説明

被覆加工の作業に用いる固定具

本発明は、物理蒸着被覆加工の作業に用いる固定具であって、円形底部材10、円形底部材10の反対側の円形上端部材11、及び上述底部材10に上述上端部材11を連結する複数の構造部材12を有する支持構造物14と、円筒形状構造物を形成する上述支持構造物14の外面の周りに垂直な方向に整列された複数のパネル部材13とを備え、上述パネル部材13が、被覆が適用される加工物19、35を保持するための複数の開口を有し、上述開口が、上述加工物19、35が千鳥状に垂直方向に整列されるように上述パネル部材13の上に配置される固定具に関する。本発明はまた、本発明の固定具を用いて耐食性被覆でガスタービンの圧縮機のブレード及びベーンなど複数の加工物19、35を同時に被覆加工するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理蒸着被覆加工の作業に用いる固定具、及び耐食性被覆でガスタービン圧縮機のロータ・ブレード及びステータ・ベーンなど複数の加工物を同時に被覆加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
しばしば、航空機、戦車及びヘリコプタのガスタービン・エンジンは、ガスタービン圧縮機のロータ・ブレード及びステータ・ベーンが砂及び塵など侵食性媒体にさらされる砂漠の環境で運転される。これら侵食の効果は、燃料消費の増加、馬力の損失、高い全体の運転温度をもたらし、圧縮機及びタービンのハードウェアに損害を引き起こすことがある。陰極アーク物理蒸着によって適用されたTiN、TiCN、TiZrN、TiZrCN、TiAlN及びTiAlCNなど耐食性被覆が、砂の侵食性環境の中で圧縮機のエアフォイルの耐用年数を延ばすために用いられることができる。例えば、米国特許第5071693号を参照されたい。
【0003】
物理蒸着は照準線式被覆加工プロセスである。被覆加工されるべき基板が、均一の被覆を実現するために蒸気の中で処理されることが必要である。被覆を必要としない基板の部分は、十分にマスクで覆われる必要がある。
【0004】
タービン圧縮機のエアフォイルは、燃焼室の中に空気を送出するために外側に延びるエアフォイル部を有する。エアフォイル部の反対側にあるタービン・エアフォイルの部分は、エンジンのディスク又はロータ部にエアフォイルを取り付けるために用いられ、このディスク又はロータ部は、空気の流れの中になく、したがって侵食性の効果からの保護を必要としない。多くの場合、タービン・エアフォイルのこの部分は鳩尾形の形状を有し、エンジンのディスク又はロータ部の鳩尾形の溝穴の中で組み立てられる。したがって、それは多くの場合ダブテール部と呼ばれる。
【0005】
タービン・エアフォイルのダブテール部の壁はディスク又はロータのダブテール部の溝穴の壁に接触する。長期間又は高速で回転した後、ダブテール部の壁はフレッティングと呼ばれる疲労に関係する現象を見せる。フレッティングは、タービン・エアフォイルのエアフォイル部に適用された被覆によって悪化させられることが分かっている。したがって、タービン・エアフォイルの耐用年数を最大化するようにタービン・エアフォイルの様々な部分の中で所望の特性を実現するために、タービン・エアフォイルのダブテール部に影響を与えることなくタービン・エアフォイルのエアフォイル部を適切に被覆加工する方法を考案することが必要であった。
【0006】
広範囲には、物理蒸着は、電子ビーム蒸着によってタービン・エアフォイルの上へのセラミックの遮熱被覆に用いられる。広範囲な研究が、様々なエアフォイルのサイズ及び形状に均一な被覆を適用するための設計プロセス及び固定法を目的として行われてきた。
【0007】
米国特許第5997947号には、電子ビーム物理蒸着(EBPVD)被覆加工プロセスで用いるモジュラー式の回転式串焼き器タイプの被覆加工用固定具について開示されている。この固定具は、それが第1の軸の周りに回転させられることを可能にするために支持構造物及び支持構造物に取り付けられる手段を備える。この固定具は、被覆加工されるべき1つ又は複数の加工物を保持するために支持構造物の内側にカセット手段をさらに備える。このカセット手段は、このカセット手段が第1の軸に実質的に平行な第2の軸の周りを回転することを可能にするスピンドルによって支持構造物に連結され、それによって被覆加工される各加工物がその縦方向の軸の周りを回転することを可能にする。このカセット手段は、被覆加工されるべきエアフォイルの表面が被覆加工源に本質的に平行に維持されるように各加工物を支持する。
【0008】
上述のように、陰極アーク物理蒸着は、耐食性被覆を適用するために用いられることができる。陰極アーク物理蒸着は、第1次に照準線式蒸着プロセスである。陰極面上の陰極アーク放電によって作り出される蒸気は、陰極面から加工物に向かって基本的に一直線に伝播する。蒸気伝播の第2次の効果は、チャンバのガス雰囲気の中でのイオン化された蒸気の散乱を含む。この散乱は、隅部の周り及び空洞の中にいくらかの均一な電着性、より有意には高イオン化された蒸気の静電気引力を作り出し、したがってエアフォイルのエアフォイル先端部、前縁及び後縁など加工物の縁部及び鋭い輪郭部での被覆積層を促進する。しかしながら、この卓越した蒸着の特徴は、圧縮機のブレード及びベーンのプラットフォーム及びエアフォイルなど平坦な加工物の表面を被覆加工するときの蒸気の照準線式伝播である。エアフォイルの下方部など加工物及びプラットフォームの上に最大被覆厚さを形成するためには、陰極面と加工物表面の間の視界は、遮られるべきではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
複数の加工物を同時に被覆加工することを可能にし、高品質の被覆の生成を促進する物理蒸着被覆加工の作業に用いる被覆加工用固定具に対する必要性が当技術分野で持続している。この被覆加工用固定具は、保護用被覆加工を必要としない部分を保護しながら保護用被覆加工を必要とする加工物の部分だけに被覆加工の適用を可能にするべきものである。さらに、この被覆加工用固定具は、再使用可能で、製造することが比較的廉価であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は被覆加工の作業に用いる固定具に関し、この固定具は、円形底部材、円形底部材の反対側の円形上端部材、及び前記底部材に前記上端部材を連結する複数の構造部材を有する支持構造物と、円筒形状構造物を形成する前記支持構造物の外面の周りに垂直な方向に整列され、前記円形上端部材及び前記底部材に固定される複数のパネル部材とを備え、前記パネル部材は被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口は前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口は被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、前記パネル部材は複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材は前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、前記開口は、前記加工物が垂直方向に整列され、被覆加工を必要とする加工物の部分が前記開口の外部にある容積の中に延び、被覆加工を必要としない加工物の部分が前記開口の内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が、前記バリヤを横切って開口の内部容積と開口の外部にある容積の間に存在しない。
【0011】
本発明はまた、複数の加工物を同時に被覆加工するための方法であって、(i)円形底部材、円形底部材の反対側の円形上端部材、及び前記底部材に前記上端部材を連結する複数の構造部材を有する支持構造物と、円筒形状構造物を形成する前記支持構造物の外面の周りに垂直な方向に整列され、前記円形上端部材及び前記底部材に固定される複数のパネル部材とを備える固定具であって、前記パネル部材が、被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口が前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口が被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、前記パネル部材が複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材が前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、前記開口が、前記加工物が垂直方向に整列され、被覆加工を必要とする加工物の部分が前記開口の外部にある容積の中に延び、被覆加工を必要としない加工物の部分が前記開口の内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が前記バリヤを横切って開口の内部容積と開口の外部にある容積の間に存在しない固定具を用意するステップと、(ii)前記パネル部材の前記開口の中に加工物を取り付け、固定するステップと、(iii)被覆加工材料源を有する被覆加工用チャンバの中の回転可能駆動システムの上に前記固定具を配置するステップと、(iv)固定具を回転させるために駆動システムを作動し、前記開口の外部にある容積の中に延びる前記加工物の部分を物理蒸着によって同時に被覆加工するステップとを含む方法に関する。
【実施例】
【0012】
上述のように、本発明の固定具は、円形底部材10、前記円形底部材10の反対側の円形上端部材11、及び前記底部材10に前記上端部材11を連結する複数の構造部材12を有する支持構造物14と、円筒形状構造物を形成する前記支持構造物14の外面の周りに垂直な方向に整列され、前記円形上端部材11及び前記底部材10に固定される複数のパネル部材13とを備え、前記パネル部材13は、被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口は前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口は被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、前記パネル部材13は複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材が前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口の中で前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、前記開口は、前記加工物が垂直方向に整列され、被覆加工を必要とする加工物の部分が前記開口の外部にある容積の中に延び、被覆加工を必要としない加工物の部分が前記開口の内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材13の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が、前記バリヤを横切って開口の内部容積と開口の外部にある容積の間に存在しない。好ましい実施例では、具体的には、本発明の固定具は、TiN又は同様の耐食性被覆で圧縮機のエアフォイルの物理蒸着被覆加工に用いるためになされている。
【0013】
本発明の固定具の主要な特徴は、垂直に配置された円筒形固定具が約12個以下から約36個以上、好ましくは18個から約30個、より好ましく約22個から約26個の細長い平坦なパネル固定具を保持すること、パネル部材が約5個以下から約25個以上、好ましくは約10個から約20個、より好ましくは約10個から約15個のエアフォイルから成る1から約4以上の列、好ましくは2列をしっかりと保持し、ダブテール部をマスクで覆うようになされること、パネル部材が、同様の大きさであるが相異なった部品タイプが1回の被覆加工の稼動で容易に混合し整合することを可能にすること、エアフォイルの垂直の配置により被覆加工の前及び間で塵への露出が最小限に抑えられること、千鳥状のエアフォイル配置により自己遮蔽によって被覆の損失が最小限に抑えられること、ダブテール部の正確なマスキングが精密機械加工のマスク及び追加の遮蔽によって遂行されること、円周方向のダブテール部を有する部品の係止が可動のクランプ板によって遂行されること、レッジ・タイプのダブテール部を有する部品の係止がドロップイン・サンドウィッチ・タイプのコンセプトによって遂行されること、並びにパネルが組立の後で水洗浄及び蒸気によるグリース除去を可能にし、それによって洗浄の後での部品と人間の接触をなくすようになされていることを特に有する。
【0014】
図1に示す被覆加工用固定具は、円筒形支持構造物14の外面の周りに垂直な方向に整列されたパネル部材13を有する円筒形支持構造物14を示す。図1は、円形底部材10、円形上端部材11、及び構造部材12、すなわち円形上端部材11に円形底部材10を連結する棒状部材を示す。図1では、円形上端部材11は前記パネル部材13の端部を受け入れる手段を有し、底部材10はまた前記パネル部材13の端部を受け入れるための手段を有し、それによって支持構造物14にパネル部材13を固定する。一実施例では、上端部材11は、高くなった舌部又はレッジ部の上に適合することを可能にするかぎ状の端部を有するパネル部材13を受け入れるために高くなった舌部又はレッジ部を有することができる。底部材10は前記パネル部材13の端部を受け入れるための溝を有することができる。円筒形支持構造物14にパネル部材13を取り付けるための他の適した手段は、かぎ、ボルト、ナット、ねじ、ワイヤ、クリップ及びピンなどを含むことができる。通例の固定手段がパネル部材13及び円筒形支持構造物14とともに用いられることができる。この被覆加工用固定具は、被覆加工用固定具のサイズ及びパネル部材13のサイズに応じて約12個以下から約36個以上のパネル部材13を含むことができる。
【0015】
この固定具のサイズは、狭い範囲では重要ではなく、広い範囲にわたって様々であることができる。しかしながら、図4に示すように、この固定具は、被覆加工用チャンバ41の中の回転可能駆動システム40の上にその配置が可能であり、駆動システム40が作動されることが可能であり、それによって固定具が回転することを可能にするように適切なサイズから成るべきである。典型的には、この固定具の円周は、約75センチメートル以下から約250センチメートル以上、好ましくは約90から約200センチメートル、より好ましくは約90から約125センチメートルに及ぶことがある。典型的には、この固定具の直径は、約20センチメートル以下から約100センチメートル以上、好ましくは約25から約75センチメートル、より好ましくは約30から約50センチメートルに及ぶことがある。典型的には、この固定具の高さは、約20センチメートル以下から約100センチメートル以上、好ましくは約25から約75センチメートル、より好ましくは約30から約50センチメートルに及ぶことがある。
【0016】
図2に示すように、ロータ・ブレード19の被覆加工に有用なパネル部材は、(i)前記加工物19を保持するための開口を有さない、前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離するためのベース・バリアを形成するベース・マスク板部材20と、(ii)前記加工物19を保持するための複数の開口を有し、前記ベース・マスク板部材20の上に配置されるベース板部材21と、(iii)前記加工物19を保持するための複数の開口を有するクランプ板部材22であって、前記開口が前記ベース板部材21の開口に整列され、前記クランプ板部材22が前記ベース板部材21の上に配置され、前記クランプ板部材22が前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離するための上部バリヤを形成し、前記開口に前記加工物19を固定するクランプ板部材22と、(iv)前記加工物19を保持するための複数の開口を有するロータ・ブレード支持板部材23であって、前記開口が前記ベース板部材21及びクランプ板部材22の開口に整列され、前記ロータ・ブレード支持板部材23が前記クランプ板部材22の上に配置されるロータ・ブレード支持板部材23と、(v)前記加工物19を保持するための複数の開口を有するロータ・ブレード・マスク板部材24であって、前記開口が前記ベース板部材21、クランプ板部材22及びロータ・ブレード支持板部材23の開口に整列され、前記ロータ・ブレード・マスク板部材24が前記ロータ・ブレード支持板部材23の上に配置されるロータ・ブレード・マスク板部材24と、(vi)前記ベース・マスク板部材20、ベース板部材21、クランプ板部材22、ロータ・ブレード支持板部材23及びロータ・ブレード・マスク板部材24をともに固定するための締付け手段25、27、28、29とを有する。
【0017】
前記ベース・マスク板部材20、ベース板部材21、クランプ板部材22、ロータ・ブレード支持板部材23及びロータ・ブレード・マスク板部材24をともに固定するための例示の締付け手段は、図2に示すように、例えば、ねじ、スペーサ及びナットなどを有する。他の適した締付け手段は、ボルト、ピン、ワイヤ及びクリップなどを有することができる。通例の締付け手段がパネル部材で用いられることができる。
【0018】
クランプ板部材22は、パネル部材の中にロータ・ブレード加工物19を固定するために重要である。図2に示すように、前記クランプ板部材22の開口は、前記ベース板部材21及び前記ロータ・ブレード支持板部材23の開口に取外し可能に連結可能である。クランプ板部材22は、ベース板部材21及びロータ・ブレード支持板部材23の締付け手段の開口より大きい締付け手段の開口を有し、それによって、クランプ板部材22がパネル部材にロータ・ブレード加工物19を固定するよう調整されることが可能になる。
【0019】
ロータ・ブレードの被覆加工に有用なパネル部材のサイズは、狭い範囲では重要ではなく、広い範囲にわたって様々であることができる。しかしながら、パネル部材は、それらの支持構造物への配置及び固定を可能にするように適したサイズから成るべきである。典型的には、これらパネル部材は、長さで約20センチメートル以下から約100センチメートル以上、好ましくは約25から約75センチメートル、より好ましくは約30から約50センチメートルに及ぶことがある。典型的には、これらパネル部材は、幅で約2センチメートル以下から約10センチメートル以上、好ましくは約2から約6センチメートル、より好ましくは約2から約5センチメートルに及ぶことがある。典型的には、これらパネル部材は、厚さで約0.1センチメートル以下から約1センチメートル以上、好ましくは約0.2から約0.6センチメートル、より好ましくは約0.2から約0.5センチメートル以上に及ぶことがある。
【0020】
図3で示すように、ステータ・ベーン35の被覆加工に有用なパネル部材は、(i)前記加工物35を保持するための開口を有さない、前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離するためのベース・バリアを形成するベース・マスク板部材30と、(ii)前記加工物35を保持するための複数の開口を有し、前記ベース板部材30の上に配置されるルート・マスク板部材31と、(iii)前記加工物35を保持するための複数の開口を有するマスキング板部材32であって、前記開口が前記ルート・マスク板部材31の開口に整列され、前記マスキング板部材32が前記ルート・マスク板部材31の上に配置され、前記ルート・マスク板部材31及び前記マスキング板部材32が前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物35を固定するための上部バリヤを形成するマスキング板部材32と、(iv)前記ベース板部材30、ルート・マスク板部材31及びマスキング板部材32をともに固定するための締付け手段とを有する。
【0021】
前記ベース板部材30、ルート・マスク板部材31及びマスキング板部材32をともに固定するための例示の締付け手段は、例えば、図3に示すように、ねじ、スペーサ及びナットなどを有する。他の適した締付け手段は、ボルト、ピン、ワイヤ及びクリップなどを含むことができる。通例の締付け手段がパネル部材とともに用いられることができる。
【0022】
ベーンの被覆加工に有用なパネルのサイズは、狭い範囲では重要ではなく、広い範囲にわたって様々であることができる。しかしながら、これらパネル部材は、それらの支持構造物への配置及び固定が可能であるように適切なサイズから成るべきである。典型的には、これらパネル部材は、長さで約20センチメートル以下から約100センチメートル以上、好ましくは約25から約75センチメートル、より好ましくは約30から約50センチメートルに及ぶことがある。典型的には、これらパネル部材は、幅で約2センチメートル以下から約10センチメートル以上、好ましくは約2から約6センチメートル、より好ましくは約2から約5センチメートルに及ぶことがある。典型的には、これらパネル部材は、厚さで約0.1センチメートル以下から約1センチメートル以上、好ましくは約0.2から約0.6センチメートル、より好ましくは約0.2から約0.5センチメートルに及ぶことがある。
【0023】
これらパネル部材は、1回の被覆加工の稼動で同様の大きさであるが相異なった加工物タイプを容易に混合し整合することを可能にする。例えば、固定具は、ガスタービン圧縮機のロータ・ブレードを備えたいくつかのパネル部材及びガスタービン圧縮機のステータ・ベーンを備えた他のパネル部材を有することができる。各パネル部材が全て同じ加工物を含むことが好ましい。本発明の被覆加工用固定具のデザインにより、高生産性及び高い歩留まりで多数のエアフォイルの効率的な被覆加工が可能となる。初回の被覆加工の歩留まりは、微粒子汚染によって引き起こされる被覆加工の損失を最小限に抑えることにより極めて高い。この高い歩留まりは、以下で説明する垂直に最適化されたエアフォイルの方位によって達成される。
【0024】
この被覆加工用固定具は、図1、5、6に示すように、先端部が円筒形表面上で外側を向く状態でエアフォイルの方向を合わせる。1回の被覆加工の稼動でエアフォイルを混合させ整合する柔軟性を実現するためには、同一の部品タイプのエアフォイルが、円筒形支持構造物に取り付けられ、部品を特定するパネル部材にグループ化される。典型的には、パネル部材は1から約4以上の列を保持することができ、各列は約5個以下から約25個以上の加工物を保持するための開口を含む。エアフォイルは、表面上の塵の捕集を最小限に抑えるように垂直に方向を合わせられ、それによって被覆加工の欠陥を防止する。エアフォイルは、被覆加工の積層を最大化し、自己遮蔽を最小限に抑えるように隔置され、配置されることが好ましい。これは、本明細書で説明し、図7で示すように、エアフォイルの列の間隔及び千鳥状のエアフォイル配置によって実現される。
【0025】
本発明の被覆加工用固定具では、ダブテール部は、被覆加工の積層に対してマスクで覆われ、覆われない場合は普通ならロータ/ステータ組立プロセスの際に磨耗の問題及び所望でない寸法の問題をもたらすことになる。全てのマスキング板は、最小限のオーバースプレーをダブテール部の精密なマスキングにもたらすように精密機械加工される。
【0026】
さらに、以下で説明するように、全ての固定具は、洗浄液用の処理済脱水穴を配置することによって組立の後での水洗浄及び蒸気によるグリース除去を可能にするようになされている。このコンセプトは、最終洗浄の後に被覆加工されるべき表面との接触がないことを確実にする。
【0027】
パネル部材の上で加工物を保持するための開口の数は、狭い範囲では重要ではなく、用いられる陰極アーク被覆加工設備のタイプ及びサイズ、並びにエアフォイルのサイズに応じて広い範囲にわたって様々であることができる。典型的には、パネル部材は、加工物を保持するための開口から成る1から約4以上の列、好ましくは2列を有し、各列は加工物のサイズに応じて約5個以下から約25個以上の開口を有する。加工物を保持するために約5個から約20個の開口から成る2列を有することが好ましい。
【0028】
本発明の固定具は、ガスタービン圧縮機のロータ・ブレード及びステータ・ベーンなどの加工物の被覆加工を可能にする。これら加工物は、円周方向、レッジ部付、軸方向及びその他など様々なダブテール部のデザイン又は形状を有することができる。エアフォイルのダブテール部のデザイン又は形状に関しては、ダブテール部は、ロータ/ステータ組立プロセスの際に磨耗の問題及び所望でない寸法の問題を防止するように被覆加工の積層に対してマスクで覆われる必要がある。本発明によると、円周方向又は軸方向のダブテール部、典型的にはロータ・ブレードを有するエアフォイルのためのパネル部材は、図2で示すようにマスキング板24、ロータ・ブレード支持板23、クランプ板22、ベース板21及びベース・マスキング板20から成る多層シートメタル構造として構成される。軸方向ダブテール部を有するエアフォイルのためのパネル部材は、ダブテール部のマスクとして機能をやはり果たす取付けブロックを有するようになされることがある。レッジ部を備えるダブテール部を有するエアフォイル、典型的にはステータ・ベーンのためのパネル部材は、図3で示すようにマスキング板32、ルート・マスク板31及びベース板30から成る多層シートメタル構造として構成される。全てのマスキング板は、最小限のオーバースプレーをダブテール部の精密なマスキングにもたらすように精密機械加工される。
【0029】
上述のように、本発明の好ましい実施例では、被覆加工用固定具は、垂直に配置されたパネル部材から成る円筒形ドラムを備える。本発明の別の変形例は、垂直に積み重なった円形又はリング状のパネル部材によって柱体を構成することである。この変形例は、パネル部材の実施例と同じ方法でエアフォイルを配置し、加工物の混合及び整合をやはり可能にする。
【0030】
この実施例によると、本発明は被覆加工の作業に用いる固定具に関し、この固定具は、円形底部材、円形底部材の反対側の円形上端部材、及び前記底部材に前記上端部材を連結する複数の構造部材を有する支持構造物と、円筒形状構造物を形成する前記支持構造物の外面の周りに水平な方向に整列された複数の円形パネル部材とを備え、前記パネル部材が、被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口が前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口が被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、前記パネル部材が複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材が前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、前記開口が、前記加工物が水平方向に整列され、被覆加工を必要とする加工物の部分が前記開口の外部にある容積の中に延び、被覆加工を必要としない加工物の部分が前記開口の内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が、前記バリヤを横切って開口の内部容積と開口の外部にある容積の間に存在しない。
【0031】
ブレードを被覆加工するために有用な円形パネル部材のサイズは、狭い範囲では重要ではなく、広い範囲にわたって様々であることができる。しかしながら、円形パネル部材は、それらの支持構造物への配置及び固定を可能にするように適切なサイズから成るべきである。典型的には、円形パネル部材は、円周で約75センチメートル以下から約250センチメートル以上、好ましくは約80から約200センチメートル、より好ましくは約90から約150センチメートルに及ぶことがある。典型的には、円形パネル部材は、幅で約2センチメートル以下から約10センチメートル以上、好ましくは約2から約6センチメートル、より好ましくは約2から約5センチメートルに及ぶことがある。
【0032】
円形パネル部材の上で加工物を保持するための開口の数は、狭い範囲では重要ではなく、広い範囲にわたって様々であることができる。典型的には、円形パネル部材は、加工物を保持するための開口から成る1から約4以上の列、好ましくは2列を有し、各列は、加工物のサイズに応じて約12個以下から約200個以上の開口を有する。円形パネル部材は、加工物を保持するために約12個から約100個の開口から成る2列を有することが好ましい。
【0033】
円形パネル部材を伴う実施例では、支持構造物の円形上端部材は、前記円形パネル部材の側面を受け入れるための手段を有することができ、底部材はまた、前記円形パネル部材の側面を受け入れるための手段を有することができ、それによって支持構造物に円形パネル部材を固定する。一実施例では、上端部材及び底部材は、前記円形パネル部材の側面を受け入れるために溝を有することができる。円筒形の支持構造物に円形パネル部材を取り付けるための他の適した手段は、ボルト、ナット、ねじ、ピン、ワイヤ及びクリップなどを含むことができる。通例の固定手段が円形パネル部材及び支持構造物とともに用いられることができる。
【0034】
垂直に配置されたパネル部材と同様に、円形パネル部材の上のエアフォイルは、表面上の塵の捕集を最小限に抑えるように垂直に方向を合わせられ、それによって被覆加工の欠陥を防止する。エアフォイルは、被覆加工の積層を最大化し、自己遮蔽を最小限に抑えるように隔置され、配置されることが好ましい。これは、本明細書で説明し、図7で示すようにエアフォイルの列の隔置及び千鳥状のエアフォイル配置によって実現される。
【0035】
本発明の被覆加工用固定具の構成部品は、当技術分野で知られる任意の適した材料から形成されることができる。しかしながら、固定具材料は、被覆加工の作業のイオン・エッチング及びめっきプロセス・ステップで被覆加工されるべき加工物に電流フローを供給するよう導電性であるべきである。例えば、円筒形支持構造物の全ての構成部品、及びパネル部材の全ての構成部品は、ステンレス鋼、例えばSST304及びインコネルなど金属材料から形成されることができる。
【0036】
全ての固定具は、洗浄液用の処理済脱水穴を配置することによって組立の後での水洗浄及び蒸気によるグリース除去を可能にするようになされている。このコンセプトは、最終洗浄の後に被覆加工されるべき表面との接触がないことを確実にする。具体的には、固定具は、開口の水洗浄溶液の容易な脱水が可能であるようになされている。これにより、固定部アセンブリの洗浄が、加工物の固定の後、加工物の表面の上のどのような汚染物も除去することが可能になる。加工物の表面の汚染は、人間の接触などによって固定の間に導入される可能性がある。図3で示すようにベーンを被覆加工するためのパネル部材で用いられるベース板部材は、水洗浄溶液の除去用の複数の脱水用穴を有することが好ましい。
【0037】
やはり上述のように、本発明は複数の加工物を同時に被覆加工するための方法に関し、この方法は、(i)円形底部材10、円形底部材10の反対側の円形上端部材11、及び前記底部材10に前記上端部材11を連結する複数の構造部材12を有する支持構造物14と、円筒形状構造物を形成する前記支持構造物14の外面の周りに垂直な方向に整列され、前記円形上端部材11及び前記底部材10に固定された複数のパネル部材13とを備える被覆加工の作業に用いる固定具であって、前記パネル部材13が、被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口が前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口が被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、前記パネル部材13が複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材が前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、前記開口が、前記加工物が垂直方向に整列され、被覆加工を必要とする加工物の部分が前記開口の外部にある容積の中に延び、被覆加工を必要としない加工物の部分が前記開口の内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が前記バリヤを横切って開口の内部容積と開口の外部にある容積の間に存在しない固定具を用意するステップと、(ii)前記パネル部材13の前記開口の中に加工物を取り付け、固定するステップと、(iii)被覆加工材料源を有する被覆加工用チャンバ41の中の回転可能駆動システム40の上に前記固定具を配置するステップと、(iv)固定具を回転させるために駆動システム40を作動し、前記開口の外部にある容積の中に延びる前記加工物の部分を物理蒸着によって同時に被覆加工するステップとを含む。
【0038】
図4に示すように、固定具は、物理蒸着被覆加工用チャンバ41の中の回転可能駆動システム40、例えば回転テーブルの上に配置される。アーク陰極42は被覆加工用チャンバ41の側壁の上に配置される。回転可能駆動システム40は、作動させられ、固定具を回転させる。加工物は物理蒸着によって同時に被覆加工される。図6は、各パネル部材が加工物で一杯の状態のパネル部材で一杯にされている固定具を示す。
【0039】
本発明はまた複数の加工物を同時に被覆加工するための方法に関し、この方法は、(i)円形底部材、円形底部材の反対側の円形上端部材、及び前記底部材に前記上端部材を連結する複数の構造部材を有する支持構造物と、円筒形状構造物を形成する前記支持構造物の外面の周りに水平な方向に整列された複数の円形パネル部材とを備える固定具であって、前記パネル部材が、被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口が前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口が被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、前記パネル部材が複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材が前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、前記開口が、前記加工物が水平方向に整列され、被覆加工を必要とする加工物の部分が前記開口の外部にある容積の中に延び、被覆加工を必要としない加工物の部分が前記開口の内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が前記バリヤを横切って開口の内部容積と開口の外部にある容積の間に存在しない固定具を用意するステップと、(ii)前記パネル部材の前記開口の中に加工物を取り付け、固定するステップと、(iii)被覆加工材料源を有する被覆加工用チャンバの中の回転可能駆動システムの上に前記固定具を配置するステップと、(iv)前記固定具を回転させるために駆動システムを作動し、前記開口の外部にある容積の中に延びる前記加工物の部分を物理蒸着によって同時に被覆加工するステップとを備える。
【0040】
被覆加工用チャンバの中での物理蒸着は、当技術分野で知られる通例の方法で実施されることができる。例えば米国特許第5071693号を参照されたい。この特許の開示は参照により本明細書に組み込まれている。本発明の被覆加工用固定具とともに用いられることができる例示の耐食性被覆加工システムは、TiN、TiCN、TiZrN、TiZrCN、TiAlN及びTiAlCNなどを含む。物理蒸着は、反応性蒸着又はスパッタリングなどによって、例えば陰極アーク蒸着、中空陰極反応性電子ビーム蒸着及び反応性スパッタリングなどによって耐食性被覆加工を適用するために用いられることができる。
【0041】
エアフォイルの下方部など加工物及びプラットフォームで最大被覆厚さを形成するためには、陰極面と加工物表面の間の視界は遮られるべきではない。パネル上及び回転用固定具上の列に加工物を垂直に配列する好ましい配置でも、加工物は、列が近すぎて隔置される場合にそれら自体を遮断することがある。この自己遮蔽は、隣接する列の中の加工物により蒸気流束が妨害されずに蒸気が列の中の加工物に到達することが可能になるように列が十分に広く隔置されるとき、最小限に抑えられることができる。
【0042】
プラットフォーム及び加工物のエアフォイルの下方部への蒸気流束をさらに増進するためには、蒸気が、1列の加工物を通過し、次の列のプラットフォーム及び千鳥状の加工物のエアフォイルの下方部に到達できるように、垂直方向に加工物を隔置し、列毎に加工物の位置を千鳥状にすることが有利である。
【0043】
好ましい実施例では、基本的には、エアフォイル長さ(プラットフォームから先端部)の1から2倍の列の隔置、エアフォイルの翼弦幅の1から2倍の垂直方向での加工物の隔置、及び列での加工物の交互の千鳥状の配置が、自己遮蔽なしに自由に立った状態のプラットフォーム及び加工物のエアフォイルの下方部に同じ蒸着速度をもたらす。
【0044】
本発明の一実施例では、多層の窒化物含有被覆が、1つの方法によって加工物の上に形成され、この方法は、(a)チャンバ41の中の回転可能駆動システム40の上に被覆加工されるべき加工物を含む固定具を置くステップであって、前記固定具が、円形底部材10、円形底部材10の反対側の円形上端部材11、及び前記底部材10に前記上端部材11を連結する複数の構造部材12を有する支持構造物14と、円筒形状構造物を形成する前記支持構造物14の外面の周りに垂直な方向に整列され、前記円形上端部材11及び前記円形底部材10に固定される複数のパネル部材13とを備え、前記パネル部材13が、被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口が前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口が被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、前記パネル部材13が複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材は前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、前記開口が、前記加工物が垂直方向に整列され、被覆加工を必要とする加工物の部分が前記開口の外部にある容積の中に延び、被覆加工を必要としない加工物の部分が前記開口の内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材13の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が前記バリヤを横切って開口の内部容積と開口の外部にある容積の間に存在しないステップと、(b)チャンバ41にチタン・ベース・ターゲット及び窒素含有ガス混合物を加えるステップと、(c)固定具を回転させるために前記駆動システム40を作動し、窒素含有ガス混合物の中の窒素と反応し、前記開口の外部にある容積の中に延びる加工物の部分の上に所望の窒素含有物の窒化チタン含有層を形成するようにチタン蒸気を形成するためにチタン・ベース・ターゲットからチタンを同時に蒸発させるステップと、(d)以前に蒸着された被覆の中に含有される窒素と少なくとも2原子パーセントの窒素が異なる窒素含有物を有する別の窒化チタン含有層を被覆加工された加工物の上に形成するためにステップ(c)の中の窒素とチタンの比を変更するステップと、(e)1つの層が隣接する層の中に含有される窒素と少なくとも2原子パーセント異なる窒素を含有する少なくとも2つの層の多層被覆を形成するためにステップ(d)を少なくとも1回繰り返すステップとを含む。窒素とチタンの比は、電流を変え、窒素の流れを変え、又は両方を組み合わせることによって変更されることができる。
【0045】
本発明の別の実施例では、多層の窒化物含有被覆が、ある方法によって加工物の上に形成され、この方法は、蒸着用チャンバ41の中の回転可能駆動システム40の上に被覆加工されるべき加工物を含む固定具を置くステップであって、前記固定具が、円形底部材10、円形底部材10の反対側の円形上端部材11、及び前記底部材10に前記上端部材11を連結する複数の構造部材12を有する支持構造物14と、円筒形状構造物を形成する前記支持構造物14の外面の周りに垂直な方向に整列され、前記円形上端部材11及び前記底部材10に固定される複数のパネル部材13とを備え、前記パネル部材13が、被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口が前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口が被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、前記パネル部材13が複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材が前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口の中に前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、前記開口が、前記加工物が垂直方向に整列され、被覆加工を必要とする加工物の部分が前記開口の外部にある容積の中に延び、被覆加工を必要としない加工物の部分が前記開口の内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材13の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が前記バリヤを横切って開口の内部容積と開口の外部にある容積の間に存在しないステップと、(b)蒸着用チャンバ41に窒素含有ガス混合物とともに陽極及びチタン・ベース陰極を加えるステップと、(c)固定具を回転させるために前記駆動システム40を作動し、窒素含有ガス混合物の中の窒素と反応し、前記開口の外部にある容積の中に延びる加工物の部分の上に所望の窒素含有物の窒化チタン含有層を形成するようにチタン蒸気を形成するためにチタン・ベースの陰極からチタンを蒸発させる電流を確立するために陰極と陽極の間に電圧を同時に印加するステップと、(d)以前に蒸着された被覆の中に含有される窒素と少なくとも2原子パーセントの窒素が異なる窒素含有物を有する別の窒化チタン含有層を被覆加工された加工物の上に形成するためにステップ(c)の窒素とチタンの比を変更するステップと、(e)少なくとも1つの層が隣接する層の中に含有される窒素と少なくとも2原子パーセント異なる窒素を含有する少なくとも2つの層の多層被覆を形成するためにステップ(d)を少なくとも1回繰り返すステップとを含む。窒素とチタンの比は、電流を変え、窒素の流れを変え、又は両方を組み合わせることによって変更されることができる。
【0046】
窒素含有ガス混合物は、アルゴン・窒素、クリプトン・窒素、ヘリウム・窒素、キセノン・窒素及びネオン・窒素などであることが好ましい。
【0047】
各層の窒化物含有化合物は、33%から55%、好ましくは40%から50%、より好ましくは42%から50%の原子パーセントの窒素を有することができる。隣接する層の窒化物含有化合物は、33%から45%、好ましくは39%から42%の原子パーセントの窒素を有することができる。1つの層での窒素含量は、隣接する層の窒素含量より少なくとも2原子%の窒素が異なるべきである。多層の被覆は、物理蒸着など通例のプロセス技術を用いることによって蒸着されることができる。薄板状の層に対する窒素とチタンの比を交互に変更すると、被覆加工化合物の結晶粒の成長プロセスが阻害され、化合物の結晶粒のサイズが個々の層の厚さ以下となる。
【0048】
好ましい被覆は、33%から45%の原子パーセントの窒素を有する窒化チタンの層と交互に40%から55%の原子パーセントの窒素を有する窒化チタンの層を備えることができ、少なくとも1つの層が、その層の両側面にある各隣接する層の窒素含量と少なくとも2原子パーセント異なる窒素を有する。上述範囲の窒素を有する窒化チタンは、格子間隔の小さな差異を備える同じ方位及び結晶構造を有することができ、層間の密着した接合部分が高強靭性特性を形成すると期待できる。
【0049】
本発明の被覆加工用固定具は高品質で均一に分布された被覆の蒸着を容易にする。多層の被覆の硬度及び靭性は、層の組成及び間隔に密接に関係する。個別の層の厚さ及び多層被覆の全体の厚さは、特定の用途によって決まる。高靭性を必要とするシステム用途に対しては、より少ない窒素の含量を有する層が、より多い含量の窒素を含有する層より1から20倍厚くなるべきである。概して、全体の被覆厚さが5μmから30μmあればほとんどの耐食に対して十分である。
【0050】
個々の層の厚さは、非常に様々であることができ、例えば0.1と5μmの間、好ましくは約1μmの厚さである。層の数は、少なくとも2であり、少なくとも1つの層が隣接する層の窒素含量の2%多いか又は少ない原子パーセントの窒素を有する。被覆を形成する窒化物含有化合物の層の数は、2から特定の用途のために所望の任意の数まで様々であることができる。概して、5から50層、好ましくは15から40層の被覆がほとんどの用途に適するであろう。
【0051】
いくつかの用途では、被覆の次の多層を支持するために窒化物含有化合物の比較的厚い第1の層、及び/又はより堅い上面を形成する厚い上部層を有することが望ましいことがある。理想的には、多層被覆は、チタン、鋼、アルミニウム、ニッケル、コバルト、及びそれらの合金などから作製される加工物の被覆加工に適している。
【0052】
別の実施例では、本発明は、多層に被覆加工される加工物、例えばロータ・ブレード及びステータ・ベーンに関し、これら加工物は、各層がチタン、ジルコニウム、チタン合金及びジルコニウム合金を含む群からの少なくとも1つの添加剤を含有する状態で窒化物含有化合物の少なくとも2つの層で被覆加工され、少なくとも1つの層が隣接する層に含有される窒素と少なくとも2原子パーセント異なる窒素を含有する。この層はまた、アルミニウム、バナジウム、モリブデン、ニオブ、鉄、クロム、マンガンを含む群から少なくとも1つの要素を含有することができる。多層被覆加工される加工物は、少なくとも1つの層が隣接する層のそれぞれに含有される窒素と少なくとも2原子パーセント異なる窒素を含有する3つ以上の層を有することが好ましい。
【0053】
本発明の様々な修正例及び変形例が当分野の技術者には明白であり、これら修正例及び変形例がこの用途の範囲並びに特許請求の精神及び範囲の中に含まれるべきものであることが理解されよう。
【0054】
「実施例」
多層の窒化チタンの被覆が、図6に示すように被覆加工用固定具及び物理蒸着アーク蒸気プロセスを用いてロータ・ブレード及びステータ・ベーンの加工物の上に蒸着された。パネル部材は、ロータ・ブレード又はステータ・ベーンが取り付けられ、次いで、被覆加工用固定具の円筒形支持構造物の上に固定された。次いで、被覆加工用固定具は、蒸着用チャンバの中に置かれた。蒸着の前に、蒸着用チャンバは、7X10−4Paより下の圧力に真空にされ、次いで、0.7Paにアルゴンで埋め戻された。被覆加工されるべきロータ・ブレード及びステータ・ベーンの加工物は、表面汚染物を除去するためにスパッタされた。被覆加工用固定具は、被覆加工プロセスの間、毎分約1〜10回転で回転された。その後、直接電流アークが、チタン陰極と、1.3と4.8Paの間の全体圧力のアルゴン・Nガス混合物の中でTi陰極からのTiを蒸発するために陽極として作用するチャンバとの間で活性化された。イオン化されたTi蒸気は、Nイオンと反応し、次いで、加工物の上に窒化被覆を形成した。被覆加工の多層構造が蒸着の間にN流量速度を変更することによって形成された。典型的には、この被覆はB層の厚さがA層の厚さより大きいA及びB窒化物層の薄板状の層から成った。概して、A層の中の窒素濃度はB層の中の窒素含量より多かった。この蒸着はA及びB層の交互の15の多層被覆を形成した。先端部に近いエアフォイルで結果として生じた被覆の厚さは約17〜20μm、プラットフォームに近いエアフォイルでは約7から9μm、プラットフォームでは約9〜10μmであった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】円筒形支持構造物及びそこに固定された3個のパネル部材を示す固定具の部分の斜視図である。
【図2】ロータ・ブレードの被覆加工に用いられるパネル部材の一部の分解図である。
【図3】ステータ・ベーンの被覆加工に用いられるパネル部材の一部の分解図である。
【図4】被覆加工用チャンバの中の回転テーブルの上に配置された固定具部の側面図である。
【図5】円筒形支持構造物、及びそこに固定されたパネル部材を示す被覆加工用固定具の写真である。
【図6】固定具に固定されたパネル部材を示す被覆加工用固定具の写真である。
【図7】千鳥状のエアフォイル配置を示すパネル部材の一部の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形底部材、前記円形底部材の反対側の円形上端部材、及び前記底部材に前記上端部材を連結する複数の構造部材を有する支持構造物と、
円筒形状構造物を形成する前記支持構造物の外面の周りに垂直な方向に整列され、前記円形上端部材及び前記底部材に固定される複数のパネル部材と
を備える被覆加工の作業に用いる固定具であって、
前記パネル部材が、被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口が前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口が被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、
前記パネル部材が複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材が、前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、
前記開口が、前記加工物が垂直方向に整列され、被覆加工を必要とする前記加工物の部分が前記開口の外部にある前記容積の中に延び、被覆加工を必要としない前記加工物の部分が前記開口の前記内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が前記バリヤを横切って前記開口の前記内部容積と前記開口の外部にある前記容積の間に存在しない固定具。
【請求項2】
複数の加工物を同時に被覆加工するための方法であって、
(i)円形底部材、前記円形底部材の反対側の円形上端部材、及び前記底部材に前記上端部材を連結する複数の構造部材を有する支持構造物と、
円筒形状構造物を形成する前記支持構造物の外面の周りに垂直な方向に整列され、前記円形上端部材及び前記底部材に固定される複数のパネル部材と
を備える固定具であって、
前記パネル部材が、被覆が適用される加工物を保持するために複数の開口を有し、前記開口が前記支持構造物から離れて外側の方を向き、前記開口が被覆加工を必要としない前記加工物の部分を受け入れるようになされ、
前記パネル部材が複数の板部材を有し、少なくともいくつかの前記板部材が前記開口の外部にある容積から前記開口の内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するためのバリヤを形成し、
前記開口が、前記加工物が垂直方向に整列され、被覆加工を必要とする前記加工物の部分が前記開口の外部にある前記容積の中に延び、被覆加工を必要としない前記加工物の部分が前記開口の前記内部容積の内側に維持されるように前記パネル部材の上に配置され、その結果、本質的には、直接の連通が前記バリヤを横切って前記開口の前記内部容積と前記開口の外部にある前記容積の間に存在しない固定具を用意するステップと、
(ii)前記パネル部材の前記開口の中に加工物を取り付け、固定するステップと、
(iii)被覆加工材料源を有する被覆加工用チャンバの中の回転可能駆動システムの上に前記固定具を配置するステップと、
(iv)前記固定具を回転させるために前記駆動システムを作動し、前記開口の外部にある前記容積の中に延びる前記加工物の部分を物理蒸着によって同時に被覆加工するステップと
を含む方法。
【請求項3】
前記円形底部材が円形の帯部材を有し、前記円形上端部材が円形の帯部材を有し、前記構造部材が棒状部材を有する、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記上端部材が前記パネル部材の端部を受け入れるための手段を有し、前記底部材が前記パネル部材の端部を受け入れるための手段を有し、それによって、前記支持構造物に前記パネル部材を固定する、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
約12個以下から約36個以上のパネル部材を備える、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
1から約4以上の列を有し、各列が加工物を保持するための約5個以下から25個以上の開口を有するパネル部材を備える、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記開口が、前記加工物が千鳥状に垂直な方向に整列されるように前記パネル部材の上に配置される、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記パネル部材が同じ加工物を有する、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項9】
1つ又は複数のパネル部材が他のパネル部材と異なる加工物を有する、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記パネル部材が、(i)前記加工物を保持するための開口を有さない、前記開口の外部にある前記容積から前記開口の前記内部容積を隔離するためのベース・バリアを形成するベース・マスク板部材と、(ii)前記加工物を保持するための複数の開口を有し、前記ベース・マスク板部材の上に配置されるベース板部材と、(iii)前記加工物を保持するための複数の開口を有するクランプ板部材であって、前記開口が前記ベース板部材の前記開口に整列され、前記クランプ板部材が前記ベース板部材の上に配置され、前記クランプ板部材が前記開口の前記外部にある前記容積から前記開口の前記内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するための上部バリヤを形成するクランプ板部材と、(iv)前記加工物を保持するための複数の開口を有するブレード支持板部材であって、前記開口が前記ベース板部材及びクランプ板部材の前記開口に整列され、前記ブレード支持板部材が前記クランプ板部材の上に配置されるブレード支持板部材と、(v)前記加工物を保持するための複数の開口を有するブレード・マスク板部材であって、前記開口が前記ベース板部材、クランプ板部材及びブレード支持板部材の前記開口に整列され、前記ブレード・マスク板部材が前記ブレード支持板部材の上に配置されるブレード・マスク板部材と、(vi)前記ベース・マスク板部材、ベース板部材、クランプ板部材、ブレード支持板部材及びブレード・マスク板部材をともに固定するための締付け手段とを有する、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記クランプ板部材の前記開口が、前記ベース板部材及び前記ブレード支持板部材の前記開口と取外し可能に連結可能である、請求項10に記載の固定具又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加工物が円周方向のダブテール部を有するエアフォイルである、請求項10に記載の固定具又は請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記加工物が軸方向のダブテール部を有するエアフォイルである、請求項10に記載の固定具又は請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記パネル部材が、(i)前記加工物を保持するための開口を有さない、前記開口の外部にある前記容積から前記開口の前記内部容積を隔離するためのベース・バリアを形成するベース板部材と、(ii)前記加工物を保持するための複数の開口を有し、前記ベース板部材の上に配置されるルート・マスク板部材と、(iii)前記加工物を保持するための複数の開口を有するマスキング板部材であって、前記開口が前記ルート・マスク板部材の前記開口に整列され、前記マスキング板部材が前記ルート・マスク板部材の上に配置され、前記ルート・マスク板部材及び前記マスキング板部材が前記開口の外部にある前記容積から前記開口の前記内部容積を隔離し、前記開口に前記加工物を固定するための上部バリヤを形成するマスキング板部材と、(iv)前記ベース板部材、ルート・マスク板部材及びマスキング板部材をともに固定するための締付け手段を有する、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記加工物がレッジ部を備えるダブテール部を有するベーンである、請求項14に記載の固定具又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加工物が物理蒸着によって被覆加工される、請求項1に記載の固定具又は請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記加工物が耐食性被覆加工システムの物理蒸着によって被覆加工される、請求項16に記載の固定具又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記耐食性被覆加工システムが、TiN、TiCN、TiZrN、TiZrCN、TiAlN及びTiAlCNから選択される、請求項17に記載の固定具又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記耐食性被覆加工システムが多層耐食性被覆加工システムを備える、請求項18に記載の固定具又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項2に記載の方法によって製造される被覆加工物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−501278(P2009−501278A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521563(P2008−521563)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/027033
【国際公開番号】WO2007/008972
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(500092413)プラックセアー エス.ティ.テクノロジー、 インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】