説明

被覆材組成物および成型品

【課題】外観、表面平滑性及び付着性に優れた金属蒸着用アンダーコート層の形成に好適な被覆材組成物、及び、これを用いた金属化シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品を提供する。
【解決手段】(A)一分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む単量体30〜70質量部、(B)ビニル系単量体の単体または混合物を(共)重合して得られる樹脂30〜70質量部及び(C)酢酸ブチルに溶解する塩素含有量が50質量%以下の塩素化ポリオレフィン0.1〜10質量部(成分(A)及び成分(B)の合計量は100質量部)を含んでなる被覆材組成物、及びこの被覆材組成物を塗布硬化してなるアンダーコート層上に金属を蒸着させた金属化シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属蒸着用アンダーコート層形成用途に適した被覆材組成物に関し、より詳しくは、シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品等の樹脂成型品に、付着性及び表面平滑性に優れた金属蒸着用アンダーコート層を形成するのに好適な被覆材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属化処理を施した樹脂成型品は、金属加工品と比較して生産性、成型性、軽量化等の利点を有し、装飾品、家電製品、化粧品容器等の分野において利用されている。金属加工処理とは、樹脂基材表面上に蒸着用のアンダーコート層(プライマー層)を形成し、その上にイオン化蒸着、スパッタリング等の金属化処理を施す技術である。例えば、化粧品容器においては、成形性等に優れたABS樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂成型品が多用されている。アンダーコート層の形成方法としては、例えば、アクリル系、メラミン系、ウレタン系等の樹脂からなる被覆材組成物を塗布し、熱又は紫外線で硬化させる方法がある。中でも、紫外線を用いる方法は、他の方法に比べて生産性に優れているので実用化されている。
【0003】
一方、化粧品容器の内容物は液状のものも多く、特にマスカラ等の高粘度内容物の場合は、内容物の溶媒が揮発して粘度が上昇し粉状化または固化しないように、容器に高いガスバリヤー性が要求される。このような点から、ガスバリヤー性に優れたシクロオレフィンコポリマー樹脂成型品が化粧品容器に用いられるようになって来た。
【0004】
シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品は、無極性でかつ光学特性や防湿性等が優れている。また従来より、このシクロオレフィンコポリマー樹脂成型品に対するアンダーコート層の付着性を改良する提案がなされている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−233074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンダーコート層を形成する際の被覆材組成物の塗布方法としては、主にスプレー塗装が実施されている。このスプレー塗装では、通常、溶剤で被覆材組成物を希釈してその粘度を調整する。特にオレフィン系樹脂成型品に対して塗装を行なう場合は、付着性付与剤として塩素化ポリオレフィンを含んでいるので、塩素化ポリオレフィンと相溶性の良いトルエン等の芳香族系溶剤が用いられる。
【0006】
しかし、芳香族系溶剤は、樹脂成型品を侵し白化やクラックを発生させて、成型品外観を損なう場合がある。特に、シクロオレフィンコポリマー樹脂等のオレフィン系樹脂は、芳香族系溶剤に侵され易い傾向にある。また、本発明者は芳香族系溶剤以外の溶剤の使用を試みたが、その場合は被覆材組成物が白濁したり、塗膜にブツが発生するという問題が生じた。
【0007】
本発明は以上の課題を解決すべく為されたものである。すなわち、本発明の目的は、外観、表面平滑性及び付着性に優れた金属蒸着用アンダーコート層を形成するのに好適な被覆材組成物、及び、これを用いた金属化シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の塩素化ポリオレフィン樹脂を特定量配合することによって優れた効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
(A)一分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む単量体30〜70質量部、
(B)ビニル系単量体の単体又は混合物を(共)重合して得られる樹脂30〜70質量部、及び、
(C)酢酸ブチルに溶解する塩素含有量が50質量%以下の塩素化ポリオレフィン0.1〜10質量部
(但し、成分(A)及び成分(B)の合計量は100質量部とする)
を含んでなる被覆材組成物である。
【0010】
さらに本発明は、上記の被覆材組成物を塗布硬化してなるアンダーコート層上に金属を蒸着させた金属化シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の被覆材組成物を、シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品等の樹脂成型品の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより、外観、表面平滑性及び付着性に優れた金属蒸着用アンダーコート層を形成できる。
【0012】
本発明の樹脂成型品は、光学特性及び防湿性(ガスバリヤー性)に優れると共に、外観、表面平滑性及び付着性にも優れた金属化樹脂成型品である。この樹脂成型品は、特に化粧品容器等の用途に非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、成分(A)は、一分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む単量体である。特に、多官能単量体を含むことが好ましい。ここで「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルとメタクリロイルの総称である。一分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、活性エネルギー線照射により良好な重合活性を示し、外観や硬度に優れた架橋硬化膜を形成できる。
【0014】
一分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;が挙げられる。
【0015】
一分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブテン−1,4−ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス−(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(メタ)アクリロイルオキシ(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、ビス−(2−メタアクリロイルオキシエチル)フタレート等が挙げられる。さらに、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシジ(メタ)アクリレート;イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートとポリ(n=6〜15)テトラメチレングリコールとのウレタン化反応物に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステルジ(メタ)アクリレート等のポリエステルジ(メタ)アクリレート;が挙げられる。
【0016】
一分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート;トリメチロ−ルエタンとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルプロパンとコハク酸、エチレングリコ−ル及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等のポリエステルポリ(メタ)アクリレート;が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトルヘキサアクリレートが特に好ましい。
【0017】
以上の各化合物は、1種で又は2種以上を併用することができる。
【0018】
成分(A)の配合量は、成分(A)及び成分(B)の合計量100質量部に対して、30〜70質量部、好ましくは40〜60質量部である。これら各範囲の下限値は、硬化性、レベリング性等の点で意義がある。また上限値は、付着性等の点で意義がある。
【0019】
本発明において、成分(B)は、ビニル系単量体の単体又は混合物を(共)重合して得られる樹脂である。この樹脂は、例えば1種のビニル系単量体の単体または2種以上のビニル系単量体の混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下に、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の方法により(共)重合して得ることができる。なお「(共)重合」とは「単独重合」と「共重合」との総称である。
【0020】
ビニル系単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとプロピレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの付加物等の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと有機ラクトン類の付加物等の水酸基含有ビニルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン又はスチレン誘導体;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリロニトリル等の重合性不飽和ニトリル類;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等の不飽和カルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。
【0021】
樹脂(B)としては、特に、
(B−1)下記一般式(I)
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素残基、nは1〜5の整数を示す。)
で表される(メタ)アクリルアミド系単量体、及び、
(B−2)前記一般式(I)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体以外の単量体
を含むビニル系単量体混合物を共重合して得られる樹脂が、付着性等の点で好ましい。
【0024】
一般式(I)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体(B−1)の具体例としては、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(メトキシメチル)メタクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)メタクリルアミド、N−(n−プロピオキシメチル)アクリルアミド、N−(n−プロピオキシメチル)メタクリルアミド、N−(イソプロピオキシメチル)アクリルアミド、N−(イソプロピオキシメチル)メタクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(t−ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(t−ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(ベンジロキシメチル)アクリルアミド、N−(ベンジロキシメチル)メタクリルアミドが挙げられる。中でも、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(n−プロピオキシメチル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミドが好ましい。これら単量体は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0025】
一般式(I)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体(B−1)の割合は、共重合体である成分(B)100質量%中、15〜40質量%が好ましい。この割合が15質量%以上であればより付着性が向上する傾向にあり、また40質量%以下であれば貯蔵安定性が良好となる。
【0026】
一般式(I)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体以外の単量体(B−2)の具体例は、先に挙げたビニル系単量体の具体例と同様である。単量体(B−2)の割合は、共重合体である成分(B)100質量%中、60〜85質量%が好ましい。
【0027】
成分(B)の配合量は、成分(A)及び成分(B)の合計量100質量部に対して、30〜70質量部、好ましくは40〜60質量部である。これら各範囲の下限値は、付着性等の点で意義がある。また、上限値は、硬化膜の耐熱性、表面平滑性等の点で意義がある。
【0028】
本発明において、成分(C)は、酢酸ブチルに溶解する塩素化ポリオレフィンである。この塩素化ポリオレフィン(C)は、いわゆる低塩素化オレフィン樹脂であり、その塩素含有量は50質量%以下、好ましくは20〜30質量%である。このような塩素化ポリオレフィンは、シクロオレフィンコポリマ−樹脂等のオレフィン系樹脂との付着性を向上させる作用を奏する。
【0029】
本発明においては、塩素化ポリオレフィン(C)が酢酸ブチルに溶解することを特徴とする。ここで、酢酸ブチルに溶解するとは、常温(20℃)において、塩素化ポリオレフィン(固形分)が10質量%、好ましくは25質量%、さらに好ましくは30質量%溶解している酢酸ブチル溶液を調製できることを意味する。すなわち、この塩素化ポリオレフィン(C)は、トルエン等の芳香族溶剤以外の溶剤に対しても良好な溶解性を有する付着性付与剤である。このような塩素化ポリオレフィン(C)は、市販品として入手できる。商品名としては、例えばスーパークロンS−2449B(日本製紙株式会社製塩素化ポリオレフィン、塩素含有量28.4質量%、酢酸ブチル70%溶液)が挙げられる。
【0030】
成分(C)の配合量は、成分(A)及び成分(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.3〜8質量部である。これら各範囲の下限値は、付着性等の点で意義がある。また上限値は、硬化性、塗膜の光沢等の点で意義がある。
【0031】
本発明の被覆材組成物に紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化させる為には、光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−エチルアントラキノン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイドが挙げられる。これらは、1種又は2種以上の混合系で使用できる。中でも、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノンが好ましい。光重合開始剤の使用量は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0032】
本発明の被覆材組成物を所望の粘度に調整する為には、有機溶剤で希釈することが好ましい。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系溶剤;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族系溶剤が挙げられる。特に、基材侵しの問題を発生させない観点から、芳香族系溶剤以外の有機溶剤が好ましい。
【0033】
本発明の被覆材組成物には、さらに、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、研磨剤、防錆剤、帯電防止剤等の添加剤を加えてもよい。
【0034】
本発明の被覆材組成物は、基材上に金属蒸着用アンダーコート層(プライマー層)を形成するのに好適な被覆材である。例えば、本発明の被覆材組成物を基材表面に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより塗膜を硬化して、硬化膜からなるアンダーコート層を形成する。アンダーコート層の厚さは、3〜40μmが好ましい。
【0035】
基材としては、シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品が最も好ましい。ただし、それ以外にABS、ポリプロピレン、ポリエチレン等の各種の樹脂成型品にも適用できる。
【0036】
被覆材組成物の塗布方法としては、例えば、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、フローコートが挙げられる。特に、塗布作業性、被膜の平滑性、均一性の点から、スプレーコート、フローコートが好ましい。
【0037】
被覆材組成物に有機溶剤を配合して塗布した場合は、塗膜を硬化させる前に溶剤を揮発除去する。この場合、例えばIRヒーターや温風で加温すればよい。加温条件は、通常、40〜100℃、5〜20分程度である。
【0038】
塗膜を硬化させる為の活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。例えば高圧水銀灯を用いる場合は、照射する紫外線エネルギー量は500〜4000mJ/cm2程度が好ましい。
【0039】
このようにして形成したアンダーコート層の上に、アルミニウム等の金属を公知の蒸着法で蒸着させることにより、金属化樹脂成型品が得られる。
【0040】
更に、金属膜の腐食防止の目的で、熱硬化型トップコート、紫外線硬化型トップコート、またはプラズマ重合膜等で処理しても良い。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳しく説明する。実施例及び比較例における各測定評価は、次の方法で行った。
【0042】
1.硬化膜の外観(ブツ):
硬化膜の外観(ブツ)を、以下の基準で目視評価した。
「〇」:表面にブツ無し。
「△」:表面にややブツ有り。
「×」:表面全面にブツ有り。
【0043】
2.硬化膜の平滑性:
硬化膜の平滑性を、以下の基準で目視評価した。
「◎」:表面が鏡面の様に平滑である。
「〇」:表面が平滑である。
「△」:表面にやや凸凹があり、平滑でない。
「×」:表面にひどく凹凸があり、平滑でない。
【0044】
3.硬化膜の硬化性:
硬化膜の硬化性を、以下の基準で目視評価した。
「〇」:光沢が有る。
「△」:やや光沢が無い。
「×」:光沢が無い。
【0045】
4.硬化膜の付着性:
硬化膜にカッターナイフで1mm間隔で基材まで達するカットを入れ、1mm2の碁盤目を100個作り、その上にセロハンテープを貼りつけ急激にはがし、剥離した碁盤目を数えて、以下の基準で評価した。
「◎」:剥離無し。
「〇」:碁盤目カットの切り溝に沿ってやや欠けるが剥離無し。
「△」:剥離の数が1〜50個。
「×」:剥離の数が51〜100個。
【0046】
5.硬化膜の基材侵し:
硬化膜形成後の基材侵しの程度を、以下の基準で目視評価した。
「〇」:表面に基材侵し無し。
「△」:表面にやや基材侵し有り。
「×」:表面全面に基材侵し有り。
【0047】
<実施例1>
表1に示す各成分(表中の数値は質量部)を混合し、約30分間、全体が均一になるまで攪拌して液状組成物を調製した。この液状組成物を、スプレーからテストピース(シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品)の表面までの距離を15cmに保ちながら、硬化後の膜厚が約15μmになるようにスプレー塗装した。そして、塗膜中の有機溶剤を加熱により揮発させた。次いで、空気中で高圧水銀灯を用い、波長340〜380nmの積算光量が1000mJ/cm2の活性エネルギー線を塗膜に照射して、硬化膜(蒸着用アンダーコート層)を形成した。次いで、真空蒸着法により硬化膜上にアルミニウムを蒸着させて、金属化樹脂成型品を得た。評価結果を表1に示す。
【0048】
<実施例2〜3、比較例1〜6>
表1及び表2に示す配合比の液状組成物を調製して使用したこと以外は、実施例1と同様にして金属化樹脂成型品を作製した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表1及び表2中の略号は、以下の化合物を表わす。
「PETIA」:ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールペンタアクリレート混合体(商品名エベクリルPETIA、ダイセルUCB社製)
「TMPTA」:トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名TMP−3A−3、大阪有機社製)
「BPE−4」:エチレンオキサイド2モル変性ビスフェノールAジアクリレート(商品名A−BPE−4、第一工業製薬社製)
「PA1」:メチルメタクリレート/スチレン/ブチルメタクリレート(質量比30/40/30)からなる共重合体(GPCによる重量平均分子量2.5×104
「PA2」:N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド/メチルメタクリレート/スチレン/イソボルニルメタクリレート(質量比30/20/30/20)からなる共重合体(GPCによる重量平均分子量2.0×104
「CPP1」:塩素化ポリオレフィン樹脂(商品名スーパークロンS−2449B、日本製紙社製、固形分30%)、表中の数値は樹脂分(固形分)の質量部を示す。
「CPP2」:塩素化ポリオレフィン樹脂(商品名スーパークロン822、日本製紙社製、固形分20%、酢酸ブチルに不溶)、表中の数値は樹脂分(固形分)の質量部を示す。
「MIBK」:メチルイソブチルケトン
「BNP」:ベンゾフェノン
「Ir−184」:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(日本チバガイギー社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む単量体30〜70質量部、
(B)ビニル系単量体の単体又は混合物を(共)重合して得られる樹脂30〜70質量部、及び、
(C)酢酸ブチルに溶解する塩素含有量が50質量%以下の塩素化ポリオレフィン0.1〜10質量部
(但し、成分(A)及び成分(B)の合計量は100質量部とする)
を含んでなる被覆材組成物。
【請求項2】
樹脂(B)が、
(B−1)下記一般式(I)
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素残基、nは1〜5の整数を示す。)
で表される(メタ)アクリルアミド系単量体15〜40質量%、及び、
(B−2)前記一般式(I)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体以外の単量体60〜85質量%
を含むビニル系単量体混合物を共重合して得られる樹脂である請求項1記載の被覆材組成物。
【請求項3】
金属蒸着用アンダーコート層形成用である請求項1または2に記載の被覆材組成物。
【請求項4】
請求項3記載のアンダーコート層形成用被覆材組成物を塗布硬化してなるアンダーコート層上に金属を蒸着させた金属化シクロオレフィンコポリマー樹脂成型品。

【公開番号】特開2010−84064(P2010−84064A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256407(P2008−256407)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】