説明

被覆容器装置、その製造方法

本発明は、被覆容器装置、及びその製造方法を提供する。本発明による被覆容器装置は、(1)金属基体、及び(2)金属基体に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を含み、1つ又はそれ以上の架橋コーティング層は、1種又はそれ以上の水性分散体を、金属基体の少なくとも1つの表面に適用することによって得られ、1種又はそれ以上の水性分散体は、(a)1種又はそれ以上のベースポリマー、(b)1種又はそれ以上の安定化剤、(c)場合により、1種又はそれ以上の中和剤、(d)1種又はそれ以上の架橋剤、及び(e)水を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年7月24日に出願された、「COATED CONTAINER DEVICE, METHOD OF MAKING THE SAME」という名称の米国特許仮出願第61/228,366号の優先権を主張する非仮出願であり、その教示は、本明細書において以下に全体が再現されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は被覆容器装置(coated container device)、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腐食を遅延又は抑制するために、金属に様々な処理溶液及び前処理溶液を適用することは、十分に確立されている。これは食品及び飲料用金属缶、並びに非食品用金属容器の分野で特に当てはまる。コーティングは、内容物が容器の金属に接触するのを妨げるため、そのような容器の内側に適用される。金属と食品又は飲料、並びに非食品物質との接触は、金属容器の腐食を引き起こすことがあり、これが延いてはそのような金属容器の食品若しくは飲料、又は非食品内容物を汚染することがある。腐食は、食品及び飲料製品が強い酸性であり、且つ/又は高い塩含量を有するとき、例えばルバーブをベースとする製品又はアイソトニック飲料であるとき、特に問題となる。また、非食品物質の強アルカリ性内容物、例えば毛髪染料も、アルミニウムなどの金属と反応する可能性がある。例えば、食品及び飲料用缶の内側へのコーティングの適用はさらに、食品製品の充填ラインと缶蓋との間の領域である、缶のヘッドスペースの腐食を防ぐのにも役立ち得る。コーティングは、外部環境に対する保護を提供するため、又は充填剤及び/若しくは顔料を含む装飾層を提供するために、金属容器の外側に適用することができる。腐食からの保護に加えて、食品及び飲料用缶のコーティングは、非毒性及び不活性であるべきであり、内部表面に適用される場合、缶の中の食品又は飲料の風味又は外観、例えば色に悪影響を及ぼすべきではなく、又は缶の内容物の汚染の一因となるべきではない。「ワキ(popping)」、「白化(blushing)」、及び/又は「膨れ(blistering)」に対する耐性も望まれる。ある種のコーティングは、コイル状金属ストック、例えば缶の端が作られるコイル状金属ストック、「缶エンドストック(can end stock)」、及びバルブカップ、例えばエアロゾル缶の上端への適用に特に適している。缶エンドストックに用いるために設計されたコーティングは、端部がコイル状金属ストックから切断され打ち抜かれる前に適用されるため、それらのコーティングはまた典型的に可撓性及び/又は伸張性である。例えば、缶エンドストックは典型的に、その両面が被覆される。その後、被覆金属ストックは打ち抜かれ、さらにビード状にされるか、又は曲げられる可能性もある。被覆金属ストックはまた、「引き上げ式(pop-top)」開口部用に刻み目を入れられることがあり、その後、別に製造された引き上げ式リングがピンで取り付けられる。その後、端部は、エッジ圧延工程によって、缶本体に取り付けられる。したがって、缶エンドストックに適用されたコーティングは、一般に、上に論じた他の望ましい特徴の一部又はすべてに加えて、広範な製造工程に耐えることができるように、ある程度の靱性及び可撓性を有する。種々のコーティング、例えばエポキシ系、及びポリ塩化ビニル系、例えばオルガノゾル型コーティングが、金属缶の内側を被覆して、腐食を防ぐためにこれまで用いられてきた。しかしながら、改善された特性を提供する、例えば腐食性媒質中での耐分解性、並びに適切なレベルの可撓性を有する食品及び飲料用缶のライナー、並びに非食品容器のライナーが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被覆容器装置、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、本発明は、(1)金属基体、及び(2)金属基体に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を含み、1つ又はそれ以上の架橋コーティング層は、1種又はそれ以上の水性分散体を、金属基体の少なくとも1つの表面に適用することによって得られ、1種又はそれ以上の水性分散体は、(a)1種又はそれ以上のベースポリマー、(b)1種又はそれ以上の安定化剤、(c)場合により、1種又はそれ以上の中和剤、(d)1種又はそれ以上の架橋剤、及び(e)水を含む、被覆容器装置を提供する。
【0006】
別の実施形態において、本発明はさらに、(1)金属基体を選択する工程、(2)(a)1種又はそれ以上のベースポリマー、(b)1種又はそれ以上の安定化剤、(c)場合により、1種又はそれ以上の中和剤、(d)1種又はそれ以上の架橋剤、及び(e)水を含む、1種又はそれ以上の水性分散体を選択する工程、(3)1種又はそれ以上の水性分散体を、前記金属基体の少なくとも1つの表面に適用する工程、(4)1種又はそれ以上の水性分散体から、少なくとも一部の水を除去する工程、(5)それによって、金属基体の少なくとも1つの表面に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を形成する工程、並びに(6)被覆金属基体を被覆容器装置に形成する工程を含む、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【0007】
別の実施形態において、本発明はさらに、(1)金属基体を選択する工程、(2)金属を容器装置に形成する工程、(3)(a)1種又はそれ以上のベースポリマー、(b)1種又はそれ以上の安定化剤、(c)場合により、1種又はそれ以上の中和剤、(d)1種又はそれ以上の架橋剤、及び(e)水を含む、1種又はそれ以上の水性分散体を選択する工程、(4)1種又はそれ以上の水性分散体を、容器装置の少なくとも1つの表面に適用する工程、(5)1種又はそれ以上の水性分散体から、少なくとも一部の水を除去する工程、(6)それによって、容器装置の少なくとも1つの表面に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を形成する工程、並びに(7)それによって、被覆容器装置を形成する工程を含む、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、金属基体がプレコートされた金属基体であることを除いて、前述の実施形態のいずれかによる、被覆容器装置、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、1種又はそれ以上のベースポリマーが1種又はそれ以上のポリオレフィンを含むことを除いて、前述の実施形態のいずれかによる、被覆容器装置、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、1種又はそれ以上のベースポリマーが、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーからなる群から選択された1種又はそれ以上のポリオレフィンを含むことを除いて、前述の実施形態のいずれかによる、被覆容器装置、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、1種又はそれ以上のベースポリマーが、結晶融点60℃超を有する1種又はそれ以上のポリオレフィンを含むことを除いて、前述の実施形態のいずれかによる、被覆容器装置、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、1種又はそれ以上のベースポリマーが、結晶融点90℃超を有する1種又はそれ以上のポリオレフィンを含むことを除いて、前述の実施形態のいずれかによる、被覆容器装置、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、1種又はそれ以上のベースポリマーが、結晶融点100℃超を有する1種又はそれ以上のポリオレフィンを含むことを除いて、前述の実施形態のいずれかによる、被覆容器装置、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、1種又はそれ以上のベースポリマーが、結晶融点120℃超を有する1種又はそれ以上のポリオレフィンを含むことを除いて、前述の実施形態のいずれかによる、被覆容器装置、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、1種又はそれ以上のベースポリマーが、結晶融点130℃超を有する1種又はそれ以上のポリオレフィンを含むことを除いて、前述の実施形態のいずれかによる、被覆容器装置、被覆容器装置を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、被覆容器装置、及びその製造方法を提供する。
【0017】
本発明による被覆容器装置は、(1)金属基体、及び(2)金属基体に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を含み、1つ又はそれ以上の架橋コーティング層は、1種又はそれ以上の水性分散体を、金属基体の少なくとも1つの表面に適用することによって得られ、1種又はそれ以上の水性分散体は、(a)1種又はそれ以上のベースポリマー、(b)1種又はそれ以上の安定化剤、(c)場合により、1種又はそれ以上の中和剤、(d)1種又はそれ以上の架橋剤、及び(e)水を含む。
【0018】
金属基体は、これらに限定されるものではないが、アルミニウム及びアルミニウム合金、電解ブリキ板冷間圧延低炭素軟鋼(「ETP」)、電解クロム/酸化クロム被覆冷間圧延低炭素軟鋼(ECCS)、及び他の任意の前処理鋼を含む、1種又はそれ以上の金属を含む。前処理には、これらに限定されるものではないが、初期の腐食からの保護及び付着の向上などの理由からリン酸、リン酸ジルコニウム、リン酸クロムなど、並びにシランによる処理を含むことができる。金属基体は、シート、ストリップ、又はコイルを含むことができる。金属基体は、1つ又はそれ以上の層を含むことができ、各層は、0.01μmから2mmの範囲の厚さ、例えば0.01μmから1.5mm、又は別の場合には0.01μmから1mm、又は別の場合には0.01μmから0.5mm、又は別の場合には0.01μmから0.2mm、又は別の場合には0.01μmから0.1mm、又は別の場合には0.01μmから100μm、又は別の場合には0.01μmから50μm、又は別の場合には1μmから50μm、又は別の場合には1μmから15μmを有することができる。基体は、1種又はそれ以上のプレコーティング組成物でプレコートすることができる。そのようなプレコーティング組成物は、これらに限定されるものではないが、1種又はそれ以上の樹脂結合剤、1種又はそれ以上の樹脂架橋剤、1種又はそれ以上の溶媒、1種又はそれ以上の添加剤、及び1種又はそれ以上の顔料を場合によりさらに含むことができる。代表的な樹脂結合剤には、これらに限定されるものではないが、エポキシ、ポリエステル、ポリ塩化ビニル含有オルガノゾル/ビニル、フェノール、アルキド、オレオレジン、アクリル樹脂などが含まれる。代表的な架橋剤には、これに限定されるものではないが、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂;これらに限定されるものではないが、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ベンゾグアナミンホルムアルデヒドを含むアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;無水物樹脂、ブロックイソシアナート樹脂、及びこれらに限定されるものではないが、エポキシ樹脂、エポキシ基含有ポリエステル、アクリル樹脂、ビニル樹脂を含むエポキシ基含有樹脂などが含まれる。代表的な溶媒及び希釈剤には、これらに限定されるものではないが、グリコールエーテル、アルコール、芳香族、例えば芳香族炭化水素、ホワイトスピリット、分岐ケトン、及びエステルが含まれる。代表的な添加剤には、これらに限定されるものではないが、触媒、潤滑剤、湿潤剤、消泡剤、流動剤、剥離剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、硫化汚染をマスキングするための添加剤、顔料湿潤/分散剤、沈降防止剤、UV安定剤、付着促進剤が含まれる。顔料には、これらに限定されるものではないが、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、亜鉛、及びアルミニウムが含まれる。基体は、1種又はそれ以上のプレコート積層組成物でプレコートすることもできる。そのような組成物には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエステル組成物を含むことができ、フィルム積層法によってフィルムとして、又は溶融押出しコーティング法によって金属表面に適用することができる。
【0019】
1つ又はそれ以上のコーティング層は、1種又はそれ以上の水性分散体を、金属基体の少なくとも1つの表面に適用することによって得られる。1種又はそれ以上の水性分散体は、制御圧力及び温度条件下、水及び場合により1種又はそれ以上の中和剤の存在下での、1種又はそれ以上のベースポリマー、及び1種又はそれ以上の安定化剤、及び1種又はそれ以上の架橋剤の溶融ブレンド生成物を含む。別の場合には、1種又はそれ以上の水性分散体は、制御圧力及び温度条件下、水及び場合により1種又はそれ以上の中和剤の存在下での、1種又はそれ以上のベースポリマー、及び1種又はそれ以上の安定化剤の溶融ブレンド生成物、及び後添加の1種又はそれ以上の架橋剤を含む。
【0020】
ベースポリマー
水性分散体は、水性分散体の固体含量の総重量に対して、1から99重量%の1種又はそれ以上の1種又はそれ以上のベースポリマーを含む。1から99重量%のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、この重量%は、下限1、5、8、10、15、20、25重量%から上限40、50、60、70、80、90、95、又は99重量%であることができる。例えば、水性分散体は、水性分散体の固体含量の総重量に対して、15から99、又は15から90、又は15から80、又は15から75、又は30から70、又は35から65重量%の1種又はそれ以上のベースポリマーを含むことができる。水性分散体は、少なくとも1種又はそれ以上のベースポリマーを含む。
【0021】
ベースポリマーは、例えば、熱可塑性材料及び熱硬化性材料からなる群から選択することができる。1種又はそれ以上のベースポリマーは、1種又はそれ以上のオレフィン系ポリマー、1種又はそれ以上のアクリル系ポリマー、1種又はそれ以上のポリエステル系ポリマー、1種又はそれ以上のエポキシ系ポリマー、1種又はそれ以上の熱可塑性ポリウレタンポリマー、1種又はそれ以上のスチレン系ポリマー、1種又はそれ以上のビニル系コポリマー、1種又はそれ以上のポリアミド、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0022】
一実施形態において、1種又はそれ以上のベースポリマーは、1種又はそれ以上のポリオレフィンを含む。1種又はそれ以上のポリオレフィンを含む1種又はそれ以上のベースポリマーは、1種又はそれ以上の非ポリオレフィン熱可塑性材料及び/又は1種又はそれ以上の熱硬化性材料をさらに含むことができる。そのような追加の非ポリオレフィン系ポリマーには、これらに限定されるものではないが、1種又はそれ以上のアクリル系ポリマー、1種又はそれ以上のポリエステル系ポリマー、1種又はそれ以上のエポキシ系ポリマー、1種又はそれ以上の熱可塑性ポリウレタンポリマー、1種又はそれ以上のスチレン系ポリマー、1種又はそれ以上のビニル系コポリマー、1種又はそれ以上のポリアミド、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0023】
ポリオレフィンの例には、これらに限定されるものではないが、1種又はそれ以上のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、及び1−ドデセンのホモポリマー及びコポリマー(エラストマーを含む)、典型的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン−コポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマー、及びプロピレン−1−ブテンコポリマーに代表される;α−オレフィンと共役又は非共役ジエンのコポリマー(エラストマーを含む)、典型的には、エチレン−ブタジエンコポリマー及びエチレン−エチリデンノルボルネンコポリマーに代表される;並びにポリオレフィン(エラストマーを含む)、例えば2種又はそれ以上のα−オレフィンと共役又は非共役ジエンのコポリマー、典型的には、エチレン−プロピレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−1,5−ヘキサジエンコポリマー、及びエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンコポリマーに代表される;エチレン−ビニル化合物コポリマー、例えばエチレン−ビニルアセタートコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−ビニルクロリドコポリマー、エチレンアクリル酸又はエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、及びエチレン−(メタ)アクリラートコポリマーが含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態において、1種又はそれ以上のポリオレフィン系ポリマーは、官能化ポリオレフィン、例えばポリプロピレン又はポリエチレンホモポリマー又はコポリマーであることができ、ここでポリマーは、ヒドロキシル、アミン、アルデヒド、エポキシド、エトキシラート、カルボン酸、エステル、又は無水物基で変性されている。これらの官能化ポリオレフィン、例えばポリプロピレン又はポリエチレンホモポリマー又はコポリマーは、例えば、Baker Hughes,Inc.の子会社、Baker Petroliteから入手可能である。
【0025】
代表的なポリオレフィンには、これらに限定されるものではないが、1種又はそれ以上のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、及び1−ドデセンの1種又はそれ以上の熱可塑性ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマーが含まれ、典型的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン−コポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマー、及びプロピレン−1−ブテンコポリマーに代表される。そのような代表的なポリオレフィンは、分子量800g/モル超、例えば5,000g/モル超、又は別の場合には50,000g/モル超を有することができる。
【0026】
一実施形態において、1種又はそれ以上のポリオレフィンは、結晶融点60℃超、例えば95℃超、又は別の場合には100℃超、又は別の場合には120℃超、又は別の場合には130℃超を有する。
【0027】
一実施形態において、1種又はそれ以上のベースポリマーの少なくとも1種は、コモノマー又はグラフトモノマーとして極性基を有する熱可塑性極性ポリオレフィンポリマーを含む。代表的な極性ポリオレフィンには、これらに限定されるものではないが、無水マレイン酸グラフトポリエチレンホモポリマー又はコポリマー、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンホモポリマー又はコポリマー、エチレン−アクリル酸(EAA)及びエチレン−メタクリル酸コポリマー、例えばThe Dow Chemical Companyから市販されている、商標PRIMACOR(商標)として入手可能なもの、E.I.DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL(商標)、並びにExxonMobil Chemical Companyから市販されており、それぞれそのような極性ポリオレフィンを説明している範囲で参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,599,392号、第4,988,781号、及び第5,938,437号に記載されているESCOR(商標)が含まれる。他の代表的な極性ポリオレフィンには、これらに限定されるものではないが、エチレンエチルアクリラート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリラート(EMMA)、及びエチレンブチルアクリラート(EBA)が含まれる。
【0028】
一実施形態において、極性ポリオレフィンポリマーは、エチレン−アクリル酸(EAA)又はエチレン−メタクリル酸コポリマーであり、これは分散工程において、1種又はそれ以上の中和剤、例えば塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、アンモニア、又は有機アミンで中和することができる。
【0029】
熱可塑性材料は、非ポリオレフィン熱可塑性材料を含むことができる。そのような非ポリオレフィン熱可塑性材料には、ポリマー、例えばポリスチレン、スチレンコポリマー(エラストマーを含む)、ABS、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、α−メチルスチレン−スチレンコポリマー、スチレンビニルアルコール、スチレンアクリラート、例えばスチレンメタクリラート、スチレンブチルアクリラート、スチレンブチルメタクリラート、及びスチレンブタジエン、及び架橋スチレンポリマー;並びにスチレンブロックコポリマー(エラストマーを含む)、例えばスチレン−ブタジエンコポリマー及びその水和物、並びにスチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマー;ポリビニル化合物、例えばポリ塩化ビニル、ポリビニリデンクロリド、ビニルクロリド−ビニリデンクロリドコポリマー、塩化ビニルとビニルアセタートのコポリマー、ビニルアルコール、マレイン酸無水物、ヒドロキシアルキルアクリラート、グリシジルメタクリラートなど、ポリメチルアクリラート、及びポリメチルメタクリラート;ポリアミド、例えばナイロン6、ナイロン6,6、及びナイロン12;熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート、及びポリブチレンテレフタラートなど;エポキシ樹脂、例えばポリヒドロキシエーテル、ポリヒドロキシアミノエーテル、及びポリヒドロキシエステルなど、例えばポリヒドロキシエーテル、例えばビスフェノール−Aのジグリシジルエーテルとビスフェノール−Aなどとの反応生成物、例えばポリヒドロキシアミノエーテル、例えばビスフェノール−Aのジグリシジルエーテルとエタノールアミンとの反応生成物、及びポリヒドロキシエステル、例えばビスフェノール−Aのジグリシジルエーテルとイソフタル酸又はテレフタル酸などとの反応生成物;ポリカルボナート、ポリフェニレンオキシドなど;並びにガラス状炭化水素系樹脂(ポリ−ジシクロペンタジエンポリマー及び関連ポリマー(コポリマー、ターポリマー)を含む);飽和酸とモノオレフィンアルコールのエステル、例えばビニルアセタート、ビニルプロピオナート、ビニルバーサタート(vinyl versatate)、及びビニルブチラートなど;ビニルエステル、例えば不飽和モノカルボン酸のエステル(メチルアクリラート、エチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、イソブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、グリシジルメタクリラート、ドデシルアクリラート、n−オクチルアクリラート、フェニルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、及びブチルメタクリラートを含む)など;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、それらの混合物;並びに開環メタセシス及び交差メタセシス重合によって生成される樹脂などが含まれる。これらの樹脂は、単独又は2種若しくはそれ以上の組み合わせで用いることができる。
【0030】
ベースポリマーとして代表的な(メタ)アクリラートには、これらに限定されるものではないが、メチルアクリラート、エチルアクリラート、ブチルアクリラート、ヘキシルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、オクチルアクリラート、及びイソオクチルアクリラート、n−デシルアクリラート、イソデシルアクリラート、tert−ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、ブチルメタクリラート、ヘキシルメタクリラート、イソブチルメタクリラート、イソプロピルメタクリラート、並びに2−ヒドロキシエチルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシプロピルメタクリラート、グリシジルメタクリラート、及びアクリルアミドが含まれる。好ましい(メタ)アクリラートには、これらに限定されるものではないが、メチルアクリラート、エチルアクリラート、ブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、オクチルアクリラート、イソオクチルアクリラート、メチルメタクリラート、及びブチルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシプロピルメタクリラート、アクリルアミドが含まれる。モノマーから重合することができる他の適切な(メタ)アクリラートには、低級アルキルアクリラート及びメタクリラート(アクリル酸及びメタクリル酸エステルモノマーを含む);メチルアクリラート、エチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、t−ブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、デシルアクリラート、イソボルニルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、n−プロピルメタクリラート、イソプロピルメタクリラート、n−ブチルメタクリラート、イソブチルメタクリラート、sec−ブチルメタクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、イソデシルメタクリラート、イソボルニルメタクリラート、t−ブチルアミノエチルメタクリラート、ステアリルメタクリラート、グリシジルメタクリラート、ジシクロペンテニルメタクリラート、フェニルメタクリラートが含まれる。
【0031】
選択された実施形態において、ベースポリマーは、例えば、エチレン−αオレフィンコポリマー、プロピレン−αオレフィンコポリマー、及びオレフィンブロックコポリマーからなる群から選択された1種又はそれ以上のポリオレフィンを含むことができる。具体的には、いくつかの実施形態において、ベースポリマーは、1種又はそれ以上の非極性ポリオレフィンを含むことができる。
【0032】
いくつかの特定の実施形態において、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、それらのコポリマー、及びそれらのブレンド、並びにエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーを用いることができる。いくつかの実施形態において、代表的なオレフィンポリマーには、例えば米国特許第3,645,992号に記載されているような均一ポリマー;例えば米国特許第4,076,698号に記載されているような高密度ポリエチレン(HDPE);不均一に分枝した線状低密度ポリエチレン(LLDPE);不均一に分枝した線状超低密度ポリエチレン(ULDPE);均一に分枝した線状エチレン/α−オレフィンコポリマー;均一に分枝した実質的に線状のエチレン/α−オレフィンポリマー(例えば、それらの開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,272,236号及び第5,278,272号に開示の方法によって調製することができる);並びに高圧フリーラジカル重合エチレンポリマー及びコポリマー、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)又はエチレンビニルアセタートポリマー(EVA)が含まれる。
【0033】
他の特定の実施形態において、ベースポリマーは、例えば、エチレンビニルアセタート(EVA)系ポリマーであることができる。他の実施形態において、ベースポリマーは、例えば、エチレン−メチルアクリラート(EMA)系ポリマーであることができる。他の特定の実施形態において、エチレン−αオレフィンコポリマーは、例えば、エチレン−ブテン、エチレン−ヘキセン、又はエチレンオクテンコポリマー又はインターポリマーであることができる。他の特定の実施形態において、プロピレン−αオレフィンコポリマーは、例えば、プロピレン−エチレン又はプロピレン−エチレン−ブテンコポリマー又はインターポリマーであることができる。
【0034】
特定の一実施形態において、ベースポリマーは、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有することを特徴とする、プロピレン/α−オレフィンコポリマーであることができる。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」とは、13C NMRによって測定されたアイソタクチック3連子(mm)約0.85超、別の場合には約0.90超、別の場合には約0.92超、および別の場合には約0.93超を有する配列を意味する。アイソタクチック3連子は当分野で周知であり、例えば、13C NMRスペクトルによって決定されたコポリマー分子鎖中の3連子単位に関してアイソタクチック配列に言及している、米国特許第5,504,172号、及び国際公開第WO00/01745号に記載されている。
【0035】
プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、少なくとも1重量%(融解熱少なくとも2J/g)から30重量%(融解熱50J/g未満)の範囲の結晶化度を有することができる。1重量%(融解熱少なくとも2J/g)から30重量%(融解熱50J/g未満)のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、結晶化度は、下限1重量%(融解熱少なくとも2J/g)、2.5%(融解熱少なくとも4J/g)、又は3%(融解熱少なくとも5J/g)から、上限30重量%(融解熱50J/g未満)、24重量%(融解熱40J/g未満)、15重量%(融解熱24.8J/g未満)、又は7重量%(融解熱11J/g未満)であることができる。例えば、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、少なくとも1重量%(融解熱少なくとも2J/g)から24重量%(融解熱40J/g未満)の範囲の結晶化度を有することができ、又は別の場合には、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、度少なくとも1重量%(融解熱少なくとも2J/g)から15重量%(融解熱24.8J/g未満)の範囲の結晶化を有することができ、又は別の場合には、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、少なくとも1重量%(融解熱少なくとも2J/g)から7重量%(融解熱11J/g未満)の範囲の結晶化を有することができ、又は別の場合には、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、少なくとも1重量%(融解熱少なくとも2J/g)から5重量%(融解熱8.3J/g未満)の範囲の結晶化を有することができる。結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)法によって測定される。プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、プロピレンに由来する単位、及び1種又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来するポリマー単位を含む。プロピレン/α−オレフィンコポリマーの製造に用いられる代表的なコモノマーは、C、及びCからC10α−オレフィン、例えばC、C、C、及びCα−オレフィンである。プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、1から40重量%の1種又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来する単位を含む。1から40重量%のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、1種又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来する単位の重量パーセントは、下限1、3、4、5、7、又は9重量%から、上限40、35、30、27、20、15、12、又は9重量%であることができる。例えば、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、1から35重量%の1種又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来する単位を含み、又は別の場合には、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、1から30重量%の1種又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来する単位を含み、又は別の場合には、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、3から27重量%の1種又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来する単位を含み、又は別の場合には、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、3から20重量%の1種又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来する単位を含み、又は別の場合には、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、3から15重量%の1種又はそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来する単位を含む。
【0036】
プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、数平均分子量で割った重量平均分子量(M/M)として定義される分子量分布(MWD)3.5以下、別の場合には3.0以下、又は別の場合には1.8から3.0を有する。そのようなプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,960,635号及び第6,525,157号にさらに詳しく記載されている。そのようなプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、The Dow Chemical Companyから、商品名VERSIFY(商標)として、又はExxonMobil Chemical Companyから、商品名VISTAMAXX(商標)として市販されている。
【0037】
一実施形態において、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、(A)60から100未満、好ましくは80から99、より好ましくは85から99重量%のプロピレン由来の単位、及び(B)0超から40、好ましくは1から20、より好ましくは4から16、さらに好ましくは4から15重量%のエチレン及び/又はC4−10α−オレフィンの少なくとも1つに由来する単位を含み、平均少なくとも0.001、好ましくは平均少なくとも0.005、より好ましくは平均少なくとも0.01の長鎖分枝/1000総炭素を含有することをさらに特徴とし、本明細書では、用語長鎖分枝は、短鎖分枝より少なくとも炭素1個多い鎖長を指し、本明細書では、短鎖分枝とは、コモノマーの炭素数より炭素2個少ない鎖長を指す。例えば、プロピレン/1−オクテンインターポリマーは、少なくとも炭素7個の長さの長鎖分枝を有する主鎖を有するが、これらの主鎖は、炭素6個だけの長さの短鎖分枝も有する。長鎖分枝の最大数は、典型的に3長鎖分枝/1000総炭素を超えない。そのようなプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許仮出願第60/988,999号、及び国際特許出願第PCT/US08/082599号にさらに詳しく記載されている。
【0038】
他の選択された実施形態において、オレフィンブロックコポリマー、例えばエチレンマルチブロックコポリマー、例えば、そのようなオレフィンブロックコポリマーを説明している範囲で参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2005/090427及び米国特許出願第US2006/0199930号に記載されているものを、ベースポリマーとして用いることができる。そのようなオレフィンブロックコポリマーは、以下のエチレン/α−オレフィンインターポリマーであることができる:
(a)M/M約1.7から約3.5、少なくとも1つの融点T(℃)、及び密度d(g/cm)を有し、T及びdの数値は、下記の関係に対応する、
>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)、又は
(b)M/M約1.7から約3.5を有し、融解熱ΔH(J/g)、及び最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義されるデルタ量ΔT(℃)によって特徴づけられ、ΔT及びΔHの数値は下記の関係を有し、
ΔHが0超から130J/gまでの場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
ΔHが130J/gを超える場合、ΔT≧48℃、
ここでCRYSTAFピークは、少なくとも5%の累積ポリマーを用いて求められ、5%未満のポリマーが識別可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃である、又は
(c)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定される300%歪み及び1サイクルでの弾性回復率Re(%)によって特徴づけられ、密度d(g/cm)を有し、Re及びdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが実質的に架橋相を含まないとき、下記の関係を満たす、
Re>1481−1629(d)、又は
(d)TREFを用いて分画したとき、40℃から130℃で溶出する分子画分を有し、該画分が、同じ温度の間に溶出する同等のランダムエチレンインターポリマー画分より少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有し、ここで前記の同等のランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー、並びにエチレン/α−オレフィンインターポリマーの10%以内のメルトインデックス、密度、及びコモノマーモル含量(全ポリマーに対する)を有することを特徴とする、又は
(e)25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)及び100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)によって特徴づけられ、G’(25℃)とG’(100℃)の比は、約1:1から約9:1の範囲である。そのようなオレフィンブロックコポリマー、例えばエチレン/α−オレフィンインターポリマーはまた、以下であることもできる:
(a)TREFを用いて分画したとき、40℃から130℃で溶出する分子画分を有し、該画分が、ブロック指数少なくとも0.5から約1まで、及び分子量分布M/M約1.3超を有することを特徴とする、又は
(b)平均ブロック指数0超から約1.0まで、及び分子量分布M/M約1.3超を有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、ベースポリマーは、例えば、コモノマー又はグラフトモノマーとして極性基を有する極性ポリマーを含むことができる。代表的な実施形態において、ベースポリマーは、例えば、コモノマー又はグラフトモノマーとして極性基を有する1種又はそれ以上の極性ポリオレフィンを含むことができる。代表的な極性ポリオレフィンには、これらに限定されるものではないが、エチレン−アクリル酸(EAA)及びエチレン−メタクリル酸コポリマー、例えばThe Dow Chemical Companyから市販されている、商標PRIMACOR(商標)として入手可能なもの、E.I.DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL(商標)、並びにExxonMobil Chemical Companyから市販されており、それぞれ全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,599,392号、第4,988,781号、及び第5,938,437号に記載されているESCOR(商標)が含まれる。他の代表的なベースポリマーには、これらに限定されるものではないが、エチレンエチルアクリラート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリラート(EMMA)、及びエチレンブチルアクリラート(EBA)が含まれる。
【0040】
他のエチレン−カルボン酸コポリマーも用いることができる。1種又はそれ以上のベースポリマーは、1種又はそれ以上の極性ポリマーの官能酸基を化学修飾して、ヒドロキシルエステル基、又はアミドなどを形成することによっても誘導できる。当業者は、いくつかの他の有用なポリマーも使用することができることを認識するであろう。別のベースポリマーには、エチレンビニルアルコール及びエチレンビニルアセタートなどとしてコポリマーが含まれる可能性がある。
【0041】
一実施形態において、ベースポリマーは、例えば、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された極性ポリオレフィンを含むことができ、安定化剤は、例えば、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された極性ポリオレフィンを含むことができるが、ただしベースポリマーは、例えば、安定化剤より低いASTM D−974に従って測定された酸価を有することができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、ベースポリマーは、例えば、ポリエステル樹脂を含むことができる。ポリエステル樹脂とは、少なくとも1つのエステル結合を含有するポリマーを含むことができる熱可塑性又は熱硬化性樹脂を指す。これらはヒドロキシル官能性又はカルボキシル官能性であり得る。例えば、ポリエステルは、ポリカルボン酸又はその無水物に関してモル過剰の脂肪族ジオール又はグリコールを用いて、通常のエステル化法によって調製することができる。トリオール又はポリオールを用いて、分岐ポリエステルを提供することができる。ポリエステルを調製するために用いることのできるグリコール、トリオール、及びポリオールの例には、これに限定されるものではないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びより高次なポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びより高次なポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び他のブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び他のペンタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、及びドデカンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメタノール、分子量約500以下を有するポリエチレン又はポロプロピレングリコール、イソプロピリデンビス(p−フェニレン−オキシプロパノール−2)、並びにそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態において、脂肪族グリコールは、2から約8個の炭素原子を含有することができる。
【0043】
ポリエステルを調製するために用いることのできるポリカルボン酸又は無水物の例には、これらに限定されるものではないが、マレイン酸、マレイン酸無水物、マロン酸、フマル酸、コハク酸、コハク酸無水物、グルタル酸、アジピン酸、2−メチル−1,6−ヘキサン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、フタル酸、フタル酸無水物、5−tertブチルイソフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、テトラクロロ−フタル酸無水物、クロレンド酸、イソフタル酸、トリメリット酸無水物、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサン−ジカルボン酸、及びそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態において、アルカン二酸は、4から12個の炭素原子を含有することができる。ポリエステルを調製するために、ポリカルボン酸のエステル化可能な(esterifiable)誘導体、例えばポリカルボン酸のジメチルエステル又は無水物を使用することができることも理解される。
【0044】
本発明の他の実施形態は、脂肪族ジオール、例えばThe Dow Chemical Company(Midland、MI)から入手可能なUNOXOL(商標)(シス及びトランス1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールの混合物)を含有するポリエステル樹脂を用いる。
【0045】
いくつかの実施形態において、ベースポリマーは、例えば、エポキシ樹脂を含む熱硬化性材料を含むことができる。エポキシ樹脂とは、分子当たり1つ又はそれ以上の隣接エポキシ基、すなわち、分子当たり少なくとも1つの1,2−エポキシ基を有する組成物を指す。一般に、そのような化合物は、少なくとも1つの1,2−エポキシ基を有する、飽和又は不飽和脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環化合物である。そのような化合物は、所望であれば、1つ又はそれ以上の非干渉置換基、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、エーテル基、低級アルキルなどで置換することができる。また、所望のエポキシ樹脂の製造において、1種又はそれ以上のエポキシ含有物質を組み合わせることができる。
【0046】
実例となるエポキシは、参照により本明細書に組み込まれる、1967年にMcGraw-Hill, New Yorkから出版されたH. E. Lee及びK. NevilleによるHandbook of Epoxy Resins、及び米国特許第4,066,628号に記載されている。
【0047】
本発明の実施に用いることのできる特に有用な化合物は、下式を有するエポキシ樹脂であり、式中、nは、平均値0以上を有する。
【化1】

【0048】
本発明に有用なエポキシ樹脂には、例えば、多価フェノール及び多価アルコールのグリシジルポリエーテルを含むことができる。本発明の実例として、本発明に用いることのできる公知のエポキシ樹脂の例には、例えば、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂テトラメチルビフェノール、テトラメチルテトラブロモビフェノール、テトラメチルトリブロモビフェノール、テトラクロロビスフェノールAのジグリシジルエーテル、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0049】
本発明に特に有用なジエポキシドの例には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にビスフェノールAと称される)のジグリシジルエーテル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にテトラブロモビスフェノールAと称される)のジグリシジルエーテルが含まれる。任意の2種又はそれ以上のポリエポキシドの混合物も本発明の実施に用いることができる。
【0050】
他の代表的なジエポキシドには、二価フェノールのジグリシジルエーテル、例えば、すべて参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5246751号、第5,115,075号、第5,089,588号、第4,480,082号、及び第4,438,254号に記載されているもの、又はジカルボン酸のジグリシジルエステル、例えば米国特許第5,171,820号に記載されているものが含まれる。他の代表的なジエポキシドには、例えば、αω−ジグリシジルオキシイソプロピリデン−ビスフェノール系エポキシ樹脂(The Dow Chemical Company、Midland、Michiganの製品、D.E.R.(登録商標)300及び600シリーズエポキシ樹脂として市販され公知である)が含まれる。
【0051】
本発明の実施に用いることのできるエポキシ樹脂には、二価フェノールのジグリシジルエーテルと二価フェノールとの反応によって、又は二価フェノールとエピクロロヒドリンとの反応によって(「タフィー(taffy)樹脂」としても公知である)調製されるエポキシ樹脂も含まれる。
【0052】
代表的なエポキシ樹脂には、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;4,4’−スルホニルジフェノール;4,4−オキシジフェノール;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;レゾルシノール;ヒドロキノン;カテコール;9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;4,4’−ジヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン、及びジカルボン酸のジグリシジルエステルが含まれる。
【0053】
他の有用なエポキシド化合物には、脂肪族エポキシド、例えばポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテルなどが含まれる。
【0054】
他の有用なエポキシド化合物には、脂環式エポキシドが含まれる。脂環式エポキシドは、例えば、下記の一般式で例示されるように、炭素環の2個の隣接原子を結合するエポキシ酸素を有する飽和炭素環からなり、
【化2】


式中、Rは、1つ又はそれ以上のヘテロ原子(例えば、非限定的にCl、Br、及びS)、又は炭素と安定な結合を形成する原子若しくは原子群(例えば、非限定的にSi、P、及びB)を場合により含む炭化水素基であり、nは、1以上である。
【0055】
脂環式エポキシドは、モノエポキシド、ジエポキシド、ポリエポキシド、又はそれらの混合物であることができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,686,359号に記載の脂環式エポキシドのいずれも本発明に用いることができる。実例として、本発明に用いることのできる脂環式エポキシドには、例えば、(3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル)−3,4−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシラート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジパート、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、及びそれらの混合物が含まれる。
【0056】
いくつかの実施形態において、ベースポリマーは、例えば、前述のエポキシ樹脂の1つを二酸、例えば、これらに限定されるものではないが、アジピン酸、2−メチル−1,6−ヘキサン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、フタル酸、5−tertブチルイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサン−ジカルボン酸、及びそれらの混合物と共反応させることによって生成された、変性エポキシ樹脂を含む熱硬化性材料を含むことができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、ベースポリマーは、例えば、変性エポキシ樹脂を含む熱硬化性材料を含むことができる。変性は、エポキシ樹脂の末端エポキシ基と求核基含有物質、例えばカルボキシル基、フェノールヒドロキシル、アルキル又はグリコールヒドロキシル、チオール、アミン基などとの反応によってもたらすことができる。これは前述のエポキシ基と酸、例えばリン酸、塩化水素、臭化水素などとの反応生成物であることもできる。これは前述のエポキシ基と水又はフェノール化合物、例えばビスフェノールAとの反応生成物であることもできる。これは前述のエポキシ基と酸官能ポリエステル樹脂との反応生成物であることもできる。
【0058】
いくつかの実施形態において、ベースポリマーは、例えば、熱可塑性又は熱硬化性ポリウレタンポリマーを含むことができる。そのようなポリウレタンポリマーは一般に公知であり、さらに、例えば、熱可塑性ポリウレタンポリマーを説明している範囲で参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2008/057878に記載されている。
【0059】
当業者は、上記のリストは代表的なベースポリマーの非包括的な列挙であることを認識するであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解される。
【0060】
いくつかの実施形態において、ベースポリマーは、熱可塑性ポリアミドを含む。そのようなポリアミドポリマーは一般に公知であり、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン610、及びナイロン11、ナイロン12などである。
【0061】
安定化剤
水性分散体は、安定な分散体の形成を促進するために、少なくとも1種又はそれ以上の安定化剤をさらに含むことができる。安定化剤は、好ましくは外部安定化剤である。本発明の分散体は、分散体の固体含量の総重量に対して、1から50重量%の1種又はそれ以上の安定化剤を含む。1から45重量%のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、重量パーセントは、下限1、3、5、10重量%から、上限15、25、35、45、又は50重量%であることができる。例えば、分散体は、分散体の固体含量の総重量に対して、1から25、又は別の場合には1から35、又は別の場合には1から40、又は別の場合には1から45重量%の1種又はそれ以上の安定化剤を含むことができる。選択された実施形態において、安定化剤は、界面活性剤、ポリマー、又はそれらの混合物であることができる。いくつかの実施形態において、安定化剤は、コモノマー又はグラフトモノマーとして極性基を有する極性ポリマーであることができる。代表的な実施形態において、安定化剤は、コモノマー又はグラフトモノマーとして極性基を有する1種又はそれ以上の極性ポリオレフィンを含む。代表的なポリマー安定化剤には、これらに限定されるものではないが、エチレン−アクリル酸(EAA)及びエチレン−メタクリル酸コポリマー、例えばThe Dow Chemical Companyから市販されている、商標PRIMACOR(商標)として入手可能なもの、E.I.DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL(商標)、並びにExxonMobil Chemical Companyから市販されており、それぞれ全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,599,392号、第4,988,781号、及び第5,938,437号に記載されているESCOR(商標)が含まれる。他の代表的なポリマー安定化剤には、これらに限定されるものではないが、エチレンエチルアクリラート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリラート(EMMA)、及びエチレンブチルアクリラート(EBA)が含まれる。他のエチレン−カルボン酸コポリマーも用いることができる。当業者は、いくつかの他の有用なポリマーも使用することができることを認識するであろう。
【0062】
いくつかの実施形態において、安定化剤は、官能化ポリオレフィン、例えばポリプロピレン又はポリエチレンホモポリマー又はコポリマーであることができ、ここでポリマーは、ヒドロキシル、アミン、アルデヒド、エポキシド、エトキシラート、カルボン酸、エステル、又は無水物基で変性されている。これらの官能化ポリオレフィン、例えばポリプロピレン又はポリエチレンホモポリマー及びコポリマーは、例えば、Clariant Corporationから、商品名LICOCENE4351及びLICOCENE6452として、並びにBaker Hughes,Inc.の子会社、Baker Petroliteから入手可能である。
【0063】
用いることのできる他の安定化剤には、これらに限定されるものではないが、12から60個の炭素原子を有する、長鎖脂肪酸、脂肪酸塩、又は脂肪酸アルキルエステルが含まれる。他の実施形態において、長鎖脂肪酸又は脂肪酸塩は、12から40個の炭素原子を有することができる。
【0064】
本発明の実施に有用である可能性のあるさらなる安定化剤には、これらに限定されるものではないが、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、又は非イオン界面活性剤が含まれる。アニオン界面活性剤の例には、これらに限定されるものではないが、スルホン酸塩、カルボン酸塩、及びリン酸塩が含まれる。カチオン界面活性剤の例には、これに限定されるものではないが、第四級アミンが含まれる。非イオン界面活性剤の例には、これらに限定されるものではないが、エチレンオキシド含有ブロックコポリマー及びシリコーン界面活性剤が含まれる。本発明の実施に有用な安定化剤は、外部界面活性剤又は内部界面活性剤であることができる。外部界面活性剤は、分散体調製中、化学的に反応してベースポリマーの中に入ることのない界面活性剤である。本明細書において有用な外部界面活性剤の例には、これらに限定されるものではないが、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩、及びラウリルスルホン酸塩が含まれる。内部界面活性剤は、分散体調製中、化学的に反応してベースポリマーの中に入る界面活性剤である。本明細書において有用な内部界面活性剤の例には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、及びその塩が含まれる。本発明の実施に有用である可能性のあるさらなる界面活性剤には、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、又はそれらの組み合わせが含まれる。種々の市販の界面活性剤を本明細書に開示の実施形態において用いることができ、それぞれRTD Hallstarから入手可能なOP−100(ステアリン酸ナトリウム)、OPK−1000(ステアリン酸カリウム)、及びOPK−181(オレイン酸カリウム);Baker Petroliteから入手可能なUNICID350;それぞれCognisから入手可能なDISPONIL FES77−IS及びDISPONIL TA−430;それぞれRhodiaから入手可能なRHODAPEX CO−436、SOPROPHOR 4D384、3D−33、及び796/P、RHODACAL BX−78及びLDS−22、RHODAFAC RE−610及びRM−710、並びにSUPRAGIL MNS/90;並びにそれぞれThe Dow Chemical Company、Midland、Michiganから入手可能なTRITON QS−15、TRITON W−30、DOWFAX 2A1、DOWFAX 3B2、DOWFAX 8390、DOWFAX C6L、TRITON X−200、TRITON XN−45S、TRITON H−55、TRITON GR−5M、TRITON BG−10、及びTRITON CG−110が含まれる。
【0065】
用いることのできるさらなる安定化剤は、エチレン性不飽和モノマー、例えばアクリル酸及び/又はメタクリル酸、及びそれらの(C−C30)エステル又はアミド;アクリルアミド/メタクリルアミド、及びそれらのN−置換誘導体;アクリロニトリル;スチレン及び置換スチレン誘導体からなる溶液又は懸濁ポリマーである。
【0066】
代表的なポリマー安定化剤には、これに限定されるものではないが、両親媒性コポリマー組成物が含まれ、該コポリマーは、(i)5から95重量%の1種又はそれ以上の親水性モノマー、及び(ii)5から95重量%の1種又はそれ以上の共重合可能なエチレン性不飽和疎水性モノマーの反応生成物を含む。これらの材料は、特に中和されたとき、水溶性又は乳化性であり、コロイド安定剤として作用することができる。代表的な安定化剤には、例えば、これらに限定されるものではないが、ブチルアクリラート及びラウリルメタクリラートが含まれる。
【0067】
両親媒性コポリマー組成物の生成に適した代表的な非イオン水溶性モノマーには、これらに限定されるものではないが、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルメチルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、t−ブチルアクリルアミド、Nメチロールアクリルアミド、アルキル(メタ)アクリラート、例えばメチル(メタ)アクリラート、ブチルアクリラート、及びエチルアクリラート、ビニルモノマー、例えばエチレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジ−イソブチルエチレン、ビニルアセタート、及びN−ビニルピロリドン、並びにアリルモノマー、例えばアリル(メタ)アクリラートが含まれる。
【0068】
両親媒性コポリマー組成物の生成に適した代表的なカチオン水溶性モノマーには、これらに限定されるものではないが、アミン官能化モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルメチルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、t−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドの第四級アンモニウム塩、トリブチルアンモニウムエチル(メタ)アクリラートTBAEMA、DMAEMA、DMAPMAM、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、メチルアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ポリクオタニウム−11、及びポリクオタニウム−4が含まれる。
【0069】
両親媒性コポリマー組成物の生成に適した「アニオン」又は「酸含有モノマー」には、これに限定されるものではないが、カルボン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、スルフィン酸、及びスルホン酸基を含有するエチレン性不飽和モノマーが含まれる。適切な例には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、ビニルホスホン酸、及びビニルスルホン酸が含まれる。
【0070】
別の実施形態において、1種又はそれ以上の安定化剤は、樹脂、例えばポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂をベースとすることができ、これらはアクリル樹脂又はアクリルモノマーと反応して、ポリエステルアクリラート、ポリアミドアクリラートエポキシ樹脂アクリラートを形成することができる。
【0071】
安定化剤の生成に適したポリエステル樹脂は、当業者に周知の通常の手順に従って、例えば、溶媒を用いて又は用いずに、通常のエステル化触媒の存在下、高温で、多塩基酸分子当たり少なくとも2つのカルボキシル基を含有する多塩基酸(例えば、少なくとも二塩基ポリカルボン酸)を、多価アルコール中に少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する多価アルコール(例えば、少なくとも二価アルコール)と反応させることによって得ることができる。別法として、ポリカルボン酸のアルキルエステルを、通常のエステル化触媒の存在下、高温で、反応させることができる。重合可能な二重結合を含有する多塩基酸及び/又は重合可能な二重結合を含有する多価アルコールを用いることによって、1つ又はそれ以上の重合可能な二重結合をポリエステルに含ませることができる。
【0072】
安定化剤としてのポリエステルアクリラートは、ポリエステルの存在下、共重合可能なエチレン性不飽和モノマーのin−situ重合によって形成することができる。例には、反応流体存在下又は不在下でのエチレン性不飽和単官能又は多官能酸、エチレン性不飽和単官能又は多官能酸エステル、アミド、ニトリル、並びにビニルモノマー、及びビニルエステルとポリエステルが含まれる。溶媒中のポリエステルアクリラートは、当業者に公知の適切な方法に従って乾燥させることができる。
【0073】
安定化剤の生成に適したエポキシ樹脂は、当業者に周知の通常の手順に従って、ポリエポキシドを適切な多求核試薬(polynucleophile)と反応させることによって得ることができる。適切なエポキシドには、これらに限定されるものではないが、グリシジルエーテル、及び他のエポキシ基含有分子が含まれる。適切な多求核試薬には、これらに限定されるものではないが、多価フェノール、及びポリフェノール、ポリチオール、脂肪族ポリアルコール、又は多塩基酸、又はポリアミンが含まれる。代表的な適切なエポキシには、例えば、これらに限定されるものではないが、溶媒を用いて又は用いずに、通常の触媒の存在下、高温での、ポリグリシジルエーテル分子当たり少なくとも2つのグリシジルエーテル基を含有するグリシジルエーテル(例えば、少なくともジグリシジルエーテル)と、多価ポリフェノール中に少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する多価フェノール(例えば、少なくとも二価フェノール又はジフェノール)が含まれる。別の種類のエポキシ樹脂は、当業者に周知の通常の手順に従って、例えば、溶媒を用いて又は用いずに、通常の触媒の存在下、高温で、ポリグリシジルエーテル分子当たり少なくとも2つのグリシジルエーテル基を含有するグリシジルエーテル(例えば、少なくともジグリシジルエーテル)を、多塩基酸分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を含有する多塩基酸(例えば、少なくとも二塩基ポリカルボン酸)と反応させることによって得ることができる。
【0074】
安定化剤を生成するためのエポキシアクリラートは、エポキシ樹脂の存在下、共重合可能なエチレン性不飽和モノマーのin−situ重合によって形成することができる。例には、これらに限定されるものではないが、反応流体存在下又は不在下でのエチレン性不飽和単官能又は多官能酸、エチレン性不飽和単官能又は多官能酸エステル、アミド、ニトリル、並びにビニルモノマー、及びビニルエステルとエポキシ樹脂が含まれる。別法として、ポリマー酸官能アクリル樹脂を、適切な触媒の存在下、エポキシ樹脂と反応させて、エポキシアクリラートを形成することができる。溶媒中のエポキシアクリラートは、当業者に公知の適切な方法に従って乾燥させることができる。
【0075】
中和剤
安定化剤は、中和剤で部分的又は完全に中和することができる。いくつかの実施形態において、安定化剤、例えば長鎖脂肪酸又はEAAの中和は、モルを基準にして25から200%であることができ、又は別の場合にはモルを基準にして50から150%であることができ、又は別の場合にはモルを基準にして50から120%であることができ、又は別の場合にはモルを基準にして50から110%であることができる。例えば、EAAの場合、中和剤は、塩基、例えば水酸化アンモニウム、又は水酸化カリウムであることができる。他の中和剤には、例えば、水酸化リチウム、又は水酸化ナトリウムを含むことができる。別の場合には、中和剤は、例えば、炭酸塩であることができる。別の場合には、中和剤は、例えば、アミン、例えばモノエタノールアミン、又は2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)であることができる。本明細書に開示の実施形態に有用なアミンには、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びTRIS AMINO(商標)(それぞれAngusから入手可能)、NEUTROL(商標)TE(BASFから入手可能)、並びにトリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びN,N−ジメチルエタノールアミン(それぞれThe Dow Chemical Company、Midland、MIから入手可能)を含むことができる。他の有用なアミンには、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−n−プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルn−プロピルアミン、N−メタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、1,2−ジアミノプロパン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、エチレンジアミンN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシルプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、3−メトキシプロピルアミン、イミノビス−プロピルアミンなどを含むことができる。いくつかの実施形態において、アミンの混合物、又はアミン及び界面活性剤の混合物を用いることができる。一実施形態において、中和剤は、ポリマーアミン、例えばジエチレントリアミンであることができる。当業者は、適切な中和剤の選択は、配合する特定の組成物によって決まることを理解するであろうし、そのような選択は、当業者の知識の範囲内である。一実施形態において、沸点250℃未満を有するアミンを中和剤として用いることができる。
【0076】
流体媒質
水性分散体は、流体媒質をさらに含む。流体媒質は、任意の媒質であることができ、例えば、流体媒質は水であることができる。本発明の分散体は、分散体の総体積に対して、15から99体積%の水、別の場合には水と1種又はそれ以上の有機溶媒、例えば、1種又はそれ以上の水混和性溶媒、1種又はそれ以上の水非混和性溶媒、又はそれらの組み合わせとの混合物を含む。特定の実施形態において、水含量は、分散体の総体積に対して、30から75、又は別の場合には35から65、又は別の場合には40から60体積%の範囲であることができる。分散体の水含量は、好ましくは、固体含量(1種又はそれ以上のベースポリマーと安定化剤)が約1体積%から99体積%になるように制御することができる。特定の実施形態において、固形分の範囲は、約15体積%から約25体積%であることができる。他の特定の実施形態において、固形分の範囲は、25体積%から約70体積%であることができる。他の特定の実施形態において、固形分の範囲は、約35体積%から約65体積%である。いくつかの他の実施形態において、固形分の範囲は、約40体積%から約60体積%であることができる。
【0077】
追加成分
本発明の水性分散体は、場合により、1種又はそれ以上の結合剤、例えばアクリルラテックス、ビニルアクリルラテックス、スチレンアクリルラテックス、ビニルアセタートエチレンラテックス、及びそれらの組み合わせ;場合により、1種又はそれ以上の充填剤;場合により、1種又はそれ以上の添加剤、例えば触媒、湿潤剤、消泡剤、流動剤、剥離剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、硫化汚染をマスキングするための添加剤、顔料湿潤/分散剤、沈降防止剤、UV安定剤、付着促進剤;場合により、1種又はそれ以上の潤滑剤、例えば脂肪酸エステルワックス、ケイ素系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレン又は他の任意の類似ポリオレフィンワックス、カルナウバワックス、ラノリンワックスなど;場合により、1種又はそれ以上の腐食防止剤、例えばアルミニウム、及び亜鉛;場合により、1種又はそれ以上の顔料、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、ミルドガラス(milled glass)、アルミニウム三水和物、タルク、三酸化アンチモン、フライアッシュ、及び粘土など;場合により、1種又はそれ以上の共溶媒、例えばグリコール、グリコールエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチラート、アルコール、ミネラルスピリット(mineral spirit)、芳香族溶媒、及び安息香酸エステルなど;場合により、1種又はそれ以上の分散剤、例えば、アミノアルコール、及びポリカルボキシラート;場合により、1種又はそれ以上の界面活性剤;場合により、1種又はそれ以上の防腐剤、例えば、殺生剤、防カビ剤(mildewcide)、殺真菌剤(fungicide)、殺藻剤、及びそれらの組み合わせ;場合により、1種又はそれ以上の増粘剤、例えば、セルロース系増粘剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、疎水変性アルカリ溶解性エマルション(HASE増粘剤、例えばUCAR POLYPHOBE TR−116)、及び疎水変性エトキシ化ウレタン増粘剤(HEUR);又は場合により、1種又はそれ以上の追加の中和剤、例えば、水酸化物、アミン、アンモニア、及び炭酸塩;場合により、1種又はそれ以上の溶媒又は合着剤(coalescing agent)とブレンドすることができる。
【0078】
さらに、水性分散体は、1種又はそれ以上の分散液、エマルション、懸濁液、コロイド状懸濁液などとブレンドすることができる。
【0079】
架橋剤
水性分散体は、架橋を促進するために、少なくとも1種又はそれ以上の架橋剤をさらに含むことができる。本発明の水性分散体は、分散体の固体含量の総重量に対して、1から50重量%の1種又はそれ以上の架橋剤を含む。1から50重量%のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、重量パーセントは、下限1、3、5、10、15、20重量%から、上限10、12、15、18、20、25、30、35、40、45、又は50重量%であることができる。例えば、分散体は、分散体の固体含量の総重量に対して、1から18、又は別の場合には1から15、又は別の場合には1から12、又は別の場合には1から10、又は別の場合には1から20、又は別の場合には1から30、又は別の場合には1から40、又は別の場合には1から45、又は別の場合には1から50重量%の1種又はそれ以上の架橋剤を含むことができる。選択された実施形態において、架橋剤は、これらに限定されるものではないが、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、これらに限定されるものではないが、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂を含むアミノ−ホルムアルデヒド樹脂、無水物樹脂、これらに限定されるものではないが、エポキシ樹脂、エポキシ基含有ポリエステル又はアクリル樹脂を含むエポキシ基含有樹脂、及びブロックイソシアナート樹脂、並びにそれらの2種又はそれ以上の組み合わせであることができ、ただしそのような架橋剤の組み合わせは適合性である。
【0080】
架橋剤は、分散体配合物に含有される反応性官能基と反応し、それによって架橋を促進する化合物であることができる。そのような官能基は、ベースポリマー、並びに安定化剤の両方に存在することができる。
【0081】
例えば、反応性官能基には、これらに限定されるものではないが、遊離又は中和形態の酸基、例えばカルボン酸基、又は別の成分による別の活性水素を有する任意の官能基、例えばアルコール基、アミノ基、エポキシ基などが含まれる。
【0082】
架橋剤の架橋可能な官能基は、ベースポリマー又は安定剤の反応性官能基と反応することのできる基である。例えば、カルボジイミド基、オキサゾリン基、イソシアナート基、エポキシ基、メチロール基、アルデヒド基、酸無水物基、ヒドロキシ基、アジリジニル基、又はシラン基を架橋剤において用いることができる。
【0083】
架橋性酸官能基の別の可能性は、前述の酸基と多価金属イオン含有物質、例えば酸化亜鉛との反応による多価金属イオンの使用によるものである。
【0084】
カルボン酸も、強酸の触媒作用下、多官能オレフィン不飽和物質との反応において架橋されることができる。多官能炭酸塩も、カルボン酸と反応して、遊離二酸化炭素とのエステル結合を提供することができる。
【0085】
別の場合には、ポリオレフィン材料は、過酸化物の添加によって開始されるフリーラジカル架橋によって、又は照射、例えば電子ビームによって架橋されることができる。
【0086】
架橋可能な官能基に関して、1つ又はそれ以上が架橋剤に存在することができる。別の場合には、2つ又はそれ以上の架橋可能な官能基が、単一分子に存在することができる。
【0087】
上に記載した架橋可能な官能基を有する架橋剤は、水に分散された物質、又は水分散性物質、又は水溶性物質であることができる。一実施形態において、代表的な架橋剤には、これらに限定されるものではないが、2つ又はそれ以上のオキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、イソシアナート基、メチロール基などを含有する、又は分子当たりそれらのいくつかを含有する、水性モノマー又はポリマー物質が含まれる。
【0088】
代表的なオキサゾリン架橋剤は、分子中に2つ又はそれ以上のオキサゾリン基を有する水性ポリマーであり、それらの物質は、オキサゾリン基含有モノマー、及び必要に応じて、エチレン不飽和モノマーの重合によって得ることができる。あるいは、オキサゾリン架橋剤は、ニトリル基とアミノエタノール基との反応、ヒドロキシルアルキルアミド基の脱水などによって得ることもできる。
【0089】
2つ又はそれ以上のカルボジイミド基を有する架橋剤は、ジイソシアナート化合物の脱炭酸反応を伴う縮合反応によって、ジイソシアナート化合物から生成することができる。ジイソシアナート化合物の例には、これらに限定されるものではないが、1,5−ナフチレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ヘキサンメチレンジイソシアナート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、及びテトラメチルキシリレンジイソシアナートなどが含まれる。これらの化合物は、混合物として用いることもできる。
【0090】
樹脂分子鎖長を制御するために、単官能イソシアナートを含ませることもでき、例えばフェニルイソシアナート、トリルイソシアナート、シクロヘキシルイソシアナート、ジメチルフェニルイソシアナート、ブチルイソシアナート、及びナフチルイソシアナートが有用である。
【0091】
ジイソシアナート物質は、ヒドロキシル基、イミノ基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基などを有する脂肪族化合物、脂環式化合物、又は芳香族化合物と部分的に反応することができる。
【0092】
ジイソシアナート化合物の脱炭酸反応を伴う縮合反応において、カルボジイミド化触媒を用いることができる。そのような触媒として使用に適しているのは、例えば、ホスホレンオキシド、例えば1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、及びそれらの3−ホスホレン異性体である。
【0093】
カルボジイミド基含有ポリマーを水性ポリマーに転換するために、カルボジイミド基含有ポリマーの分子構造に親水性セグメントを提供する。例えば、カルボジイミド基を含有する水性ポリマーは、イソシアナート基との反応性を有する官能基を有する親水性セグメントを提供することによって得ることができる。親水性セグメントとして使用に適しているのは、ジアルキルアミノアルキルアミンの第四級アンモニウム塩(例えば、2−ジメチルアミノエタノールの第四級アンモニウム塩);ジアルキルアミノアルキルアミンの第四級塩(例えば、3−ジメチルアミノ−n−プロピルアミン);少なくとも1つの反応性ヒドロキシル基を有するアルキルスルホン酸塩(例えば、ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム);ポリエチレンオキシド、又はその末端がアルコキシ基でキャップされているポリエチレンオキシドと、ポリプロピレンオキシド(例えば、その末端位がメトキシ基又はエトキシ基でキャップされているポリエチレンオキシド)の混合物である。
【0094】
エポキシ基を含有する水性架橋剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、フェノールエチレンオキシドグリシジルエーテル、及びラウリルアルコールエチレンオキシドグリシジルエーテルなどが例示される。上記に加えて、例として、ポリオキシエチレンポリオール化合物と酸無水物化合物との反応によって得られるカルボキシ化合物を、2つ又はそれ以上のエポキシ基を分子中に有するエポキシ樹脂と反応させることによって得られる水溶性エポキシ樹脂;並びに水溶性エポキシ樹脂と2つ又はそれ以上のエポキシ基を分子中に有するエポキシ樹脂とを混合することによって得られる自己乳化性エポキシ樹脂組成物が挙げられる。そのような樹脂は、例えば商品名XZ92533.00、XZ92598.00、及びXZ92446.00としてThe Dow Chemical Company、Midland、MIから得ることができる。無水化合物の例には、特にこれらに限定されるものではないが、好ましくは芳香族無水物、例えばフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、及びピロメリット酸無水物;並びに環式脂肪族無水物、例えばマレイン酸無水物、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナド酸無水物(methyl nadic anhydride)、アルケニルコハク酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、及びメチルヘキサヒドロフタル酸無水物が含まれる。2つ又はそれ以上のエポキシ基を分子中に有するエポキシ樹脂に制限はなく、2つ以上のエポキシ官能基を有する公知のすべてのエポキシ樹脂を使用することができる。例は、エピクロロヒドリン及び多価化合物、例えばフェノールノボラック、及びクレゾールノボラックビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシノール、ヒドロキノン、又はカテキンから得られるポリグリシジルエーテル;アルキレンオキシド添加ビスフェノールA;ポリアルコール、例えばポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、シクロヘキサンジメタノール、;並びにポリカルボン酸、例えばアジピン酸、フタル酸、ダイマー酸のポリグリシジルエステル及びポリグリシジルアミンなどである。
【0095】
イソシアナート基を含有する水性架橋剤は、例えば、それぞれ1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート及び/又はイソホロンジイソシアナートを原料として含有する、イソシアヌラート基含有ポリイソシアナート、ウレトジオン基含有ポリイソシアナート、ウレトジオン基/イソシアヌラート基含有ポリイソシアナート、ウレタン基含有ポリイソシアナート、アロファナート基含有ポリイソシアナート、ビウレット基含有ポリイソシアナート、カルボジイミド基含有ポリイソシアナート、及びウレトジオン基含有ポリイソシアナートからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーを主として含有するポリイソシアナート;並びにイソシアナート基と反応することができる少なくとも1つの活性水素基を有する親水性界面活性剤、又は少なくとも3個のポリエチレンオキシド単位を含有するポリエチレンエーテルアルコールを、原料としての脂肪酸及びヒドロキシル含有化合物の炭素数の合計が8以上であり、イソシアナート基と反応することができる少なくとも1つの活性水素基を有する脂肪酸エステルと反応させることによって得られる自己乳化性ポリイソシアナートである。上記に加えて、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート及び/又はイソホロンジイソシアナートと活性水素基含有化合物との反応によって得られるウレタン基含有ポリイソシアナート、又はこれらのジイソシアナート化合物のアロファナート化反応、カルボジイミド化反応、ウレトジオン化反応、及びビウレット化反応によって得られるポリイソシアナートを挙げることができる。
【0096】
アルデヒドを含有する適切な架橋剤の例は、水に分散された、又は水分散性、又は水溶性のフェノールホルムアルデヒド樹脂、アミノホルムアルデヒド樹脂、又はそれらの組み合わせである。
【0097】
フェノールホルムアルデヒド架橋剤には、これに限定されるものではないが、アルデヒドとフェノールとの反応生成物が含まれる。好ましいアルデヒドは、これらに限定されるものではないが、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドである。多種多様なフェノールを用いることができ、例えば、これらに限定されるものではないが、フェノール、クレゾール、p−フェニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、シクロペンチルフェノール、クレゾール酸、ビスフェノール−A、ビスフェノール−Fなど、及びそれらの組み合わせである。フェノールホルムアルデヒド樹脂の製造に、酸官能フェノールも用いることができる。架橋剤は、アルコール又はポリオールで脱エーテル化(unetherified)又はエーテル化できる。これらのフェノールホルムアルデヒド樹脂は、水中で可溶性若しくは自己乳化性であることができ、またはコロイド安定剤、例えばポリビニルアルコールの使用により安定化できる。
【0098】
アミノホルムアルデヒド架橋剤には、これに限定されるものではないが、アルデヒドとアミノ又はアミド基含有分子との反応生成物が含まれる。代表的なアルデヒドには、これらに限定されるものではないが、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドが含まれる。多種多様なアミノ又はアミド含有分子を用いることができ、例えば、これらに限定されるものではないが、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、グリコールウリルなどである。適切なアミノ架橋樹脂には、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド、アセトグアナミン−ホルムアルデヒド、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂が含まれる。アミノホルムアルデヒド樹脂のメチロール基も、一価脂肪族アルコール、例えばメタノール及び/又はn−ブタノールの少なくとも1つの基で部分的又は完全にエーテル化できる。これらのアミノホルムアルデヒド樹脂は、水中で可溶性若しくは自己乳化性であることができ、またはコロイド安定剤、例えばポリビニルアルコールを使用して安定化でき、アミノホルムアルデヒド分散体を安定化するために用いることができる。
【0099】
水溶性又は水分散性であり、本発明の目的に有用な市販のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂には、Cymel(商標)301、Cymel(商標)303、Cymel(商標)370、及びCymel(商標)373(いずれもCytec Surface Specialties、Brussels、Belgiumの製品である)が含まれる。アミノ化合物と反応させて、樹脂材料を形成するために用いられる他のアルデヒドは、クロトンアルデヒド、アクロレイン、又はアルデヒドを生じる化合物、例えばヘキサメチレン−テトラアミン、パラアルデヒドなどである。
【0100】
カルボン酸基のための別の種類の架橋剤は、水溶性ヒドロキシアルキルアミド架橋剤、例えばビス(N,N’−ジヒドロキシエチル)アジパミドなどである。そのような化合物は、EMS−PRIMID、Switzerlandから、商品名PRIMID(商標)架橋剤樹脂として市販されており、例えば、PRIMID(商標)XL−522、PRIMID(商標)SF−4510、及びPRIMID(商標)QM−1260である。
【0101】
1種又はそれ以上の架橋剤は、水性分散体配合工程の一部として、水性分散体に添加することができ、又は別の場合には、1種又はそれ以上の架橋剤は、分散体配合工程後に、水性分散体に添加することができる。
【0102】
被覆容器に含有される食品又は飲料の種類、及び必要とされるコーティング特性に応じて、いくつかの架橋剤を組み合わせるのが有利である可能性があり、又は一部の架橋剤は、他のものより適している可能性がある。一部の架橋剤は、すべての適用例には適していない可能性がある。一部の架橋剤は、適切な硬化のために、触媒の添加を必要とする可能性がある。
【0103】
架橋剤は熱硬化ネットワークの構築に役立ち、これは架橋剤を含有しない同じ配合物に比べて高いMEK往復摩擦(Double Rubs)の値によって示される。
【0104】
分散体の形成
水性分散体は、当業者に認識される任意のいくつかの方法で形成することができる。分散装置は、バッチ式、セミバッチ式、又は連続式で操作することができる。ミキサの例には、ロータステータ、マイクロフルイダイザ、高圧ホモジナイザ、超音波、衝突噴流(impinging jet)、Cowles(商標)ブレード、遊星型ミキサ、及び溶融混練装置、例えば押出機が含まれる。
【0105】
一実施形態において、1種又はそれ以上のベースポリマー、1種又はそれ以上の安定化剤は、水、及び場合により1種又はそれ以上の中和剤、例えばアンモニア、水酸化カリウム、アミン、又は2つ以上の組み合わせと共に、押出機で溶融−混練され、分散体が形成される。別の実施形態では、1種又はそれ以上のベースポリマー及び1種又はそれ以上の安定化剤は化合され、その後、水及び場合により1種又はそれ以上の中和剤の存在下、押出機で溶融−混練され、それによって分散体が形成される。いくつかの実施形態では、分散体は最初に、約1から約20重量%、例えば1から5重量%、又は1から3重量%の水を含有するように希釈され、続いて、約25重量%超の水を含むようにさらに希釈される。一実施形態において、さらなる希釈を溶媒によって達成することができる。
【0106】
当分野で公知である任意の溶融−混練手段を用いることができる。いくつかの実施形態において、混練機、BANBURY(登録商標)ミキサ、単軸スクリュ押出機、又は多軸スクリュ押出機、例えば2軸押出機が用いられる。本発明による分散体の生成方法は特に限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、押出機、例えば二軸スクリュ押出機は、背圧レギュレータ、溶融ポンプ、又はギアポンプと連結される。代表的な実施形態は、それぞれポンプを含む、塩基リザーバ及び初期水リザーバをさらに提供する。所望量の塩基及び初期水が、それぞれ塩基リザーバ及び初期水リザーバから供給される。任意の適切なポンプを用いることができるが、いくつかの実施形態では、例えば、240バールの圧力で約150cc/分の流れを供給するポンプを用い、塩基と初期水を押出機に供給する。他の実施形態において、液体注入ポンプは、200バールで300cc/分、又は133バールで600cc/分の流れを供給する。いくつかの実施形態において、塩基及び初期水は、プレヒータで予め加熱される。
【0107】
ペレット、粉末、又はフレーク形態の1種又はそれ以上のベースポリマーが、フィーダから押出機の入口に供給され、ここで樹脂は溶融又は化合される。場合により、1種又はそれ以上の追加成分を、1種又はそれ以上のベースポリマーと同時にフィーダから押出機に供給することができ、又は別の場合には、1種又はそれ以上の追加成分を、1種又はそれ以上のベースポリマーに化合し、その後、フィーダを介して押出機に供給することができる。別法においては、場合により、追加の1種又はそれ以上の追加成分を、乳化ゾーンの前に、1種又はそれ以上のベースポリマーを含む溶融化合物に、入口を介してさらに計り入れることができる。いくつかの実施形態では、分散剤は、樹脂を介して、樹脂と共に1種又はそれ以上のポリマーに添加され、他の実施形態では、分散剤は別に2軸スクリュ押出機に供給される。次いで、樹脂溶融物は、押出機の混合及び運搬ゾーンから乳化ゾーンに送達され、ここで水及び塩基リザーバからの初期量の水及び塩基が入口を介して添加される。いくつかの実施形態において、分散剤は、追加的又は排他的に水流に添加することができる。いくつかの実施形態において、さらなる希釈水を、水リザーバから水入口を介して、押出機の希釈及び冷却ゾーンに添加することができる。典型的に、分散体は冷却ゾーンにおいて、水が少なくとも30重量%であるように希釈される。加えて、希釈混合物は、所望の希釈レベルが得られるまで、何回でも希釈することができる。いくつかの実施形態において、分散体は、押出機を出た後、適切な熱交換器を用いてさらに冷却される。他の実施形態において、水は2軸スクリュ押出機に添加されないが、溶融物が押出機を出た後、樹脂溶融物を含有する流れに添加される。この方法では、押出機に蓄積される蒸気圧が排除され、分散体は第2の混合装置、例えばロータステータミキサで形成される。
【0108】
別の実施形態において、水性分散体は、溶融混練押出機を用いずに、連続高剪断ミキサで形成することができる。この実施形態では、1種又はそれ以上の液体又は溶融ベースポリマーを含む第1の流れが、適切な液体ポンプ、例えばシリンジポンプ、ギアポンプ、又は前進空洞ポンプ(progressive cavity pump)から、連続高剪断ミキサに供給される。第1の流れは第1導管を流れ、第2導管を流れる連続水性相を含有する第2の流れと、連続的に合流する。第1及び第2の流れは、任意の中和剤を含む安定化剤の存在下、分散機に合流する。作用剤は、第1の流れ又は第2の流れに添加することができ、又は別の流れとして添加することができる。水を含む第3の流れは、分散機の下流で添加することができる。流れの流速は、所望量のポリマー相及び固体率を有する分散体が得られるように調節される。分散機は、いくつかの連続インラインミキサ、例えば、IKA高剪断ミキサ、Oskesロータステータミキサ、Rossミキサ、Silversonミキサ、又は遠心ポンプのいずれか1つであることができる。分散機のrpmの設定を用いて、分散体の分散疎水性相の粒径の制御を助けることができる。ポンプによる送達に適した粘度でポリマー及び中和剤成分を提供するために、系を加熱することができる。蒸気の形成は、背圧レギュレータ、ギアポンプ、計量ポンプ、又は工程の出口近くの他の適切な装置の使用によって、圧力を制御することによって低減される。いくつかの実施形態において、分散体は、分散機を出た後、適切な熱交換器を用いてさらに冷却される。
【0109】
別の実施形態において、水性分散体は、バッチ式又はセミバッチ式高剪断ミキサで形成することができ、ミキサは、例えば蒸気の形成を低減するために、例えば加圧タンク内に配置することができる、分散体すべて、又は少なくとも一部が工程中にタンクから取り出され、場合により、熱交換器を用いて冷却される。
【0110】
水性分散体の調製中、場合により、1種又はそれ以上の充填剤;場合により、1種又はそれ以上の添加剤、例えば触媒、湿潤剤、消泡剤、流動剤、剥離剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、硫化汚染をマスキングするための添加剤、顔料湿潤/分散剤、沈降防止剤、UV安定剤、付着促進剤;場合により、1種又はそれ以上の潤滑剤、例えば脂肪酸エステルワックス、ケイ素系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレン又は他の任意の類似ポリオレフィンワックス、カルナウバワックス、ラノリンワックスなど;場合により、1種又はそれ以上の腐食防止剤、例えばアルミニウム、及び亜鉛;場合により、1種又はそれ以上の顔料、例えば、二酸化チタン、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、酸化亜鉛、ミルドガラス、アルミニウム三水和物、タルク、三酸化アンチモン、フライアッシュ、及び粘土など;場合により、1種又はそれ以上の染料;場合により、1種又はそれ以上の共溶媒、例えばグリコール、グリコールエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチラート、アルコール、ミネラルスピリット、及び安息香酸エステルなど;場合により、1種又はそれ以上の分散剤、例えば、アミノアルコール、及びポリカルボキシラート;場合により、1種又はそれ以上の界面活性剤;場合により、1種又はそれ以上の消泡剤;場合により、1種又はそれ以上の防腐剤、例えば、殺生剤、防カビ剤、殺真菌剤、殺藻剤、及びそれらの組み合わせ;場合により、1種又はそれ以上の増粘剤、例えば、セルロース系増粘剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、疎水変性アルカリ溶解性エマルション(HASE増粘剤、例えばUCAR POLYPHOBE TR−116)、及び疎水変性エトキシ化ウレタン増粘剤(HEUR);又は場合により、1種又はそれ以上の追加の中和剤、例えば、水酸化物、アミン、アンモニア、及び炭酸塩を、水性分散体配合物に添加することができ、又は別の場合には、分散配合工程後に、分散体に添加することができる。
【0111】
水性分散体の調製中、1種又はそれ以上の安定化剤も、水性分散体配合物に添加することができ、又は別の場合には、分散配合工程後に、分散体に添加することができる。
【0112】
場合により、1種又はそれ以上のベースポリマーの分散中、別のポリマー分散体又はエマルションを、分散体の水相の一部として用いることができる。例には、これらに限定されるものではないが、アクリル、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミドなどを含有する分散液、エマルション、懸濁液、コロイド状懸濁液が含まれる。
【0113】
コーティング適用及び被覆容器又は閉鎖具装置の形成
水性分散体は、例えば、容器、例えば缶のコーティング適用、又は閉鎖具装置コーティング適用に用いることができる。そのような被覆容器装置には、これらに限定されるものではないが、缶、例えば飲料用缶、食品用缶:エアロゾル容器、例えば非食品製品、例えばヘアスプレー、毛髪染料、又はカラースプレーラッカー用のもの;ドラム缶;ケグ;バケツ;装飾ブリキ缶;オープントレイ(open tray);管、ボトル、モノブロック(monobloc)などが含まれる。被覆閉鎖具装置(coated closure device)には、これらに限定されるものではないが、キャップ、蓋、例えばヨーグルト及びバター容器用の薄いアルミホイルベースの蓋、又は王冠コルク;ガラスジャー及びボトル用の閉鎖具、例えばロールオン式閉鎖具、真空閉鎖具、防開封(pilfer-proof)閉鎖具、缶閉鎖具の易剥離性蓋、及び缶の易開封端部又は従来型端部が含まれる。缶は、2ピース缶、又は3ピース缶であることができる。飲料用缶には、これらに限定されるものではないが、ビール缶、炭酸ソフトドリンク缶、栄養ドリンク缶、アイソトニック飲料缶、水缶、ジュース缶、茶缶、コーヒー缶、ミルク缶などが含まれる。食品用缶には、これに限定されるものではないが、野菜缶、果物缶、肉缶、スープ缶、調理済み食品缶、魚缶、食用油缶、ソース缶などが含まれる。そのような缶は、任意の形状を有することができ、例えば、そのような缶は、円筒形、立方体、球状、半球状、ボトル形、直方体形、浅い又は高い形状、円又は長方形、又は他の任意の適切な形状を有することができる。本発明による被覆容器装置は、任意の通常の方法によって形成することができる。例えば、被覆容器装置は、スタンピング、絞り(drawing)、再絞り、壁しごき(wall ironing)、曲げ、ビーディング、エンボシング、デボシング、フランジング、ネッキング、延伸(stretching)、ブローストレッチング、及び他の任意の適切な通常の方法で成形することができる。そのような方法は、一般に当業者に公知である。水性分散体は、例えば、金属基体、例えば金属シート又は金属ホイルに適用することができ、その後、被覆された基体を、被覆容器装置又は被覆閉鎖具装置に形成することができる。別の場合には、金属基体を容器装置又は閉鎖具装置に形成し、その後、容器装置又は閉鎖具装置を、1種又はそれ以上の水性分散体で被覆して、被覆容器装置又は被覆閉鎖具装置を形成することができる。コーティングは、任意の方法によって、例えば、ローラコーティング、スプレーコーティング、粉体コーティング、浸漬コーティング、電着コーティング、印刷、ウォッシュコーティング、フローコーティング、カーテンコーティングによって適用することができる。
【0114】
金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体は、任意の通常の乾燥方法によって乾燥することができる。そのような通常の乾燥方法には、これらに限定されるものではないが、空気乾燥、対流オーブン乾燥、熱風乾燥、及び/又は赤外線オーブン乾燥が含まれる。乾燥工程中、1種又はそれ以上の架橋剤を含む、1種又はそれ以上のベースポリマー、安定化剤、又はそれらの組み合わせの架橋が起こり得る。付加的な硬化が、照射硬化、例えば電子ビーム硬化によって起こり得る。金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体は、任意の温度で乾燥することができ、例えば、ベースポリマーの融点温度以上の範囲の温度で乾燥することができ、又は別の場合には、ベースポリマーの融点未満の範囲の温度で乾燥することができる。金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体は、約60°F(15.5℃)から約700°F(371℃)の範囲の温度で、約40分未満、例えば20分未満、又は10分未満、又は5分未満、又は2分未満、又は1分未満、又は20秒未満の間、乾燥することができる。約60°F(15.5℃)から約700°F(371℃)のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体は、約60°F(15.5℃)から約500°F(260℃)の範囲の温度で、約40分未満、例えば20分未満、又は10分未満、又は5分未満、又は2分未満、又は1分未満の間、乾燥することができ、又は別の場合には、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体は、約60°F(15.5℃)から約450°F(232.2℃)の範囲の温度で、約40分未満、例えば20分未満、又は10分未満、又は5分未満、又は2分未満、又は1分未満の間、乾燥することができる。金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度以上の範囲の温度に、約40分未満の間、上昇させることができる。約40分未満のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度以上の範囲の温度に、約20分未満の間、上昇させることができ、又は別の場合には、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度以上の範囲の温度に、約5分未満の間、上昇させることができ、又は別の場合には、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度以上の範囲の温度に、約0.5から300秒の間、上昇させることができる。別の場合には、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度未満の範囲の温度に、40分未満の間、上昇させることができる。約40分未満のすべての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度未満の範囲の温度に、約20分未満の間、上昇させることができ、又は別の場合には、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度未満の範囲の温度に、約5分未満の間、上昇させることができ、又は別の場合には、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度未満の範囲の温度に、約0.5から300秒の間、上昇させることができる。
【0115】
被覆金属基体は、1種又はそれ以上の通常のコーティング組成物でさらに被覆することができ、又は1種又はそれ以上の他の層にさらに積層することができる。そのような通常のコーティング組成物は、一般に当業者に公知であり、これらに限定されるものではないが、エポキシ樹脂コーティング組成物、アクリラート系コーティング組成物、及びポリエステル系コーティング組成物を含むことができる。積層工程は一般に公知であり、代表的な積層層には、これらに限定されるものではないが、ポリエステル積層物、ポリオレフィン系積層物、例えばポリプロピレン積層物を含むことができる。
【0116】
1つ又はそれ以上の架橋コーティング層として、金属基体、例えばプレコートされた基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体は、ASTM−D3359−08に従って測定された、クロスカット付着性評価少なくとも3B、例えば5Bを有することができる。1つ又はそれ以上の架橋コーティング層として、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体は、メチルエチルケトン(MEK)往復摩擦評価少なくとも10を有することができる。1つ又はそれ以上の架橋コーティング層として、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体は、Gardner「COVERALL」Bend Tester IG1125によって測定された、ウェッジ曲げ(wedge bend)の合格評価少なくとも90%を有することができる。
【実施例】
【0117】
以下の実施例は本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の実施例は、金属基体の少なくとも1つの表面に適用された1種又はそれ以上の水性分散体が、改善されたコーティング層可撓性、並びにコーティング層の金属基体への付着性を提供することを実証する。
【0118】
本発明の水性分散体Aの調製
表Iに記載した配合成分に基づいて、以下の手順に従って、水性分散体Aを調製した。ベースポリマーとして、The Dow Chemical Companyから入手可能な、アクリル酸含量約9から10重量%及びメルトインデックス約1.3から1.6g/10分(ASTM D1238、190degC/2.16Kg)を有するエチレンアクリル酸コポリマー、PRIMACOR(商標)1410(CAS No.9010−77−9)、並びに安定化剤として、The Dow Chemical Companyから入手可能な、アクリル酸含量約19.5から21.5重量%及びメルトインデックス約300g/10分(ASTM D1238、190degC/2.16Kg)を有するエチレンアクリル酸コポリマー、PRIMACOR(商標)5980i(CAS No.9010−77−9)を、速度制御されたフィーダによって、径25mmの2軸スクリュ押出機に供給し、それらの材料はここで前方に送られ、溶融された。押出機の温度プロファイルは、初期水及び中和剤としてAMP−95、アミノ−2−メチル−1−プロパノール(95%)(CAS No.124−68−5)を添加する前に、約160℃まで上昇させ、続いて、希釈水を添加した後、押出機の終わりまでに、100℃未満の温度に冷却して戻した。押出機の速度は、約450rpmであった。アミン塩基及び水を混合し、初期水導入ポイントで押出機に供給した。希釈水は第2ポンプを介して供給し、押出機の希釈ゾーンに導入した。初期水及び希釈水の流れは、場合により、押出機温度に予め加熱した。操作温度での蒸気形成を低減するために、押出機の出口で、背圧レギュレータを用いて、押出機バレル内部を適切な圧力に調節した。得られた分散体を冷却し、200ミクロンのフィルタを通して濾過した。
【0119】
本発明の水性分散体Bの調製
表Iに記載した配合成分に基づいて、以下の手順に従って、水性分散体Bを調製した。ベースポリマーとして、The Dow Chemical Companyから入手可能な、アクリル酸含量約6から7重量%及びメルトインデックス約2.2から2.8g/10分を有するエチレンアクリル酸コポリマー、PRIMACOR(商標)1321(CAS No.9010−77−9)、及び追加のベースポリマーとして、The Dow Chemical Companyから入手可能な、密度約0.958から0.962g/cm及びメルトインデックス約24から36g/1分を有する高密度ポリエチレン、HDPE 30460M(CASNo.26211−73−8)、並びに安定化剤として、The Dow Chemical Companyから入手可能な、アクリル酸含量約19.5から21.5重量%及びメルトインデックス約300g/10分(ASTM D1238、190degC/2.16Kg)を有するエチレンアクリル酸コポリマー、PRIMACOR(商標)5980i(CAS No.9010−77−9)を、速度制御されたフィーダによって、径25mmの2軸スクリュ押出機に供給し、それらの材料はここで前方に送られ、溶融された。押出機の温度プロファイルは、初期水及び中和剤としてAMP−95、アミノ−2−メチル−1−プロパノール(95%)(CAS No.124−68−5)を添加する前に、約160℃まで上昇させ、続いて、希釈水を添加した後、押出機の終わりまでに、100℃未満の温度に冷却して戻した。押出機の速度は、約450rpmであった。アミン塩基及び水を混合し、初期水導入ポイントで押出機に供給した。希釈水は第2ポンプを介して供給し、押出機の希釈ゾーンに導入した。初期水及び希釈水の流れは、場合により、押出機温度に予め加熱した。操作温度での蒸気形成を低減するために、押出機の出口で、背圧レギュレータを用いて、押出機バレル内部を適切な圧力に調節した。得られた分散体を冷却し、200ミクロンのフィルタを通して濾過した。
【0120】
本発明の水性分散体Cの調製
表Iに記載した配合成分に基づいて、以下の手順に従って、水性分散体Cを調製した。ベースポリマーとして、The Dow Chemical Companyから入手可能な、アクリル酸含量約6から7重量%及びメルトインデックス約2.2から2.8g/10分(ASTM D1238、190degC/2.16Kg)を有するエチレンアクリル酸コポリマー、PRIMACOR(商標)1321(CAS No.9010−77−9)、並びに安定化剤として、The Dow Chemical Companyから入手可能な、アクリル酸含量約19.5から21.5重量%及びメルトインデックス約300g/10分(ASTM D1238、190degC/2.16Kg)を有するエチレンアクリル酸コポリマー、PRIMACOR(商標)5980i(CAS No.9010−77−9)を、速度制御されたフィーダによって、径25mmの2軸スクリュ押出機に供給し、それらの材料はここで前方に送られ、溶融された。押出機の温度プロファイルは、初期水及び中和剤としてDMEA、2−ジメチルアミノエタノール(100%)(CAS No.108−01−0)を添加する前に、約160℃まで上昇させ、続いて、希釈水を添加した後、押出機の終わりまでに、100℃未満の温度に冷却して戻した。押出機の速度は、約450rpmであった。アミン塩基及び水を混合し、初期水導入ポイントで押出機に供給した。希釈水は第2ポンプを介して供給し、押出機の希釈ゾーンに導入した。初期水及び希釈水の流れは、場合により、押出機温度に予め加熱した。操作温度での蒸気形成を低減するために、押出機の出口で、背圧レギュレータを用いて、押出機バレル内部を適切な圧力に調節した。得られた分散体を冷却し、200ミクロンのフィルタを通して濾過した。
【0121】
本発明の水性分散体Dの調製
分散体Dを、分散体Aと類似の方法であるが、表Iに記載の配合成分を用いて調製した。
【0122】
補足の本発明水性分散体S1〜28の調製
補足の本発明水性分散体S1〜28を、分散体Aと類似の方法であるが、表Iに記載の配合成分を用いて調製した。
【0123】
メラミンホルムアルデヒド架橋剤を含む配合に基づくコーティングの調製
室温約25℃で約1分間、R−1302スターラを備えたIKA RW16電気攪拌機をレベル5で用い、ビーカーで、分散体A〜Dを、架橋剤としてCytec Surface Specialties、Brussels、Belgiumから入手可能なCymel(商標)327(CAS No.9003−08−1)メラミンホルムアルデヒド樹脂と混合して、最終配合物を得た。混合物は、泡が消失するまで静置する。水性分散体A〜Dと架橋剤のCymel(商標)327との組み合わせに基づくコーティング配合物の詳細を、表IIに示す。
【0124】
フェノール架橋剤を含む配合に基づくコーティングの調製
本発明の配合実施例5
工程1:フェノール架橋剤ブレンド分散体の調製
20gのXZ95320.02、実験用エポキシ硬化剤、20gのPhenodur(商標)PR401、フェノール樹脂、及び0.75gのジメチルエタノールアミンを、IKA RE−166電気攪拌機及びプロペラブレード式スターラを用いて約2000rpmで攪拌しながら、混合した。次いで、18.0gの水を、攪拌しながら、転相が起こるまでゆっくりと添加した。得られたエマルションは、固体含量41.1%であった。
【0125】
XZ95320.02、実験用エポキシ硬化剤は、The Dow Chemical Company、Midland Michiganから入手可能である。Phenodur(商標)PR401フェノール樹脂は、Cytec Surface Specialties、Brussels、Belgiumから入手可能である。
工程2:最終配合物の調製
室温約25℃で約1分間、R−1302スターラを備えたIKA RW16電気攪拌機をレベル5で用い、ビーカーで、25.46gの本発明の分散体Dを、4.44gの上記のフェノール架橋剤分散体と混合して、最終配合物を得る。
工程3:Rasselsteinから供給された、グレードTS−245標準仕上げを有する、約10cm対20cm(10cm to 20cm)の大きさのブリキ板(tin plate)パネルを、アセトンで洗浄し、その後乾燥した。約3gのコーティング配合物を、30ミクロンのスパイラルドローダウンバー(spiral drawdown bar)で、ブリキ板パネルに適用し、それによってブリキ板パネルの1面を被覆した。続いて、パネルを対流式オーブンに入れ、200℃で3分間硬化した。コーティングはわずかに濁っていた。コーティング配合物の詳細を、表IIIに記載する。
【0126】
本発明の配合実施例6
アクリル樹脂組成物によるコーティングの調製
工程1:ジメチルアミノエタノールを水と混合して、50%の水溶液を形成した。
工程2:室温約25℃で約1分間、R−1302スターラを備えたIKA RW16電気攪拌機をレベル5で用い、ビーカーで、2.14gの工程1のジメチルアミノエタノール水溶液(50%)を、4.65gのPRIMAL(商標)E3203アクリルエマルションにゆっくりと添加した。高粘度分散体を得た。
工程3:PRIMID(商標)XL552架橋剤を水に溶解して、50%水溶液を形成した。
工程4:室温約25℃で約1分間、R−1302スターラを備えたIKA RW16電気攪拌機をレベル5で用い、ビーカーで、6.72gの工程2で得られた混合物を、24.48gの分散体Dと混合した。次いで、室温約25℃で約1分間、R−1302スターラを備えたIKA RW16電気攪拌機をレベル5で用い、2gの工程3のPRIMID(商標)XL−552溶液(50%)を添加した。
PRIMAL(商標)E−3203は、The Dow Chemical Company、Midland、MIから入手可能であり、PRIMID(商標)XL552は、EMS Chemie、Donat、Switzerlandから入手可能である。
【0127】
Rasselsteinから供給された、グレードTS−245標準仕上げを有する、約10cm対20cmの大きさのブリキ板パネルを、アセトンで洗浄し、その後乾燥した。約3gのコーティング配合物を、30ミクロンのスパイラルドローダウンバーで、ブリキ板パネルに適用し、それによってブリキ板パネルの1面を被覆した。続いて、パネルを対流式オーブンに入れ、200℃で3分間及び6分間硬化した。コーティングの結果の詳細を、表IVに記載する。
【0128】
本発明の配合実施例7
室温約25℃で約1分間、R−1302スターラを備えたIKA RW16電気攪拌機をレベル5で用い、ビーカーで、1.74gのXZ92546.00、実験用エポキシノボラックエマルション(57.5%nv)を、31.47gの本発明の分散体Dと混合して、最終配合物を得た。
【0129】
Rasselsteinから供給された、グレードTS−245標準仕上げを有する、約10cm対20cmの大きさのブリキ板パネルを、アセトンで洗浄し、その後乾燥した。約3gのコーティング配合物を、30ミクロンのスパイラルドローダウンバーで、ブリキ板パネルに適用し、それによってブリキ板パネルの1面を被覆した。続いて、パネルを対流式オーブンに入れ、200℃で3分間硬化した。コーティングの結果の詳細を、表Vに記載する。
【0130】
ポリエステル樹脂配合物で被覆したブリキ板パネルの調製
23.28gのDynapol(商標)952、ポリエステル、及び3.98gのSFC112/65(SI group)を、密閉ガラスボトルで、52重量部のSolvesso(商標)100、芳香族溶媒と48重量部のDowanol(商標)PMA、グリコールエーテルの混合物43.23gと混合し、それを室温で72時間、一連の回転棒で回転させた。その後、0.181gのリン酸(Downanol(商標)グリコールエーテル中25%)を添加し、ガラスをさらに24時間回転させた。DynapolはEvonikの商標である。SolvessoはExxonMobilの商標であり、DowanolはThe Dow Chemical Companyの商標である。
【0131】
Rasselsteinから供給された、グレードTS−245標準仕上げを有する、約10cm対20cmの大きさのブリキ板パネルを、アセトンで洗浄し、その後乾燥した。約3gのコーティング配合物を、30ミクロンのスパイラルドローダウンバーで、ブリキ板パネルに適用し、それによってブリキ板パネルの1面を被覆した。続いて、パネルを対流式オーブンに入れ、200℃で10分間硬化した。コーティングは厚さ3.9ミクロン、及びMEK往復摩擦15を有した。
【0132】
プレコートパネルへのコーティングの適用
上記のポリエステルに基づく配合物で被覆したブリキ板パネルを、さらに洗浄することなく用いた。約3gの本発明の被覆配合物4を、30ミクロンのスパイラルドローダウンバーで、ポリエステルコーティング上に被覆した。続いて、パネルを対流式オーブンに入れ、200℃で3分間硬化した。
【0133】
被覆したブリキ板パネルを、コーティングの厚さ、ウェッジ曲げ、MEK DR(メチルエチルケトン往復摩擦)、滅菌前のクロスカット付着性、並びに下記の手順による水中での滅菌後のクロスカット付着性及び白化に関して試験した。結果を表VIに示す。
【0134】
非被覆パネルのコーティング適用
Rasselsteinから供給された、グレードTS−245標準仕上げを有する、約10cm対20cmの大きさのブリキ板パネルを、アセトンで洗浄し、その後乾燥した。約3gの本発明のコーティング配合物1〜3を、30ミクロンのスパイラルドローダウンバーで、それぞれブリキ板パネルに適用し、それによってブリキ板パネルの1面を被覆した。続いて、パネルを対流式オーブンに入れ、硬化した。硬化条件を表VIIに示す。
【0135】
被覆したブリキ板パネルを、コーティングの厚さ、ウェッジ曲げ、MEK DR(メチルエチルケトン往復摩擦)、滅菌前のクロスカット付着性、並びに下記の手順による滅菌後のクロスカット付着性及び白化に関して試験した。結果を表VIIに示す。
【0136】
比較実験
Rasselsteinから供給された、グレードTS−245標準仕上げを有する、約10cm対20cmの大きさのブリキ板パネルを、アセトンで洗浄し、その後乾燥した。約3gの表IVに記載した本発明の分散体を、30ミクロンのスパイラルドローダウンバーで、ブリキ板パネルに適用し、それによってブリキ板パネルの1面を被覆した。続いて、パネルを対流式オーブンに入れ、硬化した。硬化条件及び試験結果を表VIIIに示す。
【0137】
被覆したブリキ板パネルを、コーティングの厚さ、ウェッジ曲げ、MEK DR(メチルエチルケトン往復摩擦)、滅菌前のクロスカット付着性、並びに下記の手順による水中での滅菌後のクロスカット付着性及び白化に関して試験した。
【0138】
試験法
試験法には以下のものが含まれる。
【0139】
クロスカット付着性
クロスカット付着性は、Erichsenクロスカット試験装置EPT675Rを用い、ASTM−D3359−08、テープ試験による付着性の測定、方法Bに従って測定する。この方法は、フィルムに作製した切れ目の上にテープ(グレード:TESA4124透明)を貼り付け、剥がすことによって、金属性基体に対するコーティングフィルムの付着性を評価する手順を提供する。1片のテープの中央をグリッドの上に置き、グリッドの領域内において、指でその場所に平らにならす。フィルムとの良好な接触を確実にするために、テープをしっかりとこする。貼付から90±30秒以内に、遊離している端をつかみ、できるかぎり180度に近い角度で、すばやく(急激ではない)引き剥がす。照明付き拡大鏡を用いて、基体又は以前のコーティングからのコーティングの剥離に関して、グリッド領域を検査する。以下のスケールに従って付着性を評価する。
【0140】
【表A】

【0141】
水中での滅菌
被覆パネルを、加圧可能な金属容器で水に浸漬し、Steriliser AutomatVに入れ、129℃で30分間レトルト(retort)した。続いて、加圧容器を、冷水を含む格納容器に入れ、加圧容器の温度を50℃未満の範囲に下げ、その後、容器を開けた。パネルを取り出し、乾燥した。その後、白化の外観を評価した。白化はコーティングの白みがかった外観と呼ばれる。コーティングがどのような白化も示さない場合、評価は白化無しである。そうでない場合、ごくわずかに白化、わずかに白化、白化、又は強く白化として評価される。
【0142】
乳酸中での滅菌
被覆パネルを、加圧可能な金属容器で2%乳酸溶液に浸漬し、Steriliser AutomatVに入れ、121℃で30分間レトルトした。続いて、加圧容器を、冷水を含む格納容器に入れ、加圧容器の温度を50℃未満の範囲に下げ、その後、容器を開けた。パネルを取り出し、乾燥した。その後、白化の外観を評価した。白化はコーティングの白みがかった外観と呼ばれる。コーティングがどのような白化も示さない場合、評価は白化無しである。そうでない場合、ごくわずかに白化、わずかに白化、白化、又は強く白化として評価される。
【0143】
MEK往復摩擦
重量1230±10gを有する半球状ハンマーの平面な端を用いた。通常のティッシュ「VILEDA3168」を、ハンマー端の周囲に巻きつけた。それをメチルエチルケトン(MEK)で浸した。ハンマーをコーティングに接触させ、コーティング全体にわたって前後に動かしたが、ここでコーティング全体にわたる1回の前後の動きを1回の往復摩擦とみなす。ハンマーに追加の圧力は加えなかった。10回の往復摩擦ごとに、ティッシュを再び浸した。コーティングがこすり落とされるまで、すなわち金属基体の少なくとも一部が露出するまで、往復摩擦工程を繰り返した。往復摩擦工程が100往復摩擦に達した場合、試験を終了し、最終結果として100往復摩擦と報告した。
【0144】
ウェッジ曲げ
ウェッジ曲げは、Gardner「COVERALL」Bend Tester IG1125によって測定した。この試験に用いた装置は、曲げ機に転換するため、2つの部分からなる。スチールロッド(マンドレル)を底部の前面に搭載する。幅100mmの被覆試験パネルを、3mmロッドマンドレルの上で折り曲げる。それによって、コーティングが屈曲部の外側に現れる。曲げたパネルをウェッジマンドレルに挿入した。衝撃子、すなわち金属の重りを7インチの高さに上げ、それを落とした。衝撃子は、最初にはね返ったときに回収し、固定する。パネルの円筒状の折り目が、円錐形状に押しつぶされた。被覆パネルの先端を硫酸銅の溶液(10gの硫酸銅、90gの水、及び3gの硫酸の混合物)でこすった。コーティングが割れている場所、暗色のスポットが出現している場所はいずれも、不合格を示す。100mmのウェッジ屈曲部の長さに沿って、無損傷領域の長さをミリメートルで測定し、合格率として表わした。
【0145】
コーティング厚
コーティング厚は、PERMASCOPE D−211D、コーティング厚ゲージを用い、ASTM−D1186−01、鉄基材に適用した非磁性コーティングの乾燥フィルム厚の非破壊測定に従って測定した。コーティングしていない標準パネルを較正に用いた。被覆パネルのコーティング厚は、10回の測定の平均であり、被覆パネルのコーティング厚の各測定は、標準パネルのコーティング厚、すなわちゼロと比較して、鉄材料用のプローブを用いて測定した。測定した厚さはミクロンで報告した。
【0146】
中和度
中和率は、塩基によって中和される樹脂溶融物中のアクリル酸基の算出量であった。
【0147】
粒径測定
粒径は、Coulter LS−230粒径分析器(Beckman Coulter Corporation)によって測定した。
【0148】
固体率の測定
固体率は、マイクロ波固形分分析器を用いて測定した。
【0149】
本発明は、その精神及び必須の属性から逸脱することなく、他の形態で具体化することができ、したがって、本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書よりむしろ、添付の特許請求の範囲を参照するべきである。
【0150】
【表1A】

【0151】
【表1B】

【0152】
【表1C】

【0153】
【表1D】

【0154】
【表2】

【0155】
【表3】

【0156】
【表4】

【0157】
【表5】

【0158】
【表6】

【0159】
【表7】

【0160】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基体、及び
前記金属基体に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を含み、
前記1つ又はそれ以上の架橋コーティング層は、1種又はそれ以上の水性分散体を、前記金属基体の少なくとも1つの表面に塗布することによって得られ、前記1種又はそれ以上の水性分散体は、
1種又はそれ以上のベースポリマー、
1種又はそれ以上の安定化剤、
1種又はそれ以上の架橋剤、及び
水を含む、被覆容器装置(coated container device)。
【請求項2】
被覆容器装置を製造する方法であって、
金属基体を選択する工程、
1種又はそれ以上のベースポリマー、
1種又はそれ以上の安定化剤、
1種又はそれ以上の架橋剤、及び
水を含む、1種又はそれ以上の水性分散体を選択する工程、
前記1種又はそれ以上の水性分散体を、前記金属基体の少なくとも1つの表面に塗布する工程、
前記1種又はそれ以上の水性分散体から、少なくとも一部の水を除去する工程、
それによって、前記金属基体に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を形成する工程、並びに
前記被覆金属基体を被覆容器装置に形成する工程を含む方法。
【請求項3】
被覆容器装置を製造する方法であって、
金属基体を選択する工程、
前記金属を容器装置に形成する工程、
1種又はそれ以上のベースポリマー、
1種又はそれ以上の安定化剤、
1種又はそれ以上の架橋剤、及び
水を含む、1種又はそれ以上の水性分散体を選択する工程、
前記1種又はそれ以上の水性分散体を、前記容器装置の少なくとも1つの表面に塗布する工程、
前記1種又はそれ以上の水性分散体から、少なくとも一部の水を除去する工程、
それによって、前記容器装置の少なくとも1つの表面に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を形成する工程、並びに
それによって、前記被覆容器装置を形成する工程を含む方法。
【請求項4】
前記ベースポリマーが、1種又はそれ以上のポリオレフィンを含む、請求項1から3のいずれか。
【請求項5】
前記金属基体が、プレコートされた金属基体である、請求項1から3のいずれか。
【請求項6】
金属基体、及び
前記金属基体に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を含み、
前記1つ又はそれ以上の架橋コーティング層は、1種又はそれ以上の水性分散体を、前記金属基体の少なくとも1つの表面に塗布することによって得られ、前記1種又はそれ以上の水性分散体は、
1種又はそれ以上のベースポリマー、
1種又はそれ以上の安定化剤、
1種又はそれ以上の架橋剤、及び
水を含む、被覆閉鎖具装置(coated closure device)。
【請求項7】
被覆閉鎖具装置を製造する方法であって、
金属基体を選択する工程、
1種又はそれ以上のベースポリマー、
1種又はそれ以上の安定化剤、
1種又はそれ以上の架橋剤、及び
水を含む、1種又はそれ以上の水性分散体を選択する工程、
前記1種又はそれ以上の水性分散体を、前記金属基体の少なくとも1つの表面に塗布する工程、
前記1種又はそれ以上の水性分散体から、少なくとも一部の水を除去する工程、
それによって、前記金属基体に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を形成する工程、並びに
前記被覆金属基体を被覆閉鎖具装置に形成する工程を含む方法。
【請求項8】
被覆閉鎖具装置を製造する方法であって、
金属基体を選択する工程、
前記金属を閉鎖具装置に形成する工程、
1種又はそれ以上のベースポリマー、
1種又はそれ以上の安定化剤、
1種又はそれ以上の架橋剤、及び
水を含む、1種又はそれ以上の水性分散体を選択する工程、
前記1種又はそれ以上の水性分散体を、前記閉鎖具装置の少なくとも1つの表面に塗布する工程、
前記1種又はそれ以上の水性分散体から、少なくとも一部の水を除去する工程、
それによって、前記閉鎖具装置の少なくとも1つの表面に結合した1つ又はそれ以上の架橋コーティング層を形成する工程、並びに
それによって、前記被覆閉鎖具装置を形成する工程を含む方法。
【請求項9】
前記金属基体が、プレコートされた金属基体である、請求項5から7のいずれか。
【請求項10】
前記1種又はそれ以上のベースポリマーが、1種又はそれ以上のポリオレフィンを含む、請求項5から7のいずれか。

【公表番号】特表2013−500211(P2013−500211A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521838(P2012−521838)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/043086
【国際公開番号】WO2011/011707
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】