説明

被検物質の測定方法

【課題】本発明は、皮膚表面に存在する成分を簡易に測定する方法を提供し、非医療従事者が手軽に健康管理するための有効な手段とすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、成分採集部を有し、その成分採集部に皮膚表面から採集した成分を付着させた吸収パッチの成分採集部と分析用試薬を接触させて採集成分中の被検物質と反応させることを特徴とする被検物質の測定方法および、測定された結果を用いることによる、疾病もしくはその発症リスクの判定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面に存在する成分中に存在する被検物質の測定方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、皮膚を通してあらわれる成分を吸収パッチを用いて採取し、簡易に測定することができる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の生理状態を判断する際に、通常は、病院で血液検査などの侵襲的な方法、あるいは、尿の分析などの非侵襲的な方法が用いられる。血液については多成分を分析することが多く、血液組成物を高精度に定量できる機器が備え付けられている。しかし、採血は侵襲的であるため痛みを伴い、患者に苦痛を与える。また、血液サンプルは感染源となりうることより、採血は、病院や検査室に限られ、外来患者には不便で医療費が著しく高くなる。一方で、皮膚表面成分は、非侵襲的に皮膚表面より収集できる上、含有成分種および量は血液に似ているため理想的体液である。
【0003】
本観点より、皮膚表面成分に含まれる分析物をモニターするための方法がいくつか開発されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、いずれにおいても皮膚表面成分の採取方法が困難であり、また、パッチ式を用いた簡易採取法であってもその後の成分の分析においては、成分を抽出してから物理化学的手法を用いるものが多く、簡易に測定できるものはなかった。
【特許文献1】特開2000-287942号公報
【特許文献2】特表平11-501125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記状況に鑑みて、皮膚表面に存在する成分を簡易に測定する方法を提供することを通じて、非医療従事者が手軽に健康管理するための有効な手段を提供とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、皮膚表面に存在する成分を吸収パッチによって採取したのち、分析試薬を用いて被検物質と反応させ、測定する。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)成分採集部を有し、その成分採集部に皮膚表面から採集した成分を付着させた吸収パッチの成分採集部と分析用試薬を接触させて採集成分中の被検物質と反応させることを特徴とする被検物質の測定方法。
(2)皮膚表面から採集した成分が汗由来の成分、皮膚細胞由来の成分、皮膚組織由来の成分から選択された一種以上を含むものであることを特徴とする(1)記載の被検物質の測定方法。
(3)分析用試薬と被検物質との反応が、少なくとも発色を伴うものであり、その比色分析により被検物質を測定することを特徴とする(1)または(2)記載の被検物質の測定方法。
(4)分析用試薬と採集成分中の被検物質との反応が化学反応であることを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載の被検物質の測定方法。
(5)分析用試薬と採集成分中の被検物質との反応が酵素反応であることを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載の被検物質の測定方法。
(6)皮膚表面に存在する成分に酸化酵素を反応させ、生成した過酸化水素を測定することを特徴とする(5)記載の被検物質の測定方法。
(7)皮膚表面に存在する成分に脱水素酵素ならびに酸化型ニコチンアミド補酵素を反応させ、生成した還元型ニコチンアミド補酵素を測定することを特徴とする(5)記載の被検物質の測定方法。
(8)被検物質がグルコース、尿酸、コレステロールから選択されたものであることを特徴とする(1)から(7)のいずれか記載の被検物質の測定方法。
(9)被検物質が乳酸、3−ヒドロキシ酪酸から選択されたものであることを特徴とする(1)から(7)のいずれか記載の被検物質の測定方法。
(10)被検物質がアンモニアであることを特徴とする(1)から(7)のいずれか記載の被検物質の測定方法。
(11)被検物質がグルコースであり、分析用試薬が、少なくともグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、酸化系発色試薬を含む組成物であることを特徴とする(8)記載の被検物質の測定方法。
(12)被検物質が尿酸であり、分析用試薬が、少なくともウリカーゼ、ペルオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、酸化系発色試薬を含む組成物であることを特徴とする(8)記載の被検物質の測定方法。
(13)被検物質がコレステロールであり、分析用試薬が、少なくともコレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、界面活性剤、酸化系発色試薬を含む組成物であることを特徴とする(8)記載の被検物質の測定方法。
(14)被検物質が3−ヒドロキシ酪酸であって、分析用試薬が、少なくとも3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化体)、還元系発色試薬を含む組成物であることを特徴とする(9)記載の被検物質の測定方法。
(15)被検物質が乳酸であって、分析用試薬が、少なくとも乳酸デヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化体)、還元系発色試薬を含むものであることを特徴とする(9)記載の被検物質の測定方法。
(16)被検物質がアンモニアであり、反応がインドフェノール法であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか記載の被検物質の測定方法。
(17)被検物質と分析用試薬と反応させる形態が湿式であり、吸収パッチ中の被検物質に滴下することにより反応させることを特徴とする(1)から(16)のいずれか記載の被検物質の測定方法。
(18)被検物質と分析用試薬と反応させる形態が乾式であり、吸収パッチの成分採集部にあらかじめ分析用試薬層を設ける、あるいは、採集成分を付着させた成分採集部に分析用試薬を含む発色層を接触させることを特徴とする(1)から(16)のいずれか記載の被検物質の測定方法。
(19)被検物質がグルコースである(8)記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、糖尿病もしくはその発症リスクの判定方法。
(20)被検物質が尿酸である(8)記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、通風もしくはその発症リスクの判定方法。
(21)被検物質がコレステロールである(8)記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、動脈硬化もしくはその発症リスクの判定方法。
(22)被検物質が3−ヒドロキシ絡酸である(9)記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、脂肪燃焼度の判定方法。
(23)被検物質が3−ヒドロキシ絡酸である(9)記載の測定方法により測定された結果を用いることによる糖尿病もしくはその発症リスクの判定方法。
(24)被検物質が乳酸である(9)記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、疲労度の判定方法。
(25)被検物質がアンモニアである(10)記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、肝機能低下の判定方法。
(26)成分採集部を有する吸収パッチおよび被検物質分析用試薬からなる(1)〜(18)のいずれか記載の被検物質の測定方法に用いられるキット。
(27)さらに、被検物質と分析用試薬との反応生成物を比色定量するための比色インジケーターを含むことを特徴とする(25)記載のキット。
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚表面に存在する成分中の被検物質の測定方法は、非侵襲的に測定できるうえ、簡易で特別な機器を必要としない。その結果、本発明により、非医療従事者においても簡易に、皮膚表面に存在する成分から被検物質を測定でき、被験者の健康管理に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について説明する。
【0008】
(1)吸収パッチ
本発明で用いる吸収パッチは、少なくとも成分採集部を有するものであり、さらに成分採集部を皮膚に貼付するための粘着部を有することが、吸収パッチを用いて皮膚表面に存在する成分(皮膚表面成分と称する場合もある)を採集する作業を簡易化できるため好ましい。
【0009】
すなわち、粘着部がなくとも、皮膚の採取部位に手またはその他の治具を用いて成分採集部を皮膚に押しつけるなどして密着させ、そのままの状態で少なくとも採集に必要な時間保持すれば、皮膚表面成分を採集することができるが、粘着部を有する吸収パッチであれば、皮膚に貼付することにより密着させることができるためである。
【0010】
成分採集部は、皮膚表面に存在する成分を採集する部位を覆い得る形状、大きさであればよく、具体的には、指先から採取する場合1〜100mm2の指先を覆う大きさであり、好ましくは25〜100mm2の大きさである。粘着部は成分採集部よりも広いシート状からなることが皮膚との密着性の点から好ましい。吸収パッチはその粘着側に成分採集シートを配置することにより構成することができるが、皮膚に貼付するための粘着部が成分採集部まわりに存在することが皮膚との密着性、成分採集効率の点から好ましい。
【0011】
この本発明で用いる吸収パッチは、皮膚表面成分を採取する部位およびその近傍の所望の範囲を吸収パッチにて覆われるように密着し、所望時間(少なくとも採集に必要な時間)経過後に剥離することにより、計測すべき成分を吸収パッチ内に捕集することが可能である。それにより、吸収パッチにて捕集した成分を後に示す例のようにして皮膚表面に含まれる成分を正確に解析することが可能である。
【0012】
本発明で用いる吸収パッチに用いられる成分採集部を構成する素材としては、吸湿性であれば特に制限は無いが、たとえば、綿、カポック、亜麻、大麻、ラミー、絹、羊毛等の天然繊維、ナイロン、テトロン、レーヨン、キュプラ、アセテート、ビニロン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート等の化学繊維をあげることができる。これらは2種以上を組み合わせてもよい。なかでも、皮膚表面成分を効率よく吸収するとともに活性酸素との接触面積が大きいという点から、多孔体であるのが好ましく、繊維質多孔質材は被検液に対する保湿性が高く好ましい。このような多孔体としては例えば濾紙、不織布、織編物、短繊維の集合体があげられる。非繊維性多孔質材としてはメンブレンフィルターが代表的である。その他ゼラチン、ポリビニルアルコール、アガロース、カルボキシメチルセルロース等の親水性ポリマーであってもよい。
【0013】
また、色素の保持性、発色性および被検溶液に対する保液性を高めるために、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドなどの合成樹脂繊維、ガラスファイバー、ナノファイバー(繊維径1000nm以下の繊維)や、パルプまたはコットンなどの天然繊維とを組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明では、濾紙やナノファイバーの不織布がもっとも好ましい。
【0015】
粘着部は基材層と粘着剤層で構成されることが好ましく、基材層の形態としては、シート状、フィルム状等、成分採集部を皮膚に密着させることが可能であれば特に制限はない。また、基材層を構成する素材としては、通常傷用絆創膏等の基材として用いられているものなどが挙げられ、具体的にはポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、アセテートなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0016】
粘着層としては上記基材層の片面に粘着剤が前面一様、又は不存部が点在する様、あるいは線状にうすく塗布された層である。粘着剤としては、例えばゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系、ウレタン系などが挙げられる。上記の他、粘着部には、通常の粘着テープ等を用いることもできる。
【0017】
(2)皮膚表面に存在する成分
皮膚表面には正確には、汗からの成分、皮膚細胞からの成分、皮膚組織からの成分があり、いずれも本発明における採集対象となる。
【0018】
皮膚表面に存在する成分に含有されるものとして代表されるものを表1にまとめた。
【0019】
【表1】

【0020】
(3)分析用試薬
本発明で用いる分析用試薬としては、被検物質と反応した場合、少なくとも発色を伴うものである、すなわち発色分析法により測定できるものであることが、比色測定等簡易な手段で測定できる点で好ましい。上記「少なくとも発色を伴う」は、被検物質が分析用試薬と直接反応する結果、発色するもの、分析用試薬が複数の物質からなる組成物であって、そこに含まれる少なくとも一つの試薬(試薬1)と被検物質が反応して得られる反応生成物と別の試薬(試薬2、一種または2種以上であってよい)が反応する結果、発色するもの、反応生成物と別の試薬(試薬3、4・・・)との反応を順次行う結果、発色するものいずれであっても構わない。
(4)発色分析法
(4−1)発色方法
発色方法としては、被検物質が直接または間接的に色素前駆物質を酸化または還元して色素を形成する化学的な方法の他に、被検物質が酸化酵素と反応し、発生した過酸化水素量を色素を用いて発色させる方法がある。このような方法で測定できる被検物質としては、グルコース、尿酸、コレステロール、アルコール等が挙げられる。また、被検物質が脱水素酵素存在下で酸化型ニコチンアミド補酵素(例えばニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化体(NAD+)など)を還元し、この酸化型ニコチンアミド補酵素が、電子伝達剤を介して色素前駆物質を還元して色素を形成する方法等がある。このような方法で測定できる被検物質としては、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、グルコース、アルコール、グルタミン酸等が挙げられる。
【0021】
また、上記のような酵素を用いる酵素反応の他、インドフェノール法のような酵素を用いない試薬を用いる化学反応により発色させる方法を用いることもできる。このような方法で測定できる被検物質としては、アンモニア、尿素等が挙げられる。本発明はいずれの方法も用いることができ、被検物質に応じて、選択することができる。
【0022】
(4−2)測定方法
測定方法(本発明において「測定方法」は数値を特定する測定方法の他、相対的な多寡を判定する方法、ある範囲に含まれるか否かを判定する判定方法、被検物質の存在の確認の概念も含む)としては、発色展開層の色調または濃度の変化を、あらかじめ測定範囲濃度が判別できるよう着色させた比色インジケーターを用いて目視判定する方法、色調または濃度の変化を、反射光を用いて反射率測定装置で測定し、または、透過光を用いて吸光度測定装置で判定し、試料中の分析対象物質の濃度を測定する方法がある。
本発明では、目視判定、反射率測定が好ましい。
【0023】
(4−3)分析用試薬の具体例
例えば、被検物質がグルコースであるときには、酸化酵素を含む分析用試薬を用いることができ、具体的にはグルコースオキシダーゼ・ペルオキシダーゼ法を使用することができる。その場合には試薬として、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化系発色試薬を用いる。また、上記試薬には採集成分中に含まれるアスコルビン酸等の干渉物質の影響を低減するため、さらにアスコルビン酸オキシダーゼを含有させることが好ましい。試料中のグルコースは、グルコースオキシダーゼにより、グルコノラクトンになり、過酸化水素を発生する。この過酸化水素は、ペルオキシダーゼの作用により酸化系発色試薬から色素を生成する。色素の発色は、グルコース量を反映する。
【0024】
同様にして、被検物質が尿酸であるときには、ウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法、被検物質がコレステロールであるときには、コレステロールオキシダーゼ・ペルオキシダーゼ法を使用することができる。尿酸を被検物質とする場合の試薬は、少なくともウリカーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化系発色試薬を含む組成物を用いる。コレステロールを被検物質とする場合の試薬は、少なくともコレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、酸化系発色試薬を含む組成物を用いる。また、これら試薬には採集成分中に含まれるアスコルビン酸等の干渉物質の影響を低減するため、さらにアスコルビン酸オキシダーゼを含有させることが好ましい。さらに基質と酵素との反応効率向上のために界面活性剤を添加することが好ましく、コレステロールを被検物質とする場合には、特にこの効果が顕著である。これらの分析試薬を用いる場合、酸化酵素の働きにより、試料中の尿酸はアラントインに、コレステロールは、コレステノンに各々なり、過酸化水素を発生する。この過酸化水素は、ペルオキシダーゼの作用により酸化系発色試薬から色素を生成する。色素の発色は、尿酸、コレステロール量を反映する。
【0025】
また、被検物質が乳酸であるときには、脱水素酵素を含む分析用試薬を用いることができ、具体的には乳酸デヒドロゲナーゼ・ジアホラーゼ法を使用することができる。試薬は、少なくとも乳酸デヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化体、還元系発色試薬を含む組成物を用いる。試料中の乳酸は、乳酸デヒドロゲナーゼの存在下でニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化体)を還元し、ジアホラーゼの作用により還元系発色試薬からホルマザン色素を生成する。色素の発色は乳酸量を反映する。
【0026】
同様にして、被検物質が、3−ヒドロキシ酪酸であるときには、3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを使用することができる。試薬は、少なくとも3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化体、還元系発色試薬を含む組成物を用いる。その場合においては、試料中の3−ヒドロキシ酪酸は、3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの存在下でニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化体(NAD+)を還元し、ジアホラーゼの作用により還元系発色試薬からホルマザン色素を生成する。色素の発色は3−ヒドロキシ酪酸量を反映する。
【0027】
また、被検物がアンモニアであるときには、インドフェノール法を用いることができる。その場合には試薬として、フェノール、ペンタシアノニトロシル鉄(III)ナトリウム、次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム等)を用いる。試料中のアンモニアがフェノールとペンタシアノニトロシル鉄(III)ナトリウムを反応させ、ジオキシジフェニルアミンを生成する。さらにアルカリ性としたのち、ジオキシジフェニルアミンを次亜塩素酸ナトリウムで酸化させるとインドフェノールが生成されることにより発色する。この青色の発色は、アンモニアを反映する。
【0028】
また、特開2003-334099号公報に記載されるようなNAD合成酵素を用いた酵素法も用いることができる。
【0029】
(4−4)その他酸化酵素(ペルオキシダーゼ)としては植物起源および動物起源のペルオキシダーゼ(E.C.1.1.1.7)、微生物起源のペルオキシダーゼ(E.C.1.11.1.7)を用いることができる。これらのうちでは、植物起源または微生物起源の非特異性ペルオキシダーゼが好ましい。好ましいペルオキシダーゼの例として西洋わさび、大根から抽出したペルオキシダーゼ、Cochliobolus 属Curvularia属の微生物から抽出したペルオキシダーゼがある。
【0030】
(4−5)酸化系発色試薬
酸化系発色試薬組成物は、a.色原体とカプラーを含み、ペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素により色原体とカプラーが酸化カップリングしてキノンイミン染料を形成して発色する組成物、またはb.ロイコ色素でペルオキシダーゼの存在下に過酸化水素により酸化されて色素になり発色する化合物である。
【0031】
色原体としては、4−アミノアンチピリン、その類似体を用いることができる。カプラーとしては、フェノール、フェノールスルホン酸、ナフトール、ナフトールスルホン酸、その他のフェノール、ナフトール誘導体がある。また、高感度に検出できるものとしてTPM−PS(同人化学研究所(DOJINDO))も用いることができる。
【0032】
ロイコ色素としてはトリアリールイミダゾールロイコ色素、ジアリールロイコ色素、トリアリールモノアシルイミダゾールロイコ色素、トリアリールモノアルキルイミダゾールロイコ色素等がある。
【0033】
なかでも本発明においては、TPM−PS(同人化学研究所(DOJINDO))を用いることが好ましい。
【0034】
(4−6)還元系発色試薬
還元系発色試薬は、水素化物を受容するとホルマザン生成物を生成できるテトラゾリウム塩である。テトラゾリウム塩としては、水溶性のものが好ましく、例えば、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’ビフェニレン]−ビス−[2−(p−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウムクロリド(ニトロブルーテトラゾリウムクロリド:NBT)、3−(p−ヨードフェニル)−2−(p−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H―テトラゾリウムクロリド(INT)、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2H テトラゾリウムブロミド(MTT)、3,3’−(4,4’−ビフェニレン)−ビス(2,5−ジフェニル)−2H−テトラゾリウムクロリド、3,3’−(3−3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)−ビス(2,5−ジフェニル)−2H−テトラゾリウムクロリド、および3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)−ビス[2,5−ビス(p−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウムクロリド]である。
【0035】
なかでも本発明においては、ニトロブルーテトラゾリウムクロリドを用いることが好ましい。
【0036】
(4−7)緩衝液
本発明で用いる分析用試薬は緩衝液を含有させることができる。この緩衝液を含有させることにより、各種酵素の安定化および、酵素反応時のpHを一定に保持できる することができる。緩衝剤の例としては、炭酸塩(炭酸ナトリウムなど)、ホウ酸塩(ホウ酸ナトリウムなど)、リン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなど)、クエン酸塩(クエン酸ナトリウムなど)、グッド緩衝剤などがあり、リン酸塩を用いることが好ましい。
【0037】
(4−8)界面活性剤
本発明でも用いる分析試薬には、界面活性剤を添加してもよい。これらを添加することにより酵素反応時間を短縮でき、発色強度を増大させることができる。界面活性剤としては、水溶性のノニオン、カチオン、アニオン、両性の何れの界面活性剤も用いることができる。ノニオン性界面活性剤としては例えば、ジメチルシクロヘキサンーメチル(ポリオキシエチレン)共重合体、ポリオキシエチレンやポリグルセリンのアルキルアリールエーテル、ショ糖脂肪酸エステルであるn-オクチル-β−D-チオグルコピラノシド等を用いることが好ましい。
【0038】
(4−9)その他
採集成分中には、被検物質を測定する際に干渉する物質が含まれる場合がある。例えば上記コレステロール等、酸化酵素を用いる場合の反応の測定において、採集成分中に含まれるアスコルビン酸等が干渉する場合がある。そのために試薬にはアスコルビン酸オキシダーゼ等を含有させることが好ましい。その他反応試薬中の酵素保存安定化のために、2価の金属イオンを分析用試薬に含有させることができる。
【0039】
(5)分析用試薬と被検物質との接触方法
分析用試薬の形態としては、湿式であっても、乾式であってもよい。
【0040】
湿式の場合には、被検物質もしくは分析用試薬の種類に応じ適当な緩衝剤が含まれることが好ましく、皮膚表面成分を一定時間貼付後、剥離した吸収パッチに適当量滴下し用いる。
【0041】
また、あらかじめ吸収パッチの成分採集部に分析用試薬層(発色層)を設けることができる。その場合には、成分採集部の表面に分析用試薬を付着させておく、吸湿材に分析用試薬を含浸させ、成分採集部の皮膚との接触側もしくは粘着剤側に積層させる、あるいは成分採集部の内部に含浸、その他の方法により分析用試薬を含ませておく、などの方法を採用することができる。その際に、分析用試薬には親水性ポリマーバインダーを含有させてもよい。親水性ポリマーバインダーとしてはポリビニルアルコール、アガロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンがあげられる。
【0042】
乾式の場合には、上記の用に分析用試薬層(発色層)が吸収パッチと一体化しているものの他、採集成分を付着させた成分採集部に分析用試薬を含む発色層を接触させる方法、すなわち吸収パッチを皮膚から剥離したあとに分析用試薬を含む発色シートを成分採集層の皮膚接触面側に接触させて皮膚表面成分と分析用試薬を反応させる形態とすることもできる。この際、分析用試薬の一部を吸収パッチ側に含ませることも可能である。
【0043】
(6)皮膚表面における成分採集時間
本発明において吸収パッチを用いて皮膚表面から成分を採集するのに必要な時間は、被検物質、分析試薬の種類等によって異なるが、通常5分〜24時間、好ましくは30分〜1時間である。
【0044】
(7)キット
本発明において、上記被検物質の測定方法に用いられるキットとしては少なくとも成分採集部を有する吸収パッチおよび被検物質分析用試薬からなる。本発明のキットにはさらに、被検物質と分析用試薬との反応生成物を比色定量するための比色インジケーターを含むことが好ましい。さらにこのキットには測定方法、注意事項等を記載した説明書を含むことが好ましい。
【0045】
(8)用途
本発明によれば、非侵襲的、かつ容易に被験者の皮膚表面に存在する成分中に含まれる被検物質を測定することにより、被験者の健康管理に用いることができる。すなわち、定期的、もしくは随時、被験者の皮膚表面に存在する被検物質を測定することにより、手軽に被検物質の多寡が把握でき、各種疾病の疑い、発症リスクを認識することができ、早期受診、生活の改善等に利用することができる。特に皮膚表面の測定個所、採集時間等、採集条件を一定として、定期的もしくは随時に測定し、もしくはある行動(運動、食事等)の前後に測定して、その値を比較することにより、皮膚表面に被検物質の増え方、減り方の傾向が容易に把握することができる。
【0046】
例えばグルコースは、血糖値が上昇すると同時に皮膚表面グルコース値が上昇すると考えられるので、皮膚表面に存在するグルコースを測定し、その結果を用いることにより、糖尿病もしくはその発症リスクを判定したり、糖尿病患者の病態管理に用いることができる。また、同様に尿酸は、運動後には、血糖値が上昇すると同時に皮膚表面尿酸値が上昇すると考えられるので、これを測定することにより、通風もしくはその発症リスクを判定や痛風患者の尿酸値管理をすることができる。
【0047】
コレステロールは動脈硬化の指標とされており、血中の総コレステロール値と皮脂のコレステロールは相関すると考えられるので、これを測定することにより、動脈硬化もしくはその発症リスクを判定することができる。
【0048】
3−ヒドロキシ酪酸はエネルギー源として糖質が利用されない状況においてその存在量が増加するので、これを被検物質とすることにより、脂肪燃焼の度合いを判定することでき、体重管理をしようとする際の運動量の指針とすることができる。また3−ヒドロキシ絡酸は糖尿病患者の体内インスリン作用の不足程度やケトン体濃度上昇により血液が酸性となるケトアシドーシスを反映する指標として用いられるのでこれを被検物質とすることにより糖尿病(病態の管理も含む)もしくはその発症リスクも判定することができる。
【0049】
さらに乳酸は運動時に検出されることから、これを被検物質とすることにより、疲労度を判定することができ、運動中の乳酸値管理や、疲労度の判定に用いることにより、休息の必要性の判断指標とすることもできる。
【0050】
さらに皮膚表面のアンモニアは、血中アンモニア値と相関があり、肝機能が低下すると血中アンモニア値が上昇し、皮膚表面アンモニア値も増加すると考えられるのでこれを被検物質とすることにより肝機能低下の有無を判定することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)皮膚表面グルコースの測定
10mm×10mmに裁断されたナノファイバー不織布(ポリエステル、平均繊維径130nm、短繊維長51mm、目付100g/m2)(成分採集部)を15mm×15mmの粘着テープ(粘着部)の粘着面中央部に配置して、吸収パッチを作成した。蒸留水で1分間洗浄した指先に上記吸収パッチを貼付することで皮膚表面成分を採取した。食前の空腹時に1時間、食後4時間後に1時間貼付した後、吸収パッチをはがし、皮膚表面成分を採取した成分採集部に分析試薬を滴下することで皮膚表面のグルコース濃度を測定した。滴下量は計 10μLであった。滴下する分析試薬はグルコースオキシダーゼ(クロコウジカビ(Aspergillus niger)由来, シグマ(Sigma)社製)180Units/mL、ペルオキシダーゼ(ホースラディッシュ(horse-radish)由来, ロシュ(Roche)社製)12.5Units/mL、アスコルビン酸オキシダーゼ(カボチャ(Cucurbita sp.)由来, 和光純薬工業(Wako)(株)製)2Units/mL、酸化系発色試薬のN,N,N',N',N",N"-ヘキサ(3-スルホプロピル)-4,4',4",-トリアミノトリフェニルメタンの6ナトリウム塩(N,N,N',N',N",N"-Hexa(3-sulfopropyl) -4,4',4",-triaminotriphenylmethane,hexasodium salt)(TPM−PS、同仁化学研究所(DOJINDO)社製)0.5mg/mL、30mMリン酸ナトリウム(pH7)の緩衝剤1.5mLからなる。分析試薬は前記組成で調製して用いた。分析試薬滴下後3分後に、あらかじめ用意したインジケーターを用いて比色分析を行った。その結果を図1に示す。図1は実施例1における吸収パッチによる皮膚表面グルコースの比色分析図である。
【0053】
なお、インジケーターにおける濃度は汗中の濃度を推定するため、推定発汗量を元に換
算できるように作成したものである。すなわち、インジケーターは、既知濃度の標準液を採集時間から推定される発汗量(使用した成分採集部の面積(100mm2)あたり1時間で10μLの発汗と推定)と同量滴下し、さらに発色試薬を10μL滴下して作成した。以下の検討においても同様の思想でインジケーターを作成し、比色分析を行った。
【0054】
皮膚表面グルコースは空腹時には発色せず、検出限界以下であった。しかし、食後4時間後には、血糖値が上昇すると同時に皮膚表面グルコース値が上昇すると考えられ、約20μMのグルコースが検出できた。糖尿病患者の血糖値は空腹時においても9.4mM以上であり(臨床検査法提要)、皮膚表面成分濃度は27μM以上(特開2003−315340)であるので、本発明を用いて、血糖値の簡易測定手段となりうる。
【0055】
(実施例2)皮膚表面乳酸の測定
10mm×10mmに裁断された濾紙(ホワットマン(Whatman)社製No. 3030917)(成分採集部)を15mm×15mmの粘着テープ(粘着部)の粘着面中央部に配置して、吸収パッチを作製した。蒸留水で1分間洗浄した指先に上記吸収パッチを貼付することで皮膚表面成分を採取した。運動前に10分間、2回の運動中に10分間、運動後に10分間貼付した後、吸収パッチをはがし、皮膚表面成分を採取した成分採集部に分析試薬を滴下することで皮膚表面成分中の乳酸濃度を測定した。滴下量は計10μLであった。滴下する分析試薬は乳酸デヒドロゲナーゼ(豚の心臓(Pig heart)由来, 和光純薬工業(Wako)(株)製)35Units/mL、ジアホラーゼ(クロストリジュウム属(Clostridium kluyveri)由来, Wako社製)74Units/mL、ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(和光純薬工業(Wako)(株)製)1mg/mL、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化体(NAD+,和光純薬工業( Wako)(株)製)1mg/ml、0.02%トライトンX−100(Triton X-100:poly(oxyethylene glycol(9-10))-p-tert-octylphenol)(シグマ(Sigma)社製)、1mMクエン酸ナトリウム(pH5)の緩衝剤1.5mLからなる。分析試薬は前記組成で調製して用いた。分析には、分析試薬滴下後3分後に、あらかじめ用意したインジケーターを用いて比色分析を行った。その結果を図2に示す。図2は実施例2における吸収パッチによる皮膚表面乳酸の比色分析図である。皮膚表面成分中乳酸は運動前には100μM検出されたが、運動時には、500μM以上の乳酸が検出できた。その後、運動終了後に採取した成分からは100μMの乳酸が検出できた。乳酸は、運動時に検出できることから、本発明を用いて運動中の乳酸値管理や、疲労度の指標になりうる。
【0056】
(実施例3)皮膚表面アンモニアの測定
10mm×10mmに裁断されたナノファイバー不織布(ポリエステル、平均繊維径130nm、短繊維長51mm、目付100g/m2)(成分採集部)を15mm×15mmの粘着テープ(粘着部)の粘着面中央部に配置して、吸収パッチを作製した。蒸留水で1分間洗浄した指先に上記吸収パッチを貼付することで皮膚表面成分を採取した。安静時に10分間、30分間、1時間と貼付した後、吸収パッチをはがして皮膚表面成分を採取した成分採取部に分析試薬を滴下することで皮膚表面のアンモニア濃度を測定した。滴下する分析試薬はアンモニアEテストワコー(和光純薬工業(Wako)(株)製、フェノール、ペンタシアノ二トロシル鉄(III)ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムからなるキット)を用い、発色試薬をフェノール、ペンタシアノ二トロシル鉄(III)ナトリウム、水酸化カリウム、次亜鉛素酸ナトリウムを順番に滴下した。滴下量は、5μL、5μL、10μLであった。分析には、分析試薬滴下後5分後に、あらかじめ用意したインジケーターを用いて比色定量を行った。その結果を図3に示す。図3は実施例3における吸収パッチによる皮膚表面アンモニアの比色分析図である。皮膚表面アンモニアは10分の採取では検出限界以下であったが、30分採取では、200μM以上のアンモニアが検出でき、1時間の採取では、400μM以上のアンモニアが検出できた。皮膚表面アンモニア値は、血中アンモニア値と相関があり、肝機能が低下すると血中アンモニア値が上昇し、皮膚表面アンモニア値も増加すると考えられるので、本発明を用いて、簡易肝機能管理の手段となりうる。
【0057】
(実施例4)皮膚表面尿酸の測定
10mm×10mmに裁断されたナノファイバー不織布(ポリエステル、平均繊維径130nm、短繊維長51mm、目付100g/m2)(成分採集部)を15mm×15mmの粘着テープ(粘着部)の粘着面中央部に配置して、吸収パッチを作成した。蒸留水で1分間洗浄した指先に上記吸収パッチを貼付することで皮膚表面成分を採取した。運動前に1時間、30分の運動後に1時間貼付した後、吸収パッチをはがし、皮膚表面成分を採取したナノファイバーに分析試薬を滴下することで皮膚表面の尿酸濃度を測定した。滴下量は計10μLであった。滴下する分析試薬はウリカーゼ(カンジダ(Candida sp.)由来, 和光純薬工業(Wako)(株)製)4.2Units/mL、ペルオキシダーゼ(ホースラディッシュ(Horse−radish)由来, ロシュ(Roche)社製)12.5Units/mL、アスコルビン酸オキシダーゼ(カボチャ(Cucurbita sp.)由来,和光純薬工業( Wako)(株)製)2Units/mL、酸化系発色試薬TPM−PS(同仁化学研究所(DOJINDO)社製)0.5mg/mL、30mMリン酸ナトリウム(pH7)の緩衝剤1.5mLからなる。分析試薬は前記組成で調製して用いた。分析には、分析試薬滴下後3分後に、あらかじめ用意したインジケーターを用いて比色分析を行った。その結果を図4に示す。図4は実施例4における吸収パッチによる皮膚表面尿酸の比色分析図である。皮膚表面尿酸は運動前には発色せず、検出限界以下であった。しかし、運動後には、血糖値が上昇すると同時に皮膚表面尿酸値が上昇すると考えられ、皮膚表面より約2mg/dLの尿酸が検出できた。本発明において、痛風患者の尿酸値管理の簡易測定法になりうる。
【0058】
(実施例5)皮膚表面3−ヒドロキシ酪酸の測定
10mm×10mmに裁断されたナノファイバー不織布(ポリエステル、平均繊維径130nm、短繊維長51mm、目付100g/m2)(成分採集部)を15mm×15mmの粘着テープ(粘着部)の粘着面中央部に配置して、吸収パッチを作成した。蒸留水で1分間洗浄した指先に上記吸収パッチを貼付することで成分を採取した。運動前に30分間、運動後に30分間貼付した後、吸収パッチをはがし、皮膚表面成分を採取したナノファイバーに分析試薬を滴下することで皮膚表面の3−ヒドロキシ酪酸濃度を測定した。滴下量は計10μLであった。滴下する分析試薬は3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(シュードモナス属(Psedomonas sp.)由来,和光純薬工業 (Wako)(株)製)16Units/mL、ジアホラーゼ(クロストリジュウム属(Clostridium kluyveri)由来, 和光純薬工業(Wako)(株)製)74Units/mL、ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(和光純薬工業(Wako)(株)製)1mg/mL、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化体(NAD+, 和光純薬工業(Wako)(株)製)1mg/ml、0.02%トライトンX−100(Triton X-100(シグマ(Sigma)社製)、1mMクエン酸ナトリウム(pH5)の緩衝液1.5mLからなる。分析試薬は前記組成で調製して用いた。分析には、分析試薬滴下後3分後に、あらかじめ用意したインジケーターを用いて比色分析を行った。その結果を図5に示す。図5は実施例5における吸収パッチによる皮膚表面3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの比色分析図である。皮膚表面3−ヒドロキシ酪酸は運動前には検出限界以下であったが、運動後には、0.25mg/dlの3−ヒドロキシ酪酸が検出できた。3−ヒドロキシ酪酸は脂肪燃焼時に検出できることから、ダイエットの指標となりうる。
【0059】
(実施例6)皮膚表面コレステロールの測定
10mm×10mmに裁断されたナノファイバー不織布(ポリエステル、平均繊維径130nm、短繊維長51mm、目付100g/m2)(成分採集部)に20%n-オクチル-β-D−チオグルコシド(同人化学研究所(DOJINDO)社製)水溶液を5μL滴下して風乾させ、15mm×15mmの粘着テープ(粘着部)の粘着面中央部に配置して、吸収パッチを作成した。蒸留水で1分間洗浄した指先に上記吸収パッチを貼付することで皮膚表面成分を採取した。食前の空腹時に30分、食後4時間後に30分貼付した後、吸収パッチをはがし、皮膚表面成分を採取したナノファイバーに分析試薬を滴下することで皮膚表面成分のコレステロール濃度を測定した。滴下量は計10μLであった。滴下する分析試薬はコレステロールオキシダーゼ(シュードモナス属(Pseudomonas sp.)由来, 和光純薬工業(Wako)(株)製)35Units/mL、コレステロールエステラーゼ(シュードモナス属(Pseudomonas sp.)由来, 和光純薬工業(Wako)(株)製)18Units/mL、ペルオキシダーゼ(ホースラディッシュ(Horse−radish)由来,和光純薬工業(Wako)(株)製)12.5Units/mL、アスコルビン酸オキシダーゼ(カボチャ(Cucurbita sp.)由来, 和光純薬工業(Wako)(株)製)2Units/mL、酸化系発色試薬TPM−PS(同人化学研究所(DOJINDO)社製)0.5mg/mL、30mMリン酸ナトリウム(pH7)の緩衝液1.5mLからなる。分析試薬は前記組成で調製して用いた。分析には、分析試薬滴下後3分後に、あらかじめ用意したインジケーターを用いて比色分析を行った。その結果を図6に示す。図6は実施例6における吸収パッチによる皮膚表面コレステロールの比色分析図である。皮膚表面コレステロールは空腹時には5mg/dlであった。しかし、食後4時間後には、血中値が上昇すると同時に皮膚表面コレステロール値が上昇すると考えられ、皮膚表面より約10mg/dLのコレステロールが検出できた。動脈硬化の指標となるコレステロールは、血中の総コレステロール値と皮脂のコレステロールは相関すると考えられるので、本発明において簡易にコレステロール測定ができ、動脈硬化の簡易測定法となりうる。
【0060】
(実施例7)乾式皮膚表面乳酸の測定
PET製支持体上に吸湿性ポリマーとしてゼラチンを塗布し乾燥させた。さらに、分析用試薬を積層し乾燥させた。分析試薬は乳酸デヒドロゲナーゼ(豚の心臓(Pig heart)由来,和光純薬工業(Wako)(株)製)35Units/mL、ジアホラーゼ(クロストリジュウム(Clostridium kluyveri)由来,和光純薬工業(Wako)(株)製)74Units/mL、テトラニトロゾリウムクロリド(和光純薬工業(Wako)(株)製)1mg/mL、1mMクエン酸ナトリウム、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化体(NAD+, 和光純薬工業(Wako)(株)製)1mg/ml、0.02%トライトンX−100(Triton X-100(シグマ(Sigma)社製)からなる。粘着剤としてゼラチンを塗布したあとナノファイバー不織布(ポリエステル、平均繊維径130nm、短繊維長51mm、目付100g/m2)を圧着させ、分析試薬を備えた吸収パッチとした。運動前に10分間、2回の運動中に10分間、運動後に10分間貼付した後、剥離しインジケーターを用いて皮膚表面成分中の乳酸濃度を測定した。その結果を図7に示す。図7は実施例7における吸収パッチによる皮膚表面乳酸の比色分析図である。皮膚表面成分中乳酸は運動前、運動終了後には0.1mM検出されたが、運動時には、0.5mM以上の乳酸が検出できた。乳酸は、運動時に検出できることから、本発明を用いて運動中の乳酸値管理や、疲労度の指標になりうる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
皮膚表面に存在する成分を吸収用パッチにより採集し、採取した吸収パッチに測定用試薬を滴下することにより皮膚表面成分中被検物質を簡便に分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1における吸収パッチによる皮膚表面グルコースの比色分析図である。
【図2】実施例2における吸収パッチによる皮膚表面乳酸の比色分析図である。
【図3】実施例3における吸収パッチによる皮膚表面アンモニアの比色分析図である。
【図4】実施例4における吸収パッチによる皮膚表面尿酸の比色分析図である。
【図5】実施例5における吸収パッチによる皮膚表面3−ヒドロキシ酪酸の比色分析図である。
【図6】実施例6における吸収パッチによる皮膚表面コレステロールの比色分析図である。
【図7】実施例7における吸収パッチによる乾式皮膚表面乳酸の比色分析図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分採集部を有し、その成分採集部に皮膚表面から採集した成分を付着させた吸収パッチの成分採集部と分析用試薬を接触させて採集成分中の被検物質と反応させることを特徴とする被検物質の測定方法。
【請求項2】
皮膚表面から採集した成分が汗由来の成分、皮膚細胞由来の成分、皮膚組織由来の成分から選択された一種以上を含むものであることを特徴とする請求項1記載の被検物質の測定方法。
【請求項3】
分析用試薬と被検物質との反応が、少なくとも発色を伴うものであり、その比色分析により被検物質を測定することを特徴とする請求項1または2記載の被検物質の測定方法。
【請求項4】
分析用試薬と採集成分中の被検物質との反応が化学反応であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の被検物質の測定方法。
【請求項5】
分析用試薬と採集成分中の被検物質との反応が酵素反応であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の被検物質の測定方法。
【請求項6】
皮膚表面に存在する成分に酸化酵素を反応させ、生成した過酸化水素を測定することを特徴とする請求項5記載の被検物質の測定方法。
【請求項7】
皮膚表面に存在する成分に脱水素酵素ならびに酸化型ニコチンアミド補酵素を反応させ、生成した還元型ニコチンアミド補酵素を測定することを特徴とする請求項5記載の被検物質の測定方法。
【請求項8】
被検物質がグルコース、尿酸、コレステロールから選択されたものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の被検物質の測定方法。
【請求項9】
被検物質が乳酸、3−ヒドロキシ酪酸から選択されたものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の被検物質の測定方法。
【請求項10】
被検物質がアンモニアであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の被検物質の測定方法。
【請求項11】
被検物質がグルコースであり、分析用試薬が、少なくともグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、酸化系発色試薬を含む組成物であることを特徴とする請求項8記載の被検物質の測定方法。
【請求項12】
被検物質が尿酸であり、分析用試薬が、少なくともウリカーゼ、ペルオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、酸化系発色試薬を含む組成物であることを特徴とする請求項8記載の被検物質の測定方法。
【請求項13】
被検物質がコレステロールであり、分析用試薬が、少なくともコレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、界面活性剤、酸化系発色試薬を含む組成物であることを特徴とする請求項8記載の被検物質の測定方法。
【請求項14】
被検物質が3−ヒドロキシ酪酸であって、分析用試薬が、少なくとも3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化体)、還元系発色試薬を含む組成物であることを特徴とする請求項9記載の被検物質の測定方法。
【請求項15】
被検物質が乳酸であって、分析用試薬が、少なくとも乳酸デヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化体)、還元系発色試薬を含むものであることを特徴とする請求項9記載の被検物質の測定方法。
【請求項16】
被検物質がアンモニアであり、反応がインドフェノール法であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の被検物質の測定方法。
【請求項17】
被検物質と分析用試薬と反応させる形態が湿式であり、吸収パッチ中の被検物質に滴下することにより反応させることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項記載の被検物質の測定方法。
【請求項18】
被検物質と分析用試薬と反応させる形態が乾式であり、吸収パッチの成分採集部にあらかじめ分析用試薬層を設ける、あるいは、採集成分を付着させた成分採集部に分析用試薬を含む発色層を接触させることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項記載の被検物質の測定方法。
【請求項19】
被検物質がグルコースである請求項8記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、糖尿病もしくはその発症リスクの判定方法。
【請求項20】
被検物質が尿酸である請求項8記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、通風もしくはその発症リスクの判定方法。
【請求項21】
被検物質がコレステロールである請求項8記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、動脈硬化もしくはその発症リスクの判定方法。
【請求項22】
被検物質が3−ヒドロキシ絡酸である請求項9記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、脂肪燃焼度の判定方法。
【請求項23】
被検物質が3−ヒドロキシ絡酸である請求項9記載の測定方法により測定された結果を用いることによる糖尿病もしくはその発症リスクの判定方法。
【請求項24】
被検物質が乳酸である請求項9記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、疲労度の判定方法。
【請求項25】
被検物質がアンモニアである請求項10記載の測定方法により測定された結果を用いることによる、肝機能低下の判定方法。
【請求項26】
成分採集部を有する吸収パッチおよび被検物質分析用試薬からなる請求項1〜18のいずれか1項記載の被検物質の測定方法に用いられるキット。
【請求項27】
さらに、被検物質と分析用試薬との反応生成物を比色定量するための比色インジケーターを含むことを特徴とする請求項25記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−127422(P2007−127422A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317782(P2005−317782)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】