくは100nm以下)の基板上の局所的に、めっき膜を設けたものであることが好ましい。また、被めっき層と金属パターンとの密着性が碁盤の目試験において、剥がれる目の数が100目中5目以下であることが好ましく、特に0目であることが好ましい。即ち、被めっき層表面が平滑でありながら、被めっき層と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
【0155】
なお、被めっき層表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値である。
より詳細には、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下5nm以上であることが好ましい。
【0156】
本発明の金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【0157】
なお、本発明の被めっき層形成用組成物は、上述したように、水溶液による現像が可能であることを特徴とするものであり、金属パターン材料の製造に好適に用いられる。
なお、形成される被めっき層はめっき触媒またはその前駆体に対する吸着性に優れるため、この用途に限定されず、現像してパターンを形成する必要のない用途、例えば、基板表面の全面に被めっき層を形成し、その後、金属膜を形成する表面金属膜材料の製造にも好適に用いられることは言うまでもない。
表面金属膜材料の製造に用いる場合には、(1’)基板上に、上記被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用組成物に対して、基板の全領域にエネルギーを付与して当該被めっき層形成用組成物を硬化させて被めっき層を得る工程を実施した後、金属パターン材料の製造方法における(3)工程、即ち、該被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(4)工程、即ち、該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を順次実施すればよい。
なお、上記表面金属材料の金属膜を、レジスト膜などを使用してドライエッチングやウェットエッチングなどにより、パターン状にして、金属パターン材料を製造してもよい。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0158】
サブトラクティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液でめっき膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、装置などが簡便な点で湿式エッチングが好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0159】
また、セミアディティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジストパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、めっき膜をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジスト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては上記記載の手法が使用できる。
なお、その際、金属膜を除去すると同時に、金属膜の下部に存在する被めっき層を合わせて除去してもよい。
【実施例】
【0160】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0161】
以下に、本実施例で使用するポリマーの合成方法について詳述する。
(合成例1:特定ポリマーA)
攪拌機、温度計、及び還流冷却管を備えた300mlの三つ口フラスコにスチレン4.5g、無水マレイン酸4.24g、トルエン35ml及びナイパ−BW(日本油脂製過酸化ベンゾイルペ−スト品)0.10gを入れ、油浴で加熱して還流下、4時間反応させ、さらにナイパ−BW0.10gを添加し、2時間反応させた。この反応液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート35g、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.040g、および、2−ヒドロキシエチルアクリレート7.52gを加えて、65℃で8時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーA(重量平均分子量5.5万)を9g得た。
得られた特定ポリマーAの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、この特定ポリマーAの酸価は3.1mmol/gであった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ユニットAに相当するピークが7.5−6.7ppm(5H分)、3.0−1.1ppm(3H分)にブロードに観察され、ユニットBに相当するピークが6.2−6.0ppm(2H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.1−1.4ppm(2H分)にブロードに観察され、ユニットA:ユニットB=50:50(mol比)であることが分かった。
【0162】
(合成例2:特定ポリマーB)
攪拌機、温度計、及び還流冷却管を備えた300mlの三つ口フラスコに、スチレン6.97g、無水マレイン酸4.24g、トルエン35ml及びナイパ−BW(日本油脂製過酸化ベンゾイルペ−スト品)0.10gを入れ、油浴で加熱して還流下、6時間反応させた。この反応液にメチルエチルケトン35g、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.040g、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート3.26gを加えて、65℃で8時間反応を行った。その後室温で、水100gにNaOH(2.59g)を溶解した水溶液を加えて、40℃で1時間加水分解反応を行った。その後、氷浴で冷却した反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液100gを加え、析出した固形物を取り出し、特定ポリマーB(重量平均分子量6.5万)を10g得た。
得られた特定ポリマーBの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、この特定ポリマーBの酸価は4.1mmol/gであった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ユニットAに相当するピークが7.5−6.7ppm(5H分)、3.0−1.1ppm(3H分)にブロードに観察され、ユニットBに相当するピークが6.2−6.0ppm(2H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.1−1.4ppm(2H分)にブロードに観察され、ユニットDに相当するピークが2.1−1.4ppm(2H分)にブロードに観察され、ユニットA:ユニットB:ユニットD=25:60:15(mol比)であることが分かった。
【0163】
(合成例3:特定ポリマーC)
攪拌機、温度計、及び還流冷却管を備えた500mlの三つ口フラスコに、スチレン4.5g、無水マレイン酸4.24g、トルエン35ml及びナイパ−BW(日本油脂製過酸化ベンゾイルペ−スト品)0.10gを入れ、油浴で加熱して還流下、6時間反応させた。この反応液にメチルエチルケトン70g、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.040g、3,3’−イミノジプロピオニトリル(東京化成工業(株)製)4.36gを加えて、65℃で4時間反応を行った。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.51gを加えて、65℃で4時間反応を行った。その後、室温度で反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液3.4gを加え、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーC(重量平均分子量5.2万)を9g得た。
得られた特定ポリマーCの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、この特定ポリマーCの酸価は3.1mmol/gであった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ユニットAに相当するピークが7.5−6.7ppm(5H分)、3.0−1.1ppm(3H分)にブロードに観察され、ユニットBに相当するピークが6.2−6.0ppm(2H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、4.4−4.0ppm(4H分)、2.1−1.4ppm(2H分)にブロードに観察され、ユニットCに相当するピークが3.5−3.2ppm(4H分)、2.6−2.3ppm(4H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、2.2−1.4ppm(2H分)にブロードに観察され、ユニットA:ユニットB:ユニットC=30:50:20(mol比)であることが分かった。
【0164】
(合成例4:特定ポリマーD)
攪拌機、温度計、及び還流冷却管を備えた500mlの三つ口フラスコに、スチレン4.5g、無水マレイン酸4.24g、トルエン35ml及びナイパ−BW(日本油脂製過酸化ベンゾイルペ−スト品)0.10gを入れ、油浴で加熱して還流下、6時間反応させた。この反応液にメチルエチルケトン70g、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.040g、3,3’−イミノジプロピオニトリル(東京化成工業(株)製)4.36gを加えて、65℃で4時間反応を行った。その後、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(東京化成工業(株)製)4.48gを加えて、65℃で4時間反応を行った。その後、室温度で反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液3.4gを加え、水で再沈を行い、固形物を取り出し、特定ポリマーD(重量平均分子量5.3万)を10g得た。
得られた特定ポリマーDの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、及び滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、この特定ポリマーDの酸価は3.2mmol/gであった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ユニットAに相当するピークが7.5−6.7ppm(5H分)、3.0−1.1ppm(3H分)にブロードに観察され、ユニットBに相当するピークが6.3−6.05ppm(2H分)、5.7−5.5ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.2−3.0ppm(2H分)、2.1−1.4ppm(2H分)にブロードに観察され、ユニットCに相当するピークが3.5−3.2ppm(4H分)、2.6−2.3ppm(4H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、2.2−1.4ppm(2H分)にブロードに観察され、ユニットA:ユニットB:ユニットC=30:50:20(mol比)であることが分かった。
【0165】
<実施例1>
〔基板の作製〕
ガラスエポキシ基板(日立化成(株)製MCL−E679W)上に、NBRラテックス(日本ゼオン(株)製Nipol1561:固形分濃度40.5質量%の水分散液)をスピンコート法により塗布し、120℃にて30分間乾燥することで造膜させ、厚さ4μmの密着補助層を有する基板A1を得た。
【0166】
[被めっき層形成用組成物の調製]
上記合成法で得られた特定ポリマーAを用い、固形分濃度7質量%の水溶液を調製した被めっき層形成用組成物を得た。
【0167】
[被めっき層の形成、めっき触媒の付与、無電解めっき、及び電気めっき]
調製された被めっき層形成用組成物を、上記基板A1の密着補助層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した。
その後、密着補助層上の被めっき層形成用組成物に対して、UV露光機((株)三永電機製作所製 型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)に365nmのみを透過するバンドパスフィルターを取り付け、10mW/cm2の照射パワー(ウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S365で照射パワー測定)にて、フォトマスクを通じて400秒間、パターン露光を行った。
露光後の基板を、現像液A(1質量%NaHCO3水溶液)中に10分間浸漬し、続いて、蒸留水に1分浸漬し洗浄した。これにより、パターン状の被めっき層を有する基板を得た。被めっき層の凹凸(Rz)は、90nmであった。
【0168】
(無電解めっき)
被めっき層パターンを形成した基板を、1%硝酸銀水溶液に10分間浸漬してめっき触媒を付与し、水洗した後、無電解銅めっきを行った。
無電解めっきはOPCカッパーT(奥野製薬工業(株)製)用い、30℃の無電解めっき液に20分浸漬させることで銅皮膜を形成した。
【0169】
<評価>
上記実施例1で作製された被めっき層パターン、および金属パターン材料に関して、以下の評価を行った。表1に結果をまとめて示す。
【0170】
1.現像性の評価
現像液処理後のパターン形状を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。
○:パターンが目視で確認できる
×:現像できずにパターンが目視で確認できない
パターンが目視で確認できたものに関して、以下の基準に従ってさらに評価した。
【0171】
2.配線間残渣除去性
無電解銅めっき後の基板を光学顕微鏡で観察し、配線間にめっきが析出している面積から、ポリマーの現像除去性(以後、適宜配線間残渣除去性とも称する)を以下の基準で評価した。なお、めっきの析出面積の小さいほど、配線間残渣除去性が良好であり、「◎」および「○」が実用上使用できるレベルである。
◎ 配線間面積に対し、1%未満の面積にめっきの析出が見られた。
○ 配線間面積に対し、1%以上5%未満の面積にめっきの析出が見られた。
△ 配線間面積に対し、5%以上20%未満の面積にめっきの析出が見られた。
× 配線間面積に対し、20%以上の面積にめっきの析出が見られた。
【0172】
3.碁盤目剥離試験
得られた銅皮膜(めっき膜)を碁盤目剥離試験(JIS K5600)にて、2回連続して剥離試験を行ない、以下の基準に従って評価した。なお、「◎」〜「△」が実用上使用できるレベルである。
◎:100目中、99目以上の残存
○:98目以上の残存
△:95目以上の残存
×:94目以下の残存
【0173】
4.耐湿熱性試験
得られた銅皮膜(めっき膜)を80℃、95%RHで21日間保存経時させて、碁盤目剥離試験(JIS K5600)にて、100目剥離試験を行ない、以下の基準に従って評価した。なお、「◎」〜「△」が実用上使用できるレベルである。
◎:100目中、99目以上の残存
○:98目以上の残存
△:95目以上の残存
×:94目以下の残存
【0174】
<実施例2〜4>
上記実施例1で使用された特定ポリマーAの代わりに、特定ポリマーB〜特定ポリマーDをそれぞれ使用して、実施例1と同様の手法に従って、金属パターン材料の製造を行った。
表1に、実施例1と同様の評価を行った結果をまとめて示す。
【0175】
<比較例1>
[被めっき層形成用組成物の調製]
後述の合成法で得られた比較ポリマーA(0.2g)、およびアセトン(1.8g)を混合攪拌し、被めっき層形成用組成物を調製した。
【0176】
(比較ポリマーAの合成)
500mlの三口フラスコに、エチレングリコールジアセテートを10mL入れ、80℃まで昇温し、その中に、ヒドロキシエチルアクリレート3.72g、2−シアノエチルアクリレート16.01g、V−601(和光純薬工業(株)製)0.3684g、およびエチレングリコールジアセテート10mLの混合液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を更に3時間撹拌した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.16g、U−600(日東化成製)0.32g、カレンズAOI(昭和電工製)9.6g、およびエチレングリコールジアセテート9.6gを加え、55℃で6時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、比較ポリマーA(重量平均分子量6万)を18g得た。
該比較ポリマーAは、特許文献1に記載のポリマーに該当し、カルボン酸基を有しない。
【0177】
[被めっき層の形成]
調製された被めっき層形成用組成物を実施例1と同様に塗布、乾燥、露光、および現像を行った。その結果、未露光部(未硬化部)の比較ポリマーAを除去することができず、パターンが目視で観察できなかった。そのため、上記配線間残渣除去性の評価などは実施できなかった。
【0178】
<比較例2>
上記実施例1で使用された特定ポリマーAの代わりに、後述の合成法で得られた比較ポリマーBを使用して、実施例1と同様の手法に従って、金属パターン材料の製造を行った。表1に、実施例1と同様の評価を行った結果をまとめて示す。
【0179】
(比較ポリマーBの合成)
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド10gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、下記モノマーA:12.4g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)4.03g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)5.76g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.40gのN,N−ジメチルアセトアミド7.4g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド37gを追加し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.1g、1,8−ジアザビシクロウンデセン53.3gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液52g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、比較ポリマーB(重量平均分子量2.8万)を14g得た。得られた比較ポリマーBの酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この比較ポリマーBの酸価は4.2mmol/gであった。表1に、実施例1と同様の評価を行った結果をまとめて示す。
なお、比較ポリマーBは、ユニットAを有しない。
【0180】
【化7】

【0181】
<比較例3>
現像液Aの代わりに、現像液B(1質量%NaOH水溶液)を用いた以外は比較例2と同様に金属パターン材料の製造を行った。
表1に、実施例1と同様の評価を行った結果をまとめて示す。
【0182】
<比較例4>
上記実施例1で使用された特定ポリマーAの代わりに、後述の合成法で得られた比較ポリマーCを使用して、実施例1と同様の手法に従って、金属パターン材料の製造を行った。表1に、実施例1と同様の評価を行った結果をまとめて示す。
【0183】
(比較ポリマーCの合成)
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド10gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、上記モノマーA:12.4g、メタクリロニトリル(東京化成工業(株)製)4.02g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)14.10g、V−65(和光純薬工業(株)製)0.40gのN,N−ジメチルアセトアミド7.4g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド37gを追加し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成工業(株)製)0.1g、1,8−ジアザビシクロウンデセン97.3gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液96g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、比較ポリマーC(重量平均分子量2.7万)を15g得た。得られた比較ポリマーCの酸価を、合成例1と同様の手法で測定したところ、この比較ポリマーCの酸価は7.1mmol/gであった。
なお、比較ポリマーCは、ユニットAを有しない。
【0184】
【表1】

【0185】
本発明の被めっき層形成用組成物を使用した場合、配線間残渣除去性に優れると共に、金属膜(めっき膜)と被めっき層との密着性(碁盤目剥離試験、耐湿熱性試験)にも優れていることが確認された。
ポリマーにユニットCまたはユニットDが含まれる場合(実施例2〜4)、配線間残渣除去性および密着性がより向上することが確認された。
また、実施例4に示すように、ユニットBのYがアミド基(−CONH−)であると、耐湿熱性試験においてより優れた密着を示すことが確認された。これは、エステル基などと比較して、アミド基の加水分解耐性がより優れているためと考えられる。
【0186】
一方、上述した比較例1で示されるように、特許文献1で使用されていたポリマーを使用した場合は、現像性が必ずしも十分でなかった。
また、特許文献2に記載のポリマーを使用した比較例2においては、現像処理によりパターンの形成は確認されたものの、配線間残渣除去性が不十分であり、配線間において顕著なめっき析出が確認された。また、耐湿熱性試験にも劣っていた。
さらに、特許文献2に記載のポリマーを使用し、高アルカリ性水溶液で現像した比較例3においては、配線間残渣除去性の改善は確認されたが、金属膜の密着性が低下してしまい、配線間残渣除去性と金属膜の密着性は両立しなかった。なお、金属膜の密着性が低下した原因としては、被めっき層が高アルカリ性水溶液によって、分解されたためと推測される。
また、特許文献2に記載のアクリル酸含率が高い高酸価ポリマーを使用した比較例4においては、耐湿熱性の悪化が見られ、配線間残渣除去性と金属膜の密着性は両立しなかった。なお、耐湿熱性の悪化した要因としては、被めっき層の吸水率が高まったことで加水分解が促進されたためと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)で表されるユニット、および、式(B)で表されるユニットを少なくとも有するポリマー、を含有する被めっき層形成用組成物。
【化1】

(式(A)中、R1は、水素原子、またはメチル基を表す。A1は、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、またはアセトキシ基を表す。
式(B)中、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、R2およびR3は、互いに連結して脂肪族環を形成していてもよい。R8は、水素原子、またはメチル基を表す。X1は、−O−、−NH−、または−NR10−を表す。R10は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、または、芳香族基を表す。Yは、単結合、または、二価の有機基を表す。L1は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、またはこれらを組み合わせた基を表す。)
【請求項2】
前記ポリマーが、さらに式(C)で表されるユニットを有する、請求項1に記載の被めっき層形成用組成物。
【化2】

(式(C)中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、R4およびR5は、互いに連結して脂肪族環を形成していてもよい。X2は、−O−、−NH−、または−NR11−を表す。R11は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、芳香族基、または−L2−W1基を表す。L2は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、またはこれらを組み合わせた基を表す。W1は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表す。)
【請求項3】
前記ポリマーが、さらに式(D)で表されるユニットを有する、請求項1または2に記載の被めっき層形成用組成物。
【化3】

(式(D)中、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、R6およびR7は、互いに連結して脂肪族環を形成していてもよい。)
【請求項4】
前記ポリマーの酸価が、3.0〜6.0mmol/gである、請求項1〜3のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項5】
式(A)中のA1がフェニル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項6】
式(C)中のW1が、シアノ基またはエーテル基である、請求項2〜5のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項7】
基板上に、請求項1〜6のいずれかに記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、前記被めっき層形成用組成物に対してパターン状にエネルギーを付与して、エネルギー付与領域の前記被めっき層形成用組成物を硬化させる工程と、
前記基板上の前記被めっき層形成用組成物のうちエネルギーの未付与領域を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、
前記パターン状の被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程と、
前記めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有する金属パターン材料の製造方法。
【請求項8】
前記基板がその表面上に、ラテックスからなる水分散樹脂組成物を塗布することにより形成された密着補助層を有する、請求項7に記載の金属パターン材料の製造方法。
【請求項9】
請求項8または9に記載の金属パターン材料の製造方法により得られる、金属パターン材料。
【請求項10】
式(A)で表されるユニット、式(B)で表されるユニット、および式(C)で表されるユニットを少なくとも有するポリマー。
【化3】

(式(A)中、R1は、水素原子、またはメチル基を表す。A1は、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、またはアセトキシ基を表す。
式(B)中、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、R2およびR3は、互いに連結して脂肪族環を形成していてもよい。R8は、水素原子、またはメチル基を表す。X1は、−O−、−NH−、または−NR10−を表す。R10は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、または、芳香族基を表す。Yは、単結合、または、二価の有機基を表す。L1は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、またはこれらを組み合わせた基を表す。
式(C)中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。なお、R4およびR5は、互いに連結して脂肪族環を形成していてもよい。X2は、−O−、−NH−、または−NR11−を表す。R11は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、芳香族基、または−L2−W1基を表す。L2は、直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、またはこれらを組み合わせた基を表す。W1は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表す。)

【公開番号】特開2012−57187(P2012−57187A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198674(P2010−198674)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】