説明

被梱包物品の梱包方法および装置

【課題】梱包作業の時間短縮および省力化を図り得る被梱包物品の梱包方法および装置を提供する。
【解決手段】梱包シート14の第1重合端部14aを第1保持手段30に保持すると共に、該梱包シート14の第2重合端部14bを、第1保持手段30より下方に位置する第2保持手段32で保持する。これにより、両保持手段30,32間は、梱包シート14がコイル状線材10に巻き掛け可能な緩んだ状態で保持される。吊り下げ状態で支持されたコイル状線材10を、第1保持手段30と第2保持手段32との間を通過させることで、第1保持手段30から垂れ下がっている梱包シート14がコイル状線材10に巻き掛けられる。その後、両保持手段30,32から取り外した梱包シート14の重合端部14a,14bを、コイル状線材10の外周で重ねて止着することで該コイル状線材10が梱包される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被梱包物品に対する疵の発生を防止するための被梱包物品の梱包方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧延工程等を経て製造された線材は、所定のコイル状に巻き取って結束した状態(以下、コイル状線材という)で倉庫に保管され、必要に応じて需要家に出荷される。このコイル状線材を保管するに際しては、保管スペースの有効活用等の観点から、コイル状線材の中空部分が横方向に開口する状態で、多数のコイル状線材を積み重ねるように保管し、出荷時には、搬出装置に設けた棒状のアーム部を、コイル状線材の中空部分に差し込んで持ち上げて移動している。
【0003】
このようなコイル状線材では、積み重ねたコイル状線材同士の接触により、コイル状線材の周面等に擦り傷が付き、商品価値の低下を招来する。そこで、コイル状線材を積み重ねる際には、コイル状線材の上面側(すなわち積み重ねたコイル状線材同士が接触する部分)に麻布等を被せたり、または各コイル状線材の全体を梱包布でくるむことで、コイル状線材同士が直接接触するのを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−18427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1には、コイル状線材の外周全体に梱包布を巻いて梱包する方法が開示されているものの、梱包作業は全て人手に頼るものであるため、時間が掛かると共に作業者の負担が大きな作業となっていた。また、コイル状線材の長さ(軸方向の長さ)が長いものでは、梱包布をコイル状線材に巻き付けたり、梱包布の両端部を止着する作業に2名以上の作業者が必要となり、梱包作業に多くの作業者を割り当てなければならない問題が指摘される。
【0006】
ここで、製造ラインから搬出されてくるコイル状線材は、製造ラインの製造能力の関係から、前述したような手作業でコイル状線材の全体に梱包布を巻いて梱包する作業を行なっている時間の余裕はなく、従前のようにコイル状線材の上面側にのみ麻布等を被せた状態で、仮置き用の保管場所に一旦積み重ねて仮保管し、その後に出荷用の保管場所においてコイル状線材を前記梱包布で梱包した状態で積み重ねて保管しているのが現状である。すなわち、製造ラインから搬出されるコイル状線材を、出荷用の保管場所に積み重ねて保管するまでの間に、コイル状線材を保護するための作業が複数回必要となり、作業者の負担軽減が図れていなかった。
【0007】
すなわち本発明は、前記従来の技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、梱包作業の時間短縮および省力化を図り得る被梱包物品の梱包方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る被梱包物品の梱包方法は、
被梱包物品を梱包シートで梱包する梱包方法であって、
前記梱包シートの一方の端部を第1保持手段に保持すると共に、該第1保持手段より下方に位置する第2保持手段で梱包シートの他方の端部を保持して、両保持手段間に梱包シートを緩んだ状態で保持し、
前記被梱包物品を吊り下げた状態で移動して前記第1保持手段と第2保持手段との間を通過させて、第1保持手段から垂れ下がっている梱包シートを該被梱包物品の外周に巻き掛けた後に、
前記第1保持手段および第2保持手段から保持解除した梱包シートの一方の端部および他方の端部を、被梱包物品の外周で重ねて止着することを要旨とする。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、被梱包物品を短時間で簡単に梱包することができる。すなわち、梱包作業を短時間で行ない得るので、例えば製造ラインから搬出されてくるコイル状線材について、全体を梱包して仮保管することなく直接出荷用の保管場所に保管することができ、作業者の負担を軽減し得る。また梱包作業に際しては、作業者は被梱包物品に巻き掛けられた梱包シートの端部同士を止着する作業を行なうだけでよいので、梱包作業を一人の作業者で行なうことができ、省力化を図り得る。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記被梱包物品を第1保持手段と第2保持手段との間を通過させた後、第2保持手段を第1保持手段に近接移動して梱包シートの他方の端部を引き上げるようにしたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、梱包シートの下側に保持されている他端部を作業者が扱い易い位置まで引き上げることができ、梱包作業を楽な姿勢で行ない得る。
【0011】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項3の発明に係る被梱包物品の梱包装置は、
被梱包物品を梱包シートで梱包する梱包装置であって、
前記被梱包物品を吊り下げた状態で移動する搬送手段と、
前記搬送手段による被梱包物品の搬送路を挟んで該被梱包物品の通過を許容する間隔で上下に離間し、前記梱包シートの各端部を着脱自在に保持する一対の保持手段とを備え、
前記梱包シートの各端部を保持した両保持手段間を、前記搬送手段で吊り下げた被梱包物品を通過させることで、該被梱包物品の外周に梱包シートが巻き掛けられるよう構成したことを要旨とする。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、被梱包物品を短時間で簡単に梱包することができる。すなわち、梱包作業を短時間で行ない得るので、例えば製造ラインから搬出されてくるコイル状線材について、全体を梱包して仮保管することなく直接出荷用の保管場所に保管することができ、作業者の負担を軽減し得る。また梱包作業に際しては、作業者は被梱包物品に巻き掛けられた梱包シートの端部同士を止着する作業を行なうだけでよいので、梱包作業を一人の作業者で行なうことができ、省力化を図り得る。
【0013】
請求項4に係る発明では、前記上下の保持手段は、昇降装置によって相対的に近接・離間移動するよう構成されると共に、該保持手段に梱包シートをセットするシートセット位置と、該保持手段に保持した梱包シートを被梱包物品に巻き掛ける梱包位置との間を移動するよう構成され、
前記上下の保持手段をシートセット位置から梱包位置に移動後に、該上下の保持手段の間を被梱包物品が通過するように前記搬送手段が駆動制御されることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、梱包シートの下側に保持されている他端部を作業者が扱い易い位置まで引き上げることができ、梱包作業を楽な姿勢で行ない得る。
【0014】
請求項5に係る発明では、前記保持手段で保持する複数の梱包シートを積層状態で集積する集積ラックを備え、該集積ラックには、積層状態の梱包シート群を昇降するリフタが設けられることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、保持手段に保持する梱包シートを、作業者が扱い易い高さ位置に移動することができ、作業者の負担を軽減し得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る被梱包物品の梱包方法および装置によれば、被梱包物品を短時間で簡単に梱包することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例に係る梱包装置の概略正面図である。
【図2】実施例に係る梱包装置の概略側面図である。
【図3】実施例に係る梱包装置の全体のレイアウトを示す概略説明図である。
【図4】実施例に係る梱包装置のクランプ装置を示す概略図である。
【図5】実施例に係る梱包シートを展開した状態で示す概略図である。
【図6】実施例に係る梱包装置による梱包工程を示す工程図であって、(a)は梱包シートを保持装置にセットする前の状態を示し、(b)は梱包シートを保持装置にセットした状態を示す。
【図7】実施例に係る梱包装置による梱包工程を示す工程図であって、(a)は梱包位置で停止した保持装置の第2保持手段を下降して第1保持手段との間にコイル状線材を通過可能な隙間を画成した状態を示し、(b)は梱包シートをセットした保持装置に対してコイル状線材を通過して梱包シートをコイル状線材に巻き掛けた状態を示し、(c)は第2保持手段を上昇して梱包シートの端部を引き上げた状態を示し、(d)は梱包シートの端部同士を止着する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る被梱包物品の梱包方法および装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0018】
図1および2は、実施例に係る梱包装置の全体構成を示すものであって、梱包装置は、被梱包物品としてのコイル状線材10を吊り下げ状態で移動する搬送装置(搬送手段)12と、コイル状線材10を梱包する梱包シート14の端部14a,14bを保持してコイル状線材10に巻き掛け可能な状態にセットする保持装置16とを備える。なお、梱包装置の説明に先立ち、実施例の梱包シート14の構成について簡単に説明する。
【0019】
前記コイル状線材10を保護する実施例に係る梱包シート14は、図5に示す如く、不織布や麻等からなる素材を、コイル状線材10の外周面に巻き掛けて該コイル状線材10の外周面および軸端面を被覆可能な寸法で形成された帯状のシートからなる。梱包シート14は、一辺がコイル状線材10の外周囲の長さ寸法より長くなるよう設定されると共に、他辺がコイル状線材10の軸方向の長さ寸法以上となるよう設定されており、梱包シート14をコイル状線材10に巻き掛けた際に、端縁部が重なり合う状態でコイル状線材10の外周面全体を被覆し得るよう構成される(図7(d)参照)。梱包シート14において、コイル状線材10への巻き掛け時に重なり合う一方の端部14a(以下第1重合端部という)の表面に、該重合端部14aの全長に亘って第1の面ファスナー18が取り付けられ、重なり合う他方の端部14b(以下第2重合端部という)の裏面に、該第1の面ファスナー18と対になる第2の面ファスナー20が取り付けられており、該第1の面ファスナー18と第2の面ファスナー20とを重ね合わせることで、両重合端部14a,14bが着脱可能に止着されるようになっている。なお、梱包シート14には、コイル状線材10に取り付けられた後述する識別標識10b(図2参照)に対応する位置に窓部14cが開設されており、該コイル状線材10を梱包シート14で被覆した状態でも、コイル状線材10に関する情報を外部から判別し得るよう構成されている。
【0020】
前記梱包シート14におけるコイル状線材10の端面側に位置する両縁部には、中空の袋状部22が形成され、前記第1および第2重合端部14a,14b側で封止されると共に、該袋状部22の長手方向略中間位置に、外部に開口する開口部22aが開設されている。また、袋状部22には、該袋状部22の長手方向の長さ寸法より長尺な紐状部材24が挿通されて、前記開口部22aを介して紐状部材24の中間部分が袋状部22の外部に引き出されると共に、当該袋状部22の封止位置において紐状部材24の両端部が梱包シート14に固定されている。そして、梱包シート14をコイル状線材10に巻き付けた後に、コイル状線材10の端面から外方に延出する両袋状部22,22の夫々に挿通した紐状部材24を引くことで、該袋状部22が絞られてコイル状線材10における軸方向の端面を覆い得るよう構成される。
【0021】
前記搬送装置12は、天井レールに自走可能に載架された走行台車(何れも図示せず)に、図示しない昇降機構を介して昇降可能な支持部材26を備える。この支持部材26としては、L字状に形成されたCフックが用いられ、該支持部材26における水平部26aを、コイル状線材10の通孔10aに軸方向の一端側から差し込んだ状態で、該コイル状線材10を吊り下げ状態で支持するよう構成される(図2参照)。そして、搬送装置12では、支持部材26で支持したコイル状線材10を、軸方向(支持部材26の通孔10aに対する差し込み方向)と交差する交差方向に横移動するよう構成される。なお、コイル状線材10の所定位置には、線材に関する情報(鋼種や線材の径等)を記載した識別標識10bが取り付けられている。また、以後の説明において、コイル状線材10の軸方向を左右方向、該軸方向と交差する交差方向を前後方向と指称するものとする。
【0022】
前記保持装置16は、図1および図2に示す如く、前記左右方向に移動自在な台車28と、該台車28に設けた一対の保持手段30,32とを備える。工場の床に、前記左右方向に延在するピット34が所要深さで掘り下げて設けられ、該ピット34の底面に、前後方向に離間して一対のレール36,36が左右方向に所定長さで敷設され、両レール36,36に前記台車28が複数の車輪28aを介して走行自在に載架されている。工場の床には、ピット34に対応して所定幅の通路38が上下方向に開口して左右方向に所要長さで延在するよう形成され、台車28に立設した支柱40が、通路38を介して上方に延出している。
【0023】
前記ピット34の内部には、前後方向に離間して一対の無端チェン42,42(図1に一方のみ図示)が左右方向に移動自在に配設され、該無端チェン42,42が、前記支柱40におけるピット34内に臨む部分に連結されている。そして、無端チェン42,42を図示しない駆動手段によって移動することで、保持装置16は、後述するシートセット位置S1、梱包位置S2および退避位置S3の間を移動すると共に、各位置S1,S2,S3で停止し得るよう構成される。なお、一対の無端チェン42,42間には、該無端チェン42,42と共に移動する多数のスラット(図示せず)が隙間なく架設されており、これらスラットによって前記通路38は下面側が常に塞がれた状態に維持されて、通路38を介してピット34内に異物等が落下しないよう構成される。
【0024】
前記通路38より上方に延在する前記支柱40に、図1および図2に示す如く、上下方向に離間して一対の保持手段30,32が設けられている。上側に位置する第1保持手段30は、前記支柱40の上端部に片持ち支持されて左右方向に所定長さで延在する第1保持バー44と、該第1保持バー44の延在方向に離間して配設された複数の第1クランプ装置46とを備え、該第1クランプ装置46によって梱包シート14における第1重合端部14aを着脱自在に保持し得るよう構成される。第1クランプ装置46は、図4に示す如く、基部48に対して回動可能な操作レバー50と、基部48の下側に位置して操作レバー50と共に回動する押圧片52と、該押圧片52との間で梱包シート14の第1重合端部14aを解除可能に挟持する固定部54とを備える。押圧片52および操作レバー50は、図4の実線で示すクランプ位置においては、内蔵したバネ等の付勢手段によって押圧片52を固定部54に押付けるように付勢される。なお、付勢手段の付勢力は、押圧片52と固定部54とで挟持される梱包シート14の第1重合端部14aに負荷が加わった際に、梱包シート14が破損する前に第1重合端部14aの挟持状態が解除されて外れるよう設定される。
【0025】
前記第1クランプ装置46は、操作レバー50をクランプ位置から解除位置まで回動することで(図4の二点鎖線位置)、押圧片52が固定部54から離間する位置(解除位置)に保持されるよう構成される。すなわち、第1クランプ装置46は、操作レバー50を回動操作することで、梱包シート14における第1重合端部14aの挟持状態と解放状態とにワンタッチで切り替え可能に構成されている。なお、第1クランプ装置46の固定部54については省略し、押圧片52と第1保持バー44との間で第1重合端部14aを挟持する構成を採用可能である。
【0026】
前記支柱40における第1保持手段30より下方に配設された第2保持手段32は、図1に示す如く、支柱40に対して上下動自在に片持ち支持されて、第1保持バー44と同一方向に平行に延在する第2保持バー56と、該第2保持バー56の延在方向に離間して配設された複数の第2クランプ装置58とを備え、該第2クランプ装置58によって梱包シート14における第2重合端部14bを着脱自在に保持し得るよう構成される。第1保持バー44および第2保持バー56は、支柱40に対して何れも片持式に支持されて延出端部側において両バー44,56の間は開放し、前記搬送装置12の支持部材26の通過を許容するよう構成されている。なお、第2クランプ装置58の構成は、前記第1クランプ装置46の構成と同一であって、上下が反転しただけである。すなわち、第1クランプ装置46は、基部48の下側で梱包シート14の第1重合端部14aを挟持するのに対し、第2クランプ装置58は、基部48の上側で梱包シート14の第2重合端部14bを挟持するよう構成されている。
【0027】
前記支柱40に、第2保持手段32を支柱40に対して上下動する昇降装置60が配設されている。昇降装置60は、図2に示す如く、支柱40に沿って上下方向に延在するように配設された回転自在なねじ軸62と、該ねじ軸62を正逆回転する駆動手段としてのモータ64とを備え、ねじ軸62が第2保持手段32に設けたナット部材66に螺挿されている。すなわち、モータ64によってねじ軸62を正逆回転することで、該ねじ軸62とナット部材66との螺合作用によって第2保持手段32は、支柱40に沿って上下動するよう構成される。実施例では、第2保持手段32は、第1保持手段30との間に前記コイル状線材10の通過を許容する隙間を画成し得る下側の待機位置(図1,図2の実線位置)と、該待機位置より上方の作動位置(図1,図2の二点鎖線位置)との間で上下動するよう構成される。なお、支柱40に配設されて第2保持手段32を検出可能な検知センサ(図示せず)の検出信号に基づいてモータ64を停止制御することで、第2保持手段32は待機位置および作動位置で停止するよう構成されている。また実施例では、作動位置については、作業者の腰の高さより上方で、第2保持手段32に対する梱包シート14のセットおよび取り外し作業を、腰を屈めることなく行ない得る高さに設定されるが、必要に応じて上下に調節可能になっている。
【0028】
図3に示す如く、前記ピット34に沿って左右方向に離間してシートセット位置S1、梱包位置S2および退避位置S3が設けられ、前記保持装置16は、工程に応じて各位置S1,S2,S3で停止されるよう構成される。中央に位置する梱包位置S2では、保持装置16における第1保持手段30と待機位置の第2保持手段32とが、図7(b)に示す如く、前記搬送装置12によって横移動されるコイル状線材10の搬送路を挟んで上下に離間して位置するよう設定される。またシートセット位置S1には、保持装置16の移動ラインLを挟んで、梱包位置S2における保持装置16に対するコイル状線材10の出側と対応する側に、梱包シート14の集積ラック68が設置されている。この集積ラック68は、内部に昇降可能なパンタグラフ式等のリフタ70を備えると共に、シートセット位置S1に停止している保持装置16を向く側に、全面的に開放する取出口68aが形成されている。そして、集積ラック68のリフタ70には、図6(a),(b)に示す如く、多数の梱包シート14が上下方向に積み重ねて集積される。この集積ラック68に集積されている各梱包シート14は、2つ折りにして両重合端部14a,14bが上下に重なると共に、該重合端部14a,14bが取出口68aに向けた姿勢で集積されている。また各梱包シート14は、上側に第1重合端部14aが位置し、下側に第2重合端部14bが位置する状態で2つ折りされている。
【0029】
前記集積ラック68の上端位置は、図6(a),(b)に示す如く、前記第2保持手段32の作動位置より低く設定され、後述するように両保持手段30,32で重合端部14a,14bが保持された梱包シート14が、保持装置16の梱包位置S2への移動に際して集積ラック68から円滑に引き出されるよう構成してある。
【0030】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成した実施例に係る筒状部品の梱包装置の作用につき、梱包方法との関係で説明する。
【0031】
前記保持装置16を、図6(a)に示す如く、前記シートセット位置S1に位置決め停止した状態で、前記集積ラック68に集積されている最上部の梱包シート14における第1重合端部14aを取出口68aから引き出し、該第1重合端部14aを、前記第1保持手段30に複数の第1クランプ装置46を介して保持する。また、図6(b)に示す如く、前記昇降装置60を作動して第2保持手段32を作動位置まで上昇し、この作動位置において、第1重合端部14aを第1保持手段30に保持した梱包シート14の第2重合端部14bを、第2保持手段32に複数の第2クランプ装置58を介して保持する。保持装置16に対する梱包シート14のセット作業に際し、第2保持手段32を作動位置まで上昇することで、作業者は、第2保持手段32に対する第2重合端部14bのセット作業を、腰を屈めることなく楽な姿勢で行なうことができ、作業負担を軽減し得る。
【0032】
前記梱包シート14をセットした保持装置16を、前記梱包位置S2まで移動して停止する。保持装置16をシートセット位置S1から梱包位置S2に移動するに際し、前記第2保持手段32は、該集積ラック68の上端により上側の作動位置に保持されているから、保持装置16の移動に伴って集積ラック68から引き出される梱包シート14が集積ラック68に引っ掛かることなく円滑に引き出される。従って、梱包シート14に大きな負荷が加わることで、保持手段30,32から重合端部14a,14bが外れてしまったり、または梱包シート14が破損等するのを防止し得る。なお、前記搬送装置12は、前記梱包位置S2において移動ラインLの手前側(入側)でコイル状線材10を吊り下げ状態で停止し、保持装置16とコイル状線材10とが接触干渉しないようになっている。
【0033】
前記梱包位置S2において、図7(a)に示す如く、前記第2保持手段32を待機位置まで下降することで、上下の保持手段30,32間に、コイル状線材10の通過可能な隙間が画成される。また、上下の保持手段30,32の間において、第1保持手段30から垂れ下がっている梱包シート14は、コイル状線材10の出側において該コイル状線材10の外周に巻き掛け可能な緩んだ状態に保持される。前記搬送装置12では、支持部材26で支持しているコイル状線材10の高さ位置を、第2保持手段32が待機位置に移動した状態での上下の保持手段30,32の間を通過可能な位置に位置決めされている。そして、梱包位置S2に到来した保持装置16の第2保持手段32が待機位置まで下降した後、搬送装置12が駆動制御されて、図7(b)に示す如く、支持部材26を横移動してコイル状線材10を上下の保持手段30,32の間を通過させる。これにより、コイル状線材10の外部における上部側、左側(出側)および下部側にかけて梱包シート14が巻き掛けられる。なお、上下の保持手段30,32を通過したコイル状線材10は、巻き掛けられた梱包シート14に、重合端部14a,14bが前記クランプ装置46,58から外れるような負荷が加わらず、かつ第2保持手段32の作動位置への上昇を許容し得る位置で停止される。
【0034】
このように、コイル状線材10に梱包シート14を巻き掛ける作業に人手に要することなく、搬送装置12によってコイル状線材10を上下の保持手段30,32の間を通過させるだけで簡単に梱包シート14をコイル状線材10に巻き掛けることができ、省力化を図り得る。また、上下の保持手段30,32に保持されている梱包シート14の位置と、該上下の保持手段30,32の間を通過させるコイル状線材10の高さ位置を調節することで、該コイル状線材10に梱包シート14を巻き掛けた状態で、該梱包シート14における前記窓口14cをコイル状線材10の識別標識10bの位置に合わせることができ、巻き掛け後に窓口14cと識別標識10bとを位置合わせする煩雑な作業を行なう必要がなくなり、作業者の作業負荷を軽減し得る。
【0035】
次に、図7(c)に示す如く、前記第2保持手段32を作動位置まで上昇する。作業者は、第1保持手段30から取り外した第1重合端部14aをコイル状線材10に巻き付けた後、第2保持手段32から取り外した第2重合端部14bを、第1重合端部14aの表側に重ねるように巻き付ける(図7(d)参照)。このとき、梱包シート14において重なり合う第1および第2重合端部14a,14bを重ね合わせるだけで、第1の面ファスナー18と第2の面ファスナー20とが着脱可能に止着するから、コイル状線材10に対して梱包シート14を簡単に被着することができる。また、梱包位置S2での梱包作業に際して第2保持手段32を上昇して第2重合端部14bを引き上げておくことで、作業者は、第2重合端部14bを第2保持手段32から取り外す作業を、腰を屈めることなく楽な姿勢で行なうことができ、労力軽減に寄与し得る。
【0036】
実施例では、第1および第2保持手段30,32に梱包シート14の重合端部14a,14bを保持するクランプ装置46,58として、常には付勢手段の付勢力によって重合端部14a,14bを固定部54と押圧片52とで挟持する構成を採用したので、両保持手段30,32の間をコイル状線材10が通過する際に梱包シート14に大きな負荷が加わった際には、クランプ装置46,58から重合端部14a,14bが外れ、梱包シート14が破損するのを防止し得る。また、クランプ装置46,58は、操作レバー50の回動操作によってワンタッチで挟持状態と解放状態とに切り替えることができるから、保持手段30,32に対する重合端部14a,14bのセット作業および取り外し作業は容易である。
【0037】
前記梱包位置S2でコイル状線材10に梱包シート14を巻き付けた後、前記保持装置16を退避位置S3に移動する。そして、梱包シート14におけるコイル状線材10の端面から外方に延出する両袋状部22,22の夫々に挿通した紐状部材24を引くことで、該袋状部22が絞られてコイル状線材10の端面が覆われる。梱包シート14で梱包されたコイル状線材10は、前記搬送装置12により保管場所に移動されると共に、退避位置S3の保持装置16は、シートセット位置S1に移動して次の梱包のためのシートセット工程に戻る。
【0038】
実施例では、コイル状線材10に梱包シート14を巻き掛ける作業を自動化したので、梱包作業に掛かる時間を短縮することができる。すなわち、製造ラインから搬出されてくるコイル状線材10を保護する際に、該コイル状線材10の全体を梱包シート14で被覆する作業を、製造ラインでの生産速度を下げることなく実施することができる。従って、従来は時間がないために行なっていたコイル状線材10の一部のみに麻布等を被せて仮保管する作業を省略することができ、製造ラインから搬出されてくるコイル状線材10を、梱包シート14で梱包して直接出荷用の保管場所に積み重ねて保管することができ、保護作業の回数を低減して作業者の負担を軽減し得ると共に、仮保管用のスペースを確保する必要もなくなる。
【0039】
〔変更例〕
本発明は、実施例の構成に限定されず、種々の変更が可能であり、例えば以下の構成を採用し得る。
(1) 実施例では、第2保持手段を上下動する昇降装置として、ボールネジ機構を用いたが、流体圧シリンダによって第2保持手段を上下動する機構、または第2保持手段に連結した索体を移動することで第2保持手段を上下動する機構等、各種の機構を採用し得る。
(2) 実施例では、被梱包物品としてコイル状線材を挙げたが、鋼管その他の筒状物品であって、軸方向一方の端部側から通孔に支持部材を差し込んで吊り下げることができる物品であってもよい。また、吊り下げ可能な物品であれば、被梱包物品は筒状でなく中実な物品であってもよい。
(3) 実施例では、保持装置をシートセット位置、梱包位置および退避位置に移動するよう構成したが、梱包位置において梱包シートの側端部を絞り込む作業に際し、保持装置をシートセット位置に戻すようにしてもよい。また、保持装置を梱包位置に位置決め固定し、集積ラックを梱包位置と、該梱包位置から離間した位置との間を移動するよう構成し、梱包位置において梱包シートを保持装置にセットした後、集積ラックを梱包作業の邪魔とならない位置まで退避させる構成を採用し得る。
(4) 実施例では、第2保持手段を上下動するよう構成したが、上下の保持手段は、両保持手段の間をコイル状線材が通過可能な離間位置と相対的に近接する近接位置との間を移動するものであれば、第1保持手段を上下動する構成や、上下の保持手段を相互に近接・離間移動する構成を採用し得る。
(5) 実施例では、梱包シートの両重合端部を面ファスナーで止着するようにしたが、両重合端部を止着する手段は、紐等その他の手段を採用し得る。
(6) 保持手段に梱包シートの端部を保持する手段は、実施例のようなワンタッチ式の手段に限らず、クリップ等、梱包シートの端部を着脱自在に保持し得るものであれば、公知の各種手段を採用し得る。
(7) 集積ラックに設けられるリフタとしては、パンタグラフ式に限らず、流体圧シリンダによって梱包シートが載置される載置台を直接昇降動する方式等、その他各種方式の機構を採用し得る。
【符号の説明】
【0040】
10 コイル状線材(被梱包物品),10a 通孔,12 搬送装置(搬送手段)
14 梱包シート,14a 第1重合端部(一方の端部)
14b 第2重合端部(他方の端部),26 支持部材,30 第1保持手段(保持手段)
1 第2保持手段(保持手段),60 昇降装置,68 集付ラック,70 リフタ
S1 シートセット位置,S2 梱包位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被梱包物品(10)を梱包シート(14)で梱包する梱包方法であって、
前記梱包シート(14)の一方の端部(14a)を第1保持手段(30)に保持すると共に、該第1保持手段(30)より下方に位置する第2保持手段(32)で梱包シート(14)の他方の端部(14b)を保持して、両保持手段(30,32)間に梱包シート(14)を緩んだ状態で保持し、
前記被梱包物品(10)を吊り下げた状態で移動して前記第1保持手段(30)と第2保持手段(32)との間を通過させて、第1保持手段(30)から垂れ下がっている梱包シート(14)を該被梱包物品(10)の外周に巻き掛けた後に、
前記第1保持手段(30)および第2保持手段(32)から保持解除した梱包シート(14)の一方の端部(14a)および他方の端部(14b)を、被梱包物品(10)の外周で重ねて止着する
ことを特徴とする被梱包物品の梱包方法。
【請求項2】
前記被梱包物品(10)を第1保持手段(30)と第2保持手段(32)との間を通過させた後、第2保持手段(32)を第1保持手段(30)に近接移動して梱包シート(14)の他方の端部(14b)を引き上げるようにした請求項1記載の被梱包物品の梱包方法。
【請求項3】
被梱包物品(10)を梱包シート(14)で梱包する梱包装置であって、
前記被梱包物品(10)を吊り下げた状態で移動する搬送手段(12)と、
前記搬送手段(12)による被梱包物品(10)の搬送路を挟んで該被梱包物品(10)の通過を許容する間隔で上下に離間し、前記梱包シート(14)の各端部(14a,14b)を着脱自在に保持する一対の保持手段(30,32)とを備え、
前記梱包シート(14)の各端部(14a,14b)を保持した両保持手段(30,32)間を、前記搬送手段(12)で吊り下げた被梱包物品(10)を通過させることで、該被梱包物品(10)の外周に梱包シート(14)が巻き掛けられるよう構成した
ことを特徴とする被梱包物品の梱包装置。
【請求項4】
前記上下の保持手段(30,32)は、昇降装置(60)によって相対的に近接・離間移動するよう構成されると共に、該保持手段(30,32)に梱包シート(14)をセットするシートセット位置(S1)と、該保持手段(30,32)に保持した梱包シート(14)を被梱包物品(10)に巻き掛ける梱包位置(S2)との間を移動するよう構成され、
前記上下の保持手段(30,32)をシートセット位置(S1)から梱包位置(S2)に移動後に、該上下の保持手段(30,32)の間を被梱包物品(10)が通過するように前記搬送手段(12)が駆動制御される請求項3記載の被梱包物品の梱包装置。
【請求項5】
前記保持手段(30,32)で保持する複数の梱包シート(14)を積層状態で集積する集積ラック(68)を備え、該集積ラック(68)には、積層状態の梱包シート群を昇降するリフタ(70)が設けられる請求項3または4記載の被梱包物品の梱包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6619(P2013−6619A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141051(P2011−141051)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】