説明

被分析液抽出装置

【課題】PCB類を含む油性液体から分析結果に影響するような成分が除去されたPCB類が含まれる被分析液を抽出する前処理が短時間で行える被分析液抽出装置の提供。
【解決手段】精製カラム11内に供給されたPCB類が含まれる採取液Aを加熱して、PCB類以外の成分を精製カラム11内の第1充填剤11bと第2充填剤11cで捕捉する。常温に冷却された精製カラム11内に第1溶媒Bを供給して、精製カラム11内に捕捉されたPCB類を溶解して、精製カラム11から濃縮カラム12に供給する。精製カラム11から分離した濃縮カラム12を上下反転した後、PCB類が溶解した第1溶媒Bを濃縮カラム12内の第3充填剤12aに捕捉して乾燥させる。濃縮カラム12内に供給される第2溶媒Cで第3充填剤12aに捕捉されたPCB類を溶解して、PCB類が含まれる被分析液Dを抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばPCB類を含む油性液体から分析結果に影響するような成分が除去された該PCB類を抽出する際に用いられる被分析液抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトランス、コンデンサー等の電気機器に使用される電気絶縁油には、電気絶縁性に優れたポリ塩化ビフェニル類(以下、PCB類と略称する)を含むものが使用されていた。しかし、生体に対するPCB類の毒性が確認されたことから、PCB類を含む電気絶縁油等の使用は実質的に禁止となっている。また、PCB類の安全な化学分解処理法が確立されたことを背景にPCB特別措置法が制定され、平成28年7月までの間に、これまで使用または保管されていた電気絶縁油をはじめとする全てのPCB類廃棄物の処理が義務付けられている。
【0003】
前記PCB特別措置法対象のPCB類廃棄物は、0.5mg/kg以上のPCB類を含むものと定められているので、前記PCB類廃棄物に該当するか否かを判定する必要がある。また、電気絶縁油に所定濃度のPCB類が含まれるか否かは、通常、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)やガスクロマトグラフ電子捕獲検出法(GC/ECD法)のような分析装置を用いた分析方法によって判定されるため、電気絶縁油から採取した被分析液は、分析結果に影響する成分を除去するための前処理が必要である。
【0004】
前処理に用いられる装置としては、例えば特許文献1に開示される抽出装置がある。この抽出装置は、電気絶縁油から採取したPCB類が含まれる油性液体試料を、第一カラム内に充填された上層の第一充填剤(硫酸シリカゲル)から下層の第二充填剤(硝酸銀シリカゲル)へ供給するとともに、第一カラムを第一加熱手段で加熱して、油性液体試料に含まれるPCB類以外の不純物を第一充填剤に保持し、第一充填剤により分解された分解生成物を第二充填剤に捕捉する。
【0005】
次に、脂肪族炭化水素溶媒を第一カラム内に供給して、第一充填剤に保持されたPCB類を脂肪族炭化水素溶媒に溶解するとともに、PCB類が溶解した肪族炭化水素溶媒を、第一カラムに連結された第二カラム内に供給して、脂肪族炭化水素溶媒に溶解するPCB類を、第二カラム内に充填された第三充填剤(アルミナ)に捕捉する。
【0006】
次に、第一カラムと第二カラムとを分離した後、第二カラムを第二加熱手段で加熱し、ドライエア等の不活性ガスを第二カラム内に供給して、脂肪族炭化水素溶媒を第二カラムから排出し、第三充填剤を乾燥処理する。第二カラムを上下反転した後、親水性溶媒を第二カラム内に供給して、第三充填剤に捕捉されたPCB類を親水性溶媒に溶解して一緒に排出する。これにより、PCB類の抽出液を抽出するものである。
【0007】
しかし、特許文献1の抽出装置は、第一カラムを加熱するための第一加熱手段と、第二カラムを加熱するための第二加熱手段とが別々に設置されているので、装置全体の構成及び構造が複雑となるだけでなく、大型化するという問題がある。
【0008】
また、第一カラムは、油性液体試料に含まれるPCB類以外の不純物や分解され分解生物を捕捉するため容量が大きいものが用いられる。しかし、第二カラムは、脂肪族炭化水素溶媒に溶解するPCB類を捕捉し、その捕捉されたPCB類を親水性溶媒に溶解して排出するため容量が小さいものが用いられる。このため、第二カラムを第一カラムと同じ温度で加熱すると、第二カラムの方が第一カラムに比べて容量が小さいため加熱しすぎることになり、例えばヘキサン、トルエン等の引火性が高い溶媒を用いた際、溶媒が発火する恐れがあるだけでなく、所望する濃度を有するPCB類の抽出液を抽出することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−168459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、PCB類を含む油性液体から分析結果に影響するような成分が除去された該PCB類が含まれる被分析液を抽出する前処理が短時間で行える被分析液抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、PCB類が含まれる油性液体から分析結果に影響するような成分が除去されたPCB類が含まれる被分析液を抽出する被分析液抽出装置であって、前記油性液体に含まれるPCB類以外の成分を分解して捕捉する第1充填剤が上層側に充填され、前記第1充填剤を通過した残りの成分を捕捉する第2充填剤が下層側に充填された精製カラムと、前記精製カラムの上層側に対し着脱自在に接続され、前記PCB類を捕捉するための第3充填剤が充填された濃縮カラムと、前記精製カラムを、前記油性液体が注入される上層側が上向きとなる姿勢に保持する精製カラム保持手段と、前記油性液体が上層側に注入された前記精製カラムを、前記PCB類以外の成分が第1充填剤によって分解される温度に加熱する加熱手段と、前記加熱手段にて加熱された前記精製カラムを、前記PCB類以外の成分が分解される温度より低い温度に冷却する冷却手段と、前記冷却手段にて冷却された前記精製カラムの上層側から前記PCB類が溶解される第1溶媒を供給し、該精製カラムの下層側から流出される前記PCB類が溶解した第1溶媒を前記濃縮カラムに供給する溶媒供給手段と、前記精製カラムから分離された前記濃縮カラムを、前記第1溶媒の供給側とは逆方向から前記PCB類を溶解するための第2溶媒が供給される上下逆向き姿勢に保持する濃縮カラム保持手段とを備え被分析液抽出装置であることを特徴とする。
【0012】
つまり、PCB類が含まれる油性液体を精製カラム保持手段で保持された精製カラムの上層側に注入した後、精製カラム内に供給された油性液体を加熱手段で加熱して、PCB類以外の成分を精製カラム内の第1充填剤と第2充填剤で捕捉する。冷却手段で冷却された精製カラム内に第1溶媒を供給して、精製カラム内に捕捉されたPCB類を溶解し、精製カラムから濃縮カラムに供給する。精製カラムから分離した濃縮カラムを上下反転して濃縮カラム保持手段で保持した後、PCB類が溶解した第1溶媒を濃縮カラム内の第3充填剤に捕捉し、濃縮カラム内に供給される第2溶媒で第3充填剤に捕捉されたPCB類を溶解して、PCB類が含まれる被分析液を抽出する。
これにより、PCB類が含まれる油性液体から、分析結果に影響するような成分が除去されたPCB類が含まれる被分析液を抽出することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記加熱手段が備えられた一つの加熱台の上面に、前記精製カラムが垂直に挿入される精製カラム挿入孔と、前記濃縮カラムが垂直に挿入される濃縮カラム挿入孔とを設け、前記精製カラム挿入孔と前記精製カラムとの関係において、前記精製カラム挿入孔を、前記加熱台から前記精製カラムに伝導される熱を前記第1充填剤によるPCB類以外の成分の分解が促進される温度に調節する大きさに形成し、前記濃縮カラム挿入孔と前記濃縮カラムとの関係において、前記濃縮カラム挿入孔を、前記加熱台から前記濃縮カラムに伝導される熱を前記第3充填剤に捕捉された第1溶媒の乾燥が促進される温度に調節する大きさに形成することができる。
【0014】
例えば精製カラム挿入孔及び濃縮カラム挿入孔の一方の挿入孔をカラムと対応する大きさに形成すれば、加熱部の熱が挿入孔の内面からカラムに直接伝導されるので、高い温度で加熱される。また、他方の挿入孔をカラム以上の大きさに形成すれば、加熱部の熱が挿入孔の内面から放熱され、その放熱された熱がカラムに伝導されるので、前記直接伝導するよりも低い温度で加熱される。
これにより、一つの加熱台により、精製カラム挿入孔に挿入された精製カラムと、濃縮カラム挿入孔に挿入された濃縮カラムとを異なる温度で加熱することができる。
【0015】
また、この発明の態様として、前記精製カラム挿入孔を、前記精製カラムの外周面に対し接触が可能な大きさ及び形状に形成し、前記濃縮カラム挿入孔を、前記濃縮カラムより大きく該カラムの外周面に対し接触が回避される大きさ及び形状に形成し、該濃縮カラム挿入孔の内面と前記濃縮カラムの外面との間に、該濃縮カラム挿入孔の内面から放熱される熱を前記濃縮カラムに対し伝導するための空間を設けることができる。
【0016】
前記精製カラムを加熱する際、加熱手段によって加熱された加熱部の熱が精製カラム挿入孔の内面から精製カラムに対し直接的に伝導されるので、精製カラムを加熱する際の熱損失が少なくて済み、効率よく加熱することができる。
一方、濃縮カラムを加熱する際、加熱手段によって加熱された加熱部の熱が濃縮カラム挿入孔の内面から放熱され、その放熱された熱が、濃縮カラムと濃縮カラム挿入孔との間に形成された空間内の空気層に伝導される。その空気層に伝導された熱によって濃縮カラム挿入孔に挿入した濃縮カラムが間接的に加熱されるので、精製カラムを加熱する際の温度に比べて、濃縮カラムを加熱する際の温度が低くなる。
これにより、濃縮カラムの加熱温度を、精製カラムの加熱温度より低い温度に調節することができる。
【0017】
なお、前記空間を狭くすれば、濃縮カラムと濃縮カラム挿入孔との対向面間が近くなるので、濃縮カラムの加熱温度を高くすることができる。また、空間を広くすれば、濃縮カラムと濃縮カラム挿入孔との対向面間が離れるため、濃縮カラムの加熱温度を低くすることができる。つまり、空間の大きさに応じて、濃縮カラムの加熱温度を最適な温度に調節することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記加熱手段を、予め設定された発熱温度に発熱するヒータで構成することができる。
つまり、ヒータは、予め設定された発熱温度以上に温度上昇することがないので、そのヒータの発熱温度を、精製カラムを加熱するのに最適な温度に予め設定しておけば、濃縮カラムの加熱温度が前記空気層によって温度調節されるため、精製カラムの加熱温度よりも高い温度で加熱されることがない。
【0019】
また、この発明の態様として、前記濃縮カラムの内部に対し該濃縮カラムに充填された第3充填剤の第1溶媒供給側からエアーを供給し、前記第3充填剤に捕捉されたPCB類が溶解した第1溶媒を加熱して乾燥させる乾燥手段を備えることができる。
つまり、濃縮カラムの内部に対し第1溶媒供給側からエアーを供給しつつ、第3充填剤に捕捉されたPCB類が溶解した第1溶媒を加熱して乾燥させる。
これにより、第2溶媒Cを、濃縮カラムの内部に対し第1溶媒の供給側とは逆方向から供給すれば、第3充填剤に捕捉されたPCB類が含まれる被分析液を速やかに抽出することができる。
【0020】
また、この発明の態様として、前記冷却手段を、前記加熱手段にて加熱された前記精製カラムを常温又は常温に近い温度に自然冷却する構成とすることができる。
【0021】
つまり、精製カラムを自然冷却するので、例えば冷却装置、送風機等の冷却手段で強制的に冷却する必要がなく、冷却コストの低減を図ることができる。
【0022】
PCB類を含む油性液体は、例えばトランスやコンデンサーなどの電気機器に用いられている電気絶縁油、化学実験や化学工場において生成されたPCB類を含む廃有機溶媒、分析のためにPCB類を含む試料から有機溶媒でPCB類を抽出した抽出液およびPCB類の分解処理施設で発生する分解処理液や洗浄液で構成することができる。また、製造過程においてPCB類が混入した油を含む場合がある。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、PCB類が含まれる油性液体から、分析結果に影響するような成分が除去されたPCB類が含まれる被分析液を抽出する前処理が短時間で行えるとともに、簡易定量法にて分析する際に適用される被分析液を即得ることができる。これにより、被分析液に含まれるPCB類の濃度を分析する作業が迅速且つ正確に行え、分析時間の短縮及び分析コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の被分析液抽出装置を示す正面図。
【図2】精製カラムを冷却部に移動した被分析液抽出装置を示す平面図。
【図3】精製カラムを加熱部に挿入する被分析液抽出装置を示す縦断側面図。
【図4】各カラムを挿入する加熱部の挿入孔の配置を示す平面図。
【図5】採取液を精製カラムに注入する注入方法を示す説明図。
【図6】加熱部における精製カラムの加熱方法を示す正面図。
【図7】精製カラムを精製用挿入孔に挿入した状態を示す拡大縦断側面図。
【図8】冷却部における精製カラムの冷却方法を示す正面図。
【図9】第1溶媒を精製カラムに注入する溶媒注入方法を示す正面図。
【図10】精製カラムから分離した濃縮カラムの乾燥方法を示す正面図。
【図11】濃縮カラムを乾燥用挿入孔に挿入した状態を示す拡大縦断側面図。
【図12】PCB類が含まれる被分析液を溶出する溶出方法を示す正面図。
【図13】採取液から被分析液を抽出する抽出方法を示す概念図。
【図14】各処理に対応して操作部に表示される内容を示す説明図。
【図15】被分析液抽出装置の制御系を示すブロック図。
【図16】精製カラム固定板を機械的に移動する他の実施形態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
【0026】
図1は本実施形態の被分析液抽出装置10を示す正面図、図2は精製カラム11を冷却部60に移動した被分析液抽出装置10を示す平面図、図3は精製カラム11を加熱部50に挿入する被分析液抽出装置10を示す縦断側面図、図4は精製カラム11と濃縮カラム12を挿入する加熱部50の挿入孔51a,51bの配置を示す平面図である。
また、図5は採取液Aを精製カラム11に注入する注入方法を示す説明図、図6は加熱部50における精製カラム11の加熱方法を示す正面図、図7は精製カラム11を精製用挿入孔51aに挿入した状態を示す拡大縦断側面図、図8は冷却部60における精製カラム11の冷却方法を示す正面図、図9は第1溶媒Bを精製カラム11に注入する溶媒注入方法を示す正面図、図10は精製カラム11から分離した濃縮カラム12の乾燥方法を示す正面図である。
また、図11は濃縮カラム12を乾燥用挿入孔51bに挿入した状態を示す拡大縦断側面図、図12はPCB類が含まれる被分析液Dを溶出する溶出方法を示す正面図、図13は採取液Aから被分析液Dを抽出する抽出方法を示す概念図、図14は各処理に対応して操作部31に表示される内容を示す説明図、図15は被分析液抽出装置10の制御系を示すブロック図である。
【0027】
本実施形態の被分析液抽出装置10は、装置本体20の正面から見て左側に設けられた制御部30と、該装置本体20の制御部30より右側に設けられた処理室40と、処理室40内の前方下部に設けられたブロック型の加熱部50と、処理室40内の中央上部に設けられた冷却部60と、処理室40内の後方上部に設けられた溶媒供給部70とを備えている。また、処理室40は、前面及び上面が開放された箱型に形成されている。
【0028】
制御部30の前面には、装置本体20の駆動及び停止を操作するタッチパネル式の操作部31と、装置本体20の全体を待機状態に通電する電源スイッチ32とが配置されている。
【0029】
制御部30には、CPU33と、ROM34と、RAM35とが内蔵されている(図15参照)。また、CPU33は、ROM34に格納されたプログラムに沿って、操作部31と、後述するヒータ52と、温度センサー53と、ブザー37と、排気ファン38と、エアーポンプ39との駆動及び停止を制御する。
さらに、CPU33には、処理の開始から終了までの経過時間を計時するためのタイマー36が内蔵されている。また、RAM35には、ヒータ52の発熱時間と、排気ファン38とエアーポンプ39の駆動時間が記憶されている。
【0030】
CPU33は、被分析液抽出装置10による被分析液Dを抽出する抽出処理の進み具合に応じて、RAM35に記憶された抽出処理に関連する処理内容及びボタン類を操作部31の画面に表示する。
【0031】
また、操作部31の画面に表示される内容は、被分析液Dの抽出処理と対応して順に表示される「加温中」、「冷却完了」、「送液完了」、「乾燥中」、「溶出中」などの処理内容と、抽出処理に対応して順に表示される「ON」、「OFF」、「停止」、「終了」、「確認」、「ブザー停止」及び「ウォームアップ」、「精製・送液・乾燥」、「精製」、「送液」、「乾燥」などのボタン類からなる。
【0032】
また、CPU33は、ヒータ52に対する通電時間と、排気ファン38とエアーポンプ39の駆動時間をタイマー36で計時するとともに、ヒータ52を、予め設定された温度と時間で発熱させる。さらにまた、排気ファン38とエアーポンプ39を、予め設定された時間駆動させる。さらにまた、ブザー37を、予め設定された時間だけ鳴らす。
【0033】
精製カラム11と濃縮カラム12は、耐溶媒性及び耐熱性に優れたガラス製のカラム、或いは、プラスチック製のカラムで構成されている。また、精製カラム11の上端側外周縁には、後述する挿入孔の環状段部に係止される鍔部11aが形成されている。
【0034】
さらに、精製カラム11の上層側内部には、硫酸シリカゲルからなる第1充填剤11bが充填されている。また、精製カラム11の下層側内部には、硝酸複合金属塩シリカゲル或いは硝酸複合金属塩シリカゲルのいずれか一方の溶媒からなる第2充填剤11cが充填されている。
【0035】
濃縮カラム12は、精製カラム11の下端と外径及び内径が同一に形成されており、該濃縮カラム12の内部には、PCB類を捕捉するための活性アルミナからなる第3充填剤12aが充填されている。また、濃縮カラム12の上端側は、耐溶媒性および耐熱性を有する筒状の接続部材13を介して、精製カラム11の下端部に対し着脱自在に接続される。
【0036】
電気絶縁油から採取された1.0〜500mg程度の採取液AからPCB類を抽出する場合、精製カラム11の大きさは、内径10〜20mmで長さが30〜110mmのものが用いられるが、内径10mm、長さ60mm程度のものが好ましい。
【0037】
また、濃縮カラム12の大きさは、内径2.0〜5.0mmで長さが10〜200mmのものが用いられるが、内径3mm、長さ100mm程度のものが好ましい。
【0038】
なお、PCB類を捕捉可能なものであれば、実施形態の第3充填剤12aのみに限定されるものではなく、例えば塩基性アルミナ、中性アルミナ、酸性アルミナを用いてもよい。
【0039】
本実施形態では、後述するカラム受け台14を用いて、PCB類が含まれる採取液Aを精製カラム11に注入する。
カラム受け台14は、6本の精製カラム11が配列される大きさ及び形状に形成されている。また、カラム受け台14の上面には、精製カラム11を垂直に起立した姿勢に保持する凹状の受け部14aが、該カラム受け台14の上面に沿って長手方向に対し等間隔に隔てて6箇所配列されている。
【0040】
つまり、精製カラム11は、第1充填剤11bが充填された上層側が上向きで、第2充填剤11cが充填された下層側が下向きとなる姿勢のまま、カラム受け台14の受け部14aに対し1本ずつ垂直に挿入される。その精製カラム11に充填された第1充填剤11bの上層側に、電気絶縁油から採取されたPCB類が含まれる採取液Aを供給する。
【0041】
加熱部50は、処理室40内の前方下部に配置され、該処理室40内の両側壁に対し水平に固定されている。該加熱部50は、後述する精製カラム固定板57と対応する左右長さ及び前後幅に形成されている。
また、加熱部50は、平面から見て横長に形成されたアルミニウム合金製のブロック50a,50bで構成され、該ブロック50a,50bは、正面から見て左右の隣り合う位置に並列配置されている。
なお、ブロック50a,50bを、アルミニウム合金以外の熱伝導性が良い金属で形成してもよい。
【0042】
ブロック50a,50bの上面には、図4、図7、図11に示すように、後述する精製カラム固定板57の挿入孔57aより下方に突出された精製カラム11が垂直に挿入される平面から見て丸形状の挿入孔51aと、後述する濃縮カラム固定板58の挿入孔58aより下方に突出された濃縮カラム12が垂直に挿入される平面から見て四角形状の挿入孔51bとが隣り合う位置に形成されている。
【0043】
挿入孔51a,51bは、該挿入孔51a,51bの外周縁部が互いに接するように近接して配置され、2個を一組として、ブロック50a,50bの上面に対し3組ずつ配置されている。また、挿入孔51a,51bは、ブロック50a,50bの上下面に対し垂直方向に貫通して形成されている。
【0044】
挿入孔51aは、後述する精製カラム固定板57の挿入孔57aより下方に突出された精製カラム11の下端側外周面に対し均等に接触が可能な孔径及び形状に形成されている(図7参照)。
また、挿入孔51aは、精製カラム固定板57の挿入孔57aと対応する位置及び間隔に隔てて、ブロック50a,50bの上面に沿って長手方向に対し同一線上に3個ずつ直列に配置している。
なお、精製カラム11の挿入が許容されるならば、挿入孔51aの内径を精製カラム11の外径と同一に形成してもよい。
【0045】
挿入孔51bは、後述する濃縮カラム固定板58の挿入孔58aより下方に突出された濃縮カラム12の下端側外周面に対し接触が回避される大きさ及び形状に形成されている(図11参照)。
また、挿入孔51bは、濃縮カラム固定板58の挿入孔58aと対応する位置及び間隔に隔てて、ブロック50a,50bの上面に沿って長手方向に対し同一線上に3個ずつ直列に配置している。
【0046】
精製カラム11を挿入孔51aに挿入する際には、後述する精製カラム固定板57が用いられる。また、濃縮カラム12を挿入孔51bに挿入する際には、後述する濃縮カラム固定板58が用いられる。
つまり、精製カラム11は、加熱部50の上面と対向する位置に配置された精製カラム固定板57の挿入孔57aに挿入することにより、挿入孔51aの内周面に対し触れるか触れない程度の位置に保持される。
これにより、挿入孔51aに挿入された精製カラム11には、ヒータ52により加熱されたブロック50a,50bの熱が挿入孔51aの内周面から直接的に伝導される。
【0047】
一方、濃縮カラム12は、加熱部50の上面と対向する位置に移動された濃縮カラム固定板58の挿入孔58aに挿入することにより、挿入孔51bの中心部に対し垂直に挿入され、該挿入孔51bの内周面に対し接触が回避された位置に保持される。
これにより、挿入孔58aに保持された濃縮カラム12の外周面と、該濃縮カラム12が挿入された挿入孔51bの内周面との間には、濃縮カラム12に対しヒータ52の熱が直接伝導されるのを回避するための空間Fが形成される。
【0048】
挿入孔51bに挿入された濃縮カラム12には、ヒータ52により加熱されたブロック50a,50bの熱が挿入孔51bの内周面から放熱され、その放熱された熱が挿入孔51bと濃縮カラム12との間に形成された空間F内の空気層に伝導される。さらに、その空気層に伝導された熱によって濃縮カラム12が間接的に加熱される。
【0049】
これにより、ヒータ52により精製カラム11は直接的に加熱され、濃縮カラム12は間接的に加熱されるので、ヒータ52の発熱温度が、精製カラム11を加熱するのに最適な温度に予め設定されていても、精製カラム11を加熱する際の温度(例えば85℃)よりも、濃縮カラム12を加熱する際の温度(例えば70℃)が低くなる。
したがって、一つの加熱部50により、挿入孔58aに挿入された精製カラム11と、挿入孔51bに挿入された濃縮カラム12とを異なる温度で加熱することができる。
【0050】
また、加熱部50の前面側中央部、すなわち、ブロック50a,50bの間には、ヒータ52による加熱温度を検知するための温度センサー53が取り付けられている。
【0051】
ヒータ52は、挿入孔51a,51bを一組として、ブロック50aの中央部に配置された真ん中の組と、その両側部に配置された左右の各組との間、及び、両側部に配置された各組の外側とにそれぞれ配置されている。
また、ヒータ52は、予め設定された発熱温度以上に温度上昇することがない自己温度制御機能を有するカートリッジ型のPTCヒータで構成されている。
なお、ヒータ52は、上記ブロック50aと同様に、ブロック50bにも配置されている。
【0052】
つまり、挿入孔51aに挿入された精製カラム11には、ヒータ52により加熱されたブロック50a,50bの熱が直接的に伝導される。しかし、ヒータ52は、予め設定された発熱温度以上に温度上昇することがないので、例えば炭化水素系溶媒等の揮散溶媒が発火する温度よりも低い発熱温度に予め温度設定しておけば、精製中及び濃縮中において、過熱しすぎや火災等が発生するのを防止することができる。
【0053】
ヒータ52による第1充填剤11bの加熱温度は、80℃が最も好ましい。つまり、加熱温度が60℃以下であれば反応速度が遅くなり、加熱温度が90度以上になると反応速度が速くなるが、溶媒の揮散量が増加するため発火等の危険性が高くなる。また、加熱時間は10分〜60分が好ましく、低温であれば時間が長くなり、高温であれば時間が短くなる。
【0054】
なお、温度センサー53を、加熱部50の挿入孔51a,51bにそれぞれ設けてもよい。また、精製カラム11及び濃縮カラム12を均一に加熱することが可能であれば、PTCヒータ以外のパネルヒータを用いてもよい。
【0055】
さらに、加熱部50の下方には、後述するバイアル56を載置するための載置台54が配置されている。
載置台54は、加熱部50の下面と対向して処理室40内の両側壁に対し水平に固定されている。また、載置台54の上面には、加熱部50の挿入孔51bと対向する位置に、バイアル56が垂直に挿入される凹状の受け部55が形成されている。
【0056】
受け部55は、挿入孔51aと対応する間隔に隔てて、載置台54の上面に沿って長手方向に6個配列されている。
なお、バイアル56は、例えばガラス、セラミックス、プラスチック等の耐薬品性及び耐熱性に優れた材質で形成され、後述する被分析液Dを入れるための溶媒容器である。
【0057】
加熱部50と対応する処理室40内の上方両側壁には、精製カラム固定板57の両端が係止される凹状の支持部59が固定されている。
つまり、精製カラム11が挿入孔57aに挿入された精製カラム固定板57の両端を左右の支持部59に係止すると、該挿入孔57aより下方に突出された精製カラム11の下端側が加熱部50の挿入孔51aに挿入される。また、精製カラム11の上層側及び下層側が挿入孔51aに対し挿入された高さ位置に保持される。
このとき、精製カラム固定板57は、加熱部50に対し接触が回避される高さ位置に支持される。
【0058】
精製カラム固定板57は、後述する加熱部50の上面と対応する左右長さ及び前後幅に形成されている。該精製カラム固定板57の上面には、加熱部50の挿入孔51aと対応する位置に、精製カラム11を垂直に挿入した状態に保持する平面から見て丸形状の挿入孔57aが厚み方向に貫通して複数形成されている。
また、挿入孔57aは、挿入孔51aの中心と一致する位置に形成され、精製カラム11を挿入孔51aの中心部に対し垂直に挿入された位置に保持する。
【0059】
挿入孔57aは、3個を一組として、精製カラム固定板57の長手側中央部を中心として左右対称に配列されている。また、3個の挿入孔57aは、精製カラム固定板57の上面に沿って長手方向に対し等間隔に隔てて同一線上に配列されている。また、挿入孔57aの上端側内周縁には、精製カラム11の上端側外周縁に形成された鍔部11aが係止される環状の段部57bが形成されている(図3参照)。
【0060】
つまり、精製カラム11を、加熱部50の上方に架設された精製カラム固定板57の挿入孔57aに挿入すると、精製カラム11の鍔部11aが挿入孔57aの段部57bに係止され、該精製カラム11の鍔部11aより下端側が挿入孔57aより下方に突出される。
【0061】
これにより、精製カラム11の全体が、精製カラム固定板57の挿入孔57aに対し垂直に挿入された状態に保持される。また、精製カラム11の鍔部11aより下方の上層側及び下層側が加熱部50の挿入孔51aに対し挿入許容される長さ突出される。
【0062】
また、精製カラム固定板57の上面両端には、該精製カラム固定板57を持ち上げるための取っ手57cが取り付けられている。つまり、取っ手57cは、精製カラム11が挿入された精製カラム固定板57を、加熱部50から後述する冷却部60へ移動する際に作業者の手で把持される。
【0063】
加熱部50の後方には、後述する濃縮カラム12を垂直に保持するための濃縮カラム固定板58が、加熱部50の上面に対し接触が回避される高さ位置に水平配置されている。
また、濃縮カラム固定板58は、装置本体2の前後方向Eと平行する方向に向けてスライド自在に設けられ、作業者の手で加熱部50の上面と対向する前進位置と、該上面から退避させた後退位置とに前後移動される。
【0064】
濃縮カラム固定板58は、上述した加熱部50の上面と対応する左右長さ及び前後幅に形成されている。該濃縮カラム固定板58の上面には、加熱部50の挿入孔51bと対応する位置に、濃縮カラム12を垂直に挿入された姿勢に保持するための挿入孔58aが厚み方向に貫通して複数形成されている。
【0065】
挿入孔58aは、平面から見て丸形状に形成され、濃縮カラム12を挿入孔51bの中心部に対し垂直に挿入された位置に保持する。
また、挿入孔58aの内周面に、図示しない柔軟性を有する滑り止め部材が装着されており、該滑り止め部材の接触抵抗により濃縮カラム12を挿入孔58aに挿入された状態に保持する。
他の保持方法として、例えば挿入孔58aの内径を濃縮カラム12の外径と同径に形成するか、挿入孔58aに挿入された濃縮カラム12をクランプで保持する等してもよい。
【0066】
挿入孔58aは、3個を一組として、濃縮カラム固定板58の長手側中央部を中心として左右対称に配列されている。また、3個の挿入孔58aは、該挿入孔58aの中心と挿入孔51bの中心とが一致する間隔に隔てて濃縮カラム固定板58の上面に沿って長手方向に対し同一線上に配列されている。
【0067】
つまり、濃縮カラム固定板58を、加熱部50の上面と対向する位置にスライド移動し、ブロック50a,50bの挿入孔51bに対し濃縮カラム固定板58の挿入孔58aを連通させた後、濃縮カラム12を、濃縮カラム固定板58の挿入孔58aに上方から挿入する。
これにより、濃縮カラム12が、挿入孔51bの中心部に対し垂直に挿入され、該挿入孔51bの内壁に対し等間隔に隔てられた位置に保持される。
【0068】
また、濃縮カラム固定板58を、加熱部50に対し接触が回避される高さ位置に架設しているので、挿入孔58aに挿入された濃縮カラム12に対し加熱部50に蓄積された熱が直接伝導されることがない。
【0069】
冷却部60は、処理室40内の中央上部に配置されている。また、冷却部60と対応する処理室40内の上方両側壁には、精製カラム固定板57の両端が係止される凹状の支持部61が固定されている。また、支持部61は、精製カラム固定板57が水平に支持される高さ位置に固定されている。
【0070】
冷却部60の後方には、後述するキャップ64を載せておくためのキャップ載せ板62が、処理室40内の両側壁に対して水平に固定されている。また、キャップ載せ板62の上面には、1個のキャップ64を載せるための載せ部63が、該キャップ載せ板62の上面に沿って長手方向に6個配列されている。
【0071】
キャップ64の装着面には、精製カラム11の鍔部11aと対向して耐薬品性及び耐熱性に優れたゴム製のパッキン65が取り付けられている。また、キャップ64の中心部に形成された孔部64aには、後述する送液チューブ66の一端が接続されている。
【0072】
つまり、キャップ64は、不要時においてキャップ載せ板62の載せ部63に載置されているが、精製カラム11内に対し後述する第1溶媒Bを供給する際に、精製カラム11の上端に対し気密状態に取り付けられる。
【0073】
また、キャップ64は、精製カラム11の上端に対しクランプ67で固定されるので、パッキン65が、精製カラム11の鍔部11aに対し気密状態に密着され、送液時に液漏れが生じることがない。
【0074】
溶媒供給部70は、処理室40内の後方上部に配置されている。また、溶媒供給部70と対応する処理室40内の上方両側壁には、後述する溶媒貯蔵部72が着脱自在に取り付けられた貯蔵部固定板71が水平に固定されている。
【0075】
貯蔵部固定板71の平面には、1本当たり20mlの第1溶媒Bが貯蔵された注射器型の溶媒貯蔵部72が垂直に固定されている。また、溶媒貯蔵部72は、精製カラム固定板57に挿入された精製カラム11と対応して、該貯蔵部固定板71の上面に沿って長手方向に6本配列されている。なお、第1溶媒Bは、脂肪族炭化水素溶媒であるヘキサンで構成されている。
【0076】
溶媒貯蔵部72の下端には、前記柔軟性を有する送液チューブ66の他端が接続されている。この溶媒貯蔵部72の上端には、前記キャップ64と同一構造のキャップ73が取り付けられている。また、キャップ73は、前記クランプ67と同一構造のクランプ74にて溶媒貯蔵部72の上端に固定される。
【0077】
キャップ73の中心部に形成された孔部73aには、柔軟性を有する送気チューブ75の一端が接続されている。また、送気チューブ75の他端は、処理室40の後側上部外壁に固定された第1のエアー分配器76の吐出ポート76aに接続されている。
【0078】
第1のエアー分配器76の供給ポート76bには、処理室40の後側下部外壁に固定されたエアーポンプ39が送気チューブ75を介して接続されている。
【0079】
つまり、第1のエアー分配器76は、エアーポンプ39から供給されるエアーを同じ圧力及び同じ供給量に保ったまま6本に分流するとともに、送気チューブ75を介して、6本の溶媒貯蔵部72の上端側内部に供給する。
【0080】
これにより、エアーの圧力によって溶媒貯蔵部72から第1溶媒Bが送り出されるとともに、送液チューブ66を介して精製カラム11の上層側内部に送液されるので、6本の精製カラム11に対し均等に送液することができる。また、被分析液Dを抽出する際の条件を一定に保つことができ、抽出精度の安定及び向上を図ることができる。
【0081】
なお、エアーポンプ39から供給されるエアーは、溶媒貯蔵部72の内径及び長さに応じて、該溶媒貯蔵部72に貯蔵された第1溶媒Bが精製カラム11に対し定量供給される圧力及び供給量に設定されている。
【0082】
さらに、エアーポンプ39は、加熱部50の後側壁部に固定された第2のエアー分配器77の供給ポート77bに送気チューブ75を介して接続されている。
【0083】
第2のエアー分配器77の吐出ポート77aには、柔軟性を有する送気チューブ78の一端が接続されている。また、送気チューブ78の他端は、濃縮カラム固定板58に固定された濃縮カラム12の上端に対し接続許容される。
【0084】
つまり、第2のエアー分配器77は、エアーポンプ39から供給されるエアーを同じ圧力及び同じ供給量に保ったまま6本に分流するとともに、送気チューブ78を介して、濃縮カラム固定板58に固定された6本の濃縮カラム12に対し均等に供給する。
【0085】
さらに、冷却部60と対応する処理室40内の底部には、精製カラム11から滴り落ちる第1溶媒Bを受けるためのドレン部80が配置されている。また、ドレン部80の下流側には、図示しない貯液部に第1溶媒Bを排出するためのドレンチューブ81が接続される。
また、処理室40の後側下部外壁には、該処理室40内の空気を後方或いは室外へ排気するための排気ファン38が取り付けられている。
【0086】
次に、前記被分析液抽出装置10により油性液体からPCB類が含まれる被分析液Dを抽出する前処理方法を説明する。
【0087】
先ず、図1、図3に示すように、図示しない水平なテーブル上に設置された被分析液抽出装置10のドレン部80にドレンチューブ81を接続する。また、装置本体20に接続された図示しない電源コードをコンセントに接続して、電源スイッチ32をON操作する。
【0088】
これにより、制御部30の操作部31に、装置本体20の全体を稼動可能な待機状態にするためのウォームアップボタンと、精製ボタン・送液ボタン・乾燥ボタンに切り替えるための精製・送液・乾燥ボタンと、排気ファン38を駆動及び停止するためのON・OFFボタンが表示される(図14のc参照)。
【0089】
次に、操作部31に表示されたウォームアップボタンを押し操作すれば、加熱部50のヒータ52が通電され、加温が開始される。また、予め設定された温度に達した時点で、ウォームアップボタンが点滅し、抽出可能な待機状態であることを作業者に報知する。さらに、排気ファン38が連続して駆動される。
【0090】
また、前処理開始前の準備作業として、図5に示すように、精製カラム11を、第1充填剤11bが充填された上層側が上向きで、第2充填剤11cが充填された下層側が下向きとなる垂直姿勢に保持して、カラム受け台14の受け部14aに対し1本ずつ垂直に挿入する。
【0091】
次に、精製カラム11に充填された第1充填剤11bの上層側に、電気絶縁油から採取されたPCB類が含まれる採取液Aを供給した後、精製カラム11を、カラム受け台14の受け部14aから垂直に抜き取り、加熱部50の上方に移動する。
【0092】
そして、図3、図6に示すように、加熱部50の上方に配置された精製カラム固定板57の挿入孔57aに対し、カラム受け台14の受け部14aと対応する配列順にて1本ずつ垂直に挿入する。
同時に、精製カラム固定板57の挿入孔57aより下方に突出された精製カラム11の上層側及び下層側を、加熱部50の挿入孔51aに対し垂直に挿入する。
これにより、精製カラム11は、挿入孔51aの内周面に対し触れるか触れない程度の位置に挿入保持される(図7参照)。
【0093】
なお、精製カラム11が挿入された精製カラム固定板57を作業者の手で持ち上げて加熱部50の上方へ移動させ、精製カラム固定板57の挿入孔57aに挿入された精製カラム11を、加熱部50の挿入孔51aに対し一括して挿入してもよい。
或いは、精製カラム11を、加熱部50の上方に配置された精製カラム固定板57の挿入孔57aに挿入してから、PCB類が含まれる採取液Aを精製カラム11に注入してもよい。
【0094】
また、精製カラム11を、加熱部50の挿入孔51aに挿入する際には、予め操作部31に表示されたウォームアップボタンが点滅しているのを確認してから挿入する。
次に、操作部31に表示された精製・送液・乾燥ボタンを押し操作すると、CPU33は、操作部31の画面を、精製ボタンと、送液ボタンと、乾燥ボタンとが分割された画面に切り替える(図14のd参照)。
【0095】
次に、操作部31に表示された精製ボタンを押し操作すると、CPU33は、操作部31の画面を加温中に切り替え(図14のe参照)、精製処理を開始する。また、精製開始から精製終了までの残り時間を操作部31に表示し、タイマー36によるカウントダウンを開始する。
【0096】
つまり、図13のLに示すように、ヒータ52により均一な温度に加熱されたブロック50a,50bの熱が挿入孔51aの内周面から精製カラム11に対して直接的に伝導されるので、濃縮カラム12に充填された第1充填剤11b及び第2充填剤11cが均一に加熱される。
これにより、採取液Aに含まれるPCB類以外の不純物と芳香族化合物が第1充填剤11bとの化学反応により分解され、その大半の不純物と芳香族化合物を第1充填剤11bに捕捉される。また、ヒータ52により直接的に加熱するので、精製カラム11を加熱する際の熱損失が少なくて済み、効率よく加熱することができる。
【0097】
なお、操作部31に表示された停止ボタンを押し操作すると、加温が強制終了され、精製開始前の状態に戻る(図14のc参照)。また、送液ボタンや乾燥ボタンを誤って押し操作した場合、OFFボタンと戻るボタンを順に押し操作すれば、精製開始前に戻ることができる。
【0098】
精製処理の終了時間が到来し、タイマー36によるカウントダウンが終了すると加温が完了する。同時に、CPU33は、ヒータ52による加熱を停止又は休止するとともに、操作部31の画面を加温中から冷却中に切り替え(図14のf参照)、1次冷却処理を開始する。
【0099】
つまり、精製処理が終了した精製カラム11を、加熱部50の挿入孔51aに挿入したまま放置して1次冷却処理する。また、冷却開始から冷却終了までの残り時間を操作部31に表示し、タイマー36によるカウントダウンを開始する。なお、精製処理終了を、制御部30に内蔵されたブザー37によって報知してもよい。
【0100】
1次冷却処理の終了時間が到来し、タイマー36によるカウントダウンが終了した際に、加熱部50の温度センサー53から出力される検知信号に基づいて、CPU33によりヒータ52の内部温度が40℃又は以下に低下していると判定されると、制御部30に内蔵されたブザー37によって1次冷却処理完了を報知する。なお、操作部31の画面に1次冷却処理完了を表示してもよい。
【0101】
次に、1次冷却処理が完了した後、精製カラム固定板57の取っ手57cを作業者の手で把持して、精製カラム固定板57の挿入孔57aから精製カラム11を抜き取らずに、精製カラム11が挿入された精製カラム固定板57を水平に保ちながら上方へ持ち上げ、冷却部60の空間へ移動する。
【0102】
さらに、図8に示すように、精製カラム固定板57の両端を、冷却部60の両側壁に固定された左右の支持部61に係止して、精製カラム固定板57の全体を水平に固定した後、冷却部60にて2次冷却処理を開始する。
【0103】
冷却部60に移動された精製カラム11の内部温度が人肌位(40℃位)の温度に低下するまで、室温で10分〜15分間放置して自然冷却する。また、排気ファン38によって処理室40内の空気を室外(後方)へ排気しながら、処理室40外の温度の低い外気を室内に連続して吸気するので、精製カラム11の内部温度が短い時間で人肌位の温度に低下される。
【0104】
また、1次冷却処理の完了時点から、CPU33は、タイマー36によるカウントダウンを開始する。冷却部60における冷却時間が到来し、タイマー36によるカウントダウンが終了した際に、CPU33は、制御部30に内蔵されたブザー37によって2次冷却処理完了を報知するとともに、操作部31の画面に冷却完了(2次冷却処理完了)を表示する(図14のg参照)。
これにより、2次冷却処理が完了したことを作業者に知らせることができる。
【0105】
2次冷却処理完了が報知された後、操作部31に表示された確認ボタンを押し操作すれば、CPU33は、操作部31の画面を精製開始前の画面に切り替える(図14のc参照)。
【0106】
次に、図9に示すように、精製カラム11内に対し第1溶媒Bを送液する準備を行う。つまり、精製カラム11の上端に、溶媒供給部70の溶媒貯蔵部72に接続されたキャップ73を取り付けた後、キャップ73を、精製カラム11の上端にクランプ74で固定して、精製カラム11の上層側内部に、溶媒貯蔵部72に投入された第1溶媒Bが供給されるようにする。
また、精製カラム11の下端に、第3充填剤12aが充填された濃縮カラム12を接続部材13で連通接続する。
【0107】
次に、操作部31に表示された送液ボタンを押し操作すると、操作部31の画面にポンプ制御及びON・OFFボタンが表示される(図14のh参照)。同時に、自動的にエアーポンプ39がON状態となり送液開始する。
つまり、エアーポンプ39から供給されるエアーを第1のエアー分配器76により6本に分流して、貯蔵部固定板71に取り付けられた6本の溶媒貯蔵部72に分配供給する。
【0108】
これにより、図13のMに示すように、エアーの圧力によって溶媒貯蔵部72から第1溶媒Bが送り出され、送液チューブ66を介して精製カラム11の上層側内部に送液される。さらに、6本の精製カラム11内に対し第1溶媒Bが均等に送液され、該精製カラム11に充填された第1充填剤11bの上層側に注入される。
【0109】
精製カラム11内に第1溶媒Bを供給すると、上層側の第1充填剤11bに捕捉されたPCB類及び残りの成分である不純物と芳香族化合物が第1溶媒Bとの化学反応により溶解し、残りの成分が下層側の第2充填剤11cに捕捉される。
【0110】
PCB類が溶解した第1溶媒Bは、第1充填剤11bと第2充填剤11cを通過して精製カラム11から流出し、濃縮カラム12に充填された第3充填剤12aの上層側に供給される。
【0111】
また、CPU33は、送液開始から送液終了までの残り時間(自動OFFまでの残り時間)を操作部31に表示し、タイマー36によるカウントダウンを開始する。
【0112】
なお、送液を停止する場合、或いは、乾燥ボタンを間違えて押し操作した場合、OFFボタン(或いは強制終了ボタン)を押し操作して強制終了すれば、エアーポンプ39が停止され、送液開始前の状態に戻ることができる。
【0113】
送液処理の終了時間が到来し、タイマー36によるカウントダウンが終了すると送液が完了する。同時に、CPU33は、エアーポンプ39を停止するとともに、操作部31の画面を送液中から送液完了に切り替える(図14のi参照)。また、制御部30に内蔵されたブザー37によって送液完了を報知する。
【0114】
送液完了が表示された後、操作部31に表示された送液終了ボタンを押し操作すれば、CPU33は、操作部31の画面を送液開始前の画面に切り替える(図14のc参照)。
【0115】
また、クランプ67による固定を解除し、精製カラム11の上端から取り外したキャップ64をキャップ載せ板62の載せ部63に載置する。
【0116】
次に、乾燥処理開始前において、濃縮カラム12の下端側を第1溶媒Bで洗浄した後、精製カラム固定板57の挿入孔57aに精製カラム11を挿入したまま、該精製カラム11の下端側から濃縮カラム12を垂直に引き抜いて分離する。
この後、濃縮カラム12を、第1溶媒Bが供給されていない下端側が上向き、第1溶媒Bが供給された上端側が下向きとなるように上下反転して、冷却部60から加熱部50の上方へ移動する。
【0117】
次に、図10に示すように、濃縮カラム固定板58を、加熱部50の上面と対向する位置にスライドして、濃縮カラム固定板58の挿入孔58aを加熱部50の挿入孔51bに連通させるとともに、加熱部50の挿入孔51aを閉塞する。
この後、上下反転された濃縮カラム12を濃縮カラム固定板58の挿入孔58aに対し、精製カラム固定板57の挿入孔58aと対応する配列順にて1本ずつ垂直に挿入する。
【0118】
濃縮カラム12の下端側を濃縮カラム固定板58の挿入孔58aより下方に突出して、加熱部50の挿入孔51bに対し垂直にそれぞれ挿入する。
濃縮カラム12は、挿入孔51bの中心部に挿入され、該挿入孔51bの内周面に対し接触が回避される位置に挿入保持される。
【0119】
これにより、挿入孔58aに保持された濃縮カラム12の外周面と、該濃縮カラム12が挿入された挿入孔51bの内周面との間に、濃縮カラム12に対しヒータ52の熱が直接伝導されるのを回避するための空間Fが形成される(図11参照)。
【0120】
この後、濃縮カラム固定板58の挿入孔58aより上方に突出された濃縮カラム12の上端に、第2のエアー分配器77の吐出ポート77aに接続された送気チューブ78を接続する。
【0121】
なお、乾燥処理を開始する前に、溶媒貯蔵部72の上端に取り付けられたキャップ73がクランプ74にて固定されていることを確認してから開始する。
【0122】
次に、操作部31に表示された乾燥ボタンを押し操作すると、CPU33は、操作部31の画面に乾燥中を表示する(図14のj参照)。同時に、エアーポンプ39を駆動して、乾燥処理を開始する。また、乾燥開始から乾燥終了までの残り時間を操作部31に表示し、タイマー36によるカウントダウンを開始する。
【0123】
エアーポンプ39から供給されるエアーを第2のエアー分配器77により6本に分流して、加熱部50上の濃縮カラム固定板58に固定された濃縮カラム12の内部に供給する。
【0124】
さらに、濃縮カラム12の内部に対し該濃縮カラム12に充填された第3充填剤12aの第1溶媒供給側からエアーを送気しつつ、加熱部50のヒータ52により濃縮カラム12を加熱して、PCB類が溶解した第1溶媒Bを、第3充填剤12aの第1溶媒供給側に捕捉したまま加熱して乾燥させる。
これにより、第3充填剤12aに捕捉された第1溶媒Bの乾燥が促進され、第1溶媒Bに含まれるPCB類の濃度が徐々に高くなり、濃縮される。
【0125】
挿入孔51bに挿入された濃縮カラム12は、該挿入孔51bの内周面に対し接触が回避される位置に保持されているので、ヒータ52により加熱されたブロック50a,50bの熱が挿入孔51bの内周面から放熱され、その放熱された熱が、濃縮カラム12と挿入孔51bとの間に形成された空間F内の空気層に伝導される。
【0126】
さらに、その空気層に伝導された熱によって、挿入孔51bに挿入された濃縮カラム12が間接的に加熱されるので、前記精製カラム11に伝導される熱の温度よりも、濃縮カラム12に伝導される熱の温度が低くなる。
これにより、濃縮カラム12を、精製カラム11より低い温度で加熱することができる。
【0127】
また、ヒータ52による加熱を停止すると、濃縮カラム12の熱が空間F内の空気層に放熱されるので、濃縮カラム12を常温又は常温に近い温度に冷却する効果が得られる。
【0128】
また、乾燥処理の終了時間が到来し、カウントダウンを開始してから10分が経過すると、エアーポンプ39が自動的に停止される。また、制御部30に内蔵されたブザー37によって乾燥完了が報知される。
【0129】
乾燥完了が表示された後、操作部31に表示されたブザー停止ボタンを押し操作すれば、ブザー37が停止される。また、CPU33は、操作部31の画面を乾燥中から溶出中が切り替える(図14のk参照)。
【0130】
なお、乾燥完了画面に表示された強制終了ボタンを押し操作すれば、エアーポンプ39が強制的に停止され、送液開始前の状態に戻ることができる(図14のc参照)。
【0131】
乾燥処理が完了した後、濃縮カラム固定板58の挿入孔58aに挿入された濃縮カラム12の上端側から送気チューブ75を取り外し、濃縮カラム12内に対し後述する第2溶媒Cを注入する準備を行う。なお、第2溶媒Cは、親水性溶媒であるトルエン又はジメチルスルホキシドで構成されている。
【0132】
重量計測済みのバイアル56を、口部が上向きとなるよう垂直姿勢に保持して、加熱部50の下方に配置された載置台54の受け部55に載置する。
【0133】
濃縮カラム固定板58の挿入孔58aより下方に突出された濃縮カラム12の下端側を、載置台54の受け部55に載置されたバイアル56の口部に挿入する。また、濃縮カラム12の下端がバイアル56の口部より内方に挿入されていることを確認してから、濃縮カラム12の内部に対し第2溶媒Cを注入する作業を開始する。
【0134】
つまり、PCB類は、濃縮カラム12に充填された第3充填剤12aの第1溶媒供給側に捕捉されるため、濃縮カラム12を第1溶媒Bの供給側が上向きとなる上下逆向き姿勢に上下反転した後、第2溶媒Cを、濃縮カラム12内に対し第1溶媒Bの供給側(通過方向)とは逆方向から供給する。
これにより、図12及び図13のNに示すように、濃縮カラム12に充填された第3充填剤12aの第1溶媒供給側に捕捉された濃度の高いPCB類が第2溶媒Cに溶解して、第3充填剤12aに捕捉された濃度の高いPCB類が少量の第2溶媒Cと一緒に濃縮カラム12から速やかに抽出され、載置台54に載置されたバイアル56内に滴下される。
【0135】
また、CPU33は、操作部31の画面に溶出中を表示すると同時に、操作部31の外面に溶出終了までの積算時間(溶出時間)を表示し、タイマー36による積算時間の計時を開始する。また、計時を開始してからPCB類溶出に要する積算時間(約10分)が経過すると、制御部30に内蔵されたブザー37によって溶出完了が報知される。
【0136】
なお、実施形態では、濃縮カラム12の内部に対し第2溶媒Cを注入する作業を人為的に行っているが、例えば注入装置、注入器等を用いて機械的に注入してもよい。
【0137】
溶出完了が報知された際に、操作部31に表示された積算時間を見て、PCB類溶出に要する積算時間が経過しているか否かを確認する。さらに、積算時間が経過していると確認できれば、PCB類が溶出されたバイアル56を載置台54の受け部55から抜き取り、バイアル56を回収する。
【0138】
次に、バイアル56が回収されたことを確認した後、操作部31に表示された溶出終了ボタンを押し操作すれば、PCB類の抽出処理が終了する。同時に、CPU33は、操作部31の画面を精製開始前の画面に戻すので、前記被分析液抽出装置10を用いて、PCB類が含まれる被分析液Dを抽出する前処理を継続して行うことができる。
【0139】
以上のように、本実施形態の被分析液抽出装置10を用いてPCB類が含まれる被分析液Dを抽出するので、PCB類が含まれる油性液体から、分析結果に影響するような成分が除去されたPCB類が含まれる被分析液Dを抽出する前処理が短時間で行えるとともに、簡易定量法にて分析する際に適用される被分析液Dを即得ることができる。
これにより、被分析液Dに含まれるPCB類の濃度を分析する作業が迅速且つ正確に行え、分析時間の短縮及び分析コストの低減化を図ることができる。
【0140】
つまり、電気絶縁油から採取した採取液Aに含まれるPCB類の濃度を、ガスクロマトグラフ質量分析法やガスクロマトグラフ電子捕獲検出法などの分析方法により分析する作業に即移行することができる。
また、精製カラム11を、加熱部50の挿入孔51aに挿入してヒータ52により直接的に加熱するので、精製カラム11を加熱する際の熱損失が少なくて済み、効率よく加熱することができる。
【0141】
一方、濃縮カラム12を、加熱部50の挿入孔51bに挿入した後、ヒータ52により挿入孔51bと濃縮カラム12との間に形成された空間F内の空気層を介して間接的に加熱するので、精製カラム11に伝導される熱の温度よりも、濃縮カラム12に伝導される熱の温度が低くなる。
【0142】
これにより、一つの加熱部50により、挿入孔58aに挿入された精製カラム11と、挿入孔51bに挿入された濃縮カラム12とを異なる温度で加熱することができ、濃縮カラム12を、精製カラム11より低い温度で加熱することができる。ヒータ52の発熱温度を、例えばヘキサン、トルエン等の引火性が高い溶媒が発火する温度よりも低い温度に設定しておけば、精製カラム11及び濃縮カラム12を加熱する際に、過熱しすぎや火災等が発生するのを防止することができる。
また、精製カラム11と濃縮カラム12とを、一つの加熱部50にて加熱処理するので、精製カラム11と濃縮カラム12とを加熱するための図示しない加熱部を個々に設ける必要がなく、装置全体の構成及び構造を簡素化して、小型化を図ることができる。これにより、装置全体の製作が簡単且つ容易に行えるとともに、安価に製作することができる。
【0143】
また、精製カラム11と濃縮カラム12とを、個々の加熱部にて加熱するような手間及び時間が省けるとともに、被分析液Dを抽出する際に要する処理時間を短縮して、処理能力の向上及び能率アップを図ることができる。
【0144】
また、加熱部50に内蔵された単一のヒータ52を、挿入孔51aに挿入された精製カラム11と、挿入孔51bに挿入された濃縮カラム12とを加熱するのに用いることができる。
【0145】
また、6本の精製カラム11に注入された採取液AからPCB類が含まれる被分析液Dを同時に抽出するので、1本当たりの抽出に要する時間が短くなり、能率アップを図ることができる。
【0146】
また、精製カラム11を、精製カラム固定板57の挿入孔57aに挿入したまま、装置本体2の前後方向Eと平行する方向に移動させるので、採取液Aが注入された精製カラム11の位置が変位することがなく、被分析液Dを抽出する作業が正確に行える。
【0147】
また、被分析液Dを抽出する際の処理動作の開始・終了が操作部31に表示され、或いは、ブザー37によって報知されるので、処理動作の開始・終了を作業者が確実に把握することができる。これにより、誤操作が起きることがなく、次の処理へスムースに移行することができる。
【0148】
図16は、精製カラム固定板57を機械的に移動する他の実施形態を示す概略図である。つまり、精製カラム固定板57の両端を、処理室40内の両側壁に固定されたロッドレスシリンダ90に連結して、該ロッドレスシリンダ90により精製カラム11が挿入された精製カラム固定板57を加熱部50と冷却部60とに往復移動してもよい。
なお、ロッドレスシリンダの代わりに、例えばチェーン機構、カム機構等の機械的移動手段を用いてもよい。
【0149】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の油性液体は、採取液Aに対応し、
以下同様に、
精製カラム挿入孔は、挿入孔51aに対応し、
濃縮カラム挿入孔は、挿入孔51bに対応し、
加熱手段は、ヒータ52に対応し、
精製カラム保持手段は、精製カラム固定板57に対応し、
濃縮カラム保持手段は、濃縮カラム固定板58に対応し、
冷却手段は、冷却部60と、排気ファン38に対応し、
乾燥手段は、エアーポンプ39と、第2のエアー分配器77と、送気チューブ78に対応し、
溶媒供給手段は、溶媒供給部70に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0150】
前記濃縮カラム12と挿入孔51bとの間に形成された空間Fに、例えば固体や液体等の熱伝導体を充填して、ヒータ52から熱伝導体に伝導された熱で精製カラム12を間接的に加熱してもよい。
また、挿入孔51bに挿入された濃縮カラム12を加熱する際、濃縮カラム12に対し接触が回避される大きさ及び形状であれば、例えば丸形状、矩形状、楕円形状等の所望する形状に形成してもよく、実施形態の四角形状のみに限定されるものではない。
また、精製カラム11及び濃縮カラム12を挿入孔51a,51bにそれぞれ挿入しておき、一つの加熱部50により同時に加熱することもできる。
【0151】
さらに、クランプ67,74は、例えばコイルスプリング、コイルバネ等のバネ部材により一対の挟持体を挟持方向へ回動付勢したものである。また、クランプ67,74に代わる固定手段として、例えばエアーシリンダ、電磁ソレノイド等の押付け手段によって、精製カラム11の上端に取り付けられたキャップ73と、溶媒貯蔵部72の上端に取り付けられたキャップ73とを、各開口部に対し気密状態に押し付け固定してもよい。
【0152】
さらにまた、溶媒貯蔵部72の内部に対し送液用のエアーを供給するエアーポンプと、濃縮カラム12の内部に対し乾燥用のエアーを送気するエアーポンプとを独立して設けてもよい。
さらにまた、操作部31の代わりに、例えばELパネル、液晶パネル、タッチパネル等の経過時間や処理内容を表示する表示手段を設けてもよい。
さらにまた、タイマー36の代わりに、例えばCPUに内蔵されたタイマー、或いは、装置外部に設置されるタイマー等の計時手段を設けてもよい。
さらにまた、ブザー37の代わりに、例えば音声発生装置、振動発生装置、スピーカー、ランプ、表示灯等の報知手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0153】
A…採取液
B…第1溶媒
C…第2溶媒
D…被分析液
F…空間
10…被分析液抽出装置
11…精製カラム
11b…第1充填剤
11c…第2充填剤
12…濃縮カラム
12a…第3充填剤
20…装置本体
30…制御部
31…操作部
36…タイマー
37…ブザー
38…排気ファン
39…エアーポンプ
40…処理室
50…加熱部
51a,51b…挿入孔
52…ヒータ
53…温度センサー
56…バイアル
57…精製カラム固定板
58…濃縮カラム固定板
60…冷却部
70…溶媒供給部
72…溶媒貯蔵部
76…第1のエアー分配器
77…第2のエアー分配器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB類が含まれる油性液体から分析結果に影響するような成分が除去されたPCB類が含まれる被分析液を抽出する被分析液抽出装置であって、
前記油性液体に含まれるPCB類以外の成分を分解して捕捉する第1充填剤が上層側に充填され、前記第1充填剤を通過した残りの成分を捕捉する第2充填剤が下層側に充填された精製カラムと、
前記精製カラムの上層側に対し着脱自在に接続され、前記PCB類を捕捉するための第3充填剤が充填された濃縮カラムと、
前記精製カラムを、前記油性液体が注入される上層側が上向きとなる姿勢に保持する精製カラム保持手段と、
前記油性液体が上層側に注入された前記精製カラムを、前記PCB類以外の成分が第1充填剤によって分解される温度に加熱する加熱手段と、
前記加熱手段にて加熱された前記精製カラムを、前記PCB類以外の成分が分解される温度より低い温度に冷却する冷却手段と、
前記冷却手段にて冷却された前記精製カラムの上層側から前記PCB類が溶解される第1溶媒を供給し、該精製カラムの下層側から流出される前記PCB類が溶解した第1溶媒を前記濃縮カラムに供給する溶媒供給手段と、
前記精製カラムから分離された前記濃縮カラムを、前記第1溶媒の供給側とは逆方向から前記PCB類を溶解するための第2溶媒が供給される上下逆向き姿勢に保持する濃縮カラム保持手段とを備えた
被分析液抽出装置。
【請求項2】
前記加熱手段が備えられた一つの加熱台の上面に、前記精製カラムが垂直に挿入される精製カラム挿入孔と、前記濃縮カラムが垂直に挿入される濃縮カラム挿入孔とを設け、
前記精製カラム挿入孔と前記精製カラムとの関係において、
前記精製カラム挿入孔を、前記加熱台から前記精製カラムに伝導される熱を前記第1充填剤によるPCB類以外の成分の分解が促進される温度に調節する大きさに形成し、
前記濃縮カラム挿入孔と前記濃縮カラムとの関係において、
前記濃縮カラム挿入孔を、前記加熱台から前記濃縮カラムに伝導される熱を前記第3充填剤に捕捉された第1溶媒の乾燥が促進される温度に調節する大きさに形成した
請求項1に記載の被分析液抽出装置。
【請求項3】
前記精製カラム挿入孔を、前記精製カラムの外周面に対し接触が可能な大きさ及び形状に形成し、
前記濃縮カラム挿入孔を、前記濃縮カラムより大きく該カラムの外周面に対し接触が回避される大きさ及び形状に形成し、
該濃縮カラム挿入孔の内面と前記濃縮カラムの外面との間に、該濃縮カラム挿入孔の内面から放熱される熱を前記濃縮カラムに対し伝導するための空間を設けた
請求項2に記載の被分析液抽出装置。
【請求項4】
前記加熱手段を、予め設定された発熱温度に発熱するヒータで構成した
請求項1〜3のいずれか一つに記載の被分析液抽出装置。
【請求項5】
前記PCB類が溶解した第1溶媒を、前記濃縮カラムに充填された第3充填剤の第1溶媒供給側に捕捉したまま加熱して乾燥させる乾燥手段を備えた
請求項1〜4のいずれか一つに記載の被分析液抽出装置。
【請求項6】
前記冷却手段を、前記加熱手段にて加熱された前記精製カラムを常温又は常温に近い温度に自然冷却する構成とした
請求項1〜5のいずれか一つに記載の被分析液抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−133453(P2011−133453A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99050(P2010−99050)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(506043295)