被検体情報取得装置、該装置の制御方法、及びプログラム
【課題】 受信器(探触子)を操作して音響波を取得する被検体情報取得装置において、ユーザが指定した撮影時間に応じて、撮影領域に関する情報を提示すること。
【解決手段】 弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器と、被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段と、指定された時間に基づいて、被検体における特性情報を取得すべき領域情報を取得し、その領域情報を提示手段に提示させる制御手段と、領域情報に基づいて、受信器を被検体に対して走査させる走査手段と、を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
【解決手段】 弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器と、被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段と、指定された時間に基づいて、被検体における特性情報を取得すべき領域情報を取得し、その領域情報を提示手段に提示させる制御手段と、領域情報に基づいて、受信器を被検体に対して走査させる走査手段と、を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体情報取得装置、該装置の制御方法、及び該制御方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚がんや乳がんの診断装置として、超音波診断装置が知られている。超音波診断装置においては、超音波送受信素子を被検体に対して走査させることで、走査範囲内における超音波エコーを受信し、この走査領域内での被検体の特性情報を得る(撮影する)場合がある。これによって、超音波送受信素子の大きさよりも大きい領域を撮影することが可能となる。このような技術について、特許文献1においては、ユーザが被検体の撮影領域を予め指定し、其の指定された特定の領域を撮影することが記載されている。そしてその際、超音波送受信素子の大きさを考慮して、指定した撮影領域と撮影可能な最大領域の位置関係を表示部に表示することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−218520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、撮影における超音波エコーの取得に要する時間や被験者の拘束時間から、撮影領域を算出する手段がないため、所定の時間内に、実際に撮影できる領域の大きさがどの程度なのかが把握できないため、利便性に欠けるという不具合があった。一方、皮膚がんや乳がんの診断においては、超音波診断装置以外にも、光音響波による診断装置(Photo Acoustic Tomography、以下、光音響撮影装置とも表記する)が提案され始めている。光音響波による診断装置は、可視光や近赤外光等の計測光を生体組織に照射した際に、生体内部の光吸収物質が、計測光のエネルギーを吸収して瞬間的に膨張した結果発生される光音響波を計測することで、生体組織の情報を可視化する。この光音響撮影の技術により、光エネルギー吸収密度分布、即ち生体内の光吸収物質の密度分布を定量的に、また3次元的に計測することができる。そして光音響撮影装置は、診断画像の撮像に光を用いることで無被爆、非侵襲での画像診断が可能なため、患者負担の点で大きな優位性を有しており、繰り返し診断することが難しいX線装置に代わり、乳がんのスクリーニングや早期診断での活用が期待される。
【0005】
しかし、光音響撮影装置においても、上述の超音波診断装置と同様に、光音響波を受信する素子を被検体に対して走査させることによって、走査範囲内の被検体情報を得る(撮影する)場合があるため、上述の超音波診断装置と同様、所定の時間でどの程度の大きさの領域が撮影できるのか把握したいという要望があった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、超音波探触子等を操作して光音響波等の弾性波を取得する被検体情報取得装置において、ユーザが指定した被検体情報取得時間、または、被験者の拘束時間に応じて、撮影領域に関する情報を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する、本発明の被検体情報取得装置は、
被検体内を伝搬する弾性波を受信して、該被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、
前記弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器と、
前記被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段と、
前記時間に基づいて、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域情報を取得し、該領域情報を提示手段に提示させる制御手段と、
前記領域情報に基づいて、前記受信器を前記被検体に対して走査させる走査手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検体情報の取得(撮影)の実施に際し、被検体情報を取得可能な領域の情報が提示できるため、ユーザや被験者に対する利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の光超音波撮影装置の構成を示す図
【図2】撮影領域を指定した場合の探触子の走査軌跡を示す図
【図3】撮影指定領域内の探触子の走査軌跡を示すフローチャート
【図4】撮影指定領域内の探触子の走査軌跡を示す図
【図5】走査領域を算出するフローチャート
【図6】撮影時間の設定画面一例
【図7】走査領域算出時の座標や条件を示す図
【図8】第2実施形態の光音響撮影装置の構成を示す図
【図9】撮影時間内に撮影可能な領域の1例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の好ましい実施形態について詳説する。尚、本実施形態においては、被検体情報取得装置として、光音響波診断(撮影)装置を例に説明するが、本発明はこれに限らず、超音波診断装置においても適用可能である。また、光音響波診断装置においても、発明の範囲は図示例に限定されるものではない。
【0011】
[第1実施形態]
図1に、本実施形態の被検体情報取得装置及び、この被検体情報取得装置と提示手段とを備えた被検体情報取得システムの概要を示す。本実施形態の被検体情報取得装置である光音響撮影装置は、図1に示す通り、被検体内を伝搬する弾性波としての音響波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器である光音響波検出器装置1004と、受信器である光音響波検出器装置1004を被検体に対して走査させる走査手段を兼ねる光音響波信号計測制御部1005とを少なくとも備える光音響波信号計測部100を有している。また、被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段である時間指定部1011と、時間指定部1011に指定された時間に基づいて、被検体における特性情報を取得すべき領域情報を取得し、提示手段である表示部1015に提示させる制御手段を構成する光音響情報処理制御部1014とを少なくとも備える光音響情報処理部101も有している。
【0012】
上述の構成を有する本実施形態の被検体情報取得装置においては、受信器である光音響波検出器装置1004が走査して被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置でありながら、ユーザが指定した時間に基づいて予め撮影可能領域の大きさや位置を確認できるため、ユーザまたは被験者の利便性が向上する。つまり、走査型の被検体情報取得装置故、撮影(測定、計測)毎に撮影時間、撮影範囲が異なるが、予め撮影範囲が把握できるので、ユーザ及び被験者の利便性が向上する。例えば、被験者毎の個人差によって撮影時間を制限する必要が生じる場合がある。具体的には、体力のない被験者(例えば高齢者)や、後述するように被検体を圧迫して撮影する場合に痛みに弱い被験者においては、撮影時間を制限する(短くする)必要がある。このような場合において、本実施形態の被検体情報取得装置においては、撮影時間を予め指定(制限)し、この制限された時間内で撮影できる範囲を把握できるため、ユーザ及び被験者の利便性が向上する。
【0013】
尚、本実施の形態において被検体情報取得装置は、図1に示すように、好まし形態として光音響波計測部100は、保持板1001、光源1002、及び光学装置1003とを更に備え、光音響情報処理部101は、光音響画像生成部1012、前述の光音響情報処理制御部1014と共に制御手段を構成する領域算出部1013とを更に備える。そして、被検体情報取得システムとして、更に提示手段としての表示部1015を備えている。以下、光音響波信号計測部100、光音響波情報処理部101、更には表示部1015の詳細について説明する。まず、光音響信号計測部100の構成について説明する。
【0014】
図1において撮影対象の被検体1006は、これを両側から圧迫固定する保持板1001に固定される。保持部を成す保持板1001は、1001Aと1001Bの2枚1対で構成され、保持間隙と圧力を変更するために、図示しない保持機構によって保持位置を制御される。保持板1001Aと1001Bを区別する必要がない場合には、まとめて保持板1001と表記する。保持板1001は、被検体を挟むことで装置に固定し、これによって被検体1006が動くことによる計測誤差を低減できる。また、計測光の浸達深度に合わせて、被検体1006を光音響の計測に適した厚さに調整することができる。保持板1001は、計測光の光路上に位置するため、計測光に対して高い透過率を有すると同時に、光音響検出波装置1004内の計測部である超音波探触子との音響整合性が高い部材であることが好ましい。例えば、超音波診断装置等で使用されているポリメチルペンテンなどの部材が使用される。
【0015】
光源1002は、被検体1006に光を照射させて、被検体1006から弾性波である音響波を発生させるためのものである。光源1002は不図示であるが、二つの光源から成る(以下の説明においては、二つの光源を光源Aと光源Bとする)。光源1002は、一般的に、近赤外領域に中心波長を有するパルス発光が可能な個体レーザ(例えば、Yttrium−Aluminium−GarnetレーザやTitAn−Sapphiレーザ)が使用される。計測光(被検体に照射する光)の波長は、撮影対象とする被検体1006内の光吸収物質(例えばヘモグロビンやグルコース、コレステロールなど)に応じて、530nmから1300nmの間で選択される。例えば、撮影対象とする乳がん新生血管中のヘモグロビンは、一般的に600nm〜1000nmの光を吸収し、一方、生体を構成する水の光吸収体は830nm付近で極小となるため、750nm〜850nmで光吸収が相対的に大きくなる。また、ヘモグロビンの状態(酸素飽和度)により光の吸収率が変化するため、この変化を比較することで生体の機能的な変化も計測できる可能性がある。なお、本実施形態においては、2つの光源の例で説明しているが、単一もしくは3つ以上の光源を用いても良い。また、光源は通常、照射周波数が決まっている。これは、所望の強度パルス光を継続的に照射するために、設計値として定められるが、照射周波数は、単位時間に伝える光音響測定の回数に影響するため、照射周波数が高いものほど、好ましい。本実施例においては、二つの光源である光源A、光源B共に、照射周波数を20Hzとする。
【0016】
光源1002からの計測光を被検体1006に所望の形状で照射するための光学装置1003は、レンズ、ミラー、光ファイバー等の光学系と、保持板に対して走査する走査機構から構成されている。光学系は、光源1002から発せられた計測光が被検体1006に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いても構わない。
【0017】
光源1002で発生させた計測光を、光学装置1003を介して被検体に照射すると、被検体内の光吸収体1007が光を吸収し、弾性波としての光音響波1008を放出する。この場合、光吸収体1007が音源に該当する。
【0018】
光吸収体1007で生じた弾性波としての光音響波1008を受信して電気信号に変換する素子を備える光検出器である光音響波検出装置1004は、光音響波1008を検知し、電気信号に変換するものである。生体から発生する光音響波1008は、100KHzから100MHzの超音波である。そのため、光音響波検出装置1004には、上記の周波数帯を受信できる素子(受信素子)が用いられる。これらの素子(受信素子)としては、圧電現象を用いたトランスディーサ、光の共振を用いたトランスデューサ、容量の変化を用いたトランスデューサなど弾性波としての光音響波を検知できるものであれば、どのような素子を用いてもよい。本実施形態の光検出器である光音響波検出装置1004は、複数の受信素子が2次元的に配置されたものとする。このような2次元配列素子を用いることで、同時に複数の場所で弾性波としての光音響波を検出することができ、検出時間を短縮できるとともに、被検体の振動などの影響を低減できる。一例として、受信素子ピッチは4mm間隔で受信素子配列は主走査方向に20素子、副走査方向に20素子が配列されている受信器が好適に使用できる。尚、主走査方向、副走査方向についての詳細は後述する。また、本実施形態においては、受信器である光音響波検出装置1004の前面から被検体1006を計測光で照射する。そのため、光学装置1003と光音響波検出装置1004を対向する位置に配置し、その位置関係を保つ様に同時に同様の走査制御がなされる。
【0019】
光音響波信号計測制御部1005は、受信器である光音響検出装置1004から得られた光音響波に基づく電気信号の増幅処理や、アナログ信号からデジタル信号への変換処理やノイズ低減のための積算処理を行う。また、不図示のインターフェースを介して、光音響波信号計測制御部1005から、例えば光音響波情報処理制御部1014のような外部機器に光音響波信号を送信する。
【0020】
また、光音響波信号計測制御部1005は走査手段を備えており、光学装置1003、受信器である光音響波検出装置1004の被検体に対する走査の制御も行う。また更には、光源1002、光学装置1003、受信器である光音響波検出装置1004の駆動制御も行う。以下これらについて説明する。
【0021】
積算処理は、被検体1006の同じ個所の計測を繰り返し行い、加算平均処理を行うことでシステムノイズを低減して、光音響波信号のS/N比を向上するために行われる。光学装置1003、光音響波検出装置1004の走査の制御については、詳細は後述するが、被検体に対して光学装置1003、光音響波検出装置1004を2次元走査して各走査位置で計測を行うこと等がある。この走査は、光音響波情報処理制御部1014と共に制御手段を構成する領域算出部1013(詳細は後述する)によって算出された領域(被検体における特性情報を取得すべき領域)に基づいて、走査手段を備える光音響波信号計測制御部1005によって行われる。このように受信器である光音響波検出装置1004を被検体に対して走査させることによって、小型の探触子でも広い撮影の領域で必要な音響波を取得できるようになる。例えば、乳房撮影ではフルブレストの光音響画像の撮影が可能になる。ここで、撮影領域とは、計測された光音響波に基づいて算出された3次元ボリュームデータを取得する領域のことである。
【0022】
また、光源1002の制御の内容としては、光源A、光源Bの選択、レーザの照射タイミング等があり、また光学装置1003、光音響波検出装置1004の制御としては、後述の付帯時間に係わる移動制御(適切な位置に移動させる)等がある。
【0023】
次に光音響波情報処理部101について説明する。光音響波情報処理部101は、光音響波信号計測部100から受信した光音響波計測データを元に光音響波画像の生成と表示をするほかに、被検体の特性情報を取得するのに要する時間の指定や、指定された時間を基に、被検体の特性情報を取得すべき領域(撮影領域、計測領域、走査領域ともいう)の算出、取得を行う。そして取得した領域に関する情報を表示する等の処理を行う。光音響波情報処理部101は、一般に、パソコンやワークステーション等の、高性能な演算処理機能やグラフィックス表示機能を備える装置を用いる。
【0024】
被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段である時間指定部1011は、例えばマウスなどの入力手段によって、特性情報を取得するのに要する時間を指定する。ここで、特性情報を取得するのに要する時間とは、詳細は後述するが、被検体を走査して弾性波としての音響波を取得する(計測する)時間や、付帯時間等を含む時間である。尚、入力手段はマウスやキーボードに限らず、ペンタブレットタイプのものや表示装置表面に取り付けたタッチパッドでもよい。
【0025】
制御手段を構成する光音響情報処理制御部1014は、時間指定部1011によって得られた、被検体の特性情報を取得するのに要する時間の情報を受信して、後述の領域算出部1013と共に被検体における特性情報を取得すべき領域に関する情報を算出し、提示手段である表示部1015に表示させる。
【0026】
光音響情報処理制御部1014と共に制御手段を構成する領域算出部1013は、詳細は後述するが、撮影領域に関する情報を算出する。領域算出部1013にて算出された撮影領域に関する情報は、光音響情報処理制御部1014と共に制御手段を構成する領域算出部1013からの指示により、提示手段である表示部1015にて表示される。
【0027】
以上の構成を有する光音響撮影装置によって、光音響効果に基づいて被検体の特性情報を取得することで、被検体の光学特性分布を画像化し、光音響画像を提示することができる。なお、図1では、光音響波信号計測部100と光音響波情報処理部101とを別々のハードウェアで構成しているが、それぞれが有する機能を集約して、一本化する構成でも構わない。
【0028】
次に、被検体情報取得装置である音響波撮影装置の制御方法について、上述の音響波撮影装置の構成に基づき説明する。
【0029】
本実施形態の被検体情報取得装置である音響波撮影装置の制御方法は、以下の工程を有する。
ユーザによって指定された、被検体の特性情報を取得するのに要する時間の情報を受信する工程。
指定された時間に基づいて、被検体における特性情報を取得すべき領域に関する情報を取得する工程。
取得した領域情報を提示手段に提示させる工程。
取得した領域情報に基づいて、弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器を被検体に対して走査させる工程。
【0030】
以下に各工程を詳細に説明するが、まず撮影の際の受信器の動きの概要と、撮影に要する時間の内訳を説明したうえで、各工程を説明する。
【0031】
(撮影の際の受信器の動きの概要)
図2は、決められた領域を受信器で撮影する際の受信器である光音響波検出装置1004の中心の走査軌跡を示す概念図である。
【0032】
走査可能領域200は、走査面上の走査可能な最大領域を表し、走査指定領域201は、受信器が走査する領域であり、例えば、弾性波である光音響波の取得に要する時間から算出された撮影領域に対応する走査面上の走査領域を表している。尚、撮影領域の算出については後述する。受信器である光音響波検出装置1004の走査は、受信器(光音響波検出器1004)待機位置202から走査指定領域の初期位置203まで移動する(図の矢印204参照)。続いて、走査指定領域201の全領域を主走査方向205Aと副走査方向205Bに走査して光音響波計測を行う。続いて、走査終了位置206から受信器待機位置202に移動する(図の矢印207参照)。
【0033】
次に、受信器である光音響波検出装置1004の走査指定領域内の走査の詳細を説明する。
【0034】
図3のフローチャートは、図2の走査指定領域の光音響波計測の流れを表したものである。
【0035】
ここで、本実施例形態のでは、一画素あたりの光音響波データの積算回数は40回が設定されているものとする。本実施形態の例の場合は、探触子の素子数が主走査方向で20素子、積算回数が40回設定なので、探触子を受信素子1素子分ずつ移動させて、1往路(1復路も同様)で20回積算が行える。
【0036】
ここで、探触子を主走査方向に移動させて光音響測定される領域を、ストライプと定義する。特に本実施形態では、一度の光源からの発光によって光音響波信号が取得できるサイズが、探触子の全素子領域のサイズである。実際には、前記光音響波計測が行われる領域は、奥行き方向を含む三次元領域であるが、特に断りがない限りは、前記光音響波計測が行われる領域を、探触子の走査と平行な面で切り出した平面をストライプと表記する。
【0037】
では、図3のフローチャートを用いて、決められた撮影領域を走査(計測)する場合の流れを説明する。
【0038】
受信器である光音響波検出装置1004が走査指定領域初期位置203に移動後、光音響波計測が開始される。
【0039】
ステップ300では、次の計測ストライプが撮影指定領域の最上部ストライプもしくは最下部ストライプ、即ち計測の最初もしくは最終ストライプであるかを判定する。
【0040】
ステップ300に該当だった場合(Y(Yes)だった場合)、対象ストライプは2往復する(ステップ301)。ステップ302では、光源を光源Aに切り替えて1ストライプ(往路)の光音響波計測が実施される。ステップ303では、光源を光源Bに切り替えて1ストライプ(復路)の光音響計測が実施される。ここで、2往復するのは、本実施例では光源A、光源B共に積算回数が40回であると同時に、1ストライプでの積算回数が20回だからである。
【0041】
次に、ステップ304では、計測領域の最下部ストライプかを判定する。ステップ304が該当だった場合(Y(Yes)だった場合)、即ち最下部ストライプだった場合は、時間から算出された撮影領域の光音響波計測は終了となる。ステップ304が不該当だった場合(N(No)だった場合)、副走査方向に受信器である光音響波検出装置1004サイズの半分だけ移動する。
【0042】
ステップ300が不該当だった場合は、光源を光源Aに切り替えて1ストライプ(往路)の光音響波計測が実施され(ステップ306)、続いて、光源を光源Bに切り替えて1ストライプ(復路)の光音響波計測が実施(ステップ307)され、続いて、受信器である光音響波検出装置1004が副走査方向に探触子サイズの半分だけ移動(ステップ305)される。ここで、1ストライプ毎に光音響波検出装置1004サイズ半分だけ移動させるため、最上部もしくは最下部を除いては、1往復で光源A、光源B共に積算回数が40回に達する。
【0043】
次に、図4を用いて、上述した走査軌跡を概念的に詳述する。走査指定領域初期位置203から、最上部ストライプ400の往路において光源Aで光音響波信号計測を行い、最上部ストライプの復路401において光源Bで光音響波信号計測を行い、2往復402する。続いて、2〜(最下部−1)ストライプ403までを、往路は光源A、復路を光源Bで光音響信号波計測を行い、1往復404する。最下部ストライプ405においては、上述した最上部ストライプと同様の走査がなされる。ここで、最上部ストライプの下半分ストライプ、もしくは、少なくとも最下部ストライプの上半分ストライプは、積算回数が40回を超えるが、S/N比向上に繋がるので問題は無い。406が、積算回数が40回を超える領域である。
【0044】
(撮影に要する時間の内訳)
光音響撮影装置において正確な撮影(特性情報の取得)のためには、被検体が静止した状態で撮影が行われるのが好ましく、よって一般に体の一部を固定する等の何らかの方法で被験者を拘束する必要がある。特に被験者の乳房の撮影においては、乳房を圧迫した状態で固定し、被験者を拘束する。このような場合被験者の拘束は、多くの場合、苦痛を伴うため、撮影開始から被験者が解放されるまでの時間から算出される撮影領域に係る情報は、撮影を行う医師や技師、および被験者に有用な情報である。また圧迫しない場合でも、被検体を静止させた状態での撮影が必要となるため、やはり被験者は拘束された状態となる。そこで、撮影開始から被験者が解放されるまでの時間を拘束時間とし、これを受信器を走査する時間、付帯時間に分けて、以下説明する。
【0045】
尚、走査時間とは、指定された撮影領域を受信器が走査する時間であり、付帯時間とは、受信器が待機する位置と指定された撮影領域との間を移動する時間や、後述の被検体を解放する時間等である。これを下記(1)〜(4)の一連の動作で具体的に説明する。
(1)受信器である光音響波検出装置1004の待機位置202から走査指定領域初期位置203までの単純移動する時間である走査指定領域初期位置移動時間T1
(2)走査指定領域の主走査方向205Aの光音響波取得をしながら移動する時間である主走査方向移動時間T2
(3)走査指定領域の副走査方向205Bの単純移動する時間である副走査方向移動時間T3
(4)走査終了位置206から受信器である光音響波検出装置1004の待機位置202まで単純移動する時間である受信器初期位置移動時間T4
尚、上述の(1)〜(4)においては、走査時間はT2とT3の合計時間であり、付帯時間はT1+T4である。
【0046】
次に、被検体情報取得装置の制御方法について、上述の音響波撮影装置の構成に基づき図5を用いて説明する。
【0047】
(ユーザによって指定された、前記被検体の特性情報を取得するのに要する時間の情報を受信する工程)
上述のとおり、時間指定手段である時間指定部1011によって、ユーザが被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定すると、光音響情報処理制御部1014が受信する(ステップ500)。尚、時間指定手段の入力手段はマウスやキーボードに限らず、ペンタブレットタイプのものや表示装置表面に取り付けたタッチパッド等、様々な手段が利用できる。時間指定の例を図6に示す。600は、ユーザが指定した時間である。またこのとき、光音響測定の計測条件設定も可能である。
【0048】
(指定された時間に基づいて、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域に関する情報を取得する工程)
特性情報取得すべき領域は、ユーザに指定された時間内で光音響波を取得できる領域であり、これによって受信器を走査させる領域がきまる。
【0049】
特性情報を取得すべき領域である走査領域を算出するには、以下のパラメータが必要になる。本実施形態の例においては、以下のように設定してあるものとして説明する。ただし、発明の範囲は、以下の設定に限定されず、例えば、単純移動時の探触子速度は初期加速等を考慮した一定でない値でもよいし、走査領域の形状はひし形等でもよいし、探触子の走査軌跡は螺旋状を描くような走査でもよい。また、ユーザが各パラメータを設定できるようにしてもよい。
単純移動時の探触子速度 :Vxy
走査領域の形状 :長方形(正方形を含む)
走査領域の縦横比 :縦:横=1:n
探触子の走査軌跡 :<走査指定領域における走査軌跡の詳細>にての記載通り。
走査領域の中心座標 :(X_1、Y_1)(図7の700)
走査時間 :詳細は後述
光音響取得時の探触子移動速度 :詳細は後述
【0050】
ステップ501で、光音響波計測時の走査速度を算出する。受信器である光音響波検出装置1004の主走査方向の素子数をEnx(elements)、副走査方向の素子数をEny、素子ピッチをEpitch(mm)、光音響測定の積算回数をMn(times)、レーザ光源の発光周波数をLHz(Hz)とする。説明を簡便にするため、積算回数Mnが素子数Enxの倍数である場合、受信器である光音響波検出装置1004およびレーザ光源の主走査方向の走査速度Vx(mm/sec)および走査回数St(times)は次式で算出される。
Vx = Epitch×LHz (式1)
St = (Mn / Enx)×2×(1/2) (式2)
【0051】
本実施形態の例の場合は、上述したように、探触子の素子数が主走査方向で20素子、積算回数40回設定なので、受信器である光音響波検出装置1004を、受信素子1素子分ずつ移動させて、一往復で40回積算が行える。
【0052】
よって、一往復素子ピッチを4mm、レーザ光源の発光周波数を20Hzとした場合、測定時の走査速度は80mm/secとなる。
【0053】
上述に基づく走査速度の算出、つまり、走査における方向に配列された複数の素子の配列ピッチと、光源の発光周波数とに基づく走査速度の算出は、制御手段を構成する光音響情報処理制御部1014が備える速度算出手段によって行われる。そしてこの速度算出手段の算出結果に基づいて、走査時間が算出、取得される。
【0054】
尚、より複雑な条件では、積算回数が主走査方向の素子数Enxより小さい場合や、Enxより小さい値の倍数であった場合には、受信器である光音響波検出装置1004移動一往復あたりの積算回数が小さくなる。この場合においては、受信器である光音響波検出装置1004の移動量は、単位時間あたり、2画素以上ずらしながら走査できるので、走査速度の設定は高くなることがわかる。受信器である光音響波検出装置1004の移動速度は、本実施形態の例で示した方法に限らず、測定条件や、装置構成に依存して、走査速度を調整するために様々なアルゴリズムを適用することが予想される。
【0055】
本実施形態における、走査速度算出機能は、光音響波計測のための受信器である光音響波検出装置1004移動速度を求めることが目的であるので、参照パラメータやアルゴリズムは、上述例で記述している方式に限らない。
【0056】
ステップ502では、走査領域の算出を行う。本実施形態の例では、図7のように、受信器(光音響波検出装置1004)待機位置202の座標を(0,0)とし、走査領域の副走査方向の長さ701をSとすると、走査領域の主走査方向の長さ702はnS、走査領域初期位置203の座標は
【0057】
【数1】
【0058】
となり、走査終了位置206の座標は
【0059】
【数2】
【0060】
となる。ここで、走査領域の中心座標や走査領域の縦横比は、ユーザが指定できるようにしてもよい。
【0061】
ステップ5020では、付帯時間である走査領域初期位置への移動時間T1を算出する。
走査領域初期位置への移動時間T1は、次式で表される。
【0062】
【数3】
【0063】
ステップ5021では、主走査方向移動時間T2を算出する。ここで、副走査方向の移動距離を受信器である光音響検出装置1004のサイズの1/2とした場合の、走査指定領域を網羅するストライプ数Nは、次式(4)で表される。ここで求められたNは、走査指定領域の主走査方向において、探触子が端から端まで移動する回数を表している。
【0064】
【数4】
【0065】
よって、走査指定領域における主走査方向の総移動距離は、nS×(N+1)×Stとなる。従って、主走査方向時間T2は、次式で表される。
【0066】
【数5】
【0067】
上記Vxは主走査方向における走査速度であり、上述の例では80mm/secである。
ステップ5022では、副走査方向時間T3を算出する。副走査方向移動時間T3は次式で表される。
【0068】
【数6】
【0069】
ステップ5023では、付帯時間である受信器(光音響検出器1004)初期位置移動時間T4を算出する。受信器初期位置移動時間T4は、次式で表される。
【0070】
【数7】
【0071】
ステップ5024では、走査領域を算出する。走査時間T5は、次式で表される。
T5=T2+T3 (式8)
また、付帯時間T6は時式で表される。
T6=T1+T4
また、走査時間T5と付帯時間T6の和は、ステップ500で受信した値でもある。上式を副走査方向の長さSについて解くことで、走査領域を算出することができる。尚、上述の実施形態のように、被検体を保持板1001で保持または圧迫する場合は、被検体を保持板1001から解放する時間を付帯時間に含めるとよい。
【0072】
ステップ503では、算出した走査領域を装置座標系からカメラ座標系に変換して表示部に表示する。走査領域の表示については、図6の601のように枠で囲ってもよいし、塗りつぶしてもよいし、走査領域に対応する撮影領域に変換して表示してもよい。
【0073】
また、本実施形態においては、受信器の走査時間と、受信器の待機位置と撮影領域との間の移動時間を加えた時間を特性情報を取得するのに要する時間として、走査領域を算出し表示する例を示したが、更に、撮影開始後の被験者の拘束に要する時間、及び、解放に要する時間に基づいて撮影領域(特性情報を取得すべき領域)を算出して表示してもよい。
【0074】
尚、上述の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムもまた、本発明の範疇に含まれるものである。
【0075】
[第2実施形態]
図8に基づいて、本発明の第2実施形態の光音響撮影装置において、構成追加となった撮影領域指定部800、時間算出部801、比較部900について説明する。光音響波撮影領域指定部1011は、ユーザが撮影領域を指定する手段を有する。マウスなどの入力手段によって、撮影領域を指定する。入力手段はマウスやキーボードに限らず、ペンタブレットタイプのものや表示装置表面に取り付けたタッチパッドでもよい。撮影領域の指定については、被検体を圧迫保持する保持板に対して直行する方向に設置されたカメラ(不図示)によって撮影された画像を元に、撮影領域を指定できるようになっている。時間算出部801は、撮影領域指定部800によって指定された指定撮影領域に基づき、被験者の拘束時間を算出する。時間算出部801にて算出された被験者の拘束時間は、表示部1015にて表示される。
【0076】
次に、領域指定部800から入力された指定撮影領域に基づき、特性情報を取得するために要する時間を算出して表示する処理について説明する。
【0077】
特性情報を取得するのに要する時間については、第1実施形態で述べた(1)〜(4)までの総和時間を、領域指定部800から入力された撮影領域に関する情報制御手段を構成する光音響情報処理制御部1014が受信することで算出できる。
【0078】
ここで算出した時間を、表示部1015に表示する。表示については、数字等の文字やゲージ、時刻で表しても良いし、音声等で伝えても良い。尚、特性情報を取得するのに要する時間は、上記の受信器の移動時間及び走査時間に基づき算出する場合に限らず、被検体を拘束する時間や被検体を解放する時間を含めて算出しても良い。
【0079】
比較部900は、時間指定部1011で指定された時間と、時間算出部801で算出した時間とを比較する。
【0080】
次に、比較部における比較結果に基づき、領域算出部が算出した特性情報を取得すべき領域を表示する処理について説明する。
【0081】
光音響情報処理制御部1004が、ユーザが時間指定部で指定した特性情報を取得するのに要する時間10000と領域指定部で指定した指定撮影領域10001を受信する。受信した指定撮影領域を撮影するために要する時間が、受信した特性情報を取得するのに要する時間(10000)内で完了するかを、比較部900が比較する。比較した結果は、図9の10002のように、受信した指定撮影領域を受信した特性情報を取得するのに要する時間(10000)内で撮影できる領域(特性情報を取得すべき領域)として塗りつぶして表示してもよいし、枠で囲ってもよいし、またはOKやNGで表示してもよい。また、特性情報を取得すべき領域(時間指定部1011で指定された時間から領域算出部1013で算出した領域)が光音響波の3次元ボリュームデータを扱うのに適さない形の場合は、領域を丸めてもよい。例えば、10003の領域を丸めて、3次元ボリュームデータを直方体の形にしてもよい。更に、撮影領域を丸めた場合には、丸めた撮影領域における光音響波取得時間を表示してもよい。
【0082】
第2実施形態によれば、撮影を行う医師や技師にとって有用な情報である撮影領域と拘束時間の関係を容易に知ることができるようになる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
100 光音響波信号計測部
1002 光源
1004 光音響波検出器装置
1005 光音響波信号計測制御部
1006 被検体
1007 光吸収対(音源)
101 光音響情報処理部
1011 時間指定部
1012 光音響画像生成部
1013 領域算出部
1014 光音響情報処理制御部
1015 表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体情報取得装置、該装置の制御方法、及び該制御方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚がんや乳がんの診断装置として、超音波診断装置が知られている。超音波診断装置においては、超音波送受信素子を被検体に対して走査させることで、走査範囲内における超音波エコーを受信し、この走査領域内での被検体の特性情報を得る(撮影する)場合がある。これによって、超音波送受信素子の大きさよりも大きい領域を撮影することが可能となる。このような技術について、特許文献1においては、ユーザが被検体の撮影領域を予め指定し、其の指定された特定の領域を撮影することが記載されている。そしてその際、超音波送受信素子の大きさを考慮して、指定した撮影領域と撮影可能な最大領域の位置関係を表示部に表示することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−218520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、撮影における超音波エコーの取得に要する時間や被験者の拘束時間から、撮影領域を算出する手段がないため、所定の時間内に、実際に撮影できる領域の大きさがどの程度なのかが把握できないため、利便性に欠けるという不具合があった。一方、皮膚がんや乳がんの診断においては、超音波診断装置以外にも、光音響波による診断装置(Photo Acoustic Tomography、以下、光音響撮影装置とも表記する)が提案され始めている。光音響波による診断装置は、可視光や近赤外光等の計測光を生体組織に照射した際に、生体内部の光吸収物質が、計測光のエネルギーを吸収して瞬間的に膨張した結果発生される光音響波を計測することで、生体組織の情報を可視化する。この光音響撮影の技術により、光エネルギー吸収密度分布、即ち生体内の光吸収物質の密度分布を定量的に、また3次元的に計測することができる。そして光音響撮影装置は、診断画像の撮像に光を用いることで無被爆、非侵襲での画像診断が可能なため、患者負担の点で大きな優位性を有しており、繰り返し診断することが難しいX線装置に代わり、乳がんのスクリーニングや早期診断での活用が期待される。
【0005】
しかし、光音響撮影装置においても、上述の超音波診断装置と同様に、光音響波を受信する素子を被検体に対して走査させることによって、走査範囲内の被検体情報を得る(撮影する)場合があるため、上述の超音波診断装置と同様、所定の時間でどの程度の大きさの領域が撮影できるのか把握したいという要望があった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、超音波探触子等を操作して光音響波等の弾性波を取得する被検体情報取得装置において、ユーザが指定した被検体情報取得時間、または、被験者の拘束時間に応じて、撮影領域に関する情報を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する、本発明の被検体情報取得装置は、
被検体内を伝搬する弾性波を受信して、該被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、
前記弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器と、
前記被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段と、
前記時間に基づいて、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域情報を取得し、該領域情報を提示手段に提示させる制御手段と、
前記領域情報に基づいて、前記受信器を前記被検体に対して走査させる走査手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検体情報の取得(撮影)の実施に際し、被検体情報を取得可能な領域の情報が提示できるため、ユーザや被験者に対する利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の光超音波撮影装置の構成を示す図
【図2】撮影領域を指定した場合の探触子の走査軌跡を示す図
【図3】撮影指定領域内の探触子の走査軌跡を示すフローチャート
【図4】撮影指定領域内の探触子の走査軌跡を示す図
【図5】走査領域を算出するフローチャート
【図6】撮影時間の設定画面一例
【図7】走査領域算出時の座標や条件を示す図
【図8】第2実施形態の光音響撮影装置の構成を示す図
【図9】撮影時間内に撮影可能な領域の1例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の好ましい実施形態について詳説する。尚、本実施形態においては、被検体情報取得装置として、光音響波診断(撮影)装置を例に説明するが、本発明はこれに限らず、超音波診断装置においても適用可能である。また、光音響波診断装置においても、発明の範囲は図示例に限定されるものではない。
【0011】
[第1実施形態]
図1に、本実施形態の被検体情報取得装置及び、この被検体情報取得装置と提示手段とを備えた被検体情報取得システムの概要を示す。本実施形態の被検体情報取得装置である光音響撮影装置は、図1に示す通り、被検体内を伝搬する弾性波としての音響波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器である光音響波検出器装置1004と、受信器である光音響波検出器装置1004を被検体に対して走査させる走査手段を兼ねる光音響波信号計測制御部1005とを少なくとも備える光音響波信号計測部100を有している。また、被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段である時間指定部1011と、時間指定部1011に指定された時間に基づいて、被検体における特性情報を取得すべき領域情報を取得し、提示手段である表示部1015に提示させる制御手段を構成する光音響情報処理制御部1014とを少なくとも備える光音響情報処理部101も有している。
【0012】
上述の構成を有する本実施形態の被検体情報取得装置においては、受信器である光音響波検出器装置1004が走査して被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置でありながら、ユーザが指定した時間に基づいて予め撮影可能領域の大きさや位置を確認できるため、ユーザまたは被験者の利便性が向上する。つまり、走査型の被検体情報取得装置故、撮影(測定、計測)毎に撮影時間、撮影範囲が異なるが、予め撮影範囲が把握できるので、ユーザ及び被験者の利便性が向上する。例えば、被験者毎の個人差によって撮影時間を制限する必要が生じる場合がある。具体的には、体力のない被験者(例えば高齢者)や、後述するように被検体を圧迫して撮影する場合に痛みに弱い被験者においては、撮影時間を制限する(短くする)必要がある。このような場合において、本実施形態の被検体情報取得装置においては、撮影時間を予め指定(制限)し、この制限された時間内で撮影できる範囲を把握できるため、ユーザ及び被験者の利便性が向上する。
【0013】
尚、本実施の形態において被検体情報取得装置は、図1に示すように、好まし形態として光音響波計測部100は、保持板1001、光源1002、及び光学装置1003とを更に備え、光音響情報処理部101は、光音響画像生成部1012、前述の光音響情報処理制御部1014と共に制御手段を構成する領域算出部1013とを更に備える。そして、被検体情報取得システムとして、更に提示手段としての表示部1015を備えている。以下、光音響波信号計測部100、光音響波情報処理部101、更には表示部1015の詳細について説明する。まず、光音響信号計測部100の構成について説明する。
【0014】
図1において撮影対象の被検体1006は、これを両側から圧迫固定する保持板1001に固定される。保持部を成す保持板1001は、1001Aと1001Bの2枚1対で構成され、保持間隙と圧力を変更するために、図示しない保持機構によって保持位置を制御される。保持板1001Aと1001Bを区別する必要がない場合には、まとめて保持板1001と表記する。保持板1001は、被検体を挟むことで装置に固定し、これによって被検体1006が動くことによる計測誤差を低減できる。また、計測光の浸達深度に合わせて、被検体1006を光音響の計測に適した厚さに調整することができる。保持板1001は、計測光の光路上に位置するため、計測光に対して高い透過率を有すると同時に、光音響検出波装置1004内の計測部である超音波探触子との音響整合性が高い部材であることが好ましい。例えば、超音波診断装置等で使用されているポリメチルペンテンなどの部材が使用される。
【0015】
光源1002は、被検体1006に光を照射させて、被検体1006から弾性波である音響波を発生させるためのものである。光源1002は不図示であるが、二つの光源から成る(以下の説明においては、二つの光源を光源Aと光源Bとする)。光源1002は、一般的に、近赤外領域に中心波長を有するパルス発光が可能な個体レーザ(例えば、Yttrium−Aluminium−GarnetレーザやTitAn−Sapphiレーザ)が使用される。計測光(被検体に照射する光)の波長は、撮影対象とする被検体1006内の光吸収物質(例えばヘモグロビンやグルコース、コレステロールなど)に応じて、530nmから1300nmの間で選択される。例えば、撮影対象とする乳がん新生血管中のヘモグロビンは、一般的に600nm〜1000nmの光を吸収し、一方、生体を構成する水の光吸収体は830nm付近で極小となるため、750nm〜850nmで光吸収が相対的に大きくなる。また、ヘモグロビンの状態(酸素飽和度)により光の吸収率が変化するため、この変化を比較することで生体の機能的な変化も計測できる可能性がある。なお、本実施形態においては、2つの光源の例で説明しているが、単一もしくは3つ以上の光源を用いても良い。また、光源は通常、照射周波数が決まっている。これは、所望の強度パルス光を継続的に照射するために、設計値として定められるが、照射周波数は、単位時間に伝える光音響測定の回数に影響するため、照射周波数が高いものほど、好ましい。本実施例においては、二つの光源である光源A、光源B共に、照射周波数を20Hzとする。
【0016】
光源1002からの計測光を被検体1006に所望の形状で照射するための光学装置1003は、レンズ、ミラー、光ファイバー等の光学系と、保持板に対して走査する走査機構から構成されている。光学系は、光源1002から発せられた計測光が被検体1006に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いても構わない。
【0017】
光源1002で発生させた計測光を、光学装置1003を介して被検体に照射すると、被検体内の光吸収体1007が光を吸収し、弾性波としての光音響波1008を放出する。この場合、光吸収体1007が音源に該当する。
【0018】
光吸収体1007で生じた弾性波としての光音響波1008を受信して電気信号に変換する素子を備える光検出器である光音響波検出装置1004は、光音響波1008を検知し、電気信号に変換するものである。生体から発生する光音響波1008は、100KHzから100MHzの超音波である。そのため、光音響波検出装置1004には、上記の周波数帯を受信できる素子(受信素子)が用いられる。これらの素子(受信素子)としては、圧電現象を用いたトランスディーサ、光の共振を用いたトランスデューサ、容量の変化を用いたトランスデューサなど弾性波としての光音響波を検知できるものであれば、どのような素子を用いてもよい。本実施形態の光検出器である光音響波検出装置1004は、複数の受信素子が2次元的に配置されたものとする。このような2次元配列素子を用いることで、同時に複数の場所で弾性波としての光音響波を検出することができ、検出時間を短縮できるとともに、被検体の振動などの影響を低減できる。一例として、受信素子ピッチは4mm間隔で受信素子配列は主走査方向に20素子、副走査方向に20素子が配列されている受信器が好適に使用できる。尚、主走査方向、副走査方向についての詳細は後述する。また、本実施形態においては、受信器である光音響波検出装置1004の前面から被検体1006を計測光で照射する。そのため、光学装置1003と光音響波検出装置1004を対向する位置に配置し、その位置関係を保つ様に同時に同様の走査制御がなされる。
【0019】
光音響波信号計測制御部1005は、受信器である光音響検出装置1004から得られた光音響波に基づく電気信号の増幅処理や、アナログ信号からデジタル信号への変換処理やノイズ低減のための積算処理を行う。また、不図示のインターフェースを介して、光音響波信号計測制御部1005から、例えば光音響波情報処理制御部1014のような外部機器に光音響波信号を送信する。
【0020】
また、光音響波信号計測制御部1005は走査手段を備えており、光学装置1003、受信器である光音響波検出装置1004の被検体に対する走査の制御も行う。また更には、光源1002、光学装置1003、受信器である光音響波検出装置1004の駆動制御も行う。以下これらについて説明する。
【0021】
積算処理は、被検体1006の同じ個所の計測を繰り返し行い、加算平均処理を行うことでシステムノイズを低減して、光音響波信号のS/N比を向上するために行われる。光学装置1003、光音響波検出装置1004の走査の制御については、詳細は後述するが、被検体に対して光学装置1003、光音響波検出装置1004を2次元走査して各走査位置で計測を行うこと等がある。この走査は、光音響波情報処理制御部1014と共に制御手段を構成する領域算出部1013(詳細は後述する)によって算出された領域(被検体における特性情報を取得すべき領域)に基づいて、走査手段を備える光音響波信号計測制御部1005によって行われる。このように受信器である光音響波検出装置1004を被検体に対して走査させることによって、小型の探触子でも広い撮影の領域で必要な音響波を取得できるようになる。例えば、乳房撮影ではフルブレストの光音響画像の撮影が可能になる。ここで、撮影領域とは、計測された光音響波に基づいて算出された3次元ボリュームデータを取得する領域のことである。
【0022】
また、光源1002の制御の内容としては、光源A、光源Bの選択、レーザの照射タイミング等があり、また光学装置1003、光音響波検出装置1004の制御としては、後述の付帯時間に係わる移動制御(適切な位置に移動させる)等がある。
【0023】
次に光音響波情報処理部101について説明する。光音響波情報処理部101は、光音響波信号計測部100から受信した光音響波計測データを元に光音響波画像の生成と表示をするほかに、被検体の特性情報を取得するのに要する時間の指定や、指定された時間を基に、被検体の特性情報を取得すべき領域(撮影領域、計測領域、走査領域ともいう)の算出、取得を行う。そして取得した領域に関する情報を表示する等の処理を行う。光音響波情報処理部101は、一般に、パソコンやワークステーション等の、高性能な演算処理機能やグラフィックス表示機能を備える装置を用いる。
【0024】
被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段である時間指定部1011は、例えばマウスなどの入力手段によって、特性情報を取得するのに要する時間を指定する。ここで、特性情報を取得するのに要する時間とは、詳細は後述するが、被検体を走査して弾性波としての音響波を取得する(計測する)時間や、付帯時間等を含む時間である。尚、入力手段はマウスやキーボードに限らず、ペンタブレットタイプのものや表示装置表面に取り付けたタッチパッドでもよい。
【0025】
制御手段を構成する光音響情報処理制御部1014は、時間指定部1011によって得られた、被検体の特性情報を取得するのに要する時間の情報を受信して、後述の領域算出部1013と共に被検体における特性情報を取得すべき領域に関する情報を算出し、提示手段である表示部1015に表示させる。
【0026】
光音響情報処理制御部1014と共に制御手段を構成する領域算出部1013は、詳細は後述するが、撮影領域に関する情報を算出する。領域算出部1013にて算出された撮影領域に関する情報は、光音響情報処理制御部1014と共に制御手段を構成する領域算出部1013からの指示により、提示手段である表示部1015にて表示される。
【0027】
以上の構成を有する光音響撮影装置によって、光音響効果に基づいて被検体の特性情報を取得することで、被検体の光学特性分布を画像化し、光音響画像を提示することができる。なお、図1では、光音響波信号計測部100と光音響波情報処理部101とを別々のハードウェアで構成しているが、それぞれが有する機能を集約して、一本化する構成でも構わない。
【0028】
次に、被検体情報取得装置である音響波撮影装置の制御方法について、上述の音響波撮影装置の構成に基づき説明する。
【0029】
本実施形態の被検体情報取得装置である音響波撮影装置の制御方法は、以下の工程を有する。
ユーザによって指定された、被検体の特性情報を取得するのに要する時間の情報を受信する工程。
指定された時間に基づいて、被検体における特性情報を取得すべき領域に関する情報を取得する工程。
取得した領域情報を提示手段に提示させる工程。
取得した領域情報に基づいて、弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器を被検体に対して走査させる工程。
【0030】
以下に各工程を詳細に説明するが、まず撮影の際の受信器の動きの概要と、撮影に要する時間の内訳を説明したうえで、各工程を説明する。
【0031】
(撮影の際の受信器の動きの概要)
図2は、決められた領域を受信器で撮影する際の受信器である光音響波検出装置1004の中心の走査軌跡を示す概念図である。
【0032】
走査可能領域200は、走査面上の走査可能な最大領域を表し、走査指定領域201は、受信器が走査する領域であり、例えば、弾性波である光音響波の取得に要する時間から算出された撮影領域に対応する走査面上の走査領域を表している。尚、撮影領域の算出については後述する。受信器である光音響波検出装置1004の走査は、受信器(光音響波検出器1004)待機位置202から走査指定領域の初期位置203まで移動する(図の矢印204参照)。続いて、走査指定領域201の全領域を主走査方向205Aと副走査方向205Bに走査して光音響波計測を行う。続いて、走査終了位置206から受信器待機位置202に移動する(図の矢印207参照)。
【0033】
次に、受信器である光音響波検出装置1004の走査指定領域内の走査の詳細を説明する。
【0034】
図3のフローチャートは、図2の走査指定領域の光音響波計測の流れを表したものである。
【0035】
ここで、本実施例形態のでは、一画素あたりの光音響波データの積算回数は40回が設定されているものとする。本実施形態の例の場合は、探触子の素子数が主走査方向で20素子、積算回数が40回設定なので、探触子を受信素子1素子分ずつ移動させて、1往路(1復路も同様)で20回積算が行える。
【0036】
ここで、探触子を主走査方向に移動させて光音響測定される領域を、ストライプと定義する。特に本実施形態では、一度の光源からの発光によって光音響波信号が取得できるサイズが、探触子の全素子領域のサイズである。実際には、前記光音響波計測が行われる領域は、奥行き方向を含む三次元領域であるが、特に断りがない限りは、前記光音響波計測が行われる領域を、探触子の走査と平行な面で切り出した平面をストライプと表記する。
【0037】
では、図3のフローチャートを用いて、決められた撮影領域を走査(計測)する場合の流れを説明する。
【0038】
受信器である光音響波検出装置1004が走査指定領域初期位置203に移動後、光音響波計測が開始される。
【0039】
ステップ300では、次の計測ストライプが撮影指定領域の最上部ストライプもしくは最下部ストライプ、即ち計測の最初もしくは最終ストライプであるかを判定する。
【0040】
ステップ300に該当だった場合(Y(Yes)だった場合)、対象ストライプは2往復する(ステップ301)。ステップ302では、光源を光源Aに切り替えて1ストライプ(往路)の光音響波計測が実施される。ステップ303では、光源を光源Bに切り替えて1ストライプ(復路)の光音響計測が実施される。ここで、2往復するのは、本実施例では光源A、光源B共に積算回数が40回であると同時に、1ストライプでの積算回数が20回だからである。
【0041】
次に、ステップ304では、計測領域の最下部ストライプかを判定する。ステップ304が該当だった場合(Y(Yes)だった場合)、即ち最下部ストライプだった場合は、時間から算出された撮影領域の光音響波計測は終了となる。ステップ304が不該当だった場合(N(No)だった場合)、副走査方向に受信器である光音響波検出装置1004サイズの半分だけ移動する。
【0042】
ステップ300が不該当だった場合は、光源を光源Aに切り替えて1ストライプ(往路)の光音響波計測が実施され(ステップ306)、続いて、光源を光源Bに切り替えて1ストライプ(復路)の光音響波計測が実施(ステップ307)され、続いて、受信器である光音響波検出装置1004が副走査方向に探触子サイズの半分だけ移動(ステップ305)される。ここで、1ストライプ毎に光音響波検出装置1004サイズ半分だけ移動させるため、最上部もしくは最下部を除いては、1往復で光源A、光源B共に積算回数が40回に達する。
【0043】
次に、図4を用いて、上述した走査軌跡を概念的に詳述する。走査指定領域初期位置203から、最上部ストライプ400の往路において光源Aで光音響波信号計測を行い、最上部ストライプの復路401において光源Bで光音響波信号計測を行い、2往復402する。続いて、2〜(最下部−1)ストライプ403までを、往路は光源A、復路を光源Bで光音響信号波計測を行い、1往復404する。最下部ストライプ405においては、上述した最上部ストライプと同様の走査がなされる。ここで、最上部ストライプの下半分ストライプ、もしくは、少なくとも最下部ストライプの上半分ストライプは、積算回数が40回を超えるが、S/N比向上に繋がるので問題は無い。406が、積算回数が40回を超える領域である。
【0044】
(撮影に要する時間の内訳)
光音響撮影装置において正確な撮影(特性情報の取得)のためには、被検体が静止した状態で撮影が行われるのが好ましく、よって一般に体の一部を固定する等の何らかの方法で被験者を拘束する必要がある。特に被験者の乳房の撮影においては、乳房を圧迫した状態で固定し、被験者を拘束する。このような場合被験者の拘束は、多くの場合、苦痛を伴うため、撮影開始から被験者が解放されるまでの時間から算出される撮影領域に係る情報は、撮影を行う医師や技師、および被験者に有用な情報である。また圧迫しない場合でも、被検体を静止させた状態での撮影が必要となるため、やはり被験者は拘束された状態となる。そこで、撮影開始から被験者が解放されるまでの時間を拘束時間とし、これを受信器を走査する時間、付帯時間に分けて、以下説明する。
【0045】
尚、走査時間とは、指定された撮影領域を受信器が走査する時間であり、付帯時間とは、受信器が待機する位置と指定された撮影領域との間を移動する時間や、後述の被検体を解放する時間等である。これを下記(1)〜(4)の一連の動作で具体的に説明する。
(1)受信器である光音響波検出装置1004の待機位置202から走査指定領域初期位置203までの単純移動する時間である走査指定領域初期位置移動時間T1
(2)走査指定領域の主走査方向205Aの光音響波取得をしながら移動する時間である主走査方向移動時間T2
(3)走査指定領域の副走査方向205Bの単純移動する時間である副走査方向移動時間T3
(4)走査終了位置206から受信器である光音響波検出装置1004の待機位置202まで単純移動する時間である受信器初期位置移動時間T4
尚、上述の(1)〜(4)においては、走査時間はT2とT3の合計時間であり、付帯時間はT1+T4である。
【0046】
次に、被検体情報取得装置の制御方法について、上述の音響波撮影装置の構成に基づき図5を用いて説明する。
【0047】
(ユーザによって指定された、前記被検体の特性情報を取得するのに要する時間の情報を受信する工程)
上述のとおり、時間指定手段である時間指定部1011によって、ユーザが被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定すると、光音響情報処理制御部1014が受信する(ステップ500)。尚、時間指定手段の入力手段はマウスやキーボードに限らず、ペンタブレットタイプのものや表示装置表面に取り付けたタッチパッド等、様々な手段が利用できる。時間指定の例を図6に示す。600は、ユーザが指定した時間である。またこのとき、光音響測定の計測条件設定も可能である。
【0048】
(指定された時間に基づいて、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域に関する情報を取得する工程)
特性情報取得すべき領域は、ユーザに指定された時間内で光音響波を取得できる領域であり、これによって受信器を走査させる領域がきまる。
【0049】
特性情報を取得すべき領域である走査領域を算出するには、以下のパラメータが必要になる。本実施形態の例においては、以下のように設定してあるものとして説明する。ただし、発明の範囲は、以下の設定に限定されず、例えば、単純移動時の探触子速度は初期加速等を考慮した一定でない値でもよいし、走査領域の形状はひし形等でもよいし、探触子の走査軌跡は螺旋状を描くような走査でもよい。また、ユーザが各パラメータを設定できるようにしてもよい。
単純移動時の探触子速度 :Vxy
走査領域の形状 :長方形(正方形を含む)
走査領域の縦横比 :縦:横=1:n
探触子の走査軌跡 :<走査指定領域における走査軌跡の詳細>にての記載通り。
走査領域の中心座標 :(X_1、Y_1)(図7の700)
走査時間 :詳細は後述
光音響取得時の探触子移動速度 :詳細は後述
【0050】
ステップ501で、光音響波計測時の走査速度を算出する。受信器である光音響波検出装置1004の主走査方向の素子数をEnx(elements)、副走査方向の素子数をEny、素子ピッチをEpitch(mm)、光音響測定の積算回数をMn(times)、レーザ光源の発光周波数をLHz(Hz)とする。説明を簡便にするため、積算回数Mnが素子数Enxの倍数である場合、受信器である光音響波検出装置1004およびレーザ光源の主走査方向の走査速度Vx(mm/sec)および走査回数St(times)は次式で算出される。
Vx = Epitch×LHz (式1)
St = (Mn / Enx)×2×(1/2) (式2)
【0051】
本実施形態の例の場合は、上述したように、探触子の素子数が主走査方向で20素子、積算回数40回設定なので、受信器である光音響波検出装置1004を、受信素子1素子分ずつ移動させて、一往復で40回積算が行える。
【0052】
よって、一往復素子ピッチを4mm、レーザ光源の発光周波数を20Hzとした場合、測定時の走査速度は80mm/secとなる。
【0053】
上述に基づく走査速度の算出、つまり、走査における方向に配列された複数の素子の配列ピッチと、光源の発光周波数とに基づく走査速度の算出は、制御手段を構成する光音響情報処理制御部1014が備える速度算出手段によって行われる。そしてこの速度算出手段の算出結果に基づいて、走査時間が算出、取得される。
【0054】
尚、より複雑な条件では、積算回数が主走査方向の素子数Enxより小さい場合や、Enxより小さい値の倍数であった場合には、受信器である光音響波検出装置1004移動一往復あたりの積算回数が小さくなる。この場合においては、受信器である光音響波検出装置1004の移動量は、単位時間あたり、2画素以上ずらしながら走査できるので、走査速度の設定は高くなることがわかる。受信器である光音響波検出装置1004の移動速度は、本実施形態の例で示した方法に限らず、測定条件や、装置構成に依存して、走査速度を調整するために様々なアルゴリズムを適用することが予想される。
【0055】
本実施形態における、走査速度算出機能は、光音響波計測のための受信器である光音響波検出装置1004移動速度を求めることが目的であるので、参照パラメータやアルゴリズムは、上述例で記述している方式に限らない。
【0056】
ステップ502では、走査領域の算出を行う。本実施形態の例では、図7のように、受信器(光音響波検出装置1004)待機位置202の座標を(0,0)とし、走査領域の副走査方向の長さ701をSとすると、走査領域の主走査方向の長さ702はnS、走査領域初期位置203の座標は
【0057】
【数1】
【0058】
となり、走査終了位置206の座標は
【0059】
【数2】
【0060】
となる。ここで、走査領域の中心座標や走査領域の縦横比は、ユーザが指定できるようにしてもよい。
【0061】
ステップ5020では、付帯時間である走査領域初期位置への移動時間T1を算出する。
走査領域初期位置への移動時間T1は、次式で表される。
【0062】
【数3】
【0063】
ステップ5021では、主走査方向移動時間T2を算出する。ここで、副走査方向の移動距離を受信器である光音響検出装置1004のサイズの1/2とした場合の、走査指定領域を網羅するストライプ数Nは、次式(4)で表される。ここで求められたNは、走査指定領域の主走査方向において、探触子が端から端まで移動する回数を表している。
【0064】
【数4】
【0065】
よって、走査指定領域における主走査方向の総移動距離は、nS×(N+1)×Stとなる。従って、主走査方向時間T2は、次式で表される。
【0066】
【数5】
【0067】
上記Vxは主走査方向における走査速度であり、上述の例では80mm/secである。
ステップ5022では、副走査方向時間T3を算出する。副走査方向移動時間T3は次式で表される。
【0068】
【数6】
【0069】
ステップ5023では、付帯時間である受信器(光音響検出器1004)初期位置移動時間T4を算出する。受信器初期位置移動時間T4は、次式で表される。
【0070】
【数7】
【0071】
ステップ5024では、走査領域を算出する。走査時間T5は、次式で表される。
T5=T2+T3 (式8)
また、付帯時間T6は時式で表される。
T6=T1+T4
また、走査時間T5と付帯時間T6の和は、ステップ500で受信した値でもある。上式を副走査方向の長さSについて解くことで、走査領域を算出することができる。尚、上述の実施形態のように、被検体を保持板1001で保持または圧迫する場合は、被検体を保持板1001から解放する時間を付帯時間に含めるとよい。
【0072】
ステップ503では、算出した走査領域を装置座標系からカメラ座標系に変換して表示部に表示する。走査領域の表示については、図6の601のように枠で囲ってもよいし、塗りつぶしてもよいし、走査領域に対応する撮影領域に変換して表示してもよい。
【0073】
また、本実施形態においては、受信器の走査時間と、受信器の待機位置と撮影領域との間の移動時間を加えた時間を特性情報を取得するのに要する時間として、走査領域を算出し表示する例を示したが、更に、撮影開始後の被験者の拘束に要する時間、及び、解放に要する時間に基づいて撮影領域(特性情報を取得すべき領域)を算出して表示してもよい。
【0074】
尚、上述の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムもまた、本発明の範疇に含まれるものである。
【0075】
[第2実施形態]
図8に基づいて、本発明の第2実施形態の光音響撮影装置において、構成追加となった撮影領域指定部800、時間算出部801、比較部900について説明する。光音響波撮影領域指定部1011は、ユーザが撮影領域を指定する手段を有する。マウスなどの入力手段によって、撮影領域を指定する。入力手段はマウスやキーボードに限らず、ペンタブレットタイプのものや表示装置表面に取り付けたタッチパッドでもよい。撮影領域の指定については、被検体を圧迫保持する保持板に対して直行する方向に設置されたカメラ(不図示)によって撮影された画像を元に、撮影領域を指定できるようになっている。時間算出部801は、撮影領域指定部800によって指定された指定撮影領域に基づき、被験者の拘束時間を算出する。時間算出部801にて算出された被験者の拘束時間は、表示部1015にて表示される。
【0076】
次に、領域指定部800から入力された指定撮影領域に基づき、特性情報を取得するために要する時間を算出して表示する処理について説明する。
【0077】
特性情報を取得するのに要する時間については、第1実施形態で述べた(1)〜(4)までの総和時間を、領域指定部800から入力された撮影領域に関する情報制御手段を構成する光音響情報処理制御部1014が受信することで算出できる。
【0078】
ここで算出した時間を、表示部1015に表示する。表示については、数字等の文字やゲージ、時刻で表しても良いし、音声等で伝えても良い。尚、特性情報を取得するのに要する時間は、上記の受信器の移動時間及び走査時間に基づき算出する場合に限らず、被検体を拘束する時間や被検体を解放する時間を含めて算出しても良い。
【0079】
比較部900は、時間指定部1011で指定された時間と、時間算出部801で算出した時間とを比較する。
【0080】
次に、比較部における比較結果に基づき、領域算出部が算出した特性情報を取得すべき領域を表示する処理について説明する。
【0081】
光音響情報処理制御部1004が、ユーザが時間指定部で指定した特性情報を取得するのに要する時間10000と領域指定部で指定した指定撮影領域10001を受信する。受信した指定撮影領域を撮影するために要する時間が、受信した特性情報を取得するのに要する時間(10000)内で完了するかを、比較部900が比較する。比較した結果は、図9の10002のように、受信した指定撮影領域を受信した特性情報を取得するのに要する時間(10000)内で撮影できる領域(特性情報を取得すべき領域)として塗りつぶして表示してもよいし、枠で囲ってもよいし、またはOKやNGで表示してもよい。また、特性情報を取得すべき領域(時間指定部1011で指定された時間から領域算出部1013で算出した領域)が光音響波の3次元ボリュームデータを扱うのに適さない形の場合は、領域を丸めてもよい。例えば、10003の領域を丸めて、3次元ボリュームデータを直方体の形にしてもよい。更に、撮影領域を丸めた場合には、丸めた撮影領域における光音響波取得時間を表示してもよい。
【0082】
第2実施形態によれば、撮影を行う医師や技師にとって有用な情報である撮影領域と拘束時間の関係を容易に知ることができるようになる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
100 光音響波信号計測部
1002 光源
1004 光音響波検出器装置
1005 光音響波信号計測制御部
1006 被検体
1007 光吸収対(音源)
101 光音響情報処理部
1011 時間指定部
1012 光音響画像生成部
1013 領域算出部
1014 光音響情報処理制御部
1015 表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内を伝搬する弾性波を受信して、該被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、
前記弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器と、
前記被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段と、
前記時間に基づいて、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域情報を取得し、該領域情報を提示手段に提示させる制御手段と
前記領域情報に基づいて、前記受信器を前記被検体に対して走査させる走査手段と、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記受信器を前記被検体に対して走査させる際の走査速度を算出する速度算出手段を備え、該速度算出手段の算出結果に基づいて、前記特性情報を取得すべき領域情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項3】
前記被検体に光を照射させて該被検体から前記弾性波を発生させるための光源を更に有し、前記受信器は、前記走査における方向に配列された複数の前記素子を備え、前記速度算出手段は、前記光源の発光周波数と、前記素子の配列ピッチとに基づいて、前記走査速度を算出することを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記時間指定手段によって指定された時間から付帯時間を減じた時間と前記走査速度とにより前記特性情報を取得すべき領域情報を取得することを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。
【請求項5】
前記付帯時間が、前記被検体を拘束するのに要する時間、前記被検体を解放するのに要する時間、または前記受信器が待機する位置と前記領域との間を移動するのに要する時間のいずれかを含むことを特徴とする請求項4に記載の被検体情報取得装置。
【請求項6】
撮影領域を指定する撮影領域指定手段と、
前記撮影領域指定手段によって指定された撮影領域と、前記特性情報を取得すべき領域情報とを比較する比較手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記比較手段による比較結果を提示手段に提示させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項7】
撮影領域を指定する撮影領域指定手段と、
前記撮影領域指定手段により指定された撮影領域に基づいて、撮影時間を算出する時間算出手段と、
前記時間算出手段により算出された撮影時間と前記時間指定手段により指定された時間とを比較する比較手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記比較手段による比較結果を提示手段に提示させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項8】
前記提示手段が、表示手段であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置と、
前記提示手段と、を有し、
前記提示手段が、前記制御手段からの指示により、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域情報を提示することを特徴とする被検体情報取得システム。
【請求項10】
被検体内を伝搬する弾性波を受信して、該被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置の制御方法であって、
ユーザによって指定された、前記被検体の特性情報を取得するのに要する時間の情報を受信する工程と、
指定された時間に基づいて、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域に関する情報を取得する工程と、
取得した領域情報を提示手段に提示させる工程と、
取得した領域情報に基づいて、前記弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器を前記被検体に対して走査させる工程と
を有することを特徴とする被検体情報取得装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
被検体内を伝搬する弾性波を受信して、該被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置であって、
前記弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器と、
前記被検体の特性情報を取得するのに要する時間を指定する時間指定手段と、
前記時間に基づいて、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域情報を取得し、該領域情報を提示手段に提示させる制御手段と
前記領域情報に基づいて、前記受信器を前記被検体に対して走査させる走査手段と、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記受信器を前記被検体に対して走査させる際の走査速度を算出する速度算出手段を備え、該速度算出手段の算出結果に基づいて、前記特性情報を取得すべき領域情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
【請求項3】
前記被検体に光を照射させて該被検体から前記弾性波を発生させるための光源を更に有し、前記受信器は、前記走査における方向に配列された複数の前記素子を備え、前記速度算出手段は、前記光源の発光周波数と、前記素子の配列ピッチとに基づいて、前記走査速度を算出することを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記時間指定手段によって指定された時間から付帯時間を減じた時間と前記走査速度とにより前記特性情報を取得すべき領域情報を取得することを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。
【請求項5】
前記付帯時間が、前記被検体を拘束するのに要する時間、前記被検体を解放するのに要する時間、または前記受信器が待機する位置と前記領域との間を移動するのに要する時間のいずれかを含むことを特徴とする請求項4に記載の被検体情報取得装置。
【請求項6】
撮影領域を指定する撮影領域指定手段と、
前記撮影領域指定手段によって指定された撮影領域と、前記特性情報を取得すべき領域情報とを比較する比較手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記比較手段による比較結果を提示手段に提示させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項7】
撮影領域を指定する撮影領域指定手段と、
前記撮影領域指定手段により指定された撮影領域に基づいて、撮影時間を算出する時間算出手段と、
前記時間算出手段により算出された撮影時間と前記時間指定手段により指定された時間とを比較する比較手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記比較手段による比較結果を提示手段に提示させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項8】
前記提示手段が、表示手段であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置と、
前記提示手段と、を有し、
前記提示手段が、前記制御手段からの指示により、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域情報を提示することを特徴とする被検体情報取得システム。
【請求項10】
被検体内を伝搬する弾性波を受信して、該被検体の特性情報を取得する被検体情報取得装置の制御方法であって、
ユーザによって指定された、前記被検体の特性情報を取得するのに要する時間の情報を受信する工程と、
指定された時間に基づいて、前記被検体における前記特性情報を取得すべき領域に関する情報を取得する工程と、
取得した領域情報を提示手段に提示させる工程と、
取得した領域情報に基づいて、前記弾性波を受信して電気信号に変換する素子を備える受信器を前記被検体に対して走査させる工程と
を有することを特徴とする被検体情報取得装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−94371(P2013−94371A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239024(P2011−239024)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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