説明

被印字媒体

【課題】インレットが積層された状態で、サーマルプリンタや熱転写プリンタによって印字を行った場合にも、インレットの厚みムラによる印字ムラの発生を防止することができる被印字媒体を提供する。
【解決手段】直線の境界線Xを挟んで線対称の形状を有する第1の領域11および第2の領域12と当該第2の領域12に隣接する第3の領域13とからなる被印字用紙10と、第1の領域11と略同一形状を有する基体に非接触IC回路が実装され、粘着剤14によって第1の領域11の裏面に接着されたインレット2と、インレット2、第2の領域12および第3の領域13の裏面に塗布された粘着剤15に仮着された台紙3とからなり、第2の領域12および第3の領域13に印字を施した後に、台紙3を剥離し、第1の領域11と第2の領域12とを貼り合わせることによってラベルを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタや熱転写プリンタによってサーマルヘッドとプラテンローラとで挟持搬送されることで印字が施される被印字媒体に関し、特に非接触IC回路が形成されたインレットが積層されている被印字媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency ldentification)ラベル等の非接触IC回路は、アンテナ、ICチップ等からなり、フィルム等のシート基材上にアンテナ、ICチップ等からなる非接触IC回路が実装されたものが、「インレット」等の名称で市販されている。このような非接触IC回路は、記憶容量の大きさと高度なセキュリティ機能を有するという特徴に加え、非接触IC回路をリーダライタに近づけるだけで非接触通信ができるために、商品に非接触IC回路を実装することで、商品管理や物流管理に役立たせることができる。
【0003】
しかし、ICチップに記憶された内容は、リーダライタ以外で読み取ることができないため、インレットをラベルに埋め込み、ラベルの表面に印字した文字やバーコードを人間の視覚又はバーコードリーダ等の光学的読み取り機械で読み取り可能とする利用形態が拡大している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来技術では、商品名、価格、サイズ、ロット番号等が印字されるラベルにインレットを埋め込む場合に、被印字用紙(紙やサーマル紙やフィルム)に非接触IC回路を積層することになるが、被印字用紙の厚さが薄いと、サーマルヘッドとプラテンローラとで挟持搬送して印字を施すサーマルプリンタや熱転写プリンタによって印字を行う場合には、インレットの厚みムラによって印字ムラが発生してしまうという問題点があった。
【0005】
すなわち、インレットの厚さは、基体のみの箇所と、アンテナが実装された箇所と、ICチップが実装された箇所とで異なるため、インレットが積層された状態の被印字用紙に印字を行う場合に、サーマルヘッドが被印字用紙に均等に押圧されず、印字ムラが発生してしまう。このような問題点は、被印字用紙が厚い場合には、被印字用紙の厚みでインレットの厚みムラを吸収することができるため、解消されるが、被印字用紙が70μm以下である場合に顕著に現れる。
【特許文献1】特開2002−123805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄い被印字用紙にインレットが積層された状態で、サーマルヘッドとプラテンローラとで挟持搬送して印字を施すサーマルプリンタや熱転写プリンタによって印字を行った場合にも、インレットの厚みムラによる印字ムラの発生を防止することができる被印字媒体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
請求項1記載の発明の要旨は、直線の境界線を挟んで線対称の形状を有する第1の領域および第2の領域と当該第2の領域に隣接する第3の領域とからなる被印字用紙と、前記第1の領域の裏面に塗布された第1の粘着剤と、前記第1の領域と略同一形状を有する基体に非接触IC回路が実装され、前記第1の粘着剤によって前記第1の領域の裏面に接着されたインレットと、該インレット、前記第2の領域および前記第3の領域の裏面に塗布された第2の粘着剤と、該第2の粘着剤に仮着された台紙とを具備し、前記インレットが前記第1の領域のみに積層された状態で、前記被印字用紙が前記台紙に仮着されていることを特徴とする被印字媒体に存する。
また請求項2記載の発明の要旨は、前記被印字用紙の厚さは、70μm以下であることを特徴とする請求項1記載の被印字媒体に存する。
また請求項3記載の発明の要旨は、前記境界線には、折り目補助形状が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の被印字媒体に存する。
また請求項4記載の発明の要旨は、前記第2の領域と前記第3の領域との境界には、ミシン目が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の被印字媒体に存する。
また請求項5記載の発明の要旨は、請求項1乃至4のいずれかに記載の被印字媒体から前記台紙を剥離した後、前記境界線で前記被印字用紙を折り曲げ、前記インレットの裏面に塗布された前記第2の粘着剤と前記第2の領域の裏面に塗布された前記第2の粘着剤とを接着させ、前記第3の領域の裏面に塗布された前記第2の粘着剤によって被貼付物に貼付されることを特徴とするラベルに存する。
また請求項6記載の発明の要旨は、サーマルヘッドとプラテンローラとで挟持搬送して印字を施すプリンタによって、請求項1乃至4のいずれかに記載の被印字媒体における前記第2の領域および前記第3の領域に印字を施した後に、前記台紙を剥離し、前記境界線で前記被印字用紙を折り曲げ、前記インレットの裏面に塗布された前記第2の粘着剤と前記第2の領域の裏面に塗布された前記第2の粘着剤とを接着させ、前記第3の領域の裏面に塗布された前記第2の粘着剤によって被貼付物に貼付されることにより作成されたことを特徴とするラベルに存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の被印字媒体は、直線の境界線を挟んで線対称の形状を有する第1の領域および第2の領域と当該第2の領域に隣接する第3の領域とからなる被印字用紙と、第1の領域と略同一形状を有する基体に非接触IC回路が実装され、粘着剤によって第1の領域の裏面に接着されたインレットと、インレット、第2の領域および第3の領域の裏面に塗布された粘着剤に仮着された台紙とを具備するように構成することにより、インレットが積層されていない第2の領域および第3の領域を印字領域とすることができ、また、第1の領域と第2の領域との境界線と直交する方向をピッチ方向として、第1の領域を除く第2の領域および第3の領域に印字を施すことで、インレットの厚さムラの影響を受けることなく第2の領域および第3の領域に印字を施すことができるため、薄い被印字用紙にインレットが積層された状態で、サーマルヘッドとプラテンローラとで挟持搬送して印字を施すサーマルプリンタや熱転写プリンタによって印字を行った場合にも、インレットの厚みムラによる印字ムラの発生を防止することができるという効果を奏する。
【0009】
さらに、本発明の被印字媒体は、ラベルとして使用するに際し、第3の領域の裏面に塗布された粘着剤によって被貼付物に貼付させると共に、第2の領域と第3の領域との境界にミシン目を設けるように構成することにより、重ね合わされた第1の領域および第2の領域は、被貼付物に貼付されていないため、ミシン目で切り取ることにより、インレットが積層されている第1の領域および第2の領域を被貼付物に貼付されている第3の領域から容易に除去することで、インレットの回収を容易に行うことができ、環境資源を有効活用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る被印字媒体の実施の形態および構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示すA−B断面図である。
【0012】
本実施の形態の被印字媒体1は、図1および図2を参照すると、第1の領域11、第2の領域12および第3の領域13からなる被印字用紙10と、第1の領域11の裏面に塗布された粘着剤14と、粘着剤14を介して第1の領域11の裏面に接着されたインレット2と、インレット2の裏面、第2の領域12および第3の領域13の裏面に塗布された粘着剤15とからなり、第1の領域11(インレット2)、第2の領域12および第3の領域13の裏面、すなわち粘着剤15が塗布された面が粘着剤15によって台紙3に仮着されている。
【0013】
第1の領域11と第2の領域12との境界線Xは、直線であり、第1の領域11と、第2の領域12とは、境界線Xを挟んで線対称の形状となっている。図1に示す例では、第1の領域11および第2の領域12の形状を長方形としたが、境界線Xを挟んで線対称の形状であれば、略円形や三角形、その他の異形状等の任意な形状で良く、さらに、各コーナー部を円弧状に切り欠く角Rの加工を施すようにしても良い。
【0014】
第3の領域13は、第2の領域12に隣接して設けられており、第3の領域13と第2の領域12との境界線には、ミシン目16が形成されている。図1に示す例では、第3の領域13の形状を長方形とし、境界線Xに直交する方向に第2の領域12と隣接するように設けたが、第3の領域13は、略円形や三角形、その他の異形状等の任意な形状で良く、さらに、第2の領域12と隣接していれば、任意の方向に設けても良い。
【0015】
インレット2は、フィルム等のシート基体上に、ICチップ21およびアンテナ22からなる非接触IC回路が実装されているものであり、第1の領域11と略同一の形状を有している。なお、非接触IC回路とは、ICチップ21とアンテナ22とからなり、電波を用いて無線(非接触)で情報通信が可能なラベルであり、RFID、非接触ICラベル、無線ICラベル等の他の呼称で表される場合もあるが、本発明では、代表して非接触IC回路と表現する。
【0016】
被印字用紙10としては、サーマル紙、フィルム等を用いることができ、本実施の形態では、被印字用紙10の厚さは、70μm以下のものが用いられている。従って、サーマルヘッドとプラテンローラとで挟持搬送して印字を施すサーマルプリンタや熱転写プリンタによって、被印字用紙10にインレット2が積層された状態で被印字用紙10の表面に印字を施すと、インレット2の厚みムラによって印字ムラの発生や、サーマルヘッドからの熱によってICチップ21の破損が懸念される。
【0017】
本実施の形態では、第1の領域11と第2の領域12との境界線Xと直交する方向をピッチ方向とすると共に、第1の領域11を除く第2の領域12および第3の領域13の表面に印字を施すことにより第2の領域12および第3の領域13には、インレット2が積層されていないため、幅方向で厚さが均一となって、印字ムラの発生を防止することができると共に、第1の領域11では、サーマルヘッドから熱が印加されないため、ICチップ21の破損を防止することができる。なお、第2の領域12および第3の領域13の表面には、会社名や商品名等の文字表記51、価格等の数字表記52、バーコード等の記号表記53を印字することができる。
【0018】
第1の領域11と第2の領域12との境界線Xは、第1の領域11と第2の領域12とを貼り合わせる際の直線上の折り目となる部分であり、折り目を付けるための折り目補助形状として、ミシン目、厚さ方向に一部分を残した切り込み、厚さ方向に一部分を残した断面がV字状の切り込みや、これらの組み合わせを形成することが考えられる。
【0019】
なお、粘着剤14、15としては、例えばエマルジョン系、ソルベント系、ホットメルト系、UVホットメルト系、UV硬化型、空気硬化型のように任意のものが使用可能であり、素材は、アクリル系、ゴム系など任意である。また、粘着剤14、15の強さは、特に制限しないが、強粘着剤と呼ばれる強さ以上(JIS Z 0237 180°引きはがし法で800g/25mm以上)が望ましい。
【0020】
次に、本実施の形態の使用方法について図3乃至図5を参照して詳細に説明する。
図3は、本発明に係る被印字媒体の実施の形態からラベルを作成する動作を説明するための説明図であり、図4は、本発明に係る被印字媒体の実施の形態から作成されたラベルの構成を示す斜視図であり、図5は、図4に示すC−D断面図である。
【0021】
図3(a)に示すように、第1の領域11、第2の領域12および第3の領域13からなる被印字用紙10を台紙3から剥がした状態から、図3(b)に示すように、境界線Xから折り曲げ、第1の領域11の裏面側のインレット2の裏面に塗布された粘着剤15と、第2の領域12に塗布された粘着剤15とを接着させることにより、第1の領域11の裏面と第2の領域12の裏面とを貼り合わせる。
【0022】
第1の領域11の裏面と第2の領域12の裏面とを貼り合わせた状態では、図4および図5に示すように、被印字用紙10が第1の領域11と第2の領域12との境界線Xで折り曲げられ、第1の領域11と、粘着剤14と、インレット2と、粘着剤15と、第2の領域12とが積層された状態となると共に、第3の領域13の裏面に塗布された粘着剤15が露出する状態となり、第3の領域13の裏面に塗布された粘着剤15によって被貼付物に貼付することができる。
【0023】
第1の領域11と第2の領域12とは、境界線Xを挟んで線対称の形状を有すると共に、第1の領域11とインレット2とが略同一形状であるため、図4および図5に示すように、第1の領域11と第2の領域12とがずれることなく貼り合わされる。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態によれば、直線の境界線Xを挟んで線対称の形状を有する第1の領域11および第2の領域12と当該第2の領域12に隣接する第3の領域13とからなる被印字用紙10と、第1の領域11と略同一形状を有する基体に非接触IC回路が実装され、粘着剤14によって第1の領域11の裏面に接着されたインレット2と、インレット2、第2の領域12および第3の領域13の裏面に塗布された粘着剤15に仮着された台紙3とを具備するように構成することにより、インレット2が積層されていない第2の領域12および第3の領域13を印字領域とすることができ、また、第1の領域11と第2の領域12との境界線Xと直交する方向をピッチ方向として、第1の領域11を除く第2の領域12および第3の領域13に印字を施すことで、インレット2の厚さムラの影響を受けることなく第2の領域12および第3の領域13に印字を施すことができるため、薄い被印字用紙10にインレット2が積層された状態で、サーマルヘッドとプラテンローラとで挟持搬送して印字を施すサーマルプリンタや熱転写プリンタによって印字を行った場合にも、インレット2の厚みムラによる印字ムラの発生を防止することができるという効果を奏する。
【0025】
さらに、本実施の形態によれば、ラベルとして使用するに際し、第3の領域13の裏面に塗布された粘着剤15によって被貼付物に貼付させると共に、第2の領域12と第3の領域13との境界にミシン目16を設けるように構成することにより、重ね合わされた第1の領域11および第2の領域12は、被貼付物に貼付されていないため、ミシン目16で切り取ることにより、インレット2が積層されている第1の領域11および第2の領域12を被貼付物に貼付されている第3の領域13から容易に除去することで、インレット2の回収を容易に行うことができ、環境資源を有効活用することができるという効果を奏する。
【0026】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る被印字媒体の実施の形態および構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すA−B断面図である。
【図3】本発明に係る被印字媒体の実施の形態からラベルを作成する動作を説明するための説明図である。
【図4】本発明に係る被印字媒体の実施の形態から作成されたラベルの構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示すC−D断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 被印字媒体
2 インレット
3 台紙
10 被印字用紙
11 第1の領域
12 第2の領域
13 第3の領域
14 粘着剤
15 粘着剤
16 ミシン目
21 ICチップ
22 アンテナ
51 文字表記
52 数字表記
53 記号表記
X 境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線の境界線を挟んで線対称の形状を有する第1の領域および第2の領域と当該第2の領域に隣接する第3の領域とからなる被印字用紙と、
前記第1の領域の裏面に塗布された第1の粘着剤と、
前記第1の領域と略同一形状を有する基体に非接触IC回路が実装され、前記第1の粘着剤によって前記第1の領域の裏面に接着されたインレットと、
該インレット、前記第2の領域および前記第3の領域の裏面に塗布された第2の粘着剤と、
該第2の粘着剤に仮着された台紙とを具備し、
前記インレットが前記第1の領域のみに積層された状態で、前記被印字用紙が前記台紙に仮着されていることを特徴とする被印字媒体。
【請求項2】
前記被印字用紙の厚さは、70μm以下であることを特徴とする請求項1記載の被印字媒体。
【請求項3】
前記境界線には、折り目補助形状が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の被印字媒体。
【請求項4】
前記第2の領域と前記第3の領域との境界には、ミシン目が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の被印字媒体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の被印字媒体から前記台紙を剥離した後、前記境界線で前記被印字用紙を折り曲げ、前記インレットの裏面に塗布された前記第2の粘着剤と前記第2の領域の裏面に塗布された前記第2の粘着剤とを接着させ、前記第3の領域の裏面に塗布された前記第2の粘着剤によって被貼付物に貼付されることを特徴とするラベル。
【請求項6】
サーマルヘッドとプラテンローラとで挟持搬送して印字を施すプリンタによって、請求項1乃至4のいずれかに記載の被印字媒体における前記第2の領域および前記第3の領域に印字を施した後に、前記台紙を剥離し、前記境界線で前記被印字用紙を折り曲げ、前記インレットの裏面に塗布された前記第2の粘着剤と前記第2の領域の裏面に塗布された前記第2の粘着剤とを接着させ、前記第3の領域の裏面に塗布された前記第2の粘着剤によって被貼付物に貼付されることにより作成されたことを特徴とするラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−276389(P2006−276389A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94453(P2005−94453)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】