被整形物仕上げ装置
【課題】この発明は、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる被整形物仕上げ装置の提供を目的とする。
【解決手段】ワイシャツRのカフス部Yに縫着されたボタンYaと対応する部分の生地が被せられるカフス用鏝3のカフス受け板16を、該カフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面よりも内側に予め退避させておき、カフス部Yをプレス整形する際、プレス用鏝4がカフス部YのボタンYaに対して押し付けられるのを回避する。プレス用鏝4によってカフス用鏝3に被せられたカフス部Yをプレス整形するとともに、カフス受け板16を仮想受け面と面一となる受け位置に回動して、カフス部Yに縫着されたボタンYaと対応する部分の生地をプレス用鏝4に対して垂直に押し付けてプレス整形する。
【解決手段】ワイシャツRのカフス部Yに縫着されたボタンYaと対応する部分の生地が被せられるカフス用鏝3のカフス受け板16を、該カフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面よりも内側に予め退避させておき、カフス部Yをプレス整形する際、プレス用鏝4がカフス部YのボタンYaに対して押し付けられるのを回避する。プレス用鏝4によってカフス用鏝3に被せられたカフス部Yをプレス整形するとともに、カフス受け板16を仮想受け面と面一となる受け位置に回動して、カフス部Yに縫着されたボタンYaと対応する部分の生地をプレス用鏝4に対して垂直に押し付けてプレス整形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばワイシャツや婦人服等の被整形物をプレス整形する際に用いられる被整形物仕上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の被整形物の一例であるワイシャツのカフス部をプレス整形する方法としては、例えば下鏝(アイロン台)と上鏝(プレス鏝)を備えた衣類のプレス仕上げ機が提案されている(特許文献1参照)。このプレス仕上げ機は、カッタシャツのカフス部を上方へ凸状に湾曲した下鏝に被せた後、下鏝に被せられたカフス部に、上方へ凸状に湾曲した上鏝を押し付けてプレス仕上げする。
【0003】
しかし、下鏝の上面と上鏝の下面は、上方へ凸状に湾曲した曲面形状を有しているので、カッタシャツのカフス部を上下鏝で立体的にプレス仕上げする際、カフス部に縫着されたボタンと対応する部分の生地は下鏝の斜面に被せられるため、プレス時において、上鏝と下鏝のプレス圧が、カフス部に縫着されたボタンと対応する部分の生地の厚み方向に対して斜め下方に向けて付与される。つまり、ボタンと対応する部分の生地が下方に引っ張られるため、不要な皺が付きやすく、プレス後の仕上がり状態が悪くなる。
【0004】
また、プレス時において、カフス部のボタンに押し付けられた上鏝の下面と下鏝の上面とが上下方向に相対移動するので、上鏝と下鏝のプレス圧が、カフス部に縫着されたボタンの軸芯(又は厚み方向)に対して斜めに交差する方向に付与され、ボタンの軸芯に捩れが生じることになる。このため、カフス部に縫着されたボタンが割れたり、傷付いたりしやすい。また、ボタンの縫付け糸が切れてしまうという問題があった。
【0005】
したがって、カフス部に縫着されたボタンと対応する部分に付いた不要な皺を伸ばすための作業を別の工程で行わなければならない。また、割れや傷等が発生したボタンを、新しいボタンに付け替えなければならず、仕上げ作業に手間及び時間が掛かるだけでなく、プレス仕上げに要するコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−353400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる被整形物仕上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上鏝のプレス面を、下鏝の受け面に被せられた被整形物に押し付けてプレス整形する被整形物仕上げ装置であって、前記下鏝の受け面を、前記被整形物に縫着されたボタンと対応しない部分の生地が被せられる固定側受け面と、該ボタンと対応する部分の生地が被せられる可動側受け面とで構成し、前記可動側受け面を、前記下鏝の固定側受け面と面一となる位置よりも内側に可動した退避位置と、該固定側受け面と面一となる受け位置とに可動可能に設けた被整形物仕上げ装置であることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる。
【0010】
詳述すると、被整形物をプレス整形するまえに、被整形物のボタンと対応する部分の生地が被せられる下鏝の可動側受け面を、下鏝の固定側受け面と面一となる位置よりも内側に可動した退避位置に可動しておくか、プレス時に付与される押し付け力によって退避位置に可動する。
【0011】
これにより、上鏝によって下鏝に被せられた被整形物のボタンと対応する部分の生地をプレス整形する際、上鏝のプレス面が被整形物のボタンに接触しても、そのボタンと対応する部分の生地が下鏝の固定側受け面よりも内側に退避するので、上鏝のプレス面が被整形物のボタンに対して押し付けられることが回避され、上鏝と下鏝とのプレス圧が被整形物のボタンに対して直接付与されることを防止できる。
【0012】
次に、上鏝によって下鏝に被せられた被整形物をプレス整形する際、下鏝の可動側受け面を、該下鏝の固定側受け面と面一となる受け位置に可動するとともに、その可動側受け面によってボタンと対応する部分の生地を上鏝のプレス面に押し付け、被縫製物に縫着されたボタンと対応する部分の生地をプレス整形する。
【0013】
この結果、被整形物のボタンと対応する部分の生地をプレス整形する際、被整形物に縫着されたボタンが割れたり、傷付いたりすることがない。また、ボタンの縫付け糸が切れてしまうことを防止できる。
【0014】
この発明の態様として、前記下鏝の可動側受け面を、前記被縫製物のプレス整形時において前記上鏝のプレス面に対して垂直に押し付けられる方向に可動可能に設けることができる。
【0015】
この発明によれば、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を、上鏝のプレス面に対して強く押し付けて、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる。
【0016】
詳述すると、上鏝を下鏝に被せられた被整形物に押し付けた際、ボタンと対応する部分の生地と対向する下鏝の可動側受け面を、上鏝のプレス面と対向する方向に可動させ、ボタンと対応する部分の生地を上鏝のプレス面に対して垂直に押し付ける。
【0017】
これにより、上鏝と下鏝のプレス圧が、被整形物に縫着されたボタンの軸芯(又は厚み方向)と平行して該ボタン全体に対して均等に付与されることになる。
この結果、プレス整形時のプレス圧を大きくしても、被整形物に縫着されたボタンが割れたり、傷付いたりすることがなく、プレス整形が何等支障なく行える。
【0018】
また、この発明の態様として、前記下鏝に、前記退避位置と受け位置とに前記可動側受け面を揺動する受け面揺動手段を備えることができる。
【0019】
この発明によれば、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を所定の形態にプレス整形する整形作業が精度良く行える。
【0020】
詳述すると、プレス整形するまえに、可動側受け面を、受け面揺動手段により予め退避位置に揺動しておくので、プレス整形時において、上鏝のプレス面が被整形物のボタンに接触することが回避される。また、仮に接触しても、ボタンと対応する部分の生地が下鏝の固定側受け面よりも内側に退避するので、下鏝と上鏝とのプレス圧がボタンに対して直接付与されることを防止できる。
【0021】
また、可動側受け面を、受け面揺動手段により予め受け位置に揺動しておくことにより、下鏝に被せられたボタンと対応する部分の生地が、下鏝の固定側受け面と面一となる位置に支持されるので、ボタンと対応する部分の生地を、受け位置に揺動した可動側受け面によって上鏝のプレス面に対して押し付けられた状態を維持することができる。
【0022】
この結果、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を、上鏝のプレス面と下鏝の受け面とで挟持したまま所定の形態に精度良くプレス整形することができる。
【0023】
また、この発明の態様として、前記被縫製物のプレス整形時において、前記上鏝のプレス面と前記下鏝の受け位置に可動した可動側受け面との間を、前記ボタンの厚みよりも広くなる間隔に設定することができる。
【0024】
詳述すると、プレス整形時において、上鏝のプレス面と下鏝の可動側受け面との間が、被縫製物に縫着されたボタンの厚みよりも広くなる間隔に隔てられるので、上鏝のプレス面が被整形物のボタンに対して押し押し付けられることが回避される。
【0025】
この結果、被整形物に縫着されたボタンに対してプレス圧が付与されず、該ボタンが割れたり、傷付いたりすることを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、被整形物におけるボタンと対応する部分の生地を、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ワイシャツを整形する本実施形態の被整形物仕上げ装置の正面図。
【図2】図1に示す被整形物仕上げ装置の側面図。
【図3】カラー用鏝の縦断正面図。
【図4】カフス用鏝の縦断正面図。
【図5】カラー部及びカフス部を各鏝に被せた状態の平面図。
【図6】各鏝に被せたカラー部及びカフス部の蒸らし状態の正面図。
【図7】プレス用鏝をカラー用鏝及びカフス用鏝に近接した状態の正面図。
【図8】カラー部及びカフス部のプレス状態を示す正面図。
【図9】カラー用鏝をカフス用鏝の上方に配置した他の例の被整形物仕上げ装置の側面図。
【図10】各鏝に被せたカラー部及びカフス部の蒸らし状態の正面図。
【図11】カラー用鏝をカフス用鏝に近接した状態の正面図。
【図12】カラー部及びカフス部のプレス状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1は被整形物の一例としてワイシャツRを整形する本実施形態の被整形物仕上げ装置1Aの正面図、図2は図1に示す被整形物仕上げ装置1Aの側面図である。
図1はカラー用鏝2及びカフス用鏝3とプレス用鏝4を対向させた状態であり、同図に示すように中央のカラー用鏝2及び左右のカフス用鏝3,3と、これらカラー用鏝2のカラー受け面2aとカフス用鏝3のカフス受け面3aに対応して、凹面形状のカラープレス面4aとカフスプレス面4b,4bを備えたプレス用鏝4を有している。
【0029】
カラー用鏝2及びカフス用鏝3,3は、基台5の上面中央部に配置したワイシャツRのカラー部Xを被せるためのカラー用鏝2と、上面両側部に配置したワイシャツRのカフス部Yを被せるための左右のカフス用鏝3,3とであり、基台5の上面に立設した中空筒状の支持柱6で所定高さに支持している。
【0030】
そのカラー用鏝2及びカフス用鏝3は、前後方向に所定長さでカラー受け面2a及びカフス受け面3aを上方へ凸状に湾曲した滑らかな曲面形状であって、カラー用鏝2は正面視緩やかな蒲鉾形で、カフス用鏝3は正面視略正三角形に近い滑らかな曲面の山形に形成している。
【0031】
プレス用鏝4は、カラー用鏝2のカラー受け面2aに対応するカラープレス面4aと、カフス用鏝3のカフス受け面3aに対応するカフスプレス面4bとを、上方へ凸状に湾曲した滑らかな曲面形状に形成している。
【0032】
そのカラープレス面4aは、カラー用鏝2のカラー受け面2aと対応して正面視緩やかな蒲鉾形に形成している。また、カフスプレス面4bは、カフス用鏝3のカフス受け面3aと対応して正面視略正三角形に近い滑らかな曲面の山形に形成している。
【0033】
図3はカラー用鏝2の縦断正面図、図4はカフス用鏝3の縦断正面図であり、鏝2,3の内部は隔離壁7により上下二層(上側の空間部8と下側の空間部9)に分割している。また、カラー用鏝2のカラー受け面2a及びカフス用鏝3のカフス受け面3aには、小径の丸穴10を、受け面2a,3aに沿って所定等間隔を隔てて多数形成している。さらに、その受け面2a,3aの上面には、通気性を備えたカバー11を被着している。
【0034】
支持柱6の内部には、蒸気供給手段としてエア供給ノズル12、拡散板13、蒸気パイプ14を設けている。すなわち、エア供給ノズル12の噴射側先端部は、カラー用鏝2及びカフス用鏝3の上側空間部8に連通して、支持柱6の上側内部に形成した隔離壁6aの中央部に固定している。
なお、エア供給ノズル12の供給側端部は、装置内部に設けたエア供給ブロア(図示せず)に接続している。
【0035】
カラー用鏝2及びカフス用鏝3の上側空間部8には、エア供給ノズル12の噴射側先端部に対して所定間隔を隔てられた位置に、該エア供給ノズル12から噴射されるエアを上側空間部8内に向けて拡散するための拡散板13を配置している。
また、上側空間部8には、蒸気供給ポート(図示せず)を介して、蒸気供給装置(図示せず)に接続された蒸気パイプ14を配設している。
【0036】
上記蒸気供給ポートには、蒸気供給ノズル15の供給側端部を接続している。また、蒸気供給ノズル15の噴射側先端部は、上下二層の空間部8,9のうちの下側空間部9と連通して、該空間部9の下部外壁に固定している。
【0037】
すなわち、蒸気供給ノズル15から噴射される蒸気を下側空間部9内に供給して、その蒸気によってカラー用鏝2及びカフス用鏝3をプレス整形に適した所定の温度に加温できるように構成している。
【0038】
カフス用鏝3のカフス受け面3aは、カフス部Yの被せ位置が変位しないように定位置に固定され、カフス部Yに縫着されたボタンYaと対応する部分の生地を除いて、該カフス部YのボタンYaと対応しない残り部分の生地が被せられる大きさ及び形状に形成している。
【0039】
また、ボタンYaが縫着された部分の生地と対応する受け面3aの一部を切り欠いて形成した開口部には、ボタンYaと対応する部分の生地を被せるためのカフス受け板16を揺動可能に枢着している。
【0040】
カフス受け板16は、カフス部YのボタンYaと対応する部分の生地が支持される大きさ及び形状に形成している。また、カフス受け板16の上端部は、カフス用鏝3の開口側上端部に設けた枢着部16aに対して枢着している。
さらにまた、カフス受け板16の下端部には、カフス用鏝3の支持柱6に取り付けた揺動用エアシリンダ17のピストンロッド17aを連結している。
【0041】
すなわち、揺動用エアシリンダ17のピストンロッド17aを出没する動作により、カフス受け板16を、カフス用鏝3のカフス受け面3aの切欠き側端部を外側斜め下方に向けて延長してなる仮想受け面と面一となる位置よりも内側の図7の実線で示す退避位置と、該仮想受け面と面一となる図8の実線で示す受け位置とに揺動可能に設けている。
【0042】
また、カフス受け板16は、退避位置に揺動した際、プレス整形時におけるプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対してカフス部Yに縫着されたボタンYaの厚みよりも広くなる間隔に離間される。
【0043】
プレス用鏝4は、カラー用鏝2及びカフス用鏝3と同様、蒸気供給手段から供給される蒸気によってプレス整形に適した所定の温度に加温できるように構成している。また、カラー用鏝2のカラー受け面2aとカフス用鏝3のカフス受け面3aと対応するカラープレス面4a及びカフスプレス面4bには熱板を装着している。
【0044】
プレス用鏝4は、後述する連結板20を介して、基台5の背面側に枢着した左右2本の揺動アーム18,18の上端側に固定している。また、揺動アーム18の下端側には、装置本体に取付けた第1エアシリンダ19のピストンロッド19aを連結している。
【0045】
すなわち、第1エアシリンダ19のピストンロッド19aを出没する動作により、プレス用鏝4を、図2の実線で示す後方へ揺動した待機姿勢と、図2の仮想線で示す前方へ揺動した垂直姿勢とに揺動可能に設けている。また、垂直姿勢に揺動した際、プレス用鏝4のプレス面4a,4bが鏝2,3の受け面2a,3aに対して垂直に対向する。
【0046】
連結板20は、揺動アーム18,18の上端側に固定され、揺動アーム18,18の上端側を互いに連結している。また、連結板20の上面中央部には、第2エアシリンダ21を垂直に固定している。その第2エアシリンダ21のピストンロッド21aは、プレス用鏝4の上面中央部に固定している。
【0047】
また、揺動アーム18,18よりも外側で連結板20の上面両側部には、ガイドロッド22を上下動可能に軸受している。そのガイドロッド22の下端は、プレス用鏝4の上面両側部に固定している。
これにより、プレス用鏝4と揺動アーム18とを一体的に固定している。
【0048】
次に、図5〜図8を用いて、本実施形態の被整形物仕上げ装置1AによりワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yをプレス整形する方法を説明する。
図5はカラー部X及びカフス部Yをカラー用鏝2とカフス用鏝3に被せた状態の平面図、図6はカラー用鏝2とカフス用鏝3に被せたカラー部X及びカフス部Yの蒸らし状態の正面図、図7はプレス用鏝4をカラー用鏝2及びカフス用鏝3に近接した状態の正面図、図8はカラー部X及びカフス部Yのプレス状態を示す正面図である。
【0049】
先ず、揺動用シリンダ17をロッド突出動作して、左右に配置したカフス用鏝3のカフス受け板16を、該カフス用鏝3のカフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面よりも内側に向けて揺動する。
【0050】
すなわち、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yをプレス用鏝4でプレスするまえに、カフス受け板16を、カフス用鏝3に被せられたカフス部YのボタンYaに対してプレス用鏝4の押し付けが回避される図6の実線で示す退避位置に予め退避させておく。
【0051】
これにより、プレス用鏝4によって、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yをプレスする際、プレス用鏝4のカフスプレス面4bがカフス用鏝3のカフス受け面3aに被せられたカフス部YのボタンYaに対して押し付けられるのを回避することができる。
【0052】
続いて、ワイシャツRのカフス部Yを広げてカフス用鏝3のカフス受け面3aにそれぞれ被せ、該ワイシャツRのカラー部Xを広げてカラー用鏝2のカラー受け面2aに被せる(図5、図6参照)。
【0053】
次に、第1エアシリンダ19をロッド突出動作して、プレス用鏝4の全体を図2の実線で示す待機姿勢から図2の仮想線で示す垂直姿勢に回動し、プレス用鏝4をカラー用鏝2及びカフス用鏝3に対して垂直に対向させる。
【0054】
この後、カラー用鏝2のカラー受け面2aと、カフス用鏝3のカフス受け面3aとから図6中の矢印で示す蒸気を噴射して、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xと、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yとに当てる。カラー部X及びカフス部Yを均一に蒸らして、不要な皺を伸ばしやすくする。
【0055】
これにより、カラー部X及びカフス部Yの生地は湿気を含むとともに加熱され、皺が伸びやすい状態になる。なお、蒸らし時の蒸気の温度は約150度以上であればよく、噴射は1秒から数秒程度でよい。
【0056】
次に、第2エアシリンダ21をロッド出没動作がフリーな状態にして、プレス用鏝4を自重により垂直降下させ、プレス用鏝4のカフスプレス面4bとカラープレス面4aを、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xと、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yとに対して軽く接触させる(図7参照)。
【0057】
プレス整形に適した温度に加熱されたプレス用鏝4により、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xと、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yとの生地を加熱するので、生地はより一層伸ばしやすい状態になる。
【0058】
プレス用鏝4を垂直降下させた際、カフス用鏝3のカフス受け板16は退避位置に退避させているので、カフス用鏝3のカフス受け面3aに被せられたカフス部YのボタンYaに対してプレス用鏝4のカフスプレス面4bの押し付けが回避される。
【0059】
また、プレス用鏝4のカフスプレス面4bがカフス部YのボタンYaに接触しても、そのボタンYaと対応する部分の生地が、カフス用鏝3のカフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面よりも内側に向けて揺動するため、カフス部Yに縫着したボタンYaに対してカフス用鏝3とプレス用鏝4とのプレス圧が付与されることがない。
【0060】
この後、第2エアシリンダ21をロッド突出動作して、プレス用鏝4のカラープレス面4aとカフスプレス面4bを、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xと、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yに対して強く押し付け、ワイシャツRのカラー部Xとカフス部Yとを良好な仕上がり状態にプレス整形する仕上げ処理を行う。
【0061】
同時に、揺動用エアシリンダ17をロッド没入動作して、左右に配置したカフス用鏝3のカフス受け板16を外側に向けて揺動するとともに、該カフス用鏝3のカフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面と面一となる図8の実線で示す受け位置に回動する。
【0062】
すなわち、カフス用鏝3のカフス受け板16を、プレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に対向する方向に揺動して、カフス部YのボタンYaと対応する部分の生地をプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して強く押し付ける。
【0063】
プレス用鏝4の熱により、カラー部X及びカフス部Yの全体を、良好な仕上がり状態にプレス整形する。この状態で所定時間プレスした後、エアシリンダ17,19,21を復帰動作して、プレス整形開始前の状態に復帰させる(図2参照)。
【0064】
以上のように、カフス用鏝3に被せられたワイシャツRのカフス部Yをプレス整形する際、カフス部YのボタンYaと対応する部分の生地と対応するカフス用鏝3のカフス受け面3a、すなわち、ボタンYaと対応する部分の生地と対応するカフス用鏝3のカフス受け板16を、該カフス用鏝3のカフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面よりも内側に予め退避させておく。
【0065】
これにより、プレス用鏝4によって、カフス用鏝3に被せられたカフス部YのボタンYaと対応する部分の生地をプレス整形する際、プレス用鏝4のカフスプレス面4bがカフス用鏝3のカフス受け面3aに被せられたカフス部YのボタンYaに対して押し付けられず、その押し付けが回避されるため、整形時のプレス圧がカフス部Yに縫着したボタンYaに対して付与されることがない。
【0066】
また、プレス用鏝4をカラー用鏝2及びカフス用鏝3,3に押し付けて、ワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yをプレス整形する際、カフス用鏝3のカフス受け板16を、プレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に対向する方向に揺動して、カフス部YのボタンYaと対応する部分の生地をプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に押し付ける。
【0067】
すなわち、カフス部Yに縫着されたボタンYaをプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に押し付けるので、カフス用鏝3とプレス用鏝4とのプレス圧が、ボタンYaの軸芯(又は厚み方向)と平行して該ボタンYaの全体に付与されることになる。
【0068】
これにより、ワイシャツRのカフス部Yをプレス整形する際、カフス部Yに縫着されたボタンYaが割れたり、傷付いたりすることがなく、また、ボタンYaの縫付け糸が切れてしまうことを防止できる。
この結果、ボタンYaが縫着された部分を含むカフス部Yの全体を、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる。
【0069】
また、ワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yに付いた皺を伸ばしやすくするための蒸気は、カラー用鏝2及びカフス用鏝3の内部から外部に向けて噴射されるように構成しているので、カラー部X及びカフス部Yの生地に対して均等に蒸気を作用させることができる。かつ、別途に蒸気噴射手段を設ける必要がないので作業は容易で、カラー用鏝2及びカフス用鏝3の周囲を簡素化することができる。
【0070】
次に、図9〜図12を用いて、他の例の被整形物仕上げ装置1BによりワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yをプレス整形する方法を説明する。
図9はカラー用鏝2をカフス用鏝3の上方に配置した他の例の被整形物仕上げ装置1Bの側面図、図10はカラー用鏝2とカフス用鏝3に被せたカラー部X及びカフス部Yの蒸らし状態の正面図、図11はカラー用鏝2をカフス用鏝3に近接した状態の正面図、図12はカラー部X及びカフス部Yのプレス状態を示す正面図である。
【0071】
上述の被整形物仕上げ装置1Bは、前記実施形態のカラー用鏝2とカフス用鏝3,3を分割して、カラー用鏝2をカフス用鏝3,3の上方に配置し、プレス用鏝4をカラー用鏝2の上方に配置した構成である。
左右のカフス用鏝3,3は、カラー用鏝2の左右幅よりも内側で互いに近接して基台5の上面中央部に配置している。また、カラー用鏝2は、左右のカフス用鏝3,3に被せられたワイシャツRのカフス部Y,Yを同時プレス可能な大きさ及び形状に形成している。
【0072】
カラー用鏝2の上面側には、前記実施形態と同様にワイシャツRのカラー部Xを被せるためのカラー受け面2aを形成している。さらに、カラー用鏝2の下面側には、カフス用鏝3のカフス受け面3aと対応してカフス部Yをプレスするためのカフスプレス面2b,2bを形成している。
【0073】
カフス用鏝3は、前記実施形態のカフス用鏝3と略同一の構造及び構成を有しているので、その詳細な説明を省略する。
【0074】
プレス用鏝4は、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xをプレス可能な大きさ及び形状に形成している。また、プレス用鏝4の下面側には、カラー用鏝2のカラー受け面2aと対応してカラープレス面4aのみを形成している。
【0075】
さらに、カラー用鏝2は、基台5の後側に配置した第3エアシリンダ23のピストンロッド23aを出没する動作により前後揺動される。また、プレス用鏝4は、前記第1エアシリンダ19のピストンロッド19aを出没する動作により前後揺動される。つまり、図9の実線で示す後方へ揺動した待機姿勢と、図9の仮想線で示す前方へ揺動した垂直姿勢とにそれぞれ独立して回動される。
【0076】
次に、被整形物仕上げ装置1BによりワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yをプレス整形する方法を説明する。
先ず、カフス用鏝3に被せられたワイシャツRのカフス部Yをプレス整形する際、前記被整形物仕上げ装置1Aと同様に、カフス用鏝3のカフス受け板16を、該カフス用鏝3のカフス受け面3aよりも内側に予め退避させておく。
【0077】
これにより、プレス整形時において、プレス用鏝4のカフスプレス面4bがカフス用鏝3のカフス受け面3aに被せられたカフス部YのボタンYaに対して押し付けられるのを回避することができる。
【0078】
また、プレス用鏝4を、カラー用鏝2に被せられたカラー部Xに押し付け、カラー用鏝2を、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yに押し付けた際、カフス用鏝3のカフス受け板16を、プレス用鏝4のカフスプレス面4bに対してカフス部YのボタンYaが押し付けられる方向に揺動し、カフス部YのボタンYaをプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に押し付ける。
【0079】
これにより、カフス用鏝3とプレス用鏝4とのプレス圧が、ボタンYaの軸芯(又は厚み方向)と平行して該ボタンYaの全体に対して均等に付与されることになる。
【0080】
この結果、ワイシャツRのカフス部Yをプレス整形する際、カフス部Yに縫着されたボタンYaが割れたり、傷付いたりすることがなく、また、ボタンYaの縫付け糸が切れてしまうことを防止でき、前記実施形態と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0081】
また、被整形物仕上げ装置1Bは、前記被整形物仕上げ装置1Aに比べて、カフス用鏝3,3をカラー用鏝2の左右両端部より内側に配置した寸法だけ、装置本体の左右幅が短くなるので、装置全体の設置スペースが狭くて済み、前記被整形物仕上げ装置1Aのような左右幅が長い装置を設置するためのスペースを確保することが難しくても、他の例の被整形物仕上げ装置1Bであれば、設置やレイアウトなどが容易に行える。
【0082】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の被整形物は、実施形態のワイシャツRに対応し、
以下同様に、
ボタンを縫着した部分は、ワイシャツRのカフス部Yに対応し、
上鏝は、プレス用鏝4と、他の例のカラー用鏝2に対応し、
下鏝は、カフス用鏝3に対応し、
固定側受け面は、カフス受け面3aに対応し、
可動側受け面及び可動側受け板は、カフス受け板16に対応し、
受け面揺動手段は、揺動用エアシリンダ17に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0083】
前記実施形態では、カフス用鏝3のカフス受け面3aの切欠き側開口部にカフス受け板16を枢着しているが、例えばカフス受け面3aの全体を1枚の受け板で構成し、ボタンYaと対応する部分の生地が被せられる受け板の一部を退避位置と受け位置とに可撓可能に設けてもよい。
また、揺動用エアシリンダ17の代わりに、例えばネジ送り機構やカム機構等のモータを用いた装置によって、カフス受け板16を揺動してもよい。
【0084】
なお、本実施形態の被整形物仕上げ装置1A,1Bは、例えば衣服の襟部、前身頃等のボタンが縫着された部分の生地をプレス整形する作業にも用いることができ、実施形態のカフス部Yをプレス整形する用途にみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0085】
R…ワイシャツ
X…カラー部
Y…カフス部
Ya…ボタン
1A,1B…被整形物仕上げ装置
2…カラー用鏝
2a…カラー受け面
2b…カフスプレス面
3…カフス用鏝
3a…カフス受け面
4…プレス用鏝
4a…カラープレス面
4b…カフスプレス面
16…カフス受け板
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばワイシャツや婦人服等の被整形物をプレス整形する際に用いられる被整形物仕上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の被整形物の一例であるワイシャツのカフス部をプレス整形する方法としては、例えば下鏝(アイロン台)と上鏝(プレス鏝)を備えた衣類のプレス仕上げ機が提案されている(特許文献1参照)。このプレス仕上げ機は、カッタシャツのカフス部を上方へ凸状に湾曲した下鏝に被せた後、下鏝に被せられたカフス部に、上方へ凸状に湾曲した上鏝を押し付けてプレス仕上げする。
【0003】
しかし、下鏝の上面と上鏝の下面は、上方へ凸状に湾曲した曲面形状を有しているので、カッタシャツのカフス部を上下鏝で立体的にプレス仕上げする際、カフス部に縫着されたボタンと対応する部分の生地は下鏝の斜面に被せられるため、プレス時において、上鏝と下鏝のプレス圧が、カフス部に縫着されたボタンと対応する部分の生地の厚み方向に対して斜め下方に向けて付与される。つまり、ボタンと対応する部分の生地が下方に引っ張られるため、不要な皺が付きやすく、プレス後の仕上がり状態が悪くなる。
【0004】
また、プレス時において、カフス部のボタンに押し付けられた上鏝の下面と下鏝の上面とが上下方向に相対移動するので、上鏝と下鏝のプレス圧が、カフス部に縫着されたボタンの軸芯(又は厚み方向)に対して斜めに交差する方向に付与され、ボタンの軸芯に捩れが生じることになる。このため、カフス部に縫着されたボタンが割れたり、傷付いたりしやすい。また、ボタンの縫付け糸が切れてしまうという問題があった。
【0005】
したがって、カフス部に縫着されたボタンと対応する部分に付いた不要な皺を伸ばすための作業を別の工程で行わなければならない。また、割れや傷等が発生したボタンを、新しいボタンに付け替えなければならず、仕上げ作業に手間及び時間が掛かるだけでなく、プレス仕上げに要するコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−353400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる被整形物仕上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上鏝のプレス面を、下鏝の受け面に被せられた被整形物に押し付けてプレス整形する被整形物仕上げ装置であって、前記下鏝の受け面を、前記被整形物に縫着されたボタンと対応しない部分の生地が被せられる固定側受け面と、該ボタンと対応する部分の生地が被せられる可動側受け面とで構成し、前記可動側受け面を、前記下鏝の固定側受け面と面一となる位置よりも内側に可動した退避位置と、該固定側受け面と面一となる受け位置とに可動可能に設けた被整形物仕上げ装置であることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる。
【0010】
詳述すると、被整形物をプレス整形するまえに、被整形物のボタンと対応する部分の生地が被せられる下鏝の可動側受け面を、下鏝の固定側受け面と面一となる位置よりも内側に可動した退避位置に可動しておくか、プレス時に付与される押し付け力によって退避位置に可動する。
【0011】
これにより、上鏝によって下鏝に被せられた被整形物のボタンと対応する部分の生地をプレス整形する際、上鏝のプレス面が被整形物のボタンに接触しても、そのボタンと対応する部分の生地が下鏝の固定側受け面よりも内側に退避するので、上鏝のプレス面が被整形物のボタンに対して押し付けられることが回避され、上鏝と下鏝とのプレス圧が被整形物のボタンに対して直接付与されることを防止できる。
【0012】
次に、上鏝によって下鏝に被せられた被整形物をプレス整形する際、下鏝の可動側受け面を、該下鏝の固定側受け面と面一となる受け位置に可動するとともに、その可動側受け面によってボタンと対応する部分の生地を上鏝のプレス面に押し付け、被縫製物に縫着されたボタンと対応する部分の生地をプレス整形する。
【0013】
この結果、被整形物のボタンと対応する部分の生地をプレス整形する際、被整形物に縫着されたボタンが割れたり、傷付いたりすることがない。また、ボタンの縫付け糸が切れてしまうことを防止できる。
【0014】
この発明の態様として、前記下鏝の可動側受け面を、前記被縫製物のプレス整形時において前記上鏝のプレス面に対して垂直に押し付けられる方向に可動可能に設けることができる。
【0015】
この発明によれば、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を、上鏝のプレス面に対して強く押し付けて、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる。
【0016】
詳述すると、上鏝を下鏝に被せられた被整形物に押し付けた際、ボタンと対応する部分の生地と対向する下鏝の可動側受け面を、上鏝のプレス面と対向する方向に可動させ、ボタンと対応する部分の生地を上鏝のプレス面に対して垂直に押し付ける。
【0017】
これにより、上鏝と下鏝のプレス圧が、被整形物に縫着されたボタンの軸芯(又は厚み方向)と平行して該ボタン全体に対して均等に付与されることになる。
この結果、プレス整形時のプレス圧を大きくしても、被整形物に縫着されたボタンが割れたり、傷付いたりすることがなく、プレス整形が何等支障なく行える。
【0018】
また、この発明の態様として、前記下鏝に、前記退避位置と受け位置とに前記可動側受け面を揺動する受け面揺動手段を備えることができる。
【0019】
この発明によれば、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を所定の形態にプレス整形する整形作業が精度良く行える。
【0020】
詳述すると、プレス整形するまえに、可動側受け面を、受け面揺動手段により予め退避位置に揺動しておくので、プレス整形時において、上鏝のプレス面が被整形物のボタンに接触することが回避される。また、仮に接触しても、ボタンと対応する部分の生地が下鏝の固定側受け面よりも内側に退避するので、下鏝と上鏝とのプレス圧がボタンに対して直接付与されることを防止できる。
【0021】
また、可動側受け面を、受け面揺動手段により予め受け位置に揺動しておくことにより、下鏝に被せられたボタンと対応する部分の生地が、下鏝の固定側受け面と面一となる位置に支持されるので、ボタンと対応する部分の生地を、受け位置に揺動した可動側受け面によって上鏝のプレス面に対して押し付けられた状態を維持することができる。
【0022】
この結果、被整形物に縫着されたボタンと対応する部分の生地を、上鏝のプレス面と下鏝の受け面とで挟持したまま所定の形態に精度良くプレス整形することができる。
【0023】
また、この発明の態様として、前記被縫製物のプレス整形時において、前記上鏝のプレス面と前記下鏝の受け位置に可動した可動側受け面との間を、前記ボタンの厚みよりも広くなる間隔に設定することができる。
【0024】
詳述すると、プレス整形時において、上鏝のプレス面と下鏝の可動側受け面との間が、被縫製物に縫着されたボタンの厚みよりも広くなる間隔に隔てられるので、上鏝のプレス面が被整形物のボタンに対して押し押し付けられることが回避される。
【0025】
この結果、被整形物に縫着されたボタンに対してプレス圧が付与されず、該ボタンが割れたり、傷付いたりすることを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、被整形物におけるボタンと対応する部分の生地を、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ワイシャツを整形する本実施形態の被整形物仕上げ装置の正面図。
【図2】図1に示す被整形物仕上げ装置の側面図。
【図3】カラー用鏝の縦断正面図。
【図4】カフス用鏝の縦断正面図。
【図5】カラー部及びカフス部を各鏝に被せた状態の平面図。
【図6】各鏝に被せたカラー部及びカフス部の蒸らし状態の正面図。
【図7】プレス用鏝をカラー用鏝及びカフス用鏝に近接した状態の正面図。
【図8】カラー部及びカフス部のプレス状態を示す正面図。
【図9】カラー用鏝をカフス用鏝の上方に配置した他の例の被整形物仕上げ装置の側面図。
【図10】各鏝に被せたカラー部及びカフス部の蒸らし状態の正面図。
【図11】カラー用鏝をカフス用鏝に近接した状態の正面図。
【図12】カラー部及びカフス部のプレス状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1は被整形物の一例としてワイシャツRを整形する本実施形態の被整形物仕上げ装置1Aの正面図、図2は図1に示す被整形物仕上げ装置1Aの側面図である。
図1はカラー用鏝2及びカフス用鏝3とプレス用鏝4を対向させた状態であり、同図に示すように中央のカラー用鏝2及び左右のカフス用鏝3,3と、これらカラー用鏝2のカラー受け面2aとカフス用鏝3のカフス受け面3aに対応して、凹面形状のカラープレス面4aとカフスプレス面4b,4bを備えたプレス用鏝4を有している。
【0029】
カラー用鏝2及びカフス用鏝3,3は、基台5の上面中央部に配置したワイシャツRのカラー部Xを被せるためのカラー用鏝2と、上面両側部に配置したワイシャツRのカフス部Yを被せるための左右のカフス用鏝3,3とであり、基台5の上面に立設した中空筒状の支持柱6で所定高さに支持している。
【0030】
そのカラー用鏝2及びカフス用鏝3は、前後方向に所定長さでカラー受け面2a及びカフス受け面3aを上方へ凸状に湾曲した滑らかな曲面形状であって、カラー用鏝2は正面視緩やかな蒲鉾形で、カフス用鏝3は正面視略正三角形に近い滑らかな曲面の山形に形成している。
【0031】
プレス用鏝4は、カラー用鏝2のカラー受け面2aに対応するカラープレス面4aと、カフス用鏝3のカフス受け面3aに対応するカフスプレス面4bとを、上方へ凸状に湾曲した滑らかな曲面形状に形成している。
【0032】
そのカラープレス面4aは、カラー用鏝2のカラー受け面2aと対応して正面視緩やかな蒲鉾形に形成している。また、カフスプレス面4bは、カフス用鏝3のカフス受け面3aと対応して正面視略正三角形に近い滑らかな曲面の山形に形成している。
【0033】
図3はカラー用鏝2の縦断正面図、図4はカフス用鏝3の縦断正面図であり、鏝2,3の内部は隔離壁7により上下二層(上側の空間部8と下側の空間部9)に分割している。また、カラー用鏝2のカラー受け面2a及びカフス用鏝3のカフス受け面3aには、小径の丸穴10を、受け面2a,3aに沿って所定等間隔を隔てて多数形成している。さらに、その受け面2a,3aの上面には、通気性を備えたカバー11を被着している。
【0034】
支持柱6の内部には、蒸気供給手段としてエア供給ノズル12、拡散板13、蒸気パイプ14を設けている。すなわち、エア供給ノズル12の噴射側先端部は、カラー用鏝2及びカフス用鏝3の上側空間部8に連通して、支持柱6の上側内部に形成した隔離壁6aの中央部に固定している。
なお、エア供給ノズル12の供給側端部は、装置内部に設けたエア供給ブロア(図示せず)に接続している。
【0035】
カラー用鏝2及びカフス用鏝3の上側空間部8には、エア供給ノズル12の噴射側先端部に対して所定間隔を隔てられた位置に、該エア供給ノズル12から噴射されるエアを上側空間部8内に向けて拡散するための拡散板13を配置している。
また、上側空間部8には、蒸気供給ポート(図示せず)を介して、蒸気供給装置(図示せず)に接続された蒸気パイプ14を配設している。
【0036】
上記蒸気供給ポートには、蒸気供給ノズル15の供給側端部を接続している。また、蒸気供給ノズル15の噴射側先端部は、上下二層の空間部8,9のうちの下側空間部9と連通して、該空間部9の下部外壁に固定している。
【0037】
すなわち、蒸気供給ノズル15から噴射される蒸気を下側空間部9内に供給して、その蒸気によってカラー用鏝2及びカフス用鏝3をプレス整形に適した所定の温度に加温できるように構成している。
【0038】
カフス用鏝3のカフス受け面3aは、カフス部Yの被せ位置が変位しないように定位置に固定され、カフス部Yに縫着されたボタンYaと対応する部分の生地を除いて、該カフス部YのボタンYaと対応しない残り部分の生地が被せられる大きさ及び形状に形成している。
【0039】
また、ボタンYaが縫着された部分の生地と対応する受け面3aの一部を切り欠いて形成した開口部には、ボタンYaと対応する部分の生地を被せるためのカフス受け板16を揺動可能に枢着している。
【0040】
カフス受け板16は、カフス部YのボタンYaと対応する部分の生地が支持される大きさ及び形状に形成している。また、カフス受け板16の上端部は、カフス用鏝3の開口側上端部に設けた枢着部16aに対して枢着している。
さらにまた、カフス受け板16の下端部には、カフス用鏝3の支持柱6に取り付けた揺動用エアシリンダ17のピストンロッド17aを連結している。
【0041】
すなわち、揺動用エアシリンダ17のピストンロッド17aを出没する動作により、カフス受け板16を、カフス用鏝3のカフス受け面3aの切欠き側端部を外側斜め下方に向けて延長してなる仮想受け面と面一となる位置よりも内側の図7の実線で示す退避位置と、該仮想受け面と面一となる図8の実線で示す受け位置とに揺動可能に設けている。
【0042】
また、カフス受け板16は、退避位置に揺動した際、プレス整形時におけるプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対してカフス部Yに縫着されたボタンYaの厚みよりも広くなる間隔に離間される。
【0043】
プレス用鏝4は、カラー用鏝2及びカフス用鏝3と同様、蒸気供給手段から供給される蒸気によってプレス整形に適した所定の温度に加温できるように構成している。また、カラー用鏝2のカラー受け面2aとカフス用鏝3のカフス受け面3aと対応するカラープレス面4a及びカフスプレス面4bには熱板を装着している。
【0044】
プレス用鏝4は、後述する連結板20を介して、基台5の背面側に枢着した左右2本の揺動アーム18,18の上端側に固定している。また、揺動アーム18の下端側には、装置本体に取付けた第1エアシリンダ19のピストンロッド19aを連結している。
【0045】
すなわち、第1エアシリンダ19のピストンロッド19aを出没する動作により、プレス用鏝4を、図2の実線で示す後方へ揺動した待機姿勢と、図2の仮想線で示す前方へ揺動した垂直姿勢とに揺動可能に設けている。また、垂直姿勢に揺動した際、プレス用鏝4のプレス面4a,4bが鏝2,3の受け面2a,3aに対して垂直に対向する。
【0046】
連結板20は、揺動アーム18,18の上端側に固定され、揺動アーム18,18の上端側を互いに連結している。また、連結板20の上面中央部には、第2エアシリンダ21を垂直に固定している。その第2エアシリンダ21のピストンロッド21aは、プレス用鏝4の上面中央部に固定している。
【0047】
また、揺動アーム18,18よりも外側で連結板20の上面両側部には、ガイドロッド22を上下動可能に軸受している。そのガイドロッド22の下端は、プレス用鏝4の上面両側部に固定している。
これにより、プレス用鏝4と揺動アーム18とを一体的に固定している。
【0048】
次に、図5〜図8を用いて、本実施形態の被整形物仕上げ装置1AによりワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yをプレス整形する方法を説明する。
図5はカラー部X及びカフス部Yをカラー用鏝2とカフス用鏝3に被せた状態の平面図、図6はカラー用鏝2とカフス用鏝3に被せたカラー部X及びカフス部Yの蒸らし状態の正面図、図7はプレス用鏝4をカラー用鏝2及びカフス用鏝3に近接した状態の正面図、図8はカラー部X及びカフス部Yのプレス状態を示す正面図である。
【0049】
先ず、揺動用シリンダ17をロッド突出動作して、左右に配置したカフス用鏝3のカフス受け板16を、該カフス用鏝3のカフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面よりも内側に向けて揺動する。
【0050】
すなわち、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yをプレス用鏝4でプレスするまえに、カフス受け板16を、カフス用鏝3に被せられたカフス部YのボタンYaに対してプレス用鏝4の押し付けが回避される図6の実線で示す退避位置に予め退避させておく。
【0051】
これにより、プレス用鏝4によって、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yをプレスする際、プレス用鏝4のカフスプレス面4bがカフス用鏝3のカフス受け面3aに被せられたカフス部YのボタンYaに対して押し付けられるのを回避することができる。
【0052】
続いて、ワイシャツRのカフス部Yを広げてカフス用鏝3のカフス受け面3aにそれぞれ被せ、該ワイシャツRのカラー部Xを広げてカラー用鏝2のカラー受け面2aに被せる(図5、図6参照)。
【0053】
次に、第1エアシリンダ19をロッド突出動作して、プレス用鏝4の全体を図2の実線で示す待機姿勢から図2の仮想線で示す垂直姿勢に回動し、プレス用鏝4をカラー用鏝2及びカフス用鏝3に対して垂直に対向させる。
【0054】
この後、カラー用鏝2のカラー受け面2aと、カフス用鏝3のカフス受け面3aとから図6中の矢印で示す蒸気を噴射して、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xと、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yとに当てる。カラー部X及びカフス部Yを均一に蒸らして、不要な皺を伸ばしやすくする。
【0055】
これにより、カラー部X及びカフス部Yの生地は湿気を含むとともに加熱され、皺が伸びやすい状態になる。なお、蒸らし時の蒸気の温度は約150度以上であればよく、噴射は1秒から数秒程度でよい。
【0056】
次に、第2エアシリンダ21をロッド出没動作がフリーな状態にして、プレス用鏝4を自重により垂直降下させ、プレス用鏝4のカフスプレス面4bとカラープレス面4aを、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xと、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yとに対して軽く接触させる(図7参照)。
【0057】
プレス整形に適した温度に加熱されたプレス用鏝4により、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xと、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yとの生地を加熱するので、生地はより一層伸ばしやすい状態になる。
【0058】
プレス用鏝4を垂直降下させた際、カフス用鏝3のカフス受け板16は退避位置に退避させているので、カフス用鏝3のカフス受け面3aに被せられたカフス部YのボタンYaに対してプレス用鏝4のカフスプレス面4bの押し付けが回避される。
【0059】
また、プレス用鏝4のカフスプレス面4bがカフス部YのボタンYaに接触しても、そのボタンYaと対応する部分の生地が、カフス用鏝3のカフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面よりも内側に向けて揺動するため、カフス部Yに縫着したボタンYaに対してカフス用鏝3とプレス用鏝4とのプレス圧が付与されることがない。
【0060】
この後、第2エアシリンダ21をロッド突出動作して、プレス用鏝4のカラープレス面4aとカフスプレス面4bを、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xと、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yに対して強く押し付け、ワイシャツRのカラー部Xとカフス部Yとを良好な仕上がり状態にプレス整形する仕上げ処理を行う。
【0061】
同時に、揺動用エアシリンダ17をロッド没入動作して、左右に配置したカフス用鏝3のカフス受け板16を外側に向けて揺動するとともに、該カフス用鏝3のカフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面と面一となる図8の実線で示す受け位置に回動する。
【0062】
すなわち、カフス用鏝3のカフス受け板16を、プレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に対向する方向に揺動して、カフス部YのボタンYaと対応する部分の生地をプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して強く押し付ける。
【0063】
プレス用鏝4の熱により、カラー部X及びカフス部Yの全体を、良好な仕上がり状態にプレス整形する。この状態で所定時間プレスした後、エアシリンダ17,19,21を復帰動作して、プレス整形開始前の状態に復帰させる(図2参照)。
【0064】
以上のように、カフス用鏝3に被せられたワイシャツRのカフス部Yをプレス整形する際、カフス部YのボタンYaと対応する部分の生地と対応するカフス用鏝3のカフス受け面3a、すなわち、ボタンYaと対応する部分の生地と対応するカフス用鏝3のカフス受け板16を、該カフス用鏝3のカフス受け面3aを外側斜め下方に向けて延長した仮想受け面よりも内側に予め退避させておく。
【0065】
これにより、プレス用鏝4によって、カフス用鏝3に被せられたカフス部YのボタンYaと対応する部分の生地をプレス整形する際、プレス用鏝4のカフスプレス面4bがカフス用鏝3のカフス受け面3aに被せられたカフス部YのボタンYaに対して押し付けられず、その押し付けが回避されるため、整形時のプレス圧がカフス部Yに縫着したボタンYaに対して付与されることがない。
【0066】
また、プレス用鏝4をカラー用鏝2及びカフス用鏝3,3に押し付けて、ワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yをプレス整形する際、カフス用鏝3のカフス受け板16を、プレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に対向する方向に揺動して、カフス部YのボタンYaと対応する部分の生地をプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に押し付ける。
【0067】
すなわち、カフス部Yに縫着されたボタンYaをプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に押し付けるので、カフス用鏝3とプレス用鏝4とのプレス圧が、ボタンYaの軸芯(又は厚み方向)と平行して該ボタンYaの全体に付与されることになる。
【0068】
これにより、ワイシャツRのカフス部Yをプレス整形する際、カフス部Yに縫着されたボタンYaが割れたり、傷付いたりすることがなく、また、ボタンYaの縫付け糸が切れてしまうことを防止できる。
この結果、ボタンYaが縫着された部分を含むカフス部Yの全体を、良好な仕上がり状態にプレス整形することができる。
【0069】
また、ワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yに付いた皺を伸ばしやすくするための蒸気は、カラー用鏝2及びカフス用鏝3の内部から外部に向けて噴射されるように構成しているので、カラー部X及びカフス部Yの生地に対して均等に蒸気を作用させることができる。かつ、別途に蒸気噴射手段を設ける必要がないので作業は容易で、カラー用鏝2及びカフス用鏝3の周囲を簡素化することができる。
【0070】
次に、図9〜図12を用いて、他の例の被整形物仕上げ装置1BによりワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yをプレス整形する方法を説明する。
図9はカラー用鏝2をカフス用鏝3の上方に配置した他の例の被整形物仕上げ装置1Bの側面図、図10はカラー用鏝2とカフス用鏝3に被せたカラー部X及びカフス部Yの蒸らし状態の正面図、図11はカラー用鏝2をカフス用鏝3に近接した状態の正面図、図12はカラー部X及びカフス部Yのプレス状態を示す正面図である。
【0071】
上述の被整形物仕上げ装置1Bは、前記実施形態のカラー用鏝2とカフス用鏝3,3を分割して、カラー用鏝2をカフス用鏝3,3の上方に配置し、プレス用鏝4をカラー用鏝2の上方に配置した構成である。
左右のカフス用鏝3,3は、カラー用鏝2の左右幅よりも内側で互いに近接して基台5の上面中央部に配置している。また、カラー用鏝2は、左右のカフス用鏝3,3に被せられたワイシャツRのカフス部Y,Yを同時プレス可能な大きさ及び形状に形成している。
【0072】
カラー用鏝2の上面側には、前記実施形態と同様にワイシャツRのカラー部Xを被せるためのカラー受け面2aを形成している。さらに、カラー用鏝2の下面側には、カフス用鏝3のカフス受け面3aと対応してカフス部Yをプレスするためのカフスプレス面2b,2bを形成している。
【0073】
カフス用鏝3は、前記実施形態のカフス用鏝3と略同一の構造及び構成を有しているので、その詳細な説明を省略する。
【0074】
プレス用鏝4は、カラー用鏝2に被せられたワイシャツRのカラー部Xをプレス可能な大きさ及び形状に形成している。また、プレス用鏝4の下面側には、カラー用鏝2のカラー受け面2aと対応してカラープレス面4aのみを形成している。
【0075】
さらに、カラー用鏝2は、基台5の後側に配置した第3エアシリンダ23のピストンロッド23aを出没する動作により前後揺動される。また、プレス用鏝4は、前記第1エアシリンダ19のピストンロッド19aを出没する動作により前後揺動される。つまり、図9の実線で示す後方へ揺動した待機姿勢と、図9の仮想線で示す前方へ揺動した垂直姿勢とにそれぞれ独立して回動される。
【0076】
次に、被整形物仕上げ装置1BによりワイシャツRのカラー部X及びカフス部Yをプレス整形する方法を説明する。
先ず、カフス用鏝3に被せられたワイシャツRのカフス部Yをプレス整形する際、前記被整形物仕上げ装置1Aと同様に、カフス用鏝3のカフス受け板16を、該カフス用鏝3のカフス受け面3aよりも内側に予め退避させておく。
【0077】
これにより、プレス整形時において、プレス用鏝4のカフスプレス面4bがカフス用鏝3のカフス受け面3aに被せられたカフス部YのボタンYaに対して押し付けられるのを回避することができる。
【0078】
また、プレス用鏝4を、カラー用鏝2に被せられたカラー部Xに押し付け、カラー用鏝2を、カフス用鏝3に被せられたカフス部Yに押し付けた際、カフス用鏝3のカフス受け板16を、プレス用鏝4のカフスプレス面4bに対してカフス部YのボタンYaが押し付けられる方向に揺動し、カフス部YのボタンYaをプレス用鏝4のカフスプレス面4bに対して垂直に押し付ける。
【0079】
これにより、カフス用鏝3とプレス用鏝4とのプレス圧が、ボタンYaの軸芯(又は厚み方向)と平行して該ボタンYaの全体に対して均等に付与されることになる。
【0080】
この結果、ワイシャツRのカフス部Yをプレス整形する際、カフス部Yに縫着されたボタンYaが割れたり、傷付いたりすることがなく、また、ボタンYaの縫付け糸が切れてしまうことを防止でき、前記実施形態と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0081】
また、被整形物仕上げ装置1Bは、前記被整形物仕上げ装置1Aに比べて、カフス用鏝3,3をカラー用鏝2の左右両端部より内側に配置した寸法だけ、装置本体の左右幅が短くなるので、装置全体の設置スペースが狭くて済み、前記被整形物仕上げ装置1Aのような左右幅が長い装置を設置するためのスペースを確保することが難しくても、他の例の被整形物仕上げ装置1Bであれば、設置やレイアウトなどが容易に行える。
【0082】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の被整形物は、実施形態のワイシャツRに対応し、
以下同様に、
ボタンを縫着した部分は、ワイシャツRのカフス部Yに対応し、
上鏝は、プレス用鏝4と、他の例のカラー用鏝2に対応し、
下鏝は、カフス用鏝3に対応し、
固定側受け面は、カフス受け面3aに対応し、
可動側受け面及び可動側受け板は、カフス受け板16に対応し、
受け面揺動手段は、揺動用エアシリンダ17に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0083】
前記実施形態では、カフス用鏝3のカフス受け面3aの切欠き側開口部にカフス受け板16を枢着しているが、例えばカフス受け面3aの全体を1枚の受け板で構成し、ボタンYaと対応する部分の生地が被せられる受け板の一部を退避位置と受け位置とに可撓可能に設けてもよい。
また、揺動用エアシリンダ17の代わりに、例えばネジ送り機構やカム機構等のモータを用いた装置によって、カフス受け板16を揺動してもよい。
【0084】
なお、本実施形態の被整形物仕上げ装置1A,1Bは、例えば衣服の襟部、前身頃等のボタンが縫着された部分の生地をプレス整形する作業にも用いることができ、実施形態のカフス部Yをプレス整形する用途にみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0085】
R…ワイシャツ
X…カラー部
Y…カフス部
Ya…ボタン
1A,1B…被整形物仕上げ装置
2…カラー用鏝
2a…カラー受け面
2b…カフスプレス面
3…カフス用鏝
3a…カフス受け面
4…プレス用鏝
4a…カラープレス面
4b…カフスプレス面
16…カフス受け板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上鏝のプレス面を、下鏝の受け面に被せられた被整形物に押し付けてプレス整形する被整形物仕上げ装置であって、
前記下鏝の受け面を、
前記被整形物に縫着されたボタンと対応しない部分の生地が被せられる固定側受け面と、該ボタンと対応する部分の生地が被せられる可動側受け面とで構成し、
前記可動側受け面を、
前記下鏝の固定側受け面と面一となる位置よりも内側に可動した退避位置と、該固定側受け面と面一となる受け位置とに可動可能に設けた
被整形物仕上げ装置。
【請求項2】
前記下鏝の可動側受け面を、
前記被縫製物のプレス整形時において前記上鏝のプレス面に対して垂直に押し付けられる方向に可動可能に設けた
請求項1に記載の被整形物仕上げ装置。
【請求項3】
前記下鏝に、
前記退避位置と受け位置とに前記可動側受け面を揺動する受け面揺動手段を備えた
請求項1又は2に記載の被整形物仕上げ装置。
【請求項4】
前記被縫製物のプレス整形時において、
前記上鏝のプレス面と前記下鏝の受け位置に可動した可動側受け面との間を、前記ボタンの厚みよりも広くなる間隔に設定した
請求項1〜3のいずれか一つに記載の被整形物仕上げ装置。
【請求項1】
上鏝のプレス面を、下鏝の受け面に被せられた被整形物に押し付けてプレス整形する被整形物仕上げ装置であって、
前記下鏝の受け面を、
前記被整形物に縫着されたボタンと対応しない部分の生地が被せられる固定側受け面と、該ボタンと対応する部分の生地が被せられる可動側受け面とで構成し、
前記可動側受け面を、
前記下鏝の固定側受け面と面一となる位置よりも内側に可動した退避位置と、該固定側受け面と面一となる受け位置とに可動可能に設けた
被整形物仕上げ装置。
【請求項2】
前記下鏝の可動側受け面を、
前記被縫製物のプレス整形時において前記上鏝のプレス面に対して垂直に押し付けられる方向に可動可能に設けた
請求項1に記載の被整形物仕上げ装置。
【請求項3】
前記下鏝に、
前記退避位置と受け位置とに前記可動側受け面を揺動する受け面揺動手段を備えた
請求項1又は2に記載の被整形物仕上げ装置。
【請求項4】
前記被縫製物のプレス整形時において、
前記上鏝のプレス面と前記下鏝の受け位置に可動した可動側受け面との間を、前記ボタンの厚みよりも広くなる間隔に設定した
請求項1〜3のいずれか一つに記載の被整形物仕上げ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−59436(P2013−59436A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199172(P2011−199172)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(599152223)株式会社宮田工機 (4)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(599152223)株式会社宮田工機 (4)
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