説明

被ライニング既設管路の穿孔部封止処理工法及び穿孔部封止処理治具

【課題】被ライニング既設管路における穿孔部の封止処理を活管状態で行うことができ、ライニング層の穿孔部をガス溜まり無く封止処理する。
【解決手段】樹脂受け部材10を、穿孔部P0を介して管外から管内に挿入して、穿孔部P0の管内周囲から離して設置し、樹脂受け部材10上に樹脂Rを供給しながら樹脂受け部材10を穿孔部P0の管内周囲に近接させ、穿孔部P0の管内周囲に樹脂受け部材10を押圧することで穿孔部P0の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成すると同時に、この樹脂充填空間全てに樹脂Rを充填して、穿孔部P0の端部全周を樹脂Rで気密に覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内張反転シール工法等によるライニング処理が施された既設管路(被ライニング既設管路)の穿孔部封止処理工法及び穿孔部封止処理治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設管路のライニング処理としては、管の内面にシール剤を内張りする工法や管の内面に樹脂膜を形成する工法等が知られている。特に、内張反転シール工法は、管内面への接着面を内側から外側に反転しながらホース状のシール剤を管の一端側から他端側に向けて順次内張りする工法であり、良好な施工性、高耐久性、管路破損時の気密性維持等の利点が得られることから、老朽化した管路の更生・修理、地震対策の補修等に広く採用されている。
【0003】
このようなライニング処理が施された既設管路に対して、分岐部を接続する等の目的で穿孔部を形成することがある。この場合、管壁と共に管内面に形成されたライニング層を穿孔することになるが、穿孔部に分岐継手等を接続して管内に流体を流すと、ライニング層の穿孔箇所が管内面から剥がれて、ライニング層と管内面との間に流体が漏洩する事態が生じることがある。管内面とライニング層とは完全に密着されていることが望ましいが、管内面とライニング層との間に接着不良箇所があると、この接着不良箇所が漏洩径路となって管路の気密不良箇所に繋がり、管外への漏洩が生じることが問題になる。
【0004】
このようなライニング層の穿孔による漏洩現象は、管外への漏洩箇所を特定することが極めて困難になるので、流体がライニング層の穿孔箇所からライニング層と管内面との間に漏洩する現象を防ぐ以外に有効な解決手段を見いだすことができない。この具体的な解決手段としては、ライニング層の穿孔部周囲を管内面に押圧する押さえ部材を用い、これを管の内側から管の穿孔部に取り付けることが行われている(下記特許文献1参照)。
【0005】
図1は、この従来技術を説明する説明図である。この従来技術は、管路Pの流体流通を遮断して行う方法であり、管路Pの穿孔部P0を塞いでいたプラグJ3を外して、予め管路P内に配備しておいた押さえ部材J1を牽引線J2で穿孔部P0まで引き上げ、管路の内側から穿孔部P0に押さえ部材J1を取り付けるものである(図1(a)参照)。
【0006】
図1(b),(c)は、押さえ部材J1の構造を示している。押さえ部材J1は、OリングJ11を上面の外縁部に備えた押さえ板J10を管路Pの内側から管内面に付着されているシールホースP1に向けて押圧するものであり、穿孔部P0に装着されたプラグJ12に押さえ板J10を貫通したボルトJ13を装通して、このボルトJ13をナットJ14で締め上げて、押さえ板J10を管路P内面側に押さえ付けている。そして、OリングJ11をシールホースP1に押圧した後に、OリングJ11の内側空間にボルトJ13に沿って形成されたシール剤注入部J15を通してシール剤を注入し、この空間をシール剤で埋めるようにしている。プラグJ12には空気抜き穴J16が形成されており、シール剤をOリングJ11の内側空間に注入する際の空気交換をこの空気抜き穴J16で行っている。
【特許文献1】特開平6−235493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来技術によると、図1(c)に示すように、シール剤注入部J15から注入されたシール剤がOリングJ11の内側空間に充填される前に空気抜き穴J16が注入されたシール剤で塞がれてしまうことがあり、OリングJ11の内側空間における空気交換が行われなくなり、この内側空間に空気溜まりが形成されてシール剤を完全に充填させることができない問題が生じる。このような状態では、穿孔部P0周辺の穿孔されたシールホースP1をシール剤で完全に覆うことができず、穿孔部に対して確実な封止処理を行うことができないので、ライニング層の穿孔部を介した漏洩を回避することができない。
【0008】
また、前述した従来技術は、管路Pを完全に遮断した後に作業を行う工法であるが、仮にこれを活管状態の管路Pに適用しようとすると、前述した空気抜き穴J16から管路Pを流れる流体が漏れ出ることになり、安全な作業を行うことができない。還元すると、活管状態の管路Pに対して行う穿孔部の封止処理においては、前述した従来技術のように空気抜き穴J16を設けることができない。したがって、押さえ板J10のOリングJ11をシールホースP1に押さえ付けた後にOリングJ11の内側空間にシール剤を充填しようとしても、この内側空間内のガスを排出することができず、シール剤の充填を完全に行うことができない。
【0009】
これに対して、既設管路への穿孔は必ずしも管路を開放した状態で行うとは限らない。例えば、ガス管路に分岐継ぎ手を接続する際の穿孔作業は、ガスが管路内を流れている状態で行われ、作業中であっても下流側へのガス供給が遮断されないようにしている。このためには、穿孔部からのガス噴出を防ぐノーブロー作業が行われており、穿孔機支持部材を管路外周に装着し、この穿孔機支持部材に装着されたノーブロー作業バッグ内で被穿孔箇所周囲に気密空間を形成して、この気密空間内で穿孔機を操作する作業を行っている。
【0010】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、被ライニング既設管路における穿孔部の封止処理を、活管状態で行うことができること、穿孔部に対して確実な封止処理を行うことでライニング層の穿孔部を介した漏洩を回避すること、管路の下流側への流体供給を確保した状態で管路穿孔部の封止処理を行うことができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を少なくとも具備するものである。
【0012】
一つには、管内面にライニング層が形成された被ライニング既設管路を対象として、管及びライニング層の穿孔部を封止処理する工法であって、前記穿孔部を介して管外から管内に挿入可能で、該挿入後に拡径して前記穿孔部及び該穿孔部の管内周囲に対面する樹脂受け部材を、前記穿孔部を介して管外から管内に挿入して、前記穿孔部の管内周囲から離して設置する樹脂受け部材設置工程と、前記樹脂受け部材上に樹脂を供給しながら該樹脂受け部材を前記穿孔部の管内周囲に近接させ、前記穿孔部の管内周囲に前記樹脂受け部材を押圧することで前記穿孔部の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成すると同時に、該樹脂充填空間全てに前記樹脂を充填して、前記穿孔部の端部全周を前記樹脂で気密に覆う樹脂充填工程とを有することを特徴とする。
【0013】
また一つには、管内面にライニング層が形成された被ライニング既設管路を対象として、管及びライニング層の穿孔部を封止処理する穿孔部封止処理治具であって、前記穿孔部を介して管外から管内に挿入可能で、該挿入後に拡径して前記穿孔部及び該穿孔部の管内周囲に対面し、前記穿孔部の管内周囲に押圧されて前記穿孔部の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成する樹脂受け部材と、内部に樹脂が装填されて前記穿孔部に臨む樹脂供給口を有すると共に前記穿孔部を塞ぐ外周部を有する樹脂シリンダと、前記樹脂シリンダの軸方向に沿って配置され前記樹脂受け部材を支持する支持軸と、前記樹脂シリンダ内を摺動して前記樹脂シリンダ内の樹脂を前記樹脂供給口から押し出す摺動部材と、前記摺動部材に支持され該摺動部材を貫通した前記支持軸に螺合するねじ部とを備え、前記ねじ部の締め付け操作によって、前記摺動部材を摺動させて前記樹脂シリンダ内の樹脂を前記樹脂供給口から押し出しながら、前記支持軸を引き上げて前記樹脂受け部材を前記穿孔部の管内周囲に近接させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、穿孔部を介して管外から管内に樹脂受け部材を挿入して、この樹脂受け部材を穿孔部の管内周囲から離して設置し、この樹脂受け部材上に樹脂を供給しながら該樹脂受け部材を穿孔部の管内周囲に近接させ、穿孔部の管内周囲に樹脂受け部材を押圧することで穿孔部の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成すると同時に、該樹脂充填空間全てに樹脂を充填して、穿孔部の端部全周を樹脂で気密に覆うようにした。
【0015】
これによると、樹脂受け部材によって形成される樹脂充填空間にガス溜まりが生じることが無く、穿孔部周辺の穿孔されたライニング層端部を樹脂で完全に覆うことができ、穿孔部に対して確実な封止処理を行うことができる。このような特徴によって本発明は、ライニング層の穿孔部を介した漏洩を回避することができる。
【0016】
また、穿孔部を介して樹脂受け部材を管外から管内に挿入できるようにしているので、穿孔部の周囲をノーブロー作業バッグで覆うことで、活管状態の管路においても穿孔部の封止処理を行うことができる。これによって、管路の下流側への流体供給を確保した状態で、管路の穿孔部の封止処理を行うことが可能になる。
【0017】
更には、前述した特徴の穿孔部封止処理治具を用いることによって、ねじ部を締め付け操作するだけで、樹脂受け部材に樹脂を供給する工程と樹脂受け部材を穿孔部の管内周囲に押圧させる工程を同時に行うことができる。これによって、作業工程の簡略化が可能になり、簡易且つ速やかに穿孔部の封止処理作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態は、ライニング処理が施された既設管路が対象になっている。以下の説明では、管内面にシールホースが内張りされたものを例に挙げて説明するが、ライニング処理としては、内張反転シール工法、樹脂ライニング工法等によって管内面にライニング層が形成される処理であればどのような処理であっても良い。
【0019】
そして、このような被ライニング既設管路を穿孔した後に、或いは、予め穿孔部が形成されていた管路に対して、管路の活管状態を維持したまま、管及びライニング層の穿孔部においてライニング層と管の間に管内流体が漏洩しないように封止処理を施す。この封止処理は、後述する樹脂受け部材を穿孔部から挿入して管内に設置する樹脂受け部材設置工程と、樹脂受け部材上に樹脂を供給して穿孔部の端部全周を樹脂で気密に覆う樹脂充填工程とを主要な工程とする。
【0020】
図2は本発明の実施形態に係る穿孔部封止処理工法の樹脂受け部材設置工程を示す説明図であり、図3は本発明の実施形態に係る穿孔部封止処理工法の樹脂充填工程を示す説明図である。図において、管路Pには内面にシールホースP1のライニング処理が施されており、この管路PとシールホースP1に穿孔部P0が形成されている。
【0021】
樹脂受け部材設置工程では、図2(a)に示すように、穿孔部P0を介して樹脂受け部材10を管外から管内に挿入して、図2(b)に示すように、この樹脂受け部材10を穿孔部P0の管内周囲P2から離して設置する。
【0022】
また、樹脂充填工程では、図3(a)に示すように、樹脂受け部材10上に樹脂Rを供給しながら樹脂受け部材10を穿孔部P0の管内周囲に近接させ、図3(b)に示すように、穿孔部P0の管内周囲に樹脂受け部材10を押圧することで穿孔部P0の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成すると同時に、該樹脂充填空間全てに樹脂Rを充填して、穿孔部P0の端部全周を樹脂Rで気密に覆う。
【0023】
これによると、樹脂受け部材10上に樹脂Rが供給される当初は、樹脂受け部材10上は開放されており、樹脂受け部材10が穿孔部P0の管内周囲に近づくに連れて、樹脂受け部材10上のガスは順次外側に追い出されるようになる。そして、樹脂受け部材10が穿孔部P0の管内周囲に押圧されて閉じた樹脂充填空間が形成された時点では、樹脂受け部材10上のガスは全て追い出されて、この閉じた樹脂充填空間は全て樹脂Rで充填されることになる。すなわち、樹脂受け部材10によって形成される樹脂充填空間にガス溜まりが生じることが無く、穿孔部P0周辺の穿孔されたシールホースP1端部を樹脂Rで完全に覆うことができ、穿孔部P0に対して確実な封止処理を行うことができる。これによって、シールホースP1の穿孔部P0を介してシールホースP1と管路Pの内面の間にガスが侵入して漏洩が生じる事故を回避することができる。
【0024】
より具体的に説明すると、本発明の実施形態に係る穿孔部封止処理工法は、図示の穿孔部封止処理治具1を用いることによって具体的に実行できる。穿孔部封止処理治具1は、樹脂受け部材10、樹脂シリンダ20、支持軸11、摺動部材21、ねじ部23を主要な構成として備えている。
【0025】
樹脂受け部材10は、穿孔部P0を介して管外から管内に挿入可能で、挿入後に拡径して穿孔部P0及び穿孔部の管内周囲P2に対面し、穿孔部の管内周囲P2に押圧されて穿孔部の管内周囲P2及びその内側に樹脂充填空間を形成する。より具体的には、樹脂受け部材10は、弾性変形可能な板材で形成され、外縁部10Aに沿って穿孔部P0を囲繞する封止リング12が設けられ、封止リング12の内側に前述した樹脂充填空間が形成される。
【0026】
樹脂シリンダ20は、内部に樹脂が装填されて、穿孔部P0に臨む樹脂供給口20Aを有すると共に、穿孔部P0を塞ぐ外周部20Bを有する。樹脂シリンダ20の軸方向に沿って樹脂受け部材10を支持する支持軸11が配置されている。樹脂シリンダ20内には、樹脂シリンダ20内を摺動して樹脂シリンダ20内の樹脂Rを樹脂供給口20Aから押し出す摺動部材21が配備されている。そして、摺動部材21に支持され摺動部材21を貫通した支持軸11にねじ部23が螺合している。
【0027】
このねじ部23を締め付け操作することによって、摺動部材21を摺動させて樹脂シリンダ20内の樹脂Rを樹脂供給口20Aから押し出しながら、支持軸11を引き上げて樹脂受け部材10を穿孔部の管内周囲P2に近接させる。
【0028】
樹脂シリンダ20の樹脂供給口20Aは樹脂Rを含浸保持する多孔部材22で塞がれており、摺動部材21の摺動によって多孔部材22を通過して樹脂Rが供給される。この多孔部材22はねじ部23の締め付け操作を行うまでは樹脂Rが樹脂供給口20Aから出て行かないように保持される機能を有し、ねじ部23の締め付け操作によって樹脂Rが樹脂シリンダ20内で圧迫されと、この圧迫によって多孔部材22を通過して樹脂Rが流れ出る。多孔部材22としてはウレタン等のプラスチック材を発泡成形したスポンジ等を用いることができる。
【0029】
また、摺動部材21は樹脂Rを押し出すためのピストン部材21Aと支持軸11の回転を規制する支持プレート21Bを備える。ピストン部材21Aとしては、樹脂シリンダ20内を摺動する板材に加えて前述したような多孔部材を積層することが好ましい。支持プレート21Bはねじ部23を締め付け操作するときに、支持軸11の供回りを防ぐために装着されている。
【0030】
このような穿孔部封止処理治具1を用いた場合には、先ず、準備工程として、樹脂シリンダ20内に多孔部材22を入れて樹脂供給口20Aをこの多孔部材22で塞ぎ、多孔部材22の中央に穴を空けて、この穴に樹脂受け部材10が下端に取り付けられた支持軸11を挿入する。そして、多孔部材22を樹脂シリンダ20内に押し込んだ状態で、その上に樹脂Rを流し込む。樹脂シリンダ20内に封止処理を行うのに十分な量の樹脂Rを装填した後、摺動部材21の中央穴に樹脂シリンダ20の軸方向に沿って配置されている支持軸11を通し、樹脂シリンダ20内の樹脂Rの上に摺動部材21を配備する。そして、支持軸11にねじ部を螺合させて、支持軸11が摺動部材21に支持されるようにする。
【0031】
このような穿孔部封止処理治具1を用いた樹脂受け部材設置工程は、図2(a)に示すように、弾性変形可能な板材で形成された樹脂受け部材10を変形させながら穿孔部P0を介して管内に押し込む。この際、活管状態の管路で作業を行うためには、穿孔部P0を覆うノーブロー作業バッグ(図示省略)内に穿孔部封止処理治具1を予め配備しておき、穿孔部P0をノーブロー作業バッグで覆った後に、穿孔部P0を開放して、穿孔部P0を介して樹脂受け部材10を管内に押し込む。
【0032】
樹脂受け部材10を管内に押し込んだ後は、図2(b)に示すように、樹脂シリンダ20の外周部20Bを穿孔部P0にねじ込み、樹脂シリンダ20で穿孔部P0を塞ぐ。この際、樹脂シリンダ20の樹脂供給口20Aが穿孔部P0に臨んだ状態になっており、樹脂受け部材10は穿孔部の管内周囲P2から離間した状態になっている。
【0033】
そして、樹脂充填工程は、図3(a)に示すように、前述した状態で、ねじ部23の締め付け操作によって、摺動部材21を摺動させて樹脂シリンダ20内の樹脂Rを樹脂供給口20Aから押し出しながら、支持軸11を引き上げて樹脂受け部材10を穿孔部の管内周囲P2に近接させる。
【0034】
これによると、図3(a)に示すように、樹脂受け部材10が引き上げられる過程で樹脂受け部材10上のガスが外に向けて追い出されることになり、図3(b)に示すように、樹脂受け部材10の封止リング12が穿孔部P0の管内周囲に押圧された状態では、封止リング12の内側に形成される樹脂充填空間には樹脂Rのみが充填された状態になる。このような状態になるためには、樹脂受け部材10の封止リング12が穿孔部P0の管内周囲に押圧される前に、樹脂受け部材10上に供給される樹脂Rがオーバーフローした状態になり、樹脂受け部材10上のガス層が完全に外に追い出されることが必要になる。
【0035】
樹脂充填工程の後は、樹脂シリンダ20の上端部に図示省略の封止キャップを被せ、更に防食キャップを被せる等して、管路Pを埋め戻す。
【0036】
このような穿孔部封止処理工法は、前述したノーブロー作業バッグを用いて作業を行うことで、管路Pの活管状態を維持したままで処理を完了することができる。これによって、管路Pの下流側への流体供給を確保した状態で、穿孔部P2の封止処理を行うことができる。また、穿孔部P2の周囲を樹脂Rによって完全に覆うことで、穿孔部P2に対して確実な封止処理を行うことができ、シールホースP1の穿孔部を介した漏洩現象を確実に回避することができる。
【0037】
更には、前述した特徴の穿孔部封止処理治具1を用いることによって、ねじ部23を締め付け操作するだけで、樹脂受け部材10に樹脂Rを供給する工程と樹脂受け部材10を穿孔部P0の管内周囲に押圧させる工程を同時に行うことができる。これによって、作業工程の簡略化が可能になり、簡易且つ速やかに穿孔部の封止処理作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来技術の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る被ライニング既設管路の穿孔部封止処理工法(樹脂受け部材設置工程)及び封止処理治具を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る被ライニング既設管路の穿孔部封止処理工法(樹脂充填工程)及び封止処理治具を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1:穿孔部封止処理治具,
10:樹脂受け部材,
11:支持軸,
12:封止リング,
20:樹脂シリンダ,20A:樹脂供給口,20B:外周部,
21:摺動部材,
22:多孔部材,
23:ねじ部,
P:管路,
P0:穿孔部,
P1:シールホース(ライニング層),
R:樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内面にライニング層が形成された被ライニング既設管路を対象として、管及びライニング層の穿孔部を封止処理する工法であって、
前記穿孔部を介して管外から管内に挿入可能で、該挿入後に拡径して前記穿孔部及び該穿孔部の管内周囲に対面する樹脂受け部材を、前記穿孔部を介して管外から管内に挿入して、前記穿孔部の管内周囲から離して設置する樹脂受け部材設置工程と、
前記樹脂受け部材上に樹脂を供給しながら該樹脂受け部材を前記穿孔部の管内周囲に近接させ、前記穿孔部の管内周囲に前記樹脂受け部材を押圧することで前記穿孔部の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成すると同時に、該樹脂充填空間全てに前記樹脂を充填して、前記穿孔部の端部全周を前記樹脂で気密に覆う樹脂充填工程と
を有することを特徴とする被ライニング既設管路の穿孔部封止処理工法。
【請求項2】
前記樹脂充填工程は、
前記穿孔部に臨む樹脂供給口を有する樹脂シリンダで前記穿孔部を塞ぎ、前記樹脂受け部材を支持する支持軸を前記樹脂シリンダの軸方向に沿って配置し、前記樹脂シリンダ内を摺動する摺動部材で該摺動部材を貫通した前記支持軸に螺合するねじ部を支持した状態で、該ねじ部の締め付け操作によって、前記摺動部材を摺動させて前記樹脂シリンダ内の樹脂を前記樹脂供給口から押し出しながら、前記支持軸を引き上げて前記樹脂受け部材を前記穿孔部の管内周囲に近接させることを特徴とする請求項1に記載された被ライニング既設管路の穿孔部封止処理工法。
【請求項3】
前記樹脂供給口は前記樹脂を含浸保持する多孔部材で塞がれており、前記摺動部材の摺動によって前記多孔部材を通過して前記樹脂が供給されることを特徴とする請求項2に記載された被ライニング既設管路の穿孔部封止処理工法。
【請求項4】
前記摺動部材は前記樹脂を押し出すためのピストン部材と前記支持軸の回転を規制する支持プレートを備えることを特徴とする請求項2又は3に記載された被ライニング既設管路の穿孔部封止処理工法。
【請求項5】
前記樹脂受け部材は、弾性変形可能な板材で形成され、外縁部に沿って前記穿孔部を囲繞する封止リングが設けられ、該封止リングの内側に前記樹脂充填空間が形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された被ライニング既設管路の穿孔部封止処理工法。
【請求項6】
前記樹脂受け部材設置工程は、活管状態の管路に対して、前記穿孔部を覆うノーブロー作業バッグ内で行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された被ライニング既設管路の穿孔部封止処理工法。
【請求項7】
管内面にライニング層が形成された被ライニング既設管路を対象として、管及びライニング層の穿孔部を封止処理する穿孔部封止処理治具であって、
前記穿孔部を介して管外から管内に挿入可能で、該挿入後に拡径して前記穿孔部及び該穿孔部の管内周囲に対面し、前記穿孔部の管内周囲に押圧されて前記穿孔部の管内周囲及びその内側に樹脂充填空間を形成する樹脂受け部材と、
内部に樹脂が装填されて前記穿孔部に臨む樹脂供給口を有すると共に前記穿孔部を塞ぐ外周部を有する樹脂シリンダと、
前記樹脂シリンダの軸方向に沿って配置され前記樹脂受け部材を支持する支持軸と、
前記樹脂シリンダ内を摺動して前記樹脂シリンダ内の樹脂を前記樹脂供給口から押し出す摺動部材と、
前記摺動部材に支持され該摺動部材を貫通した前記支持軸に螺合するねじ部とを備え、
前記ねじ部の締め付け操作によって、前記摺動部材を摺動させて前記樹脂シリンダ内の樹脂を前記樹脂供給口から押し出しながら、前記支持軸を引き上げて前記樹脂受け部材を前記穿孔部の管内周囲に近接させることを特徴とする被ライニング既設管路の穿孔部封止処理治具。
【請求項8】
前記樹脂供給口は前記樹脂を含浸保持する多孔部材で塞がれており、前記摺動部材の摺動によって前記多孔部材を通過して前記樹脂が供給されることを特徴とする請求項7に記載された被ライニング既設管路の穿孔部封止処理治具。
【請求項9】
前記摺動部材は前記樹脂を押し出すためのピストン部材と前記支持軸の回転を規制する支持プレートを備えることを特徴とする請求項7又は8に記載された被ライニング既設管路の穿孔部封止処理治具。
【請求項10】
前記樹脂受け部材は、弾性変形可能な板材で形成され、外縁部に沿って前記穿孔部を囲繞する封止リングが設けられ、該封止リングの内側に樹脂充填空間が形成されることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載された被ライニング既設管路の穿孔部封止処理治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−127316(P2010−127316A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299860(P2008−299860)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(593080294)株式会社カンドー (20)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】