説明

被覆植物ステロール粒子及びその製造方法、ならびにこれを含有する植物ステロール含有錠剤

【課題】錠剤にした際に、打錠障害の発生を抑制できる被覆植物ステロール粒子及びその製造方法、ならびにこれを含有する植物ステロール含有錠剤を提供する。
【解決手段】植物ステロール核粒子の表面が、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆剤によって被覆された被覆植物ステロール粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆植物ステロール粒子及びその製造方法、ならびにこれを含有する植物ステロール錠剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物ステロールはコレステロール値低下作用を有し、その効能が期待されている。このことから、一般的にはバターやマーガリン及びマヨネーズ等の油脂製品に配合されている。配合方法としては、水に分散する形態のものでは、乳化剤と共に高速で撹拌し均質化(乳化)する手法が提案されている(特許文献1:特開2005−269941号公報参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−269941号公報
【特許文献2】特開2004−75541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物ステロールを手軽に摂取する形態として、固形製剤が注目されている。しかしながら、植物ステロールは金属付着性が高く、打錠時に打錠障害(回転盤、杵、臼への付着)が発生するという問題があった。以上のことから、このような打錠障害が改善された植物ステロール含有錠剤が望まれていた。本発明は上記事情に鑑みなされたもので、錠剤にした際に、打錠障害の発生を抑制できる被覆植物ステロール粒子及びその製造方法、ならびにこれを含有する植物ステロール含有錠剤を提供することを目的とする。また、本発明のさらなる課題は、適度な粒度分布を有する被覆植物ステロール粒子、錠剤として適度な硬度を有する錠剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、植物ステロール核粒子の表面を、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆剤によって被覆することにより、疎水性である植物ステロール表面に水溶性高分子化合物を被覆でき、これを配合した錠剤は打錠障害を抑制できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記被覆植物ステロール粒子、植物ステロール含有錠剤及び被覆植物ステロール粒子の製造方法を提供する。
[1].植物ステロール核粒子の表面が、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆剤によって被覆された被覆植物ステロール粒子。
[2].植物ステロール核粒子に、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆液を噴霧し、乾燥してなることを特徴とする[1]記載の被覆植物ステロール粒子。
[3].水溶性高分子化合物がデキストリンであることを特徴とする[1]又は[2]記載の被覆植物ステロール粒子。
[4].植物ステロール核粒子に対する水溶性高分子化合物の割合が1〜100質量%であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の被覆植物ステロール粒子。
[5].[1]〜[4]のいずれかに記載の被覆植物ステロール粒子を含有する植物ステロール含有錠剤。
[6].植物ステロール核粒子に、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆液を噴霧し、乾燥することを特徴とする[1]記載の被覆植物ステロール粒子の製造方法。
[7].噴霧液中の25℃で固体の界面活性剤濃度が1質量%以下であることを特徴とする[6]記載の被覆植物ステロール粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、錠剤にした際に、打錠障害の発生を抑制できる被覆植物ステロール粒子及びその製造方法、ならびにこれを含有する植物ステロール含有錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[被覆植物ステロール粒子]
本発明の被覆植物ステロール粒子は、植物ステロール核粒子の表面が、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆剤によって被覆された被覆植物ステロール粒子であり、その平均粒径は100〜800μmが好ましく、200〜600μmがより好ましく、300〜450μmがさらに好ましい。なお、本発明において平均粒径は、1700μm、1400μm、1180μm、1000μm、850μm、710μm、500μm、355μm、250μm、150μm及び75μmの篩を用い、サンプル量25gで日局「粉体粒度測定法」第2法に基づき試験を行い測定し、各々の篩径範囲内の粉体の質量基準百分率(%)を積算質量基準分布に変換し、篩下分布の中位径(D50)を求めるものである。
【0009】
[植物ステロール核粒子]
植物ステロールは、植物に含まれる種々のステロール及びその混合物の総称であり、コレステロール値低下作用を有する。植物ステロールの由来植物としては、米油、大豆油、菜種油、コーン油等が挙げられ、成分としては、ブラシカステロール、カンぺステロール、スチグマステロール、β−シトステロール等が挙げられ、融点は約140℃である。
【0010】
植物ステロール核粒子の平均粒径は、100〜800μmが好ましく、200〜600μmがより好ましく、300〜450μmがさらに好ましい。平均粒径が100μm未満だと、粒子の凝集が起こる可能性が高くなるおそれがあり、800μmを超えると、賦形剤、矯味剤等の他の成分との混合時に、被覆植物ステロール粒子が偏析しやすく、均一に混合することが困難となるおそれがある。
【0011】
本発明に用いられる植物ステロール核粒子としては、市販のものを用いることができ、100%品として、フィトステロールーF(タマ生化学)、サンステロールNo.100(三栄源エフ・エフ・アイ)、植物ステロール(理研ビタミン)、植物ステロールエステル サンステロールNo.3(三栄源エフ・エフ・アイ)等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、上記は商品名である。
【0012】
[被覆剤]
本発明の植物ステロール核粒子の表面は、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆剤によって被覆されており、疎水性で水に濡れない性質を持つ植物ステロールに対し、水溶性高分子化合物含有溶液と植物ステロールとの界面張力を下げ、植物ステロール核粒子の表面に、水溶性高分子化合物を付着させることができる。上記方法により、簡便な方法で製造コストを抑えると共に、上記目的とする効果を得ることができる。
【0013】
[水溶性高分子化合物]
水溶性高分子化合物で植物ステロール核粒子の表面を被覆することにより、打錠時の打錠障害を抑制することができる。水溶性高分子化合物としては、デキストリン、プルラン、水溶性セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でも、デキストリン、プルラン、水溶性セルロース誘導体が好ましく用いられ、特に粒子単位での被覆が可能で、粒子径がほとんど変化せず、造粒時の凝集を抑制する点から、デキストリンが好ましい。
【0014】
デキストリンとしては、白色デキストリン、分岐デキストリン、クラスターデキストリン、還元デキストリン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明に用いられるデキストリンとしては、市販のものを用いることができ、L−SPD(昭和産業)、赤玉デキストリン(日澱化学)、アミコール(日澱化学)、デキストリン(三栄源エフ・エフ・アイ)、デキストリン(純正化学)、パインデックス(松谷化学工業)等が挙げられる。また、プルランとしては、プルラン(林原)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、メトローズ SE−06(信越化学工業)等が挙げられる。なお、上記は商品名である。
【0015】
水溶性高分子化合物の配合量は、植物ステロール核粒子100質量%に対して1〜100質量%が好ましい。下限は2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上が特に好ましい。上限は70質量%以下がより好ましく、50質量以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。上記量が1質量%未満だと、打錠障害抑制効果が不十分となるおそれがあり、植物ステロール核粒子に対する量が多すぎると、水溶性高分子化合物がデキストリンの場合、硬度低下、食感悪化等の錠剤物性に影響を与えるおそれがあり、プルランやヒドロキシプロピルメチルセルロースの場合、造粒が進行し、粒子径が増大するおそれがあり、コスト面から考えても打錠障害の抑制できる最小限の量に抑えることが望ましい。
【0016】
[25℃で固体の界面活性剤]
25℃で固体とは、25℃下において固体状であるものをいう。なお、融点が25℃以上であれば25℃で固体の界面活性剤といえる。このような界面活性剤を用いることで、打錠時に発生する熱(35℃以上)による打錠障害を抑制することができる。この中でも、25℃下において、粉末状・フレーク状であるものが好ましい。さらに、融点が40℃以上のものが好ましく、45℃以上のものがより好ましく、50℃以上のものがさらに好ましい。融点が40℃未満の場合は、打錠時に発生する熱により融解し、付着等の打錠障害抑制効果が不十分となるおそれがある。なお、上限は特に制限されないが、ハンドリングの点で90℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。なお、本発明における界面活性剤の融点とは、日局「融点測定法」第2法に基づく試験による値をいう。
【0017】
また、界面活性剤のHLBは、7以上が好ましく、9〜18がより好ましく、9〜16がさらに好ましく、9〜12がより好ましく、11〜12が特に好ましい。HLBが7より小さいと、噴霧溶液に溶解・均一分散させることが困難となるおそれがあり、水の表面張力を低下させることができず、水への分散に機械力が必要となる。一方、HLBが高すぎると、植物ステロールに対して付着性が低下するおそれがある。上記の好ましいHLB値は小数点第1位を四捨五入した値である。
【0018】
HLB値とは界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値である。HLBはHydrophile−Lipophile Balanceの頭文字を取ったものである。HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。本発明において、HLBの値は通常用いる下記計算式(グリフィン法)が使用できる。
グリフィン法:HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
下記表1に界面活性剤の物性を示す。なお、下表の値はカタログ値である。
【0019】
【表1】

【0020】
この中でも、水分散性・植物ステロールへの付着性の点から、モノステアリン酸ヘキサグリセリル(MS−5S 阪本薬品工業(株)、HLB;11.6)、モノステアリン酸デカグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1−SV 日光ケミカルズ(株)、HLB;12.0)が好ましい。
【0021】
25℃で固体の界面活性剤の配合量の下限は、植物ステロール核粒子100質量%に対して0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上がさらに好ましく、0.05質量%以上が特に好ましい。配合量の上限は、6質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以下が特に好ましい。配合量が0.001質量%未満だと、目的とする効果が不十分となるおそれがあり、一方、6質量%を超えると、打錠時に界面活性剤による打錠障害が生じるおそれがあり、硬度低下や食感低下の原因にもなり得る。
【0022】
[被覆植物ステロール粒子の製造方法]
本発明の被覆植物ステロール粒子は、例えば、植物ステロール核粒子に、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆液を噴霧し、乾燥することにより製造することができる。乾燥は造粒することにより、造粒と同時に行うことが好ましく、植物ステロール核粒子に、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆液を噴霧し、造粒する方法としては、例えば、マルチプレックス(製品名、(株)パウレック製)、スパイラフロー(製品名、フロイント産業(株)製)、フローコーター(製品名、フロイント産業(株)製)、WSG(製品名、(株)パウレック製)等の撹拌型流動層造粒装置を用いて、植物ステロール核粒子に被覆液を噴霧しながら造粒する流動層造粒が好ましい。
【0023】
流動層造粒の場合、給気温度60〜80℃、好適には65〜75℃で、排気温度35〜55℃、好適には40〜50℃になる風量で、上記条件を維持できるような噴霧速度を設定し噴霧する。噴霧を止めた後、噴霧条件と同条件で乾燥する。
【0024】
被覆液は、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含むもので、被覆液中の水溶性高分子化合物の濃度の下限は1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。上限は30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。被覆液中の水溶性高分子化合物の濃度が低すぎると、乾燥に時間・エネルギーがかかりすぎ、30質量%を超えると、液の粘性が高くなり造粒適正が低下するおそれがある。
【0025】
被覆液中の25℃で固体の界面活性剤の濃度の下限は、0.005質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。上限は1質量%以下が好ましく、0.75質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。上記濃度が0.005質量%未満だと、目的とする効果が不十分となるおそれがあり、一方、1質量%を超えると、打錠時に界面活性剤による打錠障害が生じるおそれがあり、硬度低下や食感低下の原因にもなり得る。
【0026】
被覆液は、水溶性高分子化合物、25℃で固体の界面活性剤及び水以外に、必要に応じてその他の成分、例えば、色素・顔料等を添加することができる。
【0027】
[植物ステロール含有錠剤]
本発明の被覆植物ステロール粒子は単独で、又は他の成分と混合して植物ステロール含有錠剤とすることができる。錠剤中の被覆植物ステロール粒子の配合量は、薬効を奏する有効量の範囲で適宜調整され、植物ステロールの量として、5〜90質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。上限は製剤化の点から、下限は有効性の点から設定される。なお、有効性の点では、例えば1日800mg程度摂取できる量として製剤設計することが好ましい。
【0028】
錠剤に配合される他の成分としては下記が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(1)賦形剤
i)糖アルコール
糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール等が挙げられる。ソルビトールとしては、市販のものを用いることができ、商品名として、NEOSORB P (ロケットジャパン)、ソルビトール(三栄源エフ・エフ・アイ)、D−ソルビトール(協和発酵工業)等が挙げられる。
ii)糖類
糖類としては、乳糖、デンプン等が挙げられる。
iii)無機賦形剤
無機賦型剤としては、ケイ酸又はその塩が挙げられ、具体的には、含水二酸化ケイ素、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
【0029】
(2)高甘味度甘味料
高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア、ソーマチン等が挙げられ、中でもアスパルテームが好ましい。
【0030】
(3)香味料
香味料としては、アニス油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、ならびにメントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料及び調合香料等、錠菓に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。香味料の配合量としては、植物ステロール含有錠剤中0.1〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
(4)その他
植物ステロール以外の薬物、崩壊剤、結合剤、ステアリン酸カルシウム等の滑沢剤等が挙げられる。
【0031】
本発明の植物ステロール含有錠剤は、上記必須成分及び任意成分を混合し、打錠機にて打錠することにより製造できる。なお、このとき、上記各成分は、直接混合してもよく、それぞれ、結合剤等を用いて造粒してから混合してもよい。なお、打錠圧等の成型条件は、打錠機、成分の種類や配合量、錠剤の径等により適宜選定される。
【0032】
本発明の植物ステロール含有錠剤の錠剤硬度は、錠剤を直径方向から加圧し、割れた時の加重(kgf)で表すことができ、直径7mm錠で、1kgf以上が好ましく、3kgf以上がより好ましく、5kgf以上がさらに好ましい。直径13mmで、3kgf以上が好ましく、5kgf以上がより好ましく、7kgf以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが20kgfである。なお、本発明における錠剤硬度とは、ウェイト移動式の錠剤強度試験機、具体的には、錠剤破壊強度測定器TH−203CP(富山産業社製)を用いて10錠測定し、その平均値をいうものとする。
【実施例】
【0033】
以下、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0034】
[調製例1]流動層造粒
精製水を加温し、表1に示した濃度となるよう界面活性剤及び水溶性高分子化合物を入れ、よく撹拌して被覆液を得た。次いで、流動層造粒機マルチプレックスMP−01(パウレック社製)を用い、植物ステロール粒子(D50:250μm)480gを入れ、これに、給気温度75℃、排気温度40〜50℃になる風量で、上記で調製した被覆剤溶液を、15g/minの速度で、所定の被覆率となるよう噴霧し被覆を行った。これを給気75℃で15分間乾燥し、被覆植物ステロール粒子を得た。
【0035】
被覆植物ステロール粒子について、下記方法で平均粒径を求めた。
1700μm、1400μm、1180μm、1000μm、850μm、710μm、500μm、355μm、250μm、150μm及び75μmの篩を用い、サンプル量25gで日局「粉体粒度測定法」第2法に基づき試験を行い測定した。各々の篩径範囲内の粉体の質量基準百分率(%)を積算質量基準分布に変換し、篩下分布の中位径(D50)を求めた。なお、上記で使用した界面活性剤の融点を、日局「融点測定法」第2法に基づき試験を行い測定した。
【0036】
[実施例1〜26、比較例1〜3]
表3〜9に示す組成に従い、得られた被覆植物ステロール粒子(2バッチ分)を850μmの篩でふるい、通過した粉末800g、ソルビトール(Parteck SI150 メルク社)、アスパルテーム(パルスィート 味の素)、微粒二酸化ケイ素(サイロページ#720 富士シリシア製)、粉末香料及びステアリン酸カルシウムを、V型混合機V−5(徳寿製作所)を用い混合し混合物を得た。これをクリーンプレス(菊水製作所)で、下記打錠条件1)で打錠(打錠圧0.8t)し、質量150mg、直径7.5mmの円形錠を得た。打錠条件を下記に示す。また、下記打錠条件2)で打錠(打錠圧1.0t)し、質量600mg、直径13mmの円形錠を得た。

1)素錠質量:150mg、直径:7mm(円形錠)
打錠機:クリーンプレス コレクト 12HUK(菊水製作所製)
杵本数:12本(7.5mm、標準R)
回転盤回転数:30rpm
打錠時間30分間、3時間
2)素錠質量:600mg、直径:13mm(円形錠)
打錠機:クリーンプレス コレクト 12HUK(菊水製作所製)
杵本数:12本(7.5mm、標準R)
回転盤回転数:40rpm
打錠時間30分間、3時間
【0037】
得られた円形錠について、下記方法で評価を行った。結果を表中に併記する。
[錠剤硬度]
錠剤破壊強度測定器TH−203CP(富山産業社製)を用いて10錠測定し、その平均値を錠剤硬度とした。錠剤硬度から下記基準により示した。
【表2】

【0038】
[付着]
30分又は3時間連続打錠した後に、杵面、臼内、回転盤への付着を、下記基準に基づき目視で評価した。
<評価基準>。
− :付着なし
± :一部にごくわずかの付着又は薄い付着有、
+ :面の半分以上付着有
++:全面に付着有
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【0043】
【表7】

【0044】
【表8】

【0045】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物ステロール核粒子の表面が、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆剤によって被覆された被覆植物ステロール粒子。
【請求項2】
植物ステロール核粒子に、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆液を噴霧し、乾燥してなることを特徴とする請求項1記載の被覆植物ステロール粒子。
【請求項3】
水溶性高分子化合物がデキストリンであることを特徴とする請求項1又は2記載の被覆植物ステロール粒子。
【請求項4】
植物ステロール核粒子に対する水溶性高分子化合物の割合が1〜100質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の被覆植物ステロール粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の被覆植物ステロール粒子を含有する植物ステロール含有錠剤。
【請求項6】
植物ステロール核粒子に、水溶性高分子化合物及び25℃で固体の界面活性剤を含む被覆液を噴霧し、乾燥することを特徴とする請求項1記載の被覆植物ステロール粒子の製造方法。
【請求項7】
噴霧液中の25℃で固体の界面活性剤濃度が1質量%以下であることを特徴とする請求項6記載の被覆植物ステロール粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−143828(P2010−143828A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319149(P2008−319149)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】