説明

被覆材料を蒸着する装置及び方法

本発明は、第1には、真空中で基板上に高温超伝導体を蒸着する装置であって、高温超伝導材料の貯留器を収容する再充填装置と、エネルギ伝達媒体のビームにより蒸発ゾーンにおいて上記高温超伝導材料を蒸発させる蒸発装置と、上記高温超伝導材料を再充填装置から蒸発ゾーンに、該蒸発ゾーンに供給された高温超伝導材料が実質的に残留無しで蒸発されるように、連続的に供給する供給装置とを有するような装置に関するものである。本発明は、更に、真空中で基板上に高温超伝導材料の被覆を蒸着する方法であって、高温超伝導材料の粒体を蒸発ゾーンに連続的に導入するステップと、エネルギ伝達媒体のビームを上記の導入された粒体が上記蒸発ゾーンにおいて実質的に残留無しで蒸発されるように動作させるステップとを有するような方法にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特には高温超伝導体等の複合無機化合物(complex inorganic
compounds)を有する被覆の製造のための、真空環境において被覆材料を蒸発させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば酸化物、窒化物、炭化物又は種々の陽イオンの合金等の複合無機化合物の薄膜は、電子、光学及び機械工学における多くの応用において機能的被覆又は表面硬化として作用する。例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:lead-zirconium-titanate)セラミックス又はBaTiO3は、強誘電センサ素子又は高誘電率を持つデータメモリに使用される。RBa2Cu3O7(Rはイットリウム又は希土類元素である)の薄いエピタキシャル層は、低い温度で超伝導状態になり、例えば通信技術において高選択性無線周波数フィルタ用に使用することができ、又は損失無しで電流を導通させるために可撓性金属テープ上に被着することができる。
【0003】
これらの応用の多くに対する経済的使用のために、大きな面積又は長い長さ(被覆される導体)は可能な最短時間で被覆されねばならない。多くの化合物は、当該膜が高度の結晶完全さのものである場合にのみ、所望の特性を示すので、被覆技術に対する要件は非常に要求度が高い。更に、混合された化合物に対しては、正しい化学量的組成が、全被着面積にわたり、且つ、被覆工程の全期間にわたり保証されねばならない。
【0004】
通例は、上記被着はスパッタリング法、レーザ・アブレーション法(PLD)、化学蒸着法(CVD)、分子線エピタキシ法(MBE)又は蒸発法のような真空被覆技術により実行される。非導電性セラミック化合物(ターゲット)から開始する技術(例えば、スパッタリング、PLD)の場合、体積被着速度は通常は非常に低い。CVD又は共蒸発法(co-evaporation)のような技術は、例えばヨーロッパ特許第EP0282839B1号に記載されているように、個別の材料源を使用し、材料の流れは複雑な制御により個別に制御されねばならない。更に、材料成分は単一の点源から生じるのではなく、基板温度又はガス圧のような局部的な物理的被着パラメータに対して敏感に反応するので、大きな面積上での膜組成の偏差は不可避である。
【0005】
理想的な被覆技術は、材料が正しい組成で以って大きな質量流量で発生し、長い距離にわたっても一様に拡散し、且つ、大きな面積上に堆積(被着)するような点源を使用するであろう。この理想は電子ビーム蒸発法により良好な近似で実現され、該方法においては高エネルギ電子ビームがターゲット材料を極度に加熱及び蒸発させる。このような理由により、この方法は、例えば反射器及びラッピング箔用のアルミニウムのような単純な化合物若しくは元素、又は光学面被覆用の単純な酸化物のための多くの技術的被覆処理に使用される。しかしながら、個々の成分の蒸気圧が大幅に相違する材料の混合物、又は電子ビーム照射により化学的に破壊される(亀裂する)又は分解(fractionate)するような化合物を蒸発させるのは面倒である。
【0006】
特開平1−264114号は高温超伝導膜を被着させる斯様な方法を記載している。しかしながら、これにより達成される結果は劣ったものである。斯様な混合物又は化合物が単一のルツボから蒸発されるなら、これらは分解し、連続して変化する局部的温度条件により、蒸発する材料の組成が時間と共に変化してしまう。この問題は、電子ビームの幾つかの個別のルツボへの高速の偏向、及び対応する滞留時間により対処することができる。しかしながら、これは、複数の局部的に分離された源の欠点、即ち大きな面積にわたる組成の勾配を許容することを意味する。
【0007】
このような理由で、特開昭61−195968号は合金膜を製造する他の方法を記載しており、該方法においては、合金化成分が、回転する蒸発源における可変サイズの扇形ポケットに充填される。このようにして、連続的電子ビームの下での高速回転により時間的平均で所望の組成を1つのスポットから蒸発させることができる。しかしながら、この構成の問題点は、ルツボの容量が限られると共に、連続的な再充填が回転により不可能である点にある。従って、該方法は大量の材料を必要とするような連続した長時間被覆処理には適していない。異なる材料の選択的蒸発を可能にする特開2002−097566号に記載されているような回転する電子ビーム蒸発器源を備える同様の装置、又は電子ビームの“食い込み”を防止すると共に蒸発材料の変化しない新鮮な表面を保証するような特開平02−294479号に開示された装置に対しても、同様のことが当てはまる。
【0008】
連続的製造に対しては、材料の供給が重大な役割を果たす。静止型蒸発器ルツボに関しては、このような再充填装置は特開昭61−003880号から既知である。静止型ルツボからの蒸発又は運動するルツボからの徐々の蒸発でさえ、例えば酸化物高温超伝導体等の複合化合物の分解に、そして被覆の化学的組成の問題につながる。その理由は、蒸発器ルツボ内では、局部的な温度的及び化学的条件が常に変化しているので平衡状態に到達しないからである。
【0009】
可能性のある解決策は、個々の材料粒体の、所謂“フラッシュ蒸発”である。これによれば、蒸発材料の少量(粒体)が順次に且つ定量的に、即ち実質的に残留なしで、蒸発される。これによれば、幾つかの粒体にわたる時間的平均での蒸気は、当該蒸発材料と同一の組成を示すようにされる。一般的に言って、材料の一部の殆ど瞬時の蒸発は、定量的蒸発にとり、電子ビームによる蒸発と連続的材料供給との間での蒸発ゾーン内での平衡の確立と較べると余り重要ではない。
【0010】
この種の蒸発の最初の試みは、APPl. Phys. 66,
(1989)4903にDavis他により記載されている。該文献の著者は、酸化物超伝導体膜を、各蒸発材料の粉体の細い線(トレース)を電子ビームにより前から後に蒸発させることにより製造しようと試みた。熱い最前部では、個々の粉体粒子は秒の僅かの部分内で連続的に蒸発しなければならない。しかしながら、これらの実験の結果は満足のゆくものではなかった。初期の粉体材料は大きな内部表面を呈し、部分的に吸湿性なので、斯かる粒体は多くの水分を吸収する。強い加熱に際し、水分は瞬間的に蒸発し、粉体粒子の爆発につながり、これは斯かる粉体粒子を気相に転換させる代わりに、蒸発ゾーン外へ放り出すことになる。このような理由で、2段階処理が使用された。最初のステップにおいては、電子ビームを低いパワーレベルで供給し、粉体はガス抜きされ、小さな滴体に融解された。第2ステップにおいては、これら滴体をフラッシュ蒸発により気相に転換するよう試みられた。
【0011】
Davis他は、高温超伝導体を製造するために、高真空中で材料を上述した方法で先ず蒸発させ、次いで、低減された酸素圧において蒸発室内で加熱装置を使用して(”in
situ”)又は大気圧において酸素を有する炉を用いて(“ex situ”)、酸素雰囲気内で被着されたアモルファス材料を再結晶化させることにより、前記フラッシュ蒸発を他の処理ステップとの組合せで使用した。
【0012】
フラッシュ蒸発のためのDavis他の上述した処理手順故に、この方法は大量の材料に対しては又は連続的処理のためには適していないことが即座に明らかとなる。加えて、蒸発ゾーンがトレースに沿って連続的にずれる。更に、約0.1gの質量の滴体は、瞬時に気相に転換されるには既に大き過ぎることが分かった。この場合はYBa2Cu3O7である単一の滴体を蒸発させることにより形成された層の組成の濃度の深さプロファイルは、膜表面に向かって強いBa富化を伴う明確な分解(fractioning)を示す。このような理由で、斯かる膜は熱的に焼き生されねばならず、その後でさえも劣った品質を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の基となる課題は、基板上に被覆材料を被着させる装置及び方法であって、一方においては高い速度で経済的に動作させることができ、他方においては結果として高品質の膜が得られ、かくして、従来技術の前記欠点を克服するような装置及び方法を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様によれば、本発明は真空中で基板上に高温超伝導体を被着させる装置であって、高温超伝導体材料の貯えを格納する再充填装置と、蒸発ゾーン内で前記高温超伝導体材料をエネルギ伝達媒体ビームにより蒸発させる蒸発装置と、前記高温超伝導体材料を前記再充填装置から前記蒸発ゾーンへ、該蒸発ゾーンに供給された前記高温超伝導体材料が実質的に残留無しで蒸発されるように、連続的に移送するコンベヤとを有するような装置に関するものである。
【0015】
本発明による上記装置によれば、上記エネルギ伝達媒体による材料の連続的蒸発と上記コンベヤによる連続的な材料の供給との間に上記蒸発ゾーン内で平衡が達成される。一定速度(上記材料の供給により調整可能)における実質的に残留無しの上記蒸発は、実質的に平衡状態において且つ実質的に静止的な点源から発生するので、複雑な速度制御は必要ではなく、被着された膜の組成も既知の被着技術によるよりも全体の被着面積にわたり一層均一になる。更に、本発明による装置においては、基板は蒸発ゾーンの極めて近くに配置することができると共に、蒸発材料の歩留まりを向上させるために空間内の大きな角度をカバーすることができる。これは、組成の偏差を制限するために或る最小距離を維持しなければならないような幾つかの源を用いる構成(共蒸発、MBE)を超える利点となる。
【0016】
好ましくは、当該蒸発装置のビームは、コンベヤにより蒸発ゾーンに移送される高温超伝導体材料が好ましくは最初に予備加熱され、次いで蒸発されるように、当該蒸発ゾーンにわたって少なくとも1方向に走査されるようにする。
【0017】
第1の好ましい実施例においては、当該蒸発装置は、好ましくは変調することが可能な電子ビーム蒸発器を有する。しかしながら、他の高エネルギ粒子ビーム(例えば、イオンビーム衝撃)を発生する装置又はレーザの使用も可能である。現時点では、比較的安価であり、容易に変調することができるので、電子ビームが好ましい。
【0018】
好ましくは、上記高温超伝導体材料は線の形態で蒸発ゾーンに供給され、線幅は3mmと30mmとの間とする。該高温超伝導体材料は、好ましくは、0.05〜0.5mm(好ましくは0.1〜0.5mm、最も好ましくは0.1〜0.2mm)の粒径の粒体として蒸発ゾーンに供給される。
【0019】
粒状の塊物体は特に際充填するのが容易である。所与のパラメータは、当該高温超伝導体材料の個々の粒体の熱容量が、充分に高速に蒸発され得るように過度に大きくならないことを保証する。粒体が個々に“フラッシュ蒸発”されず、幾らか長い距離xに沿って(即ち、より長い期間にわたって)蒸発されるような場合でさえ、同様の議論が成り立つ。何れの場合においても、個々の粒体内の材料が完全に分解し得るので、充分な統計のためには微細な粒状さが重要である。
【0020】
前記コンベヤは、好ましくは、回転ターンテーブル、及び/又は回転シリンダ、及び/又は振動コンベヤ、及び/又はコンベヤベルト、及び/又はスクリューコンベヤ若しくはスライドを有する。例示のためのみに列挙した斯かる実施例は、高い回転及び搬送速度を可能にし、当該蒸発器の各パワー調整との結果、連続動作モードで非常に高い被着速度が得られる。前記再充填装置は、好ましくは、漏斗により実現される。
【0021】
上記コンベヤは、好ましくは、電子ビームによる破壊を防止するために冷却される。しかしながら、上記再充填装置は好ましくは加熱され、好ましくは別個のポンプ装置を含むようにする。特に好ましい実施例においては、該再充填装置は、下部を加熱することが可能な漏斗により実現され、上記別個のポンプ装置は該漏斗の下部に突入する吸入パイプとする。好ましい粒状高温超伝導体材料は、特に吸湿性材料である場合、水分を吸収する可能性があり、これは電子衝撃下では粒体の爆発に、従って蒸発ゾーンからの材料の喪失につながる。当該装置の解説される好ましい特徴は、これを防止し、チャンバの真空が影響を受けないことも保証する。他の例として、前記粒体は前処理されると共に熱的にガス抜きされ、封止カードリッジ内で上記コンベヤに取り付けられる。
【0022】
他の好ましい実施例によれば、前記高温超伝導体材料は異なる化合物の混合物を有し、当該膜の組成の統計的変動を防止するために、蒸発の間に時間平均で高温超伝導体材料の所望の組成が被着される。さらに、これによれば、蒸発されるべき高温超伝導体材料の平均的組成を、例えば基板に対する異なる粘着係数の化学量に対する影響を補償するために、柔軟性を以って変更することができる。真空部の内側又は外側に混合装置を配置することができるか、又は材料が異なる成分から事前混合されるようにする。
【0023】
更に、当該装置は好ましくは、文献DE19680845C1に記載されているように、基板の近くでのガス供給を可能にする手段を含む。これによれば、蒸発の間において蒸発材料の気体成分の損失を補償することができる。
【0024】
他の態様によれば、本発明は真空中で基板上へ高温超伝導体被覆を蒸発させる方法であって、粒状の高温超伝導体材料を真空ゾーンに連続的に供給するステップと、エネルギ伝達媒体のビームを上記供給された粒体が上記蒸発ゾーンにおいて実質的に残留なしで蒸発されるように動作させるステップとを有するような方法に関するものである。
【0025】
好ましくは、上記粒体は上記蒸発ゾーンに線の形状で供給され、前記エネルギ伝達媒体のビームは該線の一端上で案内され、かくして、該線が自身の実質的に全幅にわたり且つ搬送運動の方向において小さな区域にわたって走査されるようにする。
【0026】
本発明による装置及び方法の更なる発展例は、他の従属請求項の主題である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
本発明による装置の好ましい実施例においては、図1に図示されるように、微細粒状材料13の数ミリメートルないし数センチメートル幅のトレース(跡)4が、良好な熱伝導性の材料(好ましくは銅)からなる冷却ターンテーブル3の形態で実現されたコンベヤ上に配置され、電子ビーム蒸発器1に供給される。この目的のために、材料13は大きな貯留器から連続的に動作する再充填装置5により良好に測定された投与量でコンベヤ3上に線(即ちトレース)4として供給され、該トレースは数ミリメートルないし数センチメートル幅である。
【0029】
コンベヤ3は上記トレース4を再充填装置5から取り出し、該トレースを電子ビーム2の高温蒸発ゾーンへと供給する。これにより、トレース4は次いで連続的に且つ実質的に残留(residues)なしに蒸発される。従って、ビーム2は線幅にわたって走査することができるか、又は十分に幅広とする。蒸発速度は、コンベヤ3の回転(即ち、搬送速度)及び線4の断面により制御することができる。特に、非常に高い蒸発速度を、高い搬送速度及び電子ビーム2のパワーにより長期間動作において実現することができる。
【0030】
定量的蒸発、即ち実質的に残留物を残さない蒸発は、数ミリメータ長の空間的に非常に狭い蒸発ゾーン内で、電子ビーム2による材料の連続的蒸発と材料の供給との間に平衡が確立された場合に達成することができる。従って、図6aに図示したように、電子ビーム2は、入ってくる材料トレース4の先端を完全にカバーする領域(破線)にわたって走査することができ、該電子ビームの強度は変調することができる。近年の電子ビーム蒸発器は、これらのオプションを提供している。
【0031】
第1実施例によれば、電子ビーム2のパワーは、新たに入ってくる材料が最初に低いパワーで予備加熱され、高温蒸発ゾーンに進むと先ず融解され、次いで略完全に蒸発されるように(例えば、図6b参照)、変調される。当該蒸発ゾーンの他端においては、電子ビーム2のパワーPは、搬送装置3上に実質的に何の残留物も残されないようなものでなければならない。
【0032】
図6cは、材料のトレース4の厚さD(x)、即ちトレース4の平均的材料の量、の空間的変化を示している。この構成において、蒸発材料の種々の成分が当該高温蒸発ゾーンの異なる区域から発生するとしても、連続した動作に際しての短い初期フェーズの後に平衡が確立されるので、平均して当該蒸発材料により与えられる組成が常に蒸発される。電子ビーム2によりカバーされる領域は、入ってくる材料トレース4のx方向に数ミリメートルしか延在しないから、点源の理想的概念が良好な近似で実現される。
【0033】
高蒸発速度を達成するためには、材料トレース4を数センチメートルまでの幅(y方向)で非常に薄く供給するのが有利であることが分かった。これは、材料4が上記高温蒸発ゾーンの入口領域において融解する際の過度に大きな滴体の形成を防止するので、統計的な変動が小さく維持される。
【0034】
本発明の実施例による装置及び方法により、YBa2Cu3O7(YBCO),
DyBa2Cu3O7(DyBCO),及びNdBa2Cu3O7(NdBCO)の酸化物高温超伝導体膜が製造された。しかしながら、当該装置及び方法は、導入部で例示した他の被覆を製造するためにも使用することができる。一般的に、高温超伝導体として好ましくはRBa2Cu3O7(R=イットリウム、又は原子番号57〜71の元素、又はこれら元素の混合物)が可能である。僅かに銅が超過した0.1mmなる粒径の粒状材料が、漏斗5により、銅のターンテーブル上に3〜30mm幅で0.1〜1mm厚のトレース4の形で供給され、連続した回転により上記漏斗5の底部から引き出され、電子ビーム2に供給された。酸素は、約680℃の高温基板7において直接供給されたが、該基板は厚さ変動を防止するために移動させることができ、かくして、エピタキシャル超伝導体膜が0.4nm/sの被着速度で被着された。しかしながら、ターンテーブル3の回転速度及び電子ビーム蒸発器2のパワーを調整することにより、2nm/sを超える蒸発速度を問題なく実現することができる。MgO単結晶上に製造される超伝導体膜は、87Kの転移温度及び2MA/cm2を超える臨界電流密度を示し、これは応用に対する優れた品質として評価される。
【0035】
蒸発されるべき上記粒体は、好ましくは、50μmと500μmとの間の粒径を有する。粒体が、これより小さい又は大きいと、特に高い蒸発速度において、粒体が電子ビーム2により飛散され、従って適切に蒸発されない可能性がある。これらの噴出は材料の損失及び化学量からの逸脱を生じ得る。しかしながら、これが実際に起きるかは、全体のシステムの構成に依存する。
【0036】
化学量は、特に高温超伝導体にとっては臨界的である。好ましくは、特に良好な超伝導特性を再現するために、化学量は1〜2%の精度内に維持されねばならない。これは、例えばガラス又は合金の製造のために必要とされるものよりは大幅に厳しい要件である。電子ビーム2の走査のための繰り返し周波数は、好ましくは、可能な限り高くすべきであるが、高い蒸発速度での噴出による蒸発材料4の飛散を最少化するために、好ましくは少なくとも50Hzとする。
【0037】
工程を制御するために、当該高温超伝導体の蒸発速度の連続的な測定が好ましい。長期間の被着工程のためには、クォーツレートモニタは劣ってしか適用可能ではない。何故なら、これらモニタは急速に飽和されてしまうからである。代わりに、速度は、好ましくは原子吸収分光法(AAS)(図示略)により測定することができる。しかしながら、そのためには、蒸発する材料4の少なくとも1つの成分は、酸化物のように分子の形で存在してはならず、元素のように原子の形で存在しなければならない。
【0038】
高温超伝導体を電子蒸発させると、Cu成分が常に原子の形で存在することが分かった。従って、超伝導体の総蒸発速度をCu線のAASを用いて決定するのが有利である。しかしながら、狙った高蒸発速度及び大面積被着のための蒸気ビームの大きな直径においては、吸収線が飽和するという問題が生じ得る。これは、吸収が好ましくは光ビームの複数の良好に規定された区域内でのみ発生するように、好ましくは、当該蒸気を測定の位置において部分的に遮蔽することにより解決することができる。上記区域の位置は、好ましくは、Cu吸収線の各ドプラーシフトが一緒に当該光ビームの全スペクトル幅をカバーするように選択することができる。斯かる区域の長さは、好ましくは、所望の蒸発速度における吸収が約30%となるように選択される。
【0039】
好ましくは、実際の高温超伝導体層と組み合わせて、異なる酸化物材料の他の補助層もベース層又はキャップ層として被着される。これら層は、拡散障壁として、テクスチャを確立するために、シード層として、又は環境への影響に対する保護等として作用する。技術的及び経済的理由で、これらは基板7上に、実際の超伝導体層をそのままの位置にして、即ち真空を壊さないで、順次被着するのが好ましい。このような理由により、幾つかの貯蔵コンテナ5(各々は底部出口で閉じることができる)をコンベヤ3上に隣接して配置することにより、同一の装置を用いて異なる材料を順に蒸発させることができるのが有利である。
【0040】
或る材料を蒸発させるために、上記貯蔵コンテナ5のうちの1つが開放され、電子ビーム2の走査領域が、対応する材料トレース4に調整される。貯蔵コンテナ5の出口の閉塞は、例えば当該貯蔵コンテナ5の内部に配置される栓(プラグ;図示略)により実現することができる。微細な粒状材料に対しては、上記プラグは当該出口を塞ぐだけでよく、該出口を緊密に封止する必要はない。かくして、該プラグは単純な機構で上昇(出口開放)させ又は下降(出口閉塞)させることができる。下降させる場合、新たな材料の蒸発が開始される前に、好ましくは上記プラグの下の残留材料はコンベヤ3を動作させることにより上記出口から除去されねばならない。スペースが限られる場合、種々の貯蔵コンテナをコンベヤ3上に永久的に配置するのではなく、一部の数の貯蔵コンテナのみ(好ましくは1個の貯蔵コンテナ5のみ)をコンベヤ3上に位置させる機構を使用することが有利であろう。斯かる機構は、例えば、回転倉(リボルバ)、マガジン又は各コンテナに対する単一下降装置(図示略)とすることができる。
【0041】
本発明による装置及び方法の変形例の更なる記載のために、現在特に好まれる実施例1〜10を以下に更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
粒状蒸発材料13は、台形の漏斗5により、電子ビーム蒸発器1の回転する水冷された銅製ターンテーブル3上に導かれる。ターンテーブル3の回転により、材料4の細いトレース4が漏斗5の底部で取り出され、反対側の電子ビーム2に供給される。電子ビーム2のパワー及び焦点は、高温蒸発ゾーンに入ると、当該蒸発材料の到達する粒体が急速に且つ実質的に残留なしで蒸発する(即ち、定量的に蒸発する)ように調整される。蒸気は高真空チャンバ6内で妨害されずに拡散し、必要ならば加熱することが可能な(図3の基板ヒータ8参照)基板7上に凝縮する。必要ならば、反応性気体をチャンバ6内に導入するか又は適切な装置9、10により基板7に直接供給することもできる。
【0043】
前述したDavis他の従来技術とは対照的に、当該フラッシュ蒸発法は高温超伝導体を製造するために1ステップ技術として使用されている。従って、酸化及び結晶形成に必要な酸素は、材料の被着の間に図3による装置9、10を使用し、且つ、ヒータ8により基板温度を上昇させることにより直接供給される。
【0044】
更に、高温超伝導体の該フラッシュ蒸発法は、例えば図3及び4における基板7を垂直軸(図示略)の周りに回転させることにより、移動する基板7との組み合わせで使用することもできる。これは、高温超伝導体にとり特に臨界的な、大面積上の一層均一な化学量が得られるという利点を有する。それ以上に、基板の運動は、蒸発工程を中断しないで蒸発ゾーンを経て連続的に移送されるような、多数の基板(例えば、一連の製造におけるウェハ被着)、又は非常に大きな基板(例えば、故障電流リミタ用の基板プレート)、又は非常に長いテープ(“被覆導体(coated conductors)”)に被着する場合に有利である。
【実施例2】
【0045】
構成は、実施例1に記載したものに対応する。しかしながら、粒体13は閉じた貯蔵コンテナ5から発し、該コンテナは加熱エレメント11により加熱することができると共に、解放された残留ガスを除去するためにポンプネックを介してポンプ抜きすることができる。このような構成によれば、5nm/sの蒸発速度を達成することができる。このために、100〜200μmの好ましい粒径が使用され、好ましい走査繰り返し周波数は90Hzであった。20cmx20cmの面積上の化学量論的偏差は1%に過ぎなかった。
【実施例3】
【0046】
構成は、実施例1に記載したものに対応する。しかしながら、粒体13は底部出口部のみがヒータエレメント11により加熱されるような漏斗5を介して供給される。これにより解放される水蒸気は、発生源において吸引パイプ12(好ましくは入口の前に篩(図示略)を備える)により直接ポンプ除去される。
【実施例4】
【0047】
粒状蒸発材料13は、コンベヤベルト、スクリューコンベヤ又はスライド(図示略)のような同様のコンベヤにより、電子ビーム蒸発器の回転する水冷された銅製ターンテーブル3上に導かれる。ターンテーブル3の回転により、材料4の細いトレース4が反対側の電子ビーム2に供給される。電子ビーム2のパワー及び焦点は、高温蒸発ゾーンに入ると、当該蒸発材料13の到達する粒体が急速に且つ実質的に残留なしで蒸発する(即ち、定量的に蒸発する)ように調整される。蒸気は高真空チャンバ6内で妨害されずに拡散し、必要ならば基板ヒータ8により加熱することが可能な基板7上に凝縮する。必要ならば、反応性気体をチャンバ6内に導入するか又は適切な装置9、10により基板7に直接供給することもできる。
【実施例5】
【0048】
粒状蒸発材料13は、例えば台形漏斗5等の再充填装置により、回転する水冷されたドラム(図示略)上に供給され、電子ビーム蒸発器の電子ビーム2に細い線として送られる。電子ビーム2のパワー及び焦点は、高温蒸発ゾーンに入ると、当該蒸発材料の到達する粒体が急速に且つ実質的に残留なしで蒸発する(即ち、定量的に蒸発する)ように調整される。蒸気は高真空チャンバ6内で妨害されずに拡散し、必要ならば基板ヒータ8により加熱することが可能な基板7上で凝縮する。必要ならば、反応性気体を当該チャンバ内に導入するか又は適切な装置9、10により基板7に直接供給することもできる。
【実施例6】
【0049】
粒状蒸発材料13は、例えば台形漏斗5等の再充填装置により、水冷された振動コンベヤ上に供給され、電子ビーム蒸発器1の電子ビーム2に細い線として送られる。該電子ビーム2のパワー及び焦点は、高温蒸発ゾーンに入ると、当該蒸発材料の到達する粒体が急速に且つ実質的に残留なしで蒸発する(即ち、定量的に蒸発する)ように調整される。蒸気は高真空チャンバ6内で妨害されずに拡散し、必要ならば基板ヒータ8により加熱することが可能な基板7上で凝縮する。必要ならば、反応性気体をチャンバ6内に導入するか又は適切な装置9、10により基板7に直接供給することもできる。
【実施例7】
【0050】
粒状蒸発材料13は、例えば台形漏斗5等の再充填装置により、冷却されるコンベヤベルト上に供給され、電子ビーム蒸発器の電子ビーム2に細い線として送られる。該電子ビームのパワー及び焦点は、高温蒸発ゾーンに入ると、当該蒸発材料の到達する粒体が急速に且つ実質的に残留なしで蒸発する(即ち、定量的に蒸発する)ように調整される。蒸気は高真空チャンバ6内で妨害されずに拡散し、必要ならば基板ヒータ8により加熱することが可能な基板7上で凝縮する。必要ならば、反応性気体をチャンバ6内に導入するか又は適切な装置9、10により基板7に直接供給することもできる。
【実施例8】
【0051】
材料の供給及び移送は、上記実施例1〜7の1つに対応する。材料トレース4は、数センチメートルの幅を有することができる。電子ビーム2は、到達する材料トレース4の幅を完全にカバーするような領域、例えば図6aに示すような領域、にわたり走査される。これによれば、電子ビーム2のパワーPは、位置が進むにつれて到来する材料が先ず予備加熱され、融解され、次いで完全に蒸発されるように、変調される。適切なパワーのプロファイルは、例えば図6bに示されるようなものである。該プロファイルの形状(例えば、線形、指数関数的、正弦状等)は、適宜選択することができる。このような状況において、ピークパワーが充分に高く設定され、かくして全ての材料が実質的に残留なしで蒸発することが主に重要である。この場合、例えば図6cに示されるような厚さのプロファイルが確立され得る。
【実施例9】
【0052】
他の実施例によれば、図7aに示されるように、電子ビーム2に対して実質的に2つのパワーレベルを持つ好ましくは2段階のプロファイルが使用される。これによれば、パワーレベルPは好ましくは、材料は焼き鈍しされるが、温度は当該高温超伝導体の成分、特にCuを蒸発させるには不充分であるように選択される。パワーレベルPは、好ましくは、当該高温超伝導体が定量的に蒸発されるように選択される。上記2つのゾーンの間の遷移幅Δxは、好ましくは、可能な限り狭くして、当該材料が瞬時に定量的に蒸発するようにする。かくして、図7bに従う厚さプロファイルD(x)の直線的な斜面(slope)が確立される。
【0053】
上記2つのパワーゾーンの間の遷移幅Δxが充分に狭くない場合、上記斜面の上縁(即ち、上記2つのパワーゾーンの間の境界)が丸められ、当該粒体の特に銅成分が誤った指向性パターンで蒸発する危険性がある。狭い遷移を達成するために、当該電子ビームは好ましくは、走査の間において上記斜面の上縁に位置する際に可能な最小の幅に到達するように収束されねばならない。これが、図7cに概念的に図示されている。
【0054】
図7bにおける斜面の傾き角αは、蒸発材料の搬送速度V及び材料トレースの蒸発速度dD/dtによりtanα=(dD/dt)/VFにより決定される。これによれば、角度αは全ての蒸発速度に対して搬送速度により調整することができる。
【0055】
当該蒸発材料は好ましくは上記斜面から蒸発するので、蒸発する該材料の指向性パターンは当該搬送装置の法線に対して角度αだけ傾斜される(図7b参照)。殆どの場合において、斯かる傾斜は被着にとり不利となる。従って、αは好ましくは20度より大きくてはいけない。一方、角度αが平らになり過ぎると、当該材料トレースの所与の初期厚さDにおいて、蒸発ゾーンの長さLがL=D0/tanαに従い増加してしまう。好ましくは、材料が充分に点状に蒸発すると共に、基板上に化学量の目立った勾配が結果として生じないように、Lは10mmより長くてはならない。従って、典型的な厚さD=1mmにおいて、αは好ましくは6度より小さくてはならない。
【0056】
角度αにおける当該蒸発材料の指向性パターンの傾きは、当該コンベヤのトレース4を含む全コンベヤ3を反対方向に実質的に同じ角度だけ傾けることにより補償することができる。これが図8aに概念的に示されている。しかしながら、該傾き角度が大きすぎると、当該蒸発材料の移送は、搬送装置3上のトレース4が滑り始めて妨害され得る。この問題は、基板7を対応して傾けることにより上記角度αを補償するような他のオプションにより防止される。これが、図8bに概念的に示されている。
【実施例10】
【0057】
角度αでの上記傾きにも拘わらず当該蒸発材料の対称な指向性パターンを得るために、他の実施例によれば、2以上の蒸発装置を使用することもできる。例えば、2つの蒸発装置が好ましくは隣接して配置され、蒸発ゾーンが互いに向き合うようにすることができる。これが図9に示されている。この場合、両装置の蒸発速度は好ましくは一致すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明による装置の好ましい実施例の上から見た概念図である。
【図2】図2は、再充填装置として漏斗を備える本発明による装置の好ましい実施例の概略断面図である。
【図3】図3は、電子ビーム蒸発器、材料再充填器及び基板ホルダを備える本発明による装置の好ましい実施例の概略断面図である。
【図4】図4は、電子ビーム蒸発器、基板ホルダ、及び加熱及びポンプ抜きすることが可能な材料蓄積コンテナを備える本発明による装置の好ましい実施例の概略断面図である。
【図5】図5は、吸入パイプを備える加熱可能な再充填漏斗の詳細図である。
【図6a】図6aは、材料トレースの端部における当該装置の蒸発ゾーン(破線)を示し、移送方向は矢印により示されている。
【図6b】図6bは、第1実施例による、移送方向xに沿った電子ビームのパワーのプロファイルを示す。
【図6c】図6cは、蒸発ゾーンへの入口における材料トレースの平均的厚さの各量Dを示す。
【図7a】図7aは、他の好ましい実施例による、移送方向における電子ビームのパワーのプロファイルを示す。
【図7b】図7bは、図7aのパワープロファイルが採用された場合の、蒸発ゾーンにおける蒸発材料の厚さのプロファイルD(x)を示す。
【図7c】図7cは、図7aのパワープロファイルのための電子ビームの好ましい収束を示す。
【図8a】図8aは、蒸発する材料の傾いた指向性プロファイルの補償のためのコンベヤの傾きの概念図である。
【図8b】図8bは、蒸発する材料の傾いた指向性プロファイルの補償のための基板の傾きの概念図である。
【図9】図9は、蒸発する材料の対称な指向性パターンのための2つの蒸発装置の組み合わせを示す。
【符号の説明】
【0059】
1 電子銃
2 電子ビーム
3 ターンテーブル(回転する)
4 材料トレース(線)
5 再充填装置(漏斗、貯蔵コンテナ)
6 真空チャンバ
7 基板
8 基板ヒータ
9 反応性ガスの供給
10 ガス入口
11 加熱エレメント
12 吸入パイプ
13 粒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空(6)中において基板(7)上へ高温超伝導体(13)を連続的に蒸発させる装置であって、
a.高温超伝導体材料(13)の貯えを持つ再充填装置(5)と、
b.前記超伝導体材料(13)を蒸発ゾーンにおいてエネルギ伝達媒体のビーム(2)により蒸発させる蒸発装置(1)と、
c.前記高温超伝導体材料(13)を前記再充填装置(5)から前記蒸発ゾーンへ移送するコンベヤ(3)とを有し、これにより、
d.前記蒸発ゾーンに供給された前記高温超伝導体材料(13)が実質的に残留なしで蒸発されるようにする装置において、
e.前記コンベヤは前記高温超伝導体材料(13)を前記蒸発ゾーンに0.05〜0.5mmの粒径を持つ粒体(13)として移送することを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記蒸発装置(1)の前記ビーム(2)を前記蒸発ゾーン上で少なくとも1方向に走査する手段を更に有していることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、前記手段は前記ビーム(2)を50Hzより高い、好ましくは約90Hzの繰り返し周波数で走査することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の装置において、前記コンベヤ(3)により前記蒸発ゾーンに供給された前記高温超伝導体材料(13)を先ず予備加熱し、次いで蒸発させる手段を更に有していることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、前記供給された高温超伝導体材料(13)の厚さプロファイルD(x)の直線的勾配を達成するために、前記蒸発装置が前記ビーム(2)に対して、好ましくは第1パワーレベルと第2パワーレベルとの間に狭い遷移幅(Δx)を持つような少なくとも2つのパワーレベル(P,P)を有することを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、前記コンベヤ(3)の搬送速度を斜面の角度αが20度より小さくなるように、及び/又は前記蒸発ゾーンの長さが10mmより短くなるように調整することができることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の装置において、前記エネルギ伝達媒体のビーム(2)を、走査の間において該ビームが実質的に斜面の上縁に位置する際に該ビームが最小幅に到達するように収束することができることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の装置において、前記コンベヤ(3)から蒸発する前記材料の傾斜した指向性パターンを補償するために、前記コンベヤ(3)及び/又は前記基板(7)を傾けることができることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の装置において、前記蒸発装置(1)が、好ましくは変調することが可能な電子ビーム蒸発器を有していることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の装置において、前記高温超伝導体材料(13)は前記蒸発ゾーンに、好ましくは3mmと30mmとの間の幅を持つ線の形で搬送されることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の装置において、前記コンベヤは前記高温超伝導体材料(13)を前記蒸発ゾーンに0.1〜0.2mmの粒径を持つ粒体(13)として移送することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の装置において、前記コンベヤ(3)は、冷却することができると共に、回転ターンテーブル及び/又は回転ドラム及び/又は振動コンベヤ及び/又はコンベヤベルト及び/又はスクリューコンベヤ若しくはスライドを有することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか一項に記載の装置において、前記再充填装置は、漏斗(5)として設計され、及び/又は加熱することができることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1ないし13の何れか一項に記載の装置において、前記再充填装置(5)は別個のポンプ装置(12)を有していることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置において、前記再充填装置(5)は底部を加熱することが可能な漏斗(5)として設計され、前記別個のポンプ装置(12)は前記漏斗(5)の底部に突入する吸入パイプ(12)として設計されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか一項に記載の装置において、前記高温超伝導体材料(13)は異なる化合物の混合物であり、蒸発すると時間平均で前記高温超伝導体材料(13)の所望の組成が被着されることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1ないし16の何れか一項に記載の装置において、好ましくは酸素であるガスを前記基板(7)の近傍に供給することを可能にする手段(9,10)を更に有していることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項1ないし17の何れか一項に記載の装置において、前記基板(7)を加熱し(8)及び/又は前記蒸発ゾーンに対して移動させる手段を更に有していることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1ないし18の何れか一項に記載の装置において、蒸発速度を、蒸発する前記高温超伝導体材料の好ましくはCu線の原子吸収分光により測定する手段を更に有することを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置において、吸収線の飽和を防止するために、前記高温超伝導体材料の蒸気を測定光ビームの位置において部分的に遮蔽する手段を更に有することを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項1ないし20の何れか一項に記載の装置において、高温超伝導体膜の補助層のためのソース材料を備える少なくとも1つの他の再充填装置を更に有することを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項21に記載の装置において、少なくとも1つの他の再充填装置及び高温超伝導体材料(13)の貯えを保持する前記再充填装置(5)を前記コンベヤ(3)に順に接続する手段を更に有することを特徴とする装置。
【請求項23】
真空(6)中において基板(7)上へ高温超伝被覆を蒸発させる方法であって、
a.高温超伝導体材料の粒体を蒸発ゾーンに連続的に搬送するステップと、
b.供給された前記粒体(13)が前記蒸発ゾーン内で実質的に残留なしで蒸発されるようにエネルギ伝達媒体のビーム(2)を動作させるステップとを有し、
c.前記高温超伝導体材料(13)が前記蒸発ゾーンに0.05〜0.5mmの粒径を持つ粒体(13)として搬送されることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記粒体(13)が前記蒸発ゾーンに線(4)の形で供給されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、前記エネルギ伝達媒体のビーム(2)がトレース(4)の一端上で、前記トレース(4)が実質的に該トレースの全幅にわたって且つ搬送運動の方向における小さな区域にわたり走査されるように、案内されることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23ないし25の何れか一項に記載の方法において、前記高温超伝導体がRBa2Cu3O7(Rはイットリウム、又は原子番号57〜71の元素、又はこれら元素の混合物である)であることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項23ないし26の何れか一項に記載の方法において、請求項1ないし22の何れか一項に記載の装置を使用することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項23ないし27の何れか一項に記載の方法により製造された高温超伝導体被覆。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−504869(P2006−504869A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548746(P2004−548746)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011428
【国際公開番号】WO2004/041985
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(503377939)テバ ドュンシッヒトテヒニク ゲーエムベーハー (3)
【住所又は居所原語表記】Rote−Kreuz−Str.8, 85737 Ismaning, Germany
【Fターム(参考)】