説明

被包化活性粒子、ならびにその製造法および使用法

【課題】被包化活性粒子、ならびにその製造法および使用法の提供。
【解決手段】本発明は、除去可能であり得る被包剤の使用を介して、活性粒子の特性を保存することに関する。この被包剤は、この活性粒子を早期の不活性化から防護し得る。所望の場合には、この被包剤は、活性粒子を再生するために除去され得る。種々のプロセスが、被包化粒子を、種々の製品に使用され得る埋封物質に導入するために実行され得る。早期の不活性化を防止するために除去可能な被包剤で不活性化された活性粒子を提供することは、本発明の別の目的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願への相互参照)
本願は、米国仮特許出願第60/388,678号(2002年6月12日出願)の利
益を主張する。その開示は、本明細書によってその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、活性粒子の特性を保存することに関する。特に、本発明は、活性粒子の少な
くとも一部を除去可能な保護物質で被包する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
特定の粒子が、異なる形態(気体、液体、および固体)の材料に性能特性を付加するた
めに使用され得ることは、周知である。これらの粒子は、臭気の吸収、水分管理、紫外光
保護、化学的保護、バイオハザード保護、防火、抗細菌性保護、抗ウイルス性保護、抗真
菌性保護、抗微生物保護、および他の因子、ならびにそれらの組み合わせに適した特性を
有し得る。
【0004】
これらの粒子は、それらが「活性」であるために、このような特性を提供し得る。活性
粒子は、それらが物質(それ自体が、固体、液体、および/または気体であり得る物質(
例えば、花粉、水、ブタン、および周囲空気)が挙げられる)を吸収または捕捉する能力
を有しているために、活性である。活性粒子は、各粒子が多くの孔(例えば、1粒子につ
き、数千、数万、または数十万の単位の孔)を有するために、吸収的特性を有する。活性
粒子に吸収する能力を提供するのが、これらの孔である。例えば、活性炭のような活性粒
子は、その活性炭の孔に物質を捕捉することで、物質(例えば、ブタン)を吸収し得る。
【0005】
活性粒子を物質に曝露することにより、孔を塞ぐか、または阻害することで、活性粒子
を早期に不活性化し得、従って、この活性粒子の吸収能力を減少させ得る。つまり、一旦
、物質により孔が塞がれるか、または阻害されると、それらの塞がれたか、または阻害さ
れた孔は、さらに吸収することが防止され得る。しかし、活性粒子の吸収能力は、孔を塞
ぐか、または阻害している物質を除去することによって、増大または回復し得る。そのた
めに、活性粒子は再生(例えば、再活性化)され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しばしば活性粒子に関連する一般的な問題は、それらが早期に不活性化され得ることで
ある。活性粒子が早期に不活性化される場合、その粒子は、元々吸収することが意図して
いた物質を吸収し得ず、代わりに、いくつかの所望しない物質も吸収し得る。早期に吸収
されるいくつかの物質は、有害物質であり得る。有害物質は、活性粒子から容易に除去し
得ず、そのために活性粒子のさらに吸収する能力を減少させる物質である。例えば、有害
物質(例えば、溶融ポリマー)は、永続的に活性粒子を不活性化し得る。例えば、溶融ポ
リマーは、活性粒子または活性粒子の周囲の物質を傷つけることなく、除去し得ない。
【0007】
早期に吸収される他の物質は、比較的除去しやすいかもしれない。つまり、これらの型
の物質は、活性粒子または周囲の物質を傷つけない再生または再活性化の公知の方法を用
いて、除去され得る。例えば、非有害物質(メタン)が吸収される場合、それは、粒子を
加熱することで活性粒子から除去され得る。
【0008】
その中に活性粒子を含む材料の生産の進歩は、このような材料を製造する場合に出会う
有害な条件によって、制限されてきた。例えば、1つのこのようなプロセスとして、合成
糸の紐を生産するために使用される押出しプロセスが挙げられる。押出しプロセスにおい
て、このプロセスは、代表的には、基礎材料(例えば、ポリマー)を溶融混合物に変換す
ることにより開始する。次いで、溶融混合物を使用して、所望の材料(例えば、糸)が押
出し装置を通して押出し成形される。しかし、活性粒子が溶融混合物中に混合される場合
、溶融混合物は、その粒子の孔を充填し、その活性化粒子を不活性化し得、従って、活性
粒子の吸収能力を阻害する。
【0009】
活性粒子の不活性化を防止するために、種々の押出しアプローチが試みられてきたが、
すべてが、有効でないか、または基礎材料を実質的に弱める結果を生じた。活性炭を使用
する1つのアプローチは、その中の約4重量%の活性炭を活性がある状態で有する材料を
生じた。しかし、このアプローチは、糸中に埋封された全ての炭素から最高でも4%の活
性を有する糸を生産するために、活性炭(または粒子)の大量の充填を必要とする。活性
炭または他の活性粒子を糸に大量に充填しなければならないことの欠点は、その糸を生産
するために使用される基礎材料の物理的特性ではなく、活性炭(または、粒子)の物理的
特性を有する糸を生じるということである。従って、この方法を使用して作製される糸ま
たは繊維は、炭素(または、粒子)の添加によって支配される持ち味を有し、基礎材料の
持ち味は有さない。さらに、炭素(または、粒子)の充填が多くなるにつれて、基礎材料
の引張強度が減少し、脆弱で伸びない繊維が生じる。
【0010】
前述の観点において、本発明の目的は、除去可能な保護物質で活性粒子を保存すること
である。
【0011】
所望の場合に、除去可能な保護製物質を除去し、活性粒子を再生するか、または再活性
化することもまた、本発明の目的である。
【0012】
早期の不活性化を防止するために除去可能な被包剤で不活性化された活性粒子を提供す
ることは、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明の目的は、早期の不活性化を防止するために除去可能な物質(例えば、被包剤)
で活性粒子を不活性化することによって、達成される。活性粒子に対して、または活性粒
子と共に使用される、除去可能な物質は、活性粒子の孔を塞ぐか、または阻害することに
よって、活性粒子を不活性化する。除去可能な物質は、活性粒子の吸収能力を無効にする
か、または減少させるが、この吸収能力の消失は永続的ではない。従って、除去可能な物
質が活性粒子から除去される場合、その吸収能力は増大または回復する。言い換えると、
除去可能な物質の除去により、活性粒子の再活性化または再生が生じる。
【0014】
活性粒子を除去可能な物質で不活性化することの1つの利点は、それにより、活性粒子
が物質を早期に吸収することを防止し得ることである。活性粒子が早期に物質(例えば、
有害物質)を吸収するか、そうでなければ、吸収に影響する有害な条件に曝露される場合
、これらの粒子は、所望の物質を吸収する機会を得るまで、不活性化され得る。早期の不
活性化としては、吸収した物質が有害であるか、有害でないか、または意図した標的であ
るかを問わず、所望しない早期に起きた吸収に起因する不活性化が挙げられ得る。例えば
、活性粒子が物質「A」を吸収する目的で導入されるが、活性粒子がこの目的のために使
用され得る前に、この活性粒子が、物質「B」(容易に除去できない)を吸収することに
よって早期に不活性化されると仮定する。活性粒子が除去可能な物質で不活性化された場
合、活性粒子は、早期に物質「B」を吸収しないかもしれない。
【0015】
除去可能な物質が活性粒子に塗布された場合、それは、活性粒子の少なくとも一部を被
包化する。従って、被包化粒子は、不活性状態にある活性粒子であり、少なくとも部分的
には、除去可能な物質で充填されているか、被覆されているか、または閉鎖されているが
、この保護物質が除去されると、再生または再活性化され得る。
【0016】
本発明の別の利点は、除去可能な物質は、活性粒子に塗布された後の所定の時点、そう
でなければ所望の時点で除去され得ることである。例えば、除去可能な物質は、早期の不
活性化を引き起こし得る物質が存在しないことが分かっている場合に、除去され得る。別
の例において、除去可能な物質は、無制限に、または、除去可能な物質が現実的に活性粒
子に塗布され得る限り、活性粒子に塗布され得る。
【0017】
除去可能な物質は、1つ以上の所定の条件または物質が、除去可能な物質を除去するた
めに適用されるまで、活性粒子に塗布されたままであり得る。例えば、除去可能な物質は
、それが熱した水に供され、次いで乾燥される場合に、除去され得る。別の例において、
熱または光の適用により、除去可能な物質が除去され得る。除去可能な物質は、他の物質
がまず除去可能な物質を除去するか、または除去可能な物質を排除するように特別に構成
されるかするまでは、外部への影響なしに別の物質によって排除され得ない。
【0018】
除去可能な物質により、被包化粒子を早期の不活性化を引き起こし得る物質に供するこ
とが可能になる。例えば、被包化粒子は、その粒子を埋封材料に導入または取り込むプロ
セスにおいて、使用され得る。埋封材料は、固体、液体、気体、または異なる相の組み合
わせの形態をとる物質であり得る。このプロセスにおいて有害物質が使用される場合、被
包化粒子は、早期に不活性化されることから防護される。
【0019】
被包化粒子が、埋封材料に取り込まれた後で、除去可能な物質の少なくとも一部が除去
され得、活性粒子を再活性化する。一旦、除去可能な物質が除去されると、活性粒子は、
性能増強性特徴(例えば、吸収、水分管理など)を埋封物質または埋封材料に与え得る。
埋封物質に与えられる性能増強性特徴に加えて、一般的に活性粒子がそこに取り込まれる
前の埋封物質に関する、持ち味、テクスチャ、持続性、強度、伸張性、粘性、圧縮性、拡
張性、相対密度、および他の物理的特性または化学的特性を維持する方法で、活性粒子が
取り込まれ得る。
【0020】
本発明の特定の実施形態は、下に示す特徴を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明は、基材;上記基材に注入された活性粒子;およ
び、上記活性粒子の少なくとも一部を被包する少なくとも1種類の除去可能な被包剤を含
む物品を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記除去可能な被包剤は、上記活性粒子を再活性化また
は再生するために除去可能である。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1種類の被包剤は、上記活性粒子を完全
に被包する。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記被包剤の第1の部分が、上記粒子の基材相互作用部
分に結合しており、そして、上記被包剤の第2の部分が、上記粒子の非基材相互作用部分
に結合している。いくつかの実施形態において、上記基材相互作用部分は、上記基材が効
果的に上記被包剤の一部を被包する程度で、上記基材に注入されている上記活性粒子の部
分である。いくつかの実施形態において、上記被包剤の上記第1の部分は、上記被包剤の
上記第2の部分と同じぐらいの容易さでは除去できない。いくつかの実施形態において、
上記活性粒子の上記非基質相互作用部分は、上記基材に接触していない、その上に上記被
包剤を有する上記活性粒子の部分である。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記物品の全組成を構成する、上記除去可能な被包剤お
よび上記活性粒子の%組成は、上記物品の性能特性を増大させる一方で、上記基材の持ち
味が、上記被包剤および上記活性粒子の存在によって比較的変化しないような%組成であ
る。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、活性炭、グラファイト、酸化アルミニ
ウム(活性アルミナ)、シリカゲル、ソータ灰、アルミニウム三水和物、重曹、p−メト
キシ−2−エトキシエチルエステル桂皮酸(シノキセート)、酸化亜鉛、ゼアライト(z
ealite)、二酸化チタン、分子フィルター型材料、および任意のそれらの組合せか
らなる群から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、気体、液体、および/または固体を吸
収する。いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、吸収性活性を備える。いくつか
の実施形態において、上記活性粒子は、臭気吸収活性を備える。いくつかの実施形態にお
いて、上記活性粒子は、抗細菌活性、抗ウイルス活性、抗真菌活性、抗微生物活性を備え
る。いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、水分管理特性を備える。いくつかの
実施形態において、上記活性粒子は、化学保護活性またはバイオハザード保護活性を備え
る。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記基材は、溶融加工が可能な材料である。いくつかの
実施形態において、上記基材は、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリル酸、熱可塑性プ
ラスチック、PTFE、ポリカーボネート、ポリアルカン、ポリビニル化合物、エポキシ
、シロキサンベースの反応ポリマー、グルー、架橋性ポリマー、ポリマー、繊維、ワタ、
酢酸塩、アクリル酸、アラミド、複合物質、リオセル、メラミン、モダクリル、ナイロン
、オレフィン、PBI、レイヨン、スパンデックス、水、オイル、エアロゾル、香料、お
よびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも部分的に被包された活性粒子は、上記基
材に直接的に注入される。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも部分的に被包された活性粒子は、結合剤
によって上記基材に結合している。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、上記物品の約0.01〜99重量%を
構成する。いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、上記物品の約0.01〜50
重量%を構成する。いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、上記物品の約0.0
1〜25重量%を構成する。いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、上記物品の
約0.01〜15重量%を構成する。いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、上
記物品の約0.01〜10重量%を構成する。いくつかの実施形態において、上記活性粒
子は、上記物品の約0.01〜5重量%を構成する。いくつかの実施形態において、上記
活性粒子は、上記物品の約0.01〜1重量%を構成する。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記物品は、布地、糸、またはステープル繊維である。
いくつかの実施形態において、上記物品は、椅子、カーペット、ラグ(rug)、マット
、リネン、シーツ、タオル、ラグ(rag)、ペット用ベッド、マットレスパッド、マッ
トレス、家具、カーテン、フィルター、靴、靴の敷き皮、オムツ、防護服、狩猟用具、ま
たはプラスチック物品である。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明は、材料;少なくとも1種類の除去可能な被包剤
により少なくとも部分的に被包された活性粒子;および、前記部分的に被包された活性粒
子を上記材料に結合させる結合剤を含む性能増強材料を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記被包剤の第1の部分が、上記粒子の材料相互作用部
分に結合しており、そして、上記被包剤の第2の部分が、上記活性粒子の非材料相互作用
部分に結合している。いくつかの実施形態において、上記材料相互作用部分は、上記材料
が効果的に上記被包剤の一部を被包する程度で、上記材料に注入されている上記活性粒子
の部分である。いくつかの実施形態において、上記被包剤の上記第1の部分は、上記被包
剤の上記第2の部分と同じぐらいの容易さでは除去できない。いくつかの実施形態におい
て、上記活性粒子の上記非材料相互作用部分は、上記材料に接触していない、その上に上
記被包剤を有する上記活性粒子の部分である。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記物質の全組成を構成する、上記除去可能な被包剤
および上記活性粒子の%組成は、上記物品の性能特性を増大させる一方で、上記材料の持
ち味が、上記被包剤および上記活性粒子の存在によって比較的変化しないような%組成で
ある。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記材料は、糸、織物、編物、またはステープル繊維で
ある。
【0037】
いくつかの実施形態において、本発明は、少なくとも1種類の除去可能な被包剤で少な
くとも部分的に被包された活性粒子への結合を有する基材を含む物品を提供し、ここで、
上記少なくとも部分的に被包された粒子の非被包部分により、上記基材に活性が与えられ
る。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記部分的に被包された粒子は、上記基材に注入されて
いる。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記部分的に被包された粒子は、結合剤により上記基材
に結合している。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明は、基材;上記基材に注入されている活性粒子;
および、上記活性粒子の少なくとも一部を被包する少なくとも1種類の除去可能な被包剤
を含む物品を提供する。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明は、材料;少なくとも1種類の除去可能な被包剤
により少なくとも部分的に被包された活性粒子;および、前記少なくとも部分的に被包さ
れた活性粒子を上記材料に結合させる結合剤を含む性能増強材料を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下を含むマスターバッチを提供する;溶融
加工が可能な材料(例えば、基礎材料);複数の活性粒子;および、少なくとも1種類の
除去可能な被包剤。この除去可能な被包剤は、上記活性粒子がそうしなければ上記活性粒
子の活性が永続的に不活性化または軽減されるような事象に供される場合に、上記活性粒
子の活性を保存するために有効な量で存在する。
【0043】
いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、上記マスターバッチの約0.01重量
%〜約99重量%を構成する。いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、上記マス
ターバッチの約0.01重量%〜約50重量%を構成する。いくつかの実施形態において
、上記活性粒子は、上記マスターバッチの約0.01重量%〜約25重量%を構成する。
いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、上記マスターバッチの約0.01重量%
〜約15重量%を構成する。いくつかの実施形態において、上記活性粒子は、上記マスタ
ーバッチの約0.01重量%〜約10重量%を構成する。いくつかの実施形態において、
上記活性粒子は、上記マスターバッチの約0.01重量%〜約5重量%を構成する。いく
つかの実施形態において、上記活性粒子は、上記マスターバッチの約0.01重量%〜約
1重量%を構成する。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明は、マスターバッチを製造する方法を提供する。
この方法は、複数の活性粒子を少なくとも1種類の除去可能な被包剤で被包する工程(上
記少なくとも1種類の被包剤は、上記活性粒子が永続的に不活性化されることを防止する
);上記被包化活性粒子を基礎材料と混合する工程;および、上記混合物を、上記被包化
活性粒子および上記基礎材料が一緒に配合されて、上記マスターバッチを形成することを
引き起こす条件に供する工程を包含する。
【0045】
いくつかの実施形態において、マスターバッチを製造する方法はさらに、上記配合され
た混合物を複数のチップに変換する工程を包含する。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記供する工程は、上記被包化活性粒子を、上記活性粒
子が被包されていない場合に上記活性粒子を永続的に不活性化し得る1種類以上の物質ま
たは条件に曝露することを包含する。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記基礎材料は、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリ
ル酸、熱可塑性プラスチック、PTFE、ポリカーボネート、ポリアルカン、ポリビニル
化合物、エポキシ、シロキサンベースの反応ポリマー、グルー、架橋性ポリマー、ポリマ
ー、繊維、ワタ、酢酸塩、アクリル、アラミド、複合物質、リオセル、メラミン、モダク
リル、オレフィン、PBI、レイヨン、スパンデックス、水、オイル、エアロゾル、香料
、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明は、性能増強糸または性能増強繊維を製造するた
めの方法を提供する。この方法は、複数の活性粒子を少なくとも1種類の除去可能な被包
剤で被包する工程;上記被包化活性粒子を基礎材料と混合する工程;および、上記混合物
を押出し形成して、その中に取り込まれている上記被包化活性粒子を有する少なくとも1
種類の繊維または糸にする工程を包含し、ここで、上記少なくとも1種類の被包剤により
、上記押出し成形する工程が上記活性粒子を永続的に不活性化することが防止される。
【0049】
いくつかの実施形態において、性能増強糸または性能増強繊維を製造するための方法は
さらに、上記押出し成形した糸を紡糸する工程を包含する、
いくつかの実施形態において、上記活性粒子は活性炭粒子である。
【0050】
いくつかの実施形態において、性能増強糸または性能増強繊維を製造するための方法は
さらに、上記被包化活性粒子を、上記活性粒子が被包されていない場合に上記活性粒子を
永続的に不活性化し得る1種類以上の物質または条件に曝露することを包含する。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記被包する工程および上記混合する工程は、1工程で
行われる。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記被包する工程および上記混合する工程は、別々の工
程で行われる。
【0053】
いくつかの実施形態において、性能増強糸または性能増強繊維を製造するための方法は
さらに、上記少なくとも1種類の除去可能な被包剤の一部を上記活性粒子から除去するこ
とを包含する。いくつかの実施形態において、上記除去は、上記被包剤を溶解することを
包含する。
【0054】
いくつかの実施形態において、性能増強糸または性能増強繊維を製造するための方法は
さらに、上記少なくとも1種類の除去可能な被包剤の一部を上記活性粒子から除去するこ
とによって、上記活性粒子を再活性化または再生することを包含する。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明は、性能増強糸または性能増強繊維を製造するた
めの方法を提供し、この方法はさらに、所定の量のマスターバッチチップを提供する工程
(このマスターバッチチップは、少なくとも1種類の除去可能な被包剤で少なくとも部分
的に被包された複数の活性粒子を含む);および、上記マスターバッチチップを押出し成
形して、その中に取り込まれた被包化活性粒子を有する少なくとも1種類の繊維または糸
にする工程を包含し、上記少なくとも1種類の被包剤により、上記活性粒子が早期に不活
性化されることが防止される。
【0056】
いくつかの実施形態において、性能増強糸または性能増強繊維を製造するための方法は
さらに、上記押出し成形した糸を紡糸する工程を包含する。
【0057】
いくつかの実施形態において、性能増強糸または性能増強繊維を製造するための方法は
さらに、基礎材料を上記マスターバッチチップと混合し、上記少なくとも部分的に被包さ
れた活性粒子の濃度を希釈する工程を包含する。
【0058】
いくつかの実施形態において、性能増強糸または性能増強繊維を製造するための方法は
さらに、押出し成形する工程、および、上記少なくとも部分的に被包された活性粒子を、
上記活性粒子が被包されていない場合に上記活性粒子を早期に不活性化し得る1種類以上
の物質または条件に供する工程を包含する。
【0059】
いくつかの実施形態において、性能増強糸または性能増強繊維を製造するための方法は
さらに、上記少なくとも1種類の除去可能な被包剤の少なくとも一部を、上記糸または上
記繊維に取り込まれている上記活性粒子から除去する工程を包含する。
【0060】
いくつかの実施形態において、性能増強糸または性能増強繊維を製造するための方法は
さらに、上記糸および上記繊維を含む物品を製造する工程を包含する。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明は、性能増強物品を製造するための方法を提供す
る。この方法は、複数の活性粒子を有する材料を提供する工程、および上記材料を上記性
能増強物品を製造するために使用する工程を包含する。この複数の活性粒子は、少なくと
も1種類の除去可能な被包剤で少なくとも部分的に被包されており、材料中に取り込まれ
ている。上記少なくとも1種類の除去可能な被包剤により、上記活性粒子が早期に不活性
化されることが防止される。
【0062】
いくつかの実施形態において、上記材料は第1の材料であり、上記使用する工程は、上
記第1の材料を第2の材料中に取り込ませることを包含する。
【0063】
いくつかの実施形態において、性能増強物品を製造するための方法はさらに、上記材料
を、上記除去可能な被包剤の少なくとも一部を除去して、上記活性粒子を再活性化または
再生するプロセスに供する工程を包含する。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明は、性能増強材料を製造する方法を提供する。こ
の方法は、少なくとも1種類の除去可能な被包剤で被包された複数の活性粒子を提供する
工程(上記少なくとも1種類の被包剤によって、上記活性粒子が早期に不活性化されるこ
とが防止される);上記被包化活性粒子を基礎材料に塗布する工程;および、上記被包化
活性粒子を上記基礎材料に結合させる工程を包含する。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記塗布する工程は、上記被包化活性粒子を上記基礎材
料上に空気分散することを包含する。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記塗布する工程は、上記基礎材料を上記被包化活性粒
子で塗布することを包含する。
【0067】
いくつかの実施形態において、上記塗布する工程は、上記被包化活性粒子を上記基礎材
料上に噴霧することを包含する。
【0068】
いくつかの実施形態において、上記塗布する工程は、上記被包化活性粒子を上記基礎材
料へとゼログラフィーによって移転することを包含する。
【0069】
いくつかの実施形態において、上記結合させる工程は、結合剤を使用して、上記被包化
活性粒子を上記基礎材料に結合させることを包含する。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記結合させる工程は、上記被包化活性粒子を上記基礎
材料に融合させる工程を包含する。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1種類の被包剤は、上記活性粒子が早期
に不活性化されることを防止する。
【0072】
いくつかの実施形態において、性能増強材料を製造する方法はさらに、上記被包剤の一
部を上記活性粒子から除去する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記除去
する工程は、上記被包剤を溶解することを包含する。いくつかの実施形態において、上記
除去する工程は、上記製品を洗浄することを包含する。いくつかの実施形態において、上
記除去する工程は、上記活性粒子を再活性化または再生することを包含する。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明は、性能増強物質を製造するための方法を提供す
る。この方法は、複数の活性粒子を少なくとも1種類の除去可能な被包剤で被包する工程
(この少なくとも1種類の被包剤によって、上記活性粒子が早期に不活性化されることが
防止される);上記被包化活性粒を物質中に取り込ませる工程;および、上記被包化活性
粒子が上記物質中に取り込まれた後で、上記少なくとも1種類の除去可能な被包剤の一部
を上記活性粒子から除去する工程を包含する。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記部分は第1の部分であり、上記除去する工程は、第
1の所定時間に上記活性粒子の上記第1の部分を再活性化または再生すること;および、
第2の所定時間に上記活性粒子の上記第2の部分を再活性化または再生することを包含す
る。
【0075】
いくつかの実施形態において、上記除去する工程は、異なる時点で上記活性粒子の異な
る部分を再活性化または再生することを包含する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明は、粒子を再活性化または再生するための方法を
提供する。この方法は、上記活性粒子を被包している除去可能な被包剤の一部を選択的に
除去し、上記粒子の一部を周囲環境に曝露する工程;および、上記活性粒子の上記曝露さ
れている部分が物質を相互作用することを可能にする工程を包含する。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記物質との上記相互作用は、上記物質を吸収すること
を包含する。いくつかの実施形態において、上記物質は臭気性物質である。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明は、除去可能な被包剤で被包された活性粒子を有
する基材を含む物品を提供する。この被包化粒子は、上記除去可能な被包剤が上記活性粒
子の活性を保存するために存在していない場合に上記活性粒子の活性を減少または無効化
するプロセスによって、上記基材に結合する。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記除去可能な被包剤の少なくとも一部の除去により、
上記活性粒子の活性が上記物品に与えられる。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記物品は糸、ステープル繊維、マスターバッチ、織物
、または衣服である。いくつかの実施形態において、上記物品は、室内装飾品、カーペッ
ト、ラグ(rug)、マット、リネン、シーツ、タオル、ラグ(rag)、ペット用ベッ
ド、マットレスパッド、マットレス、家具、カーテン、フィルター、靴、靴の敷き皮、オ
ムツ、防護服および狩猟用具からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、
上記物品は、プラスチック製物品である。いくつかの実施形態において、上記物品は、所
定のサイズおよび形状の固体形態の物品である。
【0081】
いくつかの実施形態において、上記プロセスは、押出し成形プロセス、パディングプロ
セス、空気分散プロセス、またはゼログラフィックプロセスである。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記被包化活性粒子の一部は、上記基材に注入されてい
る。
【0083】
いくつかの実施形態において、上記物品が被包剤除去の事象に供された後で、いくつか
の活性粒子の表面部分が周囲環境に曝露される。
【0084】
いくつかの実施形態において、上記被包化粒子の第1の部分は、上記少なくとも1種類
の除去可能な被包剤で完全に被包される。いくつかの実施形態では、上記被包化粒子の第
2の部分は、上記少なくとも1種類の除去可能な被包剤で部分的に被包される。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記物品の全組成を構成する、上記除去可能な被包剤お
よび上記活性粒子の%組成は、上記物品の性能特性を実質的に増大させる一方で、上記基
材の持ち味が、上記被包剤および上記活性粒子の存在によって比較的変化しないような%
組成である。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
被包化活性粒子であって、該活性粒子による吸収を阻害する少なくとも1種類の被包剤によって、少なくとも部分的に被包された活性粒子を含む、粒子。
(項目2)
前記被包剤が、早期の不活性化に対する防護を提供する、項目1に記載の粒子。
(項目3)
前記被包剤の少なくとも一部が、除去可能である、項目1に記載の粒子。
(項目4)
前記活性粒子が、少なくとも1つの孔を含み、かつ、前記被包剤が、該少なくとも1つの孔を塞ぐ、項目1に記載の粒子。
(項目5)
活性粒子を埋封物質に取り込むための方法であって、該方法が、以下:
該活性粒子の少なくとも一部を、少なくとも1種類の被包剤で被包する工程;および
該被包化活性粒子を該埋封物質に導入する工程、
を包含する、方法。
(項目6)
さらに以下の工程:
少なくとも1種類の前記被包化粒子および前記埋封物質を含む、マスターバッチを製造する工程;
該マスターパッチを、内部に取り込まれた該被包化粒子を有する材料へと押出し成形する工程;および
前記被包剤の少なくとも一部を除去する工程、
を包含する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記導入する工程が、前記被包化粒子を前記埋封物質に取り込ませることを包含する、請求項5に記載の方法。
(項目8)
前記被包化活性粒子を、前記活性粒子が被包化されていない場合に、該活性粒子を早期に不活性化し得る1種類以上の物質に供する工程を、さらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記被包する工程、および、前記導入する工程が、一回の工程で行われる、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記被包化粒子を前記埋封物質に導入するための所定のプロセスを使用する工程を、さらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目11)
前記所定のプロセスが、マスターバッチ処方プロセス、空気分散プロセス、パディングプロセス、ゼログラフィックプロセス、および溶液調製プロセスからなる群から選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記埋封物質が、気体、液体、固体、またはそれらの組合わせである、項目5に記載の方法。
(項目13)
前記活性粒子が、気体を吸収し得る、項目5に記載の方法。
(項目14)
前記活性粒子が、液体を吸収し得る、項目5に記載の方法。
(項目15)
前記活性粒子が、固体を吸収し得る、項目5に記載の方法。
(項目16)
前記埋封物質が、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリル系物質、熱可塑性プラスチック、PTFE、ポリカーボネート、ポリアルカン、ポリビニル化合物、エポキシド、シロキサンベースの反応ポリマー、グルー、架橋性ポリマー、ポリマー、繊維、ワタ、アセテート、アクリル酸系物質、アラミド、複合物質、リオセル、メラミン、モダクリル系物質、オレフィン、PBI、レイヨン、スパンデックス、水、オイル、香料、エアロゾル、および任意のそれらの組合せからなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目17)
前記活性粒子から前記被包剤の少なくとも一部を除去する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目18)
前記除去する工程が、活性粒子を再活性化または再生することを包含する、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記除去する工程が、前記被包剤を溶解することを包含する、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記被包剤が、水溶性界面活性剤、塩、ポリマー塩、ポリビニルアルコール、ワックス、光反応性材料、分解性材料、生分解性材料、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目21)
前記活性粒子が、活性炭、グラファイト、酸化アルミニウム(活性アルミナ)、シリカゲル、ソーダ灰、アルミニウム三水和物、重曹、p−メトキシ−2−エトキシエチルエステル桂皮酸(シノキセート)、酸化亜鉛、ゼアライト、二酸化チタン、分子フィルター材料、および任意のそれらの組合せからなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目22)
前記活性粒子が、臭気吸収、水分管理、紫外光保護、化学的保護、バイオハザード保護、防火、抗細菌性保護、抗ウイルス性保護、抗真菌性保護、抗微生物保護、および任意のそれらの組合せからなる群から選択される性能増強特性を提供する、項目5に記載の方法。
(項目23)
複数の活性粒子の少なくとも一部を、少なくとも1種類の除去可能な被包剤で被包化して被包化粒子を形成する工程、該被包化粒子を埋封物質に導入する工程、該活性粒子から該被包剤の少なくとも一部を除去して該性能増強材料を提供する工程によって、製造される、性能増強材料。
(項目24)
前記活性粒子が、前記増強材料の約0%〜約100%を構成する、項目23に記載の材料。
(項目25)
前記活性粒子が、前記増強材料の約0%〜約50%を構成する、項目24に記載の材料。
(項目26)
前記活性粒子が、前記増強材料の約0%〜約25%を構成する、項目24に記載の材料。
(項目27)
前記活性粒子が、前記増強材料の約0%〜約10%を構成する、項目24に記載の材料。
(項目28)
前記活性粒子が、前記増強材料の約0%〜約5%を構成する、項目24に記載の材料。
(項目29)
前記活性粒子が、活性炭、グラファイト、酸化アルミニウム(活性アルミナ)、シリカゲル、ソーダ灰、アルミニウム三水和物、重曹、p−メトキシ−2−エトキシエチルエステル桂皮酸(シノキセート)、酸化亜鉛、ゼアライト、二酸化チタン、分子フィルター材料、および任意のそれらの組合せからなる群から選択される、項目23に記載の材料。
(項目30)
前記被包剤が、水溶性界面活性剤、塩、ポリマー塩、ポリビニルアルコール、ワックス、光反応性材料、分解性材料、生分解性材料、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、項目23に記載の材料。
(項目31)
前記埋封物質が、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリル系物質、熱可塑性プラスチック、PTFE、ポリカーボネート、ポリアルカン、ポリビニル化合物、エポキシド、シロキサンベースの反応ポリマー、グルー、架橋性ポリマー、ポリマー、繊維、ワタ、アセテート、アクリル酸系物質、アラミド、複合物質、リオセル、メラミン、モダクリル系物質、オレフィン、PBI、レイヨン、スパンデックス、水、オイル、エアロゾル、香料、および任意のそれらの組合せからなる群から選択される、項目23に記載の材料。
(項目32)
前記活性粒子が、臭気吸収、水分管理、紫外光保護、化学的保護、バイオハザード保護、防火、抗細菌性保護、抗ウイルス性保護、抗真菌性保護、抗微生物保護、および任意のそれらの組合せからなる群から選択される性能増強特性を提供する、項目23に記載の材料。
【図面の簡単な説明】
【0086】
本発明の目的と利点が、添付の図面と組合わせて、以下の詳細な説明を考慮することに
より明らかとなる。図面中の類似の参照文字は、終始、類似の部分をいう。
【図1】図1は、本発明の原理に従って被包された活性粒子の断面図である。
【図2】図2は、本発明の原理に従って、活性粒子を初期の不活性化を引き起こし得る物質に供される物質で活性粒子を保護するためのプロセスのフローチャートを示す。
【図3】図3は、本発明の原理に従って、活性粒子を埋封物質に取り込むためのプロセスのフローチャートを示す。
【図4】図4は、本発明の原理に従って、その中に被包粒子を埋封する繊維の一部の断面図を示す。
【図5】図5は、本発明の原理に従って、除去可能な物質が、繊維の外表面を越えて延びる粒子から除去されるか、または周囲環境に曝露される、その中に被包粒子を埋封する繊維の一部の断面図を示す。
【図6】図6は、本発明の原理に従って、行われた実験から得られたデータを示す。
【図7】図7は、本発明の原理に従って、行われた別の実験から得られたデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
(発明の詳細な説明)
活性粒子は、孔またはトラップを有し、固相、液相、および/または気相、ならびにそ
れらの組み合わせの物質を吸収する能力を有する粒子である。これらの孔は、サイズ、形
状、および質が、活性粒子の型に依存して変動し得る。例えば、いくつかの粒子は天然に
孔を有し(例えば、火山岩)、他の粒子(例えば、炭素)は、孔を作製するために、極温
および活性化薬剤(例えば、酸素)で処理され得る。
【0088】
活性粒子は、物質を吸収し得るか、または物質を吸収する可能性を有し得る粒子である
。活性粒子は、不活性状態で存在し得る。活性粒子の孔は、不活性状態では、特定の分子
サイズの物質を吸収することを阻止または阻害され得るが、これは、これらの孔が、その
物質を吸収することを永続的に防止されているということを示さない。活性粒子の孔は、
再活性化または再生を介して、脱阻止または脱阻害され得る。再活性化または再生により
、活性粒子の孔に捕捉されている物質が除去される。しかし、有害物質が活性粒子によっ
て吸収されている場合、再活性化または再生は活性粒子の吸収能力を再生し得ないかもし
れない。
【0089】
活性粒子は、性能増強性特性(例えば、臭気の吸収、水分管理、紫外光保護、化学保護
特性、バイオハザード保護特性、防火、抗細菌性保護特性、抗ウイルス性保護特性、抗真
菌性保護特性、抗微生物保護特性、およびそれらの組み合わせ)を提供し得る。活性粒子
としては、活性炭、グラファイト、酸化アルミニウム(活性アルミナ)、シリカゲル、ソ
ータ灰、アルミニウム三水和物、重曹、p−メトキシ−2−エトキシエチルエステル桂皮
酸(シノキセート)、酸化亜鉛、ゼアライト(zealite)、二酸化チタン、分子フ
ィルター型材料、および他の適した材料)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0090】
図1は、粒子の外面全体に分散された孔120を有する活性粒子100の一部の断面図
を示す。図1に示されるように、孔120の少なくともいくらかの部分は、被包剤110
(例えば、除去可能な物質)で充填されている。孔120は、被包剤が除去されるまで、
充填されたままであり得る。被包剤は、各孔120の少なくとも一部を充填し得るか、孔
120の少なくとも一部を充填し得るか、全ての孔120を充填し得るか、粒子100の
一部を被覆し得るか、または粒子100全体を含み得る。
【0091】
被包剤は、活性粒子が早期に不活性化されることを防止すること(例えば、有害または
意図しない物質が吸収されるか、または他の悪い条件を介して不活性化することを防止す
ること)によって、活性粒子に関連する特性を維持する、除去可能な物質である。被包剤
は、所定の時点で、および1つ以上の状態の所定の条件(例えば、熱、時間など)または
物質(例えば、水、光など)の適用に供された場合に、活性粒子から除去され得る。
【0092】
被包剤としては、水溶性界面活性剤、界面活性剤、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化
カルシウム)、ポリマー塩、ポリビニルアルコール、ワックス(例えば、パラフィン、カ
ルナウバ)、光反応性材料、分解性材料、生分解性材料、エトキシル化アセチレンジオー
ル、および任意の他の適切な物質が挙げられ得るが、これらに限定されない。活性粒子を
被包化するために適切なこのような被包剤の特定の例としては、水溶性界面活性剤である
、Surfynol 485W、485、2502、および465(Air Produ
cts and Chemicals Corporation,Allentown,
Pennsylvaniaから販売)、Textile Wax−WおよびSize S
F−2として販売されるワックス(BASF Corporation,Charlot
te,North Carolina)、ならびにモデル番号Kinco 878−Sお
よびKinco 778−Hとして販売されるワックス(Kindt−Collins
Company,Cleveland,Ohio)が挙げられる。
【0093】
性能が増強された製品または材料を製造するために、活性粒子は、代表的には、基礎材
料(例えば、埋封物質)中に取り込まれる。基礎材料は、本発明の原理に従って、性能が
増強された製品または材料を生産するための基礎を提供するために使用される物質である
。基礎材料は、特定の製品(例えば、糸、繊維、発泡体、布地など)を製造する際に使用
される主成分の1つであり得る。本明細書に記載される本発明のいくつかの実施形態の実
施は、(例えば、衣類の物品を製造するために)固相で存在する基礎材料または埋封物質
を使用するが、これは、液相または気相で存在する基礎材料を排除しないことに留意され
たい。例えば、フィルター適用については、液体である被包化粒子を使用することが所望
されるかもしれない。
【0094】
本発明の利点は、たとえその中に活性粒子を埋封しているとしても、性能を増強した製
品または材料が基礎材料の持ち味特性を維持するということである。基礎材料の持ち味、
テクスチャ、持続性、強度、伸張性、粘性、圧縮性、拡張性、相対密度、および他の物理
的特性または化学的特性を維持することに加えて、基礎材料は、活性粒子によって与えら
れた「活性」特性も示す。基礎材料としては、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリル酸
、熱可塑性プラスチック、PTFE(例えば、テフロン(登録商標))、ポリカーボネー
ト、ポリアルカン、ポリビニル化合物、エポキシ、シロキサンベースの反応ポリマー、グ
ルー、架橋性ポリマー、ポリマー繊維、綿、酢酸塩、アクリル酸、アラミド、複合物、リ
オセル、メラミン、モダクリリック、ナイロン、オレフィン、PBI、レイヨン、スパン
デックス、水、オイル、エアロゾル、香料、または任意の他の適切な材料が挙げられ得る
が、これらに限定されない。
【0095】
図2は、本発明の原理に従う、活性粒子を早期に不活性化し得る物質に供される、活性
粒子を保存するためのプロセス200のフローチャートを示す。工程210で始まり、活
性粒子の特性を早期の不活性化に対して保護するために、被包剤が活性粒子に塗布される
。言葉を換えると、被包剤は、活性粒子の少なくとも一部を不活性化するために塗布され
る。被包剤は、例えば、被包剤の浴中での活性粒子の混合、活性粒子上への被包剤の噴霧
、被包剤溶液中での活性粒子の混合または粉砕、または他の適切な方法によって、塗布さ
れ得る。
【0096】
被包剤が活性粒子を被包する程度は、変動し得る。例えば、被包剤は、各孔の少なくと
も一部を充填し得るか、孔の少なくとも一部を充填し得るか、全ての孔を充填し得るか、
各活性粒子の一部を被覆し得るか、活性粒子全体を含み得るか、またはそれらの組み合わ
せを用いて被包し得る。被包剤が塗布されている活性粒子の領域は、さらなる吸収が阻止
または阻害される。従って、活性粒子のこれらの特定の領域は、不活性化状態にあり、早
期の不活性化から防護される。
【0097】
工程220において、被包化粒子は、活性粒子を早期に不活性化し得る1つ以上の物質
(例えば、有害物質または迅速な吸収が意図されていない物質)に供される。被包化粒子
が工程220に供された場合、被包剤によって既に不活性化されている活性粒子の一部は
、さらなる吸収を行い得ない。従って、活性粒子のこれらの被包化部分が保存され、所定
の時点および/または後の時点で再活性化され得る。
【0098】
いくつかの利点が、工程220に供されている間に活性粒子の特性を保存することが可
能であることによって、実現する。例えば、被包化粒子は、有害物質を使用するプロセス
(例えば、押出しプロセス)に曝露され得る。別の例において、被包化粒子は、延長され
た時間有害物質に曝露され、そして、なお再活性化され得る。別の例において、被包化粒
子は、その「活性」特性を失うことなく埋封物質に導入され得る。まだ別の例において、
「活性」特性は、所望の時点で表出され得、特別な包装および/または操作の指示の必要
性をなくす。
【0099】
工程230において、被包剤が除去され得、活性粒子を再活性化または再生し得る。被
包剤は、所定の時点および/または後の時点で、ならびに1つ以上の再活性化因子の適用
(例えば、熱、光、時間、水、細菌などの適用)に供された場合に、活性粒子から除去さ
れ得る。例えば、被包剤は、工程220に供されたすぐ後で、除去され得る。所望の場合
には、被包剤は、所定の時間計画に従って、除去され得る。例えば、被包剤は、所定の条
件(特定の回数(例えば、使用者によって行われる洗浄と乾燥のサイクル))に供された
後で、除去され得る。工程210において、2つ以上の異なる被包剤が各活性粒子、また
は活性粒子の別々の群に(すなわち、各群は、1つの型の被包剤を有する)塗布される場
合、異なる再活性化因子が、被包剤を除去するために必要とされ得る。例えば、光が、第
1の被包剤を除去するために使用され得、熱水が、第2の被包剤を除去するために使用さ
れ得る。これにより、粒子を取り込んでいる製品の性能特徴を変化させること、維持する
こと、そうでなければ制御することについて有利であり得る、再活性化のタイミングの制
御を促進する。
【0100】
被包剤の除去は、活性粒子の孔を再生し、埋封物質を損傷することなく、活性粒子の性
能増強特徴を埋封物質に与える。被包剤が除去される程度は、変動し得る。例えば、被包
剤は、周囲環境に曝露される被包化粒子の部分のみから除去され得、埋封物質に固定され
ている被包剤はそのまま残る。
【0101】
活性粒子からの被包剤の除去を促進するために、被包剤は、異なる型の溶媒(例えば、
水(例えば、蒸気)、超臨界CO、液体窒素など)に可溶性であり得る。別の実施形態
において、光源(例えば、白熱光、紫外光、赤外光など)が、活性粒子から被包剤を除去
するために使用され得る。なお別の実施形態において、生物学的材料が、生分解性材料を
除去するために使用され得る。例えば、細菌が、被包剤を消費および処理するために使用
され得る。別の実施形態において、被包剤は、外部の影響とともに、または外部の影響な
しに、経時的に分解し得、それによって、時間依存的な再活性化が可能となる。
【0102】
活性粒子に対する(ファンデルワールス力および/または水素結合相互作用を介する)
低い親和性を有する被包剤を使用することにより、被包剤の除去が促進され得る。より特
定すると、被包剤の親和性は、有害物質(例えば、溶融した基礎材料)に供されている間
に被包剤が活性粒子に接着することを可能にするが、埋封材料および活性粒子を損傷させ
ることなく、除去を促進する性質のことであり得る。
【0103】
被包剤は、埋封物質と同様か、またはそれよりも高いガラス転移温度(Tg)を有し得
る。ガラス転移温度は、埋封物質(例えば、ポリマー)が、粘性状態またはゴム状態から
硬く比較的脆弱な材料へと、または硬く比較的脆弱な材料から粘性状態またはゴム状態へ
と変化する温度である。同じかまたはそれよりも高いガラス転移温度を有することにより
、早期の不活性化を引き起こし得る物質に供される場合に、被包剤が活性粒子に対する塗
布を維持することが可能となる。
【0104】
プロセス200の上記の工程は例示であり、工程が追加、削除、または組合わせられ得
ることに留意されたい。
【0105】
代替的な実施形態において、活性粒子は、早期の不活性化を引き起こし得る物質に供さ
れる前に、被包されることを必要としない。所望の場合には、未保護の活性粒子、早期の
不活性を引き起こし得る物質、および被包剤が、同時に混合され得る。潜在的に早期に不
活性化する物質と活性粒子が混合されるが、被包剤は、この潜在的に早期に不活性化する
物質よりも速い拡散速度を有し得る。従って、被包剤は、その物質(例えば、有害物質)
よりも速く活性粒子の孔を充填し得る。これにより、活性粒子、被包剤、基礎材料、およ
び他の成分を同時に混合することが、有利に行われる。
【0106】
活性粒子に被包剤を塗布し、これらの被包化粒子を活性粒子を早期に不活性化し得る物
質に供し、次いで、所定の時間の後で、被包剤を除去する方法は、活性粒子を埋封物質に
導入または取り込むプロセスにおいて実行され得る。一旦、活性粒子がこれらの埋封物質
に導入されると、最終製品または最終材料は、活性粒子によって与えられる性能増強特性
を有する。
【0107】
図3は、本発明の原理を押出しプロセスに取り込むプロセス300を示す。工程310
において、活性粒子(例えば、活性炭)が被包剤(例えば、水溶性界面活性剤)によって
被包化される。これは、例えば、バット中で活性成分と被包剤を混合することにより、行
われ得る。所望の場合には、異なる特性を有するか、または異なる量の被包剤が、活性粒
子に塗布され得、可変的な再生を促進する。異なった特性を有する被包剤を塗布すること
、または異なる量の被包剤を塗布することにより、時間遅延型の再生を生じ得、活性粒子
の異なる被包化群が異なる時点で再活性化される。
【0108】
工程320において、被包化粒子は、基礎材料(例えば、埋封物質)と混合され、マス
ターバッチを作製する。マスターバッチは、被包化粒子および基礎材料の所定の処方物で
ある。つまり、マスターバッチの成分は、所定の比に従って、一緒に混合される。例えば
、15%のマスターバッチは、被包化粒子からなり得、残りの85%は、基礎材料からな
り得る。従って、伸ばすことによって製造された増強材料の組成(例えば、活性粒子の濃
度)は、高い程度の正確性で制御され得る。製造者は、異なる濃度の埋封された被包化粒
子を有する増強材料を製造するために、マスターバッチの組成を容易に改変し得る。
【0109】
工程325において、マスターバッチが処方された後で、それは固体チップまたはペレ
ットへと変形され、所望の性能増強材料または製品を作製するために、プロセス300に
おいて、後ほど使用される。チップおよびペレットという用語は単なる総称であり、固体
形態のマスターバッチが、チップまたはペレットの形状をとる必要はないことに留意され
たい。所望の場合には、マスターバッチ(または、押出しプロセスに使用される任意の他
の材料)は、任意の適切な形状(例えば、ウエハー、球体、または塊)であり得る。マス
ターバッチから得られるチップは、本明細書ではマスターバッチチップといわれることに
留意されたい。
【0110】
被包化粒子および基礎材料を一緒に混合して、マスターバッチを作製し、続いて、マス
ターバッチチップを作製し得る方法は、いくつかある。好ましくは、マスターバッチは、
被包化粒子が基礎材料じゅうに十分に分散するように、混合される。これにより、マスタ
ーバッチから得られるマスターバッチチップが、実質的に互いに一致することを確実にす
る。
【0111】
混合する方法の1つは、被包化粒子および基礎材料を、所定の温度および所定の圧力に
所定の時間供する工程を伴う。所定の温度および圧力は、基礎材料が、溶融状態または粘
性状態であるような温度および圧力である。基礎材料は、固体の基礎材料が流れまたは運
動を示す場合に、溶融状態となる。つまり、基礎材料の固体構造を構成する分子結合が、
互いに対して運動し始め、それによって、溶融特徴を示す。基礎材料が溶融状態にある場
合、その基礎材料は、混合の間の被包化粒子の分散を容易にする、溶融懸濁物として機能
する。言葉を換えると、この溶融混合プロセスは、1つのボウルに盛られたソフトアイス
クリームを一握りのナッツと混合する工程と同様であり、この工程において、アイスクリ
ームは基礎材料を表し、ナッツは被包化粒子を表す。2つの成分が一緒に混合される場合
、ナッツは、アイスクリームじゅうに分散した状態となる。
【0112】
被包化粒子を混合した後で、マスターバッチチップが得られる。溶融混合物からマスタ
ーバッチチップを得るための1つの方法は、混合物を基礎材料または被包剤を溶解しない
溶液の冷浴中に配置することである。次いで、冷却された混合物が、所定のサイズに粉砕
され得る。
【0113】
マスターバッチを作製するための別の方法は、液体分散物(例えば、スラリー)を作製
する工程を伴う。液体分散物は、基礎材料、溶媒(例えば、グリコール、ポリグリコール
、水など)、および被包化粒子を混合することによって形成され得る。基礎材料は、溶媒
が添加された場合に、スラリーとなり得る。このスラリーは、被包化粒子の分散を容易に
する液体懸濁物として機能し得る。被包化粒子がスラリーじゅうに混合された後で、マス
ターバッチチップが、沈殿プロセスにより得られ得る。
【0114】
被包化粒子および基礎材料を混合するための上記の方法は、単なる例示であり、マスタ
ーバッチおよびマスターバッチチップが製造され得る唯一の方法を示すことを意味しない
ことに留意されたい。例えば、異なる型または濃度の被包剤(例えば、除去について異な
る要求性を有する、被包剤または被包化剤の組合せ)、活性粒子、および/または基礎材
料を有する、2つ以上の異なるマスターバッチが最終製品として組み合わされ得る。2つ
の異なるマスターバッチを使用することにより、布地物品が、第1のマスターバッチから
得られた糸、および第2のマスターバッチから得られた糸を使用して編まれ得る、
被包剤は、活性粒子が基礎材料と混合される際に、マスターバッチの形成の間に基礎材
料がその孔に入ることを防止することによって、活性粒子を保存することに留意されたい
。被包剤は、押出しプロセスの間に活性粒子を保存し、このことが工程330に記載され
ている。
【0115】
工程330において、マスターバッチは、その中に埋封された被包化粒子を材料または
製品を製造する押出しプロセスに供される。押出しプロセスは、例えば、1つ以上の糸ま
たは繊維の紐、布地のシート、固体形状の種々の組合せ(例えば、錠剤)、およびプラス
チック(例えば、バッグ、ボトル、自動車部品など)を製造するために使用され得る。種
々の成形方法が、マスターバッチチップから異なる形状を形成するために使用され得る。
【0116】
押出しプロセスは、代表的には、基礎材料(例えば、ポリマー)および被包化粒子を含
む溶融混合物を作製するために、マスターバッチチップを、所定の時間で所定の温度およ
び圧力に供する工程を伴う。所望の場合には、被包化粒子の濃度を希釈するために、さら
なる基礎材料(例えば、純粋形態の特定の基礎材料)が、マスターバッチチップ中に添加
され得る。添加される基礎材料はまた、チップの形態であり得、マスターバッチを作製す
るために使用された同じ基礎材料であり得るか、または異なる基礎材料であり得る。純粋
なチップが添加される場合、それらもまた、所定の時間で所定の温度および圧力に供され
る。
【0117】
チップ(例えば、マスターバッチチップおよび/または純粋なチップ)が粉砕され、所
望の活性粒子濃度にまで希釈された後で、このチップが押出し成形される。チップは、種
々の材料(例えば、布地および糸)を製造するように押出し成形され得る。例えば、押出
し成形装置が、糸を製造するように構成されている場合、チップは、絡み合わされて糸を
形成する繊維として押出し成形され得る。したがって、押出しプロセスから得られる最終
製品は、その中に埋封した被包化粒子を有する材料を生じる。
【0118】
押出し成形された材料は、基礎材料(例えば、埋封物質)内に埋封された被包化粒子を
有する。被包化粒子のいくつかは、押出し成形された材料内に完全に含まれ得るが、他の
粒子は、基礎材料の外表面を超えて延び得る(すなわち、周囲環境に曝露される)。例え
ば、図4は、その中に埋封された被包化粒子を有する繊維400の断面図を示す。具体的
には、繊維400は、繊維400の外表面から延びる被包化粒子402および繊維400
内に完全に含まれている被包化粒子403を有する。図4に示されるように、被包化粒子
の各々が、活性粒子405(例えば、活性炭)および被包剤406(例えば、水溶性界面
活性剤)を有している。
【0119】
繊維400の一部じゅうでの被包化粒子の分布は、任意の数の変数(例えば、使用され
る粒子の濃度、繊維のサイズなど)に依存して変動し得る。押出しプロセスによって製造
された材料は、その材料の外表面を超えて延びる(すなわち、周囲環境に曝露される)被
包化粒子、および基礎材料内に完全に含まれる被包化粒子の任意の分布を有し得ることを
当業者は理解する。
【0120】
図3を再度参照して、工程340において、被包剤が、押出し成形された材料の表面を
超えて延びる(すなわち、周囲環境に曝露される)被包化粒子から除去される。この段階
では、押出し成形された基礎材料内に含まれる被包化粒子の被包剤は、除去される必要が
ない。なぜなら、その基礎材料は、その被包化粒子を完全に閉じ込めており、それが周囲
環境に曝露されることを防止するためである。しかし、それらの閉じ込められた被包化粒
子が後で表面上で曝露される場合、次いで、それらは後で再生され得る。例えば、通常の
摩擦および裂けは、基礎材料または被包剤の層または部分を剥離して、表面上に新たな粒
子を曝露し得る。層を剥離(stripping)または剥離(peeling)して、
新たな活性粒子を曝露させるというコンセプトは、いくつかの実用的な適用を有し得る。
例えば、製品の表面を使用する(例えば、剥離、除去、または処理)ことによって、閉じ
込められた被包化粒子を曝露し得、この被包化粒子は、次いで、再活性化され得る。
【0121】
図5は、繊維500の外表面を超えて延びる被包化粒子から被包剤が除去されている繊
維500を示す。つまり、繊維500の表面を超えて延びている(すなわち、周囲環境に
曝露される)粒子502の部分は、もはや被包剤を有していない。しかし、繊維500内
に含まれる粒子503は、まだ被包化されている。
【0122】
被包剤は、再生プロセスを使用して除去され得る。蒸気が、被包剤を除去するための効
果的な再生剤として使用され得る。例えば、スラッシュシステムが、押出しプロセスによ
って製造された糸の紐の列に蒸気を適用するために使用され得る。蒸気の適用は、例えば
、水溶性被包剤(例えば、水溶性界面活性剤、塩、ポリマー塩、またはポリビニルアルコ
ール)を除去するために使用され得る。また別の例において、被包剤は、押出し成形され
た材料を熱した水浴に供することによって除去され得る。別の例において、超臨界CO
が、被包剤を溶解するための溶媒として使用され得る。複数の洗浄工程および代替的な処
理が、特定の被包剤を除去するために必要であり得る。これは、時間放出型の再生プロセ
スにおいて有用であり得る。
【0123】
有害物質および他の因子の吸収に起因して、いくつかの活性粒子の再生が、その活性粒
子の元々の活性の完全な回復を生じないかもしれないことに留意されたい。しかし、基礎
材料に性能増強特性を与えるために、活性粒子が完全に予め被包化されていない活性を取
り戻すことは必須ではないことが、見出されている。
【0124】
上記の押出しプロセスは、本発明の被包化方法が実行され得る、増強材料を製造するプ
ロセスの1例である。本発明の原理が使用され得る他のプロセスが、以下で考察される。
例えば、空気分散プロセス、パディング法プロセス、および組み合わされた溶媒/被包化
固体塗布法が、考察される。
【0125】
本発明の原理は、埋封物質を処理するために空気分散法に取り込まれ得る。一般的に、
空気分散法は、(a)気体キャリア中に活性粒子を含み、(b)含まれる気体キャリアで
埋封物質(例えば、織布)の第1の面を処理し、(c)埋封物質の第1の面から第2の面
へと埋封物質を挟んでの圧力低下を維持し、それによって、含まれる活性粒子の少なくと
もいくらかが、埋封物質に取り込まれ、(d)活性粒子を埋封物質に固定する。空気分散
法の上記の記載は、理解しやすい説明であることを意図しておらず、このような方法の単
なる例示である。空気分散法は、多数の異なる方法で行われ得ることを当業者は理解する
。空気分散法の詳細な説明は、例えば、米国特許出願第20030060106号(20
03年3月27日公開、その開示は、本明細書においてその全体を参考して援用される)
において見出し得る。
【0126】
固定工程(上記工程(d)を参照のこと)は、粒子を埋封物質に永続的に結合する工程
である。1つのアプローチにおいて、この工程は、結合剤および溶媒(例えば、水)を含
む溶液を使用することで、実行され得る。この溶液は、粒子を埋封物質に結合させるため
に塗布される。結合剤は、粒子を埋封物質に固定するための「グルー」として機能し、水
は、結合剤を埋封物質を通って、粒子へと運ぶための「キャリア」として機能する。この
溶液は大部分が溶媒から構成されるので、この溶液は、埋封物質に吸収される際に、活性
粒子を引き離す傾向があり、被包剤の部分を曝露する。従って、溶媒が埋封材料に吸収さ
れる際に、溶媒はまた、結合剤を粒子から離れたところへ運ぶ(例えば、溶液は、埋封物
質と直接的に、またはほぼ直接的に接触しない粒子の部分を引き離す)。しかし、埋封物
質と接触している被包化粒子の部分は、溶液を通さないかもしれない。これは、被包剤を
曝露している間に、結合剤が粒子と埋封物質との間に結合を形成することを、有利に可能
にする。
【0127】
固定するプロセスは、保護されていない活性粒子の不活性化を引き起こし得る。例えば
、溶液が十分な速さで乾燥しない場合、結合剤は、埋封物質から滲み出し、保護されてい
ない活性粒子の孔に侵入し得る。この問題は、気体キャリアに含まれる前に粒子を被包化
することで避け得る。
【0128】
そのために、空気分散プロセスに供される前に、被包剤を活性粒子に塗布することによ
り、早期の不活性化を引き起こし得る物質に供される間の活性粒子の保護を促進し得る。
被包化粒子が埋封物質に結合された後で、再生因子が、被包剤を除去するために適用され
得る。従って、結合剤によって被覆されていない被包化粒子の全ての部分が除去され得、
これらの部分の周囲環境への曝露が生じる。
【0129】
本発明の原理は、埋封物質を処理するために使用されるパディング法に取り込まれ得る
。パディング法は、材料(例えば、糸、布地など)を活性粒子の浴に通す工程を伴う。埋
封物質が浴を通過する際に、活性粒子が埋封物質に接着する。パディングプロセスは、粒
子の浴を攪拌し得、適切な活性粒子の取り込みを妨げ得るチャネルの形成を防止する。さ
らに、パディング法は、埋封物質がパディングチャンバを通過する際に、ローラーを使用
して活性粒子を埋封物質中に押し込み得る。
【0130】
活性粒子は、結合剤の塗布を介して、埋封物質に永続的に結合され得る。結合剤は、代
表的には、埋封物質がパディングチャンバを通過する前または後のいずれかで、溶液とし
て埋封物質に塗布される。空気分散方法と組合わせて上述されたものと同じ固定方法が、
この方法において適用され得る。パディング法の上記の記載は、徹底的な考察であること
を意図しておらず、パディング法がどのように実行され得るのかについての例示を提供す
るためにのみ機能する。パディング法の詳細な考察は、例えば、米国特許出願第2002
0197396号(2002年12月26日公開、その開示は本明細書においてその全体
が参考として援用される)において見出され得る。
【0131】
溶液(例えば、結合剤および溶媒)は、活性粒子を早期に不活性化する可能性を有する
ことに留意されたい。しかし、パディング法に適用される前に活性粒子を被包化すること
によって、早期の不活性化の可能性を減少させ得る。被包化粒子が材料に永続的に固定さ
れた後で、被包剤は除去される。
【0132】
空気分散方法に関連して上で考察したように、結合剤は、粒子全体を含まない可能性が
ある。なぜなら、埋封物質(例えば、糸)が溶液を吸い上げるためである。そのために、
再生因子が適用される場合、結合剤に被覆されていない被包剤が除去され得る。
【0133】
本発明の被包方法は、活性粒子および結合剤の組合せ混合物を埋封物質(例えば、布地
)に塗布する適用において、使用され得る。この組合せ混合物は、時々、液体懸濁物とい
われる。この懸濁液は、例えば、埋封物質上に噴霧され得るか、ローラーまたは他のアプ
リケーターによって埋封物質に塗布され得るか、または埋封物質が浸され得る浴として使
用され得る。この液体懸濁物を使用する過去の試みは、活性粒子の早期の不活性化を生じ
た。なぜなら、一旦、粒子が溶液に浸漬されると、その活性粒子が早期に不活性化され得
るためである。
【0134】
液体懸濁物に浸漬される前に被包剤(例えば、ワックス)で被包された活性粒子は、そ
うでなければ活性粒子を前もって不活性化する条件(例えば、結合剤)に供されている間
に、その性能増強特性を保持し得る。そのために、被包化粒子および溶液の混合物は、液
体懸濁液を塗布する手段を使用して性能増強性粒子を埋封物質に塗布するために有利に使
用され得る。この溶液は、埋封物質に接着する傾向を有しているので、被包化粒子から引
き離し、被包剤の一部を周囲環境に曝露させる。次いで、この曝露された被包剤が除去さ
れ、活性粒子のその部分を再活性化する。
【0135】
この被包化粒子および結合剤の組合せ懸濁物は、例えば、上記のパディング方法の改変
バージョンにおいて、使用され得る。より具体的には、パディング方法は、材料がパディ
ングチャンバを通過する際に、液体懸濁物によってパディングされるように、変更され得
る。従って、液体懸濁物を使用することによって、2つの別個の工程で、活性粒子および
結合剤によって材料をパディングする必要がないかもしれない。液体懸濁物は、1工程で
塗布され得る。
【0136】
本発明の原理はまた、埋封物質を処理するためにゼログラフィー方法に取り込まれ得る
。ゼログラフィー方法は、静電気的誘引または磁気的誘引の原理を使用して、トナー処方
物をホッパーからドラムアセンブリへと移転する。ドラムアセンブリは、電気的に帯電し
ているか、または磁気的に極性化している、所定の速さで回転するアセンブリである。ド
ラムアセンブリが回転する際に、トナー処方物が、このアセンブリの選択的(例えば、磁
気的にまたは電気的に帯電した)部分へと誘引され、その部位によって保持される。次い
で、アセンブリが回転を続ける際に、アセンブリが、そのトナー処方物を埋封物質上へと
押し付ける。次いで、埋封物質は、トナー処方物をこの材料に永続的に固定化する熱に供
される(例えば、トナー処方物中の結合剤が、可塑化して、粒子を埋封物質へと結合させ
る。)。ゼログラフィー方法の詳細な考察は、例えば、米国特許出願公開第200201
97547号(2002年12月26日公開、その開示はその全体が本明細書に参考とし
て援用される)に見出され得る。
【0137】
トナー処方物としては、活性粒子(例えば、活性酸素)、結合剤、および添加剤(例え
ば、電荷制御粒子、磁気制御粒子、および/または着色剤)が挙げられるが、これらに限
定されない。本発明の原理を適用する場合、活性粒子は、トナー処方物に添加される前に
被包剤(例えば、ワックス)で被包化され得る。この被包剤は、活性粒子が埋封物質に永
続的に結合している間、活性粒子の特性を維持し得る。
【0138】
上記の被包化方法を使用することで、種々の処理された埋封物質(例えば、布地(織布
および不織布))、糸、発泡体、バッグ、プラスチック成分、エアロゾル、液体物質(例
えば、フィルター中の水)、気体物質(例えば、香料)、および他の物体が製造され得る
。例えば、処理された糸は、衣類(例えば、靴下)を編むために使用され得る。このよう
な靴下は、人の足から生じ得る不快な臭いを吸収し得る。別の例において、被包化粒子は
、被包化粒子を所望の位置に噴霧するエアフレッシュナー(air freshener
)内に保たれ得る。次いで、特定の再生条件または物質が適用された後で、被包化粒子が
再活性化される。
【0139】
本発明に従って、その中に取り込まれた活性粒子を有する埋封物質は、他の適用(例え
ば、椅子の座面、カーペット、ラグ(rug)、マット、リネン、シーツ、タオル、ラグ
(rag)、ペット用ベッド、マットレスパッド、マットレス、家具、カーテン、炉用フ
ィルター、靴、靴の敷き皮、およびオムツ)において使用され得る。処理された材料はま
た、衣服(例えば、シャツ、パンツ、ブラウス、下着用衣類(例えば、Tシャツ、下着、
ブラなど)、帽子、および他の衣服に関連する商品)においても使用され得る。防護服(
例えば、生化学的防護服、および抗照射服(すなわち、赤外線放射に対する保護を提供す
る服))は、処置された材料を使用して構築され得る。さらに、狩猟用具が、本発明の処
理された材料を使用して、製造され得る。さらに、フィルターが、処理された材料で構築
され得る。このようなフィルターは、花粉および他の粒子を捕捉するために、吸引掃除機
において使用され得る。フィルターは、危険な生物学的材料を使用する研究室において、
使用され得る;活性粒子は、生物学的因子を捕捉し、それらが大気中に逃れることを防止
する。他のフィルターは、充填されるべき物質内に埋封された被包粒子(例えば、水フィ
ルター)を使用し得る。
【0140】
本発明の処理された糸についての上記の適用は、網羅的な列挙ではなく、可能な適用の
例示的な記載に過ぎないことを当業者は理解する。
【実施例】
【0141】
以下は、本発明が、上記の方法を使用して基礎材料中に取り込まれている粒子の特性を
保存するために適用され得る例を提供する。これらの実施例は、例示の目的のみであって
、いかなる様式によっても本発明の範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0142】
(実施例1)
この実施例は、性能増強合成糸を、図3のプロセスに従って製造したことを示す。より
具体的には、この実施例は、活性炭を被包化し、それをポリエステル製基礎材料と混合し
てマスターバッチチップを形成し、そのマスターバッチチップを押出し成形して所望の糸
を製造し、そして、曝露された活性炭粒子から保護的被包層を除去する方法を、実施した
ことを示す。この実施例から得られた糸は、ポリエステル製基礎材料に関連する物理的特
徴を示すことに加えて、実質的な吸収能力を示した。従って、この糸は、ポリエステルの
持ち味を有していたが、活性炭から与えられる性能増強品質(例えば、臭気吸収)も有し
ていた。
【0143】
この実施例で使用された活性炭は、モデル番号SA−30としてCarboChem
Corporation(Ardmore,Pennsylvania)から販売されて
いる。SA−30をさらにジェット破砕し、炭素粒子の97%が、直径10ミクロン未満
の平均サイズを有するように分類した。従って、この実施例において使用されたSA−3
0の97%は、10ミクロン未満の直径を有していた。
【0144】
次いで、活性炭を被包剤と混合し、この炭素粒子を被包化した。この実施例で用いた被
包剤は、Surfynol 485WとしてAir Products and Che
micals Corporation(Allentown,Pennsylvani
a)から販売されている水溶性界面活性剤である。孔が少なくとも部分的には被包される
ように、水溶性界面活性剤で活性炭粒子の表面を十分にコーティングし、それによって、
SA−30をどのような有害条件からも防護した。使用した水溶性界面活性剤の量は、マ
スターバッチを作製するために使用した活性炭の総重量の約20%と等量であった。この
特定の実施例は、マスターバッチに使用された炭素重量の20%を占める被包剤を使用し
ているが、異なる量または濃度の被包剤が使用され得ることが理解されることに留意され
たい。この実施例において、約20%〜約100%の範囲の水溶性界面活性剤濃度を試験
したが、20%濃度が最良の結果を与えることを見出した。使用された特定のサイズの炭
素粒子および被包剤の型は、異なる量または濃度を保証し得ることにも留意されたい。
【0145】
活性炭粒子を被包化した後で、この被包化粒子をポリエステル製基礎材料と混合し、マ
スターバッチを作製した。この実施例で使用された基礎材料は、ブランクのPETとして
Americhem Corporation(Charlotte,North Ca
rolina)よって販売されている。活性炭がマスターバッチの総重量の15%を占め
るように、マスターバッチを処方した。例えば、マスターバッチが1000gの重量であ
る場合、マスターバッチ重量の150gは炭素に起因する。
【0146】
被包化炭素をポリエステル基礎材料と十分に混合した後で、この混合物をマスターバッ
チチップに変換した。次いで、これらのマスターバッチチップを、100%ポリエステル
に加えて、76穴を有する装置から押出し成形した。延伸比4:1で、この装置を介して
繊維を延伸した(例えば、装置へと引込まれた繊維の1mに対して、4メートルの長さま
で繊維が伸ばされる)。この特定の延伸比によって、各々、4.4のデニールを有する繊
維が生じた。
【0147】
被包化炭素を有するチップを、フィルターを目詰まりさせない温度および圧力を使用し
て、40ミクロンのフィルターに通過させたことに留意されたい。このチップは、フィル
ターを通って流れた。なぜなら、それらは、チップが流れを示させる所定の圧力および温
度に供されていたからである。
【0148】
押出し成形繊維内に含まれる被包化炭素粒子の濃度を希釈するために、ポリマーチップ
を添加した。マスターバッチチップは、約15%の炭素濃度を有していたことに留意され
たい。従って、繊維を単独でマスターバッチチップから延伸する場合、繊維の炭素濃度は
約15%である。そのために、押出しプロセスの間にマスターバッチチップにポリマーチ
ップを添加することにより、15%未満の炭素濃度を有する繊維が生じる。この実施例に
おいて、押出しプロセスを4回行い、各プロセスは、異なる炭素濃度を有する繊維を得る
ように行った。ここで、4回の別個の押出しプロセスは、1%、2%、3%、および4%
の炭素含量を有する繊維を生じた。
【0149】
76本の繊維が押出し成形した後で、次いで、それらを中空布地(tubular f
abric)(例えば、靴下)に編み込んだ。中空布地を編んだ後で、試験するために、
約100cmの切片を4つの中空布地の各々から切り出した。従って、異なる炭素濃度
(例えば、1%、2%、3%、および4%)を有する4つの布地をこの実施例において試
験した。
【0150】
布地中に含まれる炭素の活性を、活性炭の活性化レベルを決定するためのAmeric
an Standard for Testing and Materials(本明
細書中、以降「ASTM」)試験を使用して、決定した。この試験は、2000年に活性
炭の活性化レベルを試験するための標準として再認可され、D 5742−95という名
称を有する(本明細書中、以降「ASTM方法」)。一般的に、ASTM方法は、ブタン
活性を決定することによって、活性炭の活性を決定する。ASTMに従って、ブタン活性
を、サンプル質量に対する活性炭サンプルに吸収されたブタン質量の比として定義した。
つまり、サンプルをブタンガスで飽和させ、次いで、測定して、ブタンの吸収によって生
じた質量増加を決定した。従って、吸収されるブタンがより多いことは、より高レベルの
活性を示す。
【0151】
活性炭の活性を測定するための以前の標準は、四塩化炭素(CCl)を使用して行わ
れたことに留意されたい。しかし、CClは、オゾン層に対して傷害性でありすぎるこ
とが見出され、そのために、ブタンが代わりに使用されるようになった。さらに、CCl
とブタンと間には直接的な相関がある(すなわち、1単位のブタン活性は、CCl
性の約2.55単位と等価である)。従って、ブタンを使用して行われた測定は、CCl
を使用する測定に相関する。
【0152】
ASTM方法を用いて、マスターバッチ処方プロセスに供される前に、SA−30の活
性をその粉末形態において測定した。SA−30粉末に吸収されたブタンによる重量増加
は、1グラムのSA−30当たり0.0988グラムのブタンであった。これは、9.8
8%のブタン活性値または25.19%のCCl活性値を生じた。
【0153】
図6は、未処理のサンプル(例えば、純粋なSA−30)および1%、2%、3%、お
よび4%のサンプルについて得られたデータの表を示す。この実施例において、各サンプ
ルの重量(例えば、布地および炭素の合計重量)、各サンプル中の炭素重量、各サンプル
のブタンによる重量増加を測定した。これらの重量値は、図6に示される。測定した重量
に基づいて、ブタン活性およびCCl活性、ならびに各サンプルの保持活性を計算した
。ブタン活性は、ブタンによる重量増加を測定したサンプル中の炭素重量で除算して計算
した。CCl活性は、ブタン活性に2.55を乗算して計算した。保持活性は、サンプ
ルのブタン活性をSA−30粉末のブタン活性と比較して計算した。これらの計算値もま
た、図6に示される。
【0154】
上述の重量を、洗浄および乾燥のサイクルの前後で、各希釈サンプルについて測定した
。図6のデータは、特定のサンプルが洗浄されたか否かを示す。洗浄サイクルは、大量に
充填された水レベルを使用して、サンプルを熱水洗浄液中で14分間洗浄する工程、およ
び1回の冷水すすぎサイクルを包含する。サンプルを洗浄するために使用した洗浄機は、
Kenmore Series 90住宅用洗浄機としてSears Corporat
ionにより販売されている。衣料乾燥機を使用して、サンプルを高温環境で45分間乾
燥した。この実施例において使用した乾燥機は、Kenmore Series 90住
宅用乾燥機としてSears Corporationにより販売されている。
【0155】
図6に表として示されたデータは、未洗浄のサンプルが、ほとんどまたは全くブタン活
性を示さなかったことを示す。さらに、未洗浄のサンプルは活性を保持していなかった。
被包剤がまだサンプルを被包しており、それによって、孔が周囲環境から隔離されていた
ので、微小な活性しか実現しなかった。
【0156】
サンプルを洗浄して、水溶性界面活性剤を除去し、それによって、活性炭を曝露させた
。1%、2%、3%、および4%のSA−30サンプルはそれぞれ、9.80%、5.6
3%、2.71%、および3.97%のブタン活性を示し、従って、これは、マスターバ
ッチの形成の間および押出しプロセスの間に溶融ポリエステルに供された後で、活性炭が
活性を保持したことを示す。図6に示されるように、1%、2%、3%、および4%のS
A−30サンプルについて保持された活性はそれぞれ、99.17%、57.00%、2
7.46%、および40.19%であった。
【0157】
一般的に、サンプル中への炭素の充填が増大するにつれて(例えば、4%サンプルは3
%サンプルよりも多くの炭素を有しており、3%サンプルは2%サンプルよりも多くの炭
素を有している、など)、ブタン吸収は増大することに留意されたい。このデータは、よ
り多く充填されたサンプルについてのブタン活性は低レベルであったにも関わらず、より
多く充填されたサンプルは、より少なく充填されたサンプルよりもより多くのブタンを吸
収したことを示す。より多く充填されたサンプルのブタン活性は、より少なく充填された
サンプルに対して低かった。なぜなら、より多くの炭素が基礎材料に完全に閉じ込められ
ており、従って、洗浄後に周囲環境に曝露されなかったためである。
【0158】
(実施例2)
実施例1に示したものと類似の手順を繰り返したが、異なる被包剤を使用して、異なる
マスターバッチを作製した。この実施例の結果が、図7に示される。この実施例で使用し
たマスターバッチは、実施例1で使用したものと同じ分類のSA−30炭素を使用し、T
extile Wax WとしてBASF(Charlotte,North Caro
lina)により販売されている被包剤ワックス層を使用した。
【0159】
上述のマスターバッチを使用して、サンプルを2%炭素充填にまで希釈した。押出しプ
ロセスによって押出し成形された繊維を得た後で、この繊維を中空布地(例えば、靴下)
に織り込んだ。繊維を4:1比で延伸したにも関わらず、実施例1の繊維によって実現さ
れた4.4のデニールの代わりに、この繊維は5のデニールを有した。中空生地の100
cm部分を除去し、洗浄し、そして試験した。
【0160】
図7は、実施例1で得たものと同様の、重量の測定値および活性の計算値を示す。図7
のデータはまた、純粋な形態のSA−30についてのデータ、および両方のサンプルにつ
いてのデータも示す。さらに、図7は、純粋にポリエステルからなるサンプルについての
データを示す。予想通りに、ポリエステルサンプルは、吸収能力を全く生じなかった。希
釈したサンプルのブタン活性のデータは、被包剤が、マスターバッチの形成の間および押
出しプロセスの間、活性炭を保護したことを示す。
【0161】
従って、活性粒子は、早期の不活性化から防護され得ることが分かる。限定の目的では
なく例示の目的で提供した記載した実施形態とは異なる実施形態によって、本発明が実施
され得ること、および本発明が特許請求の範囲によってのみ制限されることを、当業者は
理解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−139688(P2012−139688A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−82016(P2012−82016)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2004−512887(P2004−512887)の分割
【原出願日】平成15年6月12日(2003.6.12)
【出願人】(504455115)トラップテック, エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】