説明

被プロセス材および微小気泡を混相流としてプロセスを行う装置

【課題】
従来型Taylor渦リアクタの不均一撹拌の問題、目詰まりの問題の解決、および、被プロセス材供給、プロセス後材排出の効率化を実現する。
【解決手段】
内筒回転レートを繰り返し変える制御にて、泡(気体)と他の液体または固体の被プロセス前材とが穏和な撹拌混合状態となり所望のプロセス効率が向上する。そして、第一第二フィルタがそれぞれ逆洗される新規な周期的ダブル逆洗構成で目詰まり発生が回避される。さらに、軸方向に電気化学反応ゾーンを組合せ、電気化学プロセスを兼ねる構成も可能とした。また、回転対称体の径が回転対称軸方向に漸次単調減少または漸次単調増加している構成で被プロセス材供給、プロセス後材排出を効率化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「Taylor渦リアクタ」、あるいは、「CT(Couette-Taylor)リアクタ、STT(Spinning Tube in a Tube) リアクタ、などと呼称される固定外筒内に同軸回転する内筒を内包配備した二重円筒プロセス装置の「改良技術」、および、細胞分離方法、セルソータに関する。
【0002】
かかる「Taylor渦リアクタ」は、被反応材を外筒内壁と内筒側壁との間の狭い間隙に「バッチ的」に被プロセス材を供給して、細胞培養や発酵などの長時間プロセスを行う、ないしは、同間隙内に概一定な流動レートで被プロセス材を連続圧入することで、「フロー系」または「連続系」と呼ばれる微量で高歩留まりの精密プロセスを行うものである。後者は、マイクロリアクタ、マイクロフローリアクタと総称される類に属すプロセス装置である。
【0003】
「Taylor渦リアクタ」の間隙に導入された流動体は、回転内筒表面との刷り応力で「Taylor渦」と呼ばれる渦流動が発生する。この流動では、被プロセス材が環状または螺旋状のTaylor渦中で、より均一な混合撹拌が期待されるので、均一撹拌重視プロセスにて好適な場合がある。
【0004】
関連従来技術を列挙する。
【0005】
<従来技術1 Taylor渦リアクタ」の改良>
【0006】
「Taylor渦リアクタ」の軸方向に複数の異なったプロセス・セクションを設け、それぞれ独立したプロセスをなす、という改良(特許文献1参照)、回転内筒の外径を軸方向に増減してジグザグの内部表面とし、間隙を軸方向に変化させた改良(特許文献2参照)、逆に中空の回転対称体の内径を軸方向に増減した構成が公知である(特許文献3参照)。
【0007】
また、晶析の核発生と核成長という特定のプロセスに即して、回転対称体の外径を軸方向に変化させ、晶析歩留まりを向上させる改良技術も開示されている(特許文献4参照)。
【0008】
また、「Taylor渦リアクタ」を電気化学反応に利用すべく、内筒外表面と外筒内表面に電極を配設した構成も開示されている(特許文献5参照)。
【0009】
<従来技術2 Taylor渦中の気泡>
【0010】
Taylor渦中に導入された気泡の位置について、以下の実験的知見が知られている。すなわち、気泡の位置が内筒回転レートによって、回転する「内筒側面近傍」にある状態と「Taylor渦の渦芯(コア)」にある状態とに可逆変化する(非特許文献1および非特許文献2、図2、図3参照)。
【0011】
図2(a)は、内筒の回転レートがレイノルズ数で1200以下の低速の場合で、気泡は内筒の側面に集合する。これを「壁バブル」状態と称する。隣接するトーラス状のTaylor渦の旋回方向は逆である。よって、内筒側面での圧力が高い部位と低い部位が交互に形成され、気泡はかかる高圧低圧の交互位置の低圧部位に集合する。
【0012】
これに対し、図2(b)は、内筒の回転レートがレイノルズ数で1800以上の高速の場合で、気泡は間隙に形成されるTaylor渦の渦芯(コア)に多く集まる。これを「渦核バブル」状態と称する。 図3は、図2の現象の実験写真で、非特許文献2のFig.2、Fig.3を転載した。
【0013】
<従来技術3 MNバブルによる細胞培養>
【0014】
気泡のサイズがミクロン・ナノのオーダになると特性が大きく変わる。これを「MNバブル(マイクロ・ナノバブル)」と呼び、人体・魚貝の活性化や殺菌・洗浄・浄化といった利用がすでに実用化されている。酵母や細菌のような微生物に対するMNバブルの影響については、非特許文献3および非特許文献4の実験的研究がある。
【0015】
<従来技術4 Taylor渦リアクタによる細胞培養>
【0016】
一方、細胞培養や発酵などのバイオプロセスにおいて、流動体中に微小固体である生物を固体とした固気混相流として流動させながらプロセスする際に、均一撹拌が必要である。従来バイオプロセスのバイオリアクター(細胞培養装置や発酵容器)では、つねに均一撹拌ができないという問題があった。すなわち、前記の非特許文献3および非特許文献4にても、従来型撹拌羽根を有する容器であるので、容器内不均一の問題があり、かつまた、撹拌羽根によって細胞が損傷する問題もあった。
【0017】
それで、「Taylor渦リアクタ」をバイオリアクタとして利用することが注目される。この利用自体は、特許文献1の発酵(Fermentation)への利用することの記載(発酵容器もバイオリアクタ)、および、特許文献6のマイクロキャリア(培養液中に浮遊する比重を持つ粒状担体)細胞培養でのTaylor渦リアクタ利用技術の開示、および、非特許文献5の研究報告などで公知である。
【0018】
さらに、この「Taylor渦リアクタ」に「MNバブル」を導入して細胞培養を効率化する技術も開示されている(および特許文献7および図1参照)。
【0019】
<従来技術5 フィルタ目詰まり>
【0020】
前記<従来技術3>や特許文献7のようにバイオリアクタ中にMNバブルを供給する場合、バイオリアクタ内部に超音波振動器などを配設して「気泡のみ」を導入すると、液体中の溶存気体の分しか供給できない。そこで、バイオリアクタ外部から「気泡入り液体」を追加流入させる必要がある。そのため、バイオリアクタ内の液体容量が増えるので、その増加量分だけ排出せねばならない。
【0021】
その際、バイオリアクタ内の細胞や微生物も流出してしまい効率を下げる原因となる。これを阻止するために、シリンジフィルタ・メンブレンフィルタなどで濾過する必要がある。
【0022】
しかし、長時間の液体追加では濾過用フィルタが目詰まりする。その対策として、逆洗などの目詰まり解消法が公知である(特許文献8−10参照)。
【0023】
特許文献8は逆洗による目詰まり解消、特許文献9は、請求項6に「前記スクリーンの目詰りを防ぐ手段をさらに有すること」とあって、明細書中に種々の目詰まり対策が記載されている。
【0024】
特許文献10は、円筒フィルターを回転することにより分離効率を確保しつつ目詰まりを減少させている。
【0025】
<従来技術6 補足>
【0026】
ところで、Taylor渦の発生現象は流体力学でよく知られた現象であり、発生、消失を含む流れの特性はレイノルズ数・テイラー数などの無次元数で実験的に分類がなされている。すなわち、典型的なパラメータである円筒外径、内径、間隙ギャップ、内筒回転数、および流体の動粘性係数でTaylor渦の発生と消失は予測可能である。
【0027】
また、Taylor渦の中に気泡を混入させた気液混相流動においてもレイノルズ数・テイラー数などの無次元数によって流動パターンの相違等が実験的に分類されている(たとえば、非特許文献2)。
【0028】
<従来技術7 細胞分離・セルソータ>
【0029】
特許文献11は、感作抗原を用いた幹細胞の標識法・分離法であって、皮膚幹細胞にて、ある種の抗体に結合する抗原を見出し、これをマーカーとして皮膚幹細胞を標識及び分離を開示している。また、特許文献12は、細胞核を標識する幹細胞の標識法、かかる標識で幹細胞を「プロスペクティブに」効率的に単離することを開示している。また、特許文献13は、アポトーシス(細胞死)特性の因子で異種細胞集団から幹細胞を選択(分離)する方法を開示している。
【0030】
こういった細胞分離の技術を実現するセルソータとして、ベックマン・コールター社の市販装置に用いられるコールター法によるものが公知である。このコールター法技術は、液相中の複数の細胞を個別に液滴中に「包埋」し、かかる液滴を落下させる途中空間にて電界を設け、その電界を操作することによって、落下方向をシフトさせ、細胞を液滴ごと任意の容器に分けて落としてソーティングするものである。
【0031】
細胞の個別分離について液滴に細胞を包埋しているので、細胞−液体(液滴の液相)−気相(大気)という確実な分離方法といえる。しかし、液滴の制御にはきわめて高度な技術を要する。ソーティング装置も高価である。
【0032】
また、特許文献14は、MNバブルによる細胞変化を促進する装置と方法を開示している。これは請求項7、請求項8の説明記載で引用する。

【特許文献1】米国特許第6471392号公報(Holl et al)・ホール特許でマルチプロセスを示したもの
【特許文献2】米国特許第4174907号公報(Suh et al)・内径をジグザグ変化させた米国特許
【特許文献3】特公昭62−43735号公報 「回転物体の表面上の化学的方法」(インペリアルケミカル)
【特許文献4】国際公開特許WO09-151159号公報(KNDT&I Co.LTD)
【特許文献5】特願2009−278427号公報「電気化学反応装置」(丸井智敬)
【特許文献6】特許第2752918号公報「動物細胞のマイクロキャリア培養法」(白神直弘ら)
【特許文献7】特願2010−012727号公報「CT(Couette-Taylor)反応装置を用いたプロセス装置、該装置と微小気泡発生器とを組合せたプロセス装置」(丸井智敬)
【特許文献8】特許第3289984号公報「生体の細胞の培養装置及び方法」(日立製作所)
【特許文献9】特許公開2009−142182号公報「生体細胞の分離装置、培養装置及び生体細胞の分離方法」(日立プラントテクノロジー)
【特許文献10】特開平6−237754号公報「細胞分離装置及びそれを用いる細胞の分離方法並びに細胞培養装置及びそれを用いる細胞の培養方法」(三井東圧化学)
【特許文献11】公開特許2005−73524号公報「幹細胞の標識方法及び分離方法、活性制御方法並び皮膚組織の作製方法」(産総研ほか)
【特許文献12】国際特許公開WO2007−129428号公報「幹細胞の単離方法」((株)ステリック再生医科学研究所)
【特許文献13】公開特許2009−538615号公報「幹細胞の選別方法およびその使用」(スティックス エルエルシー)
【特許文献14】特願2009−282840号公報「微小気泡を含有する液体組成物で細胞変化を促進する装置、微小気泡を含有する液体組成物で細胞変化を促進する方法」(丸井智敬)
【非特許文献1】Y Shiomi(塩見洋一) et al 、「CFD Calculation for Two−Phase Flow in Concentric Annulus with Rotating Inner Cylinder」、龍谷大紀要、2000年
【非特許文献2】Y Murai(村井祐一) et al 、「Bubble behavior in a vertical Taylor−Couette flow」、J. Phys. Conf. Ser. 14 143、2005
【非特許文献3】K.Ago et al 、「Development of an Aerobic Cultivation System by Using a Microbubble Aeration Technology」Journal of Chemical Engineering of Japan Vol. 38 (2005)、No. 9 p.757−762
【非特許文献4】S.Himuro(氷室昭三)et al 、「微生物に及ぼすマイクロバブルの効果」、Progress in Multiphase Flow Research Vol. 4 (2009) , pp.95−102
【非特許文献5】河合秀樹et al 、「Taylor-Couette渦流れ内における光合成微生物の培養実験」、可視化情報学会誌、Vol.29 No.Suppl.1 Page.247-248 (2009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明は、従来型バイオリアクタの課題である不均一撹拌の問題、目詰まりの問題を解決するものである。
【0034】
また本発明は、既に公知の「Taylor渦リアクタ」と「MNバブル」発生器の組合せ技術を改良するものであって、その基本構成(図1)は、「Taylor渦リアクタ」の間隙に微小気泡を供給する特許文献7と同様である。
【0035】
さらに本発明は、再生医療に欠かせない幹細胞(ES細胞、iPS細胞を含む)などの細胞を分離するより高度化された方法、より高効率のセルソータ(細胞を分離して揃える装置)を提案するものである。すなわち;
【0036】
第一の発明(請求項1)の課題は、<従来技術2 Taylor渦中の気泡>記載の、内筒回転レートにより気泡の位置が変化することを利用した撹拌効率をあげる課題に対応する。
【0037】
第二の発明(請求項2)の課題は、<従来技術5 フィルタ目詰まり>記載の、フィルタ目詰まりの課題を新規なダブル逆洗構成で解消する。
【0038】
第三の発明は(請求項3、6)の課題は、<従来技術1 Taylor渦リアクタ」の改良>記載の、特許文献5の電気化学反応をなす構成を特許文献1記載のように軸方向に組合せることで応用の多様化・高度化を実現することである。
【0039】
第四の発明は(請求項4)の課題は、<従来技術1 Taylor渦リアクタ」の改良>記載のように、軸方向に回転径を変えた構成(回転対称体)で応用の多様化・高度化を実現することである。
【0040】
第五の発明は(請求項7)の課題は、従来よりも高度化され、より簡便・安価の細胞を分離する方法を提案するものである。
【0041】
第六の発明は(請求項8)の課題は、従来よりも簡便・安価で、より高効率のセルソータ(細胞を分離して揃える装置)を提案するものである。特に、従来のセルソータで多く利用されている「細胞を液滴にして分離する」という確実だが複雑・高価な分離方法を用いない、より簡易・安価な「細胞を液相中で分離」を提案する。

【課題を解決するための手段】
【0042】
すなわち第一発明(請求項1、図2、図3、図4参照)は、固定中空円筒体、該中空円筒体と同じ回転対称軸をもち、前記中空円筒体に内包された内包円筒体、 該内包円筒体を前記中空円筒体の内壁と一定の間隙を保ちつつ回転対称軸まわりに回転させる手段、該間隙の他部から被プロセス材を抽出する手段(C2)とを具備して該間隙に入れた被プロセス材にプロセスをなす装置であって、被プロセス材が流動体であり、微小気泡の発生手段(M)をさらに具備するとともに、該微小気泡発生手段(M)で発生した微小気泡を前記被プロセス材を供給する手段(C1)の部位に混入して被プロセス材を気・液または固・気・液の混相流動体となす混合供給手段を具備し、かつまた、前記内包円筒体の回転手段の回転レートが、混相流中の微小気泡を、内包円筒体の(回転遠心力で)外側壁近傍に誘導する遅い回転レート(壁バブル回転レート)と、混相流中の微小気泡を、間隙に生じる環状または螺旋状のTaylor渦中心に誘導する早い回転レート(渦核バブル回転レート)とを、周期的に繰り返す回転レート制御手段を兼備したプロセス装置である。
【0043】
壁バブル回転レートの流動レイノルズ数は、1200より小さいことが好適であり、渦核バブル回転レートの流動レイノルズ数は、1800を超えることが好適である。
【0044】
図4が、渦核バブル回転レート(rpm1)と壁バブル回転レート(rpm2)とを周期的に繰り返すことを説明する模式図であって、rpm1は1800を超える流動レイノルズ数の回転レート、rpm2が1200より小さい流動レイノルズ数の回転レートである。 回転レート制御手段(図示を略す)がこのような繰り返し回転レート制御指令を出力する。
【0045】
図4のような回転の周期的変化をなす制御によって、渦核バブル回転と壁バブルを繰り返す。このことによって、MNバブルを含む任意の泡(気体)と他の液体または固体の被プロセス前材とがシャッフルされ、穏和な撹拌混合がなされる。このような泡移動を仲介とした穏和なシャッフル撹拌で所望のプロセス効率が向上する。かつまた、撹拌羽根がないので、細胞を扱うプロセスの場合にも細胞が撹拌羽根で損傷されることによる効率ダウンもない。
【0046】
第二発明(請求項2、図5参照)は、固定中空円筒体、該中空円筒体と同じ回転対称軸をもち、前記中空円筒体に内包された内包円筒体、該内包円筒体を前記中空円筒体の内壁と一定の間隙を保ちつつ回転対称軸まわりに回転させる手段、前記間隙の一部に被プロセス材を供給する手段(C1)、および、該間隙の他部から被プロセス材を抽出する手段(C2)、を具備して該間隙に入れた被プロセス材にプロセスをなす装置であって、被プロセス材が流動体であり、微小気泡の発生手段(M)をさらに具備するとともに、該微小気泡の発生手段(M)による微小気泡を含有した気・液混相の流動体を前記間隙に吐出供給する2つの吐出供給手段(D1A、D1B)と、前記間隙から流動体を吸引排出する2つの吸引排出手段(D2A、D2B)とを具備して、[ 該吸引排出手段(D2A、D2B)が吸引排出した流動体を前記微小気泡の発生手段(M)に帰還する管路とを具備することで2組の循環系をなし、かつまた、 ]前記一方の吐出供給手段(D1A)と一方の吸引排出手段(D2A)とが、第一の流動体保持室(HA)と第一のフィルタ(FA)を介して間隙と結合配設され、前記他方の吐出供給手段(D1B)と他方の吸引排出手段(D2B)とが、第二の流動体保持室(HB)と第二のフィルタ(FB)を介して間隙と結合配設されており、かかる吐出供給手段(D1A)・吸引排出手段(D2B)による流路系と、吐出供給手段(D1B)・吸引排出手段(D2A)による流路系とを交互に作動させることで、第一のフィルタ(FA)と、第二のフィルタ(FB)を交互に逆洗して目詰まり解消できる特徴をもったプロセス装置である。
【0047】
ここで、前段落で[ カッコ ]で囲んだ「該吸引排出手段(D2A、D2B)が吸引排出した流動体を前記微小気泡の発生手段(M)に帰還する管路とを具備することで2組の循環系をなす」ことは必須ではなく、開放形でもよい(請求項2ではこの制条件は省いてある)。
【0048】
以下の説明は循環系を念頭に説明する(図5〜図11参照、開放系は図12参照)。
【0049】
図5は、請求項2の、フィルタ目詰まり解消のための逆洗を説明する模式図であって、図5(a)の第二フィルタFBから第一フィルタFAへの(上方)往路の流動と図5(b)のFAからFBの(下方)復路逆流動との往復流動によって、フィルタがそれぞれ逆洗されるので目詰まり発生を回避する。第一第二の流動体保持室(HAとHB)は、Mの吐出正圧とMの吸引負圧とを交互に繰り返す。
【0050】
図6は、請求項2の実施態様を示す模式図であって、第一第二の流動体保持室(HAとHB)は、固定中空円筒体1の回転軸芯に対し点対称位置に対峙して配設されている。この配置であれば内包円筒体2側面に流動が形成され微小気泡が間隙により均一に流されるので好適である。
【0051】
図7は、図6を往路の流動とした場合の復路逆流動を示す模式図である。
【0052】
図8は、図6の態様を2つの微小気泡の発生手段Mで構成した実施例の模式図である。2つの微小気泡の発生手段Mの一方が動作している。
【0053】
図9は、図8を往路の流動とした場合の復路逆流動を示す模式図である。2つの微小気泡の発生手段Mの他方が動作している。
【0054】
図10は、図6の態様を単一の微小気泡の発生手段Mと循環配管の連動切替え手段Exgとで構成した実施例の模式図である。2つのExgは連動するものである。
【0055】
図11は、図10を往路の流動とした場合の復路逆流動を示す模式図である。2つのExgは連動して他方の循環配管系に変更されている。
【0056】
図12は、図9と図10の態様を非循環配管系とした態様であり、流動体の付加供給源Addで流動体の付加供給が常時行われ、かかる付加供給された流動体の過剰量は循環されず吸引排出手段D2AまたはD2Bから非吸引で押し出し排出される態様例の模式図である。
【0057】
図13は、細胞培養のように被プロセス材が微生物である場合の、循環系にあるフィルタFA・FBの目詰まりが問題である際に対応した態様であって、内筒の回転方向に沿った流れの接線方向に吐出、逆接線方向に吸引する実施態様の例である。こうすることで吸引フィルタに流動体中の微生物など固体が引き込まれにくくなるので好適である。すなわち、図13(a)ではFB、図13(b)ではFAに至る流れが逆接線方向の鈍角で舵を切る引き込み流れになるので固体成分の引き込みは少ない。仮に引き込まれて目詰まりしても、次の逆洗切替で接線方向に吐出される。
【0058】
図5から図13の模式図にては、簡単のため、間隙の一部に被プロセス材を供給する手段(C1)、および、該間隙の他部から被プロセス材を抽出する手段(C2)は略した。しかし、このC1、C2の配設位置が請求項4で重要になる。
【0059】
すなわち、第四発明は(請求項4、図14参照)、中空回転対称体と、(これは円筒を含む中空円筒体とこれに連結した中空内径が軸方向に変化する回転対称体である)該中空回転対称体と同じ回転対称軸をもち、前記中空回転対称体に内包された内包回転対称体と、(これも円筒を含む)該内包回転対称体を回転対称軸を軸芯として前記中空回転対称体の内側面と環状(アニュラー状)の間隙を介しつつ回転させる手段と、前記間隙の一部に被プロセス材を供給する手段(C1)と、該間隙の他部から被プロセス材を抽出する手段(C2)とを具備して該間隙に入れた被プロセス材にプロセスをなす装置であって、被プロセス材が流動体であり、微小気泡の発生手段(M)をさらに具備して、該微小気泡発生手段(M)で発生した微小気泡を前記被プロセス材を供給する手段(C1)の部位に混入して被プロセス材を気・液または固・気・液の混相流動体となす混合供給手段を兼備するとともに、前記被プロセス材を供給する手段(C1)または前記被プロセス材を抽出する手段(C2)のいずれかが配設されている部位の、前記中空回転対称体の内径が回転対称軸方向にて漸次単調減少または漸次単調増加している、または、前記被プロセス材を供給する手段(C1)または前記被プロセス材を抽出する手段(C2)のいずれかが配設されている部位の、前記内包回転対称体の外径が回転対称軸方向にて漸次単調減少または漸次単調増加しているプロセス装置である。
【0060】
図14は、請求項4の実施態様の例図であって、被プロセス材を供給する手段(C1)、被プロセス材を抽出する手段(C2)が配設されている部位の中空回転対称体の内径が回転対称軸方向にて直線的に漸次単調減少(増加)していて、かつ、内包回転対称体の外径も同様に回転対称軸方向にて直線的に漸次単調減少(増加)している例を示す模式図である。
【0061】
図15と図16は(請求項なし)、図14の態様にて、請求項2の目詰まり解消の態様を適用した例図である。第一第二の流動体保持室(HAとHB)は、固定中空回転対称体1の一方と他方の底面に対峙して配設されている。この配置であれば内包円筒体2側面に流動が形成され微小気泡が間隙により均一に流されるので好適である。図16は、図15を往路の流動とした場合の復路逆流動を示す模式図である。
【0062】
図18は、請求項4の実施態様の例図であって、被プロセス材を供給する手段(C1)が配設されている部位の中空回転対称体の内径が回転対称軸方向にてなめらかに漸次単調減少(増加)していて、かつ、内包回転対称体の外径も同様に回転対称軸方向にてなめらかに漸次単調減少(増加)している例を示す模式図である。
【0063】
図19は、請求項4の実施態様の例図であって、被プロセス材を抽出する手段(C2)が配設されている部位の中空回転対称体の内径が回転対称軸方向にてなめらかに漸次単調減少(増加)していている例を示す模式図である。
【0064】
図20は、図18または図19のC1・C2配設部分の断面模式図であって、C1は内筒回転に接線方向から被プロセス材を供給するよう配設するのが好ましく、逆に、C2は内筒回転接線方向に被プロセス材を抽出するよう配設するのが好ましい。
【0065】
さて第四発明のあとになったが、第三発明は(請求項3、6)、<従来技術1 Taylor渦リアクタ」の改良>記載の、特許文献5の電気化学反応をなす構成を特許文献1記載のように軸方向に組合せたものである。
【0066】
すなわち、第三発明は(請求項3、請求項6、図17参照)、請求項1・請求項2、請求項4・請求項5のプロセス装置において、固定中空円筒体の内側面に一方の電極と、該一方の電極に前記間隙を介し対向する前記内包円筒体の外側面に他方の電極と、かかる一方および他方の電極それぞれに電気的に接続された外部端子と、該外部端子間に直流また交流電圧を印加する手段とをさらに具備したプロセス装置である。
【0067】
図17が、請求項3および請求項6の、固定中空円筒体(回転対称体)の内側面に一方の電極と、該一方の電極に前記間隙を介し対向する内包円筒体(回転対称体)の外側面に他方の電極と、電極それぞれに電気的に接続された外部端子をさらに具備した態様を示す模式図である。本態様は特許文献8に記載された複数の電気化学セルを回転軸方向に形成した態様でもよい(図示略)。
【0068】
第三発明の請求項1・請求項2、および、請求項4・請求項5のプロセス装置における組み込みは、円筒体または回転対称体の回転軸方向の任意の位置でよい(図示略)。
【0069】
最後になったが、請求項5は、第四発明に第一発明概念を付加したサブクレームである。すなわち(請求項5)、請求項4のプロセス装置において、前記内包回転対称体の回転手段の回転レートが、混相流中の微小気泡を内包回転対称体の(回転遠心力で)外側壁近傍に誘導する遅い回転レート(壁バブル回転レート)と、混相流中の微小気泡を間隙に生じる環状または螺旋状のTaylor渦中心に誘導する早い回転レート(渦核バブル回転レート)とを、周期的に繰り返す回転レート制御手段をさらに兼備したプロセス装置である。この構成で第四発明に第一発明の撹拌効果が付与される。
【0070】
以上の本発明の説明において、プロセスとは、任意の処理であって、たとえば「MNバブル」の供給で発生するラジカルによる殺菌や有機物等の分解洗浄するためのプロセスで、本発明がかかるプロセス実行のための装置ある態様が好適である。
【0071】
また、たとえば1000個の1個、10000個に1個のES細胞やiPS細胞を他のES細胞化していない細胞群やiPS細胞化していない細胞群からのピックアップ分離するプロセスで、本発明がかかるプロセス実行のための装置であってもよい(請求項7−8参照)。
【0072】
すなわち、請求項1から請求項6のいずれかのプロセス装置において、被プロセス材が、細胞を浮遊含有する固・液混相流動体、または、(微小気泡をさらに含有する)固・気・液の混相流動体であり、(複数のプロセスゾーンの)プロセスには少なくとも、細胞分別、細胞マーキング、細胞分離のプロセスを行うものが含まれるプロセス装置である態様も好適である。
【0073】
また、本発明において、後段のプロセスゾーンの他のひとつに炭素/炭素結合をなす電気化学合成反応で、本発明がかかるプロセス実行のための装置であってもよい。
【0074】
すなわち、請求項3または請求項6のプロセス装置において、被プロセス材が、結合変更前の炭素原子をもつ複数の有機分子と電解液を含有する流動体であり、(複数のプロセスゾーンの)プロセスには少なくとも、電気化学エネルギーで炭素・炭素結合を新たに作る有機電気化学反応のプロセスを行うものが含まれるプロセス装置である態様も好適である。
【0075】
さらにまた、第五発明は、 請求項1から請求項6のいずれかのプロセス装置を用いるのが好ましい細胞分離方法であって、従来のフローサイトメトリー技術に属する、セルソーティング技術に関するものである。すなわち、装置で言えば、フローサイトメータに属する、セルソータに関わる。
【0076】
公知のセルソータは、たとえばベックマン・コールター社が市販している「液滴分離」法によるものであり、液相中の複数の細胞を個別に液滴中に「包埋」し、かかる液滴を落下させる途中空間にて電界を設け、その電界を操作することによって、落下方向をシフトさせ、細胞を液滴ごと任意の容器に分けて落としてソーティングする。
【0077】
液滴に細胞を包埋しているので、細胞の個別分離が細胞−液体(液滴の液相)−気相(大気)という確実な隔離がなされている。しかし、液滴の制御にはきわめて高度な技術を要する。そのためソーティング装置も高価である。
【0078】
ここにおいて、細胞の液滴包埋という確実だが複雑・高価な分離方法を採用せず、簡易・安価な分離方法を模索すると、従来のように「細胞を液相中で分離」という方法の高度化に想到する。
【0079】
本発明は、<1 MNバブルとの親和性>MNバブルと細胞も表面:細胞膜との親和性を利用すること、<2 バブル付き細胞の見かけ比重変化>細胞膜に親和付着したバブル付き細胞の見かけ比重の変化を利用すること、あるいは、<3 バブル付き細胞の帯電特性の変化>細胞膜に親和付着したバブル付き細胞の帯電特性の変化を利用すること、でありこれを説明する。
【0080】
すなわち(請求項7、図21、図22参照)、分離対象細胞群(S)の中から特定の属性を有する細胞(T)を液相中で分離する細胞分離方法であって、少なくとも以下の(1)(2)(3)工程を有する方法。(1)特定の属性を有する細胞(T)に微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡と親和性を有する物質を産生させる操作をする工程。(2)分離対象細胞群(S)と微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡とを液相中で混合する工程。(3)微小気泡との接合に起因する比重差または電気的特性差によって特定の属性を有する細胞(T)を分離対象細胞群(S)の中から液相中で分離する工程、である。
【0081】
図21が、請求項7の「(1)特定の属性を有する細胞(T)に微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡と親和性を有する物質を産生させる操作をする工程:X1」の説明模式図である。ここで「X1」の細胞操作「XX」が、特定の属性を有する細胞Tにするための細胞操作「TX」と同時発現するように細胞操作するのが好適である。図21はこれを図示している。「XX」は「TX」を標識するマーカーであって、「XX」は微小気泡と親和性を有する物質(たとえば細胞膜蛋白質)を産生させる細胞操作因子で、「TX」と同時発現する。
【0082】
なおここで、「XX」が具体化していないため、請求項7にはこの条件記載を外している。従来の類似技術では、蛍光蛋白の産生で標識するマーカーとするものがある。図21図中にはTXの例として細胞をiPS化する「山中ファクター」を示す。特許文献14に例示された細胞変化を促進する方法と装置で細胞をiPS化する「山中ファクター」による操作を実施するのが好適である。
【0083】
一方、図22が、分離対象細胞群(S)と微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡とを液相中で混合する工程「X2」の説明模式図であって、「X2」工程によって「TX」による操作が成功裏に発現した細胞(図21の「successful」)には微小気泡と親和性を有する物質(たとえば細胞膜蛋白質)が産生されているので、微小気泡が多数付着している。
【0084】
気体であるMNバブルの付着によって、細胞の比重差が生じるので遠心分離・浮遊分離等の比重差による分離を行えばよい。請求項1記載の「壁バブル」状態は遠心分離の一形態であるのでこれを利用してもよい。図19・図20の間隙4の他部から被プロセス材を抽出する手段C2によって、T以外のSに属する細胞Uを排除すれば、Tの分離は容易になる。
【0085】
また、MNバブルを含む気泡一般に帯電していることが知られている。そのため、MNバブルの付着によって、細胞の電気的特性差が生じるのでこれを利用してもよい。ここで、請求項3または請求項6の電気化学装置の構成を利用してもよい。
【0086】
すなわち(請求項7の(3))、(3)微小気泡との接合に起因する比重差または電気的特性差によって特定の属性を有する細胞(T)を分離対象細胞群(S)の中から液相中で分離する任意の工程、を行えばよい。
【0087】
セルソータとしては請求項1から請求項6のいずれかのプロセス装置にさらに(請求項8)、以下の(A)または(B)の手段を具備した請求項8記載の細胞分離方法によるセルソータである。(A)微小気泡との接合に起因する比重差によって特定の属性を有する細胞(T)を分離対象細胞群(S)の中から液相中で分離する手段。(B)微小気泡との接合に起因する電気的特性差によって特定の属性を有する細胞(T)を分離対象細胞群(S)の中から液相中で分離する手段。

【発明の効果】
【0088】
本発明は、公知の「Taylor渦リアクタ」と「MNバブル」発生器の組合せ技術を改良して、従来型バイオリアクタの課題である不均一撹拌の問題、目詰まりの問題を解決した。すなわち、請求項1の回転制御によって、泡(気体)と他の液体または固体の被プロセス前材とが穏和な撹拌混合状態となり所望のプロセス効率が向上する。そして、請求項2の周期的逆洗によって、第一第二フィルタがそれぞれ逆洗されるので目詰まり発生を回避した。
【0089】
さらに、軸方向に電気化学反応ゾーンを組合せて電気化学プロセスを兼ねる構成も可能となし(請求項3・6)、軸方向に回転径を変えた構成で被プロセス材供給、プロセス後材排出を効率化した(請求項4)。
【0090】
またさらに、きわめて高度な技術を要する「液滴」制御なしで、「液相中で分離」法による分離方法とセルソータを提案し実用性を確保しつつ簡易化しコストパフォマンスを向上させた。

【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】従来の技術態様である本発明者の特許文献1の技術態様を示す模式図
【図2】図2(a)は、回転手段3の回転レートがレイノルズ数では1200以下の低速で、気泡は2の側面に多く集合して流動する(壁バブル)。図2(b)は、2の回転手段の回転レートがレイノルズ数では1800以上の高速の場合で、気泡は間隙4に形成されるTaylor渦の渦芯(コア)に多く集まって流動する(コアバブル)。図2(a)で隣接Taylor渦の旋回方向が逆なので、回転する内筒側面で圧力が高い部位と低い部位が交互に形成され、気泡はかかる交互位置の低圧部位に壁バブルとして集合する。
【図3】図2の模式図に示す現象の実験を示す例図。非特許文献2のFig.2、Fig.3を転載。
【図4】請求項1の、渦核バブル回転レート(rpm1)と壁バブル回転レート(rpm2)とを周期的に繰り返すことを説明する模式図。
【図5】請求項2の、フィルタ目詰まり解消のための逆洗を説明する模式図であって、図5(a)の第二フィルタFBから第一フィルタFAへの(上方)往路の流動と図5(b)のFAからFBの(下方)復路逆流動との往復流動によって、フィルタがそれぞれ逆洗されるので目詰まり発生を回避する。
【図6】請求項2の実施態様を示す模式図であって、第一第二の流動体保持室(HAとHB)は、固定中空円筒体1の回転軸芯に対し点対称位置に対峙して配設されている。
【図7】図6を往路の流動とした場合の復路逆流動を示す模式図である。
【図8】図6の態様を2つの微小気泡の発生手段Mで構成した実施例の模式図である。2つの微小気泡の発生手段Mの一方が動作している。
【図9】図8を往路の流動とした場合の復路逆流動を示す模式図である。2つの微小気泡の発生手段Mの他方が動作している。
【図10】図6の態様を単一の微小気泡の発生手段Mと循環配管の連動切替え手段Exgとで構成した実施例の模式図である。2つのExgは連動するものである。
【図11】図10を往路の流動とした場合の復路逆流動を示す模式図である。2つのExgは連動して他方の循環配管系に変更されている。
【図12】図9と図10の態様を非循環配管系とした態様で、流動体の付加供給源Addで流動体の付加供給が常時行われ、かかる付加供給された流動体の過剰量は循環されず吸引排出手段D2AまたはD2Bから非吸引で押し出し排出される態様例の模式図。
【図13】細胞培養のように被プロセス材が微生物である場合の、循環系にあるフィルタFA・FBの目詰まりが問題である際に対応した態様の模式図。図13(a)ではFB、図13(b)ではFAに至る流れが逆接線方向の鈍角で舵を切る引き込み流れになるので固体成分の引き込みは少ない。
【図14】請求項4の実施態様の例図であって、被プロセス材を供給する手段(C1)、被プロセス材を抽出する手段(C2)が配設されている部位の中空回転対称体の内径が回転対称軸方向にて直線的に漸次単調減少(増加)していて、かつ、内包回転対称体の外径も同様に回転対称軸方向にて直線的に漸次単調減少(増加)している例を示す模式図。
【図15】(請求項なし)図14の態様にて、請求項2の目詰まり解消の態様を適用した例図である。第一第二の流動体保持室(HAとHB)は、固定中空回転対称体1の一方と他方の底面に対峙して配設されている。この配置であれば内包円筒体2側面に流動が形成され微小気泡が間隙により均一に流されるので好適である。
【図16】(請求項なし)図15を往路の流動とした場合の復路逆流動を示す模式図である。
【図17】請求項3および請求項6の、固定中空円筒体(回転対称体)の内側面に一方の電極と、該一方の電極に前記間隙を介し対向する内包円筒体(回転対称体)の外側面に他方の電極と、電極それぞれに電気的に接続された外部端子をさらに具備した態様を示す模式図。本態様は特許文献8に記載された複数の電気化学セルを回転軸方向に形成した態様でもよい(図示略)。
【図18】請求項4の実施態様の例図であって、被プロセス材を供給する手段(C1)が配設されている部位の中空回転対称体の内径が回転対称軸方向にてなめらかに漸次単調減少(増加)していて、かつ、内包回転対称体の外径も同様に回転対称軸方向にてなめらかに漸次単調減少(増加)している例を示す模式図。
【図19】請求項4の実施態様の例図であって、被プロセス材を抽出する手段(C2)が配設されている部位の中空回転対称体の内径が回転対称軸方向にてなめらかに漸次単調減少(増加)していている例を示す模式図。
【図20】図18または図19のC1・C2配設部分の断面模式図であって、C1は内筒回転に接線方向から被プロセス材を供給するよう配設するのが好ましく、逆に、C2は内筒回転接線方向に被プロセス材を抽出するよう配設するのが好ましい。
【図21】特定の属性を有する細胞(T)に微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡と親和性を有する物質を産生させる操作をする工程「X1」の説明模式図である。「X1」は、特定の属性を有する細胞Tにするための細胞操作TXと同時発現するように細胞操作するのが好適である。これを図示している。図中にTXの例として細胞をiPS化する「山中ファクター」細胞操作を示す。XXは微小気泡と親和性を有する物質(たとえば細胞膜蛋白質)を産生させる細胞操作因子で、TXと同時発現する。
【図22】分離対象細胞群(S)と微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡とを液相中で混合する工程「X2」の説明模式図であって、「X2」工程によってTXによる操作が成功裏に発現した細胞には微小気泡と親和性を有する物質(たとえば細胞膜蛋白質)が産生されているので、微小気泡が多数付着している。
【符号の説明】
【0092】
1 固定中空円筒体、またはこれを包含する中空回転対称体
2 1の内壁と間隙4を保ちつつ同軸回転する内包円筒体、またはこれを包含する内包回転対称体
3 2の回転手段
4 1の内壁と2の側外壁との間隙
7 スリップリングおよびブラシ(回転摺動しつつ電気的接触を保つ手段)
Add 流動体の付加供給源
C1 間隙4の一部に被プロセス材を供給する手段
C2 間隙4の他部から被プロセス材を抽出する手段
D1 微小気泡を含有した気・液混相の流動体を吐出供給する手段
D1A 微小気泡を含有した気・液混相の流動体を間隙に吐出供給する2つの吐出供給手段のうち「A」位置にあるもの
D1B 微小気泡を含有した気・液混相の流動体を間隙に吐出供給する2つの吐出供給手段のうち「B」位置にあるもの
D2 流動体を吸引排出する手段
D2A 間隙から流動体を吸引排出する2つの吸引排出手段のうち「A」位置にあるもの
D2B 間隙から流動体を吸引排出する2つの吸引排出手段のうち「B」位置にあるもの
E1 固定中空外筒1の内側面に配設された凹曲面状電極
E2 回転する内筒2の外側面に配設された凸曲面状電極
E10 E1に電気的に接続された外部端子
E20 E2に電気的に接続された外部端子
Exg 循環配管の連動切替え手段 切替え動作中に回転数を下げる?または上げる
FA 第一のフィルタ(「A」位置にある)
FB 第二のフィルタ(「B」位置にある)
H 流動体保持容器
HA 第一の流動体保持室(「A」位置にある)
HB 第二の流動体保持室(「B」位置にある)
M 微小気泡の発生手段
M4 気体吸引手段
M11 渦流ポンプの内蔵インペラ
MR 液体貯留槽
ROT 固定中空外筒および同軸回転する内筒との共通の軸と、水平面ないしは鉛直線とのなす角度を、自在に変化させる手段。たとえば回転機構。
rpm1 混相流中の微小気泡を、間隙に生じる環状または螺旋状のTaylor渦中心に誘導する早い回転レートであって、レイノルズ数で1800より大きい「渦核バブル回転レート」。
rpm2 混相流中の微小気泡を、内包円筒体の(回転遠心力で)外側壁近傍に誘導する遅い回転レートであって、レイノルズ数で1200より小さい「壁バブル回転レート」。
S 分離対象細胞群

特定の属性を有する細胞
TX 特定の属性を付与する細胞操作
U T以外のSに属する細胞
X1 特定の属性を有する細胞(T)に微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡と親和性を有する物質を産生させる操作をする工程
X2 分離対象細胞群(S)と微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡とを液相中で混合する工程
XX 微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡と親和性を有する物質(たとえば細胞膜蛋白質)を産生させる細胞操作(たとえば細胞膜蛋白質を発現させる遺伝子の注入)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定中空円筒体、
該中空円筒体と同じ回転対称軸をもち、前記中空円筒体に内包された内包円筒体、
該内包円筒体を前記中空円筒体の内壁と一定の間隙を保ちつつ回転対称軸まわりに回転させる手段、
前記間隙の一部に被プロセス材を供給する手段(C1)と、
該間隙の他部から被プロセス材を抽出する手段(C2)とを具備して該間隙に入れた被プロセス材にプロセスをなす装置であって、
被プロセス材が流動体であり、微小気泡の発生手段(M)をさらに具備するとともに、
該微小気泡発生手段(M)で発生した微小気泡を前記被プロセス材を供給する手段(C1)の部位に混入して被プロセス材を気・液または固・気・液の混相流動体となす混合供給手段を具備し、かつまた、
前記内包円筒体の回転手段の回転レートが、混相流中の微小気泡を、内包円筒体の(回転遠心力で)外側壁近傍に誘導する遅い回転レート(壁バブル回転レート)と、混相流中の微小気泡を、間隙に生じる環状または螺旋状のTaylor渦中心に誘導する早い回転レート(渦核バブル回転レート)とを、周期的に繰り返す回転レート制御手段を兼備したプロセス装置。

【請求項2】
固定中空円筒体、
該中空円筒体と同じ回転対称軸をもち、前記中空円筒体に内包された内包円筒体、
該内包円筒体を前記中空円筒体の内壁と一定の間隙を保ちつつ回転対称軸まわりに回転させる手段、
前記間隙の一部に被プロセス材を供給する手段(C1)、および、
該間隙の他部から被プロセス材を抽出する手段(C2)、を具備して該間隙に入れた被プロセス材にプロセスをなす装置であって、
被プロセス材が流動体であり、微小気泡の発生手段(M)をさらに具備するとともに、
該微小気泡の発生手段(M)による微小気泡を含有した気・液混相の流動体を前記間隙に吐出供給する2つの吐出供給手段(D1A、D1B)と、前記間隙から流動体を吸引排出する2つの吸引排出手段(D2A、D2B)とを具備して、
前記一方の吐出供給手段(D1A)と一方の吸引排出手段(D2A)とが、第一の流動体保持室(HA)と第一のフィルタ(FA)を介して間隙と結合配設され、
前記他方の吐出供給手段(D1B)と他方の吸引排出手段(D2B)とが、第二の流動体保持室(HB)と第二のフィルタ(FB)を介して間隙と結合配設されており、かかる吐出供給手段(D1A)・吸引排出手段(D2B)による流路系と、吐出供給手段(D1B)・吸引排出手段(D2A)による流路系とを交互に作動させることで、第一のフィルタ(FA)と、第二のフィルタ(FB)を交互に逆洗して目詰まり解消できる特徴をもったプロセス装置。

【請求項3】
請求項1または請求項2のプロセス装置において、
固定中空円筒体の内側面に一方の電極と、
該一方の電極に前記間隙を介し対向する前記内包円筒体の外側面に他方の電極と、
かかる一方および他方の電極それぞれに電気的に接続された外部端子と、
該外部端子間に直流また交流電圧を印加する手段とをさらに具備したプロセス装置。

【請求項4】
中空回転対称体と、
該中空回転対称体と同じ回転対称軸をもち、前記中空回転対称体に内包された内包回転対称体と、
該内包回転対称体を回転対称軸を軸芯として前記中空回転対称体の内側面と環状(アニュラー状)の間隙を介しつつ回転させる手段と、
前記間隙の一部に被プロセス材を供給する手段(C1)と、
該間隙の他部から被プロセス材を抽出する手段(C2)とを具備して該間隙に入れた被プロセス材にプロセスをなす装置であって、
被プロセス材が流動体であり、微小気泡の発生手段(M)をさらに具備して、該微小気泡発生手段(M)で発生した微小気泡を前記被プロセス材を供給する手段(C1)の部位に混入して被プロセス材を気・液または固・気・液の混相流動体となす混合供給手段を兼備するとともに、
前記被プロセス材を供給する手段(C1)または前記被プロセス材を抽出する手段(C2)のいずれかが配設されている部位の、前記中空回転対称体の内径が回転対称軸方向にて漸次単調減少または漸次単調増加している、または、
前記被プロセス材を供給する手段(C1)または前記被プロセス材を抽出する手段(C2)のいずれかが配設されている部位の、前記内包回転対称体の外径が回転対称軸方向にて漸次単調減少または漸次単調増加しているプロセス装置。

【請求項5】
請求項4のプロセス装置において、
前記内包回転対称体の回転手段の回転レートが、混相流中の微小気泡を、内包回転対称体の(回転遠心力で)外側壁近傍に誘導する遅い回転レート(壁バブル回転レート)と、混相流中の微小気泡を間隙に生じる環状または螺旋状のTaylor渦中心に誘導する早い回転レート(渦核バブル回転レート)とを、周期的に繰り返す回転レート制御手段をさらに兼備したプロセス装置。

【請求項6】
請求項4または請求項5のプロセス装置において、
固定中空回転対称体の内側面に一方の電極、
該一方の電極に前記間隙を介し対向する前記内包回転対称体の外側面に他方の電極、
かかる一方および他方の電極それぞれに電気的に接続された外部端子、および、
該外部端子間に直流また交流電圧を印加する手段をさらに具備したプロセス装置。

【請求項7】
分離対象細胞群(S)の中から特定の属性を有する細胞(T)を液相中で分離する細胞分離方法であって、少なくとも以下の(1)(2)(3)工程を有する方法。
(1)特定の属性を有する細胞(T)に微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡と親和性を有する物質を産生させる操作をする工程。
(2)分離対象細胞群(S)と微小気泡発生手段(M)で発生する微小気泡とを液相中で混合する工程。
(3)微小気泡との接合に起因する比重差または電気的特性差によって特定の属性を有する細胞(T)を分離対象細胞群(S)の中から液相中で分離する工程。

【請求項8】
以下の(A)または(B)の手段を具備した請求項7記載の細胞分離方法によるセルソータ。
(A)微小気泡との接合に起因する比重差によって特定の属性を有する細胞(T)を分離対象細胞群(S)の中から液相中で分離する手段。
(B)微小気泡との接合に起因する電気的特性差によって特定の属性を有する細胞(T)を分離対象細胞群(S)の中から液相中で分離する手段。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−235224(P2011−235224A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107806(P2010−107806)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(596174329)
【Fターム(参考)】