説明

被破壊センサ

【課題】インバータユニットのケースの変形を迅速に検出可能な被破壊センサを提供することを課題とする。
【解決手段】被破壊センサ1は、センサ取付面とセンサ押圧面との間に介装され、母材が樹脂であって脆性および導電性を併有する被破壊部と、被破壊部とセンサ取付面との間に介装され、センサ取付面との間に被破壊部が破壊される際のストロークを確保する複数の支持部と、を有する被破壊部材を備える。被破壊センサは、外部からケースに荷重が入力される際、センサ取付面とセンサ押圧面との間の間隔が短くなり、センサ取付面に支持部が当接した状態で、センサ押圧面から押圧力が加わることにより被破壊部が破壊され、被破壊部の破壊前後において電気抵抗が変化することを基に、ケースの変形を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車などのインバータユニットに配置され、自身が破壊されることにより、インバータユニットのケースの変形を検出する被破壊センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハイブリッド自動車用のインバータユニットは、ケースとインバータ回路とを備えている。インバータ回路は、昇圧コンバータとインバータとを備えている。このうち、昇圧コンバータは、メインバッテリの直流を所定の電圧値まで昇圧している。また、インバータは、昇圧された直流を交流に変換している。インバータ回路はケースに収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−132753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータ回路には、比較的高圧の電流が流れている。例えば、昇圧コンバータの昇圧側には、650ボルト程度の直流電流が流れている。このため、事故などによりインバータユニットが破損した場合、例えばインバータ回路の通電を遮断するなどの対策をとる必要がある。外部から入力される荷重によりインバータユニットが破損する場合は、ケース内部に収容されている部材に先駆けて、いち早くケースが変形する。したがって、インバータユニットの破損を迅速に検出するためには、ケースの変形を迅速に検出できる手段が必要になる。
【0005】
この点、特許文献1には、窓ガラスの破壊検出方法が開示されている。窓ガラスの室内側の表面には、錠を中心に、導電性ワイヤが一筆書状に貼り付けられている。窓ガラスが破壊されると、導電性ワイヤが断線する。同文献記載の破壊検出方法によると、当該断線を基に、窓ガラスの破壊を検出している。
【0006】
しかしながら、同文献記載の破壊検出方法によると、窓ガラスに直に導電性ワイヤが貼り付けられている。このため、窓ガラスから独立して、選択的に導電性ワイヤだけを破壊することは困難である。すなわち、導電性ワイヤは、窓ガラスの破壊と同時に(あるいは窓ガラスの破壊後に)断線する。導電性ワイヤは、窓ガラスの破壊に先駆けて断線することはできない。このため、仮に、導電性ワイヤによりインバータユニットのケースの変形を検出しようとしても、ケースが破壊され導電性ワイヤが断線するまでは、ケースの変形を検出することができない。つまり、ケースの変形を迅速に検出することができない。
【0007】
本発明の被破壊センサは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、インバータユニットのケースの変形を迅速に検出可能な被破壊センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の被破壊センサは、車両のインバータユニットのケースの内面と、該ケースの内部において該内面に対向する対向面と、のうち、一方をセンサ取付面、他方をセンサ押圧面として、該センサ取付面と該センサ押圧面との間に介装され、母材が樹脂であって脆性および導電性を併有する被破壊部と、該被破壊部と該センサ取付面との間に介装され、該センサ取付面との間に該被破壊部が破壊される際のストロークを確保する複数の支持部と、を有する被破壊部材を備え、外部から該ケースに荷重が入力される際、該センサ取付面と該センサ押圧面との間の間隔が短くなり、該センサ取付面に該支持部が当接した状態で、該センサ押圧面から押圧力が加わることにより該被破壊部が破壊され、該被破壊部の破壊前後において電気抵抗が変化することを基に、該ケースの変形を検出することを特徴とする。
【0009】
ここで、被破壊部の有する「脆性」とは、一般的に脆性材料といわれている、ガラス、セラミックスなどの有する脆性と、同等の脆性をいう。本発明の被破壊センサによると、被破壊部の母材が樹脂である。このため、被破壊部の形状に対する自由度が高い。したがって、線状は勿論、帯状や面状の被破壊部を簡単に作製することができる。帯状や面状の被破壊部を配置すると、広い面積に亘ってケースの変形を検出することができる。このため、検出漏れが発生しにくくなる。
【0010】
また、インバータユニットに荷重が入力される場合、いち早く変形するのはケースである。この点、本発明の被破壊センサによると、ケースの内面を、センサ取付面またはセンサ押圧面として利用している。このため、ケースの変形を迅速に検出することができる。
【0011】
また、本発明の被破壊センサは、複数の支持部を備えている。荷重が入力される際、複数の支持部は、センサ取付面に対して、被破壊部を、浮いた状態で支持している。このため、センサ取付面と被破壊部との間に、被破壊部の破壊に必要なストロークを確保することができる。
【0012】
また、被破壊部は、脆性を有している。このため、被破壊部の破壊に必要なストロークが短くて済む。したがって、被破壊センサの荷重伝達方向の肉厚を薄くすることができる。よって、インバータユニットのケース内における、センサ設置スペースを小さくすることができる。また、インバータユニットのケース内における、被破壊センサの配置の自由度が高くなる。
【0013】
また、被破壊部が脆性を有しているため、ケースの変形に伴いセンサ押圧面から加えられる荷重により、被破壊部は迅速に破壊される。したがって、実際の変形に対する被破壊センサの応答遅れが小さくなる。また、被破壊部が脆性を有しているため、ケースの、破壊に至る変形は勿論、破壊に至らない変形も迅速に検出することができる。
【0014】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記ケースは、金属製のケース本体と、該ケース本体の内面に積層される絶縁材製の絶縁シートと、を備え、前記センサ取付面は、該絶縁シートの内面である構成とする方がよい。本構成によると、絶縁シートにより、被破壊センサと、ケース本体と、の間の導通を遮断することができる。
【0015】
(1−2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記ケースの内部には、前記対向面を有するブラケットが配置される構成とする方がよい。本構成によると、内面を有するケースの壁部と、対向面を有するブラケットと、が対向して配置されている。また、被破壊センサは、壁部とブラケットとの間に介装されている。このため、外部からケースに荷重が入力され、壁部とブラケットとが近接することにより、被破壊センサの被破壊部を破壊することができる。
【0016】
また、壁部に対するブラケットの位置、ブラケットの荷重入力方向の剛性などを調整することにより、検出感度を調整することができる。例えば、壁部に対してブラケットを離間して配置すると、荷重入力時に、センサ押圧面が被破壊部に到達しにくくなる。このため、検出感度が低くなる。反対に、壁部に対してブラケットを近接して配置すると、荷重入力時に、センサ押圧面が被破壊部に到達しやすくなる。このため、検出感度が高くなる。
【0017】
また、ブラケットの荷重入力方向の剛性を低くすると、荷重入力時にブラケットが変形しやすくなる。このため、被破壊部が破壊されにくくなる。したがって、検出感度が低くなる。反対に、ブラケットの荷重入力方向の剛性を高くすると、荷重入力時にブラケットが変形しにくくなる。このため、被破壊部が破壊されやすくなる。したがって、検出感度が高くなる。
【0018】
(1−3)好ましくは、上記(1)の構成において、前記被破壊部の固有振動数は、車両のエンジンの二次振動の周波数を超過するように設定されている構成とする方がよい。エンジン駆動時においては、一次振動と共に、一次振動の周波数の2(nは自然数)倍の周波数の、高次の振動が発生する。ここで、振動のエネルギは、低次になるほど(周波数が低くなるほど)、大きくなる。このため、被破壊部の固有振動数がエンジンの二次振動の周波数以下の場合、被破壊部がエンジンに共振しやすくなる。したがって、被破壊部に不具合が起こるおそれがある。
【0019】
この点、本構成によると、被破壊部の固有振動数がエンジンの二次振動の周波数を超過するように設定されている。このため、被破壊部がエンジンに共振しにくくなる。より好ましくは、上記(1)の構成において、前記被破壊部の固有振動数は、車両のエンジンの三次振動の周波数を超過するように設定されている構成とする方がよい。こうすると、さらに被破壊部がエンジンに共振しにくくなる。
【0020】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記被破壊部材は、複数の前記支持部のうち少なくとも一つと、前記被破壊部と、を有する一体物の被破壊体を備える構成とする方がよい。
【0021】
本構成によると、全ての支持部が被破壊部と別体である場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、全ての支持部と被破壊部との接合が不要な分、被破壊センサの組付工数が少なくなる。また、被破壊センサの製造コストを削減することができる。
【0022】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、複数の前記支持部のうち少なくとも一つは、前記被破壊部の前記電気抵抗に関する電気量を出力する端子である構成とする方がよい。
【0023】
本構成によると、端子を支持部として用いることができる。このため、端子を支持部として用いない場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、被破壊センサの製造コストを削減することができる。
【0024】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記被破壊部は、自身の破壊を誘起するノッチを有する構成とする方がよい。本構成によると、被破壊部が破壊されやすくなる。このため、ケースの変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。また、被破壊部における破壊箇所を、ノッチ付近に誘導することができる。このため、複数の被破壊センサ間において、検出感度のばらつきが小さくなる。また、被破壊部が複数配置されている場合は、複数の被破壊部間において、検出感度のばらつきが小さくなる。
【0025】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記被破壊部は、前記母材中に充填される導電性フィラーを有する構成とする方がよい。本構成によると、導電性フィラーの形状、大きさ、充填量などにより、被破壊部の脆性、導電性を調整することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、インバータユニットのケースの変形を迅速に検出可能な被破壊センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態である被破壊センサが配置された車両の左側面透過図である。
【図2】同被破壊センサの斜視図である。
【図3】同被破壊センサの左右方向断面図である。
【図4】図3の枠IV内の拡大図である。
【図5】図3の枠V内の拡大図である。
【図6】同被破壊センサの被破壊部の荷重伝達時の左右方向断面図である。
【図7】同被破壊部の破壊完了時の左右方向断面図である。
【図8】被破壊部の押し込まれ量と被破壊センサの電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図9】被破壊センサのノッチ付近の断面図である。
【図10】その他の被破壊センサの左右方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の被破壊センサの実施の形態について説明する。
【0029】
[被破壊センサの配置]
まず、本実施形態の被破壊センサの配置について説明する。図1に、本実施形態の被破壊センサが配置された車両の左側面透過図を示す。図1に示すように、車両9のサイドメンバ90には、インバータユニット91が取り付けられている。
【0030】
インバータユニット91は、インバータ回路910とケース911とブラケット912とを備えている。ケース911は、ケース本体911cと、絶縁シート911dと、を備えている。ケース本体911cは、アルミニウム合金製であって、箱状を呈している。絶縁シート911dは、絶縁性を有するエラストマー製であって、ケース本体911cの前壁911bの後面に積層されている。絶縁シート911dの後面は、本発明のケースの「内面」の概念に含まれる。絶縁シート911dの後面は、センサ押圧面911aである。
【0031】
インバータ回路910は、ケース本体911cの内部に収容されている。インバータ回路910は、図示しない昇圧コンバータとインバータとを備えている。ブラケット912は、絶縁性を有する樹脂製であって、立壁状を呈している。ブラケット912は、ケース本体911cの内部に収容されている。ブラケット912は、絶縁シート911dと、インバータ回路910と、の間に介装されている。
【0032】
被破壊センサ1は、ケース本体911cの内部に収容されている。被破壊センサ1は、ブラケット912の前面に取り付けられている。ブラケット912の前面は、本発明の「対向面」の概念に含まれる。ブラケット912の前面は、センサ取付面912aである。被破壊センサ1は、絶縁シート911dのセンサ押圧面911aに当接している。
【0033】
[被破壊センサの構成]
次に、本実施形態の被破壊センサの構成について説明する。図2に、本実施形態の被破壊センサの斜視図を示す。図3に、同被破壊センサの左右方向(長手方向)断面図を示す。
図2、図3に示すように、被破壊センサ1は、被破壊部材2を備えている。被破壊部材2は、被破壊体20と、端子21L、21Rと、を備えている。被破壊体20は、全体として左右方向に延在する平板状を呈している。被破壊体20の母材はエポキシ樹脂である。母材には、カーボンビーズが充填されている。エポキシ樹脂は、本発明の「樹脂」の概念に含まれる。カーボンビーズは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。被破壊体20全体を100体積%として、カーボンビーズは45体積%配合されている。被破壊体20は、射出成形品の一体物である。被破壊体20は、ケース911の絶縁シート911dのセンサ押圧面911aに当接している。被破壊体20は、五つの支持部200a〜200eと、四つの被破壊部201a〜201dと、を備えている。
【0034】
支持部200a〜200eは、各々、角柱状を呈している。支持部200a〜200eは、センサ取付面912aの前方に配置されている。支持部200a〜200eは、所定間隔ずつ離間して、左右方向に並んでいる。支持部200a〜200eは、センサ取付面912aから前方に離間している。
【0035】
被破壊部201a〜201dは、各々、平板状を呈している。被破壊部201aは支持部200aと支持部200bとの間に、被破壊部201bは支持部200bと支持部200cとの間に、被破壊部201cは支持部200cと支持部200dとの間に、被破壊部201dは支持部200dと支持部200eとの間に、各々、架設されている。
【0036】
被破壊部201a〜201dの後面中央には、各々、ノッチ202a〜202dが凹設されている。図4に、図3の枠IV内の拡大図を示す。ノッチ202bは、被破壊部201bの後面に形成されている。ノッチ202bは、上下方向(短手方向)に延在するV字溝状を呈している。なお、ノッチ202a、202c、202dの形状は、ノッチ202bの形状と同様である。
【0037】
図5に、図3の枠V内の拡大図を示す。図2、図3、図5に示すように、端子21Lは、金属製であって、全体としてクランク状に曲がった板状を呈している。端子21Lは、被破壊体20の左端に配置されている。端子21Lは、被破壊体20を支持している。すなわち、端子21Lは、本発明の「支持部」の概念に含まれる。端子21Lは、固定端部210Lと埋設端部211Lとを備えている。固定端部210Lには、固定溝部210Laが形成されている。固定溝部210Laは、左方に開口するU字状を呈している。固定溝部210Laには、スクリュー810Lが挿入されている。スクリュー810Lの胴部には、配線811Lの目玉部811Laが環装されている(図2、図5参照)。スクリュー810Lにより、固定端部210Lつまり端子21Lは、ブラケット912のセンサ取付面912aに固定されている。また、スクリュー810Lにより、端子21Lと配線811Lとは接続されている。
【0038】
埋設端部211Lは、固定端部210Lの右前方向に、一段突出して、配置されている。埋設端部211Lは、被破壊体20の左端に、部分的に埋設されている。なお、端子21Rの構成は、端子21Lの構成と同様である。端子21Rの配置は、端子21Lの配置と左右対称である。端子21Rは、被破壊体20を支持している。すなわち、端子21Rは、本発明の「支持部」の概念に含まれる。スクリュー810Rにより、端子21Rは、ブラケット912のセンサ取付面912aに固定されている。また、スクリュー810Rにより、端子21Rと配線811Rとは接続されている。配線811L、811Rは、制御装置(図略)に電気的に接続されている。制御装置の記憶部には、検出しきい値(電気抵抗)が格納されている。
【0039】
端子21L、21Rと被破壊体20とは、インサート成形により一体化されている。すなわち、まず、射出成形型のキャビティ内に埋設端部211Lが部分的に突出した状態で、端子21L、21Rを配置し、次に、当該キャビティ内に原料を注入し、被破壊体20を射出成形することにより、端子21L、21Rと被破壊体20とは一体化されている。
【0040】
[被破壊センサの動き]
次に、本実施形態の被破壊センサ1の動きについて説明する。図6に、本実施形態の被破壊センサの被破壊部の荷重伝達時の左右方向断面図を示す。図7に、同被破壊部の破壊完了時の左右方向断面図を示す。図8に、被破壊部の押し込まれ量と被破壊センサの電気抵抗との関係をグラフで示す。なお、図6、図7に示す部分は、図4の枠IV内に対応する部分である。
【0041】
図6、図7に示すように、荷重F1は、前方からケース本体911c、絶縁シート911dに入力される。絶縁シート911dのセンサ押圧面911aは、前方から被破壊体20の被破壊部201bを押圧する。このため、図3に示す支持部200a〜200eは、ブラケット912のセンサ取付面912aに押しつけられる。図6に誇張して示すように、押圧された被破壊部201bは、支持部200bと支持部200cとの間で、後方に膨らむように撓む。つまり、被破壊部201bは、支持部200b、200cにより確保されるストロークS1を消費しながら撓む。このため、被破壊部201bの後面には、左右方向に引張力F2が作用する。したがって、ノッチ202bの溝底に荷重が集中する。
【0042】
ここで、被破壊体20は、カーボンビーズを含むエポキシ樹脂製である。このため、被破壊体20は脆い。したがって、荷重により、ノッチ202bの溝底には、前方に向かってクラックC1が発生する。クラックC1が被破壊部201bの前面まで進展すると、図7に示すように、被破壊部201bが破断する。
【0043】
被破壊体20が破断すると、図3に示す端子21L、21R間の電気抵抗が無限大になる。すなわち、図8に示すように、電気抵抗が上昇し、検出しきい値Rthを超える。電気抵抗が検出しきい値Rthを超えると、制御装置の演算部は、被破壊体20が導通状態から絶縁状態に切り替わったと判別する。つまり、ケース本体911c、絶縁シート911d、言い換えるとケース911の前壁911bが変形したと判別する。このようにして、本実施形態の被破壊センサ1は、自身が破壊されることにより、ケース911の変形を検出している。なお、制御装置の演算部は、被破壊体20が導通状態から絶縁状態に切り替わったと判別した後、直ちに図1に示すインバータ回路910の通電を遮断する。
【0044】
また、被破壊体20が短絡すると、端子21L、21R間の電気抵抗が0になる。このため、図8に点線で示すように、電気抵抗が0になると、制御装置の演算部は、被破壊体20が導通状態から短絡状態に切り替わったと判別する。
【0045】
[作用効果]
次に、本実施形態の被破壊センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の被破壊センサ1によると、被破壊体20の母材が樹脂である。このため、被破壊体20の形状に対する自由度が高い。したがって、線状は勿論、帯状や面状の被破壊部201a〜201dを簡単に作製することができる。ここで、被破壊部201a〜201dは面状を呈している。このため、広い面積に亘ってケース本体911cの変形を検出することができる。したがって、検出漏れが発生しにくくなる。
【0046】
また、図3に示すように、本実施形態の被破壊センサ1は、支持部200a〜200eを備えている。また、端子21L、21Rも、支持部200a〜200eの役割を有している。荷重が入力されると、複数の支持部200a〜200eは、センサ取付面912aに着座する。このため、端子21L、21R、複数の支持部200a〜200eは、センサ取付面912aに対して、被破壊部201a〜201dを、前方に浮いた状態で支持する。したがって、図4に示すように、センサ取付面912aと被破壊部201a〜201dとの間に、被破壊部201a〜201dの破壊に必要なストロークS1を確保することができる。
【0047】
また、被破壊部201a〜201dは、脆性を有している。このため、被破壊部201a〜201dの破壊に必要なストロークS1が短くて済む。したがって、被破壊センサ1の前後方向の肉厚を薄くすることができる。よって、ケース911内におけるセンサ設置スペースを小さくすることができる。また、ケース911内における被破壊センサ1の配置の自由度が高くなる。
【0048】
また、図7に示すように、被破壊部201a〜201dが脆性を有しているため、荷重F1により、被破壊部201a〜201dは迅速に破壊される。したがって、実際の変形に対する被破壊センサ1の応答遅れが小さくなる。また、被破壊部201a〜201dが脆性を有しているため、ケース911の前壁911bの、破壊に至る変形は勿論、破壊に至らない変形も検出することができる。
【0049】
また、被破壊部201a〜201dの壊れやすさを調整することで、検出感度を自在に調整することができる。例えば、被破壊部201a〜201dを壊れやすくすると、ケース911の前壁911bの変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。被破壊部201a〜201dを壊れにくくすると、ケース911の前壁911bの変形量が大きい場合に、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が低くなる。
【0050】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、図3に示すように、一体物の被破壊体20が配置されている。すなわち、支持部200a〜200eと被破壊部201a〜201dとが、射出成形により、一体に作製されている。このため、支持部200a〜200eが被破壊部201a〜201dと別体である場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、支持部200a〜200eと被破壊部201a〜201dとの接合が不要な分、被破壊センサ1の組付工数が少なくなる。また、被破壊センサ1の製造コストを削減することができる。
【0051】
また、本実施形態の被破壊センサ1によると、端子21L、21Rと被破壊体20とは、インサート成形により一体化されている。すなわち、被破壊体20の成形と同時に、被破壊体20と端子21L、21Rとの接合が行われる。このため、被破壊センサ1の製造工数が少なくて済む。したがって、被破壊センサ1の製造コストを削減することができる。
【0052】
また、図3に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、端子21L、21Rが支持部兼用である。このため、端子21L、21Rを支持部として用いない場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、被破壊センサ1の製造コストを削減することができる。
【0053】
また、図3に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、被破壊体20は、端子21L、21Rを介して、センサ取付面912aに取り付けられている。端子21L、21Rは金属製である。このため、端子21L、21Rは被破壊体20よりも延性が高い。また、被破壊体20は、カーボンビーズを含むエポキシ樹脂製である。このため、端子21L、21Rは被破壊体20よりも脆性が低い。すなわち、端子21L、21Rは被破壊体20よりも、変形しても壊れにくい。このため、被破壊センサ1をセンサ取付面912aに取り付ける際、端子21L、21Rが変形することにより、被破壊体20に歪みが残留するのを、抑制することができる。したがって、被破壊体20が残留歪みにより破壊されやすくなるのを、抑制することができる。
【0054】
また、図3に示すように、被破壊部201a〜201dには、各々、ノッチ202a〜202dが形成されている。このため、被破壊部201a〜201dは破壊されやすい。したがって、ケース911の前壁911bの変形量が小さい場合であっても、変形を検出することができる。すなわち、検出感度が高くなる。また、図6に示すように、被破壊部201a〜201dにおける破壊箇所を、ノッチ202a〜202d付近に誘導することができる。このため、複数の被破壊センサ1間において、検出感度のばらつきが小さくなる。また、単一の被破壊センサ1の複数の被破壊部201a〜201d間において、検出感度のばらつきが小さくなる。
【0055】
また、被破壊体20は、カーボンビーズを含有している。このため、カーボンビーズの形状、大きさ、充填量などにより、被破壊部201a〜201dの脆性、導電性を調整することができる。
【0056】
また、図8に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、導通状態から絶縁状態への変化のみならず、導通状態から短絡状態への変化を検出することができる。このため、被破壊センサ1の自己診断性が高い。
【0057】
また、図6に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、被破壊部201a〜201dの後面(荷重F1が入力される方向と反対方向の面)に作用する引張力F2を利用して、被破壊部201a〜201dが破壊される。並びに、荷重が入力される際、被破壊部201a〜201dのうち、後方から支持部200a〜200eにより支持されている部分と、後方から支持部200a〜200eにより支持されていない部分と、の間に作用する剪断力を利用して、被破壊部201a〜201dが破壊される。このため、被破壊部201a〜201dを迅速に破壊することができる。
【0058】
また、図3に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、ケース本体911cの前壁911bと、被破壊部201a〜201dと、の間に、絶縁シート911dが介装されている。このため、前壁911bと被破壊部201a〜201dとの導通を遮断することができる。また、絶縁シート911dは、エラストマー製であり、柔軟である。このため、荷重が入力される前の状態において、被破壊部201a〜201dの振動を吸収することができる。また、絶縁シート911dは、破壊された後の被破壊部201a〜201dの破片を拘束しにくい。このため、チャタリングの発生を抑制することができる。
【0059】
また、図1に示すように、本実施形態の被破壊センサ1によると、前壁911bに前後方向に対向して、ブラケット912が配置されている。このため、前方から荷重が入力され、前壁911bとブラケット912とが近接することにより、被破壊部201a〜201dを破壊することができる。また、前壁911bとブラケット912との間の間隔、ブラケット912の前後方向の剛性などを調整することにより、被破壊センサ1の検出感度を調整することができる。
【0060】
また、車両9のエンジンの二次振動の周波数が400Hzであるのに対して、被破壊体20の固有振動数は400Hzを超えるように設定されている。このため、被破壊体20がエンジンに共振しにくい。
【0061】
また、図1に示すインバータ回路910には、比較的高圧の電流が流れている。このため、事故などによりインバータユニット91が破損した場合、インバータ回路910の通電を遮断する必要がある。インバータユニット91に荷重が入力される場合、いち早く変形するのはケース911である。この点、本実施形態の被破壊センサ1によると、ケース911の変形を迅速に検出することができる。このため、事故などの場合、インバータ回路910の通電を迅速に遮断することができる。
【0062】
[その他]
以上、本発明の被破壊センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0063】
上記実施形態においては、前後方向を荷重伝達方向としたが、上下方向、または左右方向を荷重伝達方向としてもよい。
【0064】
ノッチ202a〜202dの形状、配置、配置数は特に限定しない。図9(a)〜(c)に、被破壊センサのノッチ付近の断面図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。図9(a)に示すように、被破壊部207の一面に、底面が平面状のノッチ207aを配置してもよい。また、図9(b)に示すように、被破壊部207の一面に、断面U字状のノッチ207bを配置してもよい。また、図9(c)に示すように、被破壊部207の一面に、断面V字状のノッチ207cを一対配置してもよい。また、被破壊部207の他面に、断面V字状のノッチ207dを配置してもよい。また、厚さ方向から見て、ノッチ207dとノッチ207cとをずらして配置してもよい。
【0065】
また、ノッチ形成以外の方法で、被破壊部に、脆弱部、荷重集中部を設定してもよい。例えば、被破壊部に貫通孔を穿設してもよい。また、被破壊部の荷重伝達方向の肉厚を、部分的に小さくしてもよい。
【0066】
図10に、その他の被破壊センサの左右方向断面図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。上記実施形態においては、絶縁シート911dの後面をセンサ押圧面911aとした。また、ブラケット912の前面をセンサ取付面912aとした。しかしながら、図10に示すように、絶縁シート911dの後面をセンサ取付面911zとしてもよい。また、ブラケット912の前面をセンサ押圧面912zとしてもよい。また、荷重が入力される前の状態において、被破壊体20の後面と、センサ押圧面912zと、が離間していてもよい。また、絶縁シート911dを、前壁911bと、スクリュー810L、810Rと、の間にまで介在させた方がよい。また、ブラケット912の材質は特に限定しない。絶縁性の塗装が施された金属製であってもよい。
【0067】
上記実施形態においては、被破壊センサ1により、ケース本体911cの前壁911bの変形の有無を検出した。しかしながら、前壁911bの変位(前壁911bの変形を伴わない変位を含む)の有無を検出してもよい。また、前壁911bとブラケット912との間の相対的な位置関係の変化を検出してもよい。また、図6に示すように、前壁911bの変形の原因が、前壁911bに入力される荷重F1の場合は、前壁911bの変形を介して、前壁911bに入力される荷重F1の有無を検出してもよい。
【0068】
上記実施形態においては、図7に示すように、被破壊部材2が部分的に破壊される場合を説明した。しかしながら、前壁911bとブラケット912との間で被破壊部材2が全体的に圧壊するような場合であっても、被破壊センサ1は、前壁911bとブラケット912との間の相対的な位置関係の変化を検出することができる。
【0069】
被破壊センサ1用の制御装置の配置場所は特に限定しない。車両9に配置してもよい。また、インバータユニット91に配置してもよい。被破壊体20の形状、大きさなどは特に限定しない。
【0070】
被破壊部の形状、大きさなどは特に限定しない。被破壊部の壊れやすさは、ノッチの形状、配置場所、配置数、隣り合う支持部間の間隔、被破壊部の形状などを適宜変更することにより、調整することができる。
【0071】
上記実施形態においては、図8に示すように、電気抵抗により、導通状態と、絶縁状態または短絡状態と、を判別した。しかしながら、インピーダンス、電圧、電流などにより、導通状態と、絶縁状態または短絡状態と、を判別してもよい。また、電気抵抗に関連する他の電気量により、これらの状態を判別してもよい。
【0072】
被破壊部の母材用の熱可塑性樹脂としては、例えば、PE、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、非晶質フッ素樹脂、非晶質ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
【0073】
また、被破壊部の母材用の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0074】
導電性フィラーは、導電性を有するものであれば特に限定しない。例えば、炭素材料、金属などの微粒子が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いることができる。導電性フィラーとしては、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金、カーボン等から適宜選択すればよい。
【0075】
被破壊体20、被破壊部201a〜201d、205a〜205u、206、207は、例えば、次のようにして製造することができる。母材に熱可塑性樹脂を選択した場合には、加熱溶融した熱可塑性樹脂に、導電性フィラー、必要に応じて添加剤を加えて混合した後、プレス成形、射出成形などを行う。また、母材に熱硬化性樹脂を選択した場合には、硬化前樹脂に、硬化剤、必要に応じて添加剤を加えて混合した後、プレス成形などにより硬化させる。
【符号の説明】
【0076】
1:被破壊センサ、2:被破壊部材、9:車両。
20:被破壊体、21L:端子、21R:端子、90:サイドメンバ、91:インバータユニット。
200a〜200e:支持部、201a〜201d:被破壊部、202a〜202d:ノッチ、207:被破壊部、207a〜207d:ノッチ、210L:固定端部、210La:固定溝部、211L:埋設端部、810L:スクリュー、810R:スクリュー、811L:配線、811La:目玉部、811R:配線、910:インバータ回路、911:ケース、911a:センサ押圧面、911b:前壁、911c:ケース本体、911d:絶縁シート、911z:センサ取付面、912:ブラケット、912a:センサ取付面、912z:センサ押圧面。
C1:クラック、F1:荷重、F2:引張力、Rth:しきい値、S1:ストローク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインバータユニットのケースの内面と、該ケースの内部において該内面に対向する対向面と、のうち、一方をセンサ取付面、他方をセンサ押圧面として、
該センサ取付面と該センサ押圧面との間に介装され、母材が樹脂であって脆性および導電性を併有する被破壊部と、
該被破壊部と該センサ取付面との間に介装され、該センサ取付面との間に該被破壊部が破壊される際のストロークを確保する複数の支持部と、
を有する被破壊部材を備え、
外部から該ケースに荷重が入力される際、該センサ取付面と該センサ押圧面との間の間隔が短くなり、該センサ取付面に該支持部が当接した状態で、該センサ押圧面から押圧力が加わることにより該被破壊部が破壊され、該被破壊部の破壊前後において電気抵抗が変化することを基に、該ケースの変形を検出する被破壊センサ。
【請求項2】
前記被破壊部材は、複数の前記支持部のうち少なくとも一つと、前記被破壊部と、を有する一体物の被破壊体を備える請求項1に記載の被破壊センサ。
【請求項3】
複数の前記支持部のうち少なくとも一つは、前記被破壊部の前記電気抵抗に関する電気量を出力する端子である請求項1または請求項2に記載の被破壊センサ。
【請求項4】
前記被破壊部は、自身の破壊を誘起するノッチを有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の被破壊センサ。
【請求項5】
前記被破壊部は、前記母材中に充填される導電性フィラーを有する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の被破壊センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−242324(P2012−242324A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114746(P2011−114746)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】