説明

被覆された導体のための、形状を変化させた基板の製造方法及び上記基板を使用する被覆された導体

【課題】テクスチャ化された基板を使用して被覆された導体を製造する方法であって、すでにテクスチャ化された基板を成形することができ、それにもかかわらず、高温超伝導材料のよくアライメントされた活性層をエピタキシャル成長させることができる方法を提供する。
【解決手段】曲がった面を備えた、形状を変化させた基板を作成する方法であって、一つまたは複数のバッファ層を備え、平面を備えたテクスチャ化された基板を供給するステップと、最初のバッファ層で被覆された該基板の形状を変化させるステップと、エピタキシャル成長によって、最初のバッファ上に、テクスチャ化された第2のバッファ層を供給するステップとを含む、形状を変化させた基板を作成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆された導体のための、形状を変化させた基板の製造方法、特に、たとえば、円形のワイヤなど、基板の形成の自由度、結果として被覆された導体の形成の自由度を高める製造方法及びそのような基板を使用する被覆された導体に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆された導体は、テープ又は帯状体などの長尺の形状を有する。
【0003】
一般に、被覆された導体は、基板、高温超伝導体材料の活性層、及び基板と超伝導体層との間の種々の数のバッファ層から構成される。バッファ層は、使用される材料の種々の異なった性質を補償する様に機能する。
【0004】
限定はされないが、現在のところ、被覆された導体の製造には、式
REBaCu7−x
の希土バリウム・キュプレート系超伝導体が使用されている。その中の特別なものは、数の組み合わせ123が元素Y、Ba及びCuの組成比を表すとして、参照符号YBCO−123によって知られるものである。
【0005】
被覆された導体を製造する際の主要な問題は、超伝導体材料の結晶粒子の結晶の配向である。たとえば、臨界電流密度(Jc)及び臨界電流(Ic)の観点から、優れた超伝導性能を得るために、超伝導体材料は、個々の結晶粒子が、互いに本質的に平行に向き、互いに対する傾きができるだけ小さくなるように、高度の配向またはテクスチャを備える必要がある。超伝導体層は、結晶粒子が、表面に関して同じ方向(a−bアライメント)及び表面に垂直な方向(c−軸アライメント)の両方に揃うような2軸テクスチャを備えるのが好ましい。
【0006】
2軸テクスチャの質は、一般に、個々の結晶粒子の、互いに対する傾きの程度を反映する、結晶の面内及び面外の結晶粒ごとの配向の角度差によって表現される。配向の角度差が小さいほど、層のテクスチャは、よく(シャープに)なる。
【0007】
通常、層のテクスチャは、層の粒の、面内及び面外の配向の分布関数を指定するX線回折によって定められる。
【0008】
X線データに基づいて、面内φスキャン(ΔΦ)及び面外ロッキングカーブ(Δω)の半値幅(FWHM)の値が得られる。
【0009】
成長させる層の配向は、エピタキシャル成長によって達成される。エピタキシャル成長とは、成長させる層が、該層の下に位置する基板又は層の結晶の配向を取り入れるプロセスを指す。
【0010】
二つのタイプのエピタキシが存在する。ホモエピキタシは、同じ材料の基板上への層の成長を指し、ヘテロエピキタシは、異なる材料の基板上への層の成長を指す。
【0011】
すなわち、成長する層の結晶の配向は、その上に層が堆積される、下に位置する層の結晶の配向に直接関係づけられる。
【0012】
この結果、エピキタシ的に成長させる層の配向(テクスチャ)の質に対して、下に位置する層、テンプレート層の配向の質は、決定的に重要である。
【0013】
現在、要求されるテクスチャを達成する、二つの主要なアプローチがある。第1のアプローチによれば、イオンビームアシスト蒸着(IBAD)などの高度の真空を要求する、方向を定めた物理コーティングプロセスによって、多結晶の、ランダムに配向された基板上に高度にテクスチャ化されたバッファ層が堆積される。高度にテクスチャ化されたバッファ層は、該バッファ層上に成長させられる超伝導層に所望のテクスチャを転写する役割を果たす。このような高度真空蒸着技術には高価な設備が必要である。さらに、長尺の基板のコーティングは困難である。
【0014】
第2のアプローチによれば、たとえば、RABiT(基板の、回転アシスト2軸テクスチャリング)など、機械加工によって得ることのできる、高度にテクスチャ化された基板が使用される。ここで、基板のテクスチャはバッファ層に、ついで、その上に堆積される超伝導体層に転写される。このアプローチは、エピタキシャル成長を使用するので、所望の配向のバッファ層を得るのに、IBADのような方向を定めた堆積プロセスを適用する必要はない。
【0015】
本発明は、適切にテクスチャ化された基板に基づく第2のアプローチに関する。
【0016】
(2軸)テクスチャ化された基板上にバッファ層を成長させるための、複数の堆積方法がある。例として、パルス・レーザ堆積、物理気相堆積、電子ビーム蒸発及びスパッタリングなどの真空プロセス、有機金属化学気相堆積(MOCVD)及び化学溶液堆積(CSD)などの非真空プロセスがある。
【0017】
被覆された導体製造の本発明のアプローチによれば、基板のテクスチャの質は、良好な超伝導性能を有する高温超伝導体材料の活性層を形成することを可能にするための本質的な特徴である。基板のテクスチャが良好でなければ、超伝導性の必須条件である、所望の、適正にアライメントされた配向を備えた活性層を得ることは不可能である。
【0018】
しかし、テクスチャ化された基板を使用する際には、被覆された導体の形状がすでに定まっているという欠点がある。基板は、一旦テクスチャ化されてしまうと、変形加工及びアニーリングによって形状を変化させることはもはや不可能である。なぜならば、形状を変化させるための変形加工の際に導入された欠陥が、後に続くアニーリングの際に、テクスチャを無効とし、破壊してしまうからである。しかし、上記のように、良好でないか又は欠陥を有するテクスチャを備えた、基板又は下に位置する層上のエピタキシャル成長によって、適性に配向された層、バッファ層及び活性層をそれぞれ生成させるのは可能ではない。
【0019】
あるいは、基板の従来のテクスチャ化は、平らで規則的な表面を必要とする機械的な処理によって実行される。この結果、処理に先立って、たとえば、丸い形状や多角形形状など、曲がった規則的ではない形状へ、基板の形状を変化させている場合には、テクスチャ化のための機械的な処理は、困難であり、むしろ可能ではない。
【0020】
このことは、従来のプロセスにおいて、一旦テクスチャ化された基板を形作ることは避けられており、その結果、平らなテープ状の基板に適用される応用が制限され、応用分野がかなり制限されることを意味する。
【0021】
特許文献1は、バッファ層の2軸テクスチャを維持しながら、表面の不規則性を最小化し又は消去するように、テクスチャ化された表面上の、エピタキシャルに堆積された、成形できる金属バッファを機械的に変形加工する方法に関する。該方法は、2軸テクスチャ化された基板上に金属バッファのエピタキシャル層を堆積するステップと、滑らかな表面の間でエピタキシャル層を変形加工するステップとを含む。このように、特許文献1の特許の一般的な目的は、テクスチャ化された基板上のエピタキシャルに堆積された層を滑らかにすることである。
【0022】
特許文献1の特許のその他の目的は、平滑化された表面の間で密度を高くすることによって、密度を高くしたHTS前駆物質を有する基板を作成する方法を与えることである。表面の粗さを消去するため又は密度を高くするために、被覆された基板は、研磨されたロールの間の圧延又は研磨されたプレート間のプレスなど、滑らかな表面の間で機械的に変形加工される。本特許の方法において、取り扱われる被覆された基板は、最初の平らな形状を維持する。
【0023】
特許文献2は、コイルの形状の被覆された導体を得るプロセスに関するものである。被覆された導体のテープを単に巻いてそのようなコイル形状を得るのは、層のもろさのために困難であると考えられる。特許文献2によれば、この問題は、コイル形状のそれぞれの層を導体のテープに直接堆積することによって克服される。すなわち、IBADなどの堆積技術によって、コイル形状が胴体のテープに「書き込まれる」。被覆された導体の形状を変化させること、すなわち、被覆され、テクスチャ化された基板を、第1の形態から第2の形態へ変形することについての示唆はない。さらに、被覆された基板に形状を変化させるステップを施すこと、すなわち、同時に基板及びバッファ層の形状を変化させることの示唆はない。
【0024】
引用文献3は、超伝導材料で被覆された平らな金属基板を、長手方向軸にそって曲げて切れ目のある管を得て、その切れ目を溶接することによって、セラミック酸化物超電導材料の層を有する、波型の金属管を作成するプロセスに関する。基板の何らかのテクスチャ及び/又は超伝導層に関する示唆はない。その上、そのようなセラミック酸化物超伝導材料は、変形の際に非常に破壊されやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】US6114287
【特許文献2】WO03/019589A1
【特許文献3】DE19724618A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
テクスチャ化された基板を使用して被覆された導体を製造する方法であって、すでにテクスチャ化された基板を成形することができ、それにもかかわらず、高温超伝導材料のよくアライメントされた活性層をエピタキシャル成長させることができる方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明によれば、この目的は、曲がった面を備えた、形状を変化させた基板を作成する方法であって、一つまたは複数のバッファ層を備え、平面を備えたテクスチャ化された基板を供給するステップと、最初のバッファ層で被覆された該基板の形状を変化させるステップと、エピタキシャル成長によって、最初のバッファ上に、テクスチャ化された第2のバッファ層を供給するステップとを含む、形状を変化させた基板を作成する方法によって達成される。
【0028】
さらに本発明は、本発明の方法によって得ることのできる形状を変化させた基板を含む、被覆された導体に向けたものである。
【0029】
本発明によれば、形状に関してより高い自由度を有する、長尺の被覆された導体を得ることができる。
【0030】
さらに、本発明によれば、本質的に円形または多角形の断面を備えた、ワイヤの形の被覆された導体を得ることができる。
【0031】
特に、本発明によれば、そのような円形のワイヤの被覆された導体を平らな基板テープから得ることができる。
【0032】
たとえば、本発明によれば、円形のワイヤを得るために、平らな基板テープは、その長手方向の軸に沿って曲げることができる。
【0033】
本発明によれば、変形プロセス又は形状変化プロセスの前に、テクスチャ化された基板は、基板のテクスチャを取り入れる第1のバッファ層によって覆われる。必要に応じて、第1のバッファ層上に、エピタキシャル成長によって、さらなるバッファ層を堆積させることができる。すなわち、下に位置する層は、その上に成長する層のテンプレートとして役立つ。
【0034】
基板と異なり、バッファ層は、どのような形状変化プロセスや変形プロセスの間においても、十分なテクスチャの記憶を維持するという知見が得られた。このように、最初のバッファ層は、追加のバッファ層に対するテクスチャを回復するために使用することができる。他方、追加のバッファ層によって、それ以前の形状変化の処理によって生成された、クラックや穴など、少なくとも最上位の最初のバッファ層の欠陥は抑制される。関連するプロセスは、下に位置する金属基板のテクスチャの質に無関係である、自己エピタキシである。
【0035】
本発明において、「第2の基板」は、テクスチャ化され、特に、少なくとも一つの最初のバッファ層を堆積した後に、変形/形状変化処理が施されるテクスチャ化された基板を意味する。
【0036】
本発明によれば、「長尺」という用語は、幅及び高さを大幅に超える長手方向の軸を有する、帯状体型又はワイヤ型の物体に関する。
【0037】
本発明によれば、少なくとも一つの最初のバッファ層によって覆われた基板を所望の形状に変形した後に、最上位の最初のバッファ層上に追加のバッファ層をエピタキシャル成長させる。上記追加のバッファ層は、最上位の最初のバッファ層と同じ成分を有するのが好ましい。追加のバッファ層によって、形状変化プロセスに起因して、少なくとも最上位の最初のバッファ層において生じるどのような欠陥も抑制することができ、超伝導体材料の活性層のエピタキシャル成長のテンプレートとして適切な、高品質のテクスチャを備えた、本質的に欠陥のない層が得られる。
【0038】
本発明は、超伝導用の被覆された導体の最終的な形状のより大きな自由度を与える。現在、使用されているテープの平らな形状に制約はない。本発明によれば、円形、楕円形または多角形の断面を備えたような、曲がった面を備えた基板を得ることができる。このような形状を変化させた基板は、円形または楕円形のワイヤの形の長尺の被覆された導体の製造に適している。たとえば、円形や、六角形などの多角形の断面は、電気的性質の等方性を増加させ、特定の用途のための設計及び製造を容易にするのに有利である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
基板の形状を変化させること及び変形加工することは、所望の形を得るためのどのような方法によっても実施することができる。本発明の、基板の形状を変化させるための適切な方法の例は、圧延、引き抜き、溶接などである。このように、本発明によれば、従来のテープ状の基板に、径を小さくするための引き抜きプロセスを施し、あるいは、平らなテープを、管の形状、たとえば切れ目のある管に成形することも可能である。
【0040】
たとえば、本発明によれば、テープなどの基板は、変形加工の際に形成された長手方向の切れ目に沿って長手方向のエッジが互いに隣接した切れ目のある管に、テープを成形することによって、管の形に成形することができる。それによって、従来のワイヤのようにさらに処理することのできるHTS導体ワイヤを得ることができる。必要があれば、たとえば、溶接によって切れ目を閉じてもよい。
【0041】
テープは、本質的に管の形またはワイヤの形状の中心コアの周囲に成形することができる。中心コアは、鋼などの金属からなるのが好ましい。得られた管は、管が中心コアにぴったりと接するまで引き抜くことができる。
【0042】
成形及び引き抜き成形としては、金属シートおよび金属テープの加工として一般に知られている技術を適用することができる。管状の被覆された導体の製造は、EP1916720A1から公知であり、この文献は参考としてここに含まれる。
【0043】
一般に、本発明には、適切なテクスチャ、好ましくは2軸テクスチャを備えるどのような基板も使用することができる。
【0044】
基板として適切な材料及びこれらの材料を被覆された導体のための基板として使用することができるようにテクスチャ化するためのプロセスは、該技術分野で公知である。
【0045】
適切な基板の特定の例は、たとえば、重度の冷間圧延とそれに続くアニーリングを使用するRABiTプロセスによって得ることができる2軸テクスチャ化金属基板である。適切な金属の例は、Cu、Ni、Ag又は、W、Mo、Mnなどから選択された少なくとも一つの合金成分を備えた、Niベースの合金のような、Cu、Ni、Agをベースとした合金である。
【0046】
本発明において、原則として、最初のバッファ層及び追加のバッファ層が形成される材料は、エピタキシャル成長、すなわち、テクスチャの転写が可能である限り、特に限定されない。バッファ層として有用であることが知られ、エピタキシャル成長が可能であるどのような材料も使用することができる。本発明には、材料は、基板上にエピタキシャルに成長することができる必要があり、その上に堆積される更なる層のエピタキシャル成長も可能とする必要がる。
【0047】
追加のバッファ層の材料は、少なくとも、最上位の最初のバッファ層の材料と同じにすることができる。このことは、最上位の最初のバッファ層上に追加のバッファ層のホモエピタキシャル成長が存在することを意味する。追加のバッファ層の材料は、第一のバッファ層の材料と異なっていてもよい。このことは、最上位の最初のバッファ層上に追加のバッファ層のヘテロエピタキシャル成長が存在することを意味する。
【0048】
この場合に、テクスチャの転写を可能とするために、乱されることのないエピタキシャル成長を実現するために、最上位の最初のバッファ層と追加のバッファ層とに対して、格子が適切にマッチすることが要求される。小さな格子のミスマッチは、欠陥のない層の成長を維持することができる。しかし、ミスマッチが大きくなると、成長中の層において歪みが大きくなり、配向の転写がますます劣化する。
【0049】
バッファ層のヘテロエピタキシャル成長及び適切にマッチさせるための材料の組み合わせの選択は、被覆された導体の作成において公知である。
【0050】
本発明において、追加のバッファ層に対しては、少なくとも、最上位の最初のバッファ層と同じ材料を使用するのが好ましい。
【0051】
本発明の、少なくとも、最上位の最初のバッファ層と追加のバッファ層は、REは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Y、Tm、Yb及びLuから選択された少なくとも一つであり、Bは、Zr 及び Hf から選択された少なくとも一つであるとして、REタイプの材料から形成することができる。
【0052】
本発明によれば、少なくとも、最上位の最初のバッファ層と追加のバッファ層は、
RE2−X2+X
の化学式を有してもよい。ここで、
−0.4≦x≦+0.7
であり、好ましくは
−0.3≦x≦+0.3
である。
【0053】
比率の変化及びバッファ層に存在するRE及びBの性質によって、格子パラメータの調整が可能である。格子パラメータを変化させて、格子マッチを調整することによって、エピタキシャル成長を維持することができる。
【0054】
たとえば、YBCO超伝導体層のエピタキシャル成長のための格子マッチの観点から、バッファ層LaZr(LZO)は、特に有用であることが判明している。適切なバッファ材料のその他の例は、MgO、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、
(Ce1−ZRE)O
及びREMnOである。ここで、
0≦z≦0.5
であり、REは上記のとおりである。
【0055】
本発明用の超伝導体材料としては、原則として、希土バリウム・キュプレート系超伝導体、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・キュプレート系超伝導体、たとえば、参照符号BSCCO−2212及びBSCCO−2232によって知られるもの、特にBiの部分がPbによって置換されたもの、又はタリウム・ベース超伝導体及び水銀ベース超伝導体のいずれか、たとえば、それぞれタリウム・ストロンチウム・カルシウム・バリウム・キュプレート系超伝導体キュプレート系超伝導体及び水銀・バリウム・ストロンチウム・カルシウム・キュプレート系超伝導体など、どのような酸化物超伝導体も使用することができる。好ましい超伝導体材料は、REは上記のように定義されるとして、REBCO−123、特にYBCO−123であり、これは、他の金属、たとえば銀によってドープすることができる。
【0056】
本発明に対して、バッファ層及び活性層の堆積方法に関して特別な制約は何もない。たとえば、上記に参照されたいずれの方法も使用することができる。しかし、コストの低さ及び堆積レイトの高さの観点から、化学溶液堆積(CSD)などの化学的非真空技術が好ましい。
【0057】
一般的にCSDによれば、化学式RE2−x2+xの現在のバッファ層などの層は、基板上に溶液から有機金属化合物を形成する膜を堆積することによって製造することができる。このプロセスにおいて、有機溶媒中における、RE及びB用の適切な前駆物質化合物の化学量論混合物を使用することができる。得られた新たな膜は、さらに乾燥され、通常は200℃と500℃との間の温度で熱分解(有機的なバーンアウト)される。つぎに、上昇させた温度で結晶化が実施される。たとえば、所望の最終酸化物フィルムの融点の半分を超えない温度が有効であることが明らかにされている。酸化物フィルムの成長プロセスは、アモロファスなガラスにおける結晶化に対比しうる、ソリッド・ステート成長プロセスである。
【0058】
CSDは、三つの主要な方法に分類することができる。
1. カルボン酸金属化合物を使用した有機金属分解法(MOD)
2. 有機溶媒中の前駆物質として金属アルコキシドを使用したゾル・ゲル金属有機ルート
3. 金属有機ルートの変形であるキレート法
有機金属分解法のサブグループは、前駆物質としてトリフルオン酢酸金属を使用したトリフルオ酢酸塩(TFA)ルートである。
【0059】
バッファ層及び超伝導材料の活性層を得るためのこれらのプロセスは、当該技術分野で公知であり、これらのプロセスを扱う多数の文献が存在する。
【0060】
本発明で使用されるバッファ層は、その上にエピタキシャル成長によって成長させる層に配向を転写するのに役立つ。さらに、バッファ層は、化合物の拡散および金属基板の酸化を防止することによって、化学的バリアとして役立つ。
【0061】
超伝導材料の活性層上には、たとえば、金属シャント層、金属保護層及び絶縁層など、一つまたは複数のさらなる層を堆積させてもよい。金属シャント層及び金属保護層は、電気メッキによって堆積させてもよく、Ag、Au、Cuなどから作成してもよい。絶縁層は、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのような公知の絶縁物の押し出しによって形成することができる。
【0062】
以下において本発明の原理が、特定の実施形態を参照することによってさらに説明される。
【0063】
実施例
第1のLaZrバッファ層は、リール・ツー・リール・システムを使用して、10mm幅、80μm厚、10m長のNi5%W RABIT基板上に堆積された。
【0064】
本質的には、テープは、プロピオン酸中のLa及びZrアセチル・アセトナートの0.45M溶液中で浸漬被覆され、ゾル層を乾燥させ、得られた層を従来の仕方で熱分解し、結晶化する。
【0065】
結果として生じた被覆されたテープは、管形状に変形され、それによってワイヤを得る。最終的なワイヤの直径を変えるために、テープ幅は、4mmまで切断することによって調整された。4mmから10mm幅のテープの形状を変えて、約1.3mmから3.2mmの直径のワイヤとした。
【0066】
第1のバッファ層を備えた、形状を変化させた基板上にLZOからなる第2のバッファ層を、最初の第1のLZO層と本質的に同じ仕方でエピタキシャル成長させた。
【0067】
(バッファ層の堆積及び変形ステップの前の)最初のテクスチャ化されたテープ基板と、追加された第2のバッファ層との配向(テクスチャ)の程度は、X線回折を使用して、111ファイ・スキャン(面内テクスチャ)及び400オメガ・スキャン(面外テクスチャ)のFWHMを定めて比較した。
【0068】
結果は、以下の表に示す。
【表1】

【0069】
これらの結果は、最初のバッファ層を備えた基板の形状を変化させた後に堆積された第2のバッファ層のテクスチャの質は、変形前の基板の質と同等であるばかりかある程度改良されていることを明確に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆された導体の製造に適した、曲がった面を備えた、形状を変化させた基板を作成する方法であって、一つまたは複数のバッファ層を備え、平面を備えたテクスチャ化された基板を供給するステップと、最初のバッファ層で被覆された該基板の形状を変化させるステップであって、形状を変化させるステップにおいて、該平面を、曲がった面に変形させるステップと、エピタキシャル成長によって、最初のバッファ層上に、テクスチャ化された追加のバッファ層を供給するステップと、を含む形状を変化させた基板を作成する方法。
【請求項2】
2軸テクスチャを有する基板が使用される、請求項1に記載の形状を変化させた基板を作成する方法。
【請求項3】
最上位の最初のバッファ層及び追加のバッファ層に対して同じ材料が使用される、請求項1又は2に記載の形状を変化させた基板を作成する方法。
【請求項4】
前記形状を変化させるステップが、圧延、引き抜き及び溶接から選択された少なくとも一つである、請求項1から3のいずれかに記載の形状を変化させた基板を作成する方法。
【請求項5】
前記基板が、円形、楕円形または多角形の断面に形状を変化させられる、請求項1から4のいずれかに記載の形状を変化させた基板を作成する方法。
【請求項6】
前記基板が、長手方向軸の周囲に円形のワイヤの形状に曲げられる平坦なテープである、請求項1から5のいずれかに記載の形状を変化させた基板を作成する方法。
【請求項7】
前記最初のバッファ層及び追加のバッファ層の材料が、MgO、イットリア安定化ジルコニア、0≦z≦0.5として、(Ce1−ZRE)O、−0.4≦x≦+0.7、REは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Y、Tm、Yb及びLuから選択された少なくとも一つであり、Bは、Zr及びHfから選択された少なくとも一つであるとして、RE2−X2+Xからなるグループから選択された少なくとも一つである、請求項1から6のいずれかに記載の形状を変化させた基板を作成する方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法によって得ることのできる、曲がった面を備えた、形状を変化させた基板。
【請求項9】
エピタキシャル成長させた超伝導材料の活性層を有する、請求項8に記載の形状を変化させた基板。
【請求項10】
一つまたは複数の追加のバッファ層をさらに有する、請求項8又は9に記載の形状を変化させた基板。
【請求項11】
活性層用の超伝導材料が、REは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Y、Tm、Yb及びLuから選択された少なくとも一つであるとして、REBaCu7−xタイプである、請求項8から10のいずれかに記載の形状を変化させた基板。
【請求項12】
REが少なくともYである請求項11に記載の形状を変化させた基板。
【請求項13】
一つまたは複数の追加の金属保護層及び/又は一つまたは複数の追加の絶縁層をさらに含む、請求項8から12のいずれかに記載の形状を変化させた基板。
【請求項14】
形状を変化させた基板が円形、楕円形または多角形の断面を備えたワイヤである、請求項8から13のいずれかに記載の形状を変化させた基板。
【請求項15】
被覆された導体を製造するための、請求項8から12のいずれかに記載の形状を変化させた基板を使用する方法。
【請求項16】
保護層を備えた、被覆された導体を製造するための、請求項15に記載の形状を変化させた基板を使用する方法。

【公開番号】特開2009−295579(P2009−295579A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−119047(P2009−119047)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】