説明

被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップ

【課題】捕集剤が充填された被捕集ガスサンプラーの流量を容易に一定させることが可能な被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップを提供する。
【解決手段】先端部分14aと基端部分14bが小径に形成された密閉状の捕集管と、該捕集管内に充填され、被捕集ガスを捕集可能な捕集剤とを備え、使用時に先端部分14aの一部と基端部分14bの一部が切断されて開口を形成することによって、先端部分14aから基端部分14bに被捕集ガスを流動させることを可能となる被捕集ガスサンプラー14の先端部分14a及び基端部分14bの少なくとも一方に装着可能なキャップ10において、被捕集ガスサンプラーの先端部分14a又は基端部分14bを開口部分12に挿入可能な有底円筒状に形成され、その底部16の表面には、所定の力を与えることによって、破断されて孔16aが形成されることが可能な凹部18a、18b、18cが少なくとも1以上形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕集剤が充填された被捕集ガスサンプラーの先端部分及び基端部分の少なくとも一方に装着可能なキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、捕集管内に活性炭などの捕集剤が充填され、その捕集管内にガスを流動させて、被捕集ガスを捕集剤によって捕集させる被捕集ガスサンプラーがある。この種の被捕集ガスサンプラー40は、図7に示すように、先端部分42aと基端部分42bが小径に形成された密閉状のガラス製の捕集管42内に、基端側(図の右側)から順にウレタンフォーム44、捕集剤である活性炭46(例えば、50mg)、ウレタンフォーム48、捕集剤である活性炭50(例えば、100mg)、石英ウール52及びスプリングストッパー54が充填されている。この被捕集ガスサンプラー40は、使用時に先端部分42aの一部と基端部分42bの一部が切断されて開口56が形成されることによって、先端部分42aから基端部分42bへのガスの流動が可能となるように形成されている。
【0003】
このような被捕集ガスサンプラー40は、ゴム製のキャップが先端部分42aと基端部分42bに装着されており、そのキャップが装着された状態で小径の先端部分42a及び基端部分42bに径方向の力を加えることによって、これら先端部分42aや基端部分42bの一部を切断して開口56を形成している。そして、使用時には、基端側にホースなどを介して吸引ポンプを接続して、先端側から基端側にガスを流動させて、活性炭46、50に被捕集ガスを捕集させることによって、被捕集ガスのサンプリングを行なっている(非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】2004〜05年 柴田科学総合カタログ 第447頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような被捕集ガスサンプラー40は、先端部分42aや基端部分42bの一部が切断されることによって、先端側と基端側の開口56が形成されているので、その切断のされ方によって、開口56の大きさが異なり、サンプリングの際に一定した流量を得ることができないという問題がある。この問題を解決するために、吸引ポンプの吸引口にオリフィスを設置することによって、サンプリングの際の流量を一定にしているが、吸引口にオリフィスを設置すると、大きな流量を確保させることが難しくなる。よって、流量に応じて吸引口からオリフィスを取り外したりするが、このようなオリフィスの脱着は、煩雑であり、またそれを繰り返し行なうと、操作ミスが生じ、その結果として、捕集誤差などを生じさせることがある。
【0006】
そこで、本発明は、捕集剤が充填された被捕集ガスサンプラーの流量を容易に一定させることが可能な被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明は、先端部分と基端部分が小径に形成された密閉状の捕集管と、該捕集管内に充填され、被捕集ガスを捕集可能な捕集剤と、を備え、使用時に先端部分の一部と基端部分の一部が切断されて開口を形成することによって、先端部分から基端部分に被捕集ガスを流動させることを可能となる被捕集ガスサンプラーの先端部分及び基端部分の少なくとも一方に装着可能なキャップにおいて、被捕集ガスサンプラーの先端部分又は基端部分を開口部分に挿入可能な有底円筒状に形成され、その底部の表面には、所定の力を与えることによって、破断されて孔が形成されることが可能な凹部が少なくとも1以上形成されていることを特徴とする。
【0008】
以上のように、本発明に係る被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップによれば、有底円筒状に形成され、その底部の表面には、所定の力を与えることによって、破断されて孔が形成されることが可能な凹部が形成されているので、所望の場合、該凹部に所定の力を加えて孔を形成することによって、該キャップをオリフィスとして利用することができる。また、本発明に係る被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップは、先端部分又は基端部分の一部が切断された被捕集ガスサンプラーに装着された状態でオリフィスとして利用されるので、被捕集ガスサンプラーの先端部分又は基端部分の切断面による怪我を防止できる。
【0009】
本発明に係る被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップにおいて、前記凹部は、2以上形成されていることが好ましく、2以上形成することによって、必要な流量に会わせて段階的にオリフィスの孔の数を増やせるため、広範囲の流速に対応させることができる。また、前記凹部の底部の一部は、他の部分に比して肉薄に形成されていることが好ましく、このように凹部の底部の一部を肉薄に形成することによって、ほぼ一定形状の孔を形成することができる。
【0010】
本発明に係る被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップにおいて、前記先端部分と基端部分に装着された状態で、前記先端部分の一部と基端部分の一部の切断が可能な柔軟性を有することが好ましい。このような柔軟性を有する素材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)などがある。
【0011】
発明に係る被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップは、透光性を有する素材、好ましくは透明性を有する素材で形成されていることが好ましく、このように透光性素材で構成することによって、キャップを装着した状態であっても、サンプラーの先端部分又は基端部分の状態を認識することができるので、誤って開口を形成する前にサンプリングを始めることなどを防止することができる。
【0012】
さらに、被捕集ガスサンプラーの使用後に、本発明に係るキャップを被捕集ガスサンプラーに装着して保管することによって、キャップを装着していない場合に比べて、捕集管外のガスの移流を可及的に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、捕集剤が充填された被捕集ガスサンプラーの流量を容易に一定させることが可能な被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップの実施例について、図面に基いて説明する。図1は、本実施例に係るキャップの側面図であり、図2は、図1のA−A´線に沿った断面図であり、図3は、本実施例に係るキャップを被捕集ガスサンプラーの先端側と基端側に装着した状態の正面図である。
【0015】
本実施例に係るキャップ10は、有底円筒状に形成されており、開口部12に被捕集ガスサンプラー14の先端部分14a又は基端部分14bが挿入され、被捕集ガスサンプラー14の本体14cの先端側又は基端側に密着するように構成されている。
【0016】
また、本実施例に係るキャップ10は、例えば透光性を有する低密度ポリエチレン(LDPE)など柔軟性素材から形成されており、図4に示すように先端部分14a又は基端部分14bに装着された状態で径方向に一定の力を加えることによって、先端部分14aの一部又は基端部分14bの一部を切断することができる。また、本実施例に係るキャップ10は、透光性を有するので、外部からサンプラー14の先端部分14a又は基端部分14bの状態を認識することができる。
【0017】
底部16の表面には、円状の凹部18a、18b、18cが周方向に等間隔を置いて形成されており、また、底部16の裏面には、図3に示すように、これら凹部18a、18b、18cの底部の一部が、他の部分に比して肉薄に形成されるように、円状の溝20が底部16の裏面の縁に沿って形成されている。そして、例えばシャープペンやクリップの先などでその肉薄部分22を押圧することによって、肉薄部分22が破断して、図5に示すように孔16aが形成されるよう構成されている。
【0018】
このように肉薄部22が破断されて、孔16aが形成されたキャップ10は、図6に示すように被捕集ガスサンプラー14の先端側に装着することによって、オリフィスとして機能して、基端側にチューブ24を介して連結されたポンプ26に吸引による流量を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップの実施例の側面図である。
【図2】図1のA−A´線に沿った断面図である。
【図3】本実施例に係るキャップを被捕集ガスサンプラーの先端側と基端側に装着した状態の正面図である。
【図4】本実施例に係るキャップによって被捕集ガスサンプラーの先端部分の一部を切断する状態を示す正面図である。
【図5】本実施例に係るキャップの底部に孔が形成された状態を示す図2に対応する図である。
【図6】本実施例に係るキャップが装着された被捕集ガスサンプラーにガスを流動させる状態を示す正面図である。
【図7】被捕集ガスサンプラーの一部切欠き正面断面図である。
【図8】被捕集ガスサンプラーの先端部分及び基端部分が切断された状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 キャップ
14 被捕集ガスサンプラー
14a 先端部分
14b 基端部分
16 底部
18a、18b、18c 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部分と基端部分が小径に形成された密閉状の捕集管と、該捕集管内に充填され、被捕集ガスを捕集可能な捕集剤と、を備え、使用時に先端部分の一部と基端部分の一部が切断されて開口を形成することによって、先端部分から基端部分に被捕集ガスを流動させることを可能となる被捕集ガスサンプラーの先端部分及び基端部分の少なくとも一方に装着可能なキャップにおいて、
被捕集ガスサンプラーの先端部分又は基端部分を開口部分に挿入可能な有底円筒状に形成され、
その底部の表面には、所定の力を与えることによって、破断されて孔が形成されることが可能な凹部が少なくとも1以上形成されていることを特徴とする被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップ。
【請求項2】
前記凹部は、2以上形成されていることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
前記凹部の底部の一部は、他の部分に比して肉薄に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のキャップ。
【請求項4】
前記先端部分と基端部分に装着された状態で、前記先端部分の一部と基端部分の一部の切断が可能な柔軟性を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の被捕集ガスサンプラーに装着可能なキャップ。
【請求項5】
透光性素材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載のキャップ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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