説明

被めっき層形成用組成物、金属膜を有する積層体の製造方法

【課題】本発明は、多大なエネルギーを必要とせず製造が可能で、アルカリ溶液耐性に優れると共に、その上に形成される金属膜の密着性に優れる被めっき膜を得ることができる被めっき層形成用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】式(1)で表される化合物と、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する解離性官能基および重合性基を有するポリマーとを含む、被めっき層形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被めっき層形成用組成物、および、該組成物を使用した金属膜を有する積層体の製造方法に関する。
【0002】
従来から、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属パターン(金属膜)との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンを金属配線として使用する際、金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理する必要があるため、基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、基板上に基板と高密着性を有するポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、得られた金属膜をエッチングする方法が知られている(特許文献1)。該方法によれば、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−248464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術(特許文献1)より得られるパターン状の金属膜を有する積層体を製造する際、および、該積層体を配線基板などに応用する際には、種々の溶液に接触するため、優れた耐溶剤性、特に、アルカリ溶液耐性が要求される。
一方、従来技術で使用されていた被めっき層の場合、必ずしもその特性が十分とは言えなかった。例えば、無電解めっき時に、アルカリ性の脱脂液やアルカリ性の無電解めっき液を使用した場合、被めっき層が該液により損傷を受け、結果として金属膜の密着性が低下する場合や、金属膜(例えば、無電解めっき膜)の面状が低下する場合、または、該金属膜を使用した配線パターンの高精細性が損なわれる場合があった。
【0007】
また、近年、電子機器の小型化、高機能化の要求に対応するため、プリント配線板などの微細配線のより一層の高集積化が進んでいる。
それに伴って、より低エネルギーで生産性よく、基板に対する密着性がより優れる金属配線を製造することが求められている。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、多大なエネルギーを必要とせず製造が可能で、アルカリ溶液耐性に優れると共に、その上に形成される金属膜の密着性に優れる被めっき膜を得ることができる被めっき層形成用組成物、および、該組成物を用いて実施される金属膜を有する積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、所定の構造のアクリルアミドモノマーを使用することにより、上記課題を解決できることを見出した。つまり、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0010】
(1) 後述する式(1)で表される化合物と、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する解離性官能基および重合性基を有するポリマーとを含む、被めっき層形成用組成物。
(2) 前記化合物のlogPが−0.3以上である、(1)に記載の被めっき層形成用組成物。
【0011】
(3) 基板上に、請求項1または2に記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、前記基板上の前記被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、前記基板上に被めっき層を形成する層形成工程と、
前記被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、
前記めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対してめっき処理を行い、前記被めっき層上に金属膜を形成するめっき工程と、を備える金属膜を有する積層体の製造方法。
(4) (3)に記載の製造方法より得られる金属膜を有する積層体を含む配線基板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多大なエネルギーを必要とせず製造が可能で、アルカリ溶液耐性に優れると共に、その上に形成される金属膜の密着性に優れる被めっき膜を得ることができる被めっき層形成用組成物、および、該組成物を用いて実施される金属膜を有する積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)〜(D)は、それぞれ本発明の積層体およびパターン状金属膜を有する積層体の製造方法における各製造工程を順に示す基板から積層体までの模式的断面図である。
【図2】(A)〜(D)は、本発明の積層体のエッチング工程の一態様を順に示す模式的断面図である。
【図3】(A)〜(E)は、本発明の積層体のエッチング工程の他の態様を順に示す模式的断面図である。
【図4】(A)〜(H)は、多層配線基板の製造工程を順に示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の被めっき層形成用組成物、および、金属膜を有する積層体の製造方法について説明する。
まず、本発明の従来技術と比較した特徴点について詳述する。
本発明においては、式(1)で表される化合物(以後、適宜アクリルアミドモノマーとも称する)を使用している点が挙げられる。アクリルアミドモノマーを使用することにより、形成される被めっき層中の架橋密度が制御され、加水分解しにくいアミド基を持つ化合物により架橋構造が構成されるため耐溶剤性の向上が発揮されている。
つまり、該アクリルアミドモノマーと所定の官能基を有するポリマーとを併用することにより、従来困難であった、被めっき層のアルカリ溶液耐性と該被めっき層上に形成される金属層の密着性との両立を達成することができる。
【0015】
まず、本発明の被めっき層形成用組成物の構成成分(式(1)で表される化合物、ポリマーなど)について詳述し、その後該組成物を使用した金属膜を有する積層体の製造方法について詳述する。
【0016】
<式(1)で表される化合物>
本発明の被めっき層形成用組成物には、式(1)で表される化合物が含有される。
【0017】
【化1】

【0018】
式(1)中、R1は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜6が好ましく、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。なかでも、重合速度(架橋速度)の点で、R1は水素原子であることが好ましい。
【0019】
2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または、炭化水素基を表す。
炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。
【0020】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられ、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。なかでも、解離性官能基および重合性基を有するポリマーとの相溶性の点で、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
【0021】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。なかでも、解離性官能基および重合性基を有するポリマーとの相溶性の点で、炭素数6〜12が好ましく、炭素数6〜8がより好ましい。
【0022】
なお、R2とR3とが直接結合して環を形成してもよい。また、R2とR3とが酸素原子を介して環を形成していてもよい。環を形成する場合、解離性官能基および重合性基を有するポリマーとの相溶性の点で、R2とR3との合計炭素数は4〜10が好ましく、4〜6がより好ましい。
【0023】
該化合物の分子量は特に制限されないが、後述するポリマーとの相溶性や、溶液への溶解性の点から、70〜300が好ましく、70〜200がより好ましい。
【0024】
被めっき層形成用組成物中には、2種以上の該化合物が含まれていてもよい。
【0025】
(式(1)で表される化合物の好適態様)
式(1)で表される化合物の好適態様として、該化合物のlogPが‐0.3以上であることが挙げられる。logPが上記範囲であれば、めっき金属との密着性の点で好ましい。
なかでも、めっき金属との密着性点で、logPは−0.3〜3.0であることが好ましく、−0.2〜2.0であることがより好ましく、0.3〜1.0が特に好ましい。
【0026】
なお、logPは、分配係数P(Partition Coefficient)の常用対数を意味し、オクタノール相と水相との間での化学物質の分配の程度を表す指標であり、下記計算式1のように定義される。
【0027】
【数1】

【0028】
上記計算式1より、logPの値が高くなるほど、その化学物質は疎水性が高いことを意味し、logPの値が低くなるほど、その化学物質は親水性が高いことを意味する。例えば、logPの値が0以下の化学物質は、オクタノール相よりも水相に溶解し易く、また、logPの値が1の化学物質は、水相への溶解性に較べてオクタノール相に対して10倍の溶解性を持つといえる。
【0029】
多くの化合物のlogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)等から入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP”で計算すると最も便利である。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと伴に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。
本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合はChemDraw Pro Ver12.0に付属のプログラムにより計算したClogP値を用いた。
【0030】
<ポリマー>
本発明で使用されるポリマーは、重合性基、および、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する解離性官能基(以後、適宜相互作用性基)を有する。
以下、ポリマーに含まれる官能基や、その特性について詳述する。
【0031】
(重合性基)
重合性基は、エネルギー付与により、ポリマー同士、または、ポリマーと基板(または、後述する密着補助層)との間に化学結合を形成しうる官能基であり、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられる。なかでも、反応性の観点から、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、ビニル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられる。なかでも、メタクリル酸エステル基、アクリル酸エステル基、ビニル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好ましく、メタクリル酸エステル基、アクリル酸エステル基、スチリル基が特に好ましい。
【0032】
(相互作用性基)
上記ポリマーは、後述するめっき触媒またはその前駆体と相互作用する解離性官能基を有する。該基を有することにより、後述するめっき触媒またはその前駆体を効率よく吸着することができる。
解離性官能基は、例えば、水素イオンや、金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンなど)を解離する官能基である。具体的には、カルボキシル基、リン酸基などが挙げられる。
なかでも、極性が高く、めっき触媒またはその前駆体などへの吸着能が高いことから、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基、またはその塩などのイオン性解離性基(イオン性極性基)が好ましく、カルボキシル基がさらに好ましい。
相互作用性基としてのこれら官能基は、ポリマー中に2種以上が含まれていてもよい。
【0033】
ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、5000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは8000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、20000以上であることが好ましい。
また、ポリマーの重合度は特に制限されないが、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0034】
(好適態様1)
ポリマーの第1の好ましい態様として、下記式(a)で表される重合性基を有するユニット(以下、適宜重合性基ユニットとも称する)、および、下記式(b)で表される相互作用性基を有するユニット(以下、適宜相互作用性基ユニットとも称する)を含む共重合体が挙げられる。なお、ユニットとは繰り返し単位を意味する。
【0035】
【化2】

【0036】
上記式(a)および式(b)中、R1〜R5は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
1〜R5が、置換または無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基が挙げられる。また、置換アルキル基としては、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、またはフッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、R1としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
2としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
3としては、水素原子が好ましい。
4としては、水素原子が好ましい。
5としては、水素原子、メチル基、または、臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0037】
上記式(a)および式(b)中、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−SO2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
置換または無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、若しくはブチレン基、または、これらの基が、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、若しくはフッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換または無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、若しくはフッ素原子等で置換されたフェニレン基が好ましい。
【0038】
X、Y、およびZとしては、単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられ、より好ましくは単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)である。
【0039】
上記式(a)および式(b)中、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義としては、上述したX、Y、およびZで述べた二価の有機基と同義である。
1としては、脂肪族炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基)が好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0040】
また、L2は、単結合、または、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L2は、単結合、または、総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、L2の総炭素数とは、L2で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、およびこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0041】
上記式(b)中、Wは、めっき触媒または前駆体と相互作用する解離性官能基を表す。該官能基の定義は、上述の定義と同じである。
【0042】
上記式(a)で表される重合性基ユニットの好適態様としては、下記式(c)で表されるユニットが挙げられる。
【0043】
【化3】

【0044】
式(c)中、R1、R2、ZおよびL1は、式(a)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Aは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0045】
式(c)で表されるユニットの好適態様として、式(d)で表されるユニットが挙げられる。
【0046】
【化4】

【0047】
式(d)中、R1、R2、およびL1は、式(a)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。AおよびTは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0048】
上記式(d)において、Tは、酸素原子であることが好ましい。
また、上記式(c)および式(d)において、L1は、無置換のアルキレン基が好ましい。
【0049】
また、式(b)で表される相互作用性基ユニットの好適態様としては、下記式(e)または式(f)で表されるユニットが挙げられる。
【0050】
【化5】

【0051】
上記式(e)中、W、R5およびL2は、式(b)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Qは、酸素原子、またはNR’(R’は、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
また、式(e)におけるL2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、または、これらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(e)においては、L2中の相互作用性基との連結部位が、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(e)におけるL2中の相互作用性基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0052】
式(f)中、W、およびR5は、式(b)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。
【0053】
上記重合性基ユニットは、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜50モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜40モル%である。5モル%未満では反応性(硬化性、重合性)が落ちる場合があり、50モル%超では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、上記相互作用性基ユニットは、めっき触媒またはその前駆体に対する吸着性の観点から、ポリマー中の全ユニットに対して、5〜95モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜85モル%である。
【0054】
(その他のユニット)
上記ポリマーは、重合性基および相互作用性基以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の官能基を有していてもよい。例えば、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する非解離性官能基が挙げられる。
非解離性官能基とは、例えば、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレア基、3級のアミノ基、アンモニウム基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基;エーテル基、フェノール性水酸基、カーボネート基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基;チオフェン基、チオール基、チオウレア基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基;ホスフォロアミド基、ホスフィン基、リン酸エステル構造を含む基などの含リン官能基;塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基などが挙げられ、塩構造をとりうる官能基においてはそれらの塩も使用することができる。
なかでも、めっき触媒またはその前駆体などへの吸着能が高いことから、エーテル基、またはシアノ基に好ましい。
【0055】
なお、上記エーテル基としては、以下の式(X)で表されるポリオキシアルキレン基が好ましい。
式(X) *−(YO)n−Rc
式(X)中、Yはアルキレン基を表し、Rcはアルキル基を表す。nは1〜30の数を表す。*は結合位置を表す。
アルキレン基としては、炭素数1〜3が好ましく、具体的には、エチレン基、プロピレン基が好ましく挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜10が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基が好ましく挙げられる。
nは1〜30の数を表し、好ましくは3〜23である。なお、nは平均値を表し、該数値は公知の方法(NMR)などによって測定できる。
【0056】
なお、上記ポリマーは、以下式(g)で表される非解離性官能基を有するユニットを含んでいてもよい。
【0057】
【化6】

【0058】
式(g)中、R6は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基の定義は、上述したR1〜R5で表されるアルキル基と同義である。
式(g)中、Uは、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述したX、YおよびZで表される二価の有機基と同義である。
式(g)中、L3は、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述したL1およびL2で表される二価の有機基と同義である。
式(g)中、Vは、非解離性官能基を表す。
【0059】
式(g)で表されるユニットがポリマー中に含まれる場合、めっき触媒などの吸着性の点から、その含有量は、ポリマー中の全ユニットに対して、10〜70モル%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20〜60モル%であり、特に好ましくは25〜50モル%である。
【0060】
上記ポリマーの具体例としては、ラジカル重合性基とめっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基とを有するポリマーとしては、特開2009−007540号公報の段落[0106]〜[0112]に記載のポリマーが使用できる。また、ラジカル重合性基とイオン性極性基とを有するポリマーとしては、特開2006−135271号公報の段落[0065]〜[0070]に記載のポリマーが使用できる。ラジカル重合性基と、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基と、イオン性極性基とを有するポリマーとしては、US2010−080964号の段落[0030]〜[0108]に記載のポリマーが使用できる。
【0061】
(ポリマーの合成方法)
上記ポリマーの合成方法は特に限定されず、使用されるモノマーも市販品または公知の合成方法を組み合わせて合成したものであってもよい。例えば、特許公開2009−7662号の段落[0120]〜[0164]に記載の方法などを参照して、上記ポリマーを合成することができる。
【0062】
<被めっき層形成用組成物中の他の任意成分>
(溶剤)
被めっき層形成用組成物には、必要に応じて、溶剤が含まれていてもよい。
使用できる溶剤は特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1‐メトキシ‐2‐プロパノールなどのアルコール系溶剤、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
この中でも、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、1‐メトキシ‐2‐プロパノールが好ましい。
【0063】
(重合開始剤)
本発明の被めっき層形成用組成物には、重合開始剤が含まれていてもよい。重合開始剤が含まれることにより、ポリマー間、ポリマーと基板との間、および、ポリマーと式(1)で表される化合物との間の結合がより形成され、結果として密着性により優れた金属膜を得ることができる。
使用される重合開始剤としては特に制限はなく、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤)、更には、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマー(重合開始ポリマー)などを用いることができる。
【0064】
(モノマー)
本発明の被めっき層形成用組成物には、上記式(1)で表される化合物以外の他のモノマーが含まれていてもよい。該モノマーが含まれることにより、被めっき層中の架橋密度などを適宜制御することができる。
使用されるモノマーは特に制限されず、例えば、付加重合性を有する化合物としてはエチレン性不飽和結合を有する化合物、開環重合性を有する化合物としてはエポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
【0065】
具体的には、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類が挙げられ、アクリロイル基、メタクリロイル基、エタクリロイル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基等を含む化合物が例示される。
また、反応性に影響を与える架橋反応中の分子の運動性の観点から、用いるモノマーの分子量としては70〜1000が好ましく、更に好ましくは100〜700である。
【0066】
(その他添加剤)
本発明の被めっき層形成用組成物には、他の添加剤(例えば、増感剤、硬化剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、フィラー、粒子、難燃剤、界面活性剤、滑剤、可塑剤など)を必要に応じて添加してもよい。
【0067】
<被めっき層形成用組成物>
本発明の被めっき層形成用組成物には、上記式(1)で表される化合物、および、上記重合性基を有するポリマーが含まれる。
被めっき層形成用組成物中の式(1)で表される化合物の含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、1〜80質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、得られる金属膜の密着性により優れる。
【0068】
被めっき層形成用組成物中のポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、10〜99質量%が好ましく、20〜85質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、被めっき層の層厚の制御がしやすい。
【0069】
被めっき層形成用組成物中における、式(1)で表される化合物の質量(質量A)と、該化合物の質量Aおよびポリマーの質量(質量B)の合計量との質量比{質量A/(質量A+質量B)}は特に制限されないが、架橋密度を適度に制御する点で、0.02〜0.50であることが好ましく、0.05〜0.30であることがより好ましい。
【0070】
被めっき層形成用組成物中に溶剤が含まれる場合、溶剤の含有量は組成物全量に対して、50〜99質量%が好ましく、70〜97質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、被めっき層の層厚の制御などがしやすい。
【0071】
被めっき層形成用組成物中に重合開始剤が含まれる場合、重合開始剤の含有量は組成物全量に対して、0.01〜1質量%であることが好ましく、0.1〜0.5質量%であることがより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、得られる金属膜の密着性により優れる。
【0072】
被めっき層形成用組成物中に式(1)で表される化合物以外の他のモノマー(特に、多官能モノマー)が含まれる場合、その含有量は組成物全量に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、得られる金属膜の密着性により優れる。
【0073】
<金属膜を有する積層体の製造方法>
上述した被めっき層形成用組成物を使用することにより、金属膜を有する積層体を製造することができる。その製造方法は、主に、以下の3つの工程を備える。
(被めっき層形成工程)基板上に、上記被めっき層形成用組成物を接触させた後、基板上の被めっき層形成用組成物にエネルギーを付与して、基板上に被めっき層を形成する工程
(触媒付与工程)被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程
(めっき工程)めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対してめっき処理を行い、被めっき層上に金属膜を形成する工程
以下に、各工程で使用する材料、および、その操作方法について詳述する。
【0074】
<被めっき層形成工程>
被めっき層形成工程は、基板上に、上記被めっき層形成用組成物を接触させた後、基板上の被めっき層形成用組成物にエネルギーを付与して、基板上に被めっき層を形成する工程である。
該工程によって形成される被めっき層は、ポリマー中に含まれる相互作用性基の機能に応じて、後述する触媒付与工程でめっき触媒またはその前駆体を吸着(付着)する。つまり、被めっき層は、めっき触媒またはその前駆体の良好な受容層として機能する。また、重合性基は、ポリマー同士の結合や、基板(または、後述する密着補助層)との化学結合に利用される。その結果、被めっき層の表面に形成される金属膜(めっき膜)と、基板との間に優れた密着性が発現する。また、式(1)で表される化合物がポリマーと化学結合することによって、被めっき層の耐アルカリ溶液性が向上する。
より具体的には、該工程において、図1(A)に示されるように基板10を用意し、図1(B)に示すように基板10の上部に被めっき層12が形成される。なお、後述するように基板10はその表面に密着補助層を有してしてもよく、その場合、被めっき層12は密着補助層上に形成される。
まず、本工程で使用される材料(基板、密着補助層など)について詳述し、その後該工程の手順について詳述する。
【0075】
(基板)
本発明に用いる基板としては、従来知られているいずれの基板(例えば、絶縁性基板)も使用することができ、後述する処理条件に耐えることのできるものが好ましい。また、その表面が、後述するポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体がエネルギー付与(例えば、露光)によりポリマーと化学結合を形成しうるものであるか、または、基板上に、エネルギー付与により被めっき層と化学結合を形成しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)が設けられていてもよい。
【0076】
基板の材料は特に制限されないが、例えば、高分子材料、金属材料(例えば、金属合金、金属含有材料、純粋金属、またはこれらに類似したもの)、その他の材料(例えば、紙、プラスチックがラミネートされた紙)、これらの組み合わせ、またはこれらに類似したものなどの様々な材料から形成することができる。
【0077】
高分子材料としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などを使用することができ、従来公知の汎用プラスチックまたはエンジニアリングプラスチックを使用することができる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂、等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリ乳酸、シクロオレフィンコポリマー(COP)、液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。
【0078】
金属材料の具体例としては、アルミニウム、亜鉛、銅等の混合物、合金、及びこれらのアロイ等から適宜選択される。
【0079】
また、原紙(非塗工紙)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、バライタ紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂、エマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙、セルロースエステル、アセチルセルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリオレフィンコート紙(特にポリエチレンで両側を被覆した紙)等の塗工紙も使用できる。合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等の合成紙)や布等も用いることができる。
【0080】
また、基板は、その内部、または、片面若しくは両面に金属配線を有していてもよい。金属配線は、基板の表面に対してパターン状に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。代表的には、エッチング処理を利用したサブストラクティブ法で形成されたものや、電解めっきを利用したセミアディティブ法で形成したものが挙げられ、いずれの工法で形成されたものを用いてもよい。
金属配線を構成する材料としては、例えば、銅、銀、錫、パラジウム、金、ニッケル、クロム、タングステン、インジウム、亜鉛、またはガリウムなどが挙げられる。
このような金属配線を有する基板としては、例えば、両面または片面の銅張積層板(CCL)や、この銅張積層板の銅膜をパターン状にしたもの等が用いられ、これらはフレキシブル基板であってもよいし、リジット基板であってもよい。
例えば、その表面に金属配線層と絶縁層とこの順で有する絶縁性基板を本発明の基板として用いてもよい。また、その場合、金属配線層と絶縁層とはそれぞれが交互に2層以上積層していてもよい。
【0081】
また、本発明の積層体は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、絶縁性樹脂の層(絶縁性樹脂層)を表面に有する基板(絶縁性基板)を用いることが好ましい。
なお、絶縁性樹脂としては、公知の材料を使用することができる。
さらに、例えば、その表面に金属配線層と絶縁層とこの順で有する絶縁性基板を本発明の基板として用いてもよい。また、その場合、金属配線層と絶縁層とはそれぞれが交互に2層以上積層していてもよい。
【0082】
(密着補助層)
密着補助層は、上記基板表面上に設けられていてもよい任意の層であり、基板と後述する被めっき層との密着性を補助する役割を果たす。密着補助層は、上記ポリマーにエネルギー付与(例えば、露光)がされた際に、ポリマーと化学結合を生じるものが好ましい。また、密着補助層には、重合開始剤が含まれていてもよい。
【0083】
密着補助層の厚みは、基板の表面平滑性などにより適宜選択する必要があるが、一般的には、0.01〜100μmが好ましく、0.05〜20μmがより好ましく、特に0.05〜10μmが好ましい。
また、密着補助層の表面平滑性は、形成される金属膜の物性を向上させる観点から、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzが3μm以下であるものが好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。
【0084】
密着補助層の材料は特に制限されず、基板との密着性が良好な樹脂であることが好ましい。基板が電気的絶縁性の樹脂で構成される場合、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近い樹脂を使用することが好ましい。具体的には、例えば、基板を構成する絶縁性樹脂と同じ種類の絶縁性樹脂を使用することが密着の点で好ましい。
【0085】
なお、本発明において、密着補助層に使用される絶縁性樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよい。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、シアノ基を含有する樹脂を使用してもよく、具体的には、ABS樹脂や、特開2010−84196号〔0039〕〜〔0063〕記載の「側鎖にシアノ基を有するユニットを含むポリマー」を用いてもよい。
【0086】
密着補助層の形成方法は特に制限されず、使用される樹脂を基板上にラミネートする方法や、必要な成分を溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基板表面上に塗布・乾燥する方法などが挙げられる。
【0087】
(被めっき層形成工程の手順)
上述した被めっき層形成用組成物を基板上(または密着補助層上)に接触させる方法は特に限定されず、被めっき層形成用組成物を直接基板上にラミネートする方法や、被めっき層形成用組成物が溶剤を含む液状である場合、組成物を基板上に塗布する方法などが挙げられる。得られる被めっき層の厚みを制御しやすい点から、組成物を基板上に塗布する方法が好ましい。
塗布の方法は特に制限されず、具体的な方法としては、ダブルロールコータ、スリットコータ、エアナイフコータ、ワイヤーバーコータ、スライドホッパー、カーテンコータ、ダイコータ、スピンコータ、ディップコータ、スクリーン印刷、グラビアロールによる塗工法、押し出し塗布法、マイクロコンタクト印刷、ロール塗布法等の公知の方法を用いることができる。
取り扱い性や製造効率の観点からは、被めっき層形成用組成物を基板(または密着補助層)上に塗布・乾燥させて、含まれる溶剤を除去し、ポリマーを含む組成物層を形成する態様が好ましい。
【0088】
被めっき層形成用組成物を基板と接触させる場合、その塗布量は、後述するめっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で0.01g/m2〜10g/m2が好ましく、特に0.1g/m2〜5g/m2が好ましい。
なお、本工程において被めっき層を形成するに際しては、塗布と乾燥との間に、20〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0089】
(エネルギーの付与)
基板上の被めっき層形成用組成物にエネルギー付与方法は特に制限されないが、例えば、光(紫外線、可視光線、X線など)、プラズマ(酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、熱、電気、湿気硬化、化学硬化(例えば、酸化性の液体(過マンガン酸カリウム溶液)などによって表面を化学的に分解する)などの公知の方法を用いることができる。特に、露光処理または加熱処理が好ましい。
また、エネルギー付与の雰囲気は特に制限されず、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスによる置換を行い、酸素濃度を600ppm以下、好ましくは400ppm以下に抑制した雰囲気で実施してもよい。
【0090】
露光の場合には、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、Deep−UV光、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、可視光線などによる光照射等、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光、赤外線ランプ露光等があり、オゾン発生の少ないオゾンレスタイプもある。他に、放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用することができる。なかでも、250nm〜450nmの露光波長で露光することが好ましい。
露光エネルギーとしては、10〜8000mJ/cm2程度であればよく、好ましくは100〜6000mJ/cm2の範囲であり、特に好ましくは2000mJ/cm2超5000mJ/cm2以下の範囲である。
【0091】
熱によって硬化する場合は、一般の熱ヒートローラー、ラミネーター、ホットスタンプ、電熱板、サーマルヘッド、レーザー、送風乾燥機、オーブン、ホットプレート、赤外線乾燥機、加熱ドラム等を用いることができる。
【0092】
得られる被めっき層の厚みは特に制限されないが、金属膜の基板への密着性の点から、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましい。
また、乾燥膜厚で0.01〜20g/m2が好ましく、特に0.05〜6g/m2が好ましい。
さらに、被めっき層の表面粗さ(Ra)は、配線形状および密着強度の点から、0.001〜0.3μmが好ましく、0.01〜0.15μmがより好ましい。なお、表面粗さ(Ra)は、非接触式干渉法により、JIS B 0601(20010120改訂)に記載のRaに基づき、サーフコム3000A(東京精密(株)製)を用いて測定した。
【0093】
なお、被めっき層中におけるポリマーの含有量は、被めっき層全量に対して、2質量%〜99質量%であることが好ましく、更に好ましくは10質量%〜85質量%の範囲である。
【0094】
また、エネルギー付与を行う際に、パターン状にエネルギー付与を行い、その後公知の現像処理によりエネルギー未照射部を除去して、パターン状の被めっき層を形成してもよい。
【0095】
<触媒付与工程>
触媒付与工程では、上記層形成工程で得られた被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する。
本工程においては、ポリマー由来の相互作用性基がその機能に応じて、付与されためっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。より具体的には、被めっき層中、および被めっき層表面上に、めっき触媒またはその前駆体を付与する。
ここで、めっき触媒またはその前駆体としては、後述するめっき工程における、めっき処理の触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒またはその前駆体は、めっき工程におけるめっき処理の種類により決定されるが、無電解めっき触媒またはその前駆体であることが好ましい。
まず、本工程で使用される材料(無電解めっき触媒またはその前駆体など)について詳述し、その後該工程の手順について詳述する。
【0096】
(無電解めっき触媒)
本工程において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられる。具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤または保護剤により調節することができる。
【0097】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0098】
無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層に付与することが好ましい。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数および触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
【0099】
本発明で用いられる無電解めっき触媒またはその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)またはその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0100】
また、無電解めっき触媒またはその前駆体としては、銀、または銀イオンが好ましい別の例として挙げられる。
銀イオンを用いる場合、以下に示すような銀化合物が解離したものを好適に用いることができる。銀化合物の具体例としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀が挙げられる。この中でも、水溶性の観点から硝酸銀が好ましい。
【0101】
(めっき触媒液)
上記のようなめっき触媒またはその前駆体は、前述のように、分散液や溶液(めっき触媒液)として被めっき層に付与されることが好ましい。
分散液や溶液には、有機溶剤や水が用いられる。有機溶剤を含有することで、被めっき層に対するめっき触媒またはその前駆体の浸透性が向上し、相互作用性基に効率よくめっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
【0102】
分散液や溶液の調製に用いられる有機溶剤としては、被めっき層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0103】
(触媒付与工程の手順)
めっき触媒またはその前駆体を被めっき層に付与する方法は、特に制限されない。
例えば、金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液若しくは溶液(めっき触媒液)を被めっき層上に塗布する方法、または、その分散液若しくは溶液中に被めっき層が形成された基板を浸漬する方法などが挙げられる。
被めっき層とめっき触媒液の接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
接触時のめっき触媒液の温度は、10〜60℃程度であることが好ましく、10〜40℃程度であることがより好ましい。
【0104】
被めっき層のめっき触媒またはその前駆体の吸着量に関しては、使用するめっき浴種、触媒金属種、被めっき層の相互作用性基種、使用方法等により異なるが、めっきの析出性の観点から、5〜1000mg/m2が好ましく、10〜800mg/m2がより好ましく、特に15〜600mg/m2が好ましい。
【0105】
<めっき工程>
めっき工程は、触媒付与工程で得られためっき触媒またはその前駆体が吸着した被めっき層に対してめっき処理を行い、被めっき層上に金属膜を形成する工程である。より具体的には、図1(C)に示すように、本工程においては、金属膜14が、被めっき層12上に形成され、積層体16が得られる。
本工程において行われるめっき処理の種類は、無電解めっき、電解めっき等が挙げられ、上記工程において、被めっき層との間に相互作用を形成しためっき触媒またはその前駆体の機能によって、選択することができる。
なかでも、被めっき層中に発現するハイブリッド構造の形成性および金属膜の密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚の金属膜14を得るために、無電解めっきの後に、更に電解めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0106】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては、公知の無電解めっき浴を使用することができる。なお、無電解めっき浴としては、入手のしやすさの点から、アルカリ性の無電解めっき浴(pHが9〜14程度が好ましい)を使用する場合が好ましい。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着または含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬させる。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、公知の無電解めっき浴を使用することができる。
【0107】
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、液全体に対する該還元剤の濃度が0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
浸漬の際には、無電解めっき触媒またはその前駆体が接触する被めっき層表面付近の無電解めっき触媒またはその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌または揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0108】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤(例えば、水)の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0109】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0110】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、例えば、銅、すず、鉛、ニッケル、金、銀、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物が選択される。
【0111】
このようにして形成される無電解めっきによる金属膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、または、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2〜2μmであることがより好ましい。
ただし、無電解めっきによる金属膜を導通層として、後述する電解めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の膜が均一に付与されていることが好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0112】
(電解めっき(電気めっき))
本工程おいては、上記工程において付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対して、電解めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成された金属膜を電極とし、更に、電解めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電解めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0113】
電解めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電解めっきに用いられる金属としては、例えば、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0114】
また、電解めっきにより得られる金属膜の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、一般的な電気配線などに適用する場合、金属膜の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
【0115】
<積層体>
上記工程を経ることにより、図1(C)に示すように、基板10と、被めっき層12と、金属膜14とをこの順で備える積層体16(金属膜付き積層体)を得ることができる。
得られた積層体16は、様々な分野において使用することができ、例えば、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用することができる。
より具体的には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務機器、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、2層CCL(Copper Clad Laminate)材料、電気配線用材料、多層配線基板、マザーボード、アンテナ、電磁波防止膜、時計等の電気・電子部品、および、通信機器等の用途に用いられる。
【0116】
特に、金属膜と被めっき層の界面における平滑性が改良されたことから、例えば、装飾品(めがねフレーム、自動車装飾品、宝飾品、遊戯筐体、洋食器、水道金具、照明器具等)や、高周伝送を確保する必要がある用途(例えば、配線基板用、プリント配線基板用)等の種々の用途に適用することができる。
【0117】
<任意工程:パターン形成工程>
必要に応じて、上記で得られた積層体に対して、金属膜をパターン状にエッチングして、パターン状金属膜を形成する工程を実施してもよい。
より具体的には、図1(D)に示すように、本工程においては、金属膜14の不要部を除去することにより、パターン状の金属膜18が、被めっき層12上に形成される。本工程において、基板表面全体に形成された金属膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望のパターン状の金属膜を生成することができる。
このパターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法(金属膜上にパターン状のマスクを設け、マスクの非形成領域をエッチング処理した後、マスクを除去して、パターン状の金属膜を形成する方法)、セミアディティブ法(金属膜上にパターン状のマスクを設け、マスクの非形成領域に金属膜を形成するようにめっき処理を行い、マスクを除去し、エッチング処理して、パターン状の金属膜を形成する方法)が用いられる。
【0118】
サブトラクティブ法とは、具体的には、形成された金属膜上にレジスト層を設けパターン露光、現像により金属膜パターン部と同じパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしてエッチング液で金属膜を除去し、パターン状の金属膜を形成する方法である。
レジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などの簡便性の点で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0119】
より具体的に、図2にサブトラクティブ法を用いたエッチング工程の態様を示す。
まず、上記めっき工程を行うことにより、図2(A)に示す、基板10と、金属配線20と、絶縁性樹脂層22と、密着補助層24と、被めっき層12と、金属膜14とを備える積層体を用意する。なお、図2(A)においては、基板10表面上およびその内部に、金属配線20を備えている。絶縁性樹脂層22、密着補助層24、金属配線20は、必要に応じて追加される構成部材である。また、図2(A)においては、基板10の片面に金属膜14が設けられているが、両面にあってもよい。
次に、図2(B)に示すように、パターン状のマスク26を金属膜14上に設ける。
その後、図2(C)に示すように、マスクが設けられていない領域の金属膜14を、エッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)により除去して、パターン状の金属膜18を得る。最後に、マスク26を取り除き、本発明の積層体を得る(図2(D)参照)。
【0120】
セミアディティブ法とは、具体的には、形成された金属膜上にレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属膜パターン部と同じパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして電解めっきを行い、レジストパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、金属膜をパターン状に除去することで、パターン状の金属膜を形成する方法である。
レジスト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電解めっき手法としては上記記載の手法が使用できる。
【0121】
より具体的に、図3にセミアディティブ法を用いたエッチング工程の態様を示す。
まず、図3(A)に示す、基板10と、金属配線20と、絶縁性樹脂層22と、密着補助層24と、被めっき層12と、金属膜14とを備える積層体を用意する。
次に、図3(B)に示すように、パターン状のマスク26を金属膜14上に設ける。
次に、図3(C)に示すように、電解めっきを行い、マスク26が設けられていない領域に金属膜を形成させ、金属膜14bを得る。
その後、図3(D)に示すように、マスク26を取り除き、エッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)を行い、図3(E)に示すようにパターン状の金属膜18を備える積層体を得る。
【0122】
なお、金属膜の除去と同時に、公知の手段(例えば、ドライエッチング)などによって、被めっき層を合わせて除去してもよい。
【0123】
さらに、セミアディティブ法によりエッチング工程を実施する場合は、図4に示すように多層配線基板を得るために該工程を実施してもよい。
図4(A)に示すように、まず、基板10と、金属配線20と、絶縁性樹脂層22と、密着補助層24と、被めっき層12と、金属膜14とを備える積層体を用意する。
次に、図4(B)に示すように、レーザー加工またはドリル加工により、金属膜14、被めっき層12、密着補助層24、絶縁性樹脂層22を貫通し、金属配線20に達するようにビアホールを形成する。必要に応じて、その後デスミア処理を行う。
さらに、図4(C)に示すように、形成されたビアホール壁面に対して、めっき触媒を付与して、無電解めっきおよび/または電解めっきを行い、金属配線20と接触する金属膜28を得る。
さらに、図4(D)に示すように、所定のパターン状のマスク26を金属膜28上に設け、電解めっきを行い、金属膜30を得る(図4(E)参照)。
その後、マスク26を除去した後(図4(F)参照)、エッチング処理(例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング)を行い、パターン状の金属膜32を得る(図4(G)参照)。その後、必要に応じて、プラズマ処理などによって、被めっき層12および密着補助層24を除去してもよい(図4(H)参照)。
【0124】
上記で得られたパターン状金属膜を有する積層体は、各種用途に使用することができる。なかでも、配線基板として好適に利用できる。また、配線基板と使用する際には、必要に応じて、積層体上に絶縁層を設けてもよい。
本発明の積層体と絶縁層とを含む配線基板は、平滑な基板との密着性に優れた配線が形成でき、高周波特性も良好であるとともに、微細な高密度配線であっても、配線間の絶縁信頼性に優れる。
絶縁層としては公知の材料を使用することができ、例えば、公知の層間絶縁膜、ソルダーレジストなどが挙げられる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
(合成例1:ポリマー1)
2Lの三口フラスコに酢酸エチル1L、2−アミノエタノール159gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ、2−ブロモイソ酪酸ブロミド150gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加して反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去することで原料Aを80g得た。
次に、500mLの三口フラスコに、原料A47.4g、ピリジン22g、酢酸エチル150mLを入れて氷浴にて冷却した。そこへ、アクリル酸クロライド25gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、室温に上げて3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加し、反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去した。その後、カラムクロマトグラフィーにて、以下のモノマーM1を精製し20g得た。
【0127】
【化7】

【0128】
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド8gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、モノマーM1:14.3g、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製)3.0g、アクリル酸(東京化成製)6.5g、V−65(和光純薬製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド8g溶液を、4時間かけて滴下した。
滴下終了後、更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド41gを追加し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.09g、DBU54.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応溶液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54gを加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマー1を12.5g得た。
【0129】
得られたポリマー1の同定をIR測定機((株)堀場製作所製)を用いて行った。測定はポリマーをアセトンに溶解させKBr結晶を用いて行った。IR測定の結果、2240cm-1付近にピークが観測されニトリルユニットであるアクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが8.1−7.8ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、5.4−5.2ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.5−3.3ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=30:21:49(mol%)であることが分かった。
【0130】
【化8】

【0131】
(合成例2:ポリマー2)
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド22gを入れ、窒素気流下、60℃まで加熱した。そこへ、上記で得たモノマーM1:29.6g、アクリル酸(東京化成製)15g、V−65(和光純薬製)0.59gのN,N−ジメチルアセトアミド38g溶液を、6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド37gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.18g、DBU118gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応溶液に70質量%メタンスルホン酸水溶液116gを加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、以下の構造式のポリマー2(重量平均分子量4.2万)を20g得た。得られたポリマー2の酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、および、滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、このポリマー2の酸価は5.7mmol/gであった。
【0132】
【化9】

【0133】
得られたポリマー2をアセトンに溶解させ、IR測定機((株)堀場製作所製)にてKBr結晶を用いて測定を行った。IR測定の結果、2240cm-1付近にピークが観測されず、シアノ基がポリマー2に含まれていないことが分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとして、アクリル酸が導入されている事が分かった。更に、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。重合性基含有ユニットに相当するピークが7.8−8.1ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、5.4−5.2ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.3−3.5ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸基ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=33:67(mol比)であることが分かった。
【0134】
<被めっき層形成用組成物の調製>
マグネチックスターラーを入れた100mlビーカーに、水、プロピレングリコールモノメチルエーテル、各種アクリルアミドモノマー、ポリマー1〜2、IRGACURE2959(CIBA)を表1に従って加え、調液し、組成物1〜9、および、比較組成物1〜6を得た。
なお、以下、各成分の含有量は、組成物全量に対する質量%として表示される。また、表1中、「開始剤」はIRGACURE2959(CIBA)を意味する。
【0135】
【表1】

【0136】
【化10】

【0137】
<実施例1〜10、および、比較例1〜6>
〔被めっき層の作製〕
FR−4基板(日立化成、ガラスエポキシ樹脂基板)上にGX−13(味の素ファインテクノ)を真空ラミネートした基板表面を、5%の水酸化ナトリウム溶液にて60℃で5分間処理した。
【0138】
その後、以下の(露光工程)または(加熱工程)の手順に従って、被めっき層を得た。
(露光工程)
表1に示した被めっき層形成用組成物を、GX−13がラミネートされた基板表面上にそれぞれ滴下し、3000rpmにて20秒スピンコートした。溶剤を揮発させるために、150℃のオーブンにて15分間乾燥させた。その後、基板を真空下にてUV照射(波長:254nm)し、被めっき層の硬化を行った。得られた被めっき層の厚みは150nmであった。
なお、UV照射の露光量(J/cm2)は、後述する表2のように、使用する組成物に応じて調整した。
(加熱工程)
表1に示した被めっき層形成用組成物を、GX−13がラミネートされた基板表面上にそれぞれ滴下し、3000rpmにて20秒スピンコートした。その後、基板を150℃にて15分間および180℃にて60分間加熱処理し、被めっき層の硬化を行った。得られた被めっき層の厚みは140nmであった。
【0139】
[触媒の付与、および、無電解めっき]
得られた被めっき層付き基板をクリーナーコンディショナー液ACL−009(上村工業)に50℃にて5分間浸漬し、純水にて2回洗浄した。その後、Pd触媒付与液MAT−2(上村工業)に30℃にて5分間浸漬し、純水にて2回洗浄した。
次に、上記処理が施された基板を還元剤MAB(上村工業)に36℃にて5分間浸漬し、純水にて2回洗浄した。その後、活性化処理液MEL−3(上村工業)に室温にて5分間浸漬し、洗浄することなく無電解めっき液スルカップPEA(上村工業)に室温にてそれぞれ30分浸漬した。得られた金属膜(無電解めっき膜)の厚みは、約0.8μmであった。
【0140】
[電解めっき]
電解めっき液として、水1283g、硫酸銅5水和物135g、98%濃硫酸342g、36%濃塩酸0.25g、ET−901M(ロームアンドハース)39.6gの混合溶液を用い、ホルダーを取り付けた基板と銅板を電源に接続し、3A/dm2にて45分間電解銅めっき処理を行い、約21μmの銅めっき膜(金属膜)を得た。
【0141】
<評価>
(ピール強度測定)
実施例1〜10および比較例1〜6で得られた金属膜を有する積層体を100℃にて30分加熱後、さらに180℃にて1時間加熱した。得られたサンプルに10mmの間隔を開けて、平行に130mmの切り込みを入れ、その端部をカッターにて切り込みを入れ10mm立ち上げた。剥がした端部をつかんでオートグラフ(SHIMAZU)を用いて金属膜のピール強度を測定した(引張速度50mm/min)。結果を表2に示す。
【0142】
(アルカリ溶液耐性)
アルカリ溶液として、NaOH(40g)と、クリーナーセキュリガント902(アトテック製)(40mL)と、クリーナーアディティブ902(アトテック製)(3mL)とを混合して、さらに液量1Lになるように水を加えて、アルカリ水溶液を作製した。
実施例1〜10および比較例1〜6における上記〔被めっき層の作製〕で得られた被めっき層付き基板を、上記アルカリ溶液中に60℃で20分間浸漬した。
浸漬前後における被めっき層の厚みを測定し、以下の基準に従って評価した。なお、以下の厚み比は(浸漬後の被めっき層の厚み/浸漬前の被めっき層の厚み)によって求められる。実用上、「◎」「○」であることが好ましい。結果を表2に示す。
「◎」:厚み比が0.8以上であった場合
「○」:厚み比が0.6以上0.8未満であった場合
「△」:厚み比が0.3以上0.6未満であった場合
「×」:厚み比が0.3未満であった場合
【0143】
上記浸漬後の被めっき層の厚み、および、浸漬前の被めっき層の厚みは、断面のSEM(走査型電子顕微鏡)観察によって、被めっき層の任意の場所を10か所以上測定し、それらを平均して得られる平均値である。
【0144】
(アルカリ溶液耐性後の無電解めっき)
実施例1〜10および比較例1〜6における上記無電解めっき条件のうち「クリーナーコンディショナー液ACL−009(上村工業)に50℃にて5分間浸漬」を上記(アルカリ溶液耐性)の試験条件に変更し、無電解めっきを行った。以下の評価基準に従って、得られた無電解めっき膜の面状を目視で判断した。実用上、「○」であることが好ましい。結果を表2に示す。なお、ムラとは、めっき膜の厚みが異なり色の異なる部分を意味する。
「○」:めっきが均一である場合
「△」:めっきの一部にムラがある場合
「×」:めっきの大部分にムラがある場合
【0145】
【表2】

【0146】
上記表2で表されるように、本発明の被めっき層形成用組成物に該当する組成物1〜9を使用した実施例1〜10においては、優れたピール強度およびアルカリ溶液耐性、並びに、アルカリ溶液耐性試験後の優れた無電解めっき性を示すことが確認された。
なお、実施例1と実施例7との比較より、式(1)で表される化合物の質量(質量A)と、該化合物の質量Aおよびポリマーの質量(質量B)の合計量との質量比{質量A/(質量A+質量B)}が所定の範囲(0.05〜0.30)にある場合に、より優れたアルカリ溶液耐性を示すことが確認された。
また、実施例1と実施例8との比較より、露光工程におけるエネルギー付与量が多い方がより優れたアルカリ溶液耐性を示すことが確認された。
さらに、所定のlogPを示すアクリルアミドモノマーを使用することにより、より優れたアルカリ溶液耐性を示すことが確認された。
【0147】
一方、本発明の被めっき層形成用組成物に該当しない比較組成物1〜6を使用した比較例1〜6においては、ピール強度、アルカリ溶液耐性、またはアルカリ溶液耐性試験後の無電解めっき性に劣ることが確認された。
【0148】
<実施例11>
実施例1で得られた電解銅めっきを施した基板に対し180℃/1時間の熱処理を行なった後、該基板の金属膜表面に、ドライレジストフィルム(日立化成(株)製;RY3315、膜厚15μm)を真空ラミネーター((株)名機製作所製:MVLP−600)で70℃、0.2MPaでラミネートした。次いで、ドライレジストフィルムがラミネートされた基板に、JPCA−ET01に定める櫛型配線(JPCA−BU01−2007準拠)が形成できるガラスマスクを密着させ、レジストを中心波長405nmの露光機にて70mJの光エネルギーを照射した。露光後の基板に、1%Na2CO3水溶液を0.2MPaのスプレー圧で噴きつけ、現像を行なった。その後、基板の水洗・乾燥を行い、銅めっき膜上に、サブトラクティブ法用のレジストパターンを形成した。
レジストパターンを形成した基板を、FeCl3/HCl水溶液(エッチング液)に温度40℃で浸漬することによりエッチングを行い、レジストパターンの非形成領域に存在する銅めっき膜を除去した。その後、3%NaOH水溶液を0.2MPaのスプレー圧で基板上に噴き付けることで、レジストパターンを膨潤剥離し、10%硫酸水溶液で中和処理を行い、水洗することで櫛型配線(パターン状銅めっき膜)を得た。得られた配線は、L/S=20μm/75μmであった。
【0149】
さらに、パターン状銅めっき膜を有する積層体に対して、ソルダーレジスト(PFR800;太陽インキ製造(株)製)を110℃、0.2MPaの条件で真空ラミネートし、中心波長365nmの露光機にて420mJの光エネルギーを照射した。
次いで、積層体を80℃/10分間の加熱処理を施した後、NaHCO3:10%水溶液を、スプレー圧2kg/m2で積層体表面に付与することで現像し、乾燥した。その後、再度、中心波長365nmの露光機にて1000mJの光エネルギーを、積層体に対して照射した。最後に150℃/1hrの加熱処理を行ない、ソルダーレジストで被覆された配線基板を得た。
【0150】
<実施例12>
実施例1における被めっき層形成時の全面露光の代わりに、レーザー照射によるパターン露光を行い、その後、1%重曹水で未露光部分を現像・除去して、パターン状の被めっき層を得た。得られたパターン状の被めっき層に対して、実施例1で行った[触媒の付与、および、無電解めっき]、および「電解めっき」を行い、被めっき層上にパターン状の銅めっき膜を得た。
【符号の説明】
【0151】
10:基板
12:被めっき層
14、14b:金属膜
16:積層体
18:パターン状金属膜
20:金属配線
22:絶縁性樹脂層
24:密着補助層
26:マスク
28、30:金属膜
32:パターン状金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物と、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する解離性官能基および重合性基を有するポリマーとを含む、被めっき層形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、R1は、水素原子またはアルキル基を表す。R2およびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、炭化水素基を表す。なお、R2とR3とが直接結合して環を形成してもよく、また、酸素原子を介して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記化合物のlogPが−0.3以上である、請求項1に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項3】
基板上に、請求項1または2に記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、前記基板上の前記被めっき層形成用組成物に対してエネルギーを付与して、前記基板上に被めっき層を形成する被めっき層形成工程と、
前記被めっき層にめっき触媒またはその前駆体を付与する触媒付与工程と、
前記めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき層に対してめっき処理を行い、前記被めっき層上に金属膜を形成するめっき工程と、を備える金属膜を有する積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法より得られる金属膜を有する積層体を含む配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207258(P2012−207258A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73188(P2011−73188)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】