説明

被覆された薬物含有粒子および該粒子を含む固形製剤

【課題】 不快な味を有する薬物の口腔内での不快な味を低減させた薬物含有粒子、および該粒子を含む固形製剤であって、当該薬物の不快な味を実質的に感じず、且つ消化管内において溶出性のよい製剤の提供。
【解決手段】 本発明は、不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物を、下記成分(1)腸溶性高分子、(2)崩壊剤、および(3)凝集防止剤を含む被覆組成物で被覆造粒した薬物含有粒子、並びに該粒子を含む口腔内速崩壊錠などの固形製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物含有粒子および該粒子を含む固形製剤に関するものである。具体的には、不快な味を有する薬物の口腔内での不快な味を低減させた薬物含有粒子、および該粒子を含む固形製剤であって、当該薬物の不快な味を実質的に感じず、且つ消化管内において溶出性のよい製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会が進み、生理的諸機能の低下または老人性痴呆症などにより、食物摂取機能(咀嚼、嚥下など)の低下したまたは障害のある高齢者が増加している。また、高齢者の中には夜尿症患者も多く存在し、このような患者に対して錠剤を水で服用させた場合、服用困難あるいは、夜尿の懸念等の問題が生じてきている。一方、忙しい現代社会において時間および場所を選ばずに服用することができるという利点から、服用時に水を必要としない経口製剤の開発が求められている。そこで、水なしでも服用可能な経口製剤の開発が種々なされており、その一つとして口腔内崩壊錠が盛んに開発されている。
【0003】
しかしながら、医薬品に含まれる薬物には、苦味、渋味、辛味のごとき服用時に不快感を伴う成分が多い。薬物がこのような不快な味を伴う場合、口腔内崩壊錠として製する場合には、錠剤を口腔内の唾液水分で崩壊もしくは溶解させて服用するという口腔内崩壊錠の性質上、薬物の不快な味が口腔内に暴露され、服用に困難を伴う。そこで、薬物自体の不快な味を製剤中において遮蔽させることが製剤上の大きな課題となっている。
【0004】
この課題を解決するために、即ち、服用時の薬物の不快な味をマスキングするために、従来から、甘味料や香料等を添加する方法が用いられているが、十分な苦味マスキングのためには甘味料の量を増加させる必要がある場合があった。また、水不溶性高分子基剤、たとえばエチルセルロース等を利用して薬物自体または薬物を含む顆粒等をコーティングする方法も行われている。しかし、この方法では、不快な味を有する薬物の味を抑えようとしてコーティング量を増大させると、水不溶性高分子が体内で溶解しないために服用時の薬物放出が極端に抑制され、十分な薬効を得られないという問題がある。
【0005】
即ち、口腔内速崩壊錠においては、口腔内での崩壊性および消化管内における溶出性に優れた錠剤を生産することが望まれている。しかし、不快な味を呈する薬物を含有する口腔内速崩壊錠においては、口腔内での速やかな崩壊性という条件と口腔内での不快な味を低減するという条件とを担保することは相反することであり、さらに、口腔内での不快な味を低減するという条件と消化管内での優れた溶出性という条件を担保することも相反することであり、これら条件を同時に解決することは容易でなかった。
【0006】
これまで薬物を造粒又は被覆して得られる粒子(または顆粒)を製剤に配合することは知られており、例えば、特許文献1においては、「薬物および糖類を含有してなる口腔内速崩壊錠において苦味を有する薬物および/または流動性の劣る薬物と、製剤用担体とからなる、噴霧乾燥されてなる、平均粒子径約50〜約250μm、かつ見掛け比重約0.5〜約1.2の薬物含有粒子を配合することを特徴とする口腔内速崩壊錠」を開示している。ここにおいて、製剤用担体としては、水不溶性高分子、胃溶性高分子、腸溶性高分子、ワックス状物質および糖類が例示されている。 しかしながら、特許文献1においては、薬物に被覆するのではなく薬物とともに噴霧乾燥している点、被覆組成物中に崩壊剤や凝集防止剤を添加していない点等で以下に示す本願発明とは異なる。
【0007】
特許文献2においては、(1)不快な味を有する薬物、(2)メチルセルロースおよび(3)マンニトールを混合し粒子化した薬物の不快な味を低減した薬物含有粒子を開示しており、味のマスキングに関して、被覆造粒することは開示していない。
【0008】
また、薬物を被覆した粒子として、例えば、特許文献3では、急速に放出し、且つ味を隠蔽する医薬剤型として、薬物、低置換ヒドロキシプロピルセルロースおよび微結晶セルロースを含む中核に水溶性ポリマーを含有する内側被覆層、さらにその上に唾液に不溶性のポリマーの外側被覆層を有する剤型について開示されている。このように中核に微結晶セルロースおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加することを必須としている点で、以下に示す本願発明とは異なるものである。
【0009】
特許文献4では、苦味を有する薬物粒子と、水難溶性高分子化合物と、可塑剤とを含有する薬物含有造粒粒子を、さらに水難溶性高分子化合物および可塑剤の膜で被覆し、被覆造粒薬物粒子を製造する方法が開示されている。 しかしながら、特許文献4では、水難溶性高分子の被膜に崩壊剤や凝集防止剤を添加することについて開示も示唆もされていない。
【0010】
一方で、特許文献5では、平均粒子径 100 μm以下である不快な味を有する原薬粒子を、水難溶性高分子物質を用いて造粒した造粒物を打錠してなるチュアブル錠を製する方法が開示されている。 しかしながら、特許文献5では、水難溶性高分子の被膜に崩壊剤や凝集防止剤を添加することについて開示も示唆もされていない。
【0011】
特許文献6では、口腔内崩壊錠に利用する不快な味を低減した薬物含有粒子の製造方法に関して、賦形剤と混合した不快な味を有する薬物をエチルセルロースで造粒もしくは被覆してなる薬物含有顆粒について開示されている。 しかしながら、該文献は腸溶性コーティングについては開示していない。
【0012】
特許文献7には、味がマスクされ、活性成分を即時放出する、被覆された顆粒の製造方法として、少なくとも活性成分を含む粉末と顆粒崩壊剤の成分が、最初に乾燥混合され;ついで、得られた粉末が、粒子を互いに結合させて顆粒とすることができる少なくとも一の結合剤を含む賦形剤混合物の存在下で、造粒され;ついで、形成された顆粒が、少なくとも一の被覆剤と膜崩壊剤を含む懸濁液で噴霧することにより被覆され;最後に、得られた被覆された顆粒が乾燥される、方法を開示している。該文献の段落番号0022には、「被覆により活性成分の味のマスキングを達成するが、同時に活性成分の溶解を遅らせないことを可能にするものであって、顆粒レベル及び膜レベルの両方において、各々、結合剤及び被覆剤のみでなく、(顆粒及び膜)崩壊剤も導入することによって、行うものである。」との記載がある。即ち、該発明は、薬物、顆粒崩壊剤及び結合剤を含む顆粒を被覆剤及び膜崩壊剤を含む懸濁液で被膜することで達成されることを開示するものである。
【特許文献1】国際公開WO2002/002083号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2005/055989号パンフレット
【特許文献3】特許第3350059号公報
【特許文献4】特開2005−23058号公報
【特許文献5】特開2000−7556号公報
【特許文献6】特開2005−60309号公報
【特許文献7】特表2003−504324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、不快な味を有する薬物を含有する口腔内速崩壊製剤において、不快な味を有する薬物の不快な味のマスキングおよび消化管内での速溶性を実現した口腔内速崩壊製剤が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような状況において、本発明者らは、薬物の不快な味を低減するために腸溶性フィルム基剤で薬物を被覆することに着目した。しかしながら、腸溶性フィルム基剤を用いて被覆した粒子を含む固形製剤であっては、酸性領域では溶出せず、また中性領域では粒子同士が凝集し、速溶性を示さないことが判明した。そこで、さらに種々検討した結果、腸溶性フィルム基剤に凝集防止剤と崩壊剤とを併用することによって、不快な味のマスキングを維持したままで、酸性領域では速溶性を示し、また中性領域では粒子同士が凝集することなく速溶性を示すことを見出し、上記課題を解決することに成功し、本発明を完成した。本発明は下記の各種の態様の発明を提供するものである。
【0015】
項1: 不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物を、下記の成分を含む被覆組成物で被覆造粒した薬物含有粒子:
(1)腸溶性高分子、(2)崩壊剤および(3)凝集防止剤。
【0016】
項2: 凝集防止剤(3)が、酸化チタン、ステアリン酸またはその金属塩、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、硬化油およびタルクからなる群から選択される少なくとも1種である項1記載の薬物含有粒子。
【0017】
項3: 被覆組成物が、腸溶性高分子(1)100重量部に対して、凝集防止剤(3)を0.1〜260重量部の割合で含む、項1または2に記載の薬物含有粒子。
【0018】
項4: 凝集防止剤(3)が、タルクを含む項2又は3に記載の薬物含有粒子。
【0019】
項5: 被覆組成物が、腸溶性高分子(1)100重量部に対して、タルクを35〜260重量部の割合で含む、項4に記載の薬物含有粒子。
【0020】
項6: 被覆組成物が、腸溶性高分子(1)100重量部に対して、崩壊剤(2)を5〜40重量部の割合で含む、項1〜5のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【0021】
項7: 崩壊剤(2)が、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、でんぷん類、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびクロスポビドンからなる群から選択される少なくとも1種である項6記載の薬物含有粒子。
【0022】
項8: 崩壊剤(2)が、クロスカルメロースナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース或いはこれらの混合物である項7記載の薬物含有粒子。
【0023】
項9: 腸溶性高分子(1)が、腸溶性セルロース誘導体類および腸溶性アクリル酸系共重合体類からなる群から選択される少なくとも1種である項1〜8のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【0024】
項10: 腸溶性高分子(1)が、腸溶性アクリル酸系共重合体類からなる群から選択される少なくとも1種である項9に記載の薬物含有粒子。
【0025】
項11: 腸溶性アクリル酸系共重合体類が、メタクリル酸コポリマーである項10に記載の薬物含有粒子。
【0026】
項12: 不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物を、下記成分を下記割合で含む被覆組成物で被覆造粒した薬物含有粒子:
(1)メタクリル酸コポリマー、
(2)メタクリル酸コポリマー100重量部に対して、35〜260重量部の割合のタルクおよび
(3)メタクリル酸コポリマー100重量部に対して、5〜40重量部の割合のクロスカルメロースナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース或いはこれらの混合物。
【0027】
項13: 凝集防止剤(3)が、ステアリン酸またはその金属塩を含む項2又は3に記載の薬物含有粒子。
【0028】
項14: 被覆組成物が、腸溶性高分子(1)100重量部に対して、ステアリン酸またはその金属塩を0.1〜15重量部の割合で含む、項13に記載の薬物含有粒子。
【0029】
項15: 不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物を、下記成分を下記割合で含む被覆組成物で被覆造粒した薬物含有粒子:
(1)メタクリル酸コポリマー、
(2)メタクリル酸コポリマー100重量部に対して、0.1〜15重量部の割合のステアリン酸またはその金属塩および
(3)メタクリル酸コポリマー100重量部に対して、5〜40重量部の割合のクロスカルメロースナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース或いはこれらの混合物。
【0030】
項16: 平均粒子径が300μm以下である項1〜15のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【0031】
項17: 項1〜16のいずれかに記載の薬物含有粒子と他の製剤化成分を含む固形製剤。
【0032】
項18: 固形製剤が錠剤状製剤または粒状製剤である項17に記載の固形製剤。
【0033】
項19: 錠剤状製剤が錠剤または丸剤である項18に記載の固形製剤。
【0034】
項20: 粒状製剤が、顆粒剤、細粒剤または散剤である項18に記載の固形製剤。
【0035】
項21: 固形製剤が口腔内速崩壊製剤である項17〜20のいずれかに記載の固形製剤。
【0036】
項22: 口腔内速崩壊製剤が錠剤である項21に記載の固形製剤。
【0037】
項23: 口腔内速崩壊製剤が粒状製剤である項21に記載の固形製剤。
【0038】
項24: 不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物に、(1)腸溶性高分子、(2)崩壊剤および(3)凝集防止剤を含む被覆組成物並びに水または含水溶媒を含有する被覆コーティング分散液を用いて、被覆造粒して粒子化することを特徴とする薬物の不快な味を低減した薬物含有粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、薬物の苦味等の不快な味を低減した薬物含有粒子を提供できる。また、該粒子を含むことにより、消化管内、即ち、酸性領域から中性領域にかけて速溶性を実現できる製剤、さらには、口腔内崩壊製剤にあっては、不快な味のマスキングを維持し服用感のよい製剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本特許請求の範囲および本明細書において「平均粒子径」とは、特にことわらない限り、粉体粒子の体積基準測定における累積50%平均粒径D50(体積基準平均粒径)を意味する。かかる平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD3000)で体積基準により測定する。また、粒度分布についても、同様にレーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。
【0041】
本明細書における「薬物の量」とは、一般的に薬剤として採用されている「医薬活性成分」の形態を基準とするものである。すなわち、塩の形態をとっている薬物の場合には、その塩を加えた量を基準とする。但し、薬物が結晶水を有する場合は、当該結晶水相当量を減じた量を基準とする。
【0042】
本特許請求の範囲および本明細書における「腸溶性高分子100重量部」とは、腸溶性高分子の固形分の重量を基準として100重量部とするものである。
【0043】
本発明の薬物含有粒子は、本質的には、不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物を、下記の成分:
(1)腸溶性高分子、(2)崩壊剤および(3)凝集防止剤を含む被覆組成物で被覆造粒した薬物含有粒子であり、以下に各成分、組成物、薬物含有粒子、および該粒子を含む固形製剤について説明する。
【0044】
不快な味を有する薬物
本発明に用いられる「不快な味を有する薬物」としては、医薬活性成分として疾患の治療や予防に供されるものであり、苦味、渋味、辛味のごとき不快な味を有するものであれば、特に制限されない。かかる薬物としては、解熱鎮痛消炎剤、キノロン系抗菌剤、抗生物質、抗ガン剤、胃腸薬、止しゃ剤、抗うつ剤、抗てんかん剤、降圧剤、抗ヒスタミン剤、循環器用剤等が挙げられる。例えば、以下に示すクエン酸モサプリド、ファモチジン、硫酸キニーネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ、エテンザミド、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、塩化ベルベリン、アクリノール、ゾニサミド、塩酸ロペラミド、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、アラセプリル、クラリスロマイシン、塩酸アロチノロール、インドメタシン、クエン酸ペントキシベリン、塩酸メトホルミン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、カフェイン、イソプロピルアンチピリン、塩酸ジフェニルピラリン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル、塩酸フェニレフリン、塩酸プロカインアミド、硫酸キニジン、イソソルビド、スルピリド、ジアゼパム、バルプロ酸、炭酸リチウム、セファレキシン、アンピシリンなどが例示できる。上述のごとく、本薬物は、塩フリーのものであってもよいし、塩の形態であってもよい。さらに、それらの水和物であってもよい。
【0045】
薬物は1種でもよいし、2種以上であってもよい。また、苦味等の不快な味を有しない薬物を追加してもよい(該薬物は粒子内、特に薬物含有組成物中にあっても、粒子外に添加してもよい)。本発明においては、塩基性の薬物に適用することによって、より優れた効果を発揮する。
【0046】
薬物含有組成物
本発明における薬物含有組成物は、上記薬物単独であってもよいし、他の成分(添加剤)との混合物であってもよい。薬物含有組成物中に含まれる不快な味の薬物の量としては、10〜100重量%程度、好ましくは、50〜99.9重量%程度である。
【0047】
混合されうる添加剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸の金属塩、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素などの流動化剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香料、安定化剤、可塑剤、着色剤、矯味剤などが挙げられる。これらの添加剤は、一種または二種以上を組み合わせて適宜適量添加される。
【0048】
本発明における薬物含有組成物は、上述のごとく、薬物単独でもあってもよく、公知の製剤工程によって得られるもの、例えば、他の添加剤と混合して得られるものや、造粒して得られる造粒物であってもよい。造粒する方法としては、例えば、攪拌造粒法、押出し造粒法、流動層造粒法、乾式造粒法などの慣用の造粒法が例示できる。
【0049】
本発明における薬物含有組成物の平均粒子径について、薬物単独、他の添加剤と混合して得られるものの場合は、薬物の平均粒子径をもって該組成物の平均粒子径とし、薬物を含んだ造粒物の場合は、造粒物自身の平均粒子径をもって該組成物の平均粒子径とする。それらの上限としては、平均粒子径250μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、最も好ましくは125μm以下が挙げられる。これ以上大きい粒子径であると、被覆後の粒子径が粗大となり、口に含んだときにザラつきを感じる。
【0050】
(1)腸溶性高分子
本発明で使用する「腸溶性高分子」としては、特に限定されないがセルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート等の腸溶性セルロース誘導体類、メタクリル酸コポリマーLD(例えば、商品名:オイドラギットL30D-55、エボニック デグサ ジャパン株式会社製、商品名:ポリキッドPA-30、ポリキッドPA-30S、三洋化成社製、商品名:コリコートMAE30DP、BASF社製)、メタクリル酸コポリマーL(例えば、商品名:オイドラギットL、エボニック デグサ ジャパン株式会社製)、メタクリル酸コポリマーS(例えば、商品名:オイドラギットS、オイドラギットS100、オイドラギットFS30D、エボニック デグサ ジャパン株式会社製)などの腸溶性アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0051】
好ましい腸溶性高分子としては、腸溶性アクリル酸系共重合体、より好ましくは、メタクリル酸コポリマーであり、例えば、メタクリル酸コポリマーLD(例えば、商品名:オイドラギットL30D-55、エボニック デグサ ジャパン株式会社製、商品名:ポリキッドPA-30、ポリキッドPA-30S、三洋化成社製、商品名:コリコートMAE30DP、BASF社製)、メタクリル酸コポリマーL(例えば、商品名:オイドラギットL、エボニック デグサ ジャパン株式会社製)、メタクリル酸コポリマーS(例えば、商品名:オイドラギットS、オイドラギットS100、オイドラギットFS30D、エボニック デグサ ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0052】
これら高分子は1種または2種以上混合して用いてもよい。腸溶性高分子の被覆量としては、薬物含有組成物100重量部に対して、固形分重量として10〜200重量部、好ましくは25〜150重量部、より好ましくは、35〜100重量部程度である。
【0053】
(2)崩壊剤
本発明で使用する崩壊剤としては、例えば、クロスカルメロースナトリウム;カルボキシメチルスターチナトリウム;トウモロコシデンプン、部分α化デンプン、バレイショデンプン、コメデンプンなどのでんぷん類;カルボキシメチルセルロース(カルメロース);カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム);カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム);低置換度ヒドロキシプロピルセルロース;クロスポビドン等が例示でき、これらの中から1種又は2種以上混合して用いてもよい。好ましくは、クロスカルメロースナトリウム;カルボキシメチルスターチナトリウム;トウモロコシデンプン、部分α化デンプン、バレイショデンプン、コメデンプンなどのでんぷん類;低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、より好ましくは、クロスカルメロースナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。崩壊剤の配合量としては、腸溶性高分子100重量部(ただし、これは固形分重量を意味する)に対して、5〜40重量部程度、好ましくは10〜37重量部程度である。また、使用する崩壊剤は、微粉砕したものを用いてもよい。
(3)凝集防止剤
本発明の被覆組成物に使用される凝集防止剤としては、酸化チタン、ステアリン酸またはその金属塩、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、硬化油、タルク等が例示でき、これら1種または2種以上を混合して用いることができる。好ましくは、ステアリン酸またはその塩やタルクである。凝集防止剤の配合量としては、腸溶性高分子100重量部(ただし、これは固形分重量を意味する)に対して、0.1〜260重量部程度であるが、一般的には好ましくは10〜210重量部程度、より好ましくは、20〜160重量部程度、特に好ましくは35〜160重量部程度である。タルクを用いる場合には、好ましくは、35〜260重量部程度である。一方、ステアリン酸又はその塩を用いる場合には、好ましくは0.1〜160重量部、より好ましくは、0.1〜15重量部、特に好ましくは、1〜10重量部である。
【0054】
被覆組成物
被覆組成物は、上記(1)〜(3)の各成分を含有するものであり、必要に応じて下記可塑剤(4)を含有していてもよい。
【0055】
(4)可塑剤
本発明の被覆組成物に使用してもよい可塑剤としては、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、アセチル化モノグリセリド、プロピレングリコール、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の日本薬局方および医薬添加物規格等の公定書に記載のものが挙げられる。
【0056】
可塑剤の配合量としては、腸溶性高分子100重量部(ただし、これは固形分重量を意味する)に対して、5〜45重量部程度、好ましくは5〜35重量部程度、より好ましくは、10〜30重量部程度である。
【0057】
この被覆組成物には、更に、pH調整剤、着色剤、矯味剤、香料等が含まれていてもよい。
【0058】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、メグルミン、アルギニン、リジン等が挙げられる。該調整剤によって、例えば、被覆組成物を水又は含水溶媒を加えて被覆コーティング分散液としたときのpHが通常、4〜8、好ましくは、5〜7程度になるように調整される。
【0059】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の高分子を1種または2種以上混合してもよい。例えば、水溶性高分子、水不溶性高分子、胃溶性高分子および熱可塑性物質(ワックス状物質)等が挙げられる。
【0060】
薬物含有粒子
本発明の薬物含有粒子は、上記薬物含有組成物に、上記被覆組成物と水または含水溶媒を含有する被覆コーティング分散液を用いて被覆造粒して粒子化することで得ることができる。
【0061】
本発明における「薬物含有粒子」は、1個の薬物(や薬物の造粒物)のまわりが被覆組成物によって得られる被覆層によって被膜されている状態だけでなく、複数の薬物(や薬物の造粒物)が被覆組成物を介して結合し、最終的に、被覆組成物によって得られる被覆層で被膜されている状態も含む。
【0062】
被覆するための装置としては、一般的な流動層造粒機(転動流動層造粒機、ワースター型流動層造粒機等を含む)が挙げられるが、工程中の粒子の粗大化を抑えるために、側面からの強制循環装置を備えるワースター法を改良した流動層造粒機(例えばパウレック社製 GPCG-SPCなど)や整粒解砕機構(スクリーン・インペラ方式やブレード・ステータ方式、クロススクリュー、ランプブレーカなど)付き複合型流動層造粒機(例えば、パウレック社製 微粒子コーティング・造粒装置MP-01SFPなど)、回転流動層造粒機(例えば、奈良機械製作所製 オムニテックス など)が好ましい。
【0063】
本発明の薬物含有粒子は、平均粒子径が300μmを超えると、添加量もしくは噴霧固形分量が少なく抑えられるものの、口腔内でのザラつきや異物感を感じてしまうことがある。そのため、平均粒子径が300μm以下であることが好ましく、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下が挙げられ、最も好ましくは175μm以下が挙げられる。一方、粒子径の小さな粒子が多いと薬物含有粒子の比表面積が大きいため、苦味等の不快な味の抑制が充分でない場合がある。このため平均粒子径は30μm以上であることが好ましい。その平均粒子径は、不快な味のマスキング効果と共に、服用感や溶出性も考慮して適宜粒子の大きさを決定することができる。
【0064】
本願発明は、上述の口腔内でのざらつき、異物感を回避するため、平均粒子径が300μm以下の薬物含有粒子であっても、不快な味を低減させ、溶出性のよい粒子が得られることを目的として見出したものであり、特に、上記(1)〜(3)を含む被覆組成物で被覆造粒した場合に達成できることを見出したものである。
【0065】
本発明の固形製剤
本発明の薬物含有粒子を用いて、固形製剤を製造することができる。適用できる剤型としては、例えば、錠剤状製剤または粒状製剤が例示できる。錠剤状製剤としては、錠剤や丸剤が、粒状製剤としては、顆粒剤、細粒剤または散剤が例示できる。また、固形製剤は、口腔内速崩壊製剤であってもよく、これには錠剤(口腔内速崩壊錠)や粒状製剤(口腔内速崩壊顆粒や口腔内速崩壊散)が含まれる。
【0066】
本発明の固形製剤には、通常、薬物含有粒子に加えて、特に支障のない限り、固形医薬製剤の製造に用いられる薬学的に許容される製剤化成分を配合され、このような「製剤化成分」としては、配合しても不都合がなく、且つ、配合の必要性があるものならばいずれでもよく、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等が挙げられる。
【0067】
賦形剤の例としては、たとえば、乳糖、ショ糖、D−マンニトール、デンプン、結晶セルロース、エリスリトール、トレハロース、無水リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウムなどが例示できる。また、結合剤としては、アラビアゴム、でんぷん類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン、ゼラチン、エチルセルロース、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0068】
また、滑沢剤として、例えば、ステアリン酸やステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸金属塩、タルク、コロイドシリカ、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウムなど、崩壊剤として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースなどが用いられる。
【0069】
また、必要に応じて、安定化剤(エデト酸ナトリウム、トコフェロール、L−アスコルビン酸、L−システイン、亜硫酸塩など)、流動化剤(軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなど)、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、など)、防腐剤、着色剤(食用色素、三二酸化鉄、カルミンなど)、香料(ストロベリーを含む種々の果実香料並びにヨーグルト、ミント、メントールなど)、矯味剤等を加えてもよい。
【0070】
矯味剤としては、ネオテーム、ソーマチン(タウマチン)、アスパルテーム、ステビア、サッカリンナトリウム、グルタミン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらは単品で使用してもよいが、二種または数種の併用であってもよい。
【0071】
本発明の固形製剤は、製剤分野において慣用の方法を用いて製造することができる。例えば本発明の薬物含有粒子に上述のような諸成分を均一に混合したのち、その混合物を公知手段で製剤化することができる。例えば錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤などの経口投与に適した各種固形製剤に製剤化することができる。例えば、錠剤の場合は、薬物含有粒子と賦形剤、崩壊剤等を加え、混合し、結合剤を加えて造粒を行って顆粒とし、これに滑沢剤を加えて打錠して錠剤とすることができる。又は、薬物含有粒子と賦形剤および崩壊剤等の製剤化成分を、混合機を用いて混合し、これを打錠してもよいし、製剤化成分の混合物を造粒したのち薬物含有粒子を混合し、これを打錠してもよい。
【0072】
また、顆粒剤においても錠剤とほぼ同様な方法の流動層造粒を行なうか、攪拌造粒を行うことにより製造することができる。散剤等も同様な方法で製造できる。
【0073】
本発明においては、薬物含有粒子を口腔内速崩壊製剤に適用することもできる。適用できる剤型としては、錠剤(口腔内速崩壊錠)や粒状製剤(口腔内速崩壊顆粒や口腔内速崩壊散)が含まれる。
【0074】
本発明の口腔内速崩壊製剤は、製剤分野において慣用の方法を用いて製造することができる。例えば本発明の薬物含有粒子に上述のような諸成分を均一に混合したのち、その混合物を公知手段で製剤化することができる。例えば、錠剤の場合は、薬物含有粒子と賦形剤、崩壊剤等を加え、混合し、結合剤を加えて造粒を行って顆粒とし、これに滑沢剤を加えて打錠して錠剤とすることができる。又は、薬物含有粒子と賦形剤および崩壊剤等の製剤化成分を、混合機を用いて混合し、これを打錠してもよいし、製剤化成分の混合物を造粒したのち薬物含有粒子を混合し、これを打錠してもよい。また、顆粒剤においても錠剤とほぼ同様な方法の流動層造粒を行なうか、攪拌造粒を行うことにより製造することができる。散剤等も同様な方法で製造できる。
【0075】
例えば、WO00/047233(薬物、デンプンおよび水溶性賦形剤をデンプン結合液で造粒し、打錠)、特開平11-263723(水溶性の高い糖と水溶性結合剤の混合液で薬物を造粒、乾燥後打錠しエージング)、WO99/47124(薬物、糖類、および非晶質糖類を打錠後加湿乾燥)、特開平08-291051号(薬物、水溶性結合剤および水溶性賦形剤の混合物を低圧成形後、加湿乾燥)、特開平05-271054(薬物と糖類の混合物で、糖類の粒子表面が湿る条件で打錠)、特開平9-71523(崩壊剤に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、賦形剤に結晶セルロース、これと滑沢剤を混合・打錠)に、開示された製造方法などが挙げられる。
【0076】
本発明における「口腔内速崩壊製剤」とは、製剤を服用するために水を摂取することなく、口腔内で主として唾液により60秒以内に崩壊する製剤を意味し、通常、40秒以内、好ましくは35秒以内で崩壊する。
【0077】
かくして得られる本発明の固形製剤は、口腔内で薬物に由来する不快な味を感じさせることなく、消化管内での溶出性もよく、日本薬局方第15改正に記載の溶出試験(37℃、溶媒:溶出I液、II液およびマッキュルベイン(McIlvaine)緩衝液(pH2〜9)、第2法(50回転/分))において、速溶性を示すものである。なお、粒状製剤においては製剤の特性に応じて第1法(50回転/分)においても速溶性を示す。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0079】
尚、以下の実施例および比較例において、クエン酸モサプリド・2水和物とは、(±)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド クエン酸塩・2水和物であって、大日本住友製薬(株)のものを使用する(平均粒子径約8μm)。
【0080】
また、ファモチジンとは、N−スルファモイル−3−(2−グアニジノ−チアゾール−4−イル−メチルチオ)−プロピオンアミジンであって、三洋化学研究所(株)のものを使用する(平均粒子径約14μm)。
【0081】
本発明で使用するポリソルベート80は、日本油脂株式会社製の日局ポリソルベート80(HX)を使用した。タルクは、林化成株式会社製のものを、ステアリン酸マグネシウムは、太平化学産業株式会社製のものを、クロスカルメロースナトリウムは、FMC BioPolymer社製のAc-Di-Solを、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-21)は、信越化学工業株式会社製のものを、メタクリル酸コポリマーLDは、三洋化成工業株式会社製のポリキッドPA-30Sを使用した。軽質無水ケイ酸は、日本アエロジル株式会社製のアエロジール200を、コーンスターチは、日本食品化工株式会社製のコーンスターチ(XX16)Wを、D−マンニトールは、ロケット社製のPEARLITOLを使用した。フマル酸ステアリルナトリウムは、JRS pharma社製のPRUVを使用した。
【0082】
実施例1
下記仕込み量に従って、被覆コーティング分散液を調製した。即ち、精製水(567g)にポリソルベート80を加え、十分に混和させた後、タルク、クロスカルメロースナトリウムを加え、十分に攪拌した(第1液)。これとは別に、水酸化ナトリウムを精製水(67.65g)に溶解させた溶液を、メタクリル酸コポリマーLDに徐々に加え、攪拌した(第2液)。第1液に第2液を加え懸濁させ、177μm開口径のメッシュ網で篩過し、被覆コーティング分散液とした。
【0083】
【表1】

【0084】
クエン酸モサプリド・2水和物346.5gと軽質無水ケイ酸 3.5gを500μm開口径のメッシュ網で篩過してポリエチレン袋内で十分に混合し、薬物含有組成物を調製後、強制循環装置付ワースター型流動層造粒機(改良ワースター型流動層造粒機、MP−01 SPC),株式会社パウレック製)に入れ、上記の被覆コーティング分散液を噴霧した。噴霧時は給気温度を約80〜90℃、排気温度を約26〜30℃に保ち、ボトムスプレーで噴霧液流量10〜12g/min、スプレーエア流量80L/min、スプレーエアー圧力0.2〜0.3MPa、サイドエアー圧力0.2〜0.25MPa、給気風量約0.30〜0.55m/minで製造を行った。被覆コーティング分散液の噴霧量が約1306gの時点でコーティングを終了し、排気温度が42℃になるまで乾燥した。得られた粒子を32メッシュ(目開き500μm)の篩で篩過し、平均粒子径が約98μmの薬物含有粒子を得た。
【0085】
実施例2
実施例1と同様にして、下記表2の仕込み量に記載の被覆コーティング分散液を調製した。得られた被覆コーティング分散液を用いて、実施例1と同様にして、薬物含有粒子を製造した(平均粒子径 約79μm)。なお、コーティングに使用した液量は、表2に示すとおりである。
【0086】
【表2】

【0087】
実施例3〜4
下記表3に示す仕込み量で、実施例1および2で各々得られた薬物含有粒子を、D-マンニトール、コーンスターチ、およびフマル酸ステアリルナトリウムと混合し、打錠圧12kNで打錠し、1錠重量150mg、直径7.5mmの錠剤を製造した。
【0088】
【表3】

【0089】
実施例5
ファモチジン346.5gと軽質無水ケイ酸 3.5gを500μm開口径のメッシュ網で篩過してポリエチレン袋内で十分に混合し、薬物含有組成物を調製後、実施例1の被覆コーティング分散液を用いて、実施例1と同様にして、平均粒子径が約165μmの薬物含有粒子を得た。
【0090】
実施例6
下記表4に示す仕込み量で、実施例5で得られた薬物含有粒子を、D-マンニトール、コーンスターチ、およびフマル酸ステアリルナトリウムと混合し、打錠圧12kNで打錠し、1錠重量150mg、直径7.5mmの錠剤を製造した。
【0091】
【表4】

【0092】
比較例1
下記表5に記載の仕込み量に従って、被覆コーティング分散液を調製した。即ち、精製水(188.5g)にポリソルベート80を加え、十分に混和させた後、メタクリル酸コポリマーLDに徐々に加え、攪拌し、177μm開口径のメッシュ網で篩過し、被覆コーティング分散液とした。
【0093】
その後、クエン酸モサプリド・2水和物346.5gと軽質無水ケイ酸 3.5gを500μm開口径のメッシュ網で篩過してポリエチレン袋内で十分に混合し、薬物含有組成物を調製後、得られた被覆コーティング分散液を用いて実施例1と同様にして薬物含有粒子を製造した(平均粒子径:約104μm)。なお、コーティングに使用した液量は、表5に示すとおりである。
【0094】
【表5】

【0095】
比較例2および3
実施例1と同様にして下記表6に記載の被覆コーティング分散液を調製した。該被覆コーティング分散液を用いて、実施例1と同様にして、薬物含有粒子を製造した(平均粒子径:比較例2(約146μm)、比較例3(約53μm))。なお、コーティングに使用した液量は、表6に示すとおりであり、この粒子は、被覆組成物にタルクまたはクロスカルメロースナトリウムが配合されていない点において、本発明とは区別される。
【0096】
【表6】

【0097】
比較例4〜6
下記表7に示す仕込み量で、比較例1〜3で各々得られた薬物含有粒子を、D-マンニトール、コーンスターチ、およびフマル酸ステアリルナトリウムと混合し、打錠圧12kNで打錠し、1錠重量150mg、直径7.5mmの錠剤を製造した。
【0098】
【表7】

【0099】
実施例7〜10
実施例1と同様にして、下記表8の仕込み量に記載の被覆コーティング分散液を調製した。得られた被覆コーティング分散液を用いて、実施例1と同様にして、薬物含有粒子を製造した(平均粒子径:実施例7(約90μm)、実施例8(約84μm)、実施例9(約47μm)、実施例10(約60μm))。なお、コーティングに使用した液量は、表8に示すとおりである。
【0100】
【表8】

【0101】
実施例11〜14
下記表9に示す仕込み量で、実施例7〜10で各々得られた薬物含有粒子を、D-マンニトール、コーンスターチ、およびフマル酸ステアリルナトリウムと混合し、打錠圧12kNで打錠し、1錠重量150mg、直径7.5mmの錠剤を製造した。
【0102】
【表9】

【0103】
実施例15
実施例1と同様にして、下記表10の仕込み量に記載の被覆コーティング分散液を調製した。得られた被覆コーティング分散液を用いて、実施例1と同様にして、薬物含有粒子を製造した(平均粒子径:約98μm)。なお、コーティングに使用した液量は、表10に示すとおりである。
【0104】
【表10】

【0105】
実施例16
下記表11に示す仕込み量で、実施例15で得られた薬物含有粒子を、D-マンニトール、コーンスターチ、およびフマル酸ステアリルナトリウムと混合し、打錠圧12kNで打錠し、1錠重量150mg、直径7.5mmの錠剤を製造した。
【0106】
【表11】

【0107】
試験例1
各実施例及び各比較例で製造された薬物含有粒子および錠剤の特性を調べ、表12及び表13の結果を得た。なお、薬物含有粒子については不快な味の遮蔽度を、錠剤については、不快な味の遮蔽度、服用感、および溶出試験をおこなった。表12は、各実施例及び各比較例で製造された薬物含有粒子の不快な味の遮蔽度、錠剤の不快な味の遮蔽度および服用感、表13は、日本薬局方第15改正に記載の溶出I液、マッキュルベイン(McIlvaine)緩衝液(pH5.0)、溶出II液での錠剤の溶出試験の結果を示す。なお、各溶出試験については、日本薬局方第15改正の記載に従って行った。
【0108】
【表12】

【0109】
【表13】

【0110】
このように、本願発明の薬物含有粒子は、不快な味をマスキングし、さらに、該粒子を含む製剤は、粒子同士の凝集を回避し、膜成分の溶解を促進できることにより、酸性〜中性領域において優れた溶出性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の薬物含有粒子は、薬物の苦味等の不快な味の低減を図ることができ、さらに、該粒子を含む製剤は不快な味のマスキングおよび消化管内での速溶性を実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物を、下記の成分を含む被覆組成物で被覆造粒した薬物含有粒子:
(1)腸溶性高分子、
(2)崩壊剤および
(3)凝集防止剤。
【請求項2】
凝集防止剤(3)が、酸化チタン、ステアリン酸またはその金属塩、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、硬化油およびタルクからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の薬物含有粒子。
【請求項3】
被覆組成物が、腸溶性高分子(1)100重量部に対して、凝集防止剤(3)を0.1〜260重量部の割合で含む、請求項1または2に記載の薬物含有粒子。
【請求項4】
凝集防止剤(3)が、タルクを含む請求項2又は3に記載の薬物含有粒子。
【請求項5】
被覆組成物が、腸溶性高分子(1)100重量部に対して、タルクを35〜260重量部の割合で含む、請求項4に記載の薬物含有粒子。
【請求項6】
被覆組成物が、腸溶性高分子(1)100重量部に対して、崩壊剤(2)を5〜40重量部の割合で含む、請求項1〜5のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【請求項7】
崩壊剤(2)が、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、でんぷん類、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびクロスポビドンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項6記載の薬物含有粒子。
【請求項8】
崩壊剤(2)が、クロスカルメロースナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース或いはこれらの混合物である請求項7記載の薬物含有粒子。
【請求項9】
腸溶性高分子(1)が、腸溶性セルロース誘導体類および腸溶性アクリル酸系共重合体類からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【請求項10】
腸溶性高分子(1)が、腸溶性アクリル酸系共重合体類からなる群から選択される少なくとも1種である請求項9に記載の薬物含有粒子。
【請求項11】
腸溶性アクリル酸系共重合体類が、メタクリル酸コポリマーである請求項10に記載の薬物含有粒子。
【請求項12】
不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物を、下記成分を下記割合で含む被覆組成物で被覆造粒した薬物含有粒子:
(1)メタクリル酸コポリマー、
(2)メタクリル酸コポリマー100重量部に対して、35〜260重量部の割合のタルクおよび
(3)メタクリル酸コポリマー100重量部に対して、5〜40重量部の割合のクロスカルメロースナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース或いはこれらの混合物。
【請求項13】
凝集防止剤(3)が、ステアリン酸またはその金属塩を含む請求項2又は3に記載の薬物含有粒子。
【請求項14】
被覆組成物が、腸溶性高分子(1)100重量部に対して、ステアリン酸またはその金属塩を0.1〜15重量部の割合で含む、請求項13に記載の薬物含有粒子。
【請求項15】
不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物を、下記成分を下記割合で含む被覆組成物で被覆造粒した薬物含有粒子:
(1)メタクリル酸コポリマー、
(2)メタクリル酸コポリマー100重量部に対して、0.1〜15重量部の割合のステアリン酸またはその金属塩および
(3)メタクリル酸コポリマー100重量部に対して、5〜40重量部の割合のクロスカルメロースナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース或いはこれらの混合物。
【請求項16】
平均粒子径が300μm以下である請求項1〜15のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の薬物含有粒子と他の製剤化成分を含む固形製剤。
【請求項18】
固形製剤が錠剤状製剤または粒状製剤である請求項17に記載の固形製剤。
【請求項19】
錠剤状製剤が錠剤または丸剤である請求項18に記載の固形製剤。
【請求項20】
粒状製剤が、顆粒剤、細粒剤または散剤である請求項18に記載の固形製剤。
【請求項21】
固形製剤が口腔内速崩壊製剤である請求項17〜20のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項22】
口腔内速崩壊製剤が錠剤である請求項21に記載の固形製剤。
【請求項23】
口腔内速崩壊製剤が粒状製剤である請求項21に記載の固形製剤。
【請求項24】
不快な味を有する薬物を含む薬物含有組成物に、(1)腸溶性高分子、(2)崩壊剤および(3)凝集防止剤を含む被覆組成物並びに水または含水溶媒を含有する被覆コーティング分散液を用いて、被覆造粒して粒子化することを特徴とする薬物の不快な味を低減した薬物含有粒子の製造方法。

【公開番号】特開2008−214334(P2008−214334A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19834(P2008−19834)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】