説明

被覆材及び被膜形成方法

【課題】各種下地及び上塗材との密着性に優れ、1液弱溶剤形下塗材として好適に使用できる被覆材を提供する。
【解決手段】本発明の被覆材は、酸化硬化形樹脂(A)、及び金属ドライヤー(B)、並びに脂肪族炭化水素を含む溶剤を必須成分とする被覆材であって、前記酸化硬化形樹脂(A)は、酸価が0.5〜20mgKOH/gであり、さらにエポキシ基含有シラン化合物(C)を、前記酸化硬化形樹脂(A)の固形分100重量部に対し1〜30重量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被覆材、及びそれを用いた被膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構築物等を構成する基材としては、コンクリート、モルタル、スレート板、珪酸カルシウム板等の無機質基材が多く用いられている。これらの面に塗装を施す場合には、密着性を確保し、さらには経時的な被膜の膨れ、剥れ、浮き等を防止するために、通常、下塗材が施されている。また、経年劣化した旧塗膜面に対して塗装を施す場合においても、同様に下塗材が必要となる。このような下塗材は、主に溶剤系下塗材、水性系下塗材に分類される。
このうち、被塗面の表面が脆弱な場合等においては、溶剤系下塗材が使用されることが多い。これは、溶剤系下塗材が被塗面への浸透性に優れ、被塗面表層部を補強する作用を有するためである。
【0003】
しかし、このような溶剤系下塗材の多くは、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤を媒体とする強溶剤形である。強溶剤形下塗材は、その被膜物性においては優れた性能を有するものであるが、塗装時の安全性や作業衛生等の点、あるいは大気汚染に及ぼす影響等を考慮すると、あまり好ましいものとは言えない。また、強溶剤形下塗材を旧塗膜面に適用すると、リフティングが発生するおそれもある。最近では、このような芳香族炭化水素系溶剤の使用を抑える動きが強まっている。
【0004】
このような動きに対応するため、脂肪族炭化水素系溶剤を主たる溶剤とする弱溶剤形下塗材への転換が要望されるようになってきた。この弱溶剤形下塗材は、強溶剤形下塗材に比べ低毒性であり、作業上の安全性が高く、さらには大気汚染に対する影響も小さいといった長所をもつため、環境対応型の被覆材として好ましいものである。例えば、特開2003−246963号公報には、特定の変性エポキシ樹脂と、その硬化剤を必須成分とする弱溶剤形下塗材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−246963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載の下塗材は、主剤と硬化剤からなる2液形である。このような形態の被覆材では、塗装時に主剤と硬化剤を所定の比率で正確に混合する必要がある。また、これらを混合した後、可使時間内に塗装作業を完了させる必要がある。このような繁雑さは、2液形の形態では避けることができないものである。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、各種下地及び上塗材との密着性に優れ、1液弱溶剤形下塗材として好適に使用できる被覆材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の酸化硬化形樹脂、金属ドライヤー、シラン化合物等を必須成分とする被覆材に想到し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.酸化硬化形樹脂(A)、及び金属ドライヤー(B)、並びに脂肪族炭化水素を含む溶剤を必須成分とする被覆材であって、
前記酸化硬化形樹脂(A)は、酸価が0.5〜20mgKOH/gであり、
さらにエポキシ基含有シラン化合物(C)を、前記酸化硬化形樹脂(A)の固形分100重量部に対し1〜30重量部含むことを特徴とする被覆材。
2.基材に対し、下塗材を塗付した後、上塗材を塗付する被膜形成方法であって、
前記下塗材として、1.記載の被覆材を使用することを特徴とする被膜形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明被覆材は、各種下地及び上塗材との密着性等において優れた性能が発揮できるものである。本発明被覆材は、作業上の取扱いが容易な1液弱溶剤形下塗材として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
[被覆材]
本発明の被覆材は、酸化硬化形樹脂(A)(以下「(A)成分」ともいう)、金属ドライヤー(B)(以下「(B)成分」ともいう)、エポキシ基含有シラン化合物(C)(以下「(C)成分」ともいう)を含み、溶剤として脂肪族炭化水素を含むものである。
【0013】
本発明の被覆材は、脂肪族炭化水素を含む溶剤(以下「脂肪族炭化水素系溶剤」ともいう)を使用する所謂弱溶剤形の被覆材である。このような脂肪族炭化水素系溶剤は、芳香族炭化水素系溶剤に比べ、低毒性であり、作業上の安全性が高く、さらには大気汚染に対する影響も小さい非水系溶剤である。脂肪族炭化水素としては、例えば、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン等が挙げられる。また本発明では、脂肪族炭化水素系溶剤として、テルピン油やミネラルスピリット等を使用することもできる。
【0014】
本発明被覆材の溶剤としては、全溶剤中に脂肪族炭化水素を30重量%以上含むものが好適である。特に、トルエン等を含まず、引火点21℃以上の消防法第四類第2石油類に該当するものが、安全衛生上好ましい。このような溶剤は、低臭性、作業安全性、あるいは旧塗膜上に塗装を行った際のリフティング防止性等の点で好適である。本発明被覆材の溶剤において、脂肪族炭化水素と混合可能な溶剤としては、例えば、ソルベントナフサ、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が例示できる。
【0015】
本発明の被覆材では、樹脂成分として酸化硬化形樹脂(A)を使用する。本発明における(A)成分は、酸化重合可能な二重結合(酸化重合性基)によって、空気酸化し硬化乾燥するものである。このような(A)成分としては、酸化重合性基を有するものであれば特に限定されないが、具体的には以下に示すような樹脂が使用できる。
【0016】
1)酸化重合性基を有するビニル単量体と、この単量体と共重合可能な他のビニル単量体とを共重合させて得られた樹脂。
2)エポキシ基含有ビニル単量体と、この単量体と共重合可能な他のビニル単量体とを共重合させた後、前記エポキシ基含有ビニル単量体に不飽和脂肪酸を付加させて得られた樹脂。
3)酸化重合性基を有するビニル単量体、及び/またはこの単量体と共重合可能な他のビニル単量体とをアルキド樹脂に共重合及び/またはグラフト重合させて得られた樹脂。
【0017】
上記1)、3)における酸化重合性基を有するビニル単量体としては、例えばエポキシ基含有ビニル単量体に不飽和脂肪酸が付加されたビニル単量体が挙げられる。このビニル単量体は、エポキシ基と不飽和脂肪酸中のカルボキシル基との反応によって得られるものである。また、上記2)の樹脂は、樹脂中のエポキシ基に対する不飽和脂肪酸の付加反応によって得られるものである。エポキシ基と不飽和脂肪酸を反応させる際には、第3級アミンや第4級アンモニウム塩等の触媒を使用することができる。
【0018】
具体的にエポキシ基含有ビニル単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−オキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0019】
不飽和脂肪酸としては、例えば、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、クルミ油脂肪酸等が挙げられる。
【0020】
上記1)、3)における酸化重合性基を有するビニル単量体としては、ジシクロペンタジエンオキシアルキル(メタ)アクリレート等のジシクロペンタジエンオキシアルキル基含有ビニル単量体、アリル(メタ)アクリレート等のアリル基含有ビニル単量体を使用することもできる。
【0021】
上記3)におけるアルキド樹脂としては、多価アルコールと多価カルボン酸を重縮合させ、これを乾性油、不飽和脂肪酸等で変性したものが使用可能である。このうち多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、多価カルボン酸としては、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。また、乾性油としては、例えば亜麻仁油、桐油、オイチシカ油、サフラワー油等が挙げられる。アルキド樹脂の含有量は、(A)成分中に固形分として、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは2〜8重量%である。このような、範囲で(A)成分がアルキド樹脂を含有することで、本発明の被覆材は、上塗材のハジキを抑制し、均一な被膜を形成することができる。
【0022】
上記1)〜3)における他のビニル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族単量体等が挙げられる。このうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香族モノマーの具体例としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。ビニル単量体としては、この他、カルボキシル基含有ビニル単量体、アミノ基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体等も使用できる。
(A)成分としては、他の単量体として、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルが共重合されたもの、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び芳香族単量体が共重合されたもの等が好適である。
【0023】
本発明では、(A)成分として、その酸価が通常0.5〜20mgKOH/g、好ましくは0.8〜10mgKOH/g、より好ましくは1〜8mgKOH/gであるものを使用する。このような(A)成分の酸価は、各種下地及び上塗材との密着性向上、とりわけ旧塗膜面を有する下地に対する密着性向上等に寄与するものである。さらに、(A)成分の酸価が上記範囲内であれば、長期保存後の密着性も確保される。(A)成分の酸価が小さすぎる場合は、密着性が不十分となりやすい。(A)成分の酸価が大きすぎる場合は、耐水性、または長期保存後の密着性等が低下するおそれがある。なお、酸価は、(A)成分の固形分1gに含まれる酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値である。
【0024】
(A)成分の酸価を上記範囲内に設定するには、例えば(A)成分の重合時に、ビニル単量体としてカルボキシル基含有ビニル単量体を使用すればよい。カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0025】
(A)成分の酸価によって、上述のような効果が得られる作用機構は明確ではないが、カルボキシル基自体がその極性によって密着性を発揮すること、さらには、カルボキシル基と(C)成分中のエポキシ基との相互作用、あるいは(C)成分中のアルコキシシリル基に対するカルボキシル基の触媒的作用等が関与しているものと推測される。(A)成分の酸価が上記範囲内であれば、このような作用によって優れた密着性が発揮され、しかも(C)成分の失活が抑制されることで、長期保存後の密着性も確保されるものと考えられる。
【0026】
(A)成分の形態としては、溶剤可溶形、非水分散形が挙げられるが、本発明では溶剤可溶形が好適である。
【0027】
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは5000〜300000、より好ましくは10000〜200000、さらに好ましくは20000〜100000である。重量平均分子量がこのような範囲内であれば、浸透性、成膜性等の点で好適であり、密着性、耐久性等の被膜物性を高めることもできる。
【0028】
(A)成分のガラス転移点は、好ましくは0℃〜80℃、より好ましくは10℃〜60℃、さらに好ましくは20〜50℃である。ガラス転移点がこのような範囲内であれば、密着性、耐久性等の被膜物性を高めることができる。
【0029】
本発明被覆材における金属ドライヤー(B)は、上記酸化硬化形樹脂の硬化触媒としてはたらく成分である。(B)成分としては、コバルト系、マンガン系、ジルコニウム系、スズ系、鉛系、亜鉛系、銅系、鉄系、カルシウム系等の公知の有機金属化合物が使用できる。具体的には例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉄、ナフテン酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0030】
(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常、金属分で0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。
【0031】
本発明被覆材では、上記成分に加え、エポキシ基含有シラン化合物(C)を必須成分として用いる。この(C)成分は、密着性向上効果に寄与するものである。
(C)成分は、エポキシ基及び反応性シリル基を併有する化合物である。反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン、水素原子等が結合したものが挙げられ、この中でも珪素原子にアルコキシル基が結合したアルコキシシリル基が好適である。
【0032】
(C)成分の具体例としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0033】
(C)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部、より好ましくは3〜15重量部である。このような範囲内であれば、各種下地及び上塗材との密着性において、優れた性能が得られる。また保存安定性が確保され、1液形としての実用性が得られる。長期保存後の密着性においても、優れた性能が得られる。(C)成分が少なすぎる場合は密着性が不十分となり、多すぎる場合は保存安定性等の点で不利となる。
【0034】
本発明被覆材では、上述の成分の他、本発明の効果に影響しない程度に各種成分を配合することも可能である。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、硬化剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、皮張り防止剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、低汚染化剤、触媒等が挙げられる。
【0035】
本発明の被覆材は、以上のような各成分を常法により均一に撹拌・混合して製造することができる。本発明被覆材は、1液型の形態で使用できる。
【0036】
[適用面・塗装方法]
本発明被覆材は、建築物、土木構築物等における新築時あるいは改修時の下塗材として好適に使用できる。適用可能な被塗面としては、例えば、コンクリート、モルタル、スレート板、珪酸カルシウム板、ALC板、押出成型板、スレート瓦、セメント瓦、新生瓦等の無機質基材面、各種金属からなる金属基材面、プラスチック等からなる有機質基材面等の各種基材面、あるいは、これら基材面に、アルキッド樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、アクリルシリコン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料等による各種塗膜が形成された旧塗膜面等が挙げられる。
このうち、本発明被覆材は、無機質基材面、またはこれら無機質基材上の旧塗膜面に対して、特に好ましく適用することができる。
【0037】
下塗材の塗装方法としては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装、ロールコーター、フローコーター等、種々の方法を用いることができる。塗装時の塗付け量は、好ましくは30〜500g/m、より好ましくは50〜300g/mである。
下塗材の塗回数は、被塗面の表面状態等によって適宜設定すればよいが、通常1〜2回である。下塗材の乾燥時間は、通常3時間以上とすればよい。
【0038】
下塗材を乾燥させた後、各種上塗材を塗装することができる。
上塗材としては、化粧性を有するものであれば特に限定されず、各種のものを使用することができる。具体的には、例えば、アルキッド樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、アクリルシリコン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料等が挙げられる。これら上塗材は、弱溶剤形塗料または水性塗料であることが望ましい。
上塗材は1層で仕上げてもよく、2層以上を積層して仕上げることもできる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0040】
(実施例1〜9、比較例1〜7)
下記に示す原料を用い、表1に示す配合にて、常法により混合し、脂肪族炭化水素を含む溶剤を加えて固形分を20重量%に調製し、被覆材1〜16を製造した。
尚、被覆材1〜16の全溶剤中における脂肪族炭化水素の比率は50重量%である。
得られた被覆材1〜16を用い、次の試験1〜4を実施した。
【0041】
各被覆材においては、以下の原料を使用した。
・酸化硬化形樹脂1:スチレン・メチルメタクリレート・イソブチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸・グリシジルメタクリレート共重合体の大豆油脂肪酸変性物(重量平均分子量:58000、酸価:2.5mgKOH/g、固形分:50重量%、溶剤:ミネラルスピリット)
・酸化硬化形樹脂2:スチレン・メチルメタクリレート・イソブチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸・グリシジルメタクリレート共重合体の大豆油脂肪酸変性物(重量平均分子量:60000、酸価:3.8mgKOH/g、固形分:50重量%、溶剤:ミネラルスピリット)
・酸化硬化形樹脂3:スチレン・メチルメタクリレート・イソブチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸・グリシジルメタクリレート共重合体の大豆油脂肪酸変性物(重量平均分子量:55000、酸価:6.4mgKOH/g、固形分:50重量%、溶剤:ミネラルスピリット)
・酸化硬化形樹脂4:スチレン・メチルメタクリレート・イソブチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体の大豆油脂肪酸変性物(重量平均分子量:62000、酸価:0mgKOH/g、固形分:50重量%、溶剤:ミネラルスピリット)
・酸化硬化形樹脂6:スチレン・メチルメタクリレート・イソブチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸・グリシジルメタクリレートの大豆油脂肪酸変性物・アルキド樹脂の共重合体(重量平均分子量:60000、酸価:3.8mgKOH/g、固形分:50重量%、アルキド樹脂固形分1重量%、溶剤:ミネラルスピリット)
・酸化硬化形樹脂7:スチレン・メチルメタクリレート・イソブチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸・グリシジルメタクリレートの大豆油脂肪酸変性物・アルキド樹脂の共重合体(重量平均分子量:60000、酸価:3.8mgKOH/g、固形分:50重量%、アルキド樹脂固形分5重量%、溶剤:ミネラルスピリット)
・金属ドライヤー:ナフテン酸コバルトとナフテン酸ジルコニウムの混合液(ミネラルスピリット溶液、Co分0.3重量%、Zr分3重量%)
・シラン化合物1:γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
・シラン化合物2:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
【0042】
【表1】

【0043】
(試験1)
試験1では、被覆材1〜16の製造後3日間、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で保存した被覆材を用いて、以下の試験を実施した。
【0044】
スレート板に対し、下塗材として上記方法で得られた被覆材1〜16をそれぞれ塗付け量100g/mで刷毛塗りした。標準状態にて3時間養生後、上塗材(アクリル樹脂塗料)を塗付け量200g/mで刷毛塗りし、標準状態にて7日養生した。以上の方法で得られた試験板を50℃温水に24時間浸漬した後、碁盤目テープ法(4×4mm・25マス)により密着性を評価した。評価基準は、破断が認められなかったものを「A」、破断面積が1/25〜5/25であったものを「B」、破断面積が6/25〜10/25であったものを「C」、破断面積が11/25以上であったものを「D」とした。
【0045】
(試験2)
試験2では、被覆材1〜16の製造後3日間、標準状態で保存し、さらに50℃恒温器で14日間保存した後の被覆材を用いた。それ以外は、上記試験1と同様の方法で試験を実施した。なお、比較例7では、保存後に被覆材が不安定化したため、密着性は評価していない。
【0046】
(試験3)
試験3では、スレート板に替えて珪酸カルシウム板を用いた。それ以外は、試験1と同様の方法で試験を実施した。
【0047】
(試験4)
試験4では、スレート板に替えて、アクリル樹脂の旧塗膜を有するスレート板を用いた。それ以外は、試験1と同様の方法で試験を実施した。
【0048】
試験1〜4の結果を表2に示した。実施例1〜9ではいずれの試験においても良好な結果が得られた。その中でも特に実施例1〜5、8、9が優れていた。
【0049】
【表2】

【0050】
(試験5)
さらに試験5として、被覆材3、8、9について、製造後3日間、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で保存した被覆材を用いて、以下の試験を実施した。
【0051】
スレート板に対し、下塗材として上記方法で得られた被覆材3、8、9をそれぞれ塗付け量100g/mで刷毛塗りした。標準状態にて3時間養生後、上塗材(水性アクリル樹脂塗料の40%希釈品)を、塗付け量200g/mで刷毛塗りした際の、仕上がり性を評価した。
評価基準は、均一で平滑な塗膜が形成されたものを「1」、部分的にハジキが認められたものを「3」として、「1」>「2」>「3」の3段階評価とした。
その結果、実施例3(被覆材3)は「3」、実施例8(被覆材8)は「2」、実施例9(被覆材9)は「1」であった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化硬化形樹脂(A)、及び金属ドライヤー(B)、並びに脂肪族炭化水素を含む溶剤を必須成分とする被覆材であって、
前記酸化硬化形樹脂(A)は、酸価が0.5〜20mgKOH/gであり、
さらにエポキシ基含有シラン化合物(C)を、前記酸化硬化形樹脂(A)の固形分100重量部に対し1〜30重量部含むことを特徴とする被覆材。
【請求項2】
基材に対し、下塗材を塗付した後、上塗材を塗付する被膜形成方法であって、
前記下塗材として、請求項1記載の被覆材を使用することを特徴とする被膜形成方法。



【公開番号】特開2013−40331(P2013−40331A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161357(P2012−161357)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】