説明

被覆処理された無機充填材の製造方法および当該無機充填材を用いた複合材料の製造方法

【課題】流動性が高い、かさ密度が大きいなど、取扱性に優れた被覆処理済みの無機充填材の製造方法を提供すること、及び、耐熱性に優れた複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】シランカップリング剤が添加された1wt%酢酸水溶液にタルクを加えて攪拌する。そして、当該酢酸水溶液に加えて攪拌したタルクを当該酢酸水溶液から取り出す。その後、酢酸水溶液から取り出したタルクをマイクロ波加熱により乾燥する。また、これにより得られた被覆処理済みのタルクとポリプロピレンとを混練する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆処理された無機充填材の製造方法および当該無機充填材を用いた複合材料の製造方法に関する。本発明により製造された無機充填材は、プラスチック、ゴムなどの樹脂に混合する充填材として好適なものである。
【背景技術】
【0002】
無機充填材を樹脂などに混合する場合、樹脂と無機充填材との結合強度を向上させるために、表面処理剤で無機充填材をあらかじめ被覆処理する技術がある。そして被覆処理された無機充填材を樹脂に混合するのである。表面処理剤は樹脂と無機充填材との結合強度を向上させるためのものである。
【0003】
この種の技術として、例えば特許文献1に記載されているような技術がある。特許文献1に記載されたシランカップリング剤被覆無機物質の製造方法は、シランカップリング剤とポリメトキシシロキサンとが共存状態にある被覆剤で無機物質の表面を被覆するというものである。具体的には、シランカップリング剤とポリメトキシシロキサンとを混合してこれら両成分が共存状態にある被覆剤とする。得られた被覆剤を無機物質に添加し混合物とする。そして得られた混合物を攪拌装置で攪拌することにより、無機物質の表面を被覆する。被覆対象である無機物がアルカリ土類金属塩である炭酸カルシウムであったとしても、この製造方法によると、シランカップリング剤による被覆処理効果を容易に発現させることができると、特許文献1において称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−127671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、例えば供給装置を使用して被覆処理された無機充填材を樹脂に供給・混合する場合、無機充填材の流動性が低いと、無機充填材がその供給装置内で詰まることがある。無機充填材がその供給装置内で詰まると作業効率が低下してしまう。また、例えば無機充填材のかさ密度が小さい場合には上記供給装置の大型化が必要になってくる場合がある。すなわち、無機充填材の流動性が低かったり、そのかさ密度が小さかったりすると、取扱性に劣った無機充填材となってしまう。
【0006】
また、流動性の低い無機充填材と、樹脂とを混合して複合材料(無機充填材・樹脂複合材料)を製造した場合、得られた複合材料の耐熱性が低くなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、取扱性に優れた被覆処理済みの無機充填材の製造方法を提供することである。また、耐熱性に優れた複合材料の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、樹脂などに混合する無機充填材の被覆処理において、液体形態の表面処理剤を付着させた無機充填材をマイクロ波加熱により乾燥させることで、従来技術に比し無機充填材の流動性が高まるとともに、そのかさ密度も大きくなり、これにより前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、無機充填材の表面全体に液体形態の表面処理剤を付着させる工程と、前記表面処理剤が付着した前記無機充填材をマイクロ波加熱により乾燥させる工程と、を備える被覆処理された無機充填材の製造方法である。
また好適には、前記表面処理剤がシランカップリング剤であることである。
【0010】
無機充填材とは、樹脂などに混合する無機材料のことをいう。無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ウオラストナイト、ガラス粉末などが挙げられる。また、これらのうちの1種または2種以上を混合した無機充填材であってもよい。また、無機充填材の形態は、粉状体または粒状体である。
【0011】
液体形態の表面処理剤は、樹脂などと無機充填材との結合強度を向上させるためのものであり、前記したように、シランカップリング剤を挙げることができる。表面処理剤の他の例としては、チタネート系カップリング剤やアルミネート系カップリング剤などが挙げられる。
【0012】
シランカップリング剤としては、例えば、メタクリロキシ系、エポキシ系、メルカプト系、アミノ系、ビニル系などの有機官能基をもつシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリミトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0013】
無機充填材の表面全体に液体形態の表面処理剤を付着させる工程としては、大きく分けて乾式法と湿式法とがある。本発明に係る製造方法は、乾式法でも湿式法でも適用できる。乾式法は、例えば、無機充填材に表面処理剤を原液のまま直接添加して攪拌し、無機充填材の表面全体に液体形態の表面処理剤を付着させる方法である。乾式法は、表面処理剤を適当な溶媒に溶かして無機充填材に添加して攪拌し、無機充填材の表面全体に液体形態の表面処理剤を付着させる方法であってもよい。これら乾式法では、例えばヘンシェルミキサーが攪拌機として使用される。次に、湿式法は、表面処理剤が添加された水溶液中に無機充填材を加えて攪拌処理し、そして攪拌処理した無機充填材を水溶液中から取り出すことにより、無機充填材の表面全体に液体形態の表面処理剤を付着させる方法である。攪拌処理した無機充填材を洗浄およびろ過することにより水溶液中から当該無機充填材を取り出す。この湿式法は、乾式法に比して、表面処理剤による無機充填材の被覆をより均一に行える、粉状または粒状の無機充填材の形状をより壊さずに行える、といった利点を有している。
【0014】
マイクロ波加熱とは、被加熱物にマイクロ波を作用させて行う誘電加熱のことをいう。マイクロ波は、0.1〜30GHzの周波数のものを使用する。マイクロ波加熱の印加電力は、50〜300Wとする。印加電力を300Wよりも大きくすると、表面処理剤および水がマイクロ波を吸収しやすいため、突沸を生じやすくなる。突沸を生じると加熱が不均一になり被覆処理にムラが生じやすい。また、印加電力を50Wよりも小さくすると、無機充填材と表面処理剤との化学結合反応、および乾燥が進みにくくなる。そのため、処理時間がかかり過ぎることとなり、被覆処理された無機充填材の量産に不適切となる。
【0015】
マイクロ波加熱による加熱時間は、無機充填材の量、印加電力などに左右されるが、例えば0.5〜1.5時間である。無機充填材を覆う表面処理剤が乾燥するまで加熱すればよく、マイクロ波照射が長すぎても意味がない。また、マイクロ波照射の時間が短すぎると表面処理剤の乾燥が不十分となる。乾燥が不十分な無機充填材を樹脂などに混合すると、無機充填材を樹脂へ混練する過程において、無機充填材から水分が蒸発し気泡を生じる。これにより、無機充填材と樹脂との混練物の品質が低下する場合がある。
【0016】
また、本発明者らは、前記の被覆処理された無機充填材の製造方法により得られた無機充填材と樹脂とを混合(または、混練)することにより、耐熱性に優れた複合材料(無機充填材・樹脂複合材料)を製造することができることを見出した。なお、上記樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、本発明の構成要件、特に、液体形態の表面処理剤が付着した無機充填材をマイクロ波加熱することにより、無機充填材に付着した表面処理剤などがその分子の振動による摩擦によって発熱する。これにより、表面処理剤および無機充填材が乾燥すると同時に無機充填材と表面処理剤との化学結合反応も進行し、その結果、従来技術に比し無機充填材の流動性が高まるとともに、そのかさ密度も大きくなる。すなわち、本発明によると、取扱性に優れた被覆処理済みの無機充填材を製造することができる。
【0018】
また、本発明の被覆処理された無機充填材の製造方法により得られた無機充填材と樹脂とを混合(または、混練)することにより、流動性が高められた、換言すれば分散性の高められた無機充填材と樹脂とが混合(または、混練)され、その結果、耐熱性に優れた複合材料(無機充填材・樹脂複合材料)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例および比較例1〜3の製造方法の異なる各タルクの安息角を示すグラフである。
【図2】実施例および比較例1〜3の製造方法の異なる各タルクのかさ密度を示すグラフである。
【図3】未処理のタルクを10分間混練したタルク/PP複合材料の破断面SEM写真である(実施例2における比較例2)。
【図4】オーブン乾燥により処理したタルクを10分間混練したタルク/PP複合材料の破断面SEM写真である(実施例2における比較例1)。
【図5】マイクロ波乾燥により処理したタルクを10分間混練したタルク/PP複合材料の破断面SEM写真である(実施例2における実施例)。
【図6】実施例および比較例1、2の製造方法の異なる各タルクを混練したタルク/PP複合材料の融解潜熱を示すグラフである(実施例2)。
【図7】実施例および比較例1、2の製造方法の異なる各タルクを混練したタルク/PP複合材料の熱分解温度を示すグラフである(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について実施例および比較例に基づき説明する。
【0021】
(実施例)
1wt%酢酸水溶液を攪拌しながら、この酢酸水溶液に、シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、商品名:サイラエースS710、チッソ株式会社製)を6ml滴下する。そして、シランカップリング剤を滴下した酢酸水溶液を1時間攪拌する。その後、タルク(商品名:MS、日本タルク株式会社製)60gを、シランカップリング剤を滴下し攪拌した酢酸水溶液に加える。そして、タルクを加えた酢酸水溶液をさらに1時間攪拌する。これにより、タルクの表面全体にシランカップリング剤が付着する。
【0022】
次に、シランカップリング剤を含有する酢酸水溶液に加えて攪拌したタルクを、当該酢酸水溶液から取り出す。タルクの取り出しは、タルクを洗浄・ろ過することにより行う。酢酸水溶液から取り出されたタルクは、シランカップリング剤がその表面に付着しているだけの状態にある。
【0023】
次に、酢酸水溶液から取り出したタルクをマイクロ波加熱により乾燥させる。本実施例では、酢酸水溶液から取り出したタルクを電子レンジ(品番:NE−EH22、松下電器産業株式会社製)を使用してマイクロ波加熱により乾燥させた。電子レンジの印加電力を100Wとし、酢酸水溶液から取り出したタルクをマイクロ波により1時間乾燥させた。このようにして、シランカップリング剤により被覆処理されたタルク(以下、実施例に係る被覆処理タルク、と呼ぶ)を製造する。ここで、電子レンジでは、2.45GHzの周波数のマイクロ波を用いている。一方、915MHzや28GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波加熱装置も市販されており、タルクの乾燥にこれら周波数のマイクロ波を使用することもできる。ただし、マイクロ波加熱装置では、一般に電子レンジと同じ2.45GHzの周波数のマイクロ波を用いている。
【0024】
(比較例1)
比較例1に係る被覆処理タルクは、実施例に係る被覆処理タルクの製造工程において、酢酸水溶液から取り出したタルクの乾燥工程のみが異なるものである。比較例1に係る被覆処理タルクは、酢酸水溶液から取り出したタルクを150℃に設定したオーブンで周囲からの熱伝導によって加熱乾燥させたものである。
【0025】
(比較例2)
比較例2に係る被覆処理タルクは、シランカップリング剤をスプレーでタルクに噴霧して攪拌したのち、オーブンで周囲からの熱伝導によって加熱乾燥させたものである。タルクに対して5wt%の量のシランカップリング剤を、タルクに噴霧して添加している。
【0026】
(比較例3)
比較例3に係るタルクは、タルク(商品名:MS、日本タルク株式会社製)そのもの、すなわち被覆処理されていない未処理のタルクである。
【0027】
(比較検討結果)
実施例に係る被覆処理タルク、比較例1、2に係る被覆処理タルク、および比較例3に係る未処理タルクの流動性およびかさ密度を比較検討した。流動性の比較検討に関しては、各タルクの安息角を測定した。安息角は、流動性の高い粉粒体ほど小さく、流動性の低い粉粒体の場合には大きくなる。
【0028】
各タルクの安息角の測定方法について説明する。吐出部の穴径φ5mmのロートから、4種類の各タルクをそれぞれφ32mmの円筒の台に落下させて富士山型の山を形成させる。そして、その山の高さh(mm)を計測する。安息角θは、式:θ=tan−1(h/16)より算出する。安息角θの比較結果を図1に示す。図1は、実施例および比較例1〜3の製造方法の異なる各タルクの安息角θを示すグラフである。
【0029】
図1に示すように、実施例に係る被覆処理タルク、すなわちマイクロ波加熱を利用して乾燥させたタルクの安息角が、比較例1、2に係る被覆処理タルク・比較例3に係る未処理タルクの安息角よりも小さい。すなわち、マイクロ波加熱を利用して乾燥させたタルクの流動性が最も高いことがわかる。流動性が高いということは、例えば供給装置を使用して被覆処理されたタルクを樹脂などに供給・混合する場合に、当該供給装置内でタルクが詰まりにくいことを意味する。すなわち、マイクロ波加熱を利用して乾燥させたタルクは取扱性に優れる。
【0030】
次に、かさ密度に関する各タルクの比較結果について説明する。4種類の各タルクをそれぞれ10mlのメスシリンダーに充填し3回タップする。その後、各タルクの重量および体積を測定し、各タルクのかさ密度を算出する。かさ密度(g/cm)とは、容器に被測定物を充填し、その被測定物が占める容積を体積としたときの密度のことである。かさ密度の比較結果を図2に示す。図2は、実施例および比較例1〜3の製造方法の異なる各タルクのかさ密度を示すグラフである。
【0031】
図2に示すように、実施例に係る被覆処理タルク、すなわちマイクロ波加熱を利用して乾燥させたタルクのかさ密度が、比較例1、2に係る被覆処理タルク・比較例3に係る未処理タルクのかさ密度よりも大きい。かさ密度が大きいということは、例えば供給装置を使用して被覆処理されたタルクを樹脂などに供給・混合する場合に、当該供給装置を小型化できることを意味する。すなわち、マイクロ波加熱を利用して乾燥させたタルクは、かさ密度という観点からも取扱性に優れる。
【0032】
(実施例2)
熱可塑性樹脂は、成形性に優れる一方、耐熱性が低いという欠点がある。ここで、本発明者らは、マイクロ波加熱を利用して乾燥させた無機充填材を樹脂に混合して複合材料(無機充填材/熱可塑性樹脂複合材料)を製造することで、その耐熱性を飛躍的に向上させることができることを見出した。以下に、実施例を記載する。なお、樹脂は、熱可塑性樹脂ではなく、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0033】
エタノール800g、蒸留水100g、および酢酸9gを混合した水溶液に、シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、商品名:サイラエースS710、チッソ株式会社製)15.7gを滴下し、1時間攪拌する。その後、タルク(商品名:SG−95、日本タルク株式会社製)300gを加えてさらに1時間攪拌する。攪拌終了後、タルク(シランカップリング剤が表面全体に付着している)を取り出しその半分を電子レンジ(品番:NE−EH22、パナソニック株式会社製)で100W、2時間、マイクロ波加熱により乾燥させる。比較対照として、残り半分を120℃に設定したオーブンで真空乾燥する。
【0034】
上記方法で調整したタルクを、ポリプロピレン(商品名:E−100GPL、株式会社プライムポリマー製)34.2g、およびマレイン酸変性樹脂(商品名:ユーメックス1001、三洋化成工業株式会社製)1.8gとともに、バッチ式混練機(ラボプラストミル、株式会社東洋精機製作所製)により、200℃、100rpmで、5、10、20、40分混練を行う。混練後、t1.0mmのプレートにプレス成形した試料を物性評価に利用した。すなわち、マイクロ波加熱により乾燥処理した無機充填材と熱可塑性樹脂とを混練して複合材料(無機充填材/熱可塑性樹脂複合材料)を製造した。
【0035】
なお、以下では、マイクロ波加熱により乾燥させたタルクを混練した上記の複合材料を実施例とし、オーブンにより乾燥させたタルクを混練した上記の複合材料を比較例1とし、未処理の(被覆処理されていない)タルクを上記の熱可塑性樹脂に混練した複合材料を比較例2とする。
【0036】
まず、プレス成形した上記試料を液体窒素でそれぞれ冷却し、破断させた面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察した。それらの写真を図3〜5に示す。図3〜5は、それぞれ、比較例2(未処理)、比較例1(オーブン乾燥)、および実施例(マイクロ波乾燥)に係るタルク/PP複合材料の破断面SEM写真である。
【0037】
図3、4からわかるように、未処理のタルクとオーブン乾燥により処理したタルクとは、複合材料(タルク/PP複合材料)中で凝集体として存在している場合があるが(図中の矢印部)、図5からわかるように、マイクロ波(MW)乾燥により処理したタルクは複合材料(タルク/PP複合材料)中で均一に分散していることがわかる(凝集体のようなものは認められない)。
【0038】
次に、実施例および比較例1、2に係る試料(タルク/PP複合材料)の融解潜熱を図6に示す。DSC(示差走査熱量計)により試料を10℃/minで250℃まで昇温して5分間保持し、試料の熱履歴を同一にした後、10℃/minで室温まで冷却し、再び10℃/minで250℃に昇温した際の吸熱量を測定し、これを融解潜熱とした。
【0039】
図6からわかるように、未処理のタルクまたはオーブン乾燥により処理したタルクを混練した試料(比較例2、1)に比べ、MW乾燥により処理したタルクを混練した試料(実施例)は、融解潜熱が大きい。これより、MW乾燥により処理したタルクを混練した試料は、比較例1、2に係る試料よりも結晶化度が高いことがわかる。MW乾燥により処理することにより樹脂中でのタルクの分散性が高くなるため、冷却時に結晶化する際の結晶核としての作用が増大するためと考えられる。
【0040】
また、実施例および比較例1、2に係る試料(タルク/PP複合材料)の熱分解温度を図7に示す。試料を熱分析装置(TGA−DTA、株式会社リガク製)にてN=3で熱分析を実施し、得られたTG曲線の温度微分が最小値をとるときの温度を熱分解温度とした。
【0041】
従来のオーブンを使用した乾燥に比べマイクロ波を用いることにより耐熱性が向上することが図7からわかる。タルクの分散性が向上することにより、タルクが樹脂の熱分解生成物の拡散を阻害し、その結果、タルク/PP複合材料の耐熱性が向上するのである。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機充填材の表面全体に液体形態の表面処理剤を付着させる工程と、
前記表面処理剤が付着した前記無機充填材をマイクロ波加熱により乾燥させる工程と、
マイクロ波加熱により乾燥させられた前記無機充填材と樹脂とを混合する工程と、
を備えることを特徴とする、複合材料の製造方法。
【請求項2】
無機充填材の表面全体に液体形態の表面処理剤を付着させる工程と、
前記表面処理剤が付着した前記無機充填材をマイクロ波加熱により乾燥させる工程と、
を備えることを特徴とする、被覆処理された無機充填材の製造方法。
【請求項3】
前記表面処理剤がシランカップリング剤であることを特徴とする、請求項2に記載の被覆処理された無機充填材の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−263637(P2009−263637A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63018(P2009−63018)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】