説明

被覆微粒子の製造方法

本発明は、コア微粒子が分散し、かつ被覆層の構成成分が溶解した極性有機溶媒を含む液(液A)を調製する工程、液Aと混合可能であり、極性有機溶媒を含まないまたは液Aより低い割合で極性有機溶媒を含む液(液B)を調製する工程、および2つ以上の入口と、1つ以上の出口をもつインライン混合手段を備える被覆微粒子製造装置の少なくとも1つの入口から、液Aを入れ、残る入口の少なくとも1つの入口から、液Bを入れて混合し、コア微粒子を被覆層で被覆する工程を含むコア微粒子が被覆層で被覆された被覆微粒子の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医薬品、食品、農薬、動物用薬等において、被覆微粒子の製造方法に関して多くの技術の開示が行われている。微粒子(被覆される微粒子)の被覆層による被覆は、例えば外的因子から受ける影響を抑制するため、外的因子の影響を選択的に受け入れ、それをトリガーとして微粒子に変化を起こすため等、微粒子に機能を付与する目的で行われている。その1つとして、液体中で微粒子を脂質膜で被覆する方法が報告されている(特許文献1参照)。該方法においては、微粒子が分散し、かつ脂質が溶解した極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒の割合を減少させることによって、微粒子が脂質膜で被覆されており、液体中において被覆が行われ、例えば静脈注射用微粒子等に好適な大きさの被覆微粒子が、すぐれた効率で製造されている。また、該特許文献1では、極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒の割合を減少させる手段の1つとして、極性有機溶媒含有水溶液に、水を含有する液を混合する方法を示している。
【0003】
一方、インライン混合手段は、2種以上の液体を混合する方法として工業的に用いられている手段である。また、インライン混合手段は、被覆によらない方法で製造されるポリマー複合体およびリポソームの製造方法において用いられている(特許文献2および特許文献3参照)。
【特許文献1】国際公開第02/28367号パンフレット
【特許文献2】特表2002−522468号公報
【特許文献3】特表2002−529240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、コア微粒子が被覆層で被覆された被覆微粒子の工業的製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の(1)〜(11)に関する。
(1)コア微粒子が被覆層で被覆された被覆微粒子の製造方法であって、
該コア微粒子が分散し、かつ該被覆層を構成する被覆層成分が溶解した極性有機溶媒を含む液(液A)を調製する工程、
液Aと混合可能であり、極性有機溶媒を含まないまたは液Aより低い割合で極性有機溶媒を含む液(液B)を調製する工程、および
2つ以上の入口と、1つ以上の出口をもつインライン混合手段を備える被覆微粒子製造装置の少なくとも1つの入口から、液Aを入れ、残る入口の少なくとも1つの入口から、液Bを入れて混合し、該コア微粒子を該被覆層で被覆する工程を含む製造方法。
(2)被覆微粒子製造装置が、ポンプ、流路および前記インライン混合手段を含む前記(1)記載の製造方法。
(3)被覆微粒子製造装置が、手動ポンプ、流路および前記インライン混合手段を含む前記(1)記載の製造方法。
(4)被覆層成分が、脂質、界面活性剤および高分子から選ばれる1つ以上の物質である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)被覆層が脂質膜である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)コア微粒子が薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン微粒子、高分子、金属コロイドまたは微粒子製剤を構成成分とする微粒子である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)コア微粒子が薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン微粒子、高分子、金属コロイドまたは微粒子製剤を2つ以上組み合わせた複合体を構成成分とする微粒子である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(8)コア微粒子が、薬物とリポソームの複合体を構成成分とする微粒子である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(9)極性有機溶媒がアルコール類、グリコール類およびポリアルキレングリコール類から選ばれる1つ以上である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)極性有機溶媒がエタノールである前記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(11)前記(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法によって製造できる被覆微粒子。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、コア微粒子が被覆層で被覆された被覆微粒子の連続式で簡便な工業的製造方法が提供される。また、本発明によって、効率よくおよび/または堅固に薬物を含有させた被覆微粒子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明で用いられる基本的な被覆微粒子製造装置の模式図。
【図2】本発明で用いられる被覆微粒子製造装置の応用例(1)の模式図。
【図3】本発明で用いられる被覆微粒子製造装置の応用例(2)の模式図。
【図4】従来の被覆微粒子製造装置の模式図。
【符号の説明】
【0008】
1 2つの入口と、1つの出口をもつインライン混合手段
2,3,4 流路
5,6 ポンプ
7 液槽
8 2つの入口と、1つの出口をもつインライン混合手段
9,10 流路
11,12 ポンプ
13 2つの入口と、1つの出口をもつインライン混合手段
14,15 流路
16 ポンプ
17,18 液槽
19 流路
20 ポンプ
【0009】
液A コア微粒子が分散し、かつ被覆層成分が溶解した極性有機溶媒を含む液
液B 液Aと混合可能であり、極性有機溶媒を含まないまたは液Aより低い割合で極性有機溶媒を含む液
液C 液Aと液Bを混合して得られる懸濁液
液D コア微粒子が分散した極性有機溶媒を含む液
液E 液D中の極性有機溶媒と同一または異なった極性有機溶媒を含む溶媒に被覆層成分を溶解させた液
液F 極性有機溶媒以外の溶媒
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明におけるインライン混合手段を備える被覆微粒子製造装置は、2つ以上の入口と、1つ以上の出口をもつインライン混合手段を備える被覆微粒子製造装置であればいずれでもよく、該インライン混合手段は、複数のインライン混合手段が連結した場合を含む。また、該製造装置には、該インライン混合手段に接続された流路が備えられていてもよく、また該流路がインライン混合手段を兼ねていてもよい。また、該製造装置にはポンプが備えられていてもよく、該ポンプは前記インライン混合手段の入口および/または出口と、前記流路を通じて接続される。
【0011】
本発明における被覆微粒子とは、少なくともコア微粒子と被覆層からなる微粒子のことであり、被覆層を構成する被覆層成分がコア微粒子の外側を被覆して形成される微粒子のことである。
【0012】
本発明におけるコア微粒子とは、例えば、薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を構成成分とする微粒子のことであり、好ましくは、少なくとも薬物を構成成分とする微粒子があげられる。また、本発明におけるコア微粒子は、薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等を2つ以上組み合わせた複合体を構成成分としていてもよく、薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等と他の化合物(例えば糖、脂質、無機化合物等)とを組み合わせた複合体を構成成分としていてもよく、好ましくは、薬物とリポソームの複合体を構成成分とする微粒子があげられる。
【0013】
薬物は、液Aにおける溶媒中で微粒子の形態をとる薬物、コア微粒子を構成する他の構成成分と複合体を形成して液Aにおける溶媒中で微粒子の形態をとる薬物等を包含し、例えば蛋白質、ペプチド、核酸、低分子化合物、糖類、高分子化合物、脂質性化合物、金属化合物等のうち薬理学的活性を有する物質があげられ、好ましくは、核酸があげられ、より好ましくは、遺伝子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、プラスミドおよびsiRNAから選ばれる1つ以上の物質があげられる。
【0014】
蛋白質またはペプチドとしては、例えばブラジキニン、アンジオテンシン、オキシトシン、バソプレシン、アドレノコルチコトロピン、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、コレシストキニン、β−エンドルフィン、メラノサイト阻害因子、メラノサイト刺激ホルモン、ガストリンアンタゴニスト、ニューロテンシン、ソマトスタチン、ブルシン、シクロスポリン、エンケファリン、トランスフェリン、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、性腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、ウリカーゼ、カルボキシペプチダーゼ、グルタミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、ムラミルジペプチド、サイモポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、トリプシンインヒビター、リゾチーム、表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子、神経成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子、内皮細胞成長因子、フィブロブラスト(繊維芽細胞)成長因子、グリア細胞成長因子、サイモシン、特異抗体(例えば、抗EGF受容体抗体等があげられる)等があげられる。
【0015】
核酸としては、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、センスオリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチド、遺伝子、DNA、RNA、プラスミド、siRNA等があげられ、該核酸は、核酸の構造中のリン酸部、エステル部等に含まれる酸素原子等が、例えば硫黄原子等の他の原子に置換された誘導体を包含する。なお、siRNAとは、短い二本鎖RNAのことである。
【0016】
低分子化合物としては、例えばイプシロン−アミノカプロン酸、塩酸アルギニン、L−アスパラギン酸カリウム、トラネキサム酸、硫酸ブレオマイシン、硫酸ビンクリスチン、セファゾリンナトリウム、セファロチンナトリウム、シチコリン、シタラビン、硫酸ゲンタマイシン、塩酸バンコマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸アミカシン等があげられる。
【0017】
糖類としては、例えばコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヘパリンナトリウム、デキストランフルオレセイン等があげられる。
【0018】
高分子化合物としては、例えばポリエチレンスルホン酸ナトリウム、ジビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(DIVEMA)、スチレン無水マレイン酸共重合体−ネオカルチノスタチン結合体(SMANCS)等があげられる。
脂質性化合物としては、例えばビタミンD、ビタミンE等があげられる。
金属化合物としては、例えばシスプラチン等があげられる。
【0019】
脂質集合体またはリポソームは、例えば脂質および/または界面活性剤等によって構成され、脂質としては、単純脂質、複合脂質または誘導脂質のいかなるものであってもよく、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴイド類、ステロール類等があげられ、好ましくは、リン脂質があげられる。また、脂質としては、例えば界面活性剤(後記の界面活性剤と同義)、高分子(後記の高分子と同義で、具体的にはデキストラン等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリエチレングリコール等)等の脂質誘導体もあげられ、好ましくは、ポリエチレングリコール化リン脂質があげられる。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等があげられる。
【0020】
リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(具体的には大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルエタノールアミン(具体的にはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン等)、グリセロリン脂質(具体的にはホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン等)、スフィンゴリン脂質(具体的にはスフィンゴミエリン、セラミドホスホエタノールアミン、セラミドホスホグリセロール、セラミドホスホグリセロリン酸等)、グリセロホスホノ脂質、スフィンゴホスホノ脂質、天然レシチン(具体的には卵黄レシチン、大豆レシチン等)、水素添加リン脂質(具体的には水素添加ホスファチジルコリン等)等の天然または合成のリン脂質があげられる。
【0021】
グリセロ糖脂質としては、例えばスルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等があげられる。
スフィンゴ糖脂質としては、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等があげられる。
スフィンゴイド類としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン、それらの誘導体等があげられる。誘導体としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン等の−NHを−NHCO(CHCH(式中、xは0〜18の整数を表し、中でも6、12または18が好ましい)に変換したもの等があげられる。
【0022】
ステロール類としては、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴカステロール、フコステロール、3β−[N−(N’N’−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)等があげられる。
【0023】
その他、脂質としては、例えば、N−[1−(2,3−ジオレオイルプロピル)]−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTAP)、N−[1−(2,3−ジオレオイルプロピル)]−N,N−ジメチルアミン(DODAP)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシプロピル)]−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシプロピル)]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシプロピル)]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)等の脂質もあげられる。
【0024】
非イオン性界面活性剤としては、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(具体的にはポリソルベート80等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(具体的にはプルロニックF68等)、ソルビタン脂肪酸(具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール等)、グリセリン脂肪酸エステル等があげられる。
【0025】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアシルサルコシン、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜22の脂肪酸ナトリウム等があげられる。具体的にはドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等があげられる。
【0026】
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、アシルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アミン誘導体等があげられる。具体的には塩化ベンザルコニウム、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、N−アルキルポリアルキルポリアミン塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルポリオキシエチレンアミン、N−アルキルアミノプロピルアミン、脂肪酸トリエタノールアミンエステル等があげられる。
【0027】
両性界面活性剤としては、例えば3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸、N−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸等があげられる。
【0028】
リポソームにおいては、これら脂質および界面活性剤は、単独でまたは組み合わせて用いられ、好ましくは、組み合わせて用いられる。組み合わせて用いる場合の組み合わせとしては、例えば水素添加大豆ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化リン脂質およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、EPCとDOTAPの組み合わせ、EPC、DOTAPおよびポリエチレングリコール化リン脂質の組み合わせ、EPC、DOTAP、コレステロールおよびポリエチレングリコール化リン脂質の組み合わせ等があげられる。
【0029】
また、リポソームは、必要に応じて、例えばコレステロール等のステロール類等の膜安定化剤、例えばトコフェロール等の抗酸化剤等を含有していてもよい。
【0030】
脂質集合体としては、例えば球状ミセル、球状逆ミセル、ソーセージ状ミセル、ソーセージ状逆ミセル、板状ミセル、板状逆ミセル、ヘキサゴナルI、ヘキサゴナルIIおよび脂質2分子以上からなる会合体等があげられる。
【0031】
エマルジョン粒子としては、例えば脂肪乳剤、非イオン性界面活性剤と大豆油からなるエマルジョン、リピッドエマルジョン、リピッドナノスフェアー等の水中油型(O/W)エマルジョンや水中油中水型(W/O/W)エマルジョン粒子等があげられる。
【0032】
高分子としては、例えばアルブミン、デキストラン、キトサン、デキストラン硫酸、DNA等の天然高分子、例えばポリ−L−リジン、ポリエチレンイミン、ポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド−アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール化ポリ乳酸等の合成高分子、およびそれらの塩等があげられる。
【0033】
ここで、高分子における塩は、例えば金属塩、アンモニウム塩、酸付加塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、アンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、および酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、アミノ酸付加塩としては、例えばグリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン等の付加塩があげられる。
【0034】
金属コロイドとしては、例えば金、銀、白金、銅、ロジウム、シリカ、カルシウム、アルミニウム、鉄、インジウム、カドミウム、バリウム、鉛等を含む金属コロイドがあげられる。
【0035】
微粒子製剤としては、例えばマイクロスフェアー、マイクロカプセル、ナノクリスタル、リピッドナノパーティクル、高分子ミセル等があげられる。
【0036】
また、コア微粒子が薬物を含むコア微粒子である場合には、好ましくは、コア微粒子は、薬物と静電的に逆の電荷をもつ荷電物質を含有し、より好ましくは、薬物と静電的に逆の電荷をもつ脂質(後記のカチオン性脂質またはアニオン性脂質)を含有する。ここで、薬物と静電的に逆の電荷とは、薬物分子内の電荷、分子内分極等に対して静電的引力を生じる電荷、表面分極等を包含する。
【0037】
コア微粒子に含有される荷電物質は、カチオン性を呈するカチオン性物質とアニオン性を呈するアニオン性物質とに分類されるが、カチオン性の基とアニオン性の基の両方をもつ両性の物質であっても、pHや、他の物質との結合等により相対的な陰性度が変化するので、その時々に応じてカチオン性物質またはアニオン性物質に分類され得る。これら荷電物質は、前記コア微粒子の構成成分として用いても、該コア微粒子の構成成分に加えて用いても構わない。
【0038】
カチオン性物質としては、例えば前記のコア微粒子の定義で例示したもののうちのカチオン性物質[具体的には、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤(前記と同義)、カチオン性高分子等]、等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチド等があげられる。
【0039】
カチオン性脂質としては、例えばDOTAP、DODAP、DOTMA、DOSPA、DMRIE、DORIE、DC−Chol等があげられる。
カチオン性高分子としては、例えばポリ−L−リジン、ポリエチレンイミン、ポリフェクト(polyfect)、キトサン等があげられる。
【0040】
等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以下の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば、特に限定されない。例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ペプシン、リボヌクレアーゼT1等があげられる。
【0041】
アニオン性物質としては、例えば前記のコア微粒子の定義で例示したもののうちのアニオン性物質[具体的には、アニオン性脂質、アニオン性界面活性剤(前記と同義)、アニオン性高分子等]、等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチド、核酸等があげられる。
【0042】
アニオン性脂質としては、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等があげられる。
アニオン性高分子としては、例えばポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド−アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール化ポリ乳酸、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルタマン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケタラン硫酸、デキストランフルオレセインアニオニック等があげられる。
【0043】
等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば、特に限定されない。例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ヒストン、プロタミン、リボヌクレアーゼ、リゾチーム等があげられる。
【0044】
アニオン性物質としての核酸としては、例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、オリゴヌクレオチド等があげられ、生理活性を示さないものであれば、どのような長さ、配列のものであってもよい。
【0045】
コア微粒子は、市販品として得られるか、または公知の方法またはそれに準じて製造することができる。例えば、コア微粒子の1つであるリポソームを構成成分とするコア微粒子の製造には、公知のリポソームの調製方法が適用できる。公知のリポソームの調製方法としては、例えばバンガム(Bangham)らのリポソーム調製法[“ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)”,1965年,第13巻,p.238−252参照]、エタノール注入法[“ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)”,1975年,第66巻,p.621−634参照]、フレンチプレス法[“エフイービーエス・レターズ(FEBS Lett.)”,1979年,第99巻,p.210−214参照]、凍結融解法[“アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Arch.Biochem.Biophys.)”,1981年,第212巻,p.186−194参照]、逆相蒸発法[“プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)”,1978年,第75巻,p.4194−4198参照]、pH勾配法(例えば特許第2572554号公報、特許第2659136号公報等参照)等があげられる。リポソームの製造の際にリポソームを懸濁させる溶液としては、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液等を用いることができる。また、リポソームの製造の際には、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の抗酸化剤、例えばグリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等の等張化剤等の添加も可能である。また、脂質等を例えばエタノール等の有機溶媒に溶解し、溶媒留去した後、生理食塩水等を添加、振とう撹拌し、リポソームを形成させることによってもリポソームを製造することができる。
【0046】
また、例えば非イオン性界面活性剤(前記と同義)、カチオン性界面活性剤(前記と同義)、アニオン性界面活性剤(前記と同義)、高分子、ポリオキシエチレン誘導体等によるリポソーム表面改質も任意に行うことができ、これらの表面改質リポソームも本発明におけるコア微粒子の構成成分として用いられる[ラジック(D.D.Lasic)、マーティン(F.Martin)編,“ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes)”,(米国),シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc),1995年,p.93−102参照]。高分子としては例えばデキストラン、プルラン、マンナン、アミロペクチン、ヒドロキシエチルデンプン等があげられる。ポリオキシエチレン誘導体としては、例えばポリソルベート80、プルロニックF68、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](PEG−DSPE)等があげられる。
【0047】
リポソームの平均粒子径は、所望により自由に選択できる。平均粒子径を調節する方法としては、例えばエクストルージョン法、大きな多重膜リポソーム(MLV)を機械的に粉砕(具体的にはマントンゴウリン、マイクロフルイダイザー等を使用)する方法[ミュラー(R.H.Muller)、ベニタ(S.Benita)、ボーム(B.Bohm)編著,“エマルジョン・アンド・ナノサスペンジョンズ・フォー・ザ・フォーミュレーション・オブ・ポアリー・ソラブル・ドラッグズ(Emulsion and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs)”,ドイツ,サイエンティフィック・パブリッシャーズ・スチュットガルト(Scientific Publishers Stuttgart),1998年,p.267−294参照]等があげられる。
【0048】
また、コア微粒子を構成する例えば薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン粒子、高分子、金属コロイド、微粒子製剤等から選ばれる2つ以上を組み合わせた複合体(具体的には、例えばカチオン性脂質を含有するリポソームまたは脂質集合体と核酸との複合体、ポリ−L−リジン等のカチオン性高分子を含有する高分子と核酸との複合体、ホスファチジン酸等のアニオン性脂質を含有するリポソームまたは脂質集合体と蛋白質との複合体、スチレンマレイン酸等のアニオン性高分子を含有する高分子と蛋白質との複合体、カチオン性脂質を含有するリポソームまたは脂質集合体と蛋白質との複合体、ポリ−L−リジン等のカチオン性高分子を含有する高分子と蛋白質との複合体等があげられる)の製造方法は例えば水中で薬物と脂質集合体、リポソーム、高分子等とを混合するだけの製造方法でもよく、この際、必要であればさらに整粒工程や無菌化工程等を加えることもできる。また、複合体形成を例えばアセトン、エーテル等種々の溶媒中で行うことも可能である。例えば、核酸と脂質とをエタノール等の有機溶媒に溶解し、溶媒留去した後、生理食塩水等を添加、振とう撹拌し、核酸複合体を形成させることもできる。別の複合体の形成方法としては、例えば、水中でカチオン性物質とポリエチレングリコール化リン脂質(具体的にはポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン(より具体的には1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](PEG−DSPE)等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、クレモフォアイーエル(CREMOPHOR EL)等)等でリポソームを調製し、その後、例えば核酸を添加し、さらに例えばアニオン性高分子を添加して、多重複合体とすることも可能である。
【0049】
コア微粒子の大きさは、平均粒子径が数nm〜数百μmであるのが好ましく、10nm〜5μmであるのがより好ましく、50nm〜300nmであるのがさらに好ましく、50nm〜200nmであるのが最も好ましい。
【0050】
被覆層成分としては、例えば前記コア微粒子の定義の中であげた脂質、界面活性剤、高分子等があげられ、好ましくは、前記コア微粒子の定義の中であげた脂質および界面活性剤から選ばれる1つ以上の物質があげられ、より好ましくは、被覆層が脂質膜となる脂質および界面活性剤から選ばれる1つ以上の物質があげられ、さらに好ましくは、リン脂質があげられる。
【0051】
また、被覆層が脂質膜である場合に用いられる脂質として、例えば合成脂質等もあげられる。合成脂質としては、例えばフッ素添加ホスファチジルコリン、フッ素添加界面活性剤、臭化ジアルキルアンモニウム等があげられ、これらは単独でまたは他の脂質等と組み合わせて用いられてもよい。また、被覆層が脂質膜である場合には、被覆層成分の1つとして水溶性高分子誘導体も使用することが好ましい。水溶性高分子誘導体としては、例えばポリエチレングリコール化脂質[具体的にはポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン(より具体的には1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](PEG−DSPE)等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、クレモフォアイーエル(CREMOPHOR EL)等]、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(具体的にはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン化脂質(具体的にはポリグリセリン−ホスファチジルエタノールアミン等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル等があげられ、好ましくは、ポリエチレングリコール化脂質があげられる。
【0052】
本発明の被覆微粒子は、例えばコア微粒子が分散し、かつ被覆層成分が溶解した極性有機溶媒を含む液(液A)を調製する工程、液Aと混合可能であり、極性有機溶媒を含まないまたは液Aより低い割合で極性有機溶媒を含む液(液B)を調製する工程、および、2つ以上の入口と、1つ以上の出口をもつインライン混合手段を備える被覆微粒子製造装置の、インライン混合手段の1つ以上の入口から、液Aを入れ、残る入口の少なくとも1つの入口から、液Bを入れて混合し、コア微粒子を被覆層で被覆する工程を含む製造方法によって製造でき、この場合、該被覆微粒子は懸濁液(液C)の形態で得られる。また、液Aにおける溶媒は、コア微粒子が溶解せず、被覆層成分が溶解する溶媒であるのが好ましく、液Aと液Bを混合した液Cでは、コア微粒子は溶解せず、被覆層成分は溶解しないまたは集合している。液Aは極性有機溶媒を含む液であり、液Bは極性有機溶媒以外の溶媒を含む液であるが、液Aは極性有機溶媒以外の溶媒を液Bにおける極性有機溶媒の以外の溶媒の割合よりも低ければ含んでいてもよく、液Bも極性有機溶媒を液Aにおける極性有機溶媒の割合よりも低ければ含んでいてもよい。
【0053】
本発明において、コア微粒子が分散するとは、コア微粒子が懸濁、乳濁またはエマルジョン化、好ましくは、懸濁している状態のことであり、コア微粒子の大部分が分散して、残りの部分が溶解している状態または一部が沈殿している状態も包含するが、コア微粒子のほとんど全部または全部が分散していることが好ましい。また、被覆層成分が溶解するとは、被覆層成分の大部分が溶解して、残りの部分が分散している状態も包含するが、被覆層成分のほとんど全部または全部が溶解していることが好ましい。
【0054】
前記液Aおよび液Bにおける極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類等があげられ、好ましくは、エタノールがあげられる。また、前記液Aおよび液Bにおける極性有機溶媒以外の溶媒としては、例えば、水、液体二酸化炭素、液体炭化水素、ハロゲン化炭素、ハロゲン化炭化水素等があげられ、好ましくは、水があげられる。また、液Aおよび液Bは、イオン、緩衝成分等を含んでいてもよい。
【0055】
極性有機溶媒と極性有機溶媒以外の溶媒の組み合わせは、相互に混合可能である組み合わせであるのが好ましく、液A〜C中の溶媒に対する、前記コア微粒子の溶解度、前記被覆層成分の溶解度等を考慮して選択できる。一方、前記コア微粒子については、液A〜C中の溶媒のいずれに対しての溶解度も低いことが好ましく、また極性有機溶媒および極性有機溶媒以外の溶媒のいずれに対しての溶解度も低いことが好ましく、被覆層成分は、液Bおよび液C中の溶媒に対しての溶解度が低いことが好ましく、液A中の溶媒に対しての溶解度が高いことが好ましく、また極性有機溶媒に対しての溶解度が高いことが好ましく、極性有機溶媒以外の溶媒に対しての溶解度が低いことが好ましい。
【0056】
液A中の溶媒における極性有機溶媒の割合は、前記コア微粒子が溶解せずに存在し、被覆層成分が溶解するという条件さえ満たしていれば特に限定されるものではなく、用いる溶媒やコア微粒子、被覆層成分の種類等により異なるが、好ましくは、30vol%以上、より好ましくは、60〜90vol%である。また、液C中の溶媒における極性有機溶媒の割合は、前記コア微粒子が溶解していた被覆層成分で被覆されうる割合であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、50vol%以下、より好ましくは、30〜50vol%である。
【0057】
液Aを調製する工程としては、前記コア微粒子が溶解しなければ、前記極性有機溶媒、前記コア微粒子および前記被覆層成分、または前記極性有機溶媒、前記コア微粒子、前記被覆層成分および前記極性有機溶媒以外の溶媒をいかなる順に加えて液Aを調製する工程でもかまわず、好ましくは、前記コア微粒子が分散した極性有機溶媒を含む液(液D)を調製し、液D中の極性有機溶媒と同一または異なった極性有機溶媒を含む溶媒に被覆層成分を溶解させた液(液E)を調製し、液Dと液Eを混合して調製する工程があげられる。また、液Dと液Eとの混合は、徐々に行うのが好ましい。液Dと液Eを混合して液Aを調製する工程において、液Aにおける極性有機溶媒の割合を調整するためには、液Dおよび液Eの液量とそれぞれにおける極性有機溶媒の割合を調節すればよい。液Dと液Eの混合は、前記インライン混合手段の入口から、流路を通じて接続された別のインライン混合手段または混合手段を備えた貯蔵室もしくは貯蔵槽によって行われてもよく、前記インライン混合手段の入口から、流路を通じて接続された別のインライン混合手段と接続される場合における被覆微粒子装置としては、それぞれ2つの入口と、1つの出口をもつ第1インライン混合手段と第2インライン混合手段を備え、第1インライン混合手段の出口と第2インライン混合手段の1つの入口が繋がっている被覆微粒子装置があげられる。液Dおよび液E中の溶媒における極性有機溶媒の各割合の差は20vol%以内とすることが好ましく、0vol%とすることがより好ましい。また、液Dおよび液Eは、それぞれさらに別のインライン混合手段によって調製してもよい。
【0058】
また、液Cにおいては、極性有機溶媒以外の溶媒(液F)を加えること、および/または、例えば蒸発留去、半透膜分離、分留等によって、選択的に極性有機溶媒を取り除くことで、極性有機溶媒の割合をさらに減少させることが好ましい。液Cと液Fの混合は、前記インライン混合装置の出口から流路を通じて接続された別のインライン混合手段または混合手段を備えた貯蔵室もしくは貯蔵槽によって行われてもよい。
【0059】
本発明におけるコア微粒子と被覆層成分の組み合わせは、特に限定されないが、コア微粒子が薬物とリポソームの複合体を構成成分とする微粒子であって、被覆層成分が脂質および/または界面活性剤である組み合わせが好ましい。コア微粒子がリポソームまたは薬物とリポソームの複合体を構成成分とする微粒子であって、被覆層成分が脂質および/または界面活性剤であって、被覆層が脂質膜である被覆微粒子は、その構成から狭義のリポソームと分類され、コア微粒子がリポソームまたは薬物とリポソームの複合体を構成成分とする微粒子以外で、被覆層成分が脂質および/または界面活性剤であって、被覆層が脂質膜である被覆微粒子は、広義のリポソームと分類される。本発明において、被覆微粒子は狭義のリポソームであることがより好ましい。
【0060】
本発明の被覆微粒子の製造方法において用いられるコア微粒子の液Aおよび液Cに対する割合は、コア微粒子を被覆層成分で被覆できれば特に限定されるものではないが、1μg/mL〜1g/mLが好ましく、0.1〜500mg/mLがより好ましい。また、用いられる被覆層成分(例えば脂質等)の液Aおよび液Cに対する割合は、前記コア微粒子を被覆できれば特に限定されるものではないが、1μg/mL〜1g/mLが好ましく、0.1〜400mg/mLがより好ましい。コア微粒子に対する被覆層成分の割合は、重量比で1:0.1〜1:1000が好ましく、1:1〜1:10がより好ましい。
【0061】
また、本発明の被覆微粒子の製造方法によって製造できる被覆微粒子の大きさは、平均粒子径が300nm以下であるのが好ましく、200nm以下であるのがより好ましく、具体的には、例えば注射可能な大きさであるのが好ましい。
【0062】
本発明の被覆微粒子の好ましい製造方法として、以下に脂質膜で被覆された被覆微粒子の製造方法を例にしてより具体的に説明する。なお、用いるコア微粒子の種類や、用いる被覆層成分の種類によらず、本発明の他の被覆微粒子も同様な方法で製造することができる。
(工程1)コア微粒子を極性有機溶媒を含む液、好ましくは、極性有機溶媒含有水溶液、さらに好ましくは、エタノール等のアルコール類を含有する水溶液に分散(懸濁)させる。
(工程2)脂質膜を構成する被覆層成分(例えば脂質膜となる脂質および/または界面活性剤)を極性有機溶媒を含む液(好ましくは、工程1の極性有機溶媒含有水溶液と同一または異なった極性有機溶媒含有水溶液、さらに好ましくは、同一の極性有機溶媒含有水溶液)に溶解する。
(工程3)工程1で得られた液と工程2で得られた液を混合する。
(工程4)引き続き、被覆微粒子製造装置のインライン混合手段の1つの入口から、工程3で得られた混合液を入れ、残る1つの入口から、工程3で得られた混合液と混合可能であり、極性有機溶媒を含まないまたは工程3で得られた混合液より低い割合で極性有機溶媒を含む液(好ましくは、水)を入れて混合し、該コア微粒子が脂質膜で被覆された被覆微粒子を、懸濁液の形態で得る。また、工程4で被覆微粒子の製造が完了した後、さらに水等を含有する液を混合する等して、極性有機溶媒の割合を下げることが好ましい。
【0063】
以下に、図を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の製造方法はこれら図に示したものに限定されるものではない。
図1は、本発明で用いられる基本的な被覆微粒子製造装置を表しており、2つの入口と、1つの出口をもつインライン混合手段(1)を備え、(1)の入口に流路(2)および(3)を、(1)の出口に流路(4)を備え、(2)および(3)を介してそれぞれポンプ(5)および(6)を、(4)を介して液槽(7)を備える被覆微粒子製造装置を表している。前記液Aは、(5)から(2)を経て(1)の入口の1つに流れ、前記液Bは、(6)から(3)を経て(1)の別の入口に流れ、液Aおよび液Bは(1)で混合される。液Aが液Bと混合されることでコア微粒子が被覆層で被覆されて被覆微粒子が分散した前記液Cとなり、液Cは(1)の出口から流路(4)を通じて液槽(7)に送られて蓄えられる。
【0064】
図2は、前記液Aが、前記液Dと前記液Eとからインライン混合手段を用いて調製される場合の被覆微粒子製造装置の応用例を表しており、図1におけるポンプ(5)に換えて、2つの入口と、1つの出口をもつインライン混合手段(8)を備え、(8)の出口は(2)に繋がっており、(8)の入口に、流路(9)および(10)を備え、(9)および(10)を介してそれぞれポンプ(11)および(12)を備える被覆微粒子製造装置を表している。
【0065】
図3は、図1の基本的な被覆微粒子製造装置にさらに前記液Cに前記液Fを混合するためのインライン混合手段を備える場合の被覆微粒子製造装置の応用例を表している。図1における液槽(7)に換えて、2つの入口と、1つの出口をもつインライン混合手段(13)を備え、(13)の入口の1つは(4)に繋がっており、(13)の別の入口および出口に、それぞれ流路(14)および(15)を備え、(14)および(15)を介してそれぞれポンプ(16)および液槽(17)を備える被覆微粒子製造装置を表している。
【0066】
一方、図4は、従来技術(国際公開第02/28367号パンフレット参照)における被覆微粒子製造装置を表しており、液槽(18)およびそれに繋がった流路(19)を備え、(19)を介してポンプ(20)を備える被覆微粒子製造装置を表している。前記液Aは(18)に入れられ、液Bは(20)に入れられ、(20)から(19)を経て(18)中の液Aに加えられる。
【0067】
本発明におけるインライン混合手段としては、例えばT字管、Y字管、三方継手、三方コック、インラインミキサー(例えばスタティックミキサー等)、インラインミキサーアセンブリ等があげられ、それぞれスタティックミキサーを接続または内蔵していることが好ましい。流路は例えば金属パイプ、樹脂製チューブ等のいかなる流路であってもよく、ポンプとしては例えばギアポンプ、チューブポンプ、シリンジポンプ、吸引ポンプ、加圧ポンプ、プランジャー式ポンプ等があげられ、ポンプが流路の機能を兼ねていてもよい。また、本発明で用いられる被覆微粒子製造装置内または流路を通じた外部に貯蔵室または貯蔵槽が備えられていてもよく、それぞれ混合手段を備えていてよい。ここで、貯蔵室または貯蔵槽を高位置に設置することによる高低差を利用した自然落下も、ポンプの一形態に含まれる。
【0068】
本発明の製造方法において、本発明の被覆微粒子製造装置内または流路を通じた外部の貯蔵室または貯蔵槽に備えられる混合手段は、特に限定されるものではなく、例えばスタティック式ミキサー、プロペラ型ミキサー、ローター/ステーター式ミキサー、ダービン式ミキサー、のこぎり歯ブレード、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等があげられ、好ましくは、スタティックミキサー、プロペラ型ミキサー、ローター/ステーター式ミキサーまたはダービン式ミキサーがあげられる。
【0069】
図1〜3の被覆微粒子製造装置では、それぞれ液Aと液Bの混合液がインライン混合手段(1)から流路(4)を流れるうちにコア微粒子が被覆され、途中の任意の時間に各ポンプを停止または稼働のまま、液槽(7)または(17)を交換して求める被覆微粒子の懸濁液を連続して得ることができる。また、任意の時間に各ポンプを停止して、供給する各液を交換し、再度各ポンプを稼働させても、同じ組成の液を用いていれば、同じ被覆微粒子の懸濁液を引き続き得ることが簡便にできる。また、被覆微粒子製造装置の大きさによらず、液槽(7)または(17)や、供給する各液を交換していくことによって、任意の量の被覆微粒子の懸濁液が製造可能であるので、工業的必要量の被覆微粒子を製造することも可能である。すなわち、本発明の被覆微粒子の製造方法では連続的にコア微粒子の被覆を行うことができ、被覆微粒子の大量生産が可能となる。これに対して、図4の被覆微粒子製造装置では、液槽(18)の中でコア微粒子が被覆され、規定量の液Bを供給した後にしか液槽(8)中に求める被覆微粒子の懸濁液が得られない。また、工業的必要量の被覆微粒子を製造するには、巨大な大きさの被覆微粒子製造装置が必要となる。
【0070】
また、小型の被覆微粒子製造装置が望まれる場合、上記のインライン混合手段を備える被覆微粒子製造装置を小型にしたものでよく、そのときのポンプは、自然落下を利用したポンプまたは人の手によって押し出すポンプ(例えばシリンジ、ピストン、スポイド等)であってもよい。このような小型の被覆微粒子製造装置を用いれば、用時に被覆微粒子を製造することも可能である。
【0071】
本発明の被覆微粒子は、例えば血液成分等の生体成分、消化管液等に対する薬剤の安定化、副作用の低減、腫瘍等の標的臓器への薬剤集積性の増大、経口や経粘膜での薬剤の吸収の改善等を目的とする製剤として使用できる。本発明の被覆微粒子は、該目的において、生体成分中で薬物を長時間内包しうる堅固に薬物を含有した被覆微粒子であることが好ましい。
【0072】
本発明の被覆微粒子を製剤として使用する場合、上述の方法により調製した被覆微粒子の懸濁液をそのまま例えば注射剤等の形態として用いることも可能であるが、該懸濁液から例えば濾過、遠心分離等によって溶媒を除去して使用することも、該懸濁液、または例えばマンニトール、ラクトース、トレハロース、マルトース、グリシン等の賦形剤を加えた該懸濁液を凍結乾燥して使用することもできる。
【0073】
注射剤の場合、前記の被覆微粒子の懸濁液または前記の溶媒を除去または凍結乾燥した被覆微粒子に、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液、アミノ酸輸液等を混合して注射剤を調製することが好ましい。また、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システイン、EDTA等の抗酸化剤、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等の等張化剤等を添加して注射剤を調製することも可能である。また、例えばグリセリン等の凍結保存剤を加えて凍結保存することもできる。
【0074】
また、本発明の被覆微粒子は、適当な賦形剤等と共に造粒、乾燥する等して例えばカプセル剤、錠剤、顆粒剤等の経口用製剤に加工してもよい。
【0075】
次に、実施例により、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0076】
下記の被覆微粒子製造装置、液A、液Bおよび液Fを用い、液Aを10mL/h、液Bを7.5mL/hで混合後の液C中のエタノール濃度がおよそ40vol%になるようにそれぞれ送液し、液Fを混合後のエタノール濃度がおよそ10vol%になるように調整して送液した。
得られた被覆微粒子の懸濁液から、超遠心(1時間、110,000×g,25℃)によって上清を除去し、50mmol/Lリン酸二水素カリウム水溶液を添加して再懸濁し、製剤を得た。
被覆微粒子製造装置;
図3に示した被覆微粒子製造装置を用いた。(1)および(13)にT字状の接続部(テルフュージョン三方活栓R型、テルモ製)を用い、(5)、(6)および(15)にシリンジポンプ(テルフュージョンシリンジポンプSTC−525、テルモ製)を用いた。
液A;
卵黄レシチン(キューピー製)3.00gおよびPEG−DSPE[アバンチポーラルリピッズ(Avanti Polar Lipids)社製;以下同様である]1.20gに、エタノール20mLを室温下で加え溶解させた後、エタノールを留去し減圧乾燥し、次に水100mLを加え、ボルテックスミキサーで振とう撹拌した。得られた懸濁液を、室温で0.20μmのポリカーボネートメンブランフィルターに20回通した後、0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。別に、1.4mg/mL G−CSF(協和発酵製、ナルトグラスチム、遺伝子組換ヒトG−CSF変異型)水溶液3.5mLに、7mg/mLデキストラン硫酸ナトリウム(メルク製)1.4mLを加えた。得られた液4.2mLと、フィルターに通した卵黄レシチンとPEG−DSPEの懸濁液0.2mLを混合し、次に塩酸(関東化学製)を加えpHを4とし、コア微粒子の懸濁液を得た。得られたコア微粒子の懸濁液500μLにエタノール780μLを加え、30mg/mL卵黄ホスファチジルコリンおよび12mg/mL PEG−DSPEを含むエタノール53μLを加えた。
液B;
蒸留水
液F;
50mmol/Lリン酸二水素カリウム水溶液
【実施例2】
【0077】
実施例1と同じ被覆微粒子製造装置、液Bおよび液Fと、下記の液Aを用い、液Aを8mL/h、液Bを4.2mL/hで混合後の液C中のエタノール濃度がおよそ40vol%になるようにそれぞれ送液し、液Fを混合後のエタノール濃度がおよそ10vol%になるように調整して送液した。得られた被覆微粒子の懸濁液を用いて、実施例1と同様に超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
液A;
実施例1と同様に調製されたコア微粒子の懸濁液500μLにエタノール666μLを加え、30mg/mL卵黄ホスファチジルコリンおよび12mg/mL PEG−DSPEを含むエタノール167μLを加えた。
【0078】
<比較例1>
下記の被覆微粒子製造装置、液Aおよび液Bを用い、液Aを下記の(18)に入れ、液Bを(20)に入れ、液Aに液B 7mLを(19)を通じて加え、エタノール濃度が10vol%になるようにした。得られた被覆微粒子の懸濁液を用いて、実施例1と同様に超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
被覆微粒子製造装置;
図4に示した被覆微粒子製造装置を用いた。(18)にマグネチックスターラーを入れた三角フラスコを用い、(20)にシリンジポンプ(テルフュージョンシリンジポンプSTC−525、テルモ製)を用いた。
液A;
実施例1と同様に調製されたコア微粒子の懸濁液500μLにエタノール780μLを加え、30mg/mL卵黄ホスファチジルコリンおよび12mg/mL PEG−DSPEを含むエタノール53μLを加えた。
液B;
蒸留水
【0079】
<試験例1>
実施例1〜2および比較例1で得られた各製剤について動的光散乱(DLS)測定装置(A model ELS−800、大塚電子、以下同様)で被覆微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
<試験例2>
実施例1〜2および比較例1で得られた各製剤について、被覆微粒子中におけるG−CSFの内包率を以下のように求めた。
各製剤をゲルろ過クロマトグラフィー(Φ10mm×20cmのカラム中に、分子体積排除型の高分子(セファロース(Sepharose)CL−4B)を充填し、移動相にリン酸緩衝食塩水(PBS)を用いた)にかけ、それぞれ被覆微粒子画分と遊離G−CSF画分に分離した。それぞれの画分20μLに10w/v%ラウリル硫酸ナトリウムを含むpH9のホウ酸緩衝液2μL、pH9のホウ酸緩衝液78μLおよび2−プロパノール100μLを加えて攪拌し完全に被覆微粒子を破壊した後、高速液体クロマトグラフィー(下記条件)でG−CSFを定量し、被覆微粒子中におけるG−CSFの内包率を下記式(1)で算出した。結果を表2に示す。
カラム:YMC−Pack C8 Φ4.6mm×15cm
移動相:I液(pH7、10mmol/Lリン酸緩衝液−2−プロパノール混液(75:25))+II液(2−プロパノール)
II液の割合を、分析開始後0〜30分では0〜86.7vol%に直線的に増加、30〜40分では86.7vol%とした。
検出:励起波長280nm、蛍光波長340nm
【0082】
【数1】

【0083】
【表2】

【0084】
表1からわかるように、実施例1〜2および比較例1で得られた各製剤における被覆微粒子は、それぞれ同様の平均粒子径を有している。一方、表2からわかるように、実施例1および2で得られた製剤では、被覆微粒子中におけるG−CSFの内包率が90%以上であり、比較例1で得られた製剤では70%程度であった。すなわち、本発明の被覆微粒子の製造方法では、連続式の簡便な製造方法であるにもかかわらず、従来法と同程度の大きさの被覆微粒子を製造可能であり、さらに薬物の内包率が高い効率の良い被覆微粒子の製造も可能であった。
【実施例3】
【0085】
下記の被覆微粒子製造装置、液Aおよび液Bを用い、液Aを5.2mL/h、液Bを11.1mL/hで混合後の液C中のエタノール濃度がおよそ20vol%になるようにそれぞれ送液した。(7)には予め蒸留水18.8mLを入れ、得られた被覆微粒子の懸濁液が滴下するようにした。シリンジポンプを作動させ、23分後にシリンジポンプを停止した。(7)に蓋をして反転混合後、得られた混合液の超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行った。超遠心分離後の沈殿物に希釈後の総脂質濃度が30mg/mLとなるようにリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加して再懸濁し、製剤を得た。
被覆微粒子製造装置;
図1に示した被覆微粒子製造装置を用いた。(1)にHPLC配管用三方継手(島津製作所製)と2cmのスタティックミキサー[長さ20mm×内径1.5mmのフッ素樹脂チューブに2mgのガスクロマトグラフ用石英ウール(島津製作所製)を充填したもの]を用い、(5)および(6)に20mLシリンジ(テルモ製)を備えたシリンジポンプ(日機装製)を用いた。
液A;
デキストランフルオレセインアニオニック(FD)(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)製;以下同様である)30mg、DOTAP(アバンチポーラルリピッズ(Avanti Polar Lipids)社製;以下同様である)180mgおよびPEG−DSPE72mgに蒸留水9mLを加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回および0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通し、コア微粒子の懸濁液を得た。得られたコア微粒子の懸濁液750μLとエタノール1mLを混合し、EPC480mgおよびPEG−DSPE100mgにエタノール2mLを加え攪拌して得た溶液250μLを混合した。
液B;
蒸留水
【実施例4】
【0086】
実施例3と同じ被覆微粒子製造装置、液Aおよび液Bを用い、液Aを5.2mL/h、液Bを5.6mL/hで混合後の液C中のエタノール濃度がおよそ30vol%になるようにそれぞれ送液した。(7)には予め蒸留水20.9mLを入れ、得られた被覆微粒子の懸濁液が滴下するようにした。シリンジポンプを作動させ、23分後にシリンジポンプを停止し、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
【実施例5】
【0087】
実施例3と同じ被覆微粒子製造装置、液Aおよび液Bを用い、液Aを5.2mL/h、液Bを2.9mL/hで混合後の液C中のエタノール濃度がおよそ40vol%になるようにそれぞれ送液した。(7)には予め蒸留水21.9mLを入れ、得られた被覆微粒子の懸濁液が滴下するようにした。シリンジポンプを作動させ、23分後にシリンジポンプを停止し、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
【実施例6】
【0088】
実施例3と同じ被覆微粒子製造装置、液Aおよび液Bを用い、液Aを5.2mL/h、液Bを0.7mL/hで混合後の液C中のエタノール濃度がおよそ55vol%になるようにそれぞれ送液した。(7)には予め蒸留水22.7mLを入れ、得られた被覆微粒子の懸濁液が滴下するようにした。シリンジポンプを作動させ、23分後にシリンジポンプを停止し、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
【実施例7】
【0089】
実施例3と同じ被覆微粒子製造装置、液Aおよび液Bを用い、液Aを26.0mL/h、液Bを28.0mL/hで混合後の液C中のエタノール濃度がおよそ30vol%になるようにそれぞれ送液した。(7)には予め蒸留水20.9mLを入れ、得られた被覆微粒子の懸濁液が滴下するようにした。シリンジポンプを作動させ、4.6分後にシリンジポンプを停止し、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
【実施例8】
【0090】
実施例3と同じ被覆微粒子製造装置、液Aおよび液Bを用い、液Aを1.0mL/h、液Bを1.1mL/hで混合後の液C中のエタノール濃度がおよそ30vol%になるようにそれぞれ送液した。(7)には予め蒸留水20.9mLを入れ、得られた被覆微粒子の懸濁液が滴下するようにした。シリンジポンプを作動させ、115分後にシリンジポンプを停止し、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
【実施例9】
【0091】
実施例3と同じ被覆微粒子製造装置からミキサーを除いた被覆微粒子製造装置と、実施例3と同じ液Aおよび液Bを用い、液Aを5.2mL/h、液Bを5.6mL/hで混合後の液C中のエタノール濃度がおよそ30vol%になるようにそれぞれ送液した。(7)には予め蒸留水20.9mLを入れ、得られた被覆微粒子の懸濁液が滴下するようにした。シリンジポンプを作動させ、23分後にシリンジポンプを停止し、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
【実施例10】
【0092】
実施例3と同じ被覆微粒子製造装置で、2cmのスタティックミキサーを0.4cmのスタティックミキサー[長さ4mm×内径1.5mmのフッ素樹脂チューブに0.4mgのガスクロマトグラフ用石英ウール(島津製作所製)を充填したもの]に代えた被覆微粒子製造装置と、実施例3と同じ液Aおよび液Bを用い、実施例9と同様に被覆微粒子の懸濁液を製造し、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
【実施例11】
【0093】
実施例3と同じ被覆微粒子製造装置で、2cmのスタティックミキサーを1cmのスタティックミキサー[長さ10mm×内径1.5mmのフッ素樹脂チューブに1mgのガスクロマトグラフ用石英ウール(島津製作所製)を充填したもの]に代えた被覆微粒子製造装置と、実施例3と同じ液Aおよび液Bを用い、実施例9と同様に被覆微粒子の懸濁液を製造し、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
【実施例12】
【0094】
実施例3と同じ被覆微粒子製造装置で、2cmのスタティックミキサーを5本連続(計10cm)繋いだ被覆微粒子製造装置と、実施例3と同じ液Aおよび液Bを用い、実施例9と同様に被覆微粒子の懸濁液を製造し、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
【0095】
<比較例2>
下記の被覆微粒子製造装置、液Aおよび液Bを用い、液Aを下記の(18)に入れ、液Bを(20)に入れ、液Aに液B23mLを(19)を通じて1mL/minで加えた。得られた被覆微粒子の懸濁液の超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)を行った。超遠心分離後の沈殿物をPBSで希釈し希釈後の総脂質濃度が30mg/mLとなるように調整し、製剤を得た。
被覆微粒子製造装置;
図4に示した被覆微粒子製造装置を用いた。(20)にシリンジポンプ(テルフュージョンシリンジポンプSTC−525、テルモ製)を用い、(18)に容積約30mLのガラス容器を用い、該ガラス容器には回転子を入れスターラーで攪拌した。
液A;
FD30mg、DOTAP180mgおよびPEG−DSPE72mgに蒸留水9mLを加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回および0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通した。得られた懸濁液750μLを約30mLのガラス容器に入れ、回転子を入れスターラーで攪拌しながらエタノール1mLを混合し、コア微粒子の懸濁液を得た。得られたコア微粒子の懸濁液に、EPC1200mgおよびPEG−DSPE250mgにエタノール5mLを加え攪拌して得た溶液250μLを加え混合した。
液B;
蒸留水
【0096】
<比較例3>
下記の被覆微粒子製造装置、液Aおよび液Bを用い、液Aを液Bに滴下した。滴下後に、実施例3と同様に、混合、超遠心および再懸濁をして製剤を得た。
被覆微粒子製造装置;
図1で示した被覆微粒子製造装置で、(5)に可変ピペット(エッペンドルフ製)を用い、(1)、(3)および(6)を除き、液槽(7)に液Bを入れた被覆微粒子製造装置を用いた。
液A;
FD30mg、DOTAP180mgおよびPEG−DSPE72mgに蒸留水9mLを加え、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた懸濁液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回および0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回通し、コア微粒子の懸濁液を得た。得られたコア微粒子の懸濁液750μLとエタノール1mLを混合し、EPC480mgおよびPEG−DSPE100mgにエタノール2mLを加え攪拌して得た溶液250μLを混合した。
液B;
蒸留水23.0mL
【0097】
<試験例3>
実施例3〜12および比較例2〜3で得られた各製剤について、DLS測定装置で被覆微粒子の平均粒子径を測定した。結果を表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
<試験例4>
実施例3〜12および比較例2で得られた各製剤について、被覆微粒子中におけるFDの内包率を以下のように求めた。
各製剤30μLをとりそれぞれに精製水2970μLを加え攪拌し超遠心分離して上清を取得した。上記各製剤および上記各上清を1000倍希釈し、希釈後の各50μLに、10w/v%トライトンエックス−100(TritonX−100)50μLおよびPBS400μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。その100μLを96穴マイクロプレートにとり、蛍光プレートリーダー(ワラック(Wallac)社製、アルボエスエックス−4(ARVOsx−4))を使用して励起波長485nmおよび蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。一方、1、0.5および0.25μg/mLとなる各FD水溶液の蛍光強度を測定し、検量線を得た。検量線から各製剤中のFD濃度、超遠心分離後の各上清中のFD濃度を求め、被覆微粒子中におけるFDの内包率を下記式(2)で算出した。結果を表4に示す。
【0100】
【数2】

【0101】
【表4】

【0102】
<試験例5>
実施例3〜12および比較例2〜3で得られた各製剤における、FDおよびEPCの仕込み量に対する回収率を以下のように求めた。
各製剤を1000倍希釈し、希釈後の各50μLに、10w/v%TritonX−100 50μLおよびPBS400μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。その100μLを96穴マイクロプレートにとり、蛍光プレートリーダー(ワラック(Wallac)社製、アルボエスエックス−4(ARVOsx−4))を使用して励起波長485nmおよび蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。一方、1、0.5および0.25μg/mLとなる各FD水溶液の蛍光強度を測定し、検量線を得た。検量線から各製剤中のFD濃度を求めた。一方、各製剤中のEPC濃度は、リン脂質C−テストワコー(和光純薬製)を用いて測定することにより求めた。各製剤におけるFD回収率およびEPC回収率は、下記式(3)で算出した。結果を表5に示す。
【0103】
【数3】

【0104】
【表5】

【0105】
<試験例6>
実施例3〜12および比較例2で得られた各製剤について、牛胎児血清(FBS)中での安定性について検討を行った。
各製剤30μLにFBS2970μLを加え混合した。混合直後および37℃で3時間静置後に各500μLを取りゲルろ過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography,GPC)を行い、そのフラクション(100滴,10本)を回収した。各フラクションをボルテックスミキサーで振とう攪拌してサンプルとし、FDを定量するため、各50μLに、10w/v%TritonX−100 50μLおよびPBS400μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。その100μLを96穴マイクロプレートにとり、蛍光プレートリーダー(ワラック(Wallac)社製、アルボエスエックス−4(ARVOsx−4))を使用して励起波長485nmおよび蛍光波長530nmでの蛍光強度を測定した。
0時間後および3時間後のFD回収率を下記式(4)で算出した。結果を表6に示す。
【0106】
【数4】

【0107】
【表6】

【0108】
表3および表4からわかるように、実施例3〜12および比較例2〜3で得られた各製剤における被覆微粒子では、平均粒子径も内包率も同様であり、外見上は同様の品質の被覆微粒子が得られた。一方、表5からわかるように、実施例3〜12および比較例2で得られた各製剤では、FDおよびEPCの回収率が高く、比較例3で得られた製剤では低い。また、表6からわかるように、実施例3〜12で得られた製剤は、比較例2で得られた製剤と比べて、PBS中におけるFDの回収率が高く、PBS中での安定性が良い。すなわち、本発明の被覆微粒子の製造方法では、連続式の簡便な製造方法であるにもかかわらず、従来法と同程度の大きさと薬物内包率の被覆微粒子を製造可能であり、さらに効率よくおよび/または堅固に薬物を含有させた被覆微粒子の製造も可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明により、コア微粒子が被覆層で被覆された被覆微粒子の連続式で簡便な工業的製造方法が提供される。また、本発明によって、効率よくおよび/または堅固に薬物を含有させた被覆微粒子の製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア微粒子が被覆層で被覆された被覆微粒子の製造方法であって、
該コア微粒子が分散し、かつ該被覆層を構成する被覆層成分が溶解した極性有機溶媒を含む液(液A)を調製する工程、
液Aと混合可能であり、極性有機溶媒を含まないまたは液Aより低い割合で極性有機溶媒を含む液(液B)を調製する工程、および
2つ以上の入口と、1つ以上の出口をもつインライン混合手段を備える被覆微粒子製造装置の少なくとも1つの入口から、液Aを入れ、残る入口の少なくとも1つの入口から、液Bを入れて混合し、該コア微粒子を該被覆層で被覆する工程を含む製造方法。
【請求項2】
被覆微粒子製造装置が、ポンプ、流路および前記インライン混合手段を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
被覆微粒子製造装置が、手動ポンプ、流路および前記インライン混合手段を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
被覆層成分が、脂質、界面活性剤および高分子から選ばれる1つ以上の物質である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
被覆層が脂質膜である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
コア微粒子が薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン微粒子、高分子、金属コロイドまたは微粒子製剤を構成成分とする微粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
コア微粒子が薬物、脂質集合体、リポソーム、エマルジョン微粒子、高分子、金属コロイドまたは微粒子製剤を2つ以上組み合わせた複合体を構成成分とする微粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
コア微粒子が、薬物とリポソームの複合体を構成成分とする微粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
極性有機溶媒がアルコール類、グリコール類およびポリアルキレングリコール類から選ばれる1つ以上である請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
極性有機溶媒がエタノールである請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法によって製造できる被覆微粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/089926
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−511305(P2006−511305)
【国際出願番号】PCT/JP2005/005251
【国際出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】