説明

被写体の白飛び判定方法、判定装置、及び判定プログラム、並びに、画像検索方法、画像検索装置、及び画像検索プログラム

【課題】画像検索において、白飛びの度合いに応じて画像データを抽出し、ユーザの要望に応じた画像データを抽出する場合に有効となる、白飛び判定方法及び装置、白飛び判定プログラムを提供する。
【解決手段】被写体が含まれた画像データを選択する画像データ選択工程と、選択された画像データにおいて少なくとも前記被写体の顔領域を検出する前処理工程と、選択された画像データにおける白飛びを抽出する白飛び抽出工程と、検出された顔領域における複数の着目領域を特定する着目領域特定工程と、抽出された白飛びの着目領域に占める割合から画像データの白飛び印象度を判定する、白飛び印象度判定工程とを備える、白飛び判定方法とし、当該方法を実行可能な装置、プログラムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ(デジタル画像等)における被写体の白飛び判定方法、判定装置、及び白飛び判定プログラム、並びに、複数の画像データから任意の画像データを検索する画像検索方法、画像検索装置、及び画像検索プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の普及に伴い、手軽にスナップ写真を撮像することが可能となり、個人が所有する画像データ数は増加の傾向にある。このため、膨大な画像データの中から個人の要求に適した画像の検索を目的として、類似画像検索に関する検討が行われている。
【0003】
画像データの検索における個人の要求の一つとして、画像データの利用価値が挙げられる。画像データの利用価値は、例えば、画像データ取得時の照明条件や撮影方法に起因して変化する。特に、イベントにおける主たる人物を室内でストロボを用いて撮影した場合、当該人物に「白飛び」が生じやすく、画像データの利用価値に与える影響が大きい。「白飛び」とは、撮影対象における高輝度部分の輝度値が、撮像装置の持つ階調表現可能な範囲を超えることに起因して生じ、領域の情報が飽和する状態を意味する。すなわち、「白飛び」の度合いが大きい画像データは、色の濃淡や凹凸による質感が失われているため利用価値が小さく、画像検索の際このような画像データを適切に評価しつつ別個に抽出或いは検索結果から排除することができれば、検索効率の向上に寄与するものと考えられる。
【0004】
画像データの白飛びに関する従来技術としては、撮影時の白飛びを抑制するように制御する撮像装置や画像処理装置(特許文献1〜6)、撮影時、撮影対象に白飛びが生じている場合でも適切に顔検出を行うことができる画像処理装置(特許文献7)がある。これらは撮影時における画像処理に関するものであるものの、撮像後の画像データに係る画像検索にもある程度応用することができるものと考えられる。或いは、白飛び等の不具合が生じた画像データを有効に活用するため、当該不具合部分に絵や模様等を貼付する技術も開示されている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206801号公報
【特許文献2】特開2007−201979号公報
【特許文献3】特開2007−201655号公報
【特許文献4】特開2007−088650号公報
【特許文献5】特開2006−129449号公報
【特許文献6】特開2004−297269号公報
【特許文献7】特開2008−283573号公報
【特許文献8】特開2010−011189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像データの利用価値は、白飛びが顔領域の一部のみに生じている場合、白飛びが顔領域全体に生じている場合等、白飛びの度合いによって細分化されて変化する。一方、上述した従来技術は、局所領域におけるヒストグラムを用いた手法や局所領域における最大値と最小値との差分を用いた手法等によって白飛びの制御や補正を行うものであるが、いずれにおいても顔領域全体を対象としており、白飛びの度合いや画像データがユーザに与える印象を細分化して判定することができない。すなわち、特許文献1〜8に係る技術を画像検索に応用したとしても、白飛びの度合いに応じて画像データを抽出することはできず、ユーザの要望に応じた画像検索を行うことができない場合があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、画像検索において、白飛びの度合いに応じて画像データを抽出し、ユーザの要望に応じた画像データを抽出する場合に有効となる、白飛び判定方法、白飛び判定装置、及び白飛び判定プログラム、並びに、当該白飛びの判定結果を用いて効率的に画像検索を実行可能な画像検索方法、画像検索装置、及び画像検索プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、画像データにおける被写体の白飛び判定について研究を進めた結果、以下の知見を得た。
(1)被写体の白飛びの判定の際、着目領域として被写体の顔領域の他、顔領域における複数の領域、好ましくは鼻領域、額領域及び頬領域を用いることで、従来よりも適切な白飛び判定が可能となる。
(2)白飛びがユーザに与える印象の度合いを白飛び印象度として一意的且つ段階的に定義し、当該白飛び印象度によって画像データの白飛び判定を行うことで、適切且つ効率的な白飛び判定が可能となる。例えば、上記顔領域及び着目領域における白飛びの割合を算出し、各領域それぞれについて、算出した白飛びの割合が所定の閾値よりも大きいか否かを判定していくことで、画像データにおける白飛び情報を段階的に区分けすることができ、当該区分けの結果を段階的な白飛び印象度として設定することができる。
(3)白飛び箇所の閾値を決定し、さらに、閾値を用いて白飛び画素の抽出を行うことで、簡易的且つ適切な白飛び判定が可能となる。
(4)抽出した白飛び画素に係る情報と、上記各着目領域に係る情報とを組み合わせて、上記白飛び印象度の判定を行うことで、適切な白飛び判定が可能となる。
【0009】
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、
第1の本発明は、被写体が含まれた画像データを選択する、画像データ選択工程と、選択された画像データにおいて、少なくとも被写体の顔領域を検出する、前処理工程と、検出された顔領域における白飛びを抽出する、白飛び抽出工程と、検出された顔領域における複数の着目領域を特定する、着目領域特定工程と、抽出された白飛びの着目領域に占める割合から、画像データの白飛び印象度を判定する、白飛び印象度判定工程と、を備える、画像データにおける被写体の白飛び判定方法である。
【0010】
第1の本発明において、着目領域が、顔領域における鼻領域、額領域及び頬領域であることが好ましい。顔領域において白飛びはこれら特定の着目領域に生じやすく、着目領域をこれらに限定することで、白飛びの判定をより適切且つ効率的に行うことができる。
【0011】
第1の本発明に係る白飛び抽出工程において、閾値設定により白飛びが抽出されることが好ましい。本発明において、「閾値設定により白飛びが抽出される」とは、例えば、画像データにおける輝度値について、所定値を閾値として設定すること、当該閾値よりも大きな輝度値に係る画素を白飛び画素として抽出できる。これにより、白飛びの抽出をより的確に行うことができ、白飛びの判定を簡易且つ適切に行うことができる。
【0012】
第1の本発明に係る白飛び抽出工程において、画像データのRGB分離が行われることが好ましい。白飛びの抽出をより的確に行うことができ、白飛びの判定を簡易且つ適切に行うことができるためである。
【0013】
第1の本発明に係る白飛び印象度判定工程において、複数の着目領域のそれぞれにおける白飛び率W/S(W:領域内における白飛び画素数、S:領域内における肌を示す画素数)を用いて、白飛びの占める割合が特定されることが好ましい。着目領域における白飛びの度合いを適切に特定することができ、白飛び印象度を簡易且つ適切に判定することができるためである。
【0014】
第1の本発明に係る白飛び印象度判定工程において、白飛び率W/Sが閾値以上か否かを判定することにより、画像データの白飛び印象度を判定することが好ましい。白飛び印象度を一意的且つ簡易的に判定することができるためである。
【0015】
第2の本発明は、第1の本発明に係る白飛び判定方法による白飛び判定結果を用いて、画像データの検索処理を行う、画像検索方法である。
【0016】
第3の本発明は、被写体が含まれた画像データを選択する、画像データ選択手段と、選択された画像データにおいて、少なくとも被写体の顔領域を検出する、前処理手段と、検出された顔領域における白飛びを抽出する、白飛び抽出手段と、検出された顔領域における複数の着目領域を特定する、着目領域特定手段と、抽出された白飛びの着目領域に占める割合から、画像データの白飛び印象度を判定する、白飛び印象度判定手段と、を備える、画像データにおける被写体の白飛び判定装置である。
【0017】
第3の本発明において、着目領域が、顔領域における鼻領域、額領域及び頬領域であることが好ましい。顔領域において白飛びはこれら特定の着目領域に生じやすく、着目領域をこれらに限定することで、白飛びの判定をより適切且つ効率的に行うことができる。
【0018】
第3の本発明において、白飛び抽出手段が、閾値設定により白飛びを抽出するものであることが好ましい。白飛びの抽出をより的確に行うことができ、白飛びの判定を簡易且つ適切に行うことができるためである。
【0019】
第3の本発明において、白飛び抽出手段が、画像データのRGB分離を行うものであることが好ましい。白飛びの抽出をより的確に行うことができ、白飛びの判定を簡易且つ適切に行うことができるためである。
【0020】
第3の本発明において、白飛び印象度判定手段が、複数の着目領域のそれぞれにおける白飛び率W/S(W:領域内における白飛び画素数、S:領域内における肌を示す画素数)を用いて、白飛びの占める割合を特定するものであることが好ましい。着目領域における白飛びの度合いを適切に特定することができ、白飛び印象度を簡易且つ適切に判定することができるためである。
【0021】
第3の本発明において、白飛び印象度判定手段が、白飛び率W/Sが閾値以上か否かを判定することにより、画像データの白飛び印象度を判定するものであることが好ましい。白飛び印象度を一意的且つ簡易的に判定することができるためである。
【0022】
第4の本発明は、第3の本発明に係る白飛び判定装置と、該白飛び判定装置における白飛び判定結果を用いて画像データの検索処理を行う検索手段と、を備える、画像検索装置である。
【0023】
第5の本発明は、第3の本発明に係る白飛び判定装置において、画像データ選択手段に、被写体が含まれた画像データを選択させ、前処理手段に、検出された顔領域における複数の着目領域を特定させ、白飛び抽出手段に、選択された画像データにおける被写体の少なくとも顔領域を検出させ、着目領域特定手段に、検出された顔領域における白飛びを抽出させ、白飛び印象度判定手段に、抽出された白飛びの着目領域に占める割合から、画像データの白飛び印象度を判定させる、画像データにおける被写体の白飛び判定プログラムである。
【0024】
第5の本発明において、着目領域が、顔領域における鼻領域、額領域及び頬領域であることが好ましい。顔領域において白飛びはこれら特定の着目領域に生じやすく、着目領域をこれらに限定することで、白飛びの判定をより適切且つ効率的に行うことができる。
【0025】
第5の本発明において、白飛び抽出手段に、閾値設定により白飛びを抽出させることが好ましい。白飛びの抽出をより的確に行わせることができ、白飛びの判定を簡易且つ適切に行わせることができるためである。
【0026】
第5の本発明において、白飛び抽出手段に、画像データのRGB分離を行わせることが好ましい。白飛びの抽出をより的確に行わせることができ、白飛びの判定を簡易且つ適切に行わせることができるためである。
【0027】
第5の本発明において、白飛び印象度判定手段に、複数の着目領域のそれぞれにおける白飛び率W/S(W:領域内における白飛び画素数、S:領域内における肌を示す画素数)を用いて、白飛びの占める割合を特定させることが好ましい。着目領域における白飛びの度合いを適切に特定させることができ、白飛び印象度を簡易且つ適切に判定させることができるためである。
【0028】
第5の本発明において、白飛び印象度判定手段に、白飛び率W/Sが閾値以上か否かを判定させることにより、画像データの白飛び印象度を判定させるものであることが好ましい。白飛び印象度を一意的且つ簡易的に判定させることができるためである。
【0029】
第6の本発明は、第4の本発明に係る画像検索装置に、第5の本発明に係る白飛び判定プログラムにより被写体の白飛び判定を行わせるとともに、白飛び判定結果を用いて画像データの検索処理を行わせる、画像検索プログラムである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、画像検索において、白飛びの度合いに応じて画像データを抽出し、ユーザの要望に応じた画像データを抽出する場合に有効となる、白飛び判定方法、白飛び判定装置、及び白飛び判定プログラム、並びに、当該白飛びの判定結果を用いて効率的に画像検索を実行可能な画像検索方法、画像検索装置、及び画像検索プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一実施形態に係る本発明の白飛び判定方法の流れを説明するためのフローチャートである。
【図2】前処理工程における画像データの状態を説明するための概略図である。
【図3】白飛びを抽出する工程の流れを説明するためのフローチャートである。
【図4】白飛びを抽出する工程の流れを説明するための概略図である。
【図5】白飛びを抽出する工程における処理を説明するための概略図である。
【図6】着目領域の特定例を説明するための概略図である。
【図7】白飛び印象度を判定する工程の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】画像データにおける肌領域の抽出、肌領域の補間について説明するための概略図である。
【図9】白飛び印象度の判定に係る流れを説明するためのフローチャートである。
【図10】一実施形態に係る本発明の白飛び判定装置(或いは、画像検索装置)を示す概略図である。
【図11】実施例に係る撮影条件を説明するための概略図である。
【図12】閾値設定の詳細を説明するためのデータである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.白飛び判定方法
図1に本発明にかかる白飛び判定方法の一例を示す。図1に示すように、白飛び判定方法S10は、白飛びの判定を行う一の画像データを選択する工程S1、前処理として画像データにおける少なくとも顔領域を検出する工程S2、画像データにおける白飛びを抽出する工程S3、顔領域における複数の着目領域を検出する工程S4、及び、抽出した白飛びの着目領域に占める割合に基づいて白飛び印象度を判定する工程S5を備えている。
【0033】
1.1.画像データ選択工程S1
工程S1は、デジタルカメラ等により撮影され記憶装置等に取り込まれた画像データを選択する工程である。画像データを取り込む方法や記憶装置としては、従来公知のものを特に限定することなく用いることができる。選択の基準は特に限定されるものではなく、例えば、記憶装置内に記憶された複数の画像データについて、名前順や撮像日付順等、適当な順番にて本発明に係る白飛び判定方法S10を順次行えばよい。尚、選択する画像データは、被写体(人物)を正面から撮影したものが好ましく、例えば、図2(A)に示すように、被写体の顔領域が正面から撮影されてなる画像データ1(1a)のようなものが好ましい。
【0034】
1.2.前処理工程S2
工程S2は、選択された画像データにおける被写体の少なくとも顔領域を検出する工程である。例えば、図2(B)の画像データ1(1f)のように、画像データ1aにおける顔領域に係る位置が矩形にて検出される。顔領域を検出する場合、公知の顔検出方法を用いることができる。本発明において適用される具体的な顔検出方法としては、Haar−like特徴に着目した対象検出方法(Paul Viola and Michael Jones : “Rapid Object Detection using a Boosted Cascade of Simple Features”, IEEE CVPR(2001)や、Rainer Lienhart and Jochen Maydt “An Extended Set of Haar‐like Features for Rapid Object Detection”, Proceedings of the 2002 IEEE International Conference on Image Processing, Vol.1, 900‐903等)を挙げることができる。具体的には、例えば、選択された画像データ1aをグレースケール化し、Haar−like特徴を用いたBoosting学習を行い、対象画像と非対象画像とを分ける基準となる複数のHaar−like特徴と、それらの特徴を数値化した値から算出される閾値を抽出する。そして、当該閾値に基づいて、検出すべき画像領域か否かが判断され、肯定判断がされれば顔画像を含む画像領域として検出される。但し、Haar−like特徴に着目した顔検出方法のみでは、画像データ中の顔を精度よく検出できず、顔以外のオブジェクトを誤検出してしまう虞がある。そのため、本発明では、複数の顔検出方法を併用して顔画像を含む画像領域を検出することが好ましい。Haar−like特徴に着目した顔検出方法と併用可能な顔検出方法としては、例えば、ホワイトバランスに対応した肌検出が可能な、口唇周辺領域の彩度情報を利用した顔検出方法(大瀧健太、白澤洋一、西田眞、“ホワイトバランスの変化にロバストな肌抽出法に関する検討”電子情報通信学会ソサエティ大会、A−4−21(2007))や、色彩情報に着目して口唇形状の抽出処理を行うことができる方法(白澤洋一、西田眞、西健治、“色彩情報を用いたファジィ推論による口唇形状抽出に関する検討”電学論C、Vol.125、No.9、1430−1437(2005))等の方法を用いることが好ましい。
【0035】
また、工程S2においては、上記顔領域に加えて、顔領域における目領域や口唇領域を検出することが好ましい。例えば、図2(C)、(D)の画像データ1(1e)、1(1m)のように、画像データ1aにおける目領域や口唇領域に係る位置が矩形にて検出される。これらの検出には、従来公知の手法を用いることができる。例えば、口唇領域の検出には、上記した色彩情報に着目して口唇形状の抽出処理を行うことができる方法等を用いることができる。目領域の検出には、エッジ情報及び色情報を用いた目検出処理方法(戸塚、景山、西田、白澤、大滝、“ディジタル画像を対象とする特定人物判別に関する検討”、映像情報メディア学会冬季大会、8−5(2008))等を用いることができる。工程S2において目領域や口唇領域も併せて検出しておくことで、後述する着目領域の特定がより容易となる。
【0036】
1.3.白飛び抽出工程S3
工程S3は、選択した画像データ1における白飛びを抽出する工程である。図3に工程S3の一例を、図4に、当該各工程における、画像データ1の状態の変遷を概略的に示した。図3に示すように、工程S3は、画像データ1aのRGB分離を行う工程S3−1と、RGB分離した画像データ1r、1g、1bそれぞれについて閾値処理を行う工程S3−2と、閾値処理を行った各画像データ1t、1t、1tを論理積により統合し、白飛び部分を抽出する工程S3−3とを備えている。
【0037】
1.3.1.工程S3−1
工程S3−1は、白飛び判定対象である画像データをRGB分離する工程である。画像データのRGB分離については、公知の手法により実行可能である。例えば、Adobe Photoshop(登録商標)等の公知の画像処理ソフトウェアにより実行可能である。図4に示すように、工程S3−1を経て、画像データ1aは、R画像データ1r、G画像データ1g、B画像データ1bに分離される。
【0038】
1.3.2.工程S3−2
工程S3−2は、工程S3−1を経て分離・取得された画像データ1r、1g及び1bそれぞれについて、予め設定した閾値以下の階調レベル(輝度値)に係る画素について棄却する処理を行う工程である。すなわち、図4に示すように、画像データ1r、1g及び1bそれぞれについて、閾値よりも大きい輝度値部分を白飛び部分として一意的に特定し、それ以外の部分については棄却することにより、画像データ1r、1g及び1bをそれぞれ2値画像化する(画像データ1t、1t及び1t)。画像データ1r、1g及び1bのそれぞれの輝度値に係る閾値T、T及びTについては、画像データ1の状態に応じて適宜設定・変更可能であるが、例えば、次のようにして設定することができる。
【0039】
まず、参照用の画像データを用意し、当該参照用の画像データについて、目視で白飛びと判断した領域を手動で抽出する。参照用の画像データをRGB分離し、R画像、G画像、B画像それぞれについて、上記手動で抽出した領域における階調レベル(輝度値)xと、当該階調レベルxに対応する画素数との関係をヒストグラム関数H(x)、H(x)及びH(x)として特定し、それぞれグラフ化する。例えば、R画像に係るヒストグラム関数H(x)は、図5のようにグラフ化される。図5に示すように、上記手動で抽出した領域においては、所定の階調レベル以下の画素数が残存し、所定の階調レベルよりも大きくなると急激に画素数が増大している。このことは、手動での白飛び抽出においては、実際は白飛びとはいえない低階調レベルに係る画素についても誤抽出してしまうことを意味している。すなわち、このような誤抽出を一意的に排除することで、所定の階調レベル以上を白飛びとみなすことが可能となる。本発明者らは参照用画像データを複数用意し、そのすべてについて上記手動による白飛び抽出と、上記ヒストグラム関数によるグラフ化を行った結果、得られたヒストグラム関数H(x)を積分し、全画素数の5〜15%、好ましくは10%となる階調レベルxを閾値Tとし、当該閾値T以下の画素については棄却することで、手動による抽出領域において白飛び画素のみをさらに抽出できることを知見した。このようにして参照画像データのR画像、G画像及びB画像それぞれにおける白飛びの閾値T、T及びTを設定したところ、R画像については、輝度値249〜253、好ましくは輝度値252が閾値Tとして適切であり、G画像については、輝度値229〜246、好ましくは輝度値241が閾値Tとして適切であり、B画像については、輝度値205〜234、好ましくは輝度値226が閾値Tとして適切であることを知見した。
【0040】
工程S3−2では、上記のように、参照用画像データによって予め設定しておいた閾値T、T及びTを用いて、画像データ1r、1g及び1bそれぞれについて、輝度値が閾値T、T又はT以下の画素を棄却する。これにより画像データ1r、1g及び1bはそれぞれ白飛び部分以外の画素が棄却され、白飛び画素とみなされた部分のみが抽出される(画像データ1t、1t、1t)。
【0041】
1.3.3.工程S3−3
工程S3−3は、工程S3−2にて白飛び画素のみを抽出した画像データ(画像データ1t、1t及び1t)について、RGB画像を統合し、論理積によりR画像、G画像及びB画像のすべてにおいて白飛び画素として特定された画素を、画像データ1aにおける白飛び画素として抽出する工程である。論理積によるRGB画像の統合については、公知の手法を用いることができる。例えば、Adobe Photoshop(登録商標)等の公知の画像処理ソフトウェアを用いることができる。これにより、画像データ1aを、白飛び画素が抽出された画像データ1wとすることができる。
【0042】
このようにして工程S3において、画像データにおける白飛びを抽出する一方で、本発明に係る白飛び判定方法S10では、工程S4において画像データの顔領域における着目領域を特定する。
【0043】
1.4.着目領域特定工程S4
工程S4は、工程S2にて検出した顔領域における着目領域を特定する工程である。本発明は後述するように、顔領域に加えて顔領域における着目領域に生じた白飛びの割合に応じて白飛び印象度として判定することにより、被写体の白飛び判定を従来よりも適切に実行可能としたものである。顔領域における着目領域としては、白飛びの判定に有用となる領域であれば特に限定されるものではないが、白飛びが生じやすい領域とすることが好ましい。特に、鼻領域、額領域及び頬領域の少なくともいずれか、好ましくはすべて、を着目領域とすることが望ましい。着目領域は顔領域の特定によってある程度的確に特定することが可能である。一方、工程S2において、顔領域に加えて目領域や口唇領域も併せて検出しておくことで、着目領域の特定がより的確且つ容易となる。図6に、検出した顔領域によって鼻領域を、顔領域と目領域とによって額領域を、顔領域と目領域と口唇領域とによって頬領域を、それぞれ特定する方法を示す。
【0044】
1.4.1.鼻領域の特定
被写体の顔を正面から撮影した画像データにおいては、鼻筋に白飛びが生じやすい。本発明では、このような白飛びが生じやすい領域を着目領域とし、顔領域とは別個に白飛びの判定基準とする。被写体の顔を正面から撮影した画像データにおいては、顔領域の中央に鼻が存在する。よって、工程S2において検出した顔領域の中央部分を鼻領域として特定することができる。具体的には、図6(A)に示すように、顔領域1fを3×3分割し、分割した領域のうち中央部分の領域を鼻領域1nとして矩形状にて特定することができる。
【0045】
1.4.2.額領域及び頬領域の特定
被写体の顔を正面から撮影した画像データにおいては、鼻に次いで、額や頬に白飛びが生じやすい。本発明では、このような白飛びが生じやすい領域を着目領域とし、顔領域とは別個に白飛びの判定基準とする。被写体の顔を正面から撮影した画像データにおいては、鼻領域に隣接して上側に額領域及び左右に頬領域が存在する。よって、工程S2において検出した顔領域と、上記のように特定した鼻領域とを用いて、当該鼻領域の上領域を額領域とし、左右領域を頬領域として特定することができる。このように、額領域及び頬領域は、顔領域の検出と鼻領域の特定とによって、的確に位置を特定することができる。一方で、工程S2において顔領域の他、目領域と口唇領域とを検出しておくことで、額領域及び頬領域をさらに的確に特定することができる。
【0046】
例えば、図6(B)に示すように、顔領域1fと目領域1e、1eとを用いることで、額領域1fhを的確に特定することができる。具体的には、左右の目領域1e、1eの上端のうち、下側となる部分(図6(B)では、目領域1eの上端)を額領域1fhの下端とし、顔領域1fの上端を額領域1fhの上端とする。そして、目領域1e、1eにおける上下方向の垂直二等分線をそれぞれ額領域1fhの左右端とする。このようにして、額領域1fhを矩形上にて特定することができる。
【0047】
一方、図6(C)に示すように、顔領域1fと目領域1e、1eと口唇領域1mとを用いることで、頬領域1c、1cを的確に特定することができる。例えば右頬領域1cを特定する場合、右目領域1eの下端を右頬領域1cの上端とし、口唇領域1mの上端を右頬領域1cの下端とする。そして、口唇領域1mの上下方向垂直二等分線X1と、右目領域1eの上下方向垂直二等分線X2との間を等分する上下方向垂直二等分線X3を右頬領域1cの左方向一端とする。一方、右目領域1eの右端と顔領域1fの右端との間を等分する上下方向垂直二等分線Yを右頬領域1cの右方向一端とする。このようにして右頬領域1cを矩形上にて特定することができる。左頬領域1cについても同様である。
【0048】
このようにして、工程S4において、顔領域における各着目領域(特に、鼻領域、額領域及び頬領域)が特定される。
【0049】
1.5.白飛び印象度判定工程S5
工程S5は、工程S2によって検出した顔領域、工程S3によって抽出した白飛び、及び工程S4によって特定した着目領域を用いて、白飛び印象度の判定を行う工程である。図7に、工程S5の一例を示す。図7に示すように、工程S5は、前処理として画像データにおける肌情報を抽出、任意に補間する工程S5−1と、画像データの白飛び印象度を判定する工程S5−2とを備えている。
【0050】
1.5.1.工程S5−1
工程S5−1は、画像データの肌情報を抽出し、任意に補間する工程である。画像データからの肌情報の抽出については、例えば、「白澤、大滝:“色被りにロバストな肌領域抽出法〜「色温度に独立な特徴量」と「色温度に従属な特徴量」を併用した肌領域抽出〜”、画像ラボ、Vol.19、No.11、pp.36‐41(2008)」に記載された手法等、公知の手法を用いることができる。一方、本発明者らは、白飛びを有する人物画像について、肌情報を抽出した場合、白飛びに起因して肌情報の一部が欠落する傾向を認めた。そのため、画像データから単に肌情報を抽出するだけでなく、肌情報の補間を行うことで、画像データにおける肌情報を欠落なく特定することができ好ましい。図8に、肌情報の補間に係る一例を示した。図8に示すように、画像データ1aについて公知の手法により肌情報を抽出して画像データ1s’を取得した場合、白飛び部分の少なくとも一部が肌情報から欠落する。そのため取得した画像データ1s’に対して、工程S3にて取得した閾値処理後のR画像1tを論理和により統合することによって、画像データ1s’の肌情報を補間することができる(画像データ1s)。
【0051】
1.5.2.工程S5−2
工程S5−2は、工程S2によって検出した顔領域、工程S3によって抽出した白飛び、工程S4によって特定した着目領域、及び工程S5−1において取得した画像データにおける肌情報を用いて、画像データの白飛び印象度を判定する工程である。
【0052】
画像データは、当該画像データに含まれる白飛びのサイズや位置によって異なる印象度合いを有する。当該印象度合いは、画像データの利用価値に影響を与える。すなわち、画像データにおける白飛びにより人物写真の利用価値は、下記のように大きく変化する。
(1)良好:利用価値の高い状態(白飛びがない、或いはほとんどない。)
(2)おおむね良好:ユーザの要求に適さない場合もある状態(ある程度の白飛びが存在する。)
(3)不適:ユーザの要求に適さない状態(かなりの割合で白飛びが存在する。)
【0053】
本発明では、画像データ中の白飛びがユーザに与える印象の度合いを「白飛び印象度」として設定し、白飛びを判定する特徴量として用いる。白飛び印象度は、顔領域及び着目領域における白飛びの有無、度合いによって一意的に設定できる。ここで、顔領域及び着目領域における白飛びの有無、度合いは、白飛び率W/S(Wは領域における白飛び画素数、Sは領域における肌情報に係る画素数)を算出することにより特定可能である。そして、画像データにおいて、白飛び箇所がない場合(いずれの領域においてもW/S=0)、白飛び印象度を「無」とする。このような画像データは、最も利用価値が高く「良好」な画像データといえる。一方、着目領域に白飛びが生じている場合(W/S>0)、顔領域や着目領域における白飛びの度合いに応じて、白飛び印象度は「弱」「中」「強」とする。このような画像データにあっては、利用価値が「おおむね良好」であるか「不適」である。通常、顔領域に占める白飛びの割合が大きい場合、ユーザにとって当該画像データの利用価値は「不適」と判断される場合が多い。本発明では、顔領域における白飛びの度合いが大きい場合(W/Sが所定の閾値よりも大きい)、白飛び印象度を「強」とし、画像データの白飛び判定を「不適」とする。一方、顔領域における白飛びの度合いが小さい場合(W/Sが所定の閾値以下)においては、着目領域における白飛びの度合いに応じて白飛び印象度を「弱」又は「中」とし、画像データの白飛び判定を「良好」或いは「おおむね良好」とする。このように白飛び印象度を段階的に判定することで、画像データの白飛びを細分化して判定することができる。
【0054】
特に、着目領域として鼻領域、額領域及び頬領域を用いた場合、簡易且つ適切に白飛び印象度を判定することができる。図9に、着目領域として鼻領域、額領域及び頬領域を用いた場合における工程S5−2の具体例を示す。図9に示すように、工程S5−2は、鼻領域内の白飛び率W/Sを算出する工程S5−2aと、当該白飛び率W/Sが閾値Thよりも大きいか否かを判定する工程S5−2bと、顔領域内の白飛び率W/Sを算出する工程S5−2cと、当該白飛び率W/Sが閾値Thよりも大きいか否かを判定する工程S5−2dと、額及び頬領域内白飛び率WFC/SFCを算出する工程S5−2eと、当該白飛び率WFC/SFCが閾値Thよりも大きいか否かを判定する工程S5−2fと、を備えている。
【0055】
人物を正面から撮影した画像データにおいては、顔領域の鼻筋に最も白飛びが生じやすい。そのため、工程S5では、まず、工程S5−2aにおいて鼻領域における白飛びの有無を判定する。具体的には、鼻領域において肌を示す画素数S、及び鼻領域において白飛びを示す画素数Wとを用いて、白飛び率W/Sを算出する。そして、工程S5−2bにおいて、工程S5−2aにて算出した白飛び率W/Sが閾値Thよりも大きいか否かを判定する。閾値Thの設定については、特に限定されるものではなく、適宜設定・変更可能であるが、白飛びの有無を判定する観点から、Th=0とすることが好ましい。工程S5−2bにおいて、白飛び率W/SがTh以下と判定された場合、画像データに係る白飛び印象度は「無」と判定される。一方、工程S5−2bにおいて、白飛び率W/SがThよりも大きいと判定された場合、画像データには白飛びが存在するため、当該白飛びの度合いをさらに細分化して判定するため、工程S5−2cに進む。
【0056】
工程S5−2cでは、顔領域において肌を示す画素数S、及び顔領域において白飛びを示す画素数Wとを用いて、白飛び率W/Sを算出する。そして、工程S5−2dにおいて、工程S5−2cで算出した白飛び率W/Sが閾値Thよりも大きいか否かを判定する。閾値Thの設定については、特に限定されるものではないが、例えば、Th=0.100〜0.300、好ましくは0.120〜0.150、最も好ましくは、0.135とすることにより、白飛び印象度「強」(白飛び判定に係る利用価値「不適」)のものと白飛び印象度「弱」又は「中」(白飛び判定に係る利用価値、「良好」又は「おおむね良好」)のものとを適切に分けることができる。すなわち、工程S5−2dにおいて、白飛び率W/SがThよりも大きいと判定された場合、画像データに係る白飛び印象度は「強」と判定される。一方、工程S5−2dにおいて、白飛び率W/SがTh以下と判定された場合、画像データには白飛びが存在するものの、画像データの利用価値に与える悪影響はさほど大きくはない。よって、大まかな白飛び判定で十分である場合は、画像データの白飛び印象度の判定をこの時点で終了としてもよい。しかしながら、白飛び印象度の判定をさらに細分化し、さらに適切な白飛び判定を可能とする観点からは、図9に示すように、工程S5−2eに進むことが好ましい。
【0057】
工程S5−2eでは、額領域おいて肌を示す画素数SFH、及び額領域において白飛びを示す画素数WFHとを用いて、額領域における白飛び率WFH/SFHを算出し、右頬領域において肌を示す画素数SCR、及び右頬領域において白飛びを示す画素数WCRとを用いて、右頬領域における白飛び率WCR/SCRを算出し、且つ、左頬領域において肌を示す画素数SCL、及び左頬領域において白飛びを示す画素数WCLとを用いて、左頬領域における白飛び率WCL/SCLを算出し、これら算出値のうち最大値となるものを額領域及び頬領域内白飛び率WFC/SFCとする。そして、工程S5−2fにおいて、工程S5−2eで求めた白飛び率WFC/SFCが閾値Thよりも大きいか否かを判定する。閾値Thの設定については、特に限定されるものではないが、例えば、Th=0.002〜0.040、好ましくは0.010〜0.030、最も好ましくは0.025とすることにより、白飛び印象度「中」(白飛び判定に係る利用価値「おおむね良好」)のものと白飛び印象度「弱」(白飛び判定に係る利用価値、「良好」)のものとを適切に分けることができる。すなわち、工程S5−2fにおいて、白飛び率WFC/SFCがThよりも大きいと判定された場合、画像データに係る白飛び印象度は「中」と判定される。一方、工程S5−2fにおいて、白飛び率WFC/SFCがTh以下と判定された場合、画像データに係る白飛び印象度は「弱」と判定される。
【0058】
本発明に係る白飛び判定方法S10は、工程S1〜S5を経て、画像データに係る白飛び印象度を判定し、白飛び判定の特徴量として用いる。尚、上記説明では、白飛び印象度の判定結果をそのまま白飛び判定結果として用いているが、白飛び印象度に係る判定結果と、その他のパラメータ(画像データにおける被写体の大きさ等)とを組み合わせて、白飛び判定結果としてもよい。或いは、被写体が複数人の場合、複数の白飛び印象度を組み合わせて白飛び判定結果としてもよい。本発明に係る白飛び判定方法においては、画像データにおける顔領域のみならず、顔領域における着目領域をも用いて白飛び印象度を細分化して判定しているので、簡易的且つ適切に白飛び判定を行うことができる。そして、当該白飛びの判定結果は、画像検索において、白飛びの度合いに応じて画像データを抽出し、ユーザの要望に応じた利用価値の高い画像データを抽出する場合に有効となる。
【0059】
2.白飛び判定装置及び白飛び判定プログラム
本発明に係る白飛び判定方法S10を実行可能な白飛び判定装置について説明する。図10に一実施形態に係る本発明の白飛び判定装置10を概略的に示した。図10に示すように、白飛び判定装置10は、上記画像データ選択工程S1を行う画像データ選択手段、上記前処理工程S2を行う前処理手段、上記白飛び抽出工程S3を行う白飛び抽出手段、上記着目領域特定工程S4を行う着目領域特定手段、及び上記白飛び印象度判定工程S5を行う白飛び印象度判定手段、として機能するCPU1、並びに、CPU1に対する記憶装置等を備えている。CPU1は、マイクロプロセッサユニット及びその動作に必要な各種周辺回路を組み合わせて構成され、CPU1に対する記憶装置は、例えば、上記工程S1〜S5の判断、実行に必要なプログラムや各種データ(例えば、判定対象となる複数の画像データ)を記憶するROM2と、CPU1の作業領域として機能するRAM3等を組み合わせて構成されている。当該構成に加えて、さらに、CPU1が、ROM2に記憶されたソフトウェアと組み合わされることにより、白飛び判定装置10が機能する。
【0060】
画像データの白飛び判定を行うユーザは、入力手段6(例えば、パソコンのキーボード等)を介して、白飛び判定装置10へとデータを入力していく。入力手段6からの入力信号は、入力ポート4を介して、入力信号としてCPU1へと到達する。CPU1は、入力手段6からの信号、及び、ROM2に記憶されたプログラムに基づいて、上記工程S1〜S5を行い、出力ポート5を介して、判定結果に関する信号を出力手段(例えば、パソコンの画面等)へと出力し、出力手段7に白飛び判定結果が表示される。例えば、複数の画像データに対して白飛び判定を実行し、画像データのそれぞれの利用価値(上記「良好」、「おおむね良好」、「不適」)を特定し、当該特定結果が出力手段7に表示される形態の他、画像データのうち利用価値の高いもの(「良好」、「おおむね良好」)のみを表示したり、或いは、利用価値の高い順に複数の画像データが並び替えられて出力手段7に表示されるような形態とすることで、出力手段7に表示された結果により、ユーザは各画像データの利用価値を特定することができる。
【0061】
具体的には、入力手段6を介して、白飛び判定方法S10を実行するために必要となる信号や情報(画像データの選択信号、白飛び抽出の際の閾値T、T、T、白飛び印象度判定の際の閾値Th、Th、Th等)が、白飛び判定装置10へと入力される。一方、ROM2には、本発明に係る白飛び判定方法S10を実行可能な白飛び判定プログラムが記憶されており、当該プログラムを実行することによって、CPU1にて白飛び判定方法S10を行わせることができる。白飛び判定プログラムは、白飛び判定装置10に白飛び判定方法S10を行わせることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、下記のようなものとすることができる。
【0062】
すなわち、ユーザからの入力信号によって、画像データ選択手段(CPU1)に、記憶手段(ROM2やその他外付け媒体等)から、一の画像データを選択させ、処理手段(CPU1)に、選択された画像データにおける被写体の少なくとも顔領域を検出させ、白飛び抽出手段(CPU1)に、選択された画像データにおける白飛びを抽出させ、着目領域特定手段(CPU1)に、検出された顔領域における複数の着目領域を特定させ、白飛び印象度判定手段(CPU1)に、抽出された白飛びの着目領域に占める割合から、画像データの白飛び印象度を判定させる、白飛び判定プログラムによって、白飛び判定装置10に白飛び判定方法S10を実行させることができる。
【0063】
ここで、着目領域として、顔領域における鼻領域、額領域及び頬領域を特定させることが好ましい。上述の通り、顔領域において白飛びはこれら特定の着目領域に生じやすく、着目領域をこれらに限定することで、白飛びの判定をより適切且つ効率的に行うことができる。
【0064】
また、白飛び抽出手段(CPU1)に、閾値設定により白飛びを抽出させることによって、白飛びの抽出をより的確に行わせることができ、白飛びの判定を簡易且つ適切に行わせることができる。
【0065】
さらに、白飛び抽出手段(CPU1)に、画像データのRGB分離を行わせることによって、白飛びの抽出をより的確に行わせることができ、白飛びの判定を簡易且つ適切に行わせることができる。
【0066】
一方、白飛び印象度判定手段(CPU1)に、複数の着目領域のそれぞれにおける白飛び率W/S(W:領域内における白飛び画素数、S:領域内における肌を示す画素数)を用いて、白飛びの占める割合を特定させることによって、着目領域における白飛びの度合いを適切に特定させることができ、白飛び印象度を簡易且つ適切に判定させることができる。
【0067】
加えて、白飛び印象度判定手段(CPU1)に、白飛び率W/Sが閾値以上か否かを判定させて、画像データの白飛び印象度を判定させることによって、白飛び印象度を一意的且つ簡易的に判定させることができる。
【0068】
このような白飛び判定プログラムをROM2に記憶させ、CPU1にて実行することにより、CPU1にて適切に白飛び判定方法S10を実行することが可能となる。
【0069】
以上のように、白飛び判定装置10には、被写体が含まれた画像データを選択する、画像データ選択手段(CPU1)と、選択された画像データにおいて、少なくとも被写体の顔領域を検出する、前処理手段(CPU1)と、選択された画像データにおける白飛びを抽出する、白飛び抽出手段と(CPU1)、検出された顔領域における複数の着目領域を特定する、着目領域特定手段(CPU1)と、抽出された白飛びの着目領域に占める割合から、画像データの白飛び印象度を判定する、白飛び印象度判定手段(CPU1)と、が備えられており、且つ、上記した白飛び判定プログラムによって、白飛び判定方法S10を実行可能とされている。すなわち、当該白飛び判定装置10によれば、画像検索において、白飛びの度合いに応じて画像データを抽出し、ユーザの要望に応じた画像データを抽出する場合に有効となる、白飛びの判定を適切に実行することができる。
【0070】
3.画像検索方法
本発明に係る白飛び判定方法の判定結果は、画像検索において有効な絞り込み条件となる。画像検索方法については、白飛び判定結果を用いることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、上記した白飛び判定方法による白飛び判定結果を用いて、複数の画像データから利用価値の高いもののみを検索・抽出するもの、或いは、複数の画像データについて利用価値の高い順に並び替えるもの等を例示することができる。
【0071】
4.画像検索装置及び画像検索プログラム
既に説明した白飛び判定装置10において、さらに画像検索を実行可能とすることもできる。すなわち、白飛び判定装置10のCPU1が、画像検索手段としての機能も担うことで、白飛び判定装置10を画像検索装置とすることができる。このためには、ROM2に上記白飛び判定プログラムに加えて、画像検索プログラムも記憶させておく必要がある。画像検索プログラムとしては、上記した白飛び判定プログラムによる白飛び判定結果を用いて、画像検索手段(CPU1)に、入力手段6からの信号により、複数の画像データから、利用価値の高い画像データ(例えば、白飛び判定方法により、利用価値が「良好」、「おおむね良好」として特定された画像データ)のみを検索・抽出させるものや、複数の画像データのうち利用価値の高いものから、ユーザの閾値設定等により、所定の画像データを検索・抽出を行わせるもの(利用価値の高いものについて、さらに検索絞り込みを行わせるもの)、複数の画像データについて利用価値の高い順に並び替えさせるもの等を例示することができる。
【0072】
以上のように、複数の画像データそれぞれに対して、白飛び判定装置10に本発明に係る白飛び判定方法を実行させ、画像データの白飛び判定結果(白飛びに起因した利用価値)を取得し、当該白飛び判定結果を用いて、画像検索手段に画像検索を行わせることにより、複数の画像データから利用価値の高いもののみを検索・抽出、或いは、並び替えを行うことができ、ユーザの要望に応じた画像検索・抽出が可能となり、検索効率を向上させることできる。
【実施例】
【0073】
図11に示すように、室内で顔を正面に向けている人物一人を対象とし、デジタルカメラを用いてストロボ撮影を行った。検討用データ161枚、実験用データ275枚、合計436枚の人物写真を取得した。検討用データの被験者数は7名、実験用データの被験者数は8名とした。さらにストロボ光(全22種)、ストロボ角度(2種:仰角60°、75°)、室内照明光(3種:蛍光灯5箇所、3箇所、1箇所)を変化させ、使用画像データ取得時における照明の設定を行った。照明の設定条件を下記表1に示す。尚、実施例においては、照明の変化に応じた白飛びの変化を使用画像データに反映させるため、撮像装置の設定を固定した(絞り:f5.6、シャッター速度:1/125s、ISO感度:1600)。
【0074】
【表1】

【0075】
本発明に係る白飛び判定方法の有用性を検討するため、複数の被験者が目視により利用に適すると判定した結果(以下、目視判定結果という。)と、本発明に係る白飛び判定方法により得られる白飛び印象度とを用いて利用に適すると判定した結果(以下、白飛び判定結果という。)との比較を行った。
【0076】
(目視判定)
被験者11名に実験用データ275枚を提示し、人物写真における利用の適否(使用の可否判断)を評価した。尚、実験用データに対する評価は、以下に示す3項目について行った。
(1)白飛びが無い、又は白飛びが生じているが利用できる(良好)
(2)白飛びがあるため、利用できない(不適)
(3)上記(1)、(2)のどちらか判断しかねる(おおむね良好)
【0077】
また、上記(1)、(2)及び(3)に対し、それぞれ「1」、「3」及び「2」と数値を割り当てた。当該数値を用いて、対象データに対する評価の平均値を算出し、これを目視判定結果とした。具体的には、平均値が(i)1.5未満の場合「良好」、(ii)2.5以上の場合「不適」、(iii)それ以外を「おおむね良好」に設定した。
【0078】
(白飛び判定及び閾値の設定)
下記表2に示すように、白飛び印象度を「無」及び「弱」(利用価値「良好」、白飛び箇所:無又は鼻)、「中」(利用価値「おおむね良好」、白飛び箇所:鼻と額、鼻と頬、或いは、鼻と額と頬)、「強」(利用価値「不適」、白飛び箇所:顔の広範囲(全体))の3段階に分類し、上記白飛び判定方法S10を行った。ここで、閾値T=252、T=241、T=226、Th=0とした。また、閾値Th、Thは下記のように設定した。
【0079】
【表2】

【0080】
顔領域内白飛び率W/SとThとを用いて白飛び印象度を「強」と「中・弱・無」との2組に分類する性能(以下、Th分類性能という。)をS、額領域内白飛び率WFC/SFCとThとを用いて白飛び印象度を「強・中」と「弱・無」との2組に分類する性能(以下、Th分類性能という。)をSと定義した。具体的には、S及びSは、「正しく分類を行った件数/顔検出が成功した画像数」である。また、Th分類性能、Th分類性能が大きいほど、正しい分類が行われたことを意味するため、S及びSを最大にするTh及びThを白飛び解析における閾値として設定した。
【0081】
実験用データを対象として、閾値Th及びThと分類性能S2及びS3の関連を取得したところ、図12のようになった。図12から、閾値Thを0.135、閾値Thを0.025とすることが最適であることがわかった。
【0082】
(結果)
目視判定結果と白飛び判定結果の比較結果を下記表3、表4に示す。目視判定結果に対する白飛び判定結果の一致率は、約88.4%と高い値を得ている。また、表4に示すように目視判定結果と大きく異なる評価を行った白飛び判定結果例は1例のみであった。すなわち、本発明に係る白飛び判定方法で得られた結果は、白飛びの特徴を適切に捉えており、大きな誤判定は生じ難いことが示唆された。
【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
以上より、白飛びがユーザに与える印象の度合いを「白飛び印象度」として一意的に設定し、これを白飛び判定の特徴量として用いることで、白飛び判定を適切に実行できることがわかった。また、白飛びの色情報に着目して、閾値設定により白飛び画素の抽出を行うことで、白飛びを適切に抽出でき、白飛び印象度を適切に判定可能であることがわかった。さらに、白飛び印象度の判定の際においても閾値を設定することにより、白飛び印象度を簡易且つ適切に分類でき、白飛び判定をさらに適切に実行可能であることがわかった。
【0086】
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う被写体の白飛び判定方法、判定装置及び判定プログラム、並びに、画像検索方法、検索装置及び検索プログラムもまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【0087】
例えば、上記説明においては、着目領域として、鼻領域、額領域及び頬領域を例示したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、口唇領域や目領域に着目してもよい。ただし、顔領域において最も白飛びが生じ易く、白飛びの判定をより適切に行うことが可能な観点からは、鼻領域、額領域又は頬領域のいずれか、好ましくはすべてを着目領域とすることが望ましい。
【0088】
また、上記説明においては、白飛び印象度判定の際、白飛び率W/Sを算出するものとして説明したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、白飛び画素数をそのまま白飛び印象度の判定に直結させてもよい。ただし、白飛び印象度の判定、ひいては白飛びの判定をより適切に行うことが可能な観点からは、各領域における白飛び率W/Sを算出し、算出値を基準に、閾値処理によって白飛び印象度の判定を行うことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明によれば、複数の画像データについて検索を行い、目的とする画像データを抽出する際、効率的な検索が可能とされ、検索・抽出時間を短縮化でき、且つ、精度のよい適切な検索が可能とされ、目的とする画像データを効率的に取得することができる。従って、膨大な量の画像データを検索により絞り込み、目的の画像データを早期に得たい場合に、特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体が含まれた画像データを選択する、画像データ選択工程と、
選択された前記画像データにおいて、少なくとも前記被写体の顔領域を検出する、前処理工程と、
選択された前記画像データにおける白飛びを抽出する、白飛び抽出工程と、
検出された前記顔領域における複数の着目領域を特定する、着目領域特定工程と、
抽出された白飛びの前記着目領域に占める割合から、前記画像データの白飛び印象度を判定する、白飛び印象度判定工程と、
を備える、画像データにおける被写体の白飛び判定方法。
【請求項2】
前記着目領域が、前記顔領域における鼻領域、額領域及び頬領域である、請求項1に記載の白飛び判定方法。
【請求項3】
前記白飛び抽出工程において、閾値設定により白飛びが抽出される、請求項1又は2に記載の白飛び判定方法。
【請求項4】
前記白飛び抽出工程において、前記画像データのRGB分離が行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の白飛び判定方法。
【請求項5】
前記白飛び印象度判定工程において、複数の前記着目領域のそれぞれにおける白飛び率W/S(W:領域内における白飛び画素数、S:領域内における肌を示す画素数)を用いて、前記白飛びの占める割合が特定される、請求項1〜4のいずれかに記載の白飛び判定方法。
【請求項6】
前記白飛び印象度判定工程において、前記白飛び率W/Sが閾値以上か否かを判定することにより、前記画像データの白飛び印象度を判定する、請求項5に記載の白飛び判定方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の白飛び判定方法による白飛び判定結果を用いて、画像データの検索処理を行う、画像検索方法。
【請求項8】
被写体が含まれた画像データを選択する、画像データ選択手段と、
選択された前記画像データにおいて、少なくとも前記被写体の顔領域を検出する、前処理手段と、
選択された前記画像データにおける白飛びを抽出する、白飛び抽出手段と、
検出された前記顔領域における複数の着目領域を特定する、着目領域特定手段と、
抽出された白飛びの前記着目領域に占める割合から、前記画像データの白飛び印象度を判定する、白飛び印象度判定手段と、
を備える、画像データにおける被写体の白飛び判定装置。
【請求項9】
前記着目領域が、前記顔領域における鼻領域、額領域及び頬領域である、請求項8に記載の白飛び判定装置。
【請求項10】
前記白飛び抽出手段が、閾値設定により白飛びを抽出するものである、請求項8又は9に記載の白飛び判定装置。
【請求項11】
前記白飛び抽出手段が、前記画像データのRGB分離を行うものである、請求項8〜10のいずれかに記載の白飛び判定装置。
【請求項12】
前記白飛び印象度判定手段が、複数の前記着目領域のそれぞれにおける白飛び率W/S(W:領域内における白飛び画素数、S:領域内における肌を示す画素数)を用いて、前記白飛びの占める割合を特定するものである、請求項8〜11のいずれかに記載の白飛び判定装置。
【請求項13】
前記白飛び印象度判定手段が、前記白飛び率W/Sが閾値以上か否かを判定することにより、前記画像データの白飛び印象度を判定するものである、請求項12に記載の白飛び判定装置。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれかに記載の白飛び判定装置と、該白飛び判定装置における白飛び判定結果を用いて画像データの検索処理を行う検索手段と、を備える、画像検索装置。
【請求項15】
請求項8に記載の白飛び判定装置において、
画像データ選択手段に、被写体が含まれた画像データを選択させ、
前処理手段に、選択された前記画像データにおける前記被写体の少なくとも顔領域を検出させ、
白飛び抽出手段に、選択された前記画像データにおける白飛びを抽出させ、
着目領域特定手段に、検出された前記顔領域における複数の着目領域を特定させ、
白飛び印象度判定手段に、抽出された白飛びの前記着目領域に占める割合から、前記画像データの白飛び印象度を判定させる、
画像データにおける被写体の白飛び判定プログラム。
【請求項16】
前記着目領域が、前記顔領域における鼻領域、額領域及び頬領域である、請求項15に記載の白飛び判定プログラム。
【請求項17】
前記白飛び抽出手段に、閾値設定により白飛びを抽出させる、請求項15又は16に記載の白飛び判定プログラム。
【請求項18】
前記白飛び抽出手段に、前記画像データのRGB分離を行わせる、請求項15〜17のいずれかに記載の白飛び判定プログラム。
【請求項19】
前記白飛び印象度判定手段に、複数の前記着目領域のそれぞれにおける白飛び率W/S(W:領域内における白飛び画素数、S:領域内における肌を示す画素数)を用いて、前記白飛びの占める割合を特定させる、請求項15〜18のいずれかに記載の白飛び判定プログラム。
【請求項20】
前記白飛び印象度判定手段に、前記白飛び率W/Sが閾値以上か否かを判定させることにより、前記画像データの白飛び印象度を判定させるものである、請求項19に記載の白飛び判定プログラム。
【請求項21】
請求項14に記載の画像検索装置に、請求項15〜20のいずれかに記載の白飛び判定プログラムにより被写体の白飛び判定を行わせるとともに、判定結果を用いて画像データの検索処理を行わせる、画像検索プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−191908(P2011−191908A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56229(P2010−56229)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】