説明

被覆水酸化マグネシウム、その製造方法及びそれを含む電子部品材料用樹脂組成物

【課題】 優れた難燃性を有すると同時に、耐酸性にも優れ、かつ、電子部品用材料としての用途に要求される溶出不純物濃度を確保することができる被覆水酸化マグネシウム及びその安定した製造方法を提供する。
【解決手段】 水不溶性のケイ素化合物を用いて形成した被覆層を表面に有しする被覆水酸化マグネシウムであり、被覆層を含む水酸化マグネシウム中のナトリウム及びカリウムの含有量の合計が10ppm以下である被覆水酸化マグネシウムが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境性、難燃性、耐酸性に優れ、溶出不純物の少ない被覆水酸化マグネシウム及びその製造方法、並びに、この被覆水酸化マグネシウムを難燃剤として含む電子部品材料用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸化マグネシウムは、優れた難燃性を有するとともに、燃焼時に有毒ガスの発生がなく環境性にも優れているため、樹脂組成物に配合される難燃剤として有用である。このような水酸化マグネシウム難燃剤には、難燃性が良好であることはもちろんのこと、溶出不純物が少ないこと、耐酸性に優れていることなどの特性が要求されている。特に、電子部品用材料としての用途では、溶出不純物により耐水絶縁性、耐湿信頼性が低下するため、溶出不純物の低減は重要課題となっている。
【0003】
水酸化マグネシウムの溶出不純物を低減させる方法として、水酸化マグネシウム粒子を充分に脱水処理するか、あるいは脱水処理後さらに水洗処理することにより、水溶性のナトリウム(Na)塩の含有量をNa金属換算で500ppm以下とした水酸化マグネシウム粒子及び水酸化アルミニウム粒子を含む難燃性樹脂組成物(特許文献1)、配合成分からのイオンの遊離、溶出を抑制する、または、遊離、溶出したイオンを吸着することを目的に複合金属水酸化物を配合した封止用エポキシ樹脂成形材料(特許文献2)などが提案されている。
【0004】
また、耐酸性を向上させる方法として、水酸化マグネシウム粒子の存在下に水溶性のケイ酸塩を酸で中和してシリカ(SiO)からなる被覆層を表面に有する水酸化マグネシウム難燃剤(特許文献3)や、水酸化アルミニウムが被覆層として形成された水酸化マグネシウム難燃剤(特許文献4)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、従来の難燃剤は、溶出不純物、耐酸性などそれぞれの特性について若干改善されているものの、未だ満足できる性能を得られていない。本発明者らが調査したところ、水酸化マグネシウムの耐酸性を向上させる方法として、水溶性のケイ酸塩から形成したSiOを水酸化マグネシウム粒子表面に中和析出させる方法(特許文献3)では、Naやカリウム(K)の溶出不純物量が多くなり、さらに、温度やpH等の処理条件により、加水分解生成物の物性が異なる等、安定した被覆層を得ることが困難であることが判明した。また、水酸化アルミニウムを水酸化マグネシウム粒子表面に中和析出させる方法(特許文献4)においても、NaやKの溶出不純物量が多くなる。
【0006】
したがって、溶出不純物量が少なく、かつ耐酸性の高い、両方の特性を兼ね備えた水酸化マグネシウム難燃剤はこれまで得られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平11−181305
【特許文献2】特開2003−253092
【特許文献3】特開2003−253266
【特許文献4】特開平10−338818
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術が抱える上記の課題を解消し、優れた難燃性を有すると同時に、耐酸性にも優れ、かつ、電子部品用材料として要求される溶出不純物濃度を満たすことができる被覆水酸化マグネシウム及びそれを安定して製造できる方法を提供することである。本発明は、また、この水酸化マグネシウムを含む、電子部品材料用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、水酸化マグネシウム粒子表面に形成する耐酸性被覆層を、水溶性のケイ素化合物ではなく、水不溶性のケイ素化合物を使用して形成することで、Na、Kなどの溶出不純物量を低減できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明によれば、水酸化マグネシウムの表面に被覆層を形成した被覆水酸化マグネシウムであって、被覆層が水不溶性のケイ素化合物を用いて形成したものである被覆水酸化マグネシウムが提供される。また、水酸化マグネシウム中のNa及びKの含有量の合計が10ppm以下である被覆水酸化マグネシウムが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、Na及びKの含有量の合計が10ppm以下である被覆水酸化マグネシウムを製造する方法であって、Na及びKの含有量の合計が10ppm以下である酸化マグネシウム粉末を水和して水酸化マグネシウムを得る工程と、水酸化マグネシウム粒子を懸濁したスラリー溶液を用意する工程と、Na及びKの含有量の合計が5ppm以下である水不溶性のケイ素化合物を懸濁したスラリー溶液を用意する工程と、2つのスラリー溶液を混合し、それにより、水酸化マグネシウム粒子の表面に、ケイ素化合物を含有する被覆層を形成する工程と、被覆層を表面に形成した水酸化マグネシウム粒子をろ別し、水洗し、乾燥させる工程とを含む方法も提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、上記の被覆水酸化マグネシウムを難燃剤として含有する電子部品材料用樹脂組成物も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の被覆水酸化マグネシウムは、耐酸性を向上させるために、表面に水不溶性のケイ素化合物を用いて形成した被覆層を均一に有する。水不溶性のケイ素化合物を用いて形成した被覆層は、水酸化マグネシウム中に不純物、Na、Kがある程度含有されていても、それらの溶出を低減できる。しかしながら、被覆水酸化マグネシウム中のNa及びKの含有量の合計は10ppm以下のものが好ましい。Na及びKの含有量の合計が10ppm以下であると、被覆水酸化マグネシウムを用いた電子部品材料用樹脂の耐湿信頼性が良好であり、電子部品の信頼性が良好に保たれる。被覆水酸化マグネシウム中のNa及びKの含有量の合計は、5ppm以下がより好ましく、2ppm以下が特に好ましい。
【0014】
被覆層を形成するために用いられる水不溶性のケイ素化合物は、Na及びKの含有量の合計が5ppm以下であり、水溶性のケイ素化合物、例えばケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム等のケイ酸塩でなければ、特に限定されるものではない。水不溶性のケイ素化合物として、例えば、酸化ケイ素は好適なものとしてあげることができ、例えば、微粉末シリカとして市販されているサイリシア(富士シリシア化学株式会社製)、アエロジル(日本アエロジル株式会社製)、トクシール、ファインシール、レオロシール(株式会社トクヤマ製)などがあげられる。また、水酸化マグネシウム粒子表面を均一に被覆するためには、ケイ素化合物の平均粒子径は0.3μm以下のものが好ましい。
【0015】
本発明の被覆水酸化マグネシウムの製造方法は、酸化マグネシウム(MgO)粉末を、有機酸を添加した100℃以下の温水中に添加し、MgOの水和反応を行い、次いで生成した水酸化マグネシウム固形分をろ別し、水洗、乾燥させる工程を含む。
【0016】
本発明で用いるMgOは、Na及びK含有量の合計が10ppm以下であれば、特に限定されないが、Na及びKの含有量が少ないこと、水和時の結晶成長に優れていることなどから電融MgOを使用することが好ましい。
【0017】
有機酸としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、モノカルボン酸、オキシカルボン酸(オキシ酸)等があげられる。モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸等があげられ、オキシカルボン酸(オキシ酸)としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、サリチル酸、安息香酸、没食子酸等があげられる。
【0018】
また、水酸化マグネシウムの製造工程において、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)等の金属元素を含む化合物を添加することにより、水酸化マグネシウムに金属イオンを固溶させた複合金属水酸化物を使用することもできる。
【0019】
上記の水和反応後、得られた水酸化マグネシウムをイオン交換水に懸濁、スラリー状態にし、この水酸化マグネシウムスラリー溶液を室温〜95℃、好ましくは60℃以上に昇温しておく。一方、上記の水不溶性のケイ素化合物をイオン交換水に懸濁させたスラリー溶液を用意しておき、これを攪拌しながら、水酸化マグネシウムスラリー溶液に10〜20分、好ましくは約15分かけて滴下する。この混合溶液を20〜40分間、室温〜95℃、好ましくは約30分間60℃以上に保持した後、ろ別し、水洗、乾燥させることにより、本発明の被覆水酸化マグネシウムを得ることができる。
【0020】
従来のように、水溶性のケイ素化合物、例えばケイ酸塩を使用して水酸化マグネシウムの表面を被覆する場合、温度やpH等の処理条件により、加水分解生成物の物性が異なる等、安定した被覆層を得ることが困難であった。しかし、本発明のように水不溶性のケイ素化合物を用いることによって、どのような処理条件においても安定して被覆層を形成することが可能である。
【0021】
そして、上記の出発物質としてのMgOに含有されるNa、Kの合計量と、水不溶性のケイ素化合物に含有されるNa、Kの合計量とが、トータルで10ppm以下になるように調整することが好ましい。
【0022】
被覆水酸化マグネシウム中のケイ素化合物の含有量は、水酸化マグネシウム粒子の表面を十分に被覆し、かつ、高い難燃効果を発現させるためには、被覆水酸化マグネシウム量を基準に、SiO換算で0.15〜5.0質量%となることが好ましい。ケイ素化合物の含有量は、より好ましくは0.2〜1.0質量%である。
【0023】
耐酸性、樹脂への親和性をさらに向上させるために、上記のケイ素化合物を水酸化マグネシウム粒子表面に被覆する工程において、ケイ素化合物を滴下後、引き続きアルミニウム化合物をイオン交換水に懸濁させたスラリー溶液を、攪拌下10〜20分間、好ましくは約15分かけて滴下しても良い。
【0024】
本発明で用いるアルミニウム化合物は特に限定されないが、純度、結合性、作業効率などの点からアルミナ水和物のコロイド液が好適に使用される。アルミナ水和物のコロイド液としては、アルミナゾル(日産化学工業株式会社製)、アルミナゾル(川研ファインケミカル株式会社製)があげられる。また、被覆水酸化マグネシウム中のアルミニウム化合物の含有量は、水酸化マグネシウムの難燃効果を減少させない範囲とし、被覆水酸化マグネシウム量を基準に、Al換算で1.0質量%以下とすることが好ましい。
【0025】
また、上記の被覆層を形成後、被覆水酸化マグネシウムの表面に、引き続き公知の方法により各種の表面処理を実施してもよい。樹脂に対する親和性を高めるための表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸又はそのアルカリ金属塩、リン酸エステル、シランカップリング剤類、多価アルコールの脂肪酸エステル類等があげられる。紫外線吸収性を高めるためには、例えば、硫酸チタニルを加水分解させて二酸化チタンを被覆する表面処理方法などがあげられる。また、これらの表面処理方法を複数組み合わせてもよい。
【0026】
本発明の電子部品材料用樹脂組成物は、本発明により得られた被覆水酸化マグネシウムを難燃剤として配合するものであれば特に限定されないが、例えば本発明の被覆水酸化マグネシウムを、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤等とともに混練して得ることができる。本発明の電子部品材料用樹脂組成物において、被覆水酸化マグネシウム難燃剤の配合量は、樹脂組成物全体の1〜35質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。さらに、被覆水酸化マグネシウム難燃剤の配合量は、無機物の合計質量、すなわち、被覆水酸化マグネシウム難燃剤と無機充填剤との合計配合量が樹脂組成物全体の60〜95質量%であることが好ましい。
【0027】
本発明の電子部品材料用樹脂組成物は、難燃性、耐酸性に優れていると同時に、溶出不純物が少ないため、耐湿信頼性にも優れており、半導体の封止剤としても有用である。
【実施例】
【0028】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
合成例
<水酸化マグネシウムA>
電融MgO(タテホ化学工業株式会社製)を濃度0.02mol/Lの酢酸10Lを入れた内容積20Lの容器に、MgO濃度が100g/Lとなるように添加し、90℃に保持しながら、高速攪拌機(特殊機化工業株式会社製、商品名:ホモミクサー)を使用し、タービン羽根の周速を10m/sとして攪拌しながら、4時間水和反応を行った。続いてろ過、水洗、乾燥を行い、水酸化マグネシウムAを得た。得られた水酸化マグネシウムAのNa及びKの含有量はそれぞれ5ppm、1ppm、合計は6ppmであった。
【0030】
<水酸化マグネシウムB>
Zn固溶水酸化マグネシウム(タテホ化学工業株式会社製、商品名:エコーマグ(登録商標)Z−10)を水酸化マグネシウムBとした。水酸化マグネシウムBのNa及びKの含有量はそれぞれ9ppm、1ppm、合計は10ppmであった。
【0031】
<水酸化マグネシウムC>
水酸化マグネシウムB 1500gを、全量が10Lとなるようにイオン交換水に懸濁させスラリー状態にした。このスラリーを90℃に昇温し、攪拌しながら0.4mol/LのNaSnO・3HO溶液1581mLを滴下し、90℃で30分間保持・熟成したのち、ろ過、水洗、乾燥させたものを水酸化マグネシウムCとした。水酸化マグネシウムCのNa及びKの含有量はそれぞれ26ppm、5ppm、合計は31ppmであった。
【0032】
実施例1
水酸化マグネシウムA1500gを全量が10Lとなるようにイオン交換水に懸濁し、スラリー状態にした。この水酸化マグネシウムスラリー溶液を90℃に昇温し、それに、あらかじめ酸化ケイ素粉末(日本アエロジル株式会社製、商品名アエロジル)10.5gをイオン交換水350gに懸濁させたスラリー溶液を攪拌下15分かけて滴下した。30分間90℃に保持した後、ろ別し、水洗、乾燥させて被覆水酸化マグネシウムを得た。
【0033】
実施例2
酸化ケイ素粉末添加量を67.5gにしたことを除いては、実施例1と同様にして被覆水酸化マグネシウムを得た。
【0034】
実施例3
酸化ケイ素粉末を懸濁させたスラリー溶液を滴下後、引き続きアルミナ水和物のコロイド液(日産化学工業株式会社製、商品名:アルミナゾル)15gをイオン交換水333gに懸濁させたスラリー溶液を、攪拌下15分かけて滴下させたことを除いては、実施例1と同様にして被覆水酸化マグネシウムを得た。
【0035】
実施例4
水酸化マグネシウムBを使用したことを除いては、実施例1と同様にして被覆被覆水酸化マグネシウム固溶体を得た。
【0036】
実施例5
水酸化マグネシウムCを使用したことを除いては、実施例1と同様にして被覆水酸化マグネシウム固溶体を得た。
【0037】
比較例1
水酸化マグネシウムAをそのまま使用した。
【0038】
比較例2
水酸化マグネシウムBをそのまま使用した。
【0039】
比較例3
水酸化マグネシウムCをそのまま使用した。
【0040】
比較例4
酸化ケイ素粉末の添加量を2.85gにしたことを除いては、実施例1と同様にして被覆水酸化マグネシウムを得た。
【0041】
比較例5
水酸化マグネシウムA1500gを全量が10Lとなるようにイオン交換水に懸濁、スラリー状態にした。この水酸化マグネシウムスラリー溶液を90℃に昇温し、それに、あらかじめ水溶性のケイ酸ナトリウムをSiOに換算して10.5gをイオン交換水350gに懸濁させた溶液を混合し、混合したスラリー溶液のpHが9になるように硫酸を1時間かけて滴下し、次いでこの混合スラリー溶液を90℃で30分間保持した後、ろ別し、水洗、乾燥させて被覆水酸化マグネシウムを得た。
【0042】
比較例6
ケイ酸ナトリウムをケイ酸カリウムに変更したことを除いては、比較例5と同様にして被覆水酸化マグネシウムを得た。
【0043】
このようにして得られた各々の被覆水酸化マグネシウムの粉末について、以下の特性を測定し、結果を表1、表2に示した。
【0044】
化学組成:ICP発光分光分析装置SPS1700VR(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、SiO量及びAl量の定量を行った。
【0045】
被覆水酸化マグネシウム中の不純物濃度:試料粉末1gを硝酸:蒸留水=1:1の溶媒10mLに溶解した後、蒸留水に加え100mLにしたものを、原子吸光光度計Z−8100(株式会社日立製作所製)を用いて、Na、Kの定量を行った。
【0046】
抽出不純物(Na及びK)試験:試料粉末20gを脱イオン水200mlに添加し、95℃で20時間抽出を行った後、脱イオン水中へ溶出したイオン量についてイオンクロマトグラフ装置AQ(DIONEX製)を用いて定量を行い、試料粉末に対する溶出量として換算した。
【0047】
耐酸性:試料粉末250mgをpH4に調節した100mLの脱イオン水に攪拌下で添加し、pH4に維持しつつ0.1N塩酸が12.9mL(試料の15.0mol%に相当)消費されるまでの時間を測定し、60分以上のものを「1」、40分以上60分未満のものを「2」、20分以上40分未満のものを「3」、10分以上20分未満のものを「4」、10分未満のものを「5」とした。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
表1、表2から明らかなように、本発明の被覆水酸化マグネシウムは、水不溶性のケイ素化合物を用いて形成した被覆層を有するため、耐酸性に優れ、しかも、Na、Kなどの溶出不純物量が極めて少ないことが確認された。それに対して、被覆層が形成されていない水酸化マグネシウム(比較例1〜3)は、溶出不純物量は少ないものの、耐酸性が著しく低下する。
【0051】
さらに、水溶性ケイ素化合物を原料として被覆層を形成した被覆水酸化マグネシウム(比較例5、6)は、原料中に含まれるNa、Kの不純物の溶出量が極めて多く、また、被覆層の均一性も十分でないため、望ましい耐酸性を得ることができないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化マグネシウムの表面に被覆層を形成した被覆水酸化マグネシウムであって、前記被覆層が水不溶性のケイ素化合物を用いて形成したものであり、前記ケイ素化合物の含有量が、被覆水酸化マグネシウム量を基準にSiO換算で0.15〜5.0質量%であることを特徴とする被覆水酸化マグネシウム。
【請求項2】
前記被覆水酸化マグネシウム中のナトリウム及びカリウムの含有量の合計が10ppm以下である、請求項1記載の被覆水酸化マグネシウム。
【請求項3】
前記被覆層がアルミニウム化合物をさらに含有する、請求項1又は2記載の被覆水酸化マグネシウム。
【請求項4】
前記被覆層中のアルミニウム化合物の含有量が、被覆水酸化マグネシウム量を基準にAl換算で1.0質量%以下である、請求項4記載の被覆水酸化マグネシウム。
【請求項5】
ナトリウム及びカリウムの含有量の合計が10ppm以下である被覆水酸化マグネシウムを製造する方法であって、
ナトリウム及びカリウムの含有量の合計が10ppm以下である酸化マグネシウム粉末を水和して得た水酸化マグネシウム粒子を懸濁したスラリー溶液を用意する工程と、
ナトリウム及びカリウムの含有量の合計が5ppm以下である水不溶性のケイ素化合物を懸濁したスラリー溶液を用意する工程と、
前記2つのスラリー溶液を混合し、それにより、水酸化マグネシウム粒子の表面に、ケイ素化合物を含有する被覆層を形成する工程と、
前記被覆層を表面に形成した水酸化マグネシウム粒子をろ別し、水洗し、乾燥させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記水不溶性のケイ素化合物が酸化ケイ素であり、前記被覆層中のケイ素化合物の含有量が、被覆水酸化マグネシウム量を基準にSiO換算で0.15〜5.0質量%である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記酸化マグネシウム粉末が電融法により得られた酸化マグネシウム粉末である、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜4記載の被覆水酸化マグネシウムを難燃剤として含有する電子部品材料用樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−84689(P2007−84689A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275253(P2005−275253)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000108764)タテホ化学工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】