説明

被覆構造体

【課題】 優れたシール性能を発揮することができる被覆構造体を提供する。
【解決手段】 被覆部材1は、弾性材料からなり、略筒形状の筒状部4と、筒状部4の一端に設けられて外側貫通穴71を被覆する外側被覆部2と、筒状部4の他端に設けられて内側貫通穴81を被覆する内側被覆部3とをもつ。外側被覆部2は、外側貫通穴71の周縁72に周縁72に沿った形状をもつ当接部22と、当接部22よりも径方向外側に突設され外側貫通穴71の周縁72に弾接するリング状のリップ部23と、当接部22とリップ部23との間で外側パネル7から離間する方向に向かって窪むリング状の分断溝24とを有する。被覆部材1の少なくとも当接部22には、磁性材料が含まれており、外側貫通穴71の周縁72に対して磁力によって保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通穴の周縁が被覆部材で被覆されている被覆構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通穴の周縁を被覆する被覆部材としては、車両の給油口付近や充電部付近に取付けられるカバー部材や、ステアリングシャフトを貫挿させるコラムホールカバーなどがある。
給油口付近のカバー部材は、車両のサイドメンバアウタに形成された外側貫通穴と、ホイールハウスアウタに形成された内側貫通穴との間を被覆して、サイドメンバアウタとホイールハウスアウタとの間に水分や汚れが侵入することを防止して、その間に配置されている電気系統に不具合が生じることを防止している。
【0003】
カバー部材95は、例えば、特許文献1に開示されているように、図4に示すように、略筒形状を呈しており、サイドメンバアウタ91の外側貫通穴91aの周縁を被覆する外側被覆部95aと、ホイールハウスアウタ92の内側貫通穴92aの周縁を被覆する内側被覆部95bと、外側被覆部95aと内側被覆部95bとの間を連結する筒状部95cとを有する。カバー部材95の内部には、インレットフィラーパイプ98が配置されていている。給油時に給油ガンが挿入されてインレットフィラーパイプ98を通じて、図略の燃料タンクに燃料が供給される。
【0004】
外側被覆部95aと内側被覆部95bには、それぞれ外側貫通穴91a、内側貫通穴92aよりも径方向外側に窪むリング溝95d、95eと、径方向外側に突設されたリップ部95f、95gとが形成されている。リング溝95d、95eには、金属製のCリング96,97が嵌合されている。Cリング96、97の拡張力を利用して、外側被覆部95aの外側貫通穴91aの周縁へのシール性と内側被覆部95bの内側貫通穴92aの周縁へのシール性を高めている。
【0005】
しかし、金属製のCリング96,97自体に製造コストがかかる上に、Cリングを嵌合するために組み付けに手間も費用もかかる。また、Cリングの形状、寸法、バネ特性等が、少なからず被覆部材のシール性能に影響を及ぼしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−84043号公報(図2)
【特許文献2】特開2004−301180号公報(段落「0036」、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Cリングを用いることなくボディパネルに保持することが可能な特許文献2のコラムホールカバーでは、図5に示すように、ボディパネル96に当接する当接部921の外周部から直接にシールリブ925が径方向外側に延びている。このため、当接部921とシールリブ925とが滑らかに連続して形成される。当接部921に設けられた固着部材922がボディパネル96に保持されると、シールリブ925が固着部材922の保持力によってボディパネル96に押し付けられる。この場合、当接部921からシールリブ925が直接延出することにより、シールリブ925の弾性反発力によって当接部921が浮き上がる方向での応力がかかっている。したがって、固着部材922の保持力と、シールリブ925のシール力とを、それぞれ有効に発揮させることができない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、優れたシール性能を発揮することができる被覆構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の被覆構造体は、貫通穴が形成されている相手部材と、
弾性材料からなり、略筒状を呈する筒状部と、該筒状部の軸方向の少なくとも一方の端部に設けられて前記相手部材の前記貫通穴の周縁を被覆する被覆部と、を有する被覆部材と、を備える被覆構造体において、
前記被覆部は、前記相手部材の前記貫通穴の周縁に沿った表面形状をもつリング状の当接部と、該当接部よりも径方向外側に突設され該貫通穴の周縁に弾接するリング状の突起部と、該当接部と該突起部との間で該相手部材から離間する方向に向かって窪むリング状の分断溝とを有するとともに、
少なくとも前記当接部には、磁性材料が含まれており、前記相手部材の前記貫通穴の周縁に対して磁力で保持されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、被覆部材の少なくとも当接部に磁性材料が含まれているため、磁力によって当接部が貫通穴の周縁に保持される。このため、従来のようなCリングを用いる必要がなく、Cリングの製造コストを削減できる。また、被覆部材の組み付けが容易となる。
【0011】
また、従来の被覆構造体においては、Cリングの拡張力の分力によって被覆部の浮きを抑えていた。これに対して、本発明の被覆構造体においては、磁力によって、当接部が貫通穴の周縁に保持される。ゆえに、被覆部材の取付力は、磁力によって、貫通穴の周縁を構成する取付面に垂直な方向に働き、従来のようにCリングを用いる場合に比べて、被覆部を貫通穴の周縁に強固に保持することができる。
【0012】
また、被覆部の当接部と突起部との間に分断溝を設けている。このため、当接部が磁力によって貫通穴の周縁に保持されたときに、突起部は、当接部と突起部の連結部形状に影響されることなく、シール力を発揮することができる。このため、当接部の保持力と、突起部のシール力とをそれぞれ有効に発揮させることができる。
【0013】
また、突起部に隣設して分断溝を形成することで、突起部の柔軟性が増し、貫通穴の周縁に沿って弾性変形しやすくなる。ゆえに、突起部自体のシール性能が向上する。
また、当接部が貫通穴の周縁に保持されたときに、当接部と突起部との間には分断溝が残るため、分断溝が突起部の変形を吸収することができる。
【0014】
また、相手部材や被覆部材にこれらの周縁のうねりを含む寸法誤差があったとしても、突起部と分断溝とで寸法誤差を吸収して、貫通穴を確実にシールすることができる。
【0015】
(2)前記被覆部材の全体に、前記磁性材料が含まれていることが好ましい。この場合には、被覆部材の全体が均一な成分をもつことになり、部分的に磁性材料を含ませる場合に比べて、製造が容易である。
【0016】
(3)前記相手部材は、車体の外側パネルであり、
前記被覆部材は、前記外側パネルに形成されている外側貫通穴の周縁に保持される外側被覆部と、該外側パネルの内側に該外側パネルと離間して配置された内側パネルに形成されている内側貫通穴の周縁に保持される内側被覆部と、該外側被覆部と該内側被覆部との間に略筒状に設けられ該外側貫通穴と該内側貫通穴との間を被覆する前記筒状部と、を備え、
前記外側被覆部は、前記当接部と前記突起部と前記分断溝とを有する前記被覆部であることが好ましい。
【0017】
この場合には、外側貫通穴は、内側貫通穴よりも、車体の外表面に近い部分に配置されるため、高圧洗車、雨、風などにより水や粉塵が侵入しやすい。ゆえに、外側被覆部の当接部に磁性材料を含ませ、また突起部も設け、更に、当接部と突起部との間に分断溝を介在させて、当接部の磁力による保持力と突起部のシール性能とをそれぞれ有効に発揮させる。これにより、外側貫通穴を被覆部材の外側被覆部で確実にシールして、外側パネルと内側パネルとの間の隙間に水や粉塵などが侵入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の被覆構造体によれば、被覆部材の少なくとも当接部に磁性材料が含まれており、また、当接部と突起部との間には、分断溝が介在しているため、当接部の磁力による保持力と突起部のシール性能とをそれぞれ有効に発揮することができる。したがって、優れたシール性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1の被覆構造体の断面図である。
【図2】実施例1の被覆構造体の拡大断面図である。
【図3】実施例2の被覆構造体の断面図である。
【図4】従来例の被覆構造体の断面図である。
【図5】他の従来例の、被覆構造体の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の被覆構造体は、相手部材と、被覆部材とをもつ。相手部材は、例えば、車両に用いられる薄板であり、貫通穴が形成されている。
【0021】
被覆部材は、被覆部と、筒状部とをもち、被覆部で相手部材の貫通穴の周縁に保持される。被覆部は、当接部と、突起部と、分断溝とを有する。
【0022】
当接部は、被覆部における貫通穴の周縁に対向する対向面に、リング状に連続して形成されている。当接部は、相手部材の貫通穴の周縁に沿った表面形状をもち、周縁に面状に接した状態で対面している。貫通穴の周縁を構成する取付面は、平面である場合や、一定の曲率の湾曲面である場合であればよい。取付面は、突起部先端が追従し得ない急激な形状変化がなければよい。
【0023】
突起部は、被覆部における貫通穴の周縁に対向する対向面に、当接部よりも径方向外側に配置されている。突起部は、被覆部の周方向全体にわたってリング状に形成されている。突起部は、例えば、外側貫通穴の周縁に対して傾斜して当接しているリップ部であったり、外側貫通穴の周縁に対して垂直方向に直立して当接しているリブ部であったりする。この場合には、突起部の相手部材への追従性が向上する。
【0024】
突起部がリップ部である場合、リップ部の断面は、先細り形状となっていることがよい。また、リップ部は、相手部材表面から外側に離間した部分に屈曲部をもち、屈曲部から先端側の部分は傾斜方向に延びているのがよい。この場合には、リップ部の先端が強く相手部材に当接してシール性がよくなる。
【0025】
突起部の先端は、相手部材に対してたわみ代を有している。これにより、相手部材への追従性を効果的に発揮させることができる。突起部の先端は、貫通穴の周縁に押接して、貫通穴の周縁との間をシールしている。
【0026】
分断溝は、当接部と突起部との間にリング状に介在している。
【0027】
被覆部には、当接部と、当接部と対向する対向部との間に形成されて、貫通穴の径方向内側に向かって窪む嵌合溝が形成されているとよい。嵌合溝の径方向内側に位置する底部の半径は、貫通穴の半径よりも大きいことが好ましい。この場合には、被覆部が径方向外側に弾性変形して貫通穴の周縁に組みつけられるため、嵌合溝には径方向外側に戻ろうとする弾発力が働く。ゆえに、嵌合溝に貫通穴の周縁が確実に嵌合されて、被覆部を貫通穴の周縁に確実に保持させることができる。嵌合溝の溝幅は、相手部材の厚みよりも大きいことがよい。この場合には、被覆部が、貫通穴の周縁を構成する取付面から浮き上がることを防止することができる。
【0028】
被覆部材は、ゴム、エラストマー、樹脂材料などの弾性材料からなり、弾性をもつ。そして、被覆部材の少なくとも被覆部の当接部は、磁性材料が含まれている。磁性材料は、当接部の全体に含まれていることが好ましいが、一部に含まれていても良い。磁性材料は、周方向に連続して又は所定間隔を隔てて、当接部に含まれていても良い。
【0029】
磁性材料は、永久磁性をもつ材料をいう。磁性材料は、外部磁場を印加しなくても自発的に磁性をもつ強磁性体であり、例えば、金属磁石などの磁性粉体、磁性板、磁石などである。磁性材料が磁性粉体である場合には、磁性材料を弾性材料と混合することで、被覆部材の全体に磁性材料を含ませることができ、被覆部材の一部に磁性材料を含ませる場合には、磁性材料と弾性材料とを混合した材料で磁性材料を含む部分を予め成形しておき、この磁性材料を含む部分を金型にインサートして、磁性材料を含まない部分を弾性材料で成形するとよい。磁性材料が磁性板又は磁石である場合には、被覆部の当接部に磁性材料を接合することで、磁性材料を被覆部材の一部に含ませることができる。
【0030】
また、被覆部の当接部だけでなく、突起部にも磁性材料を含ませてよい。この場合には、当接部だけでなく突起部も磁力によって貫通穴の周縁に保持する。ゆえに、貫通穴の周縁と被覆部との間をより確実にシールすることができる。
【0031】
更に、被覆部材の全体に磁性材料が含まれていてもよい。この場合には、弾性材料に磁性材料を均一に混ぜた後、その混合物を用いて被覆部材を形成する。
【0032】
被覆部材は、磁性材料を一部に含ませる場合にも全体に含ませる場合にも、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、注入成形などの公知の方法で成形する。
【0033】
相手部材は、被覆部材の少なくとも当接部に含まれている磁性材料により発せられる磁力によって引き寄せられる性質をもつ材料で構成されている。即ち、相手部材を構成する材料は、外部磁場があると磁性化し、外部磁場を印加しない場合には磁性を失う常磁性体である。鉄、スチール、銅などであるとよい。
【0034】
被覆部材は、例えば、車両の種々の構成部品として用いられる。例えば、被覆部材は、車体の給油口付近を被覆するカバー部材、ステアリングシャフトを貫挿するコラムホールカバーなどとして用いられる。
【0035】
被覆部材を車体の給油口付近を被覆するカバー部材として用いる場合には、被覆部材は、車体の外側パネルに保持される環状の外側被覆部と、外側パネルよりも車体内側に配置された内側パネルに保持される環状の内側被覆部と、外側被覆部と内側被覆部とを連結する筒状部と、外側被覆部と筒状部と内側被覆部とを貫通する穴部をもつ。外側被覆部、内側被覆部は、それぞれ外側パネル、内側パネルに形成された外側貫通穴の周縁、内側貫通穴の周縁に保持される。穴部には、例えば、インレットフィラーパイプの先端部が挿着される。
【0036】
車体の外側パネルは、例えば、サイドメンバアウタである。車体の内側パネルは、例えば、ホイールハウスアウタである。外側被覆部と内側被覆部のうち少なくとも外側被覆部に、本発明の当接部、リップ部及び分断溝を設けるとよい。外側被覆部は、外側パネルとの間から、雨、汚れ、燃料等が侵入しやすいため、当接部及び突起部で、外側パネルとの間を確実にシールすることが要求されるからである。また、外側被覆部だけでなく内側被覆部にも、本発明の当接部、突起部及び分断溝を設けてもよい。内側被覆部と内側パネルとの間からの水、泥、粉塵などの侵入を防止するためである。
【0037】
外側被覆部の当接部は、外側パネルの外側貫通穴の周縁よりも車体外側の外表面に配置されていて、外側貫通穴の周縁の車体内側の内表面に対面する対向部との間で嵌合溝を形成しているとよい。この嵌合溝に、外側貫通穴の周縁を嵌合することで、外側被覆部を外側貫通穴の周縁に安定且つ確実に保持することができる。
【0038】
内側被覆部は、内側パネルの車体内側又は車体外側に配置されて内側貫通穴の周縁に面状に当接する当接部、又は/及び内側パネルの車体内側又は車体外側に配置されて内側貫通穴の周縁に接する突起部を有していてもよい。この場合には、内側被覆部を内側貫通穴の周縁に確実に保持することができる。
【0039】
内側被覆部の突起部は、内側貫通穴の周縁に向かって垂直方向に延びるリブ又は傾斜して延びるリップのいずれであってもよい。当接部と突起部が隣設されており、且つ突起部が内側貫通穴の周縁に向かって垂直方向に延びるリブである場合には、当接部と突起部との間に、分断溝が介在しているとよい。リブと当接部のシール性能をそれぞれ有効に発揮させるためである。
【0040】
給油口等を形成する外側貫通穴及び内側貫通穴は、給油される燃料や、洗車時の水などが侵入しやすい部分である。このため、給油口付近を被覆するカバー部材は、高いシール性が望まれる。
【0041】
被覆部材が、ステアリングシャフトを貫挿させるコラムホールカバーである場合には、運転席の足下に設けられたボディパネルに形成されたステアリングシャフト導出用の貫通穴に取り付けられる。このボディパネルは本発明における相手部材である。貫通穴の周縁には、被覆部材が保持されて、被覆部材の穴部にステアリングシャフトを貫挿させる。被覆部材は、ボディパネルとステアリングシャフトとの間の隙間を被覆して、エンジンルーム内の音を遮音したり、車室外からの水や汚れなどの車室内への侵入を防止したりする。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
本例の被覆構造体は、図1に示すように、被覆部材1と、車体のサイドメンバアウタ7と、車体のホイールハウスアウタ8とを備えている。被覆部材1が組み付けられるサイドメンバウタ7及びホイールハウスアウタ8は、車体の外板を構成する鉄製部材であり、サイドメンバアウタ7は、所定の間隔を隔ててホイールハウスアウタ8の外側に配設されている。サイドメンバアウタ7には、凹部70が形成されており、この凹部70の底部に円形の穴からなる外側貫通穴71が貫通形成されている。ホイールハウスアウタ8にも、円形の穴からなる内側貫通穴81が形成されていて、外側貫通穴71とともに給油口を形成している。外側貫通穴71の周縁72と内側貫通穴81の周縁82とは、径方向に広がる平面部である。
【0043】
被覆部材1は、全体形状が略筒状を呈しており、環状の外側被覆部2と、環状の内側被覆部3と、外側被覆部2と内側被覆部3との間を連結する筒状部4と、外側被覆部2と筒状部4と内側被覆部3とを貫通する穴部5とをもつ。穴部5には、インレットフィラーパイプ6が挿着される。
【0044】
図2に示すように、外側被覆部2は、サイドメンバアウタ7に形成された外側貫通穴71の周縁72に保持されている。内側被覆部3は、ホイールハウスアウタ8に形成された内側貫通穴81の周縁82に保持されている。
【0045】
外側被覆部2は、当接部22と、リップ部23と、分断溝24と、嵌合溝25とを有する。外側被覆部2は、筒状部4よりも径方向の厚みが大きい肉厚部であり、サイドメンバアウタ7の外側貫通穴71の周縁72の車体外側に配置されている。外側被覆部2の車体内側の内表面には、径方向内側から外側に向けて順に、当接部22,分断溝24及びリップ部23(突起部)が形成されている。
【0046】
当接部22は、外側被覆部2の車体内側にリング状に連続して形成された対向面であり、外側貫通穴71の周縁72に面状に接した状態で対面している。外側貫通穴71の周縁72は、外側貫通穴71の径方向に平行であり、当接部22も、外側貫通穴71の周縁72に沿って径方向に平行な表面形状をもつ。
【0047】
リップ部23は、当接部22よりも径方向外側で、外側被覆部2の外周縁に形成されている。リップ部23は、外側被覆部2の周方向全体にわたって、車体内側にリップ状に突出している。リップ部23は、外側貫通穴71の周縁に対して傾斜している。リップ部23はサイドメンバアウタ7に対してたわみ代Aを設けて形成されている。リップ部23は、断面が先細り形状であり、サイドメンバアウタ7の表面から外側の部分に屈曲部23aをもち、屈曲部23aよりも先端側の部分は傾斜方向に延びている。リップ部23の先端は、外側貫通穴71の周縁72に押接して、周縁72との間をシールしている。
【0048】
分断溝24は、当接部22とリップ部23との間にリング状に介在している。
【0049】
嵌合溝25は、当接部22と、当接部22と対向する対向部26との間に形成されたリング状の溝であり、外側貫通穴71の径方向内側に向かって窪んでいる。嵌合溝25の溝幅は、サイドメンバアウタ7の厚みよりも若干大きい。
【0050】
外側被覆部2は、径方向内側に弾性変形して、外側貫通穴71の周縁72に組みつけられる。このため、外側被覆部2には、径方向外側に戻ろうとする弾発力が働き、相手部材への食い込み効果を得ることができる。ゆえに、外側被覆部2を外側貫通穴71の周縁72に確実に保持させることができる。
【0051】
また、図1に示すように、内側被覆部3は、筒状部4よりも径方向の厚みが厚い肉厚部である。内側被覆部3の車体外側の表面には、内側貫通穴81の周縁82に面状に当接する当接部32と、当接部32よりも径方向外側に配置されて内側貫通穴81の周縁82に接するリップ部33とが形成されている。当接部32とリップ部33との間には、リング状の分断溝34を設けてもよい。
【0052】
内側被覆部3は、ホイールハウスアウタ8に形成された内側貫通穴81の周縁82の車体外側に対向している。当接部32は、内側貫通穴81の周縁82に沿った表面形状を有している。リップ部33は、当接部32の径方向外側に隣設していて、当接部32よりも周縁82に向かってリップ状に突出している。リップ部33は、周縁82に向かって径方向外側に傾斜している。
【0053】
また、内側被覆部3は、内側貫通穴81の周縁82を車体内側と車体外側とから挟持する嵌合溝35と、内側貫通穴81の周縁82よりも径方向内側に突出するシール部37とを有する。嵌合溝35は、当接部32と、当接部32と対向する対向部36との間に形成され、径方向内側に向かって窪んでいる。シール部37は、内側被覆部3の車体内側の先端に設けられており、穴部5の内部に向けて突出して、穴部5に挿着されるインレットフィラーパイプ6を保持している。
【0054】
筒状部4は、蛇腹形状に屈曲した略筒形状をもつ。筒状部4の車体外側端部は、外側被覆部2の対向部26に接続され、筒状部4の車体内側端部は、内側被覆部3の対向部36に接続されている。筒状部4は、サイドメンバアウタ7とホイールハウスアウタ8との間を覆う。
【0055】
被覆部材1は、ゴム材料からなり、全体が弾性をもつ。そして、被覆部材1の全体には、磁性粉体が均一に含まれている。被覆部材1は、ゴム材料に磁性粉体を混合し、射出成形などにより形成される。
【0056】
被覆部材1を車体に組み付けるに当たっては、被覆部材1の内側被覆部3及び筒状部4を径方向内側に圧縮した状態で、内側被覆部3及び筒状部4を、車体外側からサイドメンバアウタ7の外側貫通穴71に挿入する。内側被覆部3は、更にホイールハウスアウタ8の内側貫通穴81に挿入する。外側被覆部2を外側貫通穴71の周縁72に保持させるとともに、内側被覆部3及び筒状部4の圧縮を解除して、内側被覆部3を内側貫通穴81の周縁82に保持させる。
【0057】
本例においては、被覆部材1の外側被覆部2の少なくとも当接部22に磁性材料が含まれているため、磁力Gによって当接部22が外側貫通穴71の周縁72に保持される。このため、従来のようなCリングを用いる必要がなく、Cリングの製造コストを削減でき、また、組み付けしやすくなる。また、当接部22は、磁力Gによって、外側貫通穴71の周縁72に保持される。ゆえに、従来のようにCリングを用いる場合に比べて、外側被覆部2を外側貫通穴71の周縁72に強固に保持することができる。
【0058】
また、外側被覆部2の当接部22とリップ部23との間に分断溝24を設けている。このため、当接部22が磁力によって外側貫通穴71の周縁72に保持されたときに、リップ部23は、磁力により保持された当接部22と分断溝24により分断されて、リップ部23自体が単独に撓むことにより優れたシール力を発揮することができる。このため、当接部22の保持力と、リップ部23のシール力とをそれぞれ有効に発揮させることができる。
【0059】
また、リップ部23に隣設して分断溝24を形成することで、リップ部23の柔軟性が増し、外側貫通穴71の周縁72に沿って弾性変形しやすくなる。ゆえに、リップ部23自体のサイドメンバアウタ7への追従性が向上し、シール性能が向上する。
【0060】
また、当接部22が外側貫通穴71の周縁72に保持されたときに、当接部22とリップ部23との間には分断溝24が残るため、分断溝24がリップ部23の変形を吸収することができる。
【0061】
また、サイドメンバアウタ7や被覆部材1に周縁のうねりを含む寸法誤差があったとしても、外側被覆部2のリップ部23と分断溝24とで寸法誤差を吸収して、外側貫通穴71を確実にシールすることができる。
【0062】
外側貫通穴71は、内側貫通穴81よりも、車体の外表面に近い部分に配置されるため、高圧洗車、雨、風などにより水や粉塵が侵入しやすく、また、給油時の燃料こぼしによる浸入もある。ゆえに、外側被覆部2の当接部22に磁性材料を含ませ、またリップ部23も設け、更に、当接部22とリップ部23との間に分断溝24を介在させて、当接部22の磁力による保持力とリップ部23のシール性能とをそれぞれ有効に発揮させる。これにより、外側貫通穴71を被覆部材1の外側被覆部2で確実にシールして、サイドメンバアウタ7とホイールハウスアウタ8との間の隙間に水や粉塵や燃料などが侵入することを防止することができる。
【0063】
また、被覆部材1の全体に磁性材料が含まれている。このため、部分的に磁性材料を含ませる場合に比べて、製造が容易である。また、外側被覆部2のリップ部23にも磁性材料が含まれているため、リップ部23が、外側貫通穴71の周縁72に密着して、優れたシール性を発揮することができる。また、内側被覆部3にも磁性材料が含まれているため、内側貫通穴81からの水、泥、粉塵などの侵入を効果的に防止することができる。
【0064】
(実施例2)
本例の被覆構造体においては、図3に示すように、被覆部材1の外側被覆部2に設けられているリップ部23が、外側被覆部2の径方向の中央に位置している。リップ部23は、当接部22よりも径方向外側に位置しており、リップ部23と当接部22との間には、分断溝24が形成されている。リップ部23は、車体内側に対して径方向外側に傾斜しており、リップ部23の先端は、当接部22よりも車体内側に突出している。リップ部23の先端は、サイドメンバアウタ7に押接して、径方向外側に倒れる。リップ部23は、この状態で、外側被覆部2の径方向外側の端部よりも内側に位置している。このため、リップ部23は、外側被覆部2の近傍に配置されることがある他部材と干渉せず、優れたシール性能を発揮することができる。また、給油口から、外側被覆部2のリップ部23が視認されず、見栄えがよい。
【0065】
内側被覆部3の当接部32及びリップ部33は、ホイールハウスアウタ8の車体外側に配置されている。当接部32とリップ部33との間には、リング状の分断溝34を設けても良い。リップ部33は、内側被覆部3の径方向の外縁部よりも内側に配置されており、ホイールハウスアウタ8に押接することで径方向外側に湾曲している。この状態で、リップ部33の先端は、内側保持部3の外周縁よりも内側に位置するため、内側保持部3の近傍に配置されることがある配線などの他部材と干渉せず、優れたシール性を発揮することができる。
【0066】
内側保持部3の嵌合溝35は、ホイールハウスアウタ8の車体外側に位置する当接部32と、ホイールハウスアウタ8の車体内側に位置する対向部36との間に形成されている。対向部36は、内側保持部3と同程度の軸方向の厚みであり、径方向の幅は内側保持部3のそれよりも小さい。対向部36よりも車体内側には、穴部5に貫挿されたインレットフィラーパイプの外縁を保持するシール部37が突出している。筒状部4の車体外側端部は、外側被覆部材2の対向部26に接続され、筒状部4の車体内側端部は、内側被覆部3の車体外側の表面に接続している。
【0067】
被覆部材1を車体に組み付けるときには、被覆部材1の内側被覆部3及び筒状部4を径方向内側に圧縮した状態で、内側被覆部3及び筒状部4を、車体外側から外側貫通穴71に挿入する。内側被覆部3の対向部36を内側貫通穴81に挿入させる。外側被覆部2を外側貫通穴71の周縁72に保持させるとともに、内側被覆部3及び筒状部4の圧縮を解除して、内側被覆部3を内側貫通穴81の周縁82に保持させる。本例の被覆部材1は、内側被覆部3を内側貫通穴81に挿入させないため、内側被覆部3を内側貫通穴81に挿入する実施例1の被覆構造体よりも、簡易に被覆部材1を車体に組み付けることができる。
【符号の説明】
【0068】
1:被覆部材、2:外側被覆部、3:内側被覆部、4:筒状部、5:穴部、7:サイドメンバアウタ、8:ホイールハウスアウタ、22:当接部、23:リップ部、24:分断溝、25:嵌合溝、26:対向部、32:当接部、33:リップ部、35:嵌合溝、36:対向部、37:シール部、71:外側貫通穴、72:周縁、81:内側貫通穴、82:周縁。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴が形成されている相手部材と、
弾性材料からなり、略筒状を呈する筒状部と、該筒状部の軸方向の少なくとも一方の端部に設けられて前記相手部材の前記貫通穴の周縁を被覆する被覆部と、を有する被覆部材と、を備える被覆構造体において、
前記被覆部は、前記相手部材の前記貫通穴の周縁に沿った表面形状をもつリング状の当接部と、該当接部よりも径方向外側に突設され該貫通穴の周縁に弾接するリング状の突起部と、該当接部と該突起部との間で該相手部材から離間する方向に向かって窪むリング状の分断溝とを有するとともに、
少なくとも前記当接部には、磁性材料が含まれており、前記相手部材の前記貫通穴の周縁に対して磁力で保持されていることを特徴とする被覆構造体。
【請求項2】
前記被覆部材の全体に、前記磁性材料が含まれている請求項1記載の被覆構造体。
【請求項3】
前記相手部材は、車体の外側パネルであり、
前記被覆部材は、前記外側パネルに形成されている外側貫通穴の周縁に保持される外側被覆部と、該外側パネルの内側に該外側パネルと離間して配置された内側パネルに形成されている内側貫通穴の周縁に保持される内側被覆部と、該外側被覆部と該内側被覆部との間に略筒状に設けられ該外側貫通穴と該内側貫通穴との間を被覆する前記筒状部と、を備え、
前記外側被覆部は、前記当接部と前記突起部と前記分断溝とを有する前記被覆部である請求項1又は請求項2に記載の被覆構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−94739(P2011−94739A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250231(P2009−250231)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】