説明

被検物をマイクロ流体デバイスの多チャネルに分割する方法及び装置

【課題】種々の生物学的及び化学的組成物の分析に応用されるマイクロ流体の分析方法及び装置。
【解決手段】遠心力及び毛細管力を用いるデバイス内でマイクロリットル液体試料、特に生物学的試料を分析する。試料は、後続の工程で分析されるべき試料の量を規定する1個以上の計量ウェルまで毛細管力によって移動する。規定量の試料は、計量ウェルから、各計量された試料内に含まれる分析物の量を測定する1個以上の調整ウェル及び試薬ウェルまで移動する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、概して、種々の生物学的及び化学的組成物の分析に応用されるようなマイクロ流体の分野に関する。より具体的には、本発明は、付与された遠心力及び装置内通路の表面特性から得られる毛細管力の両者を用いて分析を行う方法及び装置を提供する。
【0002】
体液その他の流体内のグルコース、アルブミン又はバクテリアなどの分析物の存在(又は非存在)あるいは量を決定するために、分析を行う技術者を補助するために試薬デバイスが一般に用いられる。このような試薬デバイスは、1以上の試薬領域を含み、試薬領域
に技術者が試料流体を適用し、次いで結果を標準と比較することができる。例えば、試薬片を試料流体中に漬けると試薬片が変色するので、色の強度又はタイプを標準参照色チャートと比較する。
【0003】
多くの体液がそうであるように、試料が複雑な組成を有する場合には、このようなデバイスの調製は困難である。同定又は測定されるべき成分は、試薬によって検出されて特性色を提供し得る前に、適切な形態に変換されることが必要であるかもしれない。試料流体中の他の成分は、所望の反応と干渉するかもしれず、これらは試料から分離されるか、有効成分が中和されなければならい。ときどき、試薬は相互に不適合性である。他の場合には、試料は、問題の分析物を濃縮するために前処理されなければならない。これら及び他の問題は、単一のデバイス内に、特定の分析(アッセイ)に必要な試薬及び他の成分を提供することを困難にする。従来技術は、このような問題を解決して流体試料を分析する能力を呈することを意図した多くのデバイスの例を含む。
【0004】
異なるアプローチは、技術者が行うことを要求するのではないが、試料を調製して分析する一連の工程を実施することである。これを行う一つの方法は、所望のプロセスを自動的に行うデバイスを調製することであるが、試薬を分離したままに維持することによって上述の問題を避けることができる。
【0005】
分析を行うことは、試料を受け取り、試料の所望量を選択し、試料を希釈又は洗浄し、成分に分離し、試料又はその成分との反応を行わせることを含み得る。このような工程を研究室内で大きな試料で実施しようとした場合、一般に、必要な工程を技術者が手動により行うことを必要とするか、あるいは自動化される場合には、試料及びその成分を移動し、試薬、洗浄液体、希釈剤などを導入するために設備が必要となるであろう。しかし、試料が小さく、したがって当然、非常に小さな設備内で処理工程を実施しなければならないことになることが生物学的アッセイの典型である。約0.02〜50μLの試料にとって必要な
寸法まで研究室設備を小型化することは容易ではなく、異なるアプローチが用いられる。プラスチック又は他の適切な基材にこのような機構を創製して、得られる基材を他の層で被覆することにより、ミクロンサイズの通路に接続されている小さな容器が製作される。被覆層が適用される前に、容器に添加された試薬を含むものでもよい。通路は、さらに、所望により、試験されるべき試料によって湿潤性又は非湿潤性となるように処理されてもよい。試料、その成分又は他の流体は、壁が湿潤されている場合には、このような通路を毛細管作用によって移動し得るし、あるいは流体が通路の壁を湿潤しない場合には移動が妨げられる。よって、毛細管通路は、バルブが存在していたならば、流体を移動させるか又は移動を阻止するかのいずれかをなし得る。毛細管通路を通して流体を移動させる別の方法は遠心力によるものであり、非湿潤性壁の抵抗にうち勝つ。この単純な記載は、マイクロ流体デバイスの概観を提供する。特定の用途は、多くの特許(そのうちのいくつかは後述する)に与えられている。
【0006】
種々のタイプの分析に対する容器及び通路を配置する際に用いられる原理のいくつかについての拡張された議論は、米国特許6,143,248号明細書に呈示されている。これらの原
理を適用する追加の例は、米国特許6,063,589号明細書に見出すことができる。これら2件の特許に記載されているマイクロ流体デバイスは、ディスク形態で配設され、1の容器か
ら他の容器へと流体を移動させるために必要である場合に、遠心力の程度を変化させることができる設備上で回転するようになされていた。一般に、試料は回転中心近くに供給され、試料もしくは試料の一部を回転中心から更に離れて配設されている容器まで移動させるために、回転速度を徐々に増加させる。これらの特許は、如何にして分析用の特定量の試料を単離することができるか、如何にして試料を洗浄その他の目的のための他の流体と混合することができるか、如何にして試料をそれらの成分に分離することができるか、を記載する。
【0007】
他の特許は、電気浸透により流体を移動させるために電極を用いることを記載する(米国特許4,908,112号明細書など)。Caliper Technology Corporationは、流体が電動推進
力により移動するマイクロ流体デバイスに関する特許のポートフォリオを有する。代表例は、米国特許5,942,443号明細書;5,965,001号明細書;及び5,976,336号明細書である。
【0008】
米国特許5,141,868号明細書において、毛細管作用を用いて、試料をキャビティ内に吸
引し、試料キャビティ内に位置づけられた電極によって試料の測定が行われ得る。
米国特許出願Ser. No. 10/082,415において、これらの従前利用可能であったものより
も有利なマイクロ流体デバイスが開示されている。このようなデバイスの一例は、多数のU字形毛細管ループを使用して、後続の分析のために計量された試料液体を提供する。
【0009】
本発明者らは、米国特許出願Ser. No. 10/082,415に示されているデバイスを越える利
点を有する、液体試料の多くの部分を計量するための改良された方法を探求している。課題を解決する手段を下記に詳述する。
【0010】
発明の概要
本発明は、分析デバイス内での分析のため、小さな生物学的試料を分割するためにマイクロ流体技術を使用する、改良された分析デバイスとして一般に特徴づけることができる。典型的には、このような試料は約0.3〜2.0μLの容積を有するが、計量工程数に依存し
て0.2〜200μLの範囲にあってもよい。
【0011】
本発明の分析デバイスは、典型的には、薄いプラスチックの小片であり、試料液体を受け入れるためのマイクロリットルサイズのウェルにカットされており、ウェルは約10〜500μmの幅及び少なくとも5μmの深さを有する毛細管通路により相互接続されている。通路は、試験されるべき試料流体の特性により必要とされる際には、公知の方法を用いて親水性又は疎水性のいずれかに形成されていてもよい。通路は、2種類の毛細管栓、すなわち
、疎水性壁を有する狭い栓及び親水性壁を有する広い栓、を含むものでもよい。所望の特性はチップの基部に形成され、試薬が適切なウェル内に置かれ、次いで頂部を取り付けてチップが完成する。
【0012】
毛細管通路により接続されている多数の試薬ウェルを用いることによって、試料流体に所定のシーケンスにて多くの別個の処理を与えることができ、こうして、慣用の試験片では克服することが困難であった問題点の多くを回避する。好ましい実施形態において、1
個の試料ウェルは、分析されるべき試料の量を規定する容積を有する一連の計量ウェルを供給する。各計量ウェルは、1以上の試薬ウェル及び関連する調整ウェルと、抵抗する力
、例えば遠心力を与えることによりうち破られるまで試料液体の移動を防止するための毛細管栓を含む毛細管通路を介して流体連通している。試料は、追加の計量ウェルによりさ
らに分割されてもよく、その後、追加の試薬ウェル及び関連する調整ウェル内でさらに反応してもよい。
【0013】
好ましい実施形態の記載
マイクロチャネル内のフロー
本発明を用いるデバイスは、典型的には、当該分野でこれまで研究者により提案されてきたチャネルよりも小さいチャネルを用いる。流体を移動させるために高圧(例えば100 psi以上)を用いない他者により用いられる別の変形例は、流体を移動させるために強い
動電力(例えば25 kV)を用いることであり、生物分子に損傷を与えかねない方法である
。特に、毛細管力を用いて流体を移動させる場合に、本発明で用いるチャネルは約10〜500μmの範囲、好ましくは約20〜100μmの範囲にある幅を有し、一方、1桁大きいチャネル
が他者により典型的に用いられている。このようなチャネルに対する最小寸法は、約5μmであるべきと考えられている。なぜなら、より小さいチャネルは分析される試料中の成分を効果的に濾過することができるからである。一般に、チャネルの深さは、幅よりも小さいであろう。本発明において好ましい範囲にあるチャネルは、フローを開始する時を除いて遠心力を用いることなく、液体試料を毛細管力によって移動させることを可能とする。例えば、試料流体に対して疎水性となるように処理された毛細管壁によって、移動を停止させることが可能である。抵抗する毛細管力は、例えば遠心力を与えることにより、ポンプで引くことにより、減圧にすることにより、電気浸透により、又は加熱することにより、好ましくは遠心力により、差圧によってうち破られ得る。差圧は、液体フローが確立されると、除かれてもよい。あるいは、毛細管壁を試料流体に対して親水性となるように処理するならば、流体は、遠心力その他の力を用いることなく毛細管力により流れるであろう。親水性栓がこのようなチャネルに含まれるならば、親水性栓の効果をうち破るような力を与えることによりフローを確立することができる。結果として、実施されるべき分析にとって必要であれば、液体を計量して、デバイスのある領域から他の領域に移動させることができる。
【0014】
遠心力、流体物理特性、流体表面張力、毛細管壁の表面エネルギー、毛細管サイズ及び分析されるべき流体に含まれている粒子の表面エネルギーに関する数学的モデルが導き出されている。毛細管を通過する流体の流量及び疎水性又は親水性の所望の程度を予測することが可能である。以下の一般的な理論は、これらの因子の関係から導き出すことができる。
【0015】
いずれかの所与の通路に対して、通路表面との液体の相互作用は、液体の移動に対して大きな効果を有することもあるし有しないこともある。通路の表面対容積の比が大きい場合、すなわち断面積が小さい場合、液体と通路の壁との間の相互作用は非常に顕著になる。これは、特に、約200μm未満の公称寸法を有する通路を考える場合、液体試料及び壁の表面エネルギーに関連する毛細管力が優位である場合である。壁が液体によって湿潤されている場合、付与される外部力なしに液体は通路を移動する。逆に、壁が液体によって湿潤されていない場合、液体は通路から離脱しようとする。これらの一般的な傾向を用いて、通路を通して液体を移動させることや、あるいは異なる断面積を有する別の通路との接合部にて移動を停止させることができる。液体が静止しているならば、遠心力を与えるなど、差圧により液体を移動させることができる。あるいは、異なる断面積又は表面エネルギーを有する通路間の接合部における必要な圧力変化を含み得る空気圧、減圧、電気浸透、加熱などの他の手段を用いることができる。本発明において、液体が移動する通路は従来用いられていた通路よりも小さい。これは結果的に、より高い毛細管力を利用可能とし、毛細管栓が打ち破られなければならない短い期間を除いて外部力を要せずに、毛細管力だけで液体を移動させることを可能とする。しかし、より小さな通路は本質的に生物学的試料又は試薬中の粒子からの障害を受けやすい。したがって、通路壁の表面エネルギーは、試験されるべき試料流体、例えば血液、尿などと一緒に用いるために必要に応じて調節
される。この特性は、製作されるべき分析デバイスのより自由度の高い設計を可能とする。デバイスは、従来技術において用いられてきたディスクよりも小さくてもよく、より小さな試料と一緒に操作することができる。他の利点は、デバイスの記載及び実施例から明らかとなるであろう。
【0016】
本発明の分析デバイス
本発明の分析デバイスは、「チップ」とも呼ばれる。これらは一般に小さく平坦であり、典型的には約1〜2 in2(25〜50 mm2)であるか、又は約40〜80 mmの半径を有するディ
スクである。試料の容積は小さいであろう。例えば、被検物の総容積は0.2〜200μLの範
囲であり得るが、試料は各アッセイに対してわずかに約0.3〜2.0μLを含むだけであろう
。試料を容易に見ることができ、適切な設備で測定することができるように、試料流体用のウェルは、比較的幅広で浅い。相互接続する毛細管通路は、10〜500μmの範囲、好ましくは20〜100μmの範囲の幅を有し、形状は通路を形成するために用いられる方法により決定されるであろう。通路の深さは少なくとも5μmとすべきである。
【0017】
射出成形、レーザーアブレーション、ダイヤモンド切削又はエンボス加工などの毛細管及び試料ウェルを形成することができる数種の方法があるが、チップのコストを削減するために射出成形を用いることが好ましい。一般に、チップの基部は、試料ウェル及び毛細管の所望のネットワークを作るためにカットされ、次いで頂部が取り付けられてチップは完成する。
【0018】
チップは、1回の使用後に廃棄可能とすることが意図されている。したがって、チップ
は、試薬及び分析されるべき試料と親和性であるが、できるだけ廉価な材料で製造される。ほとんどの例において、チップは、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート又はポリウレタンなどのプラスチックから製造されるか、あるいはシリケート、ガラス、ワックス又は金属から製造され得る。
【0019】
毛細管通路は、疎水性又は親水性のいずれかとなるように調整される。疎水性又は親水性は、液体試料又は試薬により固体表面に形成される接触角に関して規定される。典型的には、表面は、接触角が90度未満の場合には親水性と考えられ、接触角が90度を超える場合には疎水性と考えられる。疎水性又は親水性のいずれかとなるように表面を処理することができる。好ましくは、通路の表面においてプラズマ誘導重合を行わせることができる。本発明の分析デバイスは、さらに、親水性又は疎水性物質で被覆したり、グラフト処理又はコロナ処理などの毛細管壁の表面エネルギーを制御するために用いられる他の方法で製作することもできる。本発明において、意図された試料流体と一緒に用いるように、毛細管壁の表面エネルギー、すなわち親水性又は疎水性の程度を調節することが好ましい。例えば、疎水性通路の壁上での沈着を防止するため、あるいは液体が通路に残らないようにするためにである。本発明においては、ほとんどの通路について、表面は一般に親水性であるべきと考えられる。なぜなら、液体は表面を湿潤化する傾向にあり、表面張力は液体を通路内で流動させるからである。例えば、毛細管通路の表面エネルギーは、通路が全血と接触する場合には水の接触角が20度〜60度の間となるように、あるいは通路が尿と接触する場合には25度〜80度の接触角となるように、公知の方法で調節することができる。
【0020】
毛細管を通しての液体の移動は、典型的には、毛細管栓により防止される。毛細管栓は、その名が示すように、液体が毛細管を通して流れることを防止する。毛細管通路が親水性であり、液体フローを促進する場合には、疎水性の毛細管栓、すなわち、疎水性壁を有するより小さな通路を用いることができる。液体は疎水性栓を通して通過できない。なぜなら、小さな寸法と非湿潤性壁との組み合わせは、結果的に、液体の流入に抵抗する表面張力を生じさせるからである。あるいは、毛細管通路が疎水性である場合には、試料ウェルと毛細管通路との間に栓は必要ではない。抵抗する表面張力にうち勝ち、疎水性通路を
通して液体を通過させるために遠心力などの十分な力が与えられない限り、試料ウェル内の液体は、毛細管通路への流入が阻止される。液体フローを開始させるためだけに遠心力が必要となることが本発明の特徴である。疎水性通路の壁が完全に液体と接触するようになると、抵抗する力は減少する。なぜなら、液体の存在は、疎水性表面に関連するエネルギー障壁を低下させるからである。したがって、流れるために、液体はもはや遠心力を必要としない。必要ではないけれども、迅速な分析を促進するために、液体が毛細管通路を流通している間、遠心力を与え続けることが簡便な場合もある。
【0021】
毛細管通路が親水性である場合、試料液体(水性であると推定される)は、追加の力を必要とせずに毛細管通路を自然に流通する。毛細管栓が必要である場合、一つの変形例は、上述のように栓として作用することができるより狭い疎水性区域を用いることである。毛細管が親水性であったとしても、親水性栓を用いることもできる。このような栓は、毛細管通路よりも幅広で、よって液体の表面張力は液体フローを促進する低い力を発生させる。毛細管と幅広の栓との間の幅の変動が十分である場合には、液体は毛細管栓への入口において停止するであろう。液体は最終的には栓の親水性壁に沿って這って進むであろうが、形状の正確な設計によって、壁が親水性であっても栓が有効となるように十分なほど、この移動を遅延させることができることがわかっている。
【0022】
疎水性栓を親水性毛細管内に配置する場合、疎水性栓の効果にうち勝つために差圧を与えなければならない。一般に、必要とされる差圧は、液体の表面張力、親水性毛細管との接触角の余弦及び毛細管の寸法の変化の関数である。すなわち、高い表面張力を有する液体は、より低い表面張力を有する液体よりも疎水性栓にうち勝つために要する力は小さい。親水性毛細管の壁を湿潤させる液体、すなわち小さい接触角を有する液体は、より大きな接触角を有する液体よりも疎水性栓にうち勝つために要する力は大きい。疎水性チャネルが小さいほど、与えられなければならない力は大きい。
【0023】
親水性もしくは疎水性の栓にうち勝つために遠心力が与えられるチップを設計するために、実証的検定を用いて有用な情報を提供することができる。例えば、それぞれ疎水性毛細管によって回転中心から更に離れて配置されている第2のウェルに接続されている試料
ウェルを有するようにチップを製造した。着色水を試料ウェル内に置いて、チップを回転させて試料に遠心力を与えた。与えられた遠心力は、回転中心からの半径距離及び回転速度の二乗に比例する。回転速度が十分である場合には、試料ウェル内の水は疎水性毛細管に流入し、第2のウェルにまで流れた。下記の表は得られたデータをまとめたものである

【0024】
【表1】

【0025】
上記結果より、下記の結論が導き出せる。
・毛細管の長さは、フローを開始させるために必要な力に影響を与えない(試験1〜2、3
〜4)
・毛細管の寸法を増加させると、フローを開始させるために必要な力が減少した(試験2
〜3、5〜6)
・試料ウェルが回転中心から更に離れると、力はあまり必要でない(試験1〜5、3〜6)
これらのように試験によって与えられた情報は、回転速度を調節することにより必要な力を与えることで、必要に応じて液体試料を移動させることができるように、液体を含有するウェルのチップ上での位置及び相互接続する毛細管チャネルの寸法を決めることを可能とする。
【0026】
図3a及びbは、本発明の分析デバイスにおいて用いることができる疎水性栓(a)及び親水性栓(b)を示す。図3aにおいて、ウェルR1は液体で満たされており、液体は、狭い疎
水性毛細管通路によってさらなる移動が阻止されない限り、取り付けられている親水性毛細管を通して延在し、それが液体が栓に流入することを防止する表面張力を与える。力がウェルR1から毛細管栓の方向に与えられると、抵抗する力は打ち破られ、R1内の液体はウェルR2に移動することができる。図3aは、さらに、親水性通路の断面積が突然減少して、十分な力が与えられない限り液体が流入することを防止する、上述のタイプの親水性栓を表すこともできる。
【0027】
図3bにおいて、示されている毛細管栓は親水性栓であり、R1内の液体がウェルR2に流通することを防止する。この場合、毛細管栓は狭くなく、親水性壁を有する。チャネルの幅の増加及び栓の形状は、表面張力が、取り付けられている毛細管から液体を流出させることを防止する。しかし、上述のように、液体は壁に沿って徐々に這うように進み、十分な時間の経過によって栓の効果にうち勝つことがわかっている。ほとんどの分析目的のために、栓はその目的を奏する。なぜなら、液体の自然移動により栓にうち勝つために液体にとって必要な時間よりも試料の分析に必要な時間が短いからである。
【0028】
図1は、米国特許出願Ser. No. 10/082,415の多数の試料マイクロ流体チップを示す。液体の単一試料は、試料ウェルSにて導入され、試料ウェルSから毛細管力によって親水性毛細管を通って10個の試料ループL1〜L10に流れる。排気チャネルは図1に示されていないが
、各ループが液体で完全に満たされるように、各ループの上部から空気を取り除くように設けられるであろう。液体は各ループにおいて、親水性栓により塞がれている。次いで、力が与えられて毛細管栓にうち勝つと、各ループ内の液体は分析用のウェルに流入する。この計量方法は効果的であるが、欠点も有する。毛細管は、本質的に小さい容積の液体を含む。よって、試料を保持することを要する毛細管は、比較的長く、チップ上の大きなスペースを占める。例えば、幅100μmで深さ50μmの毛細管通路の長さは、0.5μLの試料を
保持するために100 mmであり、1μLを保持するために200 mmであり、2μLを保持するために400 mmである。したがって、毛細管計量チャネルは、非常に小さな試料に最も適するであろう。さらに、毛細管を完全に空にすることを保証することは困難で、精度に苦しむことがわかっている。
【0029】
対して、本発明の計量チャンバは、分析チップよりも遙かに小さな面積を占めるだけである。例えば、深さ50μmで幅4 mmの計量チャンバは、0.5μLの試料を保持するために、2.5 mmの長さを有するであろう。1μLの試料を保持するために5 mmの長さが必要であり、2μLの試料を保持するために10 mmの長さが必要である。
【0030】
図2は、図1に示した配置のように、10本の試料経路を用いる本発明の一実施形態を示す。この設計において、試料は、チップの真ん中で、単一の大きな試料ウェル10に導入され、ここから試料は、毛細管力によって各計量ウェル12a〜12jに移動する。これらの計量ウェルは、10の平行する工程において、チップによって分析されるべき試料液体の量を規定する。よって、試料の容積を規定するためにU字形毛細管ループを使用する代わりに、試
料の量は、計量ウェルを満たすために必要とされる量により規定される。計量ウェルは、図示されているように、それぞれが完全に満たされることを確実にするために排気される。試料は、さらに計量ウェルの底部における毛細管の短い部分を満たし、前述のように親水性栓14a〜14j(図示されているように)又は疎水性栓によって栓がされている。このシステムは、図1の毛細管ループよりも試料サイズをより正確に規定するという利点を有し
、各計量ウェルは互いに独立している。さらに、このシステムはより小型であり、よって試料チャネル間の空隙をより近接させ、いずれかの所与チップ寸法上でより多数を設けることができる。単一の廃棄物ウェル20に排出するように、試薬ウェルの出口は共通に操作されることに留意されたい。各試料チャネルの操作は、図4を参照して記載することがで
きる。
【0031】
図2に示す単一の大きな試料ウェル10は、計量ウェル12a〜12jの各々に毛細管通路11を
通しての移動により試料を供給する。毛細管通路11の壁は、試料液体の移動を促進するために親水性となされている。計量ウェル12a〜12jの各々は、下流側のウェルR1及びR2内での試薬との反応に必要な量の試料を保持するように形成されている。ここでは2個の反応
ウェルが示されているが、例えば米国特許出願Ser. No. 10/082,415及び図5に示されるように追加のウェルを設けることもできることは理解されたい。計量ウェルが満たされると、空気は排気チャネル16を通して追い出され、計量ウェル12は常に最大まで満たされる。試料液体は、上述のように、親水性栓又は疎水性栓により通気チャネルに流入することが防止される(図示せず)。図4において、親水性栓14は計量ウェルの底部に示されている
。親水性栓14は、計量ウェル内の液体に例えば遠心力などの力を与えることによって栓の効果が破られない限り、試料液体が更に進行することを防止する。図示した設計の利点は、毛細管通路が親水性栓の出口から第1の反応ウェルR1まで延在することである。よって
、試料が計量ウェルから排出されない限り、試料はR1内の試薬と接触しないようにされている。通路は典型的には親水性となされていて、栓が破られると、試料は全体としてR1に移動する。R1は、種々の目的を奏することができる。例えば、R1は、R2内での分析物の測定のために、試料液体を調整する物質を含むことができる。R1はさらに、2種の分析物の
うち第1の分析物を測定するための第1の試薬を含むこともでき、一方、R2は第2の分析物
を測定するための第2の試薬を含む。R1及びR2にとっての他の可能性としては、限定され
るものではないが、抗体捕捉領域、血漿、血液又は粒子の分離器、インキュベーション領域、混合領域、細胞溶解領域、濃縮器、洗浄領域、希釈領域、再懸濁領域、液体もしくは乾燥試薬を有するかもしくは有しない光学的もしくは電気化学的検出ウェルを挙げることができる。試料が計量ウェルからR1に移された後、別の流体栓(図示せず)を用いることにより、又はR1とR2との間の毛細管を疎水性にして栓として作用させることにより、R2への移動が防止される。このような栓は、再び、試料をR1からR2に移動させるために、遠心力などの力を付与することにより破られ得る。再び、親水性栓を用いることにより、又は出口毛細管を疎水性とすることにより、試料がR2から移動することが防止される。反応が完了し、1種又は複数種の分析物の測定がなされた後、試料はR2から取り除かれ、廃棄物
ウェルまで通過することができる。
【0032】
理解され得るように、単一の液体試料において、同時にいずれかの所望数の特性を測定することができる。例えば、尿試料を10本の平行な処理チャネルを含むチップに適用して、硝酸塩、血液、アルブミン、比重、クレアチニン、白血球、pH、グルコース、ケトン及びバクテリアの存在を同時に試験することができる。HbA1c(ヘモグロビンA1c)、PSA、BNP(脳利尿ペプチド)及び高感度CRP(c-反応性タンパク質)について1種の血液試料を分析することができる。もちろん、平行な処理チャネルは同一である必要はなく、異なる分析工程のシーケンスを採用することができる。
【0033】
本発明のマイクロ流体デバイスは、多数の形態を採り得る。後続の分析手順において対象の分析物の正確な測定値を与えることができるように、単一の試料を所定のサイズを有する試料に分割することができる。分析手順は、試料を希釈すること、後続の反応に対してより良好な形態とするように分析物を予備反応させること、干渉成分を取り除くこと、試薬を混合すること、細胞を溶解させること、生物分子を捕捉すること、酵素反応、結合事象のためのインキュベーション、染色又は沈着により、計量された試料を調整する工程を含み得る。このような調整は、試料の計量前、計量中又は計量後、分析物の測定値を得る反応を行う前に、実施することができる。本発明のデバイスの別の形状の議論において、ウェルは乾燥もしくは液体試薬又は調整物質を含むものでもよい。
【0034】
図5は、多数の潜在的な用途を可能とする単一の反応チャネルを示す。計量ウェル12は
、試料を反応ウェルR1に供給し、ここでR1内の試薬による試料の前処理又はR2から供給された試薬との前処理など種々の処理が生じ得る。試料中に含まれる分析物の更なる処理又は検出のために、試料をウェルR3、R4及びR5のいずれかのもの又はすべてに移すことができる。
【0035】
図6〜11は、本発明の可能性のある多くの変形例のいくつかを示す。それぞれにおいて
、計量ウェル12(又は多数のウェル12a以下参照)が含まれ、試料流体の所定容積を試薬
領域に供給する。試薬ウェル領域には、一般に「R」以下参照の符号が付されている。
【0036】
図6において、3種の測定された試料を用いて、試料が処理され又は反応を受けるウェルR1及びR2を供給する。このようなウェルの一つ(12c)は、処理もしくは反応を受けた試
料を第2のウェルに供給するように配置されていることに留意されたい。
【0037】
図7は、R1から供給される液体試薬を有する単一の計量ウェル12を示す。組み合わせら
れた試料及び試薬は、続いて、分析物を検出する反応のために試薬ウェルR2に移される。
図8は、別の例を示す。ここで、試料は計量ウェル12内で計量され、次いで試薬領域R1
に移され、さらに、計量ウェル12a及び12b内の2種の二次試料に分割され、最後に、二次
反応ウェルR2及びR3に移される。
【0038】
図9は、図8と同様の配置であるが、液体試薬を第1の反応ウェルR2に移すための液体試
薬ウェルR1が追加されている配置を示す。
図10は、別の例を示す。ここで、試料は、計量ウェル12内で計量される前に、試薬ウェルR1内で第1の試薬と最初に接触する。続いて、前反応した後の試料は、分析物の検出の
ために試薬ウェルR2に移される。
【0039】
図11は、図9及び図10の特徴を組み合わせた別の変形例を示す。液体試薬は、ウェルR1
から前処理ウェルR2に移され、ここで、計量ウェル12に先立ち、液体試薬は試料と接触する。
【0040】
図12は、図2の変形例である。ここで、第1の反応ウェル13a〜13fは、反応後の試料を多数の副計量ウェル14a〜14f(1〜5)に供給し、続いて副計量ウェルは試料を反応ウェル15a〜15f(1〜5)に供給する。
【0041】
用途
本発明のマイクロ流体デバイスは、多くの用途を有する。分析は、限定するものではないが、血液、尿、水、唾液、髄液、腸液、食物、血漿を含む多数の生物学的流体の試料で行うことができ、血液及び尿が特に興味深い。対象の流体試料を試料ウェル内に沈着させ、続いて、計量ウェル内で分析されるべき量に分割する。計量された試料を対象の分析物、例えばタンパク質、細胞、小さな有機分子又は金属について分析する。このようなタンパク質の例としては、アルブミン、HbA1c、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、CRP、エステラーゼ及びBNPを挙げることができる。分析され得る細胞としては、大腸菌(E. coli)、シュードモナス(pseudomonas)、白血球、赤血球、H. pylori、連鎖球菌(strep a
)、クラミジア(chlamdia)及び単核症(mononucleosis)を挙げることができる。検出
されるべき金属としては、鉄、マンガン、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムを挙げることができる。
【0042】
多くの用途において、試薬と試料との反応により発色される色が測定される。チップ中の小さなウェル内に位置づけられている電極を用いて、試料の電気的測定を行うことも容易である。このような分析の例は、アンペロメトリー(amperometric)、インピドメトリー(impedimetric)、ポテンシオメトリー(potentimetric)検出方法に基づく電気化学
的信号トランスデューサーを含む。例としては、酸化的化学反応及び還元的化学反応の検出、結合事象の検出を挙げることができる。
【0043】
本発明のチップにおいて用いることができる種々の試薬方法がある。試薬は変化を受け、こうして、発生した信号の強度は、臨床被検物中の測定された分析物の濃度に比例する。これらの試薬は、指標色素、金属、酵素、ポリマー、抗体、電気化学的反応成分及び担体上に乾燥付着した種々の他の化学物質を含む。しばしば用いられる担体は、紙類、メンブラン又は種々の試料吸収及び輸送特性を有するポリマーである。これらは、本発明のチップ中の試薬ウェルに導入することができ、試薬片を用いる分析において遭遇していた問題点を解決する。
【0044】
対して、試薬片は、分析物に応答して発色するために必要とされるすべての化学物質を含むためにわずかに1の試薬領域を用いることができる。乾燥試薬片において生じる典型
的な化学反応は、色素結合化学反応、酵素的化学反応、免疫学的化学反応、ヌクレオチド化学反応、酸化的化学反応又は還元的化学反応としてグループ化することができる。いくつかの場合において、最大5種の競合する化学反応及び時機を得た化学反応が試薬層内で
生じており、尿中の血液を検出する方法は単一の試薬内で生じる多数の化学反応の一例である。例えば、分析物検出反応は、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシドによる指標3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンの酸化を触媒するヘモグロビンのペルオキシダーゼ様活性に基づく。同じパッドにおいて、第2の反応が生じて、ジイソプロピルベンゼン
ジヒドロペルオキシドによるアスコルビン酸の酸化を触媒する第二鉄-HETDA錯体の触媒活性に基づいて、アスコルビン酸干渉を取り除く。
【0045】
試薬片中において1種の分析物を測定するために、しばしば、多数の試薬層が用いられ
る。化学試薬系が特異な試薬層に置かれて、クロマトグラフィーや濾過などの反応分離工程を提供する。全血グルコース片は、発色層と干渉する無傷の赤血球を捕捉するために多数の試薬領域をしばしば用いる。免疫クロマトグラフィー片(Immuno-chromatography strips)は、特異な試薬領域内で生じる化学反応で構築される。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)又はアルブミンの検出は、4種の試薬領域を有する片の適用例である。片の先端における第1の試薬は試料適用のためであり、次の試薬領域と重なり、患者の試料(尿)を
第1の試薬領域に移す。次いで、処理された試料を、色発色のために反応体が固定されて
いる第3の試薬を横断して移動させる。この移動は、過剰の被検物を吸収する第4の試薬領域により駆動される。クロマトグラフィー反応は、試験ゾーン又は捕捉ゾーンと呼ばれ、典型的にはニトロセルロースメンブランである第3の試薬領域において生じる。第1及び第2の層において、分析物特異的抗体が被検物中の分析物と反応して、ニトロセルロースメ
ンブランまでクロマトグラフィーにより移される。抗体は、標識としての着色ラテックス粒子と結合する。試料が分析物を含有する場合、試料は標識された抗体と反応する。捕捉ゾーンには第2の抗体がバンド内に固定されていて、分析物が存在する場合には粒子を捕
捉する。着色試験線が形成される。第2の試薬バンドもまた捕捉ゾーン内に固定されてい
て、粒子と反応して色を形成する対照線を割り当てる。対照線における色は、試験系が正確に作動している場合には患者の試料中にhCGが存在しない場合であっても常に形成され
る。
【0046】
上述のアルブミン分析も他の方法によって行うことができる。ヒト血清アルブミン(HSA)、ガンマグロブリン(IgG)及びBence Jones(BJP)タンパク質などのタンパク質を種々の方法で決定することができる。最も簡略な方法は、色素結合であり、色素がタンパク質と結合する際の色素の色の変化に依存する。多数の色素が用いられている。例としては、2(4-ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸[HAPA]、ブロモクレゾールグリーン、ブロ
モクレゾールブルー、ブロモフェノールブルー、テトラブロモフェノールブルー、ピロガロールレッド及びビス(3',3''-ジヨーダイド-4',4''-ジヒドロキシ-5',5''-ジニトロフ
ェニル)-3,4,5,6-テトラブロモスルホンフタレイン色素(DIDNTB)がある。種々の基材
上での電気泳動が用いられて、アルブミンを他のタンパク質から単離し、次いでアルブミン画分を染色し、さらに透明にしてデシトメトリーにかける。ここで用いられる色素の例は、紅赤(ponceau red)、クリスタル・バイオレット、アミドブラックである。低濃度
のタンパク質、すなわち、10 mg/L未満(<10 mg/L)の範囲のアルブミンに対しては、免疫比濁分析(immunonephelometry)などの免疫学的アッセイがしばしば用いられる。
【0047】
このような多工程分析は、所望の分析を行うために適切な試薬を具備する試薬ウェルを有する本発明のチップに移すことができる。
分析物を第1のウェル内の試薬と反応させ、次いで反応した試薬を更なる反応のために
第2のウェルに送る分離工程が可能である。さらに、試薬を第1のウェル内で再懸濁させて、反応のために第2のウェルに移動させることができる。分析物もしくは試薬を第1もしくは第2のウェル内に捕捉することができ、遊離試薬対結合試薬の判定を行うことができる

【0048】
遊離試薬対結合試薬の判定は、多重ゾーン免疫アッセイ及び核酸アッセイに特に有用である。本デバイスに適応され得る種々のタイプの多重ゾーン免疫アッセイがある。免疫クロマトグラフィアッセイの場合、試薬フィルターは分離用ウェル内に置かれ、クロマトグラフィーによる力が作用しないので物理的接触状態であるべき必要がない。免疫アッセイ又はDNAアッセイは、グラム陰性菌(例えば、大腸菌(E. Coli)、エンテロバクター(En
tereobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)、クレブシエラ(Klebsiella))及びグラム陽性菌(例えば、Staphylococcus Aureus、エンテロコッカス(Entereococc))などのバクテリアの検出用に開発することができる。免疫アッセイは、アルブミン、ヘモグロビン、ミオグロビン、α-1-ミクログロブリン、イムノグロブリン、酵素、糖タンパク質
、プロテアーゼ阻害剤及びサイトカインなどのタンパク質及びペプチドの完全なパネルとして開発することができる。例えば、Greenquistの米国特許4,806,311号明細書、“Multizone analytical Element Having Labeled Reagent Concentration Zone”(標識試薬濃
縮ゾーンを有する多重ゾーン分析要素)Feb. 21, 1989;Liottaの米国特許4,446,232号明細書“Enzyme Immunoassay with Two-Zoned Device Having Bound Antigens”(結合抗原を有する2種のゾーンデバイスでの酵素免疫アッセイ), May 1, 1984参照。
【0049】
乾燥した試薬が再溶解される場合の潜在的な用途としては、濾過、沈降分析、細胞溶解、細胞選別(質量差)及び遠心分離を挙げることができる。
固相(例えば、マイクロビーズ)上での試料分析物の豊富化(濃縮)は、感度を改良するために用いることができる。豊富化されたマイクロビーズは、連続遠心分離により分離することができる。多重化を用いて(例えば、平行して及び/又はシーケンスでの種々の試薬チャンバの計量)、各々が規定された別個の結果を与える多チャネルとすることができる。多重化は、多数の計量毛細管ループを含み入口と流体接続されている毛細管アレイあるいは投与チャネル及び/又は計量毛細管ループの各々に接続されている毛細管栓のアレイによりなされ得る。磁力などの二次的力との組み合わせをチップ設計に用いることができる。磁性ビーズなどの粒子は、試薬に対する担体として、分析物などの試料構成物質あるいは干渉物質の捕捉用として、用いられる。密度などの物理特性による粒子の分離(分割分画(split fractionation)に類似する)。
【実施例】
【0050】
実施例1
ダイヤモンドビットドリル及びレーザーを用いて、多チャネルデバイスを環状形状を有するプラスチックチップ内に作った。図2の配置と同様な配置で、6本の反応チャネルを中央の入口ウェルの各側に並べた。入口ウェルは容積37μLを有し、各計量ウェル及び反応
ウェルは容積1μLを有し、廃棄物ウェルは37μLを保持するようにした。毛細管通路は、
幅30μm、深さ30μmとした。ウェル及び毛細管チャネルのすべてをプラズマ活性化又は重合により親水性とした。液体がスペースを満たす際に、各ウェルを通気させて、空気を逃がすようにした。親水性毛細管栓を計量ウェル及び反応ウェルの出口に加えて、十分な遠心力が与えられない限り、接続毛細管通路を通して流れないようにした。20μLの尿試料
を入口ウェル内に置いて、ここから毛細管11に吐出させ、次いで毛細管力により個々の計量ウェル又は反応ウェル12a〜12jに吐出させた。フローを毛細管栓14a〜14jにおいて停止させた。デバイスを3段階に増加する速度でスピン回転させて、液体を計量ウェルから第1の及び第2の反応ウェルに移動させ、最終的に廃棄物ウェルに移動させた。液体を計量ウ
ェルから第1の反応ウェルまでは700 rpmの速度で移動させ、次いで第1の反応ウェルから
第2の反応ウェルまでは1,300 rpmの速度で移動させ、最後に第2の反応ウェルから廃棄物
ウェルまでは2,500 rpmの速度で移動させた。12本のチャネルの各々は、試料液体を計量
ウェルから反応ウェルを通して廃棄物ウェルまで移動させたことがわかった。
【0051】
実施例2
図12は、計量ウェル12a〜12fの各々を用いて試料の一部を5個の反応ウェル、例えば13a〜13fのそれぞれに供給する点を除いて図2と同様である代替形状を示す。これらの反応ウェルのそれぞれから、さらに5種の反応ウェル15a〜15f(1〜5)のそれぞれに5種の追加の部分14a〜14f(1〜5)を計量した。一用途において、12aは2μLの試験体を10μLの溶解バッファを含む13aの反応領域に計量した。米国特許5,258,311号明細書に記載されているように、溶解バッファ内のリチウム塩は赤血球を溶解させ、抗体を糖化されたヘモグロビン
のペプチドと反応させた。5種の追加のアリコート0.3μLを14a(1〜5)により計量して、米国特許5,372,918号明細書に記載されているように免疫試薬の凝集反応の測定によるHbA1c検出用の分離反応領域15a(1〜5)に移した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、10個の試料を分析することができる米国特許出願Ser. No. 10/082,415の分析デバイスを説明する。
【図2】図2は、本発明の改良された分析デバイスの一実施形態を説明する。
【図3】図3は、疎水性及び親水性の毛細管栓を説明する。
【図4】図4は、図2の反応チャネルの一つを示す。
【図5】図5は、予備のウェルを含む単一の反応チャネルを示す。
【図6】図6は、試料が、2個の反応チャンバに供給する3個の計量ウェルに分割される実施形態を示す。
【図7】図7は、試薬が計量ウェルに供給される実施形態を示す。
【図8】図8は、試料が反応して、次いで細かく分割されて、2度目の反応を行う実施形態を示す。
【図9】図9は、反応体が第2チャンバから反応チャンバに供給される、図8の変形例である。
【図10】図10は、計量ウェルに入る前に試料が反応する実施形態を示す。
【図11】図11は、反応体が前反応ウェルに供給される図10の変形例である。
【図12】図12は、各々が計量ウェル及び反応チャンバの第2のセットを供給する多数の計量ウェルに分割された試料を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的流体試料を分析するための多目的マイクロ流体デバイスであって、
(a)試料を受け入れるための少なくとも1個の試料ウェルと;
(b)分析するべき該試料の量を規定するための少なくとも2個の計量ウェルと;
(c)該試料を該試料ウェルから(b)の該少なくとも2個の計量ウェルへ毛細管作用に
より移すための(a)の該少なくとも1個の試料ウェルと連通する毛細管通路と;
(d)該少なくとも2個の計量ウェルの各々と毛細管通路を通して連通する少なくとも1
個の試薬ウェルと;
(e)該少なくとも2個の計量ウェルの各々から該少なくとも1個の試薬ウェルへの該試
料の移動を防止するため(d)の各該毛細管通路内に配設されている毛細管栓と;
(f)場合によっては、毛細管通路を通して該少なくとも1個の試薬ウェル又は該少なくとも2個の計量ウェルの少なくとも1個と流体連通している少なくとも1個の調整ウェルと

(g)場合によっては、該少なくとも1個の試薬ウェルから(a)の該試料の部分を受け
入れるための少なくとも1個の廃棄物ウェルと;
(h)(b)の該計量ウェルから、(d)の該試薬ウェルから、及び(f)の該調整ウェルから、空気を環境中に排気するための十分な通気チャネルと;
を含み、(a)の該試料ウェル、(b)の該計量ウェル、(d)の該試薬ウェル及び(f)の調整ウェル、該通気チャネル及び(e)の該毛細管栓は平坦なディスク上に位置づけられ
ており、毛細管通路は該ディスク内に形成されていて該ウェルを相互に接続し且つ該ウェルを該通気チャネルに接続し、こうして該生物学的流体試料を分析するデバイスを提供する、ことを特徴とする、前記生物学的流体試料分析用多目的マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
(e)の該毛細管栓が親水性栓である、請求項1に記載の多目的デバイス。
【請求項3】
(e)の該毛細管栓が疎水性栓である、請求項1に記載の多目的デバイス。
【請求項4】
(c)の該毛細管通路が毛細管栓を含む、請求項1に記載の多目的デバイス。
【請求項5】
該毛細管通路が、約10〜500μmの幅と、少なくとも5μmの深さと、を有する、請求項1
に記載の多目的デバイス。
【請求項6】
該試料が約0.3〜2.0μLの容積を有する、請求項1に記載の多目的デバイス。
【請求項7】
該試料が、血液、尿、水、唾液、髄液、腸液、食物及び血漿からなる群より選択される、請求項1に記載の多目的デバイス。
【請求項8】
該試料が、タンパク質、細胞、小さな有機分子又は金属について分析される、請求項1
に記載の多目的デバイス。
【請求項9】
該タンパク質が、アルブミン、HbA1c、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、CRP、エステラーゼ及びBNPからなる群より選択される、請求項8に記載の多目的デバイス。
【請求項10】
該細胞が、大腸菌(E. Coli)、シュードモナス(pseudomonas)、白血球、赤血球、 H. pylori、連鎖球菌(strep a)、クラミジア(chlamdia)及び単核症(mononucleosis)からなる群より選択される、請求項8に記載の多目的デバイス。
【請求項11】
該金属が、鉄、マンガン、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムからなる群より選択される、請求項8に記載の多目的デバイス。
【請求項12】
該試料を前調整又は反応させるため該試料ウェルと少なくとも1個の該計量ウェルとの
間に配設されている少なくとも1個の調整ウェル又は試薬ウェル をさらに含む、請求項1
に記載の多目的デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−266453(P2010−266453A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151050(P2010−151050)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【分割の表示】特願2004−565370(P2004−565370)の分割
【原出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】