説明

被覆された化粧用粉体

本発明は、被覆された化粧用粉体、好ましくはカラー化粧用製品のための化粧用粉体、特に特定のシロキサン樹脂ポリマーで被覆された化粧用粉体に関し、また前記被覆された化粧用粉体を含む化粧用組成物にも関する。前記化粧用粉体は、一般式RSiO(4−n)/2の平均シロキサン単位を有し、且つ0.2〜10重量%のヒドロキシル又はアルコキシ含量を有するシルセスキオキサンホモポリマー及び/又はシルセスキオキサンコポリマー(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子及び1〜10個の炭素原子を含む一価炭化水素基から選択され、その際、80モル%を超えるRが3〜10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは1.0〜1.4の値であり、60モル%を超える前記コポリマーがRSiO3/2単位を含む)で被覆された粉体相により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆された化粧用粉体、好ましくはカラー化粧用製品のための化粧用粉体、特に特定のシロキサン樹脂ポリマーで被覆された化粧用粉体に関し、また前記被覆化粧用粉体を含む化粧用組成物にも関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ファンデーション、化粧品、アイシャドー、リップスティックなどの肌や唇をメークアップするのに用いられる化粧用製品は、大部分の無機粉体と少量の有機粉体とから構成される。
【0003】
これらの製品を肌表面に適用することによって、着色された薄い膜が形成される。その着色された薄い膜は、肌の美的な欠陥を隠し、よりむらのない外観を肌に与える。
【0004】
この膜は肌表面にただ堆積しているだけなので、無機/有機化粧用粉体は、表皮の表面層と直に接触している。
【0005】
無機/有機化粧用粉体と肌との直接的な接触は、肌表面に存在する水分が吸着し、それゆえに本来の親水性/親油性バランスを変え、次いでそれが局所乾燥作用の原因となり、その結果として使用者に不快な感覚をもたらすということがよく知られている。
【0006】
さらに、異なる物理的特性を有する個々の粉体の不均質性は、最終的な分析において、知覚できる美的な結果を明らかに引き起こすであろう。
【0007】
シリコーンを用いて化粧用粉体を処理し、被覆することが知られている。
【0008】
例えば、米国特許第5,496,544号には、シリコーン混合物を含有する脂肪質バインダーと混合された固体粒子相を含む無水粉体からなる肌化粧用組成物が開示されている。このシリコーン混合物は、少なくとも1種のシリコーン油、少なくとも1種のシリコーンワックス、少なくとも1種のシリコーン樹脂、場合により、少なくとも1種のシリコーンゴム、及び場合により、少なくとも1種のフェニルジメチコーンを含むものである。
【0009】
欧州特許出願第678015号には、顔料粒子を処理する上で有用な表面処理材の非制限種類にはシリコーンが含まれるということが記載されている。表面処理材として有用なシリコーンの例には、ジメチコン、シクロメチコン、ジメチコノール、ジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオールアセテート、ジメチコンコポリオールブチルエーテル、ジメチコンコポリオールメチルエーテル及びこれらの混合物がある。これらシリコーンのフッ素化フェニル置換誘導体及びアミノ置換誘導体も有用である。
【0010】
米国特許第4,578,266号には、有機的に置換されたポリシロキサン及び疎水性シリコーンで被覆された顔料を含む着色化粧用組成物が開示されている。
【0011】
上記の先行技術を鑑みて、本発明は、粉体と肌表面との間の接触を最小にするか又は防止し、乾燥作用を避けると同時に優れた感覚作用をもたらすように処理された粉体を提供することを目的とする。
【0012】
本発明に従って、一般式RSiO(4−n)/2の平均シロキサン単位を有し、且つ0.2〜10重量%のヒドロキシル又はアルコキシ含量を有するシルセスキオキサンホモポリマー及び/又はシルセスキオキサンコポリマー(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子及び1〜10個の炭素原子を含む一価炭化水素基から選択され、その際、80モル%を超えるRが3〜10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは0.8〜1.2の値であり、50モル%を超えるコポリマーがRSiO3/2単位を含む)で被覆された粉体相により構成されることを特徴とする化粧用粉体が提供される。
【0013】
本発明は、本発明による被覆化粧用粉体を1以上含む化粧用製品組成物に到達することも目的とする。
【0014】
本発明によれば、以下に記載される特定の調製方法によって、被覆された粉体を提供することができる。この被覆粉体は、それらの物理化学的特性を部分的又は全体的に改質して、シルセスキオキサンホモポリマー及び/又はシルセスキオキサンコポリマーが粉体上に網状につなげられ、繋ぎ留められ、それらの疎水性を高め且つ肌への粘着性を高めたものである。そのため、特にコンパクトファンデーション、液体ファンデーション、アイシャドー、リップスティックなどのような高品質の化粧用粉体配合物に好適である。
【0015】
さらに、本発明による圧粉体の形態のような顔のメークアップのための化粧用組成物は、特に湿式アプリケータ(例えば、小さいスポンジなど)で好適に適用される。
【0016】
本発明の特徴および利点は、非限定的な例として提供される以下の幾つかの態様の記載によって更に明らかにされるであろう。
【0017】
本発明は、特に一般式RSiO(4−n)/2の平均シロキサン単位を有し、且つ0.2〜10重量%のヒドロキシル又はアルコキシ含量を有するシルセスキオキサンホモポリマー及び/又はシルセスキオキサンコポリマー(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は1〜10個の炭素原子を含む一価炭化水素基から選択され、その際、80モル%を超えるRが3〜10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは1.0〜1.4の値であり、60モル%を超えるコポリマーがRSiO3/2単位を含む)で被覆された化粧用粉体、特に着色化粧用製品のための化粧用粉体の調製にも関する。
【0018】
好ましくは、用いられるシルセスキオキサンポリマーは、RがC〜C10、最も好ましくはCのアルキル鎖長を有するものである。その際、ヒドロキシル又はアルコキシの存在量は、0.2〜10重量%の間で変化し、例えば、1〜4重量%の間、好ましくは5〜10重量%の間、より好ましくは6〜8重量%の間である。シルセスキオキサン又はシリコーン樹脂としては、限定されるものではないが、以下の構造:RSi(OR、RSi(OR及びRSiOR(式中、R、R、Rは、C〜C10、好ましくはC〜Cの炭素数を有するアルキル鎖であり、Rは、C〜Cの炭素数を有するアルキル鎖である)を有するシランから得られるものが挙げられる。さらに、これら四官能性シランがシルセスキオキサン組成物の0〜20モル%存在するという使用条件下においては、Si(ORも含むシルセスキオキサンが含まれると考えられる。
【0019】
ヒドロキシル又はアルコキシ官能基の存在によって、粉体の表面上における網状につなげること(networking)及び繋ぎ留め(hooking)が可能となる。
【0020】
本発明によれば、シルセスキオキサンポリマーで被覆された化粧用粉体は、組成物全量に対して0.1〜99重量%、好ましくは80〜99重量%の粉体、および組成物全量の0.05〜85重量%、好ましくは1〜20重量%のシルセスキオキサンポリマーを含む。
【0021】
粉体相は、化粧分野において従来から用いられている付形剤及び/又は顔料を含むことができる。
【0022】
付形剤としては、例えば、以下のもの:タルク、マイカ、カオリン、クレイ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸リン酸マグネシウム、カルシウム重硫酸塩、デンプン及びその誘導体、ナイロン、ポリエチレン、アクリル酸のポリマー及びコポリマー等を使用することができる。
【0023】
顔料としては、例えば、以下のもの:酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、ブルー及びピンクウルトラマリン、マンガンバイオレット、二酸化チタン、マイカ又はオキシ塩化ビスマスを覆うパール、カルミン、ラッカー及びCTFAに従う有機染料系顔料を使用することができる。
【0024】
粉体の被覆の調製方法は、好ましくは、連続プロセスにおいて被覆されるべき粉体を投入ホッパーに送り込むターボミキサーを使用することからなる。ミキサー内部で乱流攪拌下、被覆相を噴霧する計量ポンプによって、粉体は含浸される。この被覆相は、被覆材料を溶媒と混合することにより予め調製しておく。
【0025】
溶媒は、シルセスキオキサン樹脂が完全に溶媒化又は分散された溶液を提供することのできる全ての慣用の希釈剤であると定義される。好ましい溶媒としては、脂肪族炭化水素および低粘度シロキサン流体ポリマーが挙げられる。これらの例には、限定されるものではないが、低分子量を有するイソパラフィン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン及びこれらの分岐異性体、オクタメチルシクロテトラシロキサンやデカメチルシクロペンタシロキサン等のような揮発性シロキサン流体が含まれる。他の好適な溶媒には、ケトン類、エステル類及びパラフィン系石油又はナフテン系石油のような石油類が含まれ得る。
【0026】
すべての調製方法は、好ましくは、ミキサー内の雰囲気を完全に不活性にするために窒素流下で実施される。
【0027】
粉体は、含浸時、特殊な容器中に収集され、室温で少なくとも約48時間保持した後、それらは特殊な乾燥器に80℃で移され、ここで溶媒が完全に蒸発するまで放置される。このようにして、純粋な樹脂の粉体上への繋ぎ留めも達成することができる。
【0028】
固体を処理するのに適用可能な他の加工技術が知られており、これらは、(1)樹脂溶液を調製すること、(2)これを粉体と均質に混合すること、次いで(3)蒸発によって溶媒を除去することからなる基本工程が完了するという条件で本発明の一部として含まれる。
【0029】
本発明による化粧用組成物は、化粧用組成物における典型的な他の成分を、少なくともシルセスキオキサンポリマーで被覆された粉体と組み合わせたものを含む。
【0030】
本発明の他の側面によれば、そのような被覆された粉体を用いるメークアップのための化粧用製品の組成物が提供される。この組成物は、組成物全量の0.1〜99.9重量%、好ましくは40〜90重量%の大部分の被覆された粉体からなる粉体相、及び組成物全量の99.9〜0.1重量%、好ましくは60〜10重量%の種々の化粧用許容成分を含む。
【0031】
化粧用許容成分としては、油脂、シリコーン、ポリウレタン誘導体、過フッ素化合物、他の被覆されていない粉体、香水及びアロマ、染料、顔料又はCTFA事典に包含される他の成分が挙げられる。
【0032】
本発明において用いられる被覆の化学的特性よりも主に物理的特性が、柔軟性、弾性、亀裂を生じない膜軟度などの被覆の特性を反映する物理的特性を有する薄い層(膜)を形成することによって、粉体及び顔料の被覆を可能にする。異なる化学的性質および最も重要なことには異なる物理的特性を有する他の従来のポリマーを用いることによって達成される粉体の被覆は、硬く、透明(crystalline)で柔軟性がなく、且つ好ましくない感覚上の特性を与える層沈着を、これら従来の被覆された粉体を含む化粧用製品にもたらす。
【0033】
特に従来技術を用いると、顔料を被覆する場合に、最適状態に及ばない色収量(colour yield)の他に、乾燥した肌の感触が知覚される。
【0034】
本発明の報告される知覚上の利点は、化粧用の特性評価に焦点を合わせた任意のパネル検査員により実施される感覚試験の結果である。
【実施例】
【0035】
以下の限定されない実施例では、一般式RSiO(4−n)/2の平均シロキサン単位を有し、且つ0.2〜5重量%のヒドロキシル又はアルコキシ含量を有するシルセスキオキサンホモポリマー及び/又はシルセスキオキサンコポリマー(以下、シルセスキオキサンポリマーと記載する)(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子及び1〜10個の炭素原子を含む一価炭化水素基から選択され、その際、80モル%を超えるRが3個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは0.8〜1.2の値であり、50モル%を超えるコポリマーがRSiO3/2単位を含む)で被覆された粉体を含む化粧用組成物が提供される。
【0036】
【表1】

【0037】
この配合物は、如何なる肌の乾燥も与えることなく、高度の軟らかさ、優れた色収量、マイルドさ及び軽やかさを提供した。
【0038】
【表2】

【0039】
この配合物は、如何なる肌の乾燥も与えることなく、高度の軟らかさ、優れた色収量、マイルドさ及び軽やかさ、並びに耐久性の増大を提供した。
【0040】
【表3】

【0041】
この配合物は、ベースを含むシリコーンとの高度の混和性、より優れた色収量及び軽やかさを提供した。
【0042】
【表4】

【0043】
この配合物は、水/シリコーンエマルション型中の被覆された顔料の分散において改善された均質性、更なる適用の容易さ及び軟らかさを提供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式RSiO(4−n)/2の平均シロキサン単位を有し、且つ0.2〜10重量%のヒドロキシル又はアルコキシ含量を有するシルセスキオキサンホモポリマー及び/又はシルセスキオキサンコポリマー(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は1〜10個の炭素原子を含む一価炭化水素基から選択され、その際、80モル%を超えるRが3〜10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは1.0〜1.4の値であり、60モル%を超える前記コポリマーがRSiO3/2単位を含む)で被覆された粉体相により構成されることを特徴とする化粧用粉体。
【請求項2】
以下の成分:
0.1〜99.9重量%の前記化粧用粉体相と、
0.05〜80重量%の前記シルセスキオキサンホモポリマー及び/又はシルセスキオキサンコポリマーと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧用粉体。
【請求項3】
前記シルセスキオキサンホモポリマー及び/又はシルセスキオキサンコポリマーは、Rがプロピル基である請求項1又は2に記載の化粧用粉体。
【請求項4】
前記化粧用粉体相が、少なくとも顔料を含む請求項1〜3の何れか一項に記載の化粧用粉体。
【請求項5】
前記化粧用粉体相が、少なくとも付形剤を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の化粧用粉体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の化粧用粉体を1以上含む化粧用製品組成物において、他の化粧用許容成分を含むことを特徴とする前記組成物。

【公開番号】特開2006−22016(P2006−22016A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199352(P2004−199352)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(592015259)ダウ・コーニング・ソシエテ・アノニム (3)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING SOCIETE ANONYME
【住所又は居所原語表記】PARC INDUSTRIEL, 7180 SENEFFE, BELGIUM
【Fターム(参考)】